説明

内視鏡用光源装置

【課題】蛍光体での発熱を防止することによって、蛍光を含む照明光の色調を安定化させる。
【解決手段】励起光光源30からの励起光は、蛍光体42に入射する。蛍光体42は励起光を吸収して、緑色蛍光を励起発光する。緑色蛍光は、励起光の入射面と同一面から出射する。蛍光体42での発熱は、励起光の入射面とは反対の面に設けられた放熱部46によって、放熱される。蛍光体42から発せられた緑色蛍光は、第1青色光源60、第2青色光源61、赤色光源62からの第1青色光、第2青色光、赤色光と合波される。合波された光は、ライトガイド25を介して、被検体内に照射される。第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光は、4つのフォトセンサ74a〜74dによって、光量がそれぞれモニタリングされている。このモニタリング結果に基づいて、各光源30,60〜62は光量制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体から発せられる蛍光を含む照明光を内視鏡に供給する内視鏡用光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡における通常観察用の照明光としては、キセノンランプ等の広帯域光の他、励起光によって蛍光体で励起発光させた蛍光を含む白色光も用いられるようになってきている。また、近年では、表層微細血管の強調表示等の特殊光観察を行うために、蛍光を含む白色光の他、特定波長の狭帯域光を混合して体内に同時照射することも行われている。
【0003】
このように蛍光体の蛍光を用いた照明の場合には、高輝度化を図ることができるとともに、キセノンランプ等の照明の場合ほど設置スペースを要しないため、装置全体としてコンパクト化を図ることができる。その一方で、キセノンランプ等を用いた場合には無かった新たな課題もいくつか出てきている。例えば、通常観察時に使用する白色光として青色の励起光も含めた場合には、緑色及び赤色の蛍光の光量は、青色の励起光の光量によって決まってしまう。この場合、蛍光の光量は励起光の光量と関係なく独立に制御できないため、白色光の色調を合わせることが難しいことがあった。また、RGB撮像素子を用いる特殊光観察時において、青色の励起光を使用し、その他の特殊観察用の狭帯域光として青色狭帯域光を使用した場合には、それら光の同時照射によって一定の光量を光量を超えてしまうと、RGB撮像素子のB画素が飽和してしまうという問題も生じることがあった。
【0004】
これら問題に対して、特許文献1では、蛍光体の励起光として、紫外域の励起光を用いている。紫外域の励起光は非可視光であるため、仮に、この紫外域の励起光が照明光に含まれたとしても、照明光の色調に影響を与えることはない。また、紫外域の励起光はRGB撮像素子では完全に遮光されるため、B画素などの特殊観察用の画素に、比較的高い光量の特殊観察用の狭帯域光が入射したとしても、飽和するおそれはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−297311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体を用いる照明の場合には、上記のような問題の他に、蛍光を励起発光するときに生じる発熱によって、蛍光の発光効率が低下する温度特性の問題がある。図10に示すように、緑色蛍光体から励起発光する緑色蛍光(G蛍光)と赤色蛍光体から励起発光する赤色蛍光(R蛍光)の発光効率は、蛍光体の温度が上がるにつれて、低下する。また、赤色蛍光の発光効率の低下は緑色蛍光の発光効率の低下よりも大きくなっており、この発光効率の差は温度が高くなるほど大きくなる。
【0007】
したがって、緑色蛍光体と赤色蛍光体を混合した蛍光体から、緑色蛍光と赤色蛍光を混色して励起発光させた場合には、その混色した蛍光は、温度が高くなるほど、色調に変化が生じるようになる(即ち、色むらが発生するようになる)。そこで、蛍光体での発熱を防ぐことによって、蛍光体から発せられる蛍光を含む照明光の色調を安定化させることが求められていた。
【0008】
本発明は、蛍光体での発熱を防止することによって、蛍光体から発せられる蛍光を含む照明光の色調を安定化することができる内視鏡用光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体内に挿入される内視鏡に対して光を供給する内視鏡用光源装置において、可視光領域以外の波長域を有する励起光を発する励起光光源と、前記励起光が入射する第1の光学面、前記励起光を、可視光領域の波長域を持つ前記第1の照明光に波長変換する波長変換部、及び前記第1の光学面の反対側に設けられ、第1の照明光を反射する第2の光学面を有し、前記第2の光学面で反射した第1の照明光を第1の光学面から出射する波長変換手段と、前記波長変換手段から出射した第1の照明光を前記内視鏡に供給する供給手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
可視光領域に波長域を有し、且つ前記第1の照明光とは波長域が異なっている第2の照明光を発する照明光光源と、前記第1の照明光の光量と前記第2の照明光の光量とを、それぞれ独立に制御する光量制御手段を備え、前記供給手段は、前記第1の照明光に加えて前記第2の照明光を含む光を、前記内視鏡に供給することが好ましい。
【0011】
前記波長変換部材は、紫外域に励起波長帯域を持つ緑色蛍光体であり、前記照明光光源は半導体光源であり、前記第1の照明光は、紫外域の前記励起光によって前記緑色蛍光体から励起発光される緑色蛍光であり、前記第2の照明光は、前記半導体光源から発せられる光であることが好ましい。
【0012】
前記内視鏡には、緑色蛍光の第1照明光、及び青色帯域と赤色帯域を含む第2照明光が混色した白色光が供給されることが好ましい。前記第2の照明光のうち、前記青色帯域の中心波長は405nmであり、前記赤色帯域の中心波長は625nmであることが好ましい。前記内視鏡には、緑色蛍光の第1照明光、及び青色帯域と赤色帯域を含む第2照明光が混色した白色光が供給され、前記第2の照明光の青色帯域におけるピーク強度は、前記緑色蛍光及び前記第2の照明光の赤色帯域におけるピーク強度よりも大きいことが好ましい。
【0013】
前記励起光は、ブリュースター角で前記波長変換部材に入射することが好ましい。前記励起光は、反射防止膜が設けられた前記波長変換部材に、ブリュースター角よりも小さい入射角で入射することが好ましい。
【0014】
前記第2の光学面側に設けられ、前記波長変換部材での発熱を放熱する放熱手段を備えることが好ましい。前記第2の光学面側に設けられ、前記波長変換部材内の励起光を反射する反射手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、励起光の入射と、この励起光が波長変換された第1の照明光の出射とを同一の第1光学面で行うことによって、その反対側の第2の光学面に、波長変換手段での発熱を放熱する放熱手段を設けることが可能となる。これにより、波長変換手段での発熱による照明光の色調の変化を防ぐことができる。
【0016】
また、励起光の入射と第1の照明光の出射を同一の第1の光学面で行うためには、励起光を波長変換部材に対して斜め入射する必要がある。そのためには、励起光光源と波長変換部材とを一定の距離で空間的に離すことができる程度のスペースが必要となるが、そのようなスペースは、被検体に挿入する内視鏡ではなく、その内視鏡に接続される光源装置であれば、十分に確保することが可能である。
【0017】
また、励起光は、可視光領域以外の波長域を有しているため、照明光の色調には直接的に影響を与えない。したがって、第1照明光とその他の第2の照明光の光量をそれぞれ独立に制御することが可能になるため、第1の照明光と第2の照明光の光量比を一定に保つことができる。これによって、照明光の色調を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】内視鏡システムの概略を示す図である。
【図2】光源装置及びプロセッサ装置の内部構成を示す図である。
【図3A】AR膜無しの蛍光体に対して斜めに入射する励起光の入射角を説明するための図である。
【図3B】AR膜有りの蛍光体に対して斜めに入射する励起光の入射角を説明するための図である。
【図4】蛍光体に対する励起光の分光透過率を示すグラフである。
【図5】ダイクロイックミラーの分光透過率と第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光の発光強度を示すグラフである。
【図6A】通常光観察モードにおける発光パターン、発光強度を示すグラフである。
【図6B】第1特殊光観察モードにおける発光パターン、発光強度を示すグラフである。
【図6C】第2特殊光観察モードにおける発光パターン、発光強度を示すグラフである。
【図6D】酸素飽和度観察モードにおける発光パターン、発光強度を示すグラフである。
【図7】PNM、PDM、PWMを説明するための図である。
【図8】カラー撮像素子の分光透過率を示すグラフである。
【図9A】通常光画像の生成方法を説明するための図である。
【図9B】第1特殊光画像の生成方法を説明するための図である。
【図9C】第2特殊光画像の生成方法を説明するための図である。
【図9D】酸素飽和度画像の生成方法を説明するための図である。
【図10】蛍光体の温度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、被検体内を撮像する電子内視鏡11と、被検体を照明する光を発生する光源装置12と、電子内視鏡からの撮像信号に基づいて画像を生成するとともに、各種画像処理を行うプロセッサ装置13と、内視鏡画像を表示するモニタ14とを備えている。
【0020】
この内視鏡システム10には、白色光で照明された被検体内の通常光画像をモニタ14に表示する通常光観察モード、通常光画像上において表層の微細血管や微細構造が強調表示された第1特殊光画像をモニタ14に表示する第1特殊光観察モード、表層微細血管や中深層の血管が疑似カラーで表された第2特殊光画像をモニタ14に表示する第2特殊光観察モード、血中ヘモグロビンの酸素飽和度を画像化した酸素飽和度画像をモニタ14に表示する酸素飽和度観察モードの4つのモードが設けられている。これらモードは、モード切替SW15によって適宜切り替えられる。
【0021】
電子内視鏡11は、体腔内に挿入される可撓性の挿入部16と、挿入部16の基端部分に設けられた操作部17と、操作部17と光源装置12及びプロセッサ装置13との間を連結するユニバーサルコード18とを備えている。挿入部16の先端には、複数の湾曲駒を連結した湾曲部19が形成されている。湾曲部19は、操作部のアングルノブ21を操作することにより、上下左右方向に湾曲動作する。湾曲部19の先端には、体腔内を撮像するカラー撮像素子20(例えばカラーCCDやカラーCMOS)を内蔵した先端部16aが設けられている。先端部16aは、湾曲部19の湾曲動作によって体腔内の所望の方向に向けられる。
【0022】
ユニバーサルコード18には、光源装置12及びプロセッサ装置13側にコネクタ24が取り付けられている。コネクタ24は、通信用コネクタと光源用コネクタからなる複合タイプのコネクタであり、電子内視鏡11は、このコネクタ24を介して、光源装置12及びプロセッサ装置13に着脱自在に接続される。
【0023】
電子内視鏡11の内部には、ライトガイド25と、信号ケーブル26とが設けられている。ライトガイド25は波長が異なる複数種類の光を導光可能なバンドル光ファイバであり、光源装置12からの光を先端部16aまで導光する。導光された光は、先端部16aから体腔内に向けて照射される。信号ケーブル26は、カラー撮像素子20からの撮像信号をプロセッサ装置13に送信する。
【0024】
図2に示すように、光源装置12は、紫外域に波長範囲を有する励起光を発する励起光光源30と、励起光光源30からの励起光によって緑色蛍光を発する第1発光部31と、中心波長405nmの第1青色光、中心波長470nmの第2青色光、中心波長625nmの赤色光を発する第2発光部32と、第1発光部31からの緑色蛍光と第2発光部32からの第1青色光、第2青色光又は赤色光とを合波する合波部35と、緑色蛍光、第1青色光、第2青色光、赤色光の発光強度や発光タイミングを制御する光源制御部37と、合波部35で合波された光をライトガイド25の入射面に向けて集光する集光レンズ39とを備えている。
【0025】
励起光光源30はレーザーダイオード(Laser Diode)や発光ダイオード(Light Emitting Diode)などの半導体光源で構成される。この励起光光源30では、第1発光部31の蛍光体42から緑色蛍光を励起発光させるための励起光を発する。この励起光は、非可視光領域である紫外域の波長範囲内において、365nm、380nm、又は395nmにピーク波長を有している。励起光は、照射レンズ30aを通して、第1発光部31の蛍光体42に向けて照射される。
【0026】
第1発光部31は、励起光によって緑色蛍光を励起発光する蛍光体42と、銀やアルミ又はこれらの合金などの高反射性物質で構成される高反射部44と、蛍光体で発せられた熱を放熱する放熱部46とを備えている。蛍光体42は、紫外域の励起光に対して高い光吸収特性を有するとともに、緑色蛍光を高い発光強度及び発光効率で励起発光するものが用いられる。本実施形態では、蛍光体42として、「BaMgAl10O17:Eu,Mn」を用いる。「BaMgAl10O17:Eu,Mn」は、励起光のピーク波長を「378nm」とした場合に、励起光に対する吸収率が「66.8%」であり、また発光効率は「55.8%」である。光吸収率、発光効率に関しては「Li0.6Na0.4W2O8」よりも高く、また、発光強度に関しては「Li0.6Na0.4W2O8」よりも高くなっている。
【0027】
蛍光体42は、ガラス樹脂などとバインダにより固められて形成されており、略直方体形状を有している。蛍光体42の一方の面は、励起光光源からの励起光が入射するとともに緑色蛍光が出射する入射・出射面42aとなっており、他方の面は、励起光及び緑色蛍光を高反射部44で反射させる反射面42bとなっている。また、入射・出射面42aには凸レンズ48が設けられており、この凸レンズ48は、励起光を蛍光体42に集光するとともに、励起発光した緑色蛍光を合波部35に向けて出射させる。したがって、励起光光源40と合波部35は、蛍光体42の入射・出射面42a側に設けられている。
【0028】
このように、励起光の入射面と緑色蛍光の出射面を同一面にする反射型とすることで、入射・出射面42aの反対側の反射面42bに、蛍光体42での発熱を放熱する放熱手段等を直接的に設けることができる。これに対して、特許文献1のように、励起光の入射面と蛍光の出射面が別々の面である透過型の場合には、蛍光体42に対して放熱手段を直接的に設けるスペースを確保することができない。また、反射型では、励起光を蛍光体42に対して斜めから入射させるために、励起光光源30を蛍光体42に対して空間的に離して設置する設置スペースが別途必要となるが、この点においては、電子内視鏡の先端部16aよりも、光源装置12のほうが、設置スペースを確保しやすい。
【0029】
また、被検体内を照明する照明光のうち、緑色光として、LEDなどの半導体光源でなく、緑色蛍光を使用するのは以下の理由からである。内視鏡のライドガイド25としては、挿入部の細径化の観点から径が細いものが用いられるため、光入光部が小さい。そのため、ライトガイド25には、高輝度の照明光を入射させる必要がある。即ち、単位面積当たりの出力が大きな光源が必要となる。現時点では、照明光のうち青色光、赤色光については、LED,LDなどの半導体光源によって高輝度で発光できることが知られている。一方、緑色光については、緑色LED、緑色半導体レーザー、緑色蛍光体の発光手段が考えられる。
【0030】
緑色LEDについては、現在の窒化ガリウムLEDのような、青色から赤色にかけて急激に発光効率が低下するLED素子しか存在しない。また、仮に、高輝度なLEDを製造できたとしても、半値幅がレーザーダイオードよりも狭くなることが考えられる。したがって、内視鏡の照明として使用した場合には、発光半値幅が狭くなりすぎるため、演色性が劣ることが考えられる。一方、緑色半導体レーザーについては、高輝度光源ではあるものの、発光半値幅が狭すぎる。そのため、照明光として用いた場合には、急峻な光吸収や反射を持つ物体(例えば内視鏡で用いる色素)などの反射信号が得られにくい。また、現状では、緑色半導体レーザーは出力、寿命の点で問題がある。
【0031】
これに対して、緑色蛍光体は、上記緑色LED、緑色半導体レーザーのような問題点を有していない。したがって、内視鏡の照明に用いる発光手段としては、緑色蛍光体が一番適している。
【0032】
なお、励起光が蛍光体42に入射するときには、励起光が入射・出射面42aで反射しないようにすることが好ましい。仮に、入射・出射面42aで反射した励起光が、合波部35及びライトガイド25を通して、体内に照射された場合には、いくつかの問題が起こりうる。その問題の一つとして、励起光は生体組織の自家蛍光物質に対しても励起光となりうるため、体内から不要な自家蛍光が励起発光するおそれがある。この不要な自家蛍光は、観察画像にとってノイズであるため、励起光は体内に入らないようにすることが好ましい。
【0033】
例えば、図3Aに示すように、入射・出射面42aにAR(Anti Reflection)膜を設けない場合には、励起光の偏波面をp偏光にし、励起光の入射角θをブリュースター角である「56°」にすることが好ましい(θ=ArcTan(n2/n1)(n1:空気の屈折率、n2(1.5):蛍光体含有ガラスの屈折率)))。また、図3Bに示すように、入射・出射面42aにAR膜50を設ける場合には、励起光の偏波面をp偏光にし、励起光の入射角θを「50°」にすることが好ましい(θ=ArcTan(n2/n1)(n1:空気の屈折率、n2(1.5):蛍光体含有ガラスの屈折率)))。ここで、AR膜50は、フッ化マグネシウムMgF(屈折率n3、およそ1.38)の膜50aとアルミナAl(屈折率n4、およそ2.1〜2.4。成膜条件で変化させた場合は2.3)の膜50bの2層で形成することが好ましい。フッ化マグネシウムMgF、アルミナAlついては、設計波長λを405nmとした場合に、それぞれ1/2λの厚さにすることが好ましい。したがって、屈折率については、n1<n3<n2<n4の関係にすることが好ましい。
【0034】
図3A及び図3Bのいずれの場合においても、図4に示す透過分布T(p)に示すように、励起光のピーク波長である「365nm、380nm、又は395nm」あたりで蛍光体への透過率が「99.98%」近くになる。したがって、励起光は、入射・出射面42aで反射することなく、確実に蛍光体42へと入射する。なお、励起光の偏波面がs偏光である場合には、透過分布T(s)に示すように、「365nm、380nm、又は395nm」あたりでの透過率が「90%」となるため、入射する励起光のうち「10%」程度が入射・出射面42aで反射することとなる。
【0035】
図2に示すように、放熱部46には、蛍光体42側から順に、ペルチェ素子52と、ヒートシンク54と、ファン56とが設けられている。ペルチェ素子52は、蛍光体42及び高反射部44側に設けられた冷却板52aと、ヒートシンク54側に設けられた放熱板52bを有している。素子駆動部(図示省略)によってペルチェ素子52を駆動することによって、蛍光体42での発熱は、冷却板52aを介して、放熱板52b側に移動する。ヒートシンク54には、放熱板52bから発せられる熱が拡散しやすいように、金属製の四角柱が複数設けられている。このヒートシンク54に対して、ファン56からの風が吹きつけられる。これにより、ヒートシンク54に蓄積された熱は、光源装置12の外部へと放熱される。
【0036】
第2発光部32は、中心波長405nmの第1青色光を発する第1青色光源60と、中心波長470nmの第2青色光を発する第2青色光源61と、中心波長625nmの赤色光を発する赤色光源62と、これら光源60〜62が設けられた光源用基板65と、各光源60〜62で発せられた熱を放熱する放熱部67とを備えている。第1青色光源60、第2青色光源61、赤色光源62は、励起光光源30と同様、レーザーダイオード(Laser Diode)や発光ダイオード(Light Emitting Diode)などの半導体光源で構成される。これら光源60〜62は、共通の光源用基板65を介して、光源制御部37により発光タイミングや光量が制御される。各光源60〜62から発せられる第1青色光、第2青色光、赤色光は、照射レンズ69を通して、合波部35に向けて照射される。
【0037】
放熱部67は、上記放熱部46と同様のペルチェ素子52、ヒートシンク54、ファン56を備えている。なお、ペルチェ素子52の冷却板52aと光源用基板65とは、熱抵抗が低いシリコングリース70等で接着されている。それ以外については、上記放熱部46と同様であるので説明を省略する。
【0038】
合波部35は、第1発光部からの緑色蛍光と第2発光部からの第1青色光、第2青色光、赤色光を合波するダイクロックミラー72と、第1青色光用PD(Photo Detector)74a、第2青色光用PD74b、緑色蛍光用PD74c、赤色光用PD74dの4つのフォトセンサとを備えている。
【0039】
ダイクロックミラー72は、図5に示すような透過分布Taを有している。したがって、緑色蛍光がダイクロックミラーに入射したときには、入射する緑色蛍光のうちのほとんどが透過し、わずかな光だけが反射する。透過した光は集光レンズ39に入射する一方、反射した光は緑色蛍光用PD74cで検出される。一方、第1青色光、第2青色光、赤色光がダイクロックミラー72に入射したときには、それら光のほとんどが反射し、わずかな光だけが透過する。反射した光は集光レンズ39に入射する一方、透過した光は第1青色光用PD74a、第2青色光用PD74b、赤色光用PD74dで検出される。
【0040】
第1青色光用PD74a、第2青色光用PD74b、緑色蛍光用PD74c、赤色光用PD74dは、第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光の光量を常時モニタリングし、そのモニタリング結果を光源制御部37に送信する。
【0041】
光源制御部37は、第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光間の光量比が一定となるように、励起光光源、第1青色光源、第2青色光源、赤色光源を制御する。図2に示すように、励起光光源30の光量制御は励起光制御部37aが行い、第1青色光源60の光量制御は第1青色光制御部37bが行い、第2青色光源61の光量制御は第2青色光制御部37cが行い、赤色光源62の光量制御は赤色光制御部37dが行う。これら各制御部37a〜37dによって、第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光の光量独立制御が可能となる。また、各光が発光している間は、各PD74a〜74dでのモニタリング結果に基づく光量フィードバック制御によって、光量を一定に保持する。
【0042】
第1青色光、第2青色光、緑色蛍光、赤色光の発光タイミングと光量比は、モード毎に予め定められている。通常光観察モードに設定されている場合には、図6Aに示すように、第1青色光、緑色蛍光、赤色光が発光される。このとき、互いのピーク強度が同一となるように発光される。したがって、体内には、第1青色光、緑色蛍光、赤色光が混色した白色光として照射される。
【0043】
ここで、第1青色光、緑色蛍光、赤色光は、それぞれ光量を独立制御することが可能であるため、それらの光量比を一定に保つことが可能である。また、励起光は可視光領域以外にあるため、仮に励起光が体内に入ったとしても、白色光の色味に影響を与えることない。以上から、体内に照射された白色光の色味は変化することなく一定に保持される。
【0044】
また、第1特殊光観察モードに設定されている場合には、図6Bに示すように、第1青色光、緑色蛍光、赤色光が発光される。このとき、第1青色光のピーク強度は、他の緑色蛍光、赤色光のピーク強度よりも大きくなるように発光されるとともに、体内の血管と粘膜のコントラスト比が「1.6」以上となる第1光量比(第1青色光、緑色蛍光、赤色光の光量比)で発光される。上記したように、第1青色光、緑色蛍光、赤色光は光量を独立に制御することが可能であるため、第1光量比を一定に保つことが可能である。
【0045】
また、第2特殊光観察モードに設定されている場合には、図6Cに示すように、第1青色光、緑色蛍光が発光される。このとき、体内の血管と粘膜のコントラスト比が「1.6」以上となる第2光量比(第1青色光、緑色蛍光の光量比)で発光される。上記したように、第1青色光、緑色蛍光は光量を独立に制御することが可能であるため、第2光量比を一定に保つことが可能である。
【0046】
酸素飽和度観察モードに設定されている場合には、図6Dに示すように、第2青色光のみの発光と緑色蛍光及び赤色光の発光とを、1フレーム毎に交互に繰り返す。このとき、第2青色光、緑色蛍光、赤色光の第3光量比は一定になるように発光される。上記したように、第2青色光、緑色蛍光、赤色光は光量を独立に制御することが可能であるため、第3光量比を一定に保つことが可能である。
【0047】
なお、光源制御部37による光量制御は、各光源30,60〜62の発光量を予め定めた駆動パルスに基づくパルス変調制御により行うことが好ましい。パルス変調制御は、パルス数制御(PNM:Pulse Number Modulation)及びパルス密度制御(PDM:Pulse Density Modulation)と、パルス幅制御(PWM:Pulse Width Modulation)により行われる。
【0048】
具体的には、図7に示すように、1フレームのうちカラー撮像素子20の電荷蓄積期間において、PNM,PDM,PWMのいずれかのパルス変調を行うことにより、光量制御を行う。ここで、図7においては、パルスが立ち上がった時に各光源30,60〜62が点灯し、それ以外のときには各光源30,60〜62は消灯する。なお、1フレーム期間は33ms、シャッタ速度は1/60sとする。また、最大光量時においては、駆動パルス[1]に示すように、カラー撮像素子の電荷蓄積期間内に2000個のパルスが含まれているものする(周波数は120kHz)。
【0049】
最大光量から最小光量の間で光量を減少させる場合、まず、PNM制御でパルス数を減少させ、次に、PDM制御でパルスを間引くことによってパルス密度を減少させ、最後に、PWM制御でパルス幅を狭めることによって、光量を徐々に減少させる。
【0050】
PNM制御においては、駆動パルス[2]に示すように、電荷蓄積期間内でパルス数を減少させ、点灯期間を短縮する。パルス数の減少に従って、光量も減少する。そして、駆動パルス[3]に示すように、PNM制御により所定の点灯期間Wminまで短縮した後は、PDM制御により駆動パルスを間引く処理を行う。このPDM制御においては、所定の点灯期間Wminまで短縮された点灯期間に対し、所定間隔で駆動パルスを間引くことで点灯期間内のパルス密度を減少させる。
【0051】
そして、駆動パルス[4]に示すように、駆動パルスのパルス間隔が間引き限界に達するまで、即ち、駆動パルスが所定の最小パルス密度となるまでPDM制御を行う。次に、駆動パルス[5]に示すように、駆動パルスが所定の最小パルス数となった後は、PWM制御により駆動パルスのパルス幅を減少させる。そして、駆動パルス[6]に示すように、駆動パルスのパルス幅が一定の限界幅(PWM制御限界)に達するまでPWM制御を行う。
【0052】
上記パルス変調方式を用いることで、半導体レーザーや発光ダイオードなどの半導体発光素子において光量に応じて発光波長が変動したとしても、照明光の色調の変動を最小限に抑制することができる。また、蛍光体42の発光効率も励起波長に対して依存性があるが、この発光効率の変動も上記パルス変調で更に抑制することができる。
【0053】
図2に示すように、プロセッサ装置13は、電子内視鏡11からの撮像信号を受信する受信部80と、受信部80で受信した撮像信号に基づいて、被検体内の観察画像を生成する画像生成部81と、これら受信部80及び画像生成部81の他、光源装置12内の光源制御部37、電子内視鏡11のモード切替SW15、モニタ14等と電気的に接続され、プロセッサ装置13全体を統括的に制御するコントローラー82とを備えている。
【0054】
受信部80では、電子内視鏡11のカラー撮像素子20から出力された撮像信号を受信する。このカラー撮像素子20は、図8に示すような分光透過率を有するBフィルタ、Gフィルタ、Rフィルタが設けられたB画素、G画素、R画素を多数備えている。したがって、カラー撮像素子が被検体内を撮像することにより、1フレーム毎に、B画素から青色信号が、G画素から緑色信号が、R画素から赤色信号が出力される。
【0055】
画像生成部81は、設定されたモードに応じた観察画像を生成する。通常光観察モードに設定されている場合には、図9Aに示すように、受信部からの青色信号Bc、緑色信号Gc、赤色信号Rcに基づいて、通常光画像を生成する。通常光観察モード時には、各色(青、緑、赤)のピーク強度が略同一である白色光が体内に照射されるため、各信号Bc、Gc、Rcは、互いに略同じ信号値を有している。したがって、モニタ14には、全体的に明るい通常光画像が表示される。
【0056】
また、第1特殊光観察モードに設定されている場合には、図9Bに示すように、受信部からの青色信号Bm、緑色信号Gm、赤色信号Rmに基づいて、第1特殊光画像を生成する。第1特殊光観察モード時には、青色のピーク強度が他の色(緑、赤)よりも高い白色光が体内に照射されるため、青色信号Bmは緑色信号Gm、赤色信号Rmよりも高い信号値を有している。即ち、青色信号Bmには、表層の微細血管や微細構造などの青色成分の情報量が多く含まれている。したがって、モニタ14には、全体的に明るい通常光画像上に、表層の微細血管や微細構造が明瞭に表示された第1特殊光画像が表示される。
【0057】
また、第2特殊光観察モードに設定されている場合には、図9Cに示すように、受信部からの青色信号Be、緑色信号Geに基づいて、第2特殊光画像を生成する。この第2特殊光画像を生成する際には、青色信号Beをモニタ表示用のB、Gチャンネルに割り当て、緑色信号Geをモニタ表示用のRチャンネルに割り当てる。したがって、モニタ14には、青色信号Beに含まれる表層血管の情報が茶色調パターンで、緑色信号Geに含まれる中深層血管の情報がシアン系の色調パターンで表された第2特殊光画像が表示される。
【0058】
また、酸素飽和度観察モードに設定されている場合には、図9Dに示すように、第2青色光の発光時に得られる青色信号B1、緑色蛍光及び赤色光の発光時に得られる緑色信号G2、赤色信号R2に基づいて、酸素飽和度画像を生成する。第2青色光の中心波長470nmは、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数が大きく異なっているため、青色信号B1には酸素飽和度に関する情報が多く含まれている。したがって、モニタ14上に表示される酸素飽和度画像から、酸素飽和度の変化を視覚的に把握することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、半導体光源から青色光(第1、第2青色光)及び赤色光を発光させ、蛍光体から緑色蛍光を励起発光させているが、これに代えて、半導体光源から青色光及び緑色光を発光させ、赤色用の蛍光体から赤色蛍光を励起発光してもよい。
【0060】
なお、上記実施形態においては、紫外域の励起光が被検体内に入ることを避けるために、蛍光体から電子内視鏡の先端部までの間の光路上に、励起光をカット又は減光する励起光カットフィルタを設けることが好ましい。また、ライトガイドとして、紫外域における透過特性が極めて低いものを使用することによって、ライドガイドで励起光をカット又は減光するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
12 光源装置
30 励起光光源
37 光源制御部
42 蛍光体
44 高反射部
46 放熱部
50 AR膜
60 第1青色光源
61 第2青色光源
62 赤色光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される内視鏡に対して光を供給する内視鏡用光源装置において、
可視光領域以外の波長域を有する励起光を発する励起光光源と、
前記励起光が入射する第1の光学面、前記励起光を、可視光領域の波長域を持つ前記第1の照明光に波長変換する波長変換部、及び前記第1の光学面の反対側に設けられ、第1の照明光を反射する第2の光学面を有し、前記第2の光学面で反射した第1の照明光を第1の光学面から出射する波長変換手段と、
前記波長変換手段から出射した第1の照明光を前記内視鏡に供給する供給手段とを備えることを特徴とする内視鏡用光源装置。
【請求項2】
可視光領域に波長域を有し、且つ前記第1の照明光とは波長域が異なっている第2の照明光を発する照明光光源と、
前記第1の照明光の光量と前記第2の照明光の光量とを、それぞれ独立に制御する光量制御手段を備え、
前記供給手段は、前記第1の照明光に加えて前記第2の照明光を含む光を、前記内視鏡に供給することを特徴とする請求項1記載の内視鏡用光源装置。
【請求項3】
前記波長変換部材は、紫外域に励起波長帯域を持つ緑色蛍光体であり、
前記照明光光源は半導体光源であり、
前記第1の照明光は、紫外域の前記励起光によって前記緑色蛍光体から励起発光される緑色蛍光であり、
前記第2の照明光は、前記半導体光源から発せられる光であることを特徴とする請求項2記載の内視鏡用光源装置。
【請求項4】
前記内視鏡には、緑色蛍光の第1照明光、及び青色帯域と赤色帯域を含む第2照明光が混色した白色光が供給されることを特徴とする請求項3記載の内視鏡用光源装置。
【請求項5】
前記第2の照明光のうち、前記青色帯域の中心波長は405nmであり、前記赤色帯域の中心波長は625nmであること特徴とする請求項4記載の内視鏡用光源装置。
【請求項6】
前記内視鏡には、緑色蛍光の第1照明光、及び青色帯域と赤色帯域を含む第2照明光が混色した白色光が供給され、前記第2の照明光の青色帯域におけるピーク強度は、前記緑色蛍光及び前記第2の照明光の赤色帯域におけるピーク強度よりも大きいことを特徴とする請求項3記載の内視鏡用光源装置。
【請求項7】
前記励起光は、ブリュースター角で前記波長変換部材に入射することを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の内視鏡用光源装置。
【請求項8】
前記励起光は、反射防止膜が設けられた前記波長変換部材に、ブリュースター角よりも小さい入射角で入射することを特徴とする請求項1ないし6いずれか1項記載の内視鏡用光源装置。
【請求項9】
前記第2の光学面側に設けられ、前記波長変換部材での発熱を放熱する放熱手段を備えることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の内視鏡用光源装置。
【請求項10】
前記第2の光学面側に設けられ、前記波長変換部材内の励起光を反射する反射手段を備えることを特徴とする請求項1ないし9いずれか1項記載の内視鏡用光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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