説明

内視鏡用可撓管

【課題】安定性と操作性に優れるとともに、内蔵物を確実に保護することができる内視鏡用可撓管を実現する。
【解決手段】挿入部可撓管の芯材は、複数の連結部材24により形成されている。連結部材24における本体部24Bの外側表面24Sには、複数の凹部24Gが設けられている。凹部24Gはいずれも、中心軸24Cに沿った方向、すなわち芯材の長手方向に沿って延びている。このような凹部24Gを設けた連結部材24で芯材を構成することにより、芯材と、芯材の周囲を覆う外皮層とを密着させることができる。また、本体部24Bの内側表面24Rを平滑にして芯材の内側に突出する部材を設けないことにより、挿入部可撓管の内蔵物が保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用の可撓管に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡装置においては、撮像素子等が内蔵されたスコープを被写体である体腔内に送り込むために、可撓管が用いられる。このような内視鏡用可撓管として、短筒状の連結部材を複数連結させた芯材と、表面を覆う外皮とを有するものが知られている(例えば特許文献1)。一般に、このような芯材の内側には、光ファイバー等のケーブル類の内蔵物が配置されている。
【0003】
また、外皮を芯材に密着させるために、芯材に用いられる連結部材の壁面に穴を設け、外皮を芯材の内側まで突出させた内視鏡用可撓管が知られている(例えば特許文献2)。このような可撓管においては、外皮の位置ずれや剥離が防止され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−24020号公報
【特許文献2】特開2007−167119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内視鏡用可撓管において、芯材と外皮とが密着されていない場合、外皮の位置ずれや操作性の低下を招き得る。また、芯材を形成する連結部材の穴を介して外皮を芯材の内側まで突出させた場合、芯材と外皮とが密着され得るものの、外皮の突出部と芯材内側の内蔵物とが接触するおそれがある。この結果、例えば、内蔵物であるケーブル類の接続不良や、ケーブル等を保護するスプリング部材の変形等の問題が生じ得る。
【0006】
本発明は、安定性と操作性に優れるとともに、内蔵物を確実に保護することができる内視鏡用可撓管の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可撓管は、複数の連結部材が互いに連結されている芯材と、芯材の周囲に設けられた外皮層とを備えた内視鏡用の可撓管である。内視鏡用可撓管は、連結部材の外皮層側の表面において凹部が形成されており、外皮層の一部が凹部に充填されていることを特徴とする。
【0008】
連結部材の内面は、平滑であることが好ましい。凹部は、単一の連結部材に複数設けられており、複数の凹部が、連結部材における芯材の長手方向に垂直な切断面において互いに対向するように設けられていることが好ましい。
【0009】
連結部材は、芯材の長手方向に垂直な切断面が略円形の筒状部材であり、複数の凹部が、切断面における周方向において等間隔に配置されていることが好ましい。また、連結部材においては、連結部材同士を連結するための連結部が複数設けられており、凹部が、互いに隣接する連結部の中間部に設けられていることが好ましい。
【0010】
内視鏡用可撓管の複数の連結部材において、凹部が、芯材の長手方向に沿った直線上に設けられていることが好ましい。また、凹部は、芯材の長手方向に沿って延びる形状を有することが好ましい。凹部は、例えばディンプル状である。
【0011】
凹部においては、接着剤層が形成されていることが好ましい。また、内視鏡用可撓管は、芯材の外側に設けられた網状部材をさらに有し、外皮層の一部が、網状部材を介して凹部に充填されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定性と操作性に優れるとともに、内蔵物を確実に保護することができる内視鏡用可撓管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における内視鏡スコープを示す図である。
【図2】第1の実施形態の挿入部可撓管の芯材に用いられる連結部材を示す斜視図である。
【図3】図2のIII−III線を通り、芯材の中心軸に垂直な平面で連結部材を切断した断面図である。
【図4】第1の実施形態の挿入部可撓管を長手方向に沿った平面で切断した断面図である。
【図5】第1の実施形態の挿入部可撓管を長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【図6】第2の実施形態の連結部材を示す斜視図である。
【図7】第3の実施形態の連結部材を示す斜視図である。
【図8】第3の実施形態の連結部材の本体部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態における内視鏡スコープを示す図である。
【0015】
内視鏡スコープ10は、電子内視鏡装置(図示せず)の一部であって、操作部12と、挿入部可撓管20(内視鏡用可撓管)とを含む。操作部12には、吸引ボタン14、送気・送水ボタン16などの操作ボタンが設けられている。挿入部可撓管20は、操作部12から延出しており、被写体である患者の体腔内に挿入される。
【0016】
挿入部可撓管20は、人体内に挿入されるために湾曲可能であり、特に、被写体観察や患部の処置を容易にするために、先端部付近は大きい角度で曲げることができる。挿入部可撓管20の先端部には、撮像素子、対物レンズ等(図示せず)が設けられている。この撮像素子により生成された画像信号が電子内視鏡装置のプロセッサ(図示せず)に送られ、被写体画像が形成される。
【0017】
図2は、第1の実施形態の挿入部可撓管20の芯材に用いられる連結部材を示す斜視図である。図3は、図2のIII−III線を通り、芯材の中心軸に垂直な平面で連結部材を切断した断面図である。
【0018】
挿入部可撓管20の芯材は、金属性の複数の連結部材24により形成されている。連結部材24は短筒状(筒状部材)であり、本体部24Bと、本体部24Bから延びる舌片24Pが設けられている。舌片24P(連結部)は、連結部材24同士を連結するために形成されている。舌片24Pには、後述のリベットを通すための連結穴24Mが設けられている。
【0019】
舌片24Pは、連結部材24の第1端部24E側、および第2端部24F側のいずれにも一対ずつが設けられている。そして、第1端部24Eに設けられた舌片24Pと、第2端部24Fに設けられた舌片24Pとは、中心軸24Cを中心として周方向に90°ずれた位置に配置されている。
【0020】
本体部24Bの外側表面24S(後述する外皮層側の表面)には、複数の凹部24Gが設けられている。凹部24Gは、芯材を構成する連結部材24と、芯材の周囲を覆う後述の外皮層(図示せず)とを密着させるために形成されている。凹部24Gはいずれも、中心軸24Cに沿った方向、すなわち芯材の長手方向に沿って延びている。
【0021】
複数の凹部24Gは、中心軸24Cに垂直な平面、すなわち芯材の長手方向に対して垂直な平面で切断した連結部材24の略円形の切断面(図3参照)において、互いに対向するように設けられている。より具体的には、一つの連結部材24に4つの凹部24Gが設けられており、4つの凹部24Gは、中心軸24Cを中心として本体部24Bの周方向に沿って90°ずつ、ずれた位置に等間隔で配置されている。このため、互いに対向する凹部24Gの中心点と中心軸24Cとを結ぶ2本の破線L1、L2は、互いに直交する。
【0022】
一つの連結部材24に含まれる4つの凹部24Gは、それぞれ、連結された他の連結部材24において対応する位置にある凹部24Gと、芯材の長手方向(中心軸24C)に平行な同一直線上にある(図2参照)。なお、凹部24Gの深さは、連結部材24の強度を適度なレベルに保てる範囲、例えば本体部24Bの厚さD(図3参照)の約80%以内に調整されている。
【0023】
なお図3においては、図示されていない舌片24Pの位置を示すための一点鎖線M1、M2が示されている。これらの一点鎖線M1、M2は、図示された連結部材24において、それぞれ対になる2つの舌片24Pの中心位置同士を結ぶ直線である。この図3からも明らかであるように、凹部24Gは、2つの隣接する舌片24Pの中間部に設けられている。
【0024】
また、凹部24Gは、有底であって本体部24Bを貫通する穴ではない。そして連結部材24の内面、すなわち本体部24Bの内側表面24Rは、凹凸のない平滑な曲面である。
【0025】
次に、本実施形態の挿入部可撓管20の内部構造について説明する。図4は、本実施形態の挿入部可撓管20を長手方向に沿った平面で切断した断面図である。図5は、本実施形態の挿入部可撓管20を長手方向に垂直な平面で切断した断面図である。
【0026】
互いに隣接する連結部材24の舌片24P同士は、連結穴24M(図2参照)を通るリベット26により固定されている。このため、隣接する連結部材24同士は、相対回動自在に連結されている。このように、中心軸24C(図2参照)が、図4の矢印Aで示される挿入部可撓管20の長手方向に伸びる中心軸20Cと一致するように、複数の連結部材24を同軸に連結させて芯材30が形成されている。なお図4では、説明の便宜上、本来は図示されない凹部24Gが破線で示されており、舌片24P等の一部が省略されている。
【0027】
芯材30の内側には、撮像素子により生成された画像信号をプロセッサに送信するためのケーブルや、プロセッサにある光源からの光を通過させるライトガイド、送気・送水管(いずれも図示せず)等が通っている。
【0028】
また、芯材30の周囲には、挿入部可撓管20の表面を覆う外皮層32が設けられている。外皮層32の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチテレフタレート等のポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリイミド等の可撓性を有する樹脂、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリスチレン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー等が使用される。そして、これらの樹脂等を複数組み合わせて外皮層32を形成しても良い。
【0029】
芯材30の外側には、網状部材36が設けられている。外皮層32の内側領域は、網状部材36の隙間と凹部24Gを埋めている(図5参照)。すなわち外皮層32の突出部32Pは、芯材30と外皮層32との間にある網状部材36を介して、凹部24Gに充填されている。このような内部構造を有する挿入部可撓管20は、芯材30の周囲を網状部材36で覆った中間体(図示せず)を、外皮層32の材料とともに押出成形することにより形成される。
【0030】
図5に示されるように、凹部24Gにおいては、接着剤層40が設けられている。接着剤層40は、金属製の連結部材24と外皮層32の突出部32Pとをより強固に密着させるために形成される。接着剤層40を設けるために、上述の押出成形に先立って、凹部24Gの底面に接着剤、例えばエポキシ系、ウレタン系の接着剤が塗布される。なお接着剤層40の材料は、連結部材24と外皮層32の材質に応じて適宜、選択される。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、外皮層32の突出部32P(図5参照)を連結部材24の凹部24Gに密着させることにより、外皮層32と外側表面24Sとの接触面積が広がる。このため、外皮層32の位置ずれ、剥離が防止され、挿入部可撓管20の表面形状が安定したままで維持される。特に、挿入部可撓管20の長手方向に沿った複数本の直線上に並ぶ多くの凹部24Gを、周方向においてバランス良く等間隔で形成する(図2参照)ことにより、図5の矢印Bに示される挿入部可撓管20の周方向に沿った外皮層32の位置ずれも確実に防止される。
【0032】
さらに、外皮層32とその内側の芯材30(図4参照)とが強固に固定されるため、挿入部可撓管20はトルク伝達性にも優れている。このため、挿入部可撓管20の基端部を保持したユーザは、挿入部可撓管20を湾曲させ、あるいは捩ることにより、体腔内に容易に挿入することができる。
【0033】
また、連結部材24における内側表面24Rが平滑であって、外皮層32の突出部32Pを芯材30の内側まで到達させてはいないことから、ケーブル等の内蔵物に突出部32Pが接触することはない。このため、芯材30の内側に配置された内蔵物は確実に保護される。
【0034】
次に、他の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態の連結部材24を示す斜視図である。図7は、第3の実施形態の連結部材24を示す斜視図であり、図8は、第3の実施形態の連結部材24の本体部24Bの断面図である。
【0035】
第2および第3の実施形態では、主として凹部24Gの形状が、第1の実施形態と異なる。第2の実施形態では、芯材30の長手方向に沿った細長い溝状の凹部24Gが、一つの本体部24Bに多数設けられている。このため、第1の実施形態に比べ、外皮層32の位置ずれ、剥離をより確実に防止できる。
【0036】
また、第3の実施形態においては、ディンプル状の凹部24Gが設けられている。すなわち本実施形態の凹部24Gは、多数の穴であり、本体部24Bの外側表面24S全域に渡って設けられている。このように、例えば芯材30の長手方向などの特定の方向に沿った直線上に設けるのではなく、多くの凹部24Gを分散して形成することにより、挿入部可撓管20の周方向のみならず長手方向における外皮層32の位置ずれも確実に防止できる。
【0037】
なお図8に示されたように、ディンプル状の凹部24Gの断面形状を矩形状にすると、凹部24Gに埋め込まれる外皮層32の突出部32P(ここでは図示せず)の脱離をより確実に防止しやすいものの、本体部24Bの加工を容易にすべく、凹部24Gの角部のみを曲面にしても良い。また、凹部24Gの底面を曲面のみで形成し、おわん状としても良い。
【0038】
以上のように、第2、および第3の実施形態によれば、外皮層32の位置ずれ、剥離をより確実に防止し、安定性に優れた挿入部可撓管20を実現できる。なお、これらの実施形態においては、他の連結部材24の連結穴24Mに係合する突起24Aが舌片24Pに設けられている(図6および8参照)。このため、第1の実施形態におけるリベット26(図4参照)は不要である。
【0039】
連結部材24および外皮層32等の挿入部可撓管20の各部材の材質、形状等は、いずれの実施形態にも限定されない。例えば、芯材30(図4参照)に含まれる一部の連結部材24にのみ、凹部24Gを設けても良い。また、凹部24Gを、2つの隣り合った舌片24Pの間で、いずれか一方の舌片24Pに近い位置に設けても良く、全ての連結部材24において同一直線上に並ぶように凹部24Gを形成した第1の実施形態(図2参照)とは異なり、一部の凹部24Gのみを直線上に設けても良い。あるいは、芯材30の長手方向以外の方向、例えば長手方向に対して斜めに延びる凹部24Gを設けても良い。
【0040】
また、単一の連結部材24に複数の凹部24Gを設けることが好ましいが、凹部24Gを一対のみ設けても良い。この場合、図3に示された連結部材24の切断面において、一対の凹部24Gが互いに対抗することが好ましい。また、各連結部材24に凹部24Gを一箇所のみ形成しても良い。
【0041】
接着剤層40(図5参照)を、凹部24Gの底面のみならず、連結部材24の外側表面24S全域に設けても良い。この場合、外皮層32との接着面が広くなることから、より強固に密着させ得る。また、突起24A(図6、8参照)を第1の実施形態の連結部材24に設けても良く、第2、第3の実施形態において、突起24Aを設けずにリベット26(図4参照)を用いても良い。
【0042】
また、医療用以外の分野、例えば工業用の内視鏡の挿入部可撓管において、上述の実施形態を採用しても良い。
【符号の説明】
【0043】
20 挿入部可撓管(内視鏡用可撓管)
24 連結部材(筒状部材)
24G 凹部
24P 舌片(連結部)
24R 内側表面(内面)
24S 外側表面24S(外皮層側の表面)
30 芯材
32 外皮層
36 網状部材
40 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結部材が互いに連結されている芯材と、前記芯材の周囲に設けられた外皮層とを備えた内視鏡用の可撓管であって、
前記連結部材の前記外皮層側の表面において凹部が形成されており、前記外皮層の一部が前記凹部に充填されていることを特徴とする内視鏡用可撓管。
【請求項2】
前記連結部材の内面が平滑であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項3】
前記凹部が、単一の前記連結部材に複数設けられており、複数の前記凹部が、前記連結部材における前記芯材の長手方向に垂直な切断面において互いに対向するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項4】
前記連結部材が、前記芯材の長手方向に垂直な切断面が略円形の筒状部材であり、複数の前記凹部が、前記切断面における周方向において等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項5】
前記連結部材において、前記連結部材同士を連結するための連結部が複数設けられており、前記凹部が、互いに隣接する前記連結部の中間部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項6】
複数の前記連結部材において、前記凹部が、前記芯材の長手方向に沿った直線上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項7】
前記凹部が、前記芯材の長手方向に沿って延びる形状を有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項8】
前記凹部が、ディンプル状であることを有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項9】
前記凹部において接着剤層が形成されていることを有することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。
【請求項10】
前記芯材の外側に設けられた網状部材をさらに有し、前記外皮層の一部が、前記網状部材を介して前記凹部に充填されていることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用可撓管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate