説明

内視鏡用ガイドチューブ及び内視鏡装置

【課題】内視鏡の挿入部の外径に近い外径に細径化することができ、かつ、湾曲部へ挿入部を容易に挿通させることができる内視鏡用ガイドチューブ及びこれを備える内視鏡装置を提供すること。
【解決手段】内視鏡用ガイドチューブ8は、中心軸線Cを有して管状に延びるチューブ本体10を備えている。チューブ本体10は、ジェットエンジン周囲の配管類の隙間から挿入できるように、内視鏡の挿入部に対して所定の長さとなっている。チューブ本体10の先端10a側には、湾曲中心C1を中心に予め湾曲した湾曲部11が1ヶ所設けられている。この湾曲部11には、チューブ本体10の壁面の厚さ方向に貫通して一つのスリット12が配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用ガイドチューブ及び内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する内視鏡の挿入部を管路に案内させる際、管路内を容易に挿通させるために、挿入部よりも硬性の内視鏡用ガイドチューブが用いられている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
このような内視鏡用ガイドチューブは、ガイドチューブ自体を狭い管路に挿入するため、及び狭い場所で内視鏡の挿入部を管路に案内するために使用されるので、挿入部の外径にできるだけ近い外径であることが望ましい。そこで、硬質、かつ、摩擦係数の小さいエチレン樹脂等が使用される場合が多い。このような内視鏡用ガイドチューブによれば、挿入部を挿入する際、ガイドチューブ内における挿入部の変形を抑えて挿入部を容易に挿入させることができる。
また、狭いスペースゆえに挿入部を管路の開口部に対して傾斜する方向から挿入しなければならないような場合には、挿入方向に対して予め湾曲したガイドチューブを使用することによって、軟性の挿入部であっても容易に管路に挿入させることができる。
【特許文献1】特開平11−56765号公報
【特許文献2】特許第3665420号公報
【特許文献3】特開2000−237124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような湾曲部を有し、チューブ内径が挿入部の外径に近い上記従来の内視鏡用ガイドチューブに、アダプタの装着部のように一部に硬性かつ直線状部分がある内視鏡の挿入部を挿通させる際、硬性部が湾曲部を通過しようとしても湾曲部の湾曲状態に追従しないで直線状態が維持されるので、硬性部が湾曲部に引っ掛ってしまい、挿入部を挿通させることができない。そこで、硬性部が挿通できるようにチューブ内径を大きくせざるを得ず、必然的にチューブ外径が大きくなってしまう。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、内視鏡の挿入部の外径に近い外径に細径化することができ、かつ、湾曲部へ挿入部を容易に挿通させることができる内視鏡用ガイドチューブ及びこれを備える内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る内視鏡用ガイドチューブは、一部に硬性部を有する一方、全体では可撓性を有する内視鏡の挿入部が内部に挿通される内視鏡用ガイドチューブであって、樹脂からなり、管状に延びて途中に湾曲部が設けられたチューブ本体を備え、前記湾曲部には、前記チューブ本体の壁面を貫通するスリットが配されていることを特徴とする。
【0006】
この発明は、スリットによって、チューブ本体のスリット近傍の曲げ剛性を他の部分よりも低下させることができる。従って、内視鏡の挿入部における硬性部が湾曲部を通過する際、チューブ本体の壁面が挿入部によって径方向外方に押圧されることにより、スリットが開口して、硬性部の挿通に追従するように湾曲部の内径を大きくすることができる。また、硬性部以外の挿入部が湾曲部を挿通する際には、スリットは開口せず、湾曲部の形状を維持することができる。
【0007】
また、本発明に係る内視鏡用ガイドチューブは、前記内視鏡用ガイドチューブであって、前記スリットが、前記湾曲部の湾曲中心側の壁面に配されていることを特徴とする。
この発明は、挿入部の硬性部が湾曲部を挿通する際、湾曲中心側の壁面のほうが、反対側の壁面よりも軸方向の引張力が小さいので、スリットをより開口しやすくすることができる。
【0008】
また、本発明に係る内視鏡用ガイドチューブは、前記内視鏡用ガイドチューブであって、前記スリットが、前記チューブ本体の中心軸線方向に延びて配されていることを特徴とする。
この発明は、スリットの開口幅を広げることによって湾曲部の内径を大きくすることができる。従って、硬性部の長さに応じて湾曲部の内径を変化させ、挿入部を容易に挿通させることができる。
【0009】
また、本発明に係る内視鏡用ガイドチューブは、前記スリットが、前記中心軸線と前記スリットとを含む平面が前記中心軸線と前記湾曲部の湾曲中心とを含む平面と交差するようにして配されていることを特徴とする。
この発明は、挿入部が湾曲部を通過する際、挿入部の中心軸線が、ガイドチューブの中心軸線と湾曲部の湾曲中心とを含む平面上に配されることになる。一方、スリットはこの平面上には配されないので、挿入部がチューブ本体内を前進しても、挿入部の先端がスリットの開口部分から突出するのを好適に抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る内視鏡用ガイドチューブは、前記内視鏡用ガイドチューブであって、前記スリットが、前記チューブ本体の中心軸線方向に直交して、前記中心軸線方向に複数配されていることを特徴とする。
この発明は、湾曲部に挿入部を挿通する際、スリット幅が変化することによって湾曲部の湾曲半径を変化させることができる。また、スリット数が多くなるほど湾曲部の曲げ剛性を小さくすることができる。従って、硬性部の長さに応じてスリットの数を調節することによって、挿入部が容易に挿通するように湾曲部の湾曲半径を変化させることができる。
【0011】
本発明に係る内視鏡装置は、細長で可撓性を有する挿入部を備える内視鏡と、本発明に係る内視鏡用ガイドチューブとを備えていることを特徴とする。
この発明は、内視鏡用ガイドチューブの外径が、内視鏡の挿入部の外径に近くて細いものであっても、内視鏡用ガイドチューブに容易に挿通させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内視鏡用ガイドチューブの外径を内視鏡の挿入部の外径に近い外径に細径化することができ、かつ、湾曲部へ挿入部を容易に挿通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、図1に示すように、細長で可撓性を有する挿入部2を備える内視鏡3と、内視鏡3で観察した画像を表示させる表示部5を有する装置本体6と、先端側の一部に硬性部7を有する一方、全体では可撓性を有する内視鏡3の挿入部2が内部に挿通される内視鏡用ガイドチューブ8とを備えている。
【0014】
内視鏡用ガイドチューブ8は、例えば、四フッ化エチレン等の樹脂からなり、図2に示すように、中心軸線Cを有して管状に延びるチューブ本体10を備えている。チューブ本体10は、例えば、図示しないジェットエンジンのアクセスポートに内視鏡3の挿入部2を挿入するため、ジェットエンジン周囲の配管類の隙間から挿入できるように、挿入部2に対して所定の長さとなっている。チューブ本体10の先端10a側には、湾曲中心C1を中心に予め湾曲した湾曲部11が1ヶ所設けられている。この湾曲部11には、チューブ本体10の壁面の厚さ方向に貫通して一つのスリット12が配されている。なお、チューブ本体10は、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂からなるものであっても構わない。
【0015】
スリット12は、湾曲部11の湾曲中心C1側の壁面に、中心軸線C方向に延びて配されており、中心軸線Cと湾曲部11の湾曲中心C1とを含む平面に対して中心軸線Cとスリット12とを含む平面が交差するようにして配されている。スリット12の長さは、湾曲部11に対して所定の長さとなっている。
【0016】
次に、本実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブ8及び内視鏡装置1の作用・効果について説明する。
まず、チューブ本体10の先端10aを図示しないジェットエンジンのアクセスポート近傍に接近するようにして内視鏡用ガイドチューブ8を配置する。
【0017】
次に、内視鏡用ガイドチューブ8内に、内視鏡3の挿入部2を挿入して、先端まで挿通させる。
この際、チューブ本体10の直線部分では、チューブ本体10と挿入部2との間の摩擦が小さいので、挿入部2がスムーズにチューブ本体10内を挿通していく。
【0018】
そして、挿入部2の硬性部7が湾曲部11に差し掛かった際、挿入部2の先端が、湾曲中心C1に対して反対側となるチューブ本体10の壁面に当接しながら前進し、その際に壁面から受ける反力によって挿入部2が湾曲部11に沿って湾曲する。ここで、硬性部7の剛性がチューブ本体10の剛性よりも大きいので、硬性部7が湾曲部11を通過する間、図3(a)に示すように、スリット12が開口してチューブ内径が拡大する。従って、チューブ本体10からの抗力が低下して内視鏡3の挿入部2の挿通が可能となる。
【0019】
この際、内視鏡3の挿入部2は、内視鏡用ガイドチューブ8の中心軸線Cと湾曲部11の湾曲中心C1とを含む平面上に配されることになる一方、スリット12はこの平面上には配されていない。従って、挿入部2がチューブ本体10内を前進しても、挿入部2の先端がスリット12の開口部分から突出するのが好適に抑えられる。
【0020】
こうして、図3(b)に示すように、内視鏡3の挿入部2の先端が、チューブ本体10の先端10aから突出する。このとき、挿入部2の硬性部7が内視鏡用ガイドチューブ8の湾曲部11を通過してしまうので、スリット12が再び閉じてチューブ本体10の内径が一定となる。
【0021】
この内視鏡装置1及び内視鏡用ガイドチューブ8によれば、スリット12によって、チューブ本体10のスリット12近傍の曲げ剛性を他の部分よりも低下させることができる。従って、内視鏡3の硬性部7が湾曲部11を通過する際、チューブ本体10の壁面が挿入部2によって径方向外方に押圧されることにより、スリット12幅を変化させて内径を広げることができ、硬性部7の挿通に追従するように湾曲部11を変形させることができる。一方、挿入部2の硬性部7以外の部分が湾曲部11を挿通する際には、湾曲部11の形状を維持して、代わりに挿入部2を湾曲部11に合わせて湾曲させながら挿通させることができる。その結果、チューブ本体10の外径を内視鏡3の挿入部2の外径に近いものに細径化することができ、湾曲部11へ挿入部2を容易に挿通させることができる。
【0022】
次に、第2の実施形態について図4を参照しながら説明する。
なお、上述した第1の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第2の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、本実施形態に係る内視鏡装置20の内視鏡用ガイドチューブ21は、湾曲部11に二つのスリット12(一つのみ図示)が配されているとした点である。
【0023】
二つのスリット12は、湾曲部11の湾曲中心C1側の壁面であって、中心軸線C方向に延びて配されている。何れのスリット12も、中心軸線Cと湾曲部11の湾曲中心C1とを含む平面に対して、中心軸線Cとスリット12とを含む平面が交差するようにして、即ち、中心軸線Cと湾曲中心C1とを含む平面を対称面とする位置に配されている。スリット12に挟まれた部分には、中心軸線C方向に延びる帯状部22が形成されている。
【0024】
この内視鏡用ガイドチューブ21に挿入部2を挿入した場合、挿入部2の先端が湾曲部11に差し掛かったときに、湾曲中心C1に対して反対側となるチューブ本体10の壁面に当接する。そして、硬性部7が湾曲部11を通過する間、図4(a)に示すように、二つのスリット12が開口し、かつ、帯状部22がチューブ本体10に対して湾曲中心C1側に撓んでチューブ内径が拡大する。
【0025】
この際、二つのスリット12は、内視鏡用ガイドチューブ21の中心軸線Cと湾曲部11の湾曲中心C1とを含む平面上に配されていないので、挿入部2の先端がスリット12から突出しないでチューブ本体10内を前進する。
こうして、図4(b)に示すように、内視鏡3の挿入部2の先端が、内視鏡用ガイドチューブ21の先端から突出する。この際、挿入部2の硬性部7が内視鏡用ガイドチューブ21の湾曲部11を通過してしまうので、スリット12が再び閉じて帯状部22の撓み状態が回復し、チューブ本体10の内径が一定となる。
【0026】
この内視鏡装置20及び内視鏡用ガイドチューブ21によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
特に、二つのスリット12が湾曲部11に配されているので、挿入部2が湾曲部11を挿通する際に、内視鏡用ガイドチューブ21の内径をより容易に変化させることができ、挿入部2を容易に挿通させることができる。
【0027】
次に、第3の実施形態について図5を参照しながら説明する。
なお、上述した他の実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
第3の実施形態と第1の実施形態との異なる点は、図5(a)に示すように、本実施形態に係る内視鏡装置30の内視鏡用ガイドチューブ31の湾曲部11に、チューブ本体10の中心軸線C方向に直交して、中心軸線C方向に複数のスリット32が配されているとした点である。
スリット32は、チューブ本体10の壁面の内周面側から外周面側に向って漸次開口幅が広くなるように形成されている。
【0028】
この内視鏡用ガイドチューブ31及び内視鏡装置30の作用・効果について説明する。
まず、内視鏡用ガイドチューブ31に挿入部2を挿入する。ここで、挿入部2の先端が湾曲部11に差し掛かった際、挿入部2の先端が、湾曲中心C1に対して反対側となるチューブ本体10の壁面に当接する。そして、硬性部7が湾曲部11を通過する間、図5(b)に示すように、スリット32の開口幅が変化することによって湾曲部11が変形して湾曲半径が変化する。
こうして、内視鏡3の挿入部2の先端が、内視鏡用ガイドチューブ31の先端から突出する。
【0029】
この内視鏡装置30及び内視鏡用ガイドチューブ31によれば、スリット32の数が多くなるほど湾曲部11の曲げ剛性を小さくすることができる。従って、挿入部2の硬性部7の長さに応じてスリット32の数を調節することによって、挿入部2が好適に挿通するように湾曲部11の湾曲半径を変化させることができる。
【0030】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、スリット12が湾曲部11の湾曲中心C1側の壁面に配されているとしているが、図6に示すように、スリット12が湾曲部11の湾曲中心C1の反対側となる壁面に配された内視鏡用ガイドチューブ40を備える内視鏡装置41としても構わない。
【0031】
この場合、中心軸線Cと湾曲部11の湾曲中心C1とを含む平面に対して中心軸線Cとスリット12とを含む平面が交差するようにして配されていれば、挿入部2がスリット12の開口部からチューブ本体10の外側に突出するのを抑えて挿通させることができる。
【0032】
また、図7に示すように、湾曲部11が複数設けられたチューブ本体50のそれぞれに、スリット12が配された内視鏡用ガイドチューブ51としてもよい。この場合、挿入部2が各湾曲部11を挿通する際、上述した実施形態と同様にスリット12の開口幅を変えて挿入部2の挿通を容易にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡装置を示す全体概要図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブを示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブに内視鏡の挿入部を挿入する状態を示す説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブに内視鏡の挿入部を挿入する状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る(a)内視鏡用ガイドチューブを示す側面図、(b)内視鏡用ガイドチューブに内視鏡の挿入部を挿入する状態を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブに内視鏡の挿入部を挿入する状態を示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る内視鏡用ガイドチューブに内視鏡の挿入部を挿入する状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1,20,30,41 内視鏡装置
2 挿入部
3 内視鏡
7 硬性部
8,21,31,40,51 内視鏡用ガイドチューブ
10,50 チューブ本体
11 湾曲部
12,32 スリット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に硬性部を有する一方、全体では可撓性を有する内視鏡の挿入部が内部に挿通される内視鏡用ガイドチューブであって、
樹脂からなり、管状に延びて途中に湾曲部が設けられたチューブ本体を備え、
前記湾曲部には、前記チューブ本体の壁面を貫通するスリットが配されていることを特徴とする内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項2】
前記スリットが、前記湾曲部の湾曲中心側の壁面に配されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項3】
前記スリットが、前記チューブ本体の中心軸線方向に延びて配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項4】
前記スリットが、前記中心軸線と前記スリットとを含む平面が前記中心軸線と前記湾曲部の湾曲中心とを含む平面と交差するようにして配されていることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項5】
前記スリットが、前記チューブ本体の中心軸線方向に直交して、前記中心軸線方向に複数配されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用ガイドチューブ。
【請求項6】
細長で可撓性を有する挿入部を備える内視鏡と、
請求項1から5の何れか一つに記載の内視鏡用ガイドチューブとを備えていることを特徴とする内視鏡装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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