説明

内視鏡用プローブ装着具

【課題】拡大観察のための装置コストを低減させることができ、さらに通常観察及び拡大観察の各々における観察能を向上させることができる内視鏡用プローブ装着具を提供すること。
【解決手段】挿入部先端12の外周部を弾力的に締め付ける状態に挿入部先端12に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメント本体31が設けられて、アタッチメント本体31の側面部には、拡大観察プローブ20の先端部分付近(21,22)を外周から弾力的に締め付ける状態に嵌め込み及び取り外し自在なプローブ嵌め込み溝32が形成されると共に、プローブ嵌め込み溝32の開口部を外側から覆うように、アタッチメント本体31の外周部を弾力的に締め付ける状態にアタッチメント本体31に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメントカバー33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、拡大観察プローブの先端部分を内視鏡の挿入部先端の側面部に着脱自在に取り付けるために用いられる内視鏡用プローブ装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発された共焦点内視鏡等のような拡大観察内視鏡では、1mmに満たない範囲の顕微鏡的拡大像を内視鏡による直接観察で観察することができ、その結果、生検組織を採取することなく癌であるか否かの確定診断等を行うことができる。そのような拡大観察内視鏡では、通常観察を行うための通常観察光学系と拡大観察を行うための拡大観察光学系とが一つの内視鏡に併設されている(例えば、特許文献1、2、3)。
【特許文献1】特開2004−344201
【特許文献2】特開2005−640
【特許文献3】特開2005−80769
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、通常観察を行うための通常観察光学系と拡大観察を行うための拡大観察光学系とが一つの内視鏡に併設されていると、諸々の欠点も生じる。即ち、装置に莫大なコストがかかる。通常観察能が貧弱になるのでスクリーニング検査能が低い。通常観察光学系と拡大観察光学系との位置関係が固定されているので被検部の形態等によってはうまく拡大観察を行えない場合がある、等々である。
【0004】
本発明は、拡大観察のための装置コストを低減させることができ、さらに通常観察及び拡大観察の各々における観察能を向上させることができる内視鏡用プローブ装着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡用プローブ装着具は、拡大観察光学系を先端部分に備えた可撓管状の拡大観察プローブの先端部分を、内視鏡の挿入部先端の側面部に着脱自在に取り付けるための内視鏡用プローブ装着具であって、挿入部先端の外周部を弾力的に締め付ける状態に挿入部先端に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメント本体が設けられて、アタッチメント本体の側面部には、拡大観察プローブの先端部分付近を外周から弾力的に締め付ける状態に嵌め込み及び取り外し自在なプローブ嵌め込み溝が形成されると共に、プローブ嵌め込み溝の開口部を外側から覆うように、アタッチメント本体の外周部を弾力的に締め付ける状態にアタッチメント本体に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメントカバーが設けられているものである。
【0006】
なお、拡大観察プローブの先端部分付近が、プローブ嵌め込み溝に対して軸線方向に位置を変えて嵌め込み及び取り外し自在であってもよく、アタッチメント本体が、挿入部先端に対して軸線周り方向に向きを変えて着脱自在であってもよい。また、アタッチメントカバーがアタッチメント本体に取り付けられると、プローブ嵌め込み溝の広がりがアタッチメントカバーで規制された状態になるようにしてもよい。
【0007】
そして、アタッチメント本体が挿入部先端の外周部を締め付ける領域において、アタッチメント本体が略C字状の断面形状に形成されていてもよく、プローブ嵌め込み溝が、アタッチメント本体の軸線と平行方向に形成されていてもよい。
【0008】
また、アタッチメントカバーが、全体として略C字状の断面形状に形成されていてもよく、そのアタッチメントカバーの内周面が、プローブ嵌め込み溝の開口部に面する部分だけ部分的に外方に膨らんでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アタッチメント本体に形成されたプローブ嵌め込み溝の開口部を外側から覆うように、アタッチメント本体の外周部を弾力的に締め付ける状態にアタッチメント本体に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメントカバーが設けられていることにより、必要に応じ一般の内視鏡に拡大観察プローブを取り付けて用いることができるので、拡大観察のための装置コストを大幅に低減させることができ、さらに、拡大観察を行う必要がない時は拡大観察機能のない通常の内視鏡で通常の優れた観察を行うことができると共に、内視鏡に対する拡大観察プローブの取り付け位置を調整することが可能になること等により拡大観察能をも向上させることができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
拡大観察光学系を先端部分に備えた可撓管状の拡大観察プローブの先端部分を、内視鏡の挿入部先端の側面部に着脱自在に取り付けるための内視鏡用プローブ装着具であって、挿入部先端の外周部を弾力的に締め付ける状態に挿入部先端に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメント本体が設けられて、アタッチメント本体の側面部には、拡大観察プローブの先端部分付近を外周から弾力的に締め付ける状態に嵌め込み及び取り外し自在なプローブ嵌め込み溝が形成されると共に、プローブ嵌め込み溝の開口部を外側から覆うように、アタッチメント本体の外周部を弾力的に締め付ける状態にアタッチメント本体に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメントカバーが設けられている。
【実施例】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図5は、拡大観察プローブ20が内視鏡10に取り付けられた状態の全体構成を示しており、内視鏡10は、可撓性挿入部11の先端(即ち、挿入部先端12)に視野角の広い通常観察光学系を備えている。
【0012】
一方、可撓管状に形成された拡大観察プローブ20は、顕微鏡的な超拡大観察を行うことができる拡大観察光学系を可撓管21の先端部分22に備えていて、その拡大観察プローブ20の先端部分22がプローブ装着具30により内視鏡10の挿入部先端12の側面部分に着脱自在に取り付けられている。
【0013】
なお、拡大観察プローブ20の可撓管21は内視鏡10の可撓性挿入部11に沿って配置されるが、拡大観察プローブ20の可撓管21をバンド等で内視鏡10の可撓性挿入部11に適宜固定してもよい。
【0014】
図6は、内視鏡10と拡大観察プローブ20の各々の先端部分を示しており、内視鏡10の挿入部先端12の先端面には、通常観察用観察窓14、照明窓15、送気送水ノズル16、処置具突出口17等が配置され、通常観察用観察窓14の奥に内蔵されている通常観察光学系(図示せず)の視野角は例えば90〜120°程度である。
【0015】
拡大観察プローブ20の先端部分22の先端面には、拡大観察用観察窓24が配置されていて、その奥には拡大観察光学系25が内蔵されている。拡大観察光学系25は、例えば特許文献1〜3等で公知の共焦点光学系であり、拡大観察用観察窓24の表面又はそれに極近接した領域の顕微鏡的拡大像を得ることができる。
【0016】
図7と図8はプローブ装着具30の斜視図と正面図であり、プローブ装着具30は、図9と図10に斜視図と正面図が示されているアタッチメント本体31と、図11と図12に斜視図と正面図が示されているアタッチメントカバー33とで構成されている。
【0017】
アタッチメント本体31は、図9、図10に示されるように、例えばシリコンゴムやウレタンゴム又はその他の合成樹脂材或いはばね用金属材やセラミック複合材料等々のような弾力性があって生体適合性を有する材料により、内視鏡10の挿入部先端12の外周部を弾力的に締め付けることができるように、挿入部先端12の外周部を締め付ける領域が全体として略C字状の断面形状に形成されている。ただし、アタッチメント本体31を切れ目のない一つながりの環状等に形成してもよい。アタッチメント本体31は、挿入部先端12に対して軸線周り方向に任意に向きを変えて着脱自在である。
【0018】
アタッチメント本体31の側面部外面には、拡大観察プローブ20の先端部分付近(21,22)を、外周から弾力的に締め付ける状態に着脱自在に嵌め込むことができるプローブ嵌め込み溝32が、アタッチメント本体31の軸線と平行方向に形成されている。
【0019】
プローブ嵌め込み溝32は、略C字状の断面形状に形成されているアタッチメント本体31の切れ目部分に対して180°反対側の位置に形成されていて、外方に向かって開口形成されている開口部からプローブ嵌め込み溝32内に、拡大観察プローブ20の先端部分付近(21,22)を嵌め込み及び取り外し自在である。
【0020】
アタッチメントカバー33は、アタッチメント本体31と同様の弾力性のある材料により、プローブ嵌め込み溝32の開口部を外側から覆うように、アタッチメント本体31の外周部を弾力的に締め付ける状態にアタッチメント本体31に対し着脱自在に設けられている。
【0021】
したがって、プローブ嵌め込み溝32内に先端部分付近が嵌め込まれた拡大観察プローブ20が何かに強くぶつかったような場合でも、拡大観察プローブ20がプローブ嵌め込み溝32内から脱落しない。
【0022】
アタッチメントカバー33も、アタッチメント本体31と同様に、アタッチメント本体31の外周部を締め付ける領域が全体として略C字状の断面形状に形成されている。ただし、アタッチメントカバー33を切れ目のない一つながりの環状等に形成してもよい。
【0023】
アタッチメントカバー33は単体の状態では、図11、図12に二点鎖線で図示されるように、内周面の径がアタッチメント本体31の外径よりやや小さく形成されている。そして、アタッチメント本体31の外周を囲む状態に装着すると、実線で示されるようにアタッチメントカバー33が押し広げられた状態に弾性変形する。
【0024】
またアタッチメントカバー33には、アタッチメント本体31に取り付けられた状態の時にプローブ嵌め込み溝32の開口部に面する部分に、そこだけが部分的に外方に膨らんだ膨らみ部34が形成されて、拡大観察プローブ20の先端部分22を保護している。ただし、アタッチメントカバー33の内周面だけがそのような形状に形成されていてもよい。そして、図8等に示されるように、アタッチメントカバー33はプローブ嵌め込み溝32が広がろうとするのを外側から規制する作用も果している。
【0025】
図1は、そのようなプローブ装着具30により、拡大観察プローブ20の可撓管21の先端部分22が内視鏡10の挿入部先端12の側面部分に取り付けられた状態を示しており、内視鏡10の挿入部先端12に取り付けられたアタッチメント本体31のプローブ嵌め込み溝32に拡大観察プローブ20の先端部分22が側方から嵌め込まれて、プローブ嵌め込み溝32部分の弾性変形により拡大観察プローブ20がそこに弾力的に固定されている。
【0026】
そして、その後からアタッチメント本体31を締め付ける状態に取り付けられたアタッチメントカバー33により、プローブ嵌め込み溝32の開口部が塞がれると同時にプローブ嵌め込み溝32が閉じ方向に押圧されて、拡大観察プローブ20の固定状態が安定したものにされている。
【0027】
そして、拡大観察の被写体の位置が遠い場合等には、アタッチメントカバー33と拡大観察プローブ20をアタッチメント本体31から一旦外して、図2に示されるように、拡大観察用観察窓24が前方に位置するように、プローブ嵌め込み溝32に対する拡大観察プローブ20の先端部分付近(21,22)の嵌め込み位置を軸線方向にずらしてから、アタッチメントカバー33を取り付けて拡大観察プローブ20を固定する。
【0028】
また、図3及び図4に示されるように、内視鏡10の挿入部先端12に対するアタッチメント本体31の取り付けの向きを変えることにより、拡大観察用観察窓24の位置を内視鏡10の挿入部先端12の外周に沿って移動させて固定することができる。
【0029】
このようにして、通常観察用観察窓14に対する拡大観察用観察窓24の位置関係を、拡大観察に最も好ましい状態にセットして、拡大観察を良好な条件下に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例の使用状態において、拡大観察用観察窓の位置を前方に移動させてセットした状態の斜視図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具の使用状態の正面図である。
【図4】本発明の実施例の使用状態において、拡大観察用観察窓の位置を内視鏡の挿入部先端の周方向に移動させてセットした状態の正面図である。
【図5】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具が使用される状態の全体構成図である。
【図6】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具が使用される内視鏡と拡大観察プローブの各々の先端部分の斜視図である。
【図7】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具の斜視図である。
【図8】本発明の実施例の内視鏡用プローブ装着具の正面図である。
【図9】本発明の実施例のアタッチメント本体の斜視図である。
【図10】本発明の実施例のアタッチメント本体の正面図である。
【図11】本発明の実施例のアタッチメントカバーの斜視図である。
【図12】本発明の実施例のアタッチメントカバーの正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 内視鏡
11 可撓性挿入部
12 挿入部先端
14 通常観察用観察窓
20 拡大観察プローブ
21 可撓管
22 先端部分
24 拡大観察用観察窓
30 プローブ装着具
31 アタッチメント本体
32 プローブ嵌め込み溝
33 アタッチメントカバー
34 膨らみ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大観察光学系を先端部分に備えた可撓管状の拡大観察プローブの上記先端部分を、内視鏡の挿入部先端の側面部に着脱自在に取り付けるための内視鏡用プローブ装着具であって、
上記挿入部先端の外周部を弾力的に締め付ける状態に上記挿入部先端に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメント本体が設けられて、上記アタッチメント本体の側面部には、上記拡大観察プローブの上記先端部分付近を外周から弾力的に締め付ける状態に嵌め込み及び取り外し自在なプローブ嵌め込み溝が形成されると共に、
上記プローブ嵌め込み溝の開口部を外側から覆うように、上記アタッチメント本体の外周部を弾力的に締め付ける状態に上記アタッチメント本体に着脱自在な弾力性のある材料からなるアタッチメントカバーが設けられていることを特徴とする内視鏡用プローブ装着具。
【請求項2】
上記拡大観察プローブの上記先端部分付近が、上記プローブ嵌め込み溝に対して軸線方向に位置を変えて嵌め込み及び取り外し自在である請求項1記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項3】
上記アタッチメント本体が、上記挿入部先端に対して軸線周り方向に向きを変えて着脱自在である請求項1又は2記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項4】
上記アタッチメントカバーが上記アタッチメント本体に取り付けられると、上記プローブ嵌め込み溝の広がりが上記アタッチメントカバーで規制された状態になる請求項1ないし3のいずれかの項に記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項5】
上記アタッチメント本体が上記挿入部先端の外周部を締め付ける領域において、上記アタッチメント本体が略C字状の断面形状に形成されている請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項6】
上記プローブ嵌め込み溝が、上記アタッチメント本体の軸線と平行方向に形成されている請求項1ないし5のいずれかの項に記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項7】
上記アタッチメントカバーが、全体として略C字状の断面形状に形成されている請求項1ないし6のいずれかの項に記載の内視鏡用プローブ装着具。
【請求項8】
上記アタッチメントカバーの内周面が、上記プローブ嵌め込み溝の開口部に面する部分だけ部分的に外方に膨らんでいる請求項7記載の内視鏡用プローブ装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−261642(P2009−261642A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114958(P2008−114958)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】