説明

内視鏡用フード

【課題】狭窄部の開口径を正確に計測できるようにする。
【解決手段】内視鏡挿入部50の先端部52に装着される内視鏡用フード10であって、前記先端部52の外周面を覆うように嵌合する円筒状の嵌合固定部12と、先端に向かって先細となる円錐状に形成されるとともにその先端に開口22を有する透明部材からなるフード本体14と、を備え、前記フード本体14の側面(斜面部)24には、周方向の一部又は全体にわたって目盛り32A〜32Cが設けられている内視鏡用フード10を提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡の挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードに係り、特に小腸等の狭窄部のバルーン拡張術に適した内視鏡用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、クローン病などの小腸疾患に伴う小腸狭窄に対して内視鏡的バルーン拡張術(以下、単に「バルーン拡張術」という。)が行われている。バルーン拡張術では、内視鏡による観察画像(内視鏡画像)をモニタで観察しながら、内視鏡の挿入部に形成された処置具挿通路(鉗子チャンネル)を介して体腔内に挿入されたバルーンカテーテルを用いて狭窄部の拡張処置が実施される。この場合、バルーンカテーテルに挿通されたガイドワイヤーを狭窄部に誘導して通過させた後、バルーンカテーテルのバルーンをガイドワイヤーに沿わせて狭窄部に配置する。そして、バルーンを高圧で膨らませて狭窄部を拡張し、狭窄部の閉塞状態を解除する。また、複数の狭窄部が存在する場合には、次の狭窄部が確認される位置まで内視鏡の挿入部を挿入して、上記と同様にしてバルーン拡張術が実施される。
【0003】
ところで、従来のバルーン拡張術では、内視鏡の観察光学系の視野を確保するために、例えば図7に示すような円筒状の内視鏡用フード900を内視鏡の挿入部910の先端部に装着して手技が行われていた。しかしながら、以下の(1)〜(3)に示すようなときには、症例によっては容易に手技を完遂できない問題がある。
(1)狭窄部に炎症性ポリープが密生するなかで狭窄部の開口を探すとき
内視鏡用フードでポリープをよけて、狭窄部の開口を探そうとしても、内視鏡用フードの中にポリープが入り込んで十分に視野を得られない。ときにはポリープを損傷し出血を起こし、より視野が悪化する。
(2)ガイドワイヤーを狭窄部の中に誘導するとき
狭窄部の開口を内視鏡の視野内に捉えても、内視鏡の挿入部の先端面に形成される処置具導出口の軸と一致しなければ、ガイドワイヤーはわずかなズレのため狭窄部へ誘導されない。内視鏡の挿入部のアングル操作などでの軸合わせも、狭窄部直前の狭い腸管腔の中ではうまくいかないことが多い。
(3)バルーン拡張後の狭窄部に内視鏡を通過させるとき
複数の狭窄部に対して連続的にバルーン拡張術を行う場合、バルーン拡張によって閉塞状態が解除された狭窄部の中を内視鏡の挿入部を通過させて次の狭窄部が存在する位置まで挿入しなければならないが、内視鏡用フードの先端開口の縁部が抵抗となって通過が困難となることがある。
【0004】
一方、内視鏡の挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードとしては、これまでに様々な形状のものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
特許文献1には、狭窄部を押し広げて内視鏡の挿入部を容易に挿入できるようにするために、先端に向かって径が細くなるテーパ状のフード部を備えた内視鏡用フードが記載されている。
【0006】
特許文献2には、病変部の切除等の処置に用いられる内視鏡用フードが記載されている。このフードは、先端に向かって細く形成されており、その先端に挿入部の外径よりも小さい開口部を備えている。
【0007】
特許文献3には、人体の拍動等に影響されることなく、観察対象物をピントが合った状態で観察できるようにするために、フードの先端より所定距離Rの後方位置に、対物光学系のベストピント位置が設定され、さらにフードの内周面には前記距離Rの位置から後方に向けて所定ピッチ毎に目盛りが形成された内視鏡用フードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3485373号公報
【特許文献2】特開2002−332918号公報
【特許文献3】特開2002−119467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、バルーン拡張術後の効果判定のため、狭窄部の開口径(狭窄径)を正確に計測できるようにすることが強く要望されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1記載の内視鏡用フードには、フード先端部からの距離を示す目盛りがフード側面に形成されているが、この目盛りは狭窄径の計測を行うことができるものではない。
【0011】
また、特許文献2記載の内視鏡用フードは、特許文献1記載の内視鏡用フードと同様なテーパ状のフード部を備えているが、このフード部には目盛りは設けられておらず、狭窄径の計測を行うことはできない。
【0012】
また、特許文献3記載の内視鏡用フードは、円筒状のフードの内周面に目盛りが設けられているが、この目盛りはフード先端部からの距離を示すものであり、狭窄径の計測を行うことができるものではない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、狭窄部の開口径を正確に計測できる内視鏡用フードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明に係る内視鏡用フードは、内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードであって、前記先端部の外周面を覆うように嵌合する円筒状の嵌合固定部と、先端に向かって先細となる円錐状に形成されるとともにその先端に開口を有する透明部材からなるフード本体と、を備え、前記フード本体の側面には、周方向の一部又は全体にわたって目盛りが設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、先細形状のフード本体の側面(斜面部)には周方向の一部又は全体にわたって目盛りが形成されるので、内視鏡による観察画像を確認しながら、狭窄部の開口径を正確に計測することができる。
【0016】
本発明では、前記目盛りは、前記フード本体の軸方向の異なる位置に複数設けられていることが好ましい。これにより、狭窄部の開口径をより正確に計測することが可能となる。
【0017】
また本発明では、前記目盛りは、前記フード本体の側面に形成された溝部からなることが好ましい。これにより、フード本体に形成された目盛りに影響を受けることなく、内視鏡下で視野を十分に確保することが可能となる。
【0018】
また本発明では、前記フード本体は、ポリカーボネートで構成されることが好ましい。これにより、フード本体の先細形状の影響を受けることなく、内視鏡下で視野を十分に確保することが可能となる。
【0019】
また本発明では、前記フード本体の軸方向に垂直な面に前記目盛り及び前記開口を投影したとき、前記目盛りは前記開口と同心円の関係にある円に沿って形成されていることが好ましい。これにより、フード本体の開口と目盛りの相対的な大きさの関係から狭窄部の開口径を計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、先細形状のフード本体の側面(斜面部)には周方向の一部又は全体にわたって目盛りが形成されるので、内視鏡による観察画像を確認しながら、狭窄部の開口径を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内視鏡用フードと内視鏡の挿入部の先端部を示す斜視図
【図2】内視鏡用フードの詳細構成を示した図
【図3】内視鏡用フードを内視鏡の挿入部に装着した状態を示す断面図
【図4】バルーン拡張術の手順を示した概略図である。
【図5】内視鏡による観察画像を示した模式図である。
【図6】狭窄部の開口径を計測する方法の一例を示した図
【図7】従来の円筒状の内視鏡用フードを示した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係る内視鏡用フードの好ましい実施の形態について詳説する。
【0023】
図1は、本実施形態の内視鏡用フード10と、この内視鏡用フード10が装着される内視鏡の挿入部50の先端部52を示す斜視図である。また、図2は、内視鏡用フード10の詳細構成を示した図であり、(a)は内視鏡用フード10の平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)のA−A線に沿う断面図である。また、図3は、内視鏡用フード10を内視鏡の挿入部50の先端部52に装着した状態を示す断面図である。
【0024】
内視鏡の挿入部50は、被検者の体腔内に挿入される部分であり、その基端側は不図示の内視鏡手元操作部に接続される。そして、この手元操作部を操作することによって、先端部52の基端側に連設される湾曲部(不図示)が湾曲操作され、先端部52の先端面54が所望の方向に向けられる。
【0025】
図1に示すように、先端部52の先端面54には、観察窓56、照明窓58、58、送気・送水ノズル60、処置具導出口62が設けられる。
【0026】
観察窓56は、観察範囲の被写体光を取り込む光学系であり、その後方には不図示のプリズムを介してCCDが配設される。これにより、観察窓56から取り込まれた被写体光はCCDの受光面に結像して電気信号に変換され、この電気信号が外部のプロセッサ等に送信されてモニタに観察像が表示される。
【0027】
照明窓58、58は、観察範囲に照明光を照射するための光学系であり、観察窓56の両側に配置される。照明窓58の後方にはライトガイド(不図示)の出射端が配設されており、このライトガイドの入射端は外部の光源装置に接続される。これにより、光源装置からライトガイドを介して光を伝送し、照明窓58、58の前方を照射することができる。なお、照明窓58、58の後方にLED等の光源を設けてもよい。また、照明窓58は、複数に限定されるものではなく、一つであってもよい。
【0028】
送気・送水ノズル60は、観察窓56に向けて水又はエアを噴射するためのノズルであり、挿入部50内に挿通配置された送気・送水チューブ(不図示)に接続される。この送気・送水チューブは、外部の送気手段及び送水手段に接続されており、エア又は水が選択して供給される。よって、送気・送水ノズル60から観察窓56に向けてエア又は水を噴射することができる。これにより、送気・送水ノズル60から水を噴射して、観察窓56の表面に付着した汚れを払い落とすことができ、さらに、送気・送水ノズル60からエアを噴射して、観察窓56の表面に付着した水滴を払い落とすことができる。
【0029】
処置具導出口62は、後述するバルーンカテーテル、鉗子、高周波ナイフ、注射器等の内視鏡処置具を導出するための開口である。この処置具導出口62は、挿入部50内に挿通配置されたチューブを介して、手元操作部(不図示)の処置具導入口に連通される。これにより、手元操作部の処置具導入口から処置具導出口62までの処置具挿通路が形成される。したがって、処置具導入口から内視鏡処置具を導入することによって、処置具導出口62から内視鏡処置具を導出することができる。なお、処置具挿通路を途中で分岐して外部の吸引装置に接続し、処置具導出口62から体液等を吸引するようにしてもよい。
【0030】
一方、図1に示す内視鏡用フード10は、例えばポリカーボネート等の透明性の高い樹脂材料からなり、挿入部50の先端部52の外周面を覆うように嵌合される嵌合固定部12と、先端部52の先端面54から所定の長さ分だけ突出するフード本体14とから構成される。なお、本実施形態では、嵌合固定部12とフード本体14が一体的に構成されているが、これらは別体で構成されていてもよい。この場合、嵌合固定部12とフード本体14は接着剤等で接続される。
【0031】
嵌合固定部12は、略円筒状に形成されており、その外周面は均一な外径を有している。嵌合固定部12の外周壁の肉厚は、フード外径(すなわち、嵌合固定部12の外径)を最小限とするために十分に薄く構成されている。より好ましくは、嵌合固定部12の外周面と挿入部50の先端部52の外周面(嵌合固定部12により嵌合される部分を除く)が略面一となるように構成される。これにより、内視鏡用フード10が装着された挿入部50の先端部52を体腔内に挿入するとき、挿入抵抗と患者の苦痛を軽減することができる。
【0032】
また、嵌合固定部12の内側は、挿入部50の先端部52の形状に対応するように形成されており、基端側に形成される基端開口16の内径が最も大きく、基端開口16から先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮径部18と、縮径部18の最小内径と同一の内径を有する同径部20とから構成されている。また、嵌合固定部12の構成材料は透明な材料に限らず、半透明又は不透明な材料で構成されていてもよい。
【0033】
このように構成される嵌合固定部12を、図3に示すように、挿入部50の先端部52の外周面を覆うように外嵌させて、これらの外周をサージカルテープ等の固定手段64で固定することにより、挿入部50の先端部52に対して内視鏡用フード10を装着することができる。なお、嵌合固定部12がゴム等の弾性部材で構成される場合には、その弾性力によって嵌合固定部12が先端部52の外周面に密着して固定されるため、上記のような固定手段64での固定は不要となる。
【0034】
一方、フード本体14は、基端側から先端側にかけて径が徐々に小さくなる先細の円錐状(テーパ状)に形成されており、その先端側には、基端側よりも径の小さい先端開口22を備えている。
【0035】
フード本体14の各部の寸法としては、先端開口22の内径Bは4.0[mm](=1.25×A)、外径Cは6[mm](=1.5×B)となっている。また、フード本体14の斜面部24の傾斜角(挿入部50の先端面54に対する斜面部24の傾き角度)θは70−75[度]であり、フード本体14の軸方向長さLは6−8[mm]となっている。なお、内視鏡の最小チャンネル口径(処置具挿通路の最小径)Aは3.2[mm]である。
【0036】
ここで、上記の寸法を採用した理由について説明する。
【0037】
先端開口22の内径Bは、少なくとも内視鏡の挿入部50の先端部52の外径よりも小さく、且つ、挿入部50の最小チャンネル口径Aよりも大きく構成されていれば特に限定されるものではないが、先端開口22の内径Bが最小チャンネル口径Aに対して大きすぎると、それに伴って先端開口22の外径Cも大きくなるため、後述のブジー効果の減少を招く要因となる。一方、先端開口22の内径Bが最小チャンネル口径Aに対して小さすぎると、処置具導出口62(図1参照)から導出された内視鏡処置具を先端開口22から出し入れするときの操作性が悪化する要因となる。また、バルーン拡張術が行われた後のバルーンを体腔外に抜去するときの操作性が悪化する要因となる。これは、拡張後に虚脱させたバルーンの表面はくしゃくしゃとなり、バルーン拡張前のきれいに畳まれている状態のバルーンに比べて先端開口22を通じてバルーンを体腔外に抜去するときの抵抗が大きくなってしまうためである。また、先端開口22の内径Bが小さすぎる場合には、挿入部50の先端面54に配置される構成部品(観察窓56、照明窓58、送気・送水ノズル60、処置具導出口62など)がフード本体14の基端部29と干渉が生じる要因となる。これらの点を考慮すると、先端開口22の内径Bは、内視鏡の最小チャンネル口径Aに対して1.1倍以上1.5倍以下(好ましくは1.2倍以上1.3倍以下、さらに好ましくは1.25倍)であることが好ましい。
【0038】
また、先端開口22の外径Cは、バルーン拡張術において内視鏡のブジー効果(先細りの形状を押し込むことによって狭窄部を機械的に拡げる効果)を得るためには小さい方が望ましいが、上述のように先端開口22の内径Bはある程度の大きさを確保することが必要である。一方、先端開口22の内径Bに対して先端開口22の外径Cが小さすぎると、フード本体14の斜面部24の薄肉化によって強度の低下を招き、内視鏡用フード10として機能を果たさなくなる可能性がある。これらの点を考慮すると、先端開口22の外径Cは、先端開口22の内径Bに対して1.3倍以上1.7倍以下(好ましくは1.4倍以上1.6倍以下、より好ましくは1.5倍)であることが好ましい。
【0039】
また、フード本体14の斜面部24の傾斜角θは小さすぎると、処置具導出口62から導出された内視鏡処置具との干渉が強くなり、内視鏡用フード10が挿入部50の先端部52から脱落しやすくなる要因となる。一方、フード本体14の斜面部24の傾斜角θが大きすぎると、フード本体14の先端側の尖がりが強くなるのでブジー効果は大きくなるものの、フード本体14の軸方向長さLが長くなりすぎてしまい、内視鏡用フード10が装着されたときの挿入部50の小回りが制限されてしまい、操作性が悪化してしまう要因となる。これらの点を考慮すると、フード本体14の斜面部24の傾斜角θは、70度以上75度以下であることが好ましい。
【0040】
また、フード本体14の先端開口22の外側及び内側の開口端(エッジ部)26、28は、それぞれ所定の曲率半径(例えば3mm)で円弧状にR加工されている。これにより、内視鏡用フード10が装着された内視鏡の挿入部50を体腔内に挿入するとき、フード本体14の先端開口22による粘膜損傷を防止することができる。
【0041】
また、嵌合固定部12とフード本体14とが接続される内側のエッジ部30は、所定の曲率半径(例えば3mm)で円弧状にR加工されている。これにより、エッジ部30が直角に加工されている場合に比べて強度を高くすることができ、内視鏡用フード10の折れ曲がりや破損が防止されている。
【0042】
ところで、本実施形態の内視鏡用フード10には、図1又は図2に示すように、狭窄部の開口径を計測するための指標として複数の目盛り32A〜32Cが設けられている。各目盛り32A〜32Cは、例えばけがき等の加工方法によってフード本体14の斜面部24の外周面24aの周方向に沿って形成された溝部からなるものである。
【0043】
具体的には、フード本体14の軸方向に沿って先端側から基端側に向かって、第1の目盛り32A、第2の目盛り32B、第3の目盛り32Cが順に設けられている。そして、各目盛り32A〜32Cは、フード本体14の軸方向の各位置において、それぞれフード本体14の斜面部24の外周面24aの周方向に沿って所定長さを有する円弧状の溝部が所定角度(本例では90度)毎に複数形成されている。
【0044】
換言すれば、各目盛り32A〜32Cは、それぞれ所定の大きさの円34A〜34C(図2(a)にて破線で図示)に沿って形成されている。各34A〜34Cと先端開口22は同心円の関係にあり、これらの中心は内視鏡用フード10(フード本体14)の中心軸と一致するようになっている。また、各円34A〜34Cの大きさは、それぞれの直径をD1、D2、D3とすると、次式D1<D2<D3の関係が成り立つようになっている。これらの寸法は特に限定されるものではないが、例えばD1=7mm、D2=8mm、D3=9mmとなっている。
【0045】
次に、内視鏡用フード10を装着した内視鏡の操作方法について、図4及び図5に従って説明する。図4は、バルーン拡張術の手順を示した概略図である。図5は、内視鏡による観察画像を示した模式図である。ここでは、小腸内に2つの狭窄部70、72が存在する場合を一例に説明するが、小腸に限らず、大腸などの消化管に形成された狭窄部にも同様に適用することができる。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、内視鏡の挿入部50の先端部52に内視鏡用フード10を装着し、この挿入部50を小腸内に挿入する。そして、内視鏡による観察画像によって第1の狭窄部70を確認する。このとき、図5(a)に示すようにフード本体14には目盛り32A〜32Cが設けられるため、第1の狭窄部70とフード本体14の先端開口の中心位置を略一致させることにより、第1の狭窄部70の開口径を計測することができる。図5(a)に示した例では、第1の狭窄部70の開口径は、先端開口22の内径(4mm)よりも小さく、第1の狭窄部70と先端開口22及び各目盛り32A〜32Cの大きさを相対的に比較することにより、例えば約2mmと判断される。
【0047】
次に、図4(b)に示すように、内視鏡の手元操作部の処置具導入口から処置具挿通路内にバルーンカテーテル74を挿入する。そして、内視鏡による観察画像を確認しながら、バルーンカテーテル74の先端を処置具導出口から導出した後、バルーンカテーテル74内に挿通されたガイドワイヤー76をバルーンカテーテル74の先端から導出して、該ガイドワイヤー76を誘導して第1の狭窄部70内を通過させる。このときの観察画像の様子を図5(b)に示す。このとき、内視鏡用フード10のフード本体14は先端先細となる円錐状(テーパ状)に構成されるため、第1の狭窄部70とフード本体14の先端開口の中心位置を略一致させておくことにより、ガイドワイヤー76はフード本体14の内周面に沿って案内され、第1の狭窄部70に対してガイドワイヤー76を容易に通過させることができる。
【0048】
次に、図4(c)に示すように、バルーンカテーテル74のバルーン78をガイドワイヤー76に沿わせて第1の狭窄部70に配置する。そして、図4(d)に示すように、出血などの異常がないことを観察画像で確認しながら、第1の狭窄部70に配置されたバルーン78を高圧で段階的に膨らませて第1の狭窄部70を拡張する。このようにして第1の狭窄部70が十分に拡張されたことを観察画像で確認した後、バルーン78を収縮させてから、フード本体14の先端開口22から内視鏡内にバルーン78とガイドワイヤー76を引き込む。このときの観察画像の様子を図5(c)に示す。図5(c)に示した例では、閉塞状態が解除された第1の狭窄部70´の開口は第2の目盛り32Bによって規定される円の大きさと略等しいことから、第1の狭窄部70´の開口径は約8mmと判断される。
【0049】
次に、図4(e)に示すように、第2の狭窄部72が観察画像で確認される位置まで挿入部50を挿入する。このとき、閉塞状態が解除された第1の狭窄部70´を挿入部50が通過することになるが、挿入部50の先端部52には円錐状のフード本体14を備えた内視鏡用フード10が装着されるため、拡張後の第1の狭窄部70´の開口径が挿入部50の外径より小さい場合であっても、第1の狭窄部70´を押し広げながら狭窄部40を機械的に拡げるブジー効果によって挿入部50を容易に挿入することが可能となる。このようにして、第2の狭窄部72が存在する位置まで挿入部50を挿入した後、第1の狭窄部70と同様の処置を繰り返し実行する。
【0050】
拡張前又は拡張後の狭窄部の開口径を計測する方法として、例えば図6(a)に示すようにフード本体14の先端の一部を狭窄部80に挿入して、フード本体14の斜面部24に狭窄部80の開口端80aを押し付けた状態で計測することが好ましい。このとき、図6(b)に示すように、内視鏡による観察画像にはホワイトリング82(フード本体14の斜面部24を狭窄部80の開口端80aに当接させたとき、腸管粘膜の虚血によって狭窄部80の開口に沿って描かれるリング状の模様のこと)が狭窄部80の開口径に応じて形成されるので、各目盛り32A〜32Cを用いてホワイトリング82の大きさを計測することにより、結果的にホワイトリング82の内径に相当する狭窄部80の開口径を求めることができる。内視鏡による観察画像から狭窄部の開口径を直接計測することが困難な場合に好適な計測方法である。
【0051】
このように本実施形態の内視鏡用フード10によれば、先端に向かって先細となる円錐状のフード本体14の斜面部24には、軸方向の位置が互いに異なる複数の目盛り32A〜32Cが形成されている。各目盛り32A〜32Cは、フード本体14の軸方向の各位置において、周方向の一部又は全体にわたって形成されている。これにより、内視鏡による観察画像を確認しながら、各目盛り32A〜32Cと狭窄部の開口の大きさを相対比較することにより、狭窄部の開口径を正確に計測することができる。
【0052】
フード本体14の構成材料としては、内視鏡下で視野を妨げない程度の透明な材料であれば特に限定されるものではないが、人体への安全性を考慮しつつ、透明性を十分に確保可能な材料として、本実施形態で用いられているポリカーボネートが好適である。塩化ビニルのような半透明な材料で構成される場合に比べて、フード本体14の先細形状に左右されることなく、内視鏡下で十分な視野を確保することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態の内視鏡用フード10によれば、フード本体14が先端に向かって先細となる円錐状に構成されるため、狭窄部に炎症性ポリープが密生するなかで狭窄部の開口を探すときでも、フード本体14でポリープをよけることができるので、狭窄部の開口を探しやすく、フード本体14の中にポリープが入り込んで視野を妨げることがない。また、フード本体14の先端開口22と狭窄部の位置合わせを行うことにより、内視鏡の処置具導出口から導出された内視鏡処置具を狭窄部の中に容易に誘導することが可能となる。さらに、複数の狭窄部に対して連続的にバルーン拡張術を行う場合でも、バルーン拡張によって閉塞状態が解除された狭窄部の中を内視鏡の挿入部を容易に通過させることが可能となり、ブジー効果も期待できる。
【0054】
なお、本実施形態では、フード本体14に形成される各目盛り32A〜32Cは、例えばけがき等の加工方法で形成された透明な溝部からなるものであるが、これに限定されず、例えば印刷等の方法で形成された不透明なパターンで構成されていてもよい。ただし、本実施形態のように透明な溝部からなる態様が好ましく、不透明なパターンで構成される場合に比べて、内視鏡下で目盛りが視野に与える影響を効果的に排除することができる。
【0055】
また本実施形態では、フード本体14には3つの目盛り32A〜32Cが形成されているが、目盛りの数は特に限定されるものではなく、2つ以下でもよいし、4つ以上の目盛りが形成されていてもよい。
【0056】
また本実施形態では、各目盛り32A〜32Cは、フード本体14の斜面部24の外周面24aの周方向の一部にわたって形成された複数の円弧状の溝部から構成されるが、これに限らず、周方向全体にわたって形成された円状の溝部から構成されていてもよい。また、各目盛り32A〜32Cは、フード本体14の斜面部24の外周面24aではなく内周面24bに形成されていてもよい。
【0057】
以上、本発明の内視鏡用フードについて詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
10…内視鏡用フード、12…嵌合固定部、14…フード本体、16…基端開口、22…先端開口、24…斜面部、32A〜32C…目盛り、50…挿入部、52…先端部、54…先端面、56…観察窓、62…鉗子導出口、70、72…狭窄部、74…バルーンカテーテル、76…ガイドワイヤー、78…バルーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端部に装着される内視鏡用フードであって、
前記先端部の外周面を覆うように嵌合する円筒状の嵌合固定部と、
先端に向かって先細となる円錐状に形成されるとともにその先端に開口を有する透明部材からなるフード本体と、を備え、
前記フード本体の側面には、周方向の一部又は全体にわたって目盛りが設けられていることを特徴とする内視鏡用フード。
【請求項2】
前記目盛りは、前記フード本体の軸方向の異なる位置に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用フード。
【請求項3】
前記目盛りは、前記フード本体の側面に形成された溝部からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡用フード。
【請求項4】
前記フード本体は、ポリカーボネートで構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の内視鏡用フード。
【請求項5】
前記フード本体の軸方向に垂直な面に前記目盛り及び前記開口を投影したとき、前記目盛りは前記開口と同心円の関係にある円に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の内視鏡用フード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−125350(P2012−125350A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278352(P2010−278352)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(505246789)学校法人自治医科大学 (49)
【Fターム(参考)】