説明

内視鏡用フード

【課題】内視鏡用フードとして、外面に凹凸部等がなく、また分離される複数の部品を使用することなく、外径の異なる挿入部に装着可能で、装着状態では強固に固定できるようにする。
【解決手段】外面が段差や凹凸部等のない平滑な円筒面形状となった内視鏡用フード10は円筒形状のフード本体部11と、このフード本体部11に連設されている薄肉化部12とからなり、薄肉化部12の内面には可撓容袋部13が装着される。厚肉部14を貫通するように逆止弁20を設けた給気口部材16が設けられ、挿入部1の先端硬質部2を薄肉化部12内に挿入して、加圧空気供給ノズル17から加圧空気を導入し、可撓容袋部13を内向きに膨出変形させて、可撓容袋部13は先端硬質部2に密着するので、外径寸法の異なる挿入部1であっても、所定の寸法形状の内視鏡用フード10を装着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用等として用いられる内視鏡において、その挿入部の先端部に着脱可能に装着される内視鏡用フードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部を体腔内に挿入して、体腔内壁を観察したり、所定の処置を行ったりするが、内視鏡用フードは、この挿入部の先端を体腔内壁から離間させる等のために、挿入部の先端に着脱可能に装着されるものである。そして、この内視鏡用フードは挿入部の先端から所定の長さ突出するようにして装着される。このフードは、挿入部を被検者の体腔内に挿入する前の段階で、予め挿入部の先端に装着しておくことになる。そして、観察対象部や処置対象部に挿入されると、フードの先端を体腔内壁に当接させる。このときに、体腔内壁にフードが押し当てられても、変形したり、位置ずれしたりしないようにするために、このフードの本体部は硬質部材、具体的には硬質プラスチックから構成されるのが一般的である。
【0003】
挿入部に装着した内視鏡用フードは、挿入部が体腔内に挿入された後、体腔内から引き出されるまでは装着状態に確実に保持され、途中で脱落しないように保持しなければならない。このために、挿入部にフードを装着した状態で固定するための手段を備える必要があるが、内視鏡の挿入部における先端部にはフードを固定するための機構を備えていない。
【0004】
以上のことから、円環状に形成した弾性部材等からなる固定部材によって、硬質部材で構成したフードを挿入部の先端部に固定する構成としたものが、特許文献1に開示されている。ただし、この特許文献1では、フードは挿入部に対してほぼ密嵌状に嵌合されており、しかも固定部材は挿入部の外面に密着させている。従って、このフードは一定の外径を有する挿入部に装着可能であり、外径の異なる挿入部には装着できないか、装着できたにしても、容易に脱落する可能性がある。つまり、フードの本体部と固定部材とからなる内視鏡用フードは、一定の寸法形状を有する挿入部をもった内視鏡に対する専用のものとなり、一定の外径を有する挿入部に装着可能なものであり、外径がそれより大きい挿入部はもとより、外径が小さい挿入部に適用できない。
【0005】
異なる外径を有する挿入部に適用可能な内視鏡用フードが、例えば特許文献2に示されている。この特許文献2による内視鏡用フードは、フードの本体部に連結される固定部材として、弾性変形可能な弾性部材からなる内径可変部となし、この内径可変部はフード本体部から離れるに応じて厚肉化させた上下のフラップから構成としたものであり、その外周部に操作リングを嵌合させるように構成している。これによって、操作リングを軸線方向に移動させると、内径可変部の内径が変化することになる。従って、フード本体部を挿入部から突出させて、内径可変部の部位を挿入部の先端部分に嵌合させ、この状態で操作リングを挿入部側に移動させることによって、内径可変部が圧縮されて、挿入部の外面に圧接されるようにしている。
【特許文献1】特開平8−131397号公報
【特許文献2】特開2002−545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献2の内視鏡用フードにあっては、操作リングで弾性部材からなる内径可変部を圧縮させることから、この操作リングは硬質リングで構成されており、内径可変部を構成するフラップの外面から突出している。そして、内径を拡縮することから、内径可変部を構成する上下のフラップ間には、径差を吸収するための切り欠き部が形成されている。従って、内視鏡用フードの挿入部への嵌合部分は、操作リングにより円環状の突出部が形成され、かつ両フラップ部間に形成した切り込み部により隙間が形成されている等、外面が凹凸のある形状となっている。このために、フードを装着した挿入部を体腔内に挿入する際に、硬質部材からなる操作リングのエッジ部分で体腔内壁を傷つけたり、凹凸部に体腔内壁を挟み込んだりする可能性がある。
【0007】
しかも、この操作リングは内径拡縮部に対して取り外し可能な構成となっている。この内視鏡用フードを再使用する際には、内視鏡用フードは、内視鏡と共に洗浄及び消毒しなければならず、このためにフードを挿入部から取り外すことになるが、このときには操作リングも取り外される。ここで、操作リングは小型の部品であり、洗浄作業を行っている間や保管中等において紛失する可能性もある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、外面に凹凸部等がなく、また分離される複数の部品を使用することなく、外径の異なる挿入部に装着可能で、装着状態では強固に固定できる内視鏡用フードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明は、内視鏡の挿入部の先端に装着される内視鏡用フードであって、円筒形状の部材からなるフード本体部と、前記フード本体部の基端側内周面を薄肉化させることにより形成した薄肉化部と、前記薄肉化部内に設けられ、前記挿入部が挿入された状態で、内部に流体を封入して膨出させることによって、前記挿入部の先端部分を止着する可撓容袋部とから構成としたことを特徴とするものである。
【0010】
フード本体部は硬質プラスチックで構成することができるが、用途等によっては、弾性を有する部材で形成することも可能である。フード本体部と薄肉化部とはそれぞれ別部材で形成して連結するか、または一体的なものとして構成する。少なくともフード本体部は透明部材から構成することができ、またフード本体部及び薄肉化部からなる全体を透明なプラスチック材で形成しても良い。薄肉化部には可撓容袋部が装着されるが、可撓容袋部は好ましくはシート状の弾性部材で構成する。フード本体部及び薄肉化部を透明プラスチックで形成したとしても、可撓容袋部は透明部材で形成することも可能ではあるが、可撓容袋部は内視鏡の挿入部の先端部分が挿入されているので、必ずしも透明部材とする必要はない。
【0011】
内視鏡の挿入部は薄肉化部内に挿入されることになり、フード本体部の内部にまで進入させる必要はない。この薄肉化部の内径は内視鏡の挿入部の外径より大きいものとする。そして、挿入部は薄肉化部内に挿入可能であれば、その外径寸法が異なるものにも内視鏡用フードが装着可能となる。挿入部を挿入した状態で、可撓容袋部内に流体圧を供給することによって、その間が強固に固定することができ、体腔内に挿入している間に内視鏡用フードが脱落するおそれはない。
【0012】
可撓容袋部は円環状となったものから構成することができ、また複数個所に分割配置するように構成することができる。分割配置する場合には、円周方向に等間隔で3箇所乃至4箇所程度とするのが望ましい。フード本体部に連設した薄肉化部において、可撓容袋部を装着されている部位に挿入部を挿入させておき、その後に可撓容袋部内に流体を封入する。ここで、可撓容袋部内に封入される流体は気体であっても、液体であっても良いが、加圧状態で封入される気体の方が重力の影響を受けないこと等の点で望ましい。流体、特に気体を封入するために、給排部を設けるが、この給排部はフード本体部の端面または可撓容袋部に形成される。給排部は可撓容袋部の内部と外部とを連通する流体供給用の通路を有するものとするが、流体を供給した後は、この通路を閉鎖しなければならない。流体供給路に着脱可能な栓部材を設けることができ、また流体を可撓容袋部内に向けて供給することはできるが、逆流を防止する逆止弁を装着する構成としても良い。逆止弁を設ける場合には、排気ができない。従って、内視鏡用フードを再使用する場合には、可撓容袋部内の滞留流体を排除する必要がある。このために、排気用の弁部材を別途設けて、可撓容袋部を収縮させた状態で内視鏡用フードの全体を洗浄及び消毒することになる。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の内視鏡用フードは、外径の異なる複数種類の挿入部に装着されて、極めて安定した状態で固定でき、かつ実質的に単一の部材から構成されているので、挿入部に装着されないときに、分離する部品を用いることがなく、さらに挿入部に装着した状態では、その外面は凹凸部のない円筒面となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1に内視鏡用フードを挿入部に装着した内視鏡の構成を、また図2には内視鏡フードと内視鏡の挿入部とを分離した状態を示す。図中において、1は内視鏡の挿入部であり、この挿入部1の先端硬質部2には照明部と観察部とからなる内視鏡観察手段が設けられており、また鉗子等の処置具を導出するための処置具導出部等も設けられている。そして、先端硬質部2には湾曲部3が連設されており、さらに湾曲部3の基端側は軟性部となり、軟性部は本体操作部に連結されている。なお、内視鏡の構成については、従来から周知であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0015】
次に、10は内視鏡用フードであって、この内視鏡用フード10は円筒形状のフード本体部11と、このフード本体部11に連設されている薄肉化部12とから構成されており、薄肉化部12の内面には可撓容袋部13が装着されている。薄肉化部12はフード本体部11に対して内面側を薄肉化したものであり内周面に段差を有する構成となっている。一方、薄肉化部12の外径はフード本体部11の外径と同じ寸法となっており、従って内視鏡用フード10の外面側は段差や凹凸部等のない平滑な円筒面形状となっている。ここで、内視鏡用フード10を構成するフード本体部11と薄肉化部12とは一体に形成されており、好ましくは透明な硬質プラスチックで形成される。
【0016】
薄肉化部12の内面部に装着した可撓容袋部13は、円環状に形成したゴムシート等、シート状の弾性部材から構成されており、その一端側には厚肉部14が形成されている。可撓容袋部13は、その先端部がフード本体部11における薄肉化部12への移行部に、可撓容袋部13の厚み寸法乃至それ以上の段差15が形成されており、この段差15の部位に可撓容袋部13の端部が接着剤等を用いて強固に固着されている。また、厚肉部14は薄肉化部12の端部位置にやはり接着剤を用いて固着されている。ここで、挿入部1が挿入されるのは薄肉化部12の部位であり、この挿入部1の先端はフード本体部11の直前の位置まで挿入されることになる。従って、この可撓容袋部13は透明部材で形成する必要はない。
【0017】
図2に示したように、内視鏡用フード10におけるフード本体部11の内径をD1,薄肉化部12に装着されている可撓容袋部13を装着した厚肉部14の部位の内径をD2としたときに、挿入部1における先端硬質部2の外径寸法D3は、厚肉部14の内径D2より小さくなっていなければならないが、フード本体部11の内径D1より小さいサイズであっても、また内径D1より大きくなっていても良い。そして、図3乃至図5に示したように、厚肉部14には給気口部材16が設けられている。
【0018】
給気口部材16には、図5から明らかなように、ノズルヘッド17aに空気配管17bを接続した加圧空気供給ノズル17が装着となっている。給気口部材16は、厚肉部14を貫通するように装着した筒状の本体部16aを有し、この本体部16aには加圧空気供給ノズル17のノズルヘッド17aを挿入させる接続部18が形成されている。そして、接続部18と可撓容袋部13の内部との間には、流通路19が複数本設けられている。さらに、これらの流通路19は逆止弁20により開閉可能となっている。図4及び図5に示したように、逆止弁20は各流通路19を閉鎖する弁部20aを有するものであり、加圧空気供給ノズル17から加圧空気を供給して流通路19側の圧力が可撓容袋部13の内部の圧力より高くなると、図5に示したように、この弁部20aが弾性変形して流通路19を開放し、可撓容袋部13の内部に加圧空気を供給できるようになっている。
【0019】
さらに、図6に示したように厚肉部14には排気部材21が設けられている。排気部材21には排気通路22が設けられており、可撓容袋部13内の圧力が高い状態では、シール部材23により排気通路22を閉鎖している。そして、シール部材23には操作棒24が連結して設けられており、この操作棒24を可撓容袋部13側に押し込むと、シール部材23が排気通路22から離間することになり、その結果、可撓容袋部13の内部が大気と連通することになり、内部の圧力が開放されるようになっている。
【0020】
以上の構成を有する内視鏡用フード10は内視鏡の挿入部1に着脱可能に装着される。ここで、内視鏡用フード10が装着可能な挿入部1は、可撓容袋部13に挿入可能な外径であれば良く、この内視鏡用フード10を複数の異なる寸法の挿入部に装着したときにも、みだりに脱落しないように強固に固定できるように構成されている。
【0021】
即ち、内視鏡用フード10を、可撓容袋部13内に空気を供給しない状態にして、挿入部1に嵌合させる。ここで、内視鏡用フード10のうち、可撓容袋部13が設けられている薄肉化部12を先端硬質部2に嵌合させるようにする。挿入部1の先端硬質部2は内視鏡用フード10の可撓容袋部13を装着した部位の内径より小さい外径を有するものであるから、この可撓容袋部13の部位は先端硬質部2に容易に嵌合させることができ、遊嵌状態となる。
【0022】
そこで、可撓容袋部13内に加圧空気を供給する。即ち、図5に示したように、給気口部材16における接続部18に加圧空気供給ノズル17のノズルヘッド17aを接続し、この加圧空気供給ノズル17から加圧空気を供給する。可撓容袋部13の外面側は硬質部材からなる薄肉化部12に設けられているので、加圧空気の供給圧力により可撓容袋部13が内向きに膨出変形する。その結果、可撓容袋部13は先端硬質部2に密着する。
【0023】
ここで、可撓容袋部13の肉厚を厚くする等によって、ある程度腰を持たせるようにすると、可撓容袋部13の全周にわたってほぼ均等に膨出することになって、先端硬質部2を内視鏡用フード10に対して調芯された状態になる。そして、可撓容袋部13の内部を高圧にすることによって、挿入部1における先端硬質部2の外面への密着性が高くなり、内視鏡用フード10が強固に固定される。特に、可撓容袋部13の外面の摩擦係数を大きくすることによって、より強固に固定されるようになる。
【0024】
以上のようにして内視鏡用フード10が挿入部1に装着されるが、挿入部1の先端硬質部2が可撓容袋部13を設けた薄肉化部12の内部に挿入できる外径であることを条件として、サイズの異なる挿入部を有する内視鏡に装着することができる。即ち、大きな外径の挿入部に装着する場合には、可撓容袋部13の膨出量が小さくなり、小さい外径の挿入部に装着する場合には、可撓容袋部13を大きく膨出させることによって、いずれも挿入部の外周面に密着させることができる。そして、装着された内視鏡用フード10は挿入部1の先端硬質部2に強固に固定され、挿入部1を体腔内に挿入して、観察や処置等を行っている間に内視鏡用フード10が脱落することはない。
【0025】
内視鏡用フード10の外周面には何らの部材も設けられておらず、また凹凸も有さず、全周が均一で平滑な円筒面形状となっている。従って、内視鏡用フード10を装着した状態で挿入部1の体腔内への挿入操作の操作性が良好となり、挿入経路に傷を付ける等のおそれはない。そして、挿入部1が所定の検査や治療等を行うべき部位にまで到達すると、フード本体部11の先端を体腔内壁に当接させる。これによって、挿入部1の先端面は体腔内壁から離間した状態に保たれ、このために観察手段による観察を行うことができ、また処置具導出部を体腔内壁から離間した状態に保持されるので、鉗子や高周波処置具等を用いて行う処置や細胞の採取等も円滑に行うことができる。ここで、観察手段による体腔内を観察する際には、照明部からの照明光の照射が必要となるが、なくともフード本体部11を透明な硬質プラスチックから構成した場合には、挿入部1の先端部分の安定が図られ、照明部から明るい照明を行うことができる。
【0026】
内視鏡による検査や処置等の操作が終了して、挿入部2を体腔内から取り出した後には、挿入部2と内視鏡用フード10とを分離する。このために、排気部材21の操作棒24を押し込むように操作する。これによって、シール部材23が排気通路22から離間して、この排気通路22が開放されて、可撓容袋部13内の加圧空気が排出される。従って、可撓容袋部13が収縮状態となり、先端硬質部2の外面への密着が解除される。その結果、挿入部1を薄肉化部12から引き出すことができ、挿入部2と内視鏡用フード10との間を分離できるようになる。
【0027】
なお、内視鏡用フード10を繰り返し使用する場合には、使用後にはこの内視鏡用フード10の全体を洗浄しなければならない。このときに、給気口部材16及び排気部材21の内部が汚損されていると、その部分の洗浄が困難になるために、挿入部1を体腔内に挿入する前の段階では、図示しない栓部材により閉鎖しておくのが望ましい。
【0028】
ここで、給気口部材としては、図4等に示したもののほか、図7に示した構成のものとすることもできる。同図に示した給気口部材30は、硬質の筒状部材から構成され、その先端に可撓容袋部13内に突出するようにして逆止弁部31が設けられている。逆止弁部31には、給気口部材30の内部空間と連通する流路32が形成されており、この流路32には複数の流出通路33が連通しており、これらの流出通路33には、可撓容袋部13内に臨む側に弾性部材からなる弁部34が装着されている。従って、流路32側が可撓容袋部13内より高い圧力になると、図7に仮想線で示したように、弁部34が開くようになって、可撓容袋部13内に圧力が供給されて、この可撓容袋部13を膨出させることができるようになる。
【0029】
次に、図8に本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態では、内視鏡用フード40をフード本体部41と薄肉化部42とから構成し、これらは硬質プラスチックで形成したものであり、薄肉化部42には可撓容袋部43が装着されている。以上の点については前述した第1の実施の形態と同様である。可撓容袋部43には、流体給排チューブ44が接続されており、この流体給排チューブ44の他端は、内視鏡の挿入部1に沿って延在されて、挿入部1に連結して設けた本体操作部4の近傍部位まで延在されている。そして、流体給排チューブ44の他端には、流体供給手段としてのシリンジ45に接続する構成としている。
【0030】
シリンジ45には可撓容袋部43を膨出変形させるための流体、空気等の気体または水等の液体を貯留しておく。従って、内視鏡用フード40を挿入部1に接続したときに、この可撓容袋部43内に流体を供給することにより膨出させて、挿入部1の外面に密着させるようにする。また、内視鏡用フード40を挿入部1から脱着する場合には、シリンジ45内に流体を回収する。
【0031】
ここで、可撓容袋部43に接続した流体給排チューブ44の先端部分を医療用テープ等により挿入部1の外周面に固着するのが望ましい。これによって、例えばシリンジ45側に流体が逆流する等により可撓容袋部43内の流体が減少して、この可撓容袋部43が挿入部1から離間したとしても、内視鏡用フード40が挿入部1から脱落することなく体腔内から回収することができる。
【0032】
さらに、図9及び図10に本発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態における内視鏡用フード50も、フード本体部51と薄肉化部52とから構成されているが、薄肉化部52に装着される可撓容袋部53としては、円周方向の内向きに開口する4箇所の凹部54を有するリング状部材55と、このリング状部材55の内面の全周にわたって固着して設けた円筒形状の可撓膜56とから構成され、この可撓膜56によって各凹部54を閉塞させて、4箇所の空気圧チャンバを構成している。これによって、各凹部54内に加圧空気を供給すると、図9に仮想線で示したように、可撓膜56が内向きに膨出変形することになる。
【0033】
可撓膜56で閉塞されている各凹部54内に加圧空気を供給するために、これら各凹部リング状部材55には、図10に点線で示したように、相隣接する位置の凹部54を連通させるための連通路57が形成されている。また、内視鏡用フード40の薄肉化部52の端面側の部位には、第1の実施の形態で説明したと同様の給気口部材58と排気部材59とが装着されており、これら給気口部材58と排気部材59とはいずれかの凹部55と連通する構成としている。
【0034】
以上のように構成することによっても、前述した第1,第2の実施の形態と同様、外径寸法の異なる挿入部を有する内視鏡に内視鏡用フード50を共用することができる。そして、実際に挿入部の先端硬質部に当接するのは、可撓膜56の4箇所であり、かつこれら可撓膜56を内向きに膨出変形させる際に使用する流体は加圧空気であり、全ての凹部54は連通路57で連通しているので、可撓膜56には均等な圧力が作用することになる。従って、挿入部の中心軸線と内視鏡用フード50におけるフード本体部51のちゅうすいb軸線とを確実に一致させるようにして組み付けられる。そして、内視鏡用フード50を挿入部1に装着する際に行われる給気口部材58及びこの給気口部材58からの加圧空気の供給手段、また内視鏡の操作後に内視鏡用フード50を挿入部1から取り外すための排気部材59からの排気機構の構成については、第1の実施の形態と同様であるので、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明における第1の実施の形態を示すものであって、内視鏡の挿入部の先端部分に装着した内視鏡用フードの断面図である。
【図2】挿入部と内視鏡用フードとを分離した状態を示す図1と同様の断面図である。
【図3】図2の状態の内視鏡用フードの右側面図である。
【図4】内視鏡用フードの可撓容袋部に流体を供給するための給気口部材の構成を示す要部拡大断面図である。
【図5】給気口部材から流体を供給している状態を示す図4と同様の断面図である。
【図6】内視鏡用フードの可撓容袋部の内部から流体を排出する排気部材の構成を示す要部拡大断面図である。
【図7】図4の給気口部材に設けた逆止弁とは異なる逆止弁を設けた給気口部材の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示す内視鏡用フードを挿入部に装着した状態の構成説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態を示す内視鏡用フードの縦断面図である。
【図10】図9のX−X位置での断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 挿入部
2 先端硬質部
10,40,50 内視鏡用フード
11,41,51 フード本体部
12,42,52 薄肉化部
16,30,58 給気口部材
19 連通路
20,31 逆止弁
21,59 排気部材
21 排気部材
44 流体給排チューブ
45 シリンジ
54 凹部
55 リング状部材
56 可撓膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の挿入部の先端に装着される内視鏡用フードにおいて、
円筒形状の部材からなるフード本体部と、
前記フード本体部の基端側内周面を薄肉化させることにより形成した薄肉化部と、
前記薄肉化部内に設けられ、前記挿入部が挿入された状態で、内部に流体を封入して膨出させることによって、前記挿入部の先端部分を止着する可撓容袋部とから
構成としたことを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項2】
前記可撓容袋部は前記薄肉化部の内周面に円環状となるようにして設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡用フード。
【請求項3】
前記可撓容袋部は、円周方向に一定の間隔を開けて複数設ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡用フード。
【請求項4】
前記可撓容袋部または前記フード本体部の端面に前記可撓容袋部内への空気の給排部を設ける構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の内視鏡用フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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