説明

内視鏡用キャップ

【課題】内視鏡の先端に外嵌される筒状本体と、筒状本体に接続され患部を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給用チューブとを備える内視鏡用キャップにおいて、容易に患部を洗浄することができる内視鏡用キャップを提供する。
【解決手段】筒状本体3には、周壁内に洗浄液供給用チューブ5から供給された洗浄液が周方向に流れる周方向流路4が形成され、且つ洗浄液が噴出される噴出口6が周方向流路4に連通させて複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において用いられる内視鏡の先端に取り付けられ、洗浄液を噴出して患部を洗浄する洗浄液供給用チューブを備える内視鏡用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡の先端に外嵌される外嵌部と、内視鏡取付部の先端に設けられ周壁に貫通孔が形成された空間形成部とを有する筒状本体と、空間形成部の貫通孔に挿入して固着され患部を洗浄する洗浄液を先端から噴出させる洗浄液供給用チューブとを備え、洗浄液供給用チューブから噴出された洗浄液で患部を洗浄する内視鏡用キャップが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の内視鏡用キャップは、洗浄液の噴出口が1つであるため、1方向のみから患部を洗浄しなければならない。しかしながら、患部はある程度広がりを持っていることが多く、1方向のみからでは洗浄が難しく、洗浄作業に熟練を要するという不具合があった。
【特許文献1】特許第3790866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点に鑑み、容易に患部を洗浄することができる内視鏡用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、内視鏡の先端に外嵌される筒状本体と、該筒状本体に接続され患部を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給用チューブとを備える内視鏡用キャップにおいて、前記筒状本体には、周壁内に前記洗浄液供給用チューブから供給された洗浄液が周方向に流れる周方向流路が形成され、且つ洗浄液が噴出される噴出口が前記周方向流路に連通させて複数設けられていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、洗浄液供給用チューブにより供給される洗浄液が、筒状本体の周壁内に形成された周方向流路を介して複数の噴出口から噴出される。これにより、複数の方向から洗浄液を患部に向けて噴出させることができ、容易に患部を洗浄することができる。又、複数の洗浄液供給用チューブを設けることなく、1つの洗浄液供給用チューブを用いて複数の噴出口から洗浄液を噴出させるため、噴出口ごとに洗浄液供給用チューブを設けるものと比較して、洗浄液供給用チューブが絡まり難くなり、内視鏡用キャップの取り扱いが容易となる。
【0007】
又、筒状本体は、内視鏡の先端に外嵌される外嵌部と、外嵌部の先端に設けられ内視鏡の先端と患部との距離を一定に維持するための空間を形成する空間形成部とを有し、空間形成部の周壁に、空間形成部内に溜まった液体を排出するための貫通孔を形成することが好ましい。係る構成によれば、貫通孔により空間形成部内に溜まった洗浄液や血液等の液体を空間形成部外に排出することができる。これにより、内視鏡の視界を良好に保つことができる。
【0008】
又、筒状本体に、先方に開口する多目的チューブを接続することが好ましい。係る構成によれば、多目的チューブを利用して送風や吸引等を行うことができ、鉗子等を挿通させるチャネルを多く備える新たな内視鏡に買い換えることなく、現在使用している内視鏡を用いて低廉で容易にチャネル数を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の内視鏡用キャップの実施の形態を図1から図2を参照して説明する。図1は本実施形態の内視鏡用キャップを示す説明的断面図、図2は本実施形態の内視鏡用キャップを先端側から示す説明図である。
【0010】
本発明の実施形態の内視鏡用キャップ1は、内視鏡2の先端に着脱自在に外嵌される外嵌部31と、内視鏡2の先端から患部までの距離を一定に保ち、内視鏡2のチャネル内に挿入された鉗子等による治療や処置を行い易くするめの空間形成部32とを有する筒状本体3を備える。空間形成部32の内径は外嵌部31の内径よりも大きく形成されている。これにより、外嵌部31に固定される内視鏡2の視野が空間形成部32により狭められることなく、医療行為が行い易くなる。又、空間形成部32の周壁には径方向に貫通する一対の貫通孔32aが形成されている。
【0011】
空間形成部32の周壁内には環状の周方向流路4が形成されている。又、空間形成部32には周方向流路4に後方から連通するように挿入口41が設けられている。挿入口41には洗浄液を周方向流路4に供給する洗浄液供給用チューブ5が挿入され固着されている。洗浄液供給用チューブ5の基端にはシリンジ等と接続自在なコネクタ5aが設けられている。又、空間形成部32の先端縁には周方向流路4に連通する噴出口6(図2参照)が2箇所に設けられている。洗浄液供給用チューブ5から周方向流路4に供給された洗浄液は、この噴出口6から先方へ噴出する。尚、噴出口6は、先方へ噴出される洗浄液が径方向内方側に傾斜して噴出されるように傾斜させてもよい。
【0012】
又、内視鏡用キャップ1には、筒状本体3の周壁に形成した挿入口42に挿入して固着し先端を空間形成部32の内方に臨ませた多目的チューブ7が設けられている。
【0013】
次いで、本実施形態の内視鏡用キャップ1の使用方法について説明する。
【0014】
まず、内視鏡用キャップ1の外嵌部31を内視鏡2の先端に外嵌させる。洗浄液供給用チューブ5及び多目的チューブ7は、内視鏡2の外周面にテープ等で固定する。そして、患者の口等の体孔から内視鏡2を体内へ挿入する。内視鏡2の先端が患部に近づいたら、洗浄液供給用チューブ5から洗浄液を周方向流路4に供給し、噴出口6から患部に向けて洗浄液を噴出させる。洗浄液は2つの噴出口6から噴出させるため、医療従事者は容易に患部を洗浄液で洗浄することができる。又、多目的チューブ7を用いて空気を送り、患部に空気を吹き付けて患部を洗浄してもよい。
【0015】
そして、内視鏡用キャップ1の先端を患部を包み込むように患部の周辺に押し付け、内視鏡2のチャネルに挿入された鉗子等により治療・処置を行う。空間形成部32により内視鏡2の先端と患部との距離が一定に維持されるため、医療従事者は患部の治療・処置を容易に行うことができる。このとき、空間形成部32内に血液や洗浄液等が溜まることがあるが、空間形成部32の周壁に形成された貫通孔32aから溜まった血液等を排出することができ、内視鏡2の視界を良好に保つことができる。又、多目的チューブ7を用いて、空間形成部32内に溜まった血液等を吸引させてもよい。
【0016】
本実施形態の内視鏡用キャップ1によれば、複数の方向から洗浄液を患部に向けて噴出させることができ、容易に患部を洗浄することができる。又、複数の洗浄液供給用チューブを設けることなく、1つの洗浄液供給用チューブ5を用いて複数の噴出口6から洗浄液を噴出させるため、噴出口ごとに洗浄液供給用チューブを設けるものと比較して、洗浄液供給用チューブが絡まり難くなり、内視鏡用キャップの取り扱いが容易となる。
【0017】
又、内視鏡用キャップ1に多目的チューブ7が設けられているため、鉗子等を相通させるチャネルを多く備える新たな内視鏡に買い換えることなく、現在使用している内視鏡2を用いて低廉で容易にチャネル数を増加させることができる。
【0018】
尚、本実施形態においては、噴出口6が2つ設けられたものについて説明したがこれに限られず、3つ以上であってもよい。又、本実施形態においては、周方向流路4として環状のものを説明したが、周方向流路4は環状でなくてもよく、例えば、円弧状に形成してもよい。
【0019】
又、本実施形態においては、筒状本体3として空間形成部32を備えるものを説明したが、筒状本体3は空間形成部32を備えていなくてもよく、これによっても本発明の「患部を容易に洗浄することができる」という効果を奏することができる。この場合、周方向流路4は、外嵌部31の周壁内に形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の内視鏡用キャップを示す説明的断面図。
【図2】本実施形態の内視鏡用キャップを先端側から示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1…内視鏡用キャップ、 2…内視鏡、 3…筒状部材、 31…外嵌部、 32…空間形成部 32a…貫通孔、 4…周方向流路、 41,42…挿入口、 5…洗浄液供給用チューブ 5a…コネクタ、 6…噴出口、 7…多目的チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端に着脱自在に外嵌される筒状本体と、該筒状本体に接続され患部を洗浄する洗浄液を供給する洗浄液供給用チューブとを備える内視鏡用キャップにおいて、
前記筒状本体には、周壁内に前記洗浄液供給用チューブから供給された洗浄液が周方向に流れる周方向流路が形成され、且つ洗浄液が先方へ噴出される噴出口が前記周方向流路に連通させて複数設けられていることを特徴とする内視鏡用キャップ。
【請求項2】
前記筒状本体は、内視鏡の先端に外嵌される外嵌部と、該外嵌部の先端に設けられ内視鏡の先端と患部との距離を一定に維持するための空間を形成する空間形成部とを有し、
前記空間形成部の周壁に、該空間形成部内に溜まった液体を排出するための貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用キャップ。
【請求項3】
前記筒状本体に、先方に開口する多目的チューブが接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のうち何れか1項に記載の内視鏡用キャップ。

【図1】
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【図2】
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