説明

内視鏡用画像処理装置、内視鏡装置及び画像処理方法

【課題】境界領域による視認性低下を抑制することが可能な内視鏡用画像処理装置、内視鏡装置及び画像処理方法等を提供すること
【解決手段】内視鏡用画像処理装置は、画像取得部305と、境界領域補正部315を含む。画像取得部305は、前方視野に対応する前方画像と、側方視野に対応する側方画像とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得する。取得画像における前方視野に対応する領域を前方領域とし、取得画像における側方視野に対応する領域を側方領域とする。境界領域補正部315は、前方領域の画像及び側方領域の画像のうちの少なくとも一方を、前方領域と側方領域の境界となる領域である境界領域に対してオーバーラップする処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用画像処理装置、内視鏡装置及び画像処理方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から内視鏡診断において体腔内の病変検出精度を向上させたいという要求があり、170度の広角光学系を有する内視鏡スコープが開発されている。
【0003】
上記内視鏡スコープでは、例えば大腸のような大きなヒダを持った臓器のヒダの裏等のように、側方のやや後方に位置する領域は視野範囲に入らないことがあるため、そのような領域に存在する病変を画像として取得することが困難な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−117665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ヒダ裏等のような側方のやや後方に位置する領域を観察するために、180度以上の画角を有する魚眼レンズを備えた内視鏡スコープを用いる手法が考えられる。
【0006】
しかしながら、この手法では、魚眼レンズの光学収差(特に歪曲収差)が大きいため、側方視野となる画像周辺部が大きく歪み、ヒダ裏の病変を十分大きなサイズで観察することが困難である。
【0007】
特許文献1には、前方視野と側方視野の両方を同時に観察する光学系が開示されている。この光学系では、側方視野である画像周辺部の歪曲収差を小さくできるため、例えば大腸のヒダ裏観察に有効である。
【0008】
しかしながら、上記光学系では、撮像画像の中央部が前方視野に対応し、その中央部の周辺のドーナッツ状領域が側方視野に対応するが、その2つの視野の間に死角となる境界領域が形成されるという課題がある。例えば、上記光学系で大腸を観察すると、本来ヒダが無いにも関わらず、境界領域をヒダと見誤る可能性がある。
【0009】
本発明の幾つかの態様によれば、境界領域による視認性低下を抑制することが可能な内視鏡用画像処理装置、内視鏡装置及び画像処理方法等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、前方視野に対応する前方画像と、側方視野に対応する側方画像とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得する画像取得部と、前記取得画像における前記前方視野に対応する領域を前方領域とし、前記取得画像における前記側方視野に対応する領域を側方領域とする場合に、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの少なくとも一方を、前記前方領域と前記側方領域の境界となる領域である境界領域に対してオーバーラップさせるオーバーラップ処理を行う境界領域補正部と、を含む内視鏡用画像処理装置に関係する。
【0011】
本発明の一態様によれば、前方画像と側方画像とが1枚の取得画像として形成された画像信号が取得され、前方領域の画像及び側方領域の画像のうちの一方を、境界領域に対してオーバーラップする処理が行われる。これにより、境界領域による視認性低下を抑制することが可能になる。
【0012】
また本発明の他の態様は、前方視野に対応する前方画像と、側方視野に対応する側方画像とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得し、前記取得画像における前記前方視野に対応する領域を前方領域とし、前記取得画像における前記側方視野に対応する領域を側方領域とする場合に、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの少なくとも一方を、前記前方領域と前記側方領域の境界となる領域である境界領域に対してオーバーラップさせるオーバーラップ処理を行う画像処理方法に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】内視鏡装置の第1の構成例。
【図2】回転色フィルタの詳細な構成例。
【図3】色フィルタの分光透過率特性の例。
【図4】図4(A)、図4(B)は、対物レンズの詳細な構成例。図4(C)は、対物レンズにより撮像画像される画像についての説明図。
【図5】画像処理部の第1の詳細な構成例。
【図6】図6(A)〜図6(E)は、境界領域を補正する処理についての説明図。
【図7】図7(A)〜図7(E)は、境界領域を補正する処理についての説明図。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、変倍処理についての説明図。
【図9】抽出境界線の設定手法の変形例についての説明図。
【図10】内視鏡装置の第2の構成例。
【図11】ベイヤ配列における画素配列の模式図。
【図12】画像処理部の第2の詳細な構成例。
【図13】抽出領域設定部の詳細な構成例。
【図14】図14(A)〜図14(C)は、シェーディング補正についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0015】
1.本実施形態の概要
図4(A)等で後述するように、本実施形態の内視鏡装置の光学系では、側方視野を観察するための反射光学系と、前方視野を観察するための屈折光学系が組み合わされている。このような光学系で撮像された画像では、反射光学系の視野と屈折光学系の視野の境界領域にシェーディングが発生する。このような局所的にシェーディングがある状態で大腸を観察すると、境界領域に本来のヒダが無い状態であっても、境界領域のシェーディングをヒダによる影と見誤る可能性があるという課題がある。
【0016】
そこで本実施形態では、図6(A)〜図7(E)等で説明するように、前方視野に対応する領域FR、又は側方視野に対応する領域SRを拡大する処理を行い、その拡大した領域を、前方視野と側方視野の境界領域にオーバーラップする。これにより、光学系によるシェーディングを表示画像から消すことが可能になるので、境界領域を大腸のヒダによる影と誤認するのを防止でき、視認性の高い広視野の内視鏡装置を実現できる。
【0017】
2.第1の実施形態
2.1.内視鏡装置
図1に、内視鏡装置の第1の構成例を示す。内視鏡装置は、光源部100、撮像部200、制御装置300(プロセッサ部)、表示部400、外部I/F部500を含む。
【0018】
光源部100は、白色光源101と、複数の分光透過率を持つ回転色フィルタ102と、回転色フィルタ102を駆動させる回転駆動部103と、回転色フィルタ102からの分光特性を持った光をライトガイドファイバ201の入射端面に集光させる集光レンズ104と、を含む。
【0019】
図2に示すように、回転色フィルタ102は、例えば三原色の赤(R)の色フィルタ601と、緑(G)の色フィルタ602と、青(B)の色フィルタ603と、回転モータ803と、から構成される。図3に、これら3つの色フィルタの分光特性を示す。
【0020】
回転駆動部103は、制御装置300の制御部302からの制御信号に基づいて、撮像素子209の撮像期間と同期して回転色フィルタ102を所定回転数で回転させる。例えば、色フィルタを1秒間に20回転させると、各色フィルタは60分の1秒間隔で入射白色光を横切ることになる。この場合、撮像素子209は、60分の1秒間隔で3原色の各色光(R或はG或はB)に対する観察対象からの反射光を撮像し、画像の転送を完了することになる。即ち、本実施形態では、R画像、G画像、B画像が60分の1秒間隔で撮像される面順次方式の撮像を行い、実質のフレームレートは20fps(fps: frame per second)となる。
【0021】
撮像部200は、例えば大腸などの体腔への挿入を可能にするため細長くかつ湾曲可能に形成される。撮像部200は、光源部100により集光された光を導くためのライトガイドファイバ201と、ライトガイドファイバ201により先端まで導かれた光を拡散させて観察対象に照射する照明レンズ202、204と、を含む。また撮像部200は、観察対象から戻る反射光を集光する対物レンズ203と、集光した結像光を検出するための撮像素子209と、撮像素子209からの光電変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部210と、を含む。また撮像部200は、メモリ211と、制御装置300に対して撮像部200を着脱可能にするためのコネクタ212と、を含む。
【0022】
メモリ211は、後述する前方視野画像と側方視野画像の抽出境界線情報や、前方視野画像と側方視野画像の表示倍率情報や、撮像部200に固有の製造バラツキに関係する固有情報が記録される。
【0023】
撮像素子209は、モノクロ単板撮像素子であり、例えばCCDやCMOSイメージセンサ等が利用できる。
【0024】
対物レンズ203は、後述するように前方観察光学系と側方観察光学系の組み合わせにより180度以上の視野角を持つ光学系で構成され、例えば大腸のヒダ裏にある病変部10を観察できるようになっている。
【0025】
照明レンズ202、204は、対物レンズ203の視野角内の観察対象を均一に照明できるように対物レンズ203の光軸に対して外側を向いて配置される。本実施形態では、数千本からなるライトガイドファイバ201を2つに分割したが、更に多くに分割して対応する照明レンズを内視鏡スコープ先端に配置してもよい。これにより広視野角の領域をより均一に照明できるようになる。また照明としてLEDや有機EL等の発光素子を内視鏡スコープ先端に多数配置してもよい。
【0026】
制御装置300は、前方視野画像と側方視野画像の境界領域を補正する処理を行う画像処理部301と、内視鏡装置各部の制御を行う制御部302と、を含む。
【0027】
表示部400は、例えばCRTや液晶モニタ等の動画表示可能な表示装置により構成される。
【0028】
外部I/F部500は、この内視鏡装置に対するユーザからの入力等を行うためのインターフェースである。例えば、外部I/F部500は、電源のオン/オフを行うための電源スイッチや、撮影操作を開始するためのシャッタボタン、撮影モードやその他各種のモードを切り換えるためのモード切換スイッチ(例えば前方視野画像と側方視野画像の表示面積比率を手動で切換える為のスイッチ)などを含む。外部I/F部500は、入力された情報を制御部302へ出力する。
【0029】
2.2.対物レンズ
図4(A)に、前方視野と側方視野を観察する対物レンズの詳細な構成例を示す。図4(A)に示すように、レンズ20の前面には、前方視野からの光が入射し、レンズ20の側面には、側方視野からの光が入射する。前方視野からの光は、レンズ20の透過部21(屈折部)を透過し、撮像素子209へ導かれる。側方視野からの光は、レンズ20の反射部26、22に反射され、撮像部200へ導かれる。
【0030】
図4(B)に示すように、レンズ20を光軸Z前方側から見た場合、前方視野からの光を透過する透過部21(透過領域)と、側方視野からの光線を反射する反射部22(反射領域)から構成される。このような光学系では、反射部22と透過部21の境界領域において、前方視野の被写体からの反射光が一部遮られる。そのため、図4(C)に示すように、撮像素子上に結像した前方視野画像23と側方視野画像24の境界領域には、シェーディングが発生する。このシェーディングにより、境界領域は黒い帯状の円環領域25となる。
【0031】
ここで、前方視野とは、光軸方向を含む前方の視野範囲であり、例えば光軸に対して0度〜70度の範囲である。側方視野とは、光軸に直交する方向を含む側方の視野範囲であり、例えば光軸に対して70度〜135度の範囲である。本実施形態の対物レンズ203は、例えば光軸に対して0度〜110度の視野範囲を有する。
【0032】
また、シェーディングとは、画像上における陰影であり、光学系に起因して画像上において他の領域よりも暗い(例えば輝度が小さい)ことである。例えば、図4(A)に示すように、前方視野と側方視野の間にはレンズ20による死角が生じ、その死角に対応する画像上の影がシェーディングとなる。あるいは、透過部21を透過する前方視野の光は、光学系によるケラレ等によって周辺減光を生じ、その周辺減光がシェーディングとなる。
【0033】
2.3.画像処理部
図5に、画像処理部301の第1の詳細な構成例を示す。画像処理部301は、画像取得部305、出力画像生成部310、境界領域補正部315、境界線描画部360を含む。境界領域補正部315は、領域抽出部320、変倍処理部325、合成部350を含む。変倍処理部325は、第1領域倍率補正部330、第2領域倍率補正部340を含む。
【0034】
各構成部間の接続関係とデータの流れを説明する。A/D変換部210から出力された撮像画像は、画像取得部305に入力される。制御部302は、画像取得部305と、出力画像生成部310と、領域抽出部320と、第1領域倍率補正部330と、第2領域倍率補正部340と、境界線描画部360と、に接続されている。制御部302には、メモリ211に記録された撮像部200に固有の情報(前方視野画像及び側方視野画像の抽出境界情報や、前方視野画像と側方視野画像の表示倍率情報)が入力される。
【0035】
画像取得部305は、前方視野と側方視野が撮像された1枚の画像を取得し、取得した画像を出力画像生成部310に出力する。具体的には、上述のレンズ20を用いて前方視野と側方視野が同時に1枚の画像として撮像され、画像取得部305が、その1枚の画像を取得する。なお、前方視野と側方視野は同時に撮像されなくてもよい。例えば、前方視野と側方視野が、別々の撮像動作により順次撮像され、画像取得部305が、その別々に撮像された前方視野画像と側方視野画像を合成して1枚の画像として取得してもよい。
【0036】
出力画像生成部310は、入力された撮像画像を、制御部302から出力される出力画像生成パラメータ(例えばOBクランプ、ホワイトバランス、γ変換テーブル、強調係数、拡大倍率など)に基づいて表示モニタに表示可能な画像形式に変換し、変換後の画像を出力画像として領域抽出部320へ出力する。
【0037】
境界領域補正部315は、前方視野画像及び側方視野画像のうちの少なくとも一方を、前方視野画像と側方視野画像の境界領域に対してオーバーラップさせて、境界領域を縮小するように補正する処理を行う。領域抽出部320には、メモリ211に記録されている前方視野画像と側方視野画像に対する抽出境界線情報が、制御部302を介して入力される。領域抽出部320により出力画像から抽出された前方視野画像は、第1領域倍率補正部330へ出力される。領域抽出部320により出力画像から抽出された側方視野画像は第2領域倍率補正部340へ出力される。
【0038】
第1領域倍率補正部330は、入力される前方視野画像に対する変倍処理を、制御部302から出力される倍率情報に基づいて行い、変倍処理後の前方視野画像を合成部350へ出力する。前方視野画像に対する変倍処理として、倍率情報に基づく拡大処理と、等倍処理(倍率変化無し)と、縮小処理のうちのいずれかが、適宜行われる。この変倍処理は、前方視野画像の中心を基準としたときの径方向に沿って行われることが好ましい。
【0039】
第2領域倍率補正部340は、入力される側方視野画像に対する変倍処理を、制御部302から出力される倍率情報に基づいて行い、変倍処理後の側方視野画像を合成部350へ出力する。側方視野画像に対する変倍処理として、倍率情報に基づく拡大処理と、等倍処理(倍率変化無し)と、縮小処理のうちのいずれかが、適宜行われる。
【0040】
合成部350は、第1領域倍率補正部330から出力される変倍処理後の前方視野画像と、第2領域倍率補正部340から出力される変倍処理後の側方視野画像とを、境界領域でオーバーラップさせるようにして合成画像を作成し、合成画像を境界線描画部360へ出力する。オーバーラップの方法には、変倍後の前方視野画像を変倍後の側方視野画像にオーバーラップする方法、変倍後の側方視野画像を変倍後の前方視野画像にオーバーラップする方法がある。また、境界領域の前方視野画像側の領域において、変倍後の前方視野画像を変倍後の側方視野画像にオーバーラップするとともに、境界領域の側方視野画像側の領域において、変倍後の側方視野画像を変倍後の前方視野画像にオーバーラップしてもよい。
【0041】
境界線描画部360は、合成部350から出力される合成画像に対して、制御部302からの前方視野画像と側方視野画像のオーバーラップ境界位置情報に基づいて、所定色の境界線を描画し、描画後の画像を表示部400へ出力する。所定色は、例えば、黒等の固定色、或は周辺の色に対して反対色となる色などである。描画される境界線は、合成された前方視野画像と側方視野画像の境界が識別可能な形態であればよく、例えば実線や破線やその他の形態の線である。
【0042】
次に、図6(A)〜図6(E)に示す模式図を用いて、前方視野画像を用いて前方視野画像と側方視野画像の境界領域を補正する処理について説明する。
【0043】
図6(A)には、出力画像生成部310から出力される出力画像を示す。出力画像には、前方視野画像FR、側方視野画像SR、境界領域BRが含まれる。L1は、前方視野画像FRを抽出するための抽出境界線を表す。CPは、前方視野画像FRの中心位置を表す。
【0044】
図6(B)に示すように、制御部302からの抽出境界線L1に基づいて、領域抽出部320により前方視野画像FRが抽出される。抽出された前方視野画像FRは、第1領域倍率補正部330により、制御部302からの中心位置CPを基準に、制御部302からの倍率情報に基づいて径方向に拡大処理される。
【0045】
図6(C)に示すように、第1領域倍率補正部330から出力された拡大された前方視野画像FR’は、合成部350により、第2領域倍率補正部340から出力された側方視野画像SR(例えば倍率変化無し)にオーバーラップされる。オーバーラップにより合成された画像は、合成画像として出力される。
【0046】
図6(D)に示すように、合成部350から出力された合成画像のオーバーラップ境界部に、境界線描画部360により境界線WLが描画される。描画後の画像は、前方視野画像と側方視野画像がより明確に識別可能な境界線描画済みの合成画像として出力される。オーバーラップ境界部は、例えばオーバーラップした前方視野画像FR’の外縁である。
【0047】
なお、図6(E)に示すように、上記において前方視野画像FR(前方領域の画像)とは、抽出境界線L1(第1境界線)により抽出された画像を表し、側方視野画像SRとは、側方観察光学系(図4(A)の反射部22、26)により撮像される画像を表す。また、境界領域BRとは、光学系の死角や周辺減光により生じるシェーディング領域を表す。
【0048】
次に、図7(A)〜図7(E)に示す模式図を用いて、側方視野画像を用いた前方視野画像と側方視野画像の境界領域の補正処理について説明する。
【0049】
図7(A)に示すように、L2は、側方視野画像SRを抽出するための抽出境界線を表す。SRPは、側方視野SRの外周を表す。
【0050】
図7(B)に示すように、制御部302からの抽出境界線L2に基づいて、領域抽出部320により側方視野画像SRが抽出される。抽出された側方視野画像SRは、第2領域倍率補正部340により、制御部302からの情報である外周SRPを基準に、制御部302からの倍率情報に基づいて中心位置CPに向かって径方向に拡大処理される。
【0051】
図7(C)に示すように、第2領域倍率補正部340から出力された拡大された側方視野画像SR’は、合成部350により、第1領域倍率補正部330から出力された前方視野画像FR(例えば倍率変化無し)にオーバーラップされる。オーバーラップにより合成された画像は、合成画像として出力される。
【0052】
図7(D)に示すように、合成部350から出力された合成画像のオーバーラップ境界部に、境界線描画部360により境界線WLが描画される。描画後の画像は、前方視野画像と側方視野画像がより明確に識別可能な境界線描画済みの合成画像として出力される。オーバーラップ境界部は、例えばオーバーラップした側方視野画像SR’の内縁である。
【0053】
なお、図7(E)に示すように、上記において前方視野画像FRとは、前方観察光学系(図4(A)の透過部21)により撮像される画像を表し、側方視野画像SR(側方領域の画像)とは、抽出境界線L2(第2境界線)により抽出された画像を表す。
【0054】
ここで、上述の前方視野画像の抽出境界線L1と、側方視野画像の抽出境界線L2は、例えばグレーパッチなどの均一な色チャートを撮影することにより設定する。具体的には、チャートが撮影された画像において、前方視野画像に属する第1の円と、側方視野画像に属する第2の円を設定する。第1、第2の円は中心を共有する円である。この2つの円の円周上の各最近点に対応する2つの画素の画素値差の絶対値が所定値以内となる場合において、第1、第2の円の半径差が最も小さな第1、第2の円を、抽出境界線L1、L2として設定する。このようにすれば、オーバーラップしたときに、オーバーラップ境界部において画素値の差を所定値より小さくできるため、見た目に違和感の無い画像を表示可能になる。
【0055】
なお、上記では、前方視野画像又は側方視野画像の一方を変倍処理したが、本実施形態ではこれに限定されず、前方視野画像と側方視野画像の両方を変倍処理して合成することで境界領域を補正してもよい。
【0056】
次に、図8(A)〜図8(C)を用いて、変倍処理部325が行う変倍処理について説明する。
【0057】
図8(A)に示すように、前方視野画像と側方視野画像を両方とも拡大して境界領域を補正する場合、変倍処理による変位量は、前方視野画像において正であり、側方視野画像において負である。
【0058】
図8(A)において、グラフの横軸は、前方視野画像及び側方視野画像の中心(中心位置は2つの視野画像で共通)からの距離を表し、グラフの縦軸は、累積変位量を表す。前方視野画像における累積変位量の起点は、前方視野画像の中心であり、側方視野画像における累積変位量の起点は、側方視野画像の外周である。FLは、前方視野画像に対する変位量の特性線を表し、SLは、側方視野画像に対する変位量の特性線を表す。D1は、前方視野画像の中心から抽出境界線までの距離を表し、D2は、側方視野画像の中心から抽出境界線までの距離を表し、D3は、中心から側方視野画像の外周までの距離を表す。
【0059】
図8(B)に示すように、前方視野画像を拡大し、側方視野画像を縮小して境界領域を補正する場合、変倍処理による変位量は、前方視野画像と側方視野画像において正である。
【0060】
図8(C)に示すように、前方視野画像を縮小し、側方視野画像を拡大して境界領域を補正する場合、変倍処理による変位量は、前方視野画像と側方視野画像において負である。
【0061】
上記3つの例の変倍率と変位量の関係式は以下の通りである。中心からの距離rに対する前方視野画像の変倍率V(r)の一例を、下式(1)に示す。
(r)=α+β+γ (1)
【0062】
前方視野画像の変位量D(r)を、下式(2)に示す。最大変位量、即ち距離D1における変位量は、D(D1)である。ここで、∫0→rは、区間[0,r]の積分を表す。
(r)=∫0→r(x)xdx (2)
【0063】
中心からの距離rに対する側方視野画像の変倍率V(r)の一例を、下式(3)に示す。
(r)=α+β+γ (3)
【0064】
側方視野画像の変位量D(r)を、下式(4)に示す。最大変位量、即ち距離D2における変位量は、D(D2)となる。ここで、∫D3→rは、区間[D3,r]の積分を表す。
(r)=∫D3→r(x)xdx (4)
【0065】
前方視野画像の最大変位量D(D1)と側方視野画像の最大変位量D(D2)は、下式(5)の関係を満足する。
D1+D(D1)≧D2+D(D2) (5)
【0066】
例えば、外部I/F部500のスイッチ操作により観察モードの変更を行い、上記変倍率パラメータα、β、γ、α、β、γを変更することで、境界領域を補正しつつ、前方視野画像と側方視野画像の全体及び局所的な表示比率を自由に変更することができる。これにより、観察したい病変部を自由に拡大表示することが可能となる。
【0067】
以上の実施形態によれば、前方視野画像と側方視野画像の境界領域がヒダの影と誤認されることを防止でき、前方視野画像と側方視野画像の表示倍率を自由に変更できる。これにより、病変部の発見率向上に寄与することができる。
【0068】
なお、上記の変倍率V(r)、V(r)において、係数α、β、α、βは、ゼロであってもよい。この場合、中心からの距離rに依らず一定の変倍率γ、γで拡大縮小できる。
【0069】
また、図9に示すように、抽出境界線L1、L2を、マージン領域MR1、MR2を確保して設定してもよい。MR1は、境界領域BRと抽出境界線L1との間のマージン領域であり、MR2は、境界領域BRと抽出境界線L2との間のマージン領域である。境界領域BRは、光学設計上、観察に適さない視野角として決定された領域であり、その境界領域BRに対して統計的な製造バラツキを考慮して十分なマージン領域MR1、MR2を確保する。このようにすれば、個別の撮像部200に固有の抽出境界線L1、L2を記憶するメモリ211を用意しなくてもよいため、撮像部200のコスト低減を図ることができる。
【0070】
以上の実施形態によれば、図5に示すように内視鏡用画像処理装置は画像取得部305と境界領域補正部315を含む。図4で説明したように、画像取得部305は、前方視野に対応する前方画像(前方視野画像23)と、側方視野に対応する側方画像(側方視野画像24)とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得する。図6(A)〜図7(D)で説明したように、境界領域補正部315は、取得画像における前方視野に対応する領域を前方領域とし、取得画像における側方視野に対応する領域を側方領域とする場合に、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの少なくとも一方を、前方領域と側方領域の境界となる領域である境界領域BRに対してオーバーラップさせるオーバーラップ処理を行う。
【0071】
このようにすれば、境界領域BRによる視認性低下を抑制することが可能になる。即ち、境界領域BRを補正することで境界領域BRのシェーディングを無くすことができるため、そのシェーディングをヒダの影と誤認することを防止できる。また、診断に不必要な領域を表示上から削除できるため、病変判定の効率向上が得られる。
【0072】
ここで、オーバーラップ処理とは、画像の所定領域(本実施形態では境界領域)に対して、その所定領域とは異なる画像を上から重ねることである。例えば、画像が記憶される画像メモリにおいて、画像の所定領域に対応するメモリ領域に他の画像(本実施形態では、変倍後の画像)のデータを上書きすることにより、オーバーラップ処理が行われる。あるいは、画像から所定領域が削除され、その画像と他の画像とが1つの画像として合成されることによりオーバーラップ処理が行われる。
【0073】
また、境界領域とは、前方領域と側方領域の間に存在するシェーディング領域であり、例えば本実施形態では、後述のように前方観察光学系と側方観察光学系の間の死角や、前方観察光学系の周辺減光により生じる領域である。あるいは、図5で説明したように前方視野と側方視野が時系列に撮像されてもよく、この場合、境界領域とは、前方画像と側方画像が合成された1枚の画像において、撮像光学系や合成処理等により生じたシェーディング領域である。
【0074】
また本実施形態では、図5に示すように、境界領域補正部315は変倍処理部325と合成部350を含む。変倍処理部325は、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRの少なくとも一方の表示倍率を変更する変倍処理を行う。合成部350は、変倍処理後の前方領域の画像と側方領域の画像を合成することにより、オーバーラップ処理を行う。
【0075】
より具体的には、境界領域補正部315は領域抽出部320を有する。図6(A)〜図7(E)で説明したように、領域抽出部320は、取得画像から、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの一方を変倍処理の対象画像として抽出する。変倍処理部325は、その対象画像を拡大する変倍処理を行う。合成部350は、拡大された対象領域(FR’又はSR’)と、前方領域及び側方領域のうちの他方(SR又はFR)とを、合成する。
【0076】
例えば、図6(A)や図7(B)で説明したように、変倍処理部325は、前方視野画像FRの中心CPを基準としたときの径方向に沿って対象画像を拡大する処理を変倍処理として行う。ここで、径方向に沿った拡大処理は、図6(B)に示すように中心CPから遠ざかる方向に対象画像を拡大する処理でもよいし、図7(B)に示すように中心CPへ近づく方向に対象画像を拡大する処理でもよい。あるいは、対象画像の中心CP側を中心CPへ近づく方向に、対象画像の外側を中心CPから遠ざかる方向に拡大する処理でもよい。
【0077】
このようにすれば、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの一方を拡大し、他方と合成することで、境界領域BRに対してオーバーラップ処理できる。一方のみを変倍処理するため、画像メモリ等のハードウェアを節約できる。
【0078】
また本実施形態では、図8(A)〜図8(C)で説明したように、変倍処理部325は、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの一方を拡大する変倍処理を行い、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの他方を縮小する変倍処理を行ってもよい。合成部350は、変倍処理後の前方領域の画像及び側方領域の画像を合成してもよい。
【0079】
このようにすれば、前方領域の画像FR及び側方領域の画像SRのうちの一方を拡大し、他方を縮小して合成することで、境界領域BRに対してオーバーラップ処理できる。前方領域の画像FRと側方領域の画像SRを自由に拡大縮小できるため、観察領域を自在に拡大表示できる。例えば、視野中央部の病変部を観察する場合には前方領域の画像FRを拡大し、スクリーニングにおいて視野側方のヒダ裏を観察する場合には側方視野の画像SRを拡大できる。
【0080】
また本実施形態では、図5に示すように、内視鏡用画像処理装置は境界線描画部360を含む。図6(D)等で説明したように、境界線描画部360は、合成された前方領域の画像と側方領域の画像の境界を識別可能にするための境界線WLを描画する。
【0081】
このようにすれば、前方領域の画像と側方領域の画像の境界を明確に表示できる。即ち、図4(A)等で説明したように光学系により死角が生じ、その死角に対応する境界領域BRをオーバーラップ処理により隠すため、合成された前方領域の画像と側方領域の画像の境界は不連続な画像になる。例えば鉗子等が境界にあると視覚的に違和感を与える可能性があるため、境界線を描画することで、その違和感を軽減できる。
【0082】
また本実施形態では、境界領域は、図4(A)〜図4(C)で説明したように、前方視野と側方視野を撮像するための光学系(レンズ20)における光学設計値に基づく所定視野角の環状領域25である。図9で説明したように、境界領域BRと前方領域の間の境界線である第1境界線L1は、環状領域BRよりも内側に設定される。境界領域BRと側方領域の間の境界線である第2境界線L2は、環状領域BRよりも外側に設定される。
【0083】
このようにすれば、境界領域BRよりも内側の前方領域と、境界領域BRよりも外側の側方領域を抽出でき、境界領域BRを除外した領域を抽出できる。
【0084】
また本実施形態では、第1境界線L1と第2境界線L2は、所定視野角の環状領域BRに対して、統計的な製造バラツキに応じたマージン領域MR1、MR2が付加(加味)されて設定される。
【0085】
このようにすれば、製造バラツキを考慮した個々のスコープにおける境界線L1、L2を設定する必要がないため、共通の境界線L1、L2を用いることができる。これにより、例えば個々のスコープにおいて境界線の設定作業をする必要を無くすことができる。
【0086】
また本実施形態では、図4(A)等で説明したように、内視鏡装置は、前方視野を撮像するための前方観察光学系(レンズ20の透過部21)と、側方視野を撮像するための側方観察光学系(レンズ20の反射部22、26)を含む。また図1に示すように、内視鏡装置は、前方視野と側方視野を同時に撮像する撮像素子209を含む。
【0087】
このようにすれば、前方視野と側方視野を同時に1つの画像として撮像できる。なお、本実施形態では上記光学系に限定されず、例えば前方視野用と側方視野用の光学系が別個でない光学系により、前方視野と側方視野が時系列的に撮像されてもよい。この場合、図5で上述のように、時系列的に撮像された画像を合成することにより1つの画像としてもよい。
【0088】
また本実施形態では、図4(A)等で説明したように、境界領域は、前方観察光学系により得られる前方視野と、側方観察光学系により得られる側方視野との間の死角に対応する領域を含む。また、境界領域は、前方観察光学系の周辺減光によりシェーディングが生じた領域の少なくとも一部を含んでもよい。例えば、上述のグレーパッチを撮像した状態で、所定の輝度よりも暗い周辺減光領域が境界領域に含まれる。
【0089】
3.第2の実施形態
3.1.内視鏡装置
図10に、内視鏡装置の第2の構成例を示す。内視鏡装置は、光源部100、撮像部200、制御装置300(プロセッサ部)、表示部400、外部I/F部500を含む。図1で上述の第1の構成例と異なる構成要素について主に説明し、同一の構成要素については適宜説明を省略する。
【0090】
光源部100は、白色光源101と、ライトガイドファイバ201の入射端面に集光させる集光レンズ104と、を含む。第2の構成例では、回転色フィルタは存在しない。
【0091】
撮像部200において、第2の構成例では、撮像素子209として原色単板撮像素子を用いる。原色単板撮像素子は、いわゆるベイヤ(Bayer)配列の撮像素子であり、CCDやCMOSイメージセンサが利用できる。
【0092】
3.2.画像処理部
図12に、画像処理部301の第2の詳細な構成例を示す。画像処理部301は、画像取得部905、前処理部910、境界領域補正部915、後処理部990、境界線描画部995を含む。境界領域補正部915は、抽出領域設定部920、領域抽出部940、シェーディング補正部950、変倍処理部955、合成部980を含む。変倍処理部955は、補正量制御部930、第1領域倍率補正部960、第2領域倍率補正部970を含む。
【0093】
各構成部間の接続関係とデータの流れを説明する。A/D変換部210から出力された撮像画像は、画像取得部905に入力される。画像取得部905により取得された画像は、前処理部910に入力される。制御部302は、画像取得部905と、前処理部910と、抽出領域設定部920と、補正量制御部930と、後処理部990と、境界線描画部995に双方に通信可能な状態で接続される。制御部302は、メモリ211に記録されている撮像部200に固有の情報(前方視野画像及び側方視野画像の抽出境界情報や、前方視野画像と側方視野画像の表示倍率情報)の読み込みや、メモリ211に記録されている情報の更新を行う。
【0094】
前処理部910は、入力される撮像画像を、制御部302から出力される出力画像生成パラメータ(OBクランプ、ホワイトバランス)に基づいて補正し、補正した撮像画像を、抽出領域設定部920と領域抽出部940に出力する。
【0095】
抽出領域設定部920は、制御部302からの抽出領域設定信号がONの場合に抽出領域設定処理を行い、設定した抽出領域情報を、補正量制御部930と制御部302と領域抽出部940に出力する。また、抽出領域設定部920は、設定したシェーディング補正係数をシェーディング補正部950に出力する。抽出領域情報とは、第1の実施形態において説明したように、前方視野画像と側方視野画像の中心位置の情報、前方視野画像の抽出境界線の情報、側方視野画像の抽出境界線の情報、側方視野画像の外周の情報である。例えば、抽出領域情報は、中心位置CP(例えば図6(A))の座標、その中心位置CPを原点とする極座標形式において中心位置CPからの距離D1、D2、D3(例えば図8(A))である。この抽出領域設定処理については、詳細に後述する。
【0096】
例えば、抽出領域設定信号は、外部I/F部500のスイッチによりON・OFF制御される。例えば、ユーザが、外部I/F部500のスイッチによりホワイトバランス係数算出モードを選択した場合に、そのモードに連動して抽出領域設定信号がONになり、通常の診察時においては、抽出領域設定信号はOFFである。
【0097】
補正量制御部930は、抽出領域設定部920と同様に、制御部302からの観察モード切替信号により補正量制御を行う。補正量制御部930は、抽出領域設定部920から入力される抽出領域情報に基づいて、前方視野画像の倍率補正情報と側方視野画像の倍率補正情報を設定し、前方視野画像の倍率補正情報を第1領域倍率補正部960へ出力し、側方視野画像の倍率補正情報を第2領域倍率補正部970へ出力する。例えば、倍率補正情報は、第1の実施形態で説明した上式(1)、(3)の多項式の係数値により与えられる。
【0098】
領域抽出部940には、前処理部910から出力されたホワイトバランス処理済の撮像画像が入力される。領域抽出部940は、その入力された撮像画像から、抽出領域設定部920からの抽出領域情報に基づいて前方視野画像と側方視野画像をそれぞれ抽出し、抽出した画像をシェーディング補正部950へ出力する。
【0099】
シェーディング補正部950は、入力される前方視野画像と側方視野画像に対して、抽出領域設定部920から出力されるシェーディング補正係数を使って、シェーディング補正を行う。シェーディング補正部950は、補正後の前方視野画像を第1領域倍率補正部960へ出力し、補正後の側方視野画像を第2領域倍率補正部970へ出力する。
【0100】
第1領域倍率補正部960と第2領域倍率補正部970と合成部980は、第1の実施形態と基本的には同じ処理を行う。第1の実施形態との違いは、第1の実施形態では撮像画像は各画素当り3つの色信号からなり、第2の実施形態では撮像画像は各画素当り1つの色信号からなる点である。第2の実施形態では、前方視野画像と側方視野画像の倍率補正を行った後でも、図11の信号配列が維持されるように倍率補正を行う。即ち、同色の周辺画素を用いて補間処理を行い、所定の画素位置に所定の1つの色信号を生成する。
【0101】
後処理部990には、合成部980から出力された前方視野画像と側方視野画像が合成された撮像画像が入力される。後処理部990は、その入力された撮像画像に対して、例えばデモザイキング処理や色補正処理、階調変換処理、強調処理、拡大処理等を行い、表示モニタに表示可能な出力画像を生成し、その出力画像を境界線描画部995へ出力する。
【0102】
境界線描画部995は、第1の実施形態と同様の処理を行うため、説明を省略する。
【0103】
3.3.抽出領域設定部
図13に、抽出領域設定部920の詳細な構成例を示す。抽出領域設定部920は、境界領域検出部710、中心算出部720、境界線設定部730(抽出境界線決定部)、抽出領域パラメータ設定部740、シェーディング補正パラメータ設定部750を含む。
【0104】
各構成部間の接続関係とデータの流れを説明する。前処理部910から出力された撮像画像は、境界領域検出部710に入力される。ここで、撮像画像の対象物は、ホワイトバランス係数を算出する為の白色パッチであり、撮像部200の先端と白色パッチの相対的な位置関係が保たれた状態で撮影できるものとする。
【0105】
制御部302は、境界領域検出部710と境界線設定部730と抽出領域パラメータ設定部740とシェーディング補正パラメータ設定部750に双方に通信可能な状態で接続される。
【0106】
境界領域検出部710には、前処理部910から出力されるホワイトバランス処理後の撮像画像が入力され、制御部302からの抽出領域設定信号がONである場合には、境界領域を検出するための検出領域情報と検出閾値が制御部302から入力される。境界領域検出部710は、入力される撮像画像を検出領域情報に基づいて抽出し、抽出した検出領域に対して図11のベイヤ配列の2×2の隣接画素(R、G、G、B)の総和をとる処理を行い、輝度信号を生成する。境界領域検出部710は、生成した輝度信号と検出閾値の比較により2値化処理を行い、2値化処理後の輝度信号から不要な細線の除去を行い、境界線を抽出する。境界領域検出部710は、抽出した境界線情報を中心算出部720へ出力し、生成した輝度信号を境界線設定部730へ出力する。
【0107】
中心算出部720は、入力される境界線情報から重心位置を算出し、この重心位置を前方視野画像及び側方視野画像の中心位置として設定し、設定した中心位置を境界線設定部730に出力する。
【0108】
境界線設定部730は、入力される輝度信号のシェーディング許容位置を、制御部302からのシェーディング許容閾値に基づいて決定する。具体的には図14(A)に示すように、境界線設定部730は、中心位置CP周辺の平均輝度値をシェーディングの基準値とし、その基準値により検出領域内(例えば画像全体)の輝度値を除算することでシェーディング画像を算出する。境界線設定部730は、算出したシェーディング画像と、制御部302から入力されたシェーディング許容閾値Tとにより、シェーディング許容位置を決定し、中心位置に最も近い位置を通る円形状の抽出境界線L1、L2を決定する。境界線設定部730は、決定した抽出境界線L1、L2を抽出領域パラメータ設定部740とシェーディング補正パラメータ設定部750へ出力し、算出したシェーディング画像をシェーディング補正パラメータ設定部750へ出力する。
【0109】
より具体的には図14(B)に示すように、境界線設定部730は、シェーディング画像の輝度レベルが閾値Tとなる位置を求め、中心からその位置までの距離を算出する。算出された距離のうち小さい方の距離を半径とする円を、抽出境界線L1に設定する。また、境界線設定部730は、算出された距離のうち大きい方の距離に所定距離を足した距離を半径とする円を、抽出境界線L2に設定する。
【0110】
抽出領域パラメータ設定部740は、入力された抽出境界線L1、L2の半径情報及び中心座標を抽出領域パラメータとして設定し、その抽出領域パラメータを、制御部302を介してメモリ211に格納する。また、抽出領域パラメータを領域抽出部940へ出力する。
【0111】
シェーディング補正パラメータ設定部750は、入力される抽出境界線L1、L2と中心位置とシェーディング画像から、シェーディング補正係数画像又はシェーディング補正係数を算出する。シェーディング補正パラメータ設定部750は、そのシェーディング補正係数画像又はシェーディング補正係数をシェーディング補正パラメータとして設定し、設定したパラメータを、制御部302を経由してメモリ211に格納する。また、設定したパラメータをシェーディング補正部へ出力する。ここで、シェーディング補正係数画像は、中心位置を基準としたシェーディング画像の各画素値の逆数を取った画像である。また、図14(C)に示すように、シェーディング補正係数(シェーディング補正量)は、シェーディング補正係数画像の画素値を円周方向で平均化して算出した係数であり、半径方向の1次元の係数である。
【0112】
抽出領域設定部920は、制御部302からの抽出領域設定信号がOFFの場合は、メモリ211に記録されているパラメータを抽出領域パラメータ設定部740とシェーディング補正パラメータ設定部750に読み込み、そのパラメータを領域抽出部940とシェーディング補正部950へ出力する。
【0113】
なお、上記では前方視野画像のみにシェーディング補正を行う場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、前方視野画像及び側方視野画像にシェーディング補正を行ってもよい。
【0114】
以上の実施形態によれば、図12、図13に示すように、境界領域補正部915は境界線設定部730と領域抽出部940を含む。図14(A)に示すように、境界線設定部730は、取得画像から前方領域の画像を抽出するための境界線である第1境界線L1、及び取得画像から側方領域の画像を抽出するための境界線である第2境界線L2のうちの少なくとも一方を設定する。領域抽出部940は、第1境界線L1が設定された場合に、第1境界線L1に基づいて前方領域の画像を抽出する。第2境界線が設定された場合に、第2境界線L2に基づいて側方領域の画像を抽出する。
【0115】
より具体的には、図13に示すように、境界領域補正部915は、境界領域を検出する境界領域検出部710を有する。図14(B)で説明したように、境界線設定部730は、検出された境界領域に基づいて第1境界線L1及び第2境界線L2の少なくとも一方を設定する。
【0116】
このようにすれば、第1、第2境界線L1、L2の少なくとも一方を設定でき、設定した境界線により前方領域、側方領域の少なくとも一方を設定できる。なお、第2の実施形態では、前方領域の画像と側方領域の画像の両方を抽出する場合を説明したが、第1の実施形態で説明したように、前方領域の画像と側方領域の画像の一方を抽出し、シェーディング補正とオーバーラップ処理を行ってもよい。
【0117】
また本実施形態では、図14(B)で説明したように、境界線設定部730は、取得画像における輝度レベルの変化を表すシェーディング量(例えば、中心周辺の輝度平均値で正規化した輝度値)に基づいて第1境界線L1を設定する。領域抽出部940は、取得画像の中の第1境界線L1よりも内側の領域の画像を前方領域の画像として抽出する。
【0118】
より具体的には、図12に示すように、境界領域補正部915は、前方領域におけるシェーディング量を補正するシェーディング補正部950を有する。合成部980は、シェーディング量が補正された前方領域の画像と側方領域の画像を合成する。
【0119】
このようにすれば、光学系によって生じた画像上のシェーディング(例えば前方領域における周辺減光)を、シェーディングの無い領域と同等の明るさで表示することができる。シェーディングが生じた領域も表示画像として利用できるため、観察できない死角領域を極力小さく押さえることができる。また、特定の撮影条件下(例えばホワイトバランスキャップ撮影時)において、抽出境界線L1、L2を決定できるので、製造バラツキに伴う調整工程を軽減でき、コスト低減も図ることができる。
【0120】
また本実施形態では、図12に示すように、変倍処理部955は表示倍率設定部(補正量制御部930)を有する。第1境界線L1と第2境界線L2は、円形状の境界線である。表示倍率設定部は、その第1境界線L1と第2の境界線L2の中心点CPを基準とする表示倍率を設定する(例えば上式(1)、(3)の変倍率V(r)、V(r))。変倍処理部955は、設定された表示倍率に基づいて変倍処理を行う。
【0121】
より具体的には、変倍処理部955は、表示倍率設定部により設定された表示倍率に基づく変位量であって、中心点CPを基準とする半径方向の距離(r)に対して線形又は非線形な変位量(例えば上式(2)、(4)の変位量D(r)、D(r))により、変倍処理を行う。
【0122】
このようにすれば、前方領域と側方領域を、自在な変倍率により拡大縮小することができる。また、中心からの距離に対して線形又は非線形の拡大縮小を行うことができるため、ユーザの観察領域に合わせた、より自由度の高い変倍処理が可能になる。
【0123】
ここで、上記の実施形態では、境界線L1、L2を真円である場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、境界線L1、L2は円形状であればよい。即ち、境界線L1とL2の間に、境界領域が存在するものであればよい。
【0124】
以上、本発明を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。
【0125】
また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0126】
10 病変部、20 レンズ、21 透過部、22 反射部、23 前方視野画像、
24 側方視野画像、25 環状領域、26 反射部、100 光源部、
101 白色光源、102 回転色フィルタ、103 回転駆動部、
104 集光レンズ、200 撮像部、201 ライトガイドファイバ、
202 照明レンズ、203 対物レンズ、209 撮像素子、210 A/D変換部、
211 メモリ、212 コネクタ、300 制御装置、301 画像処理部、
302 制御部、305 画像取得部、310 出力画像生成部、
315 境界領域補正部、320 領域抽出部、325 変倍処理部、
330 第1領域倍率補正部、340 第2領域倍率補正部、350 合成部、
360 境界線描画部、400 表示部、500 外部I/F部、
601 赤の色フィルタ、602 緑の色フィルタ、603 青の色フィルタ、
710 境界領域検出部、720 中心算出部、730 境界線設定部、
740 抽出領域パラメータ設定部、750 シェーディング補正パラメータ設定部、
803 回転モータ、905 画像取得部、910 前処理部、
915 境界領域補正部、920 抽出領域設定部、930 補正量制御部、
940 領域抽出部、950 シェーディング補正部、955 変倍処理部、
960 第1領域倍率補正部、970 第2領域倍率補正部、980 合成部、
990 後処理部、995 境界線描画部、
BR 境界領域、CP 中心位置、D1〜D3 距離、FR 前方視野画像、
L1,L2 抽出境界線、MR1,MR2 マージン領域、SR 側方視野画像、
SRP 外周、T シェーディング許容閾値、WL 境界線、Z 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方視野に対応する前方画像と、側方視野に対応する側方画像とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得する画像取得部と、
前記取得画像における前記前方視野に対応する領域を前方領域とし、前記取得画像における前記側方視野に対応する領域を側方領域とする場合に、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの少なくとも一方を、前記前方領域と前記側方領域の境界となる領域である境界領域に対してオーバーラップさせるオーバーラップ処理を行う境界領域補正部と、
を含むことを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記境界領域補正部は、
前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの少なくとも一方の表示倍率を変更する変倍処理を行う変倍処理部と、
前記変倍処理後の前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像を合成することにより、前記オーバーラップ処理を行う合成部と、
を有することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記境界領域補正部は、
前記取得画像から、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの一方を、前記変倍処理の対象画像として抽出する領域抽出部を有し、
前記変倍処理部は、
前記対象画像を拡大する前記変倍処理を行い、
前記合成部は、
拡大された前記対象画像と、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの他方とを、合成することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記変倍処理部は、
前記前方視野画像の中心を基準としたときの径方向に沿って前記対象画像を拡大する処理を前記変倍処理として行うことを特徴とする内視鏡画像処理装置。
【請求項5】
請求項2において、
前記境界領域補正部は、
前記取得画像から、前記前方領域の画像と前記側方領域の画像を抽出する領域抽出部を有し、
前記変倍処理部は、
前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの一方を拡大する前記変倍処理を行い、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの他方を縮小する前記変倍処理を行い、
前記合成部は、
前記変倍処理後の前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像を合成することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記境界領域補正部は、
前記取得画像から前記前方領域の画像を抽出するための境界線である第1境界線、及び前記取得画像から前記側方領域の画像を抽出するための境界線である第2境界線のうちの少なくとも一方の境界線を設定する境界線設定部と、
前記一方の境界線として前記第1境界線が設定された場合には、前記第1境界線に基づいて前記前方領域の画像を抽出し、前記一方の境界線として前記第2境界線が設定された場合には、前記第2境界線に基づいて前記側方領域の画像を抽出する領域抽出部と、
を有することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記境界領域補正部は、
前記境界領域を検出する境界領域検出部を有し、
前記境界線設定部は、
検出された前記境界領域に基づいて前記第1境界線及び前記第2境界線の少なくとも一方を設定することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記境界線設定部は、
前記取得画像における輝度レベルの変化を表すシェーディング量に基づいて前記第1境界線を設定し、
前記領域抽出部は、
前記取得画像の中の前記第1境界線よりも内側の領域の画像を前記前方領域の画像として抽出することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記境界領域補正部は、
前記前方領域における前記シェーディング量を補正するシェーディング補正部を有し、
前記合成部は、
前記シェーディング量が補正された前記前方領域の画像と前記側方領域の画像を合成することを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項10】
請求項6において、
前記第1境界線と前記第2境界線は、
円形状の境界線であり、
前記変倍処理部は、
前記第1境界線と前記第2の境界線の中心点を基準とする前記表示倍率を設定する表示倍率設定部を有し、
前記変倍処理部は、
設定された前記表示倍率に基づいて前記変倍処理を行うことを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記変倍処理部は、
前記表示倍率設定部により設定された前記表示倍率に基づく変位量であって、前記中心点を基準とする半径方向の距離に対して線形又は非線形な変位量により、前記変倍処理を行うことを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項12】
請求項2において、
前記合成された前記前方領域の画像と前記側方領域の画像の境界を識別可能にするための境界線を描画する境界線描画部を含むことを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項13】
請求項1において、
前記境界領域は、
前記前方視野と前記側方視野を撮像するための光学系における光学設計値に基づく所定視野角の環状領域であり、
前記境界領域と前記前方領域の間の境界線である第1境界線は、
前記環状領域よりも内側に設定され、
前記境界領域と前記側方領域の間の境界線である第2境界線は、
前記環状領域よりも外側に設定されることを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記第1境界線と前記第2境界線は、
前記所定視野角の環状領域に対して、統計的な製造バラツキに応じたマージン領域が付加されて設定されることを特徴とする内視鏡用画像処理装置。
【請求項15】
請求項1に記載の内視鏡用画像処理装置と、
前記前方視野を撮像するための前方観察光学系と、
前記側方視野を撮像するための側方観察光学系と、
前記前方視野と前記側方視野を同時に撮像する撮像素子と、
を含むことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項16】
請求項15において、
前記境界領域は、
前記前方観察光学系により得られる前記前方視野と、前記側方観察光学系により得られる前記側方視野との間の死角に対応する領域を含むことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項17】
請求項15において、
前記境界領域は、
前記前方観察光学系の周辺減光によりシェーディングが生じた領域の少なくとも一部を含むことを特徴とする内視鏡装置。
【請求項18】
前方視野に対応する前方画像と、側方視野に対応する側方画像とが、1枚の取得画像として形成された画像信号を、取得し、
前記取得画像における前記前方視野に対応する領域を前方領域とし、前記取得画像における前記側方視野に対応する領域を側方領域とする場合に、前記前方領域の画像及び前記側方領域の画像のうちの少なくとも一方を、前記前方領域と前記側方領域の境界となる領域である境界領域に対してオーバーラップさせるオーバーラップ処理を行うことを特徴とする画像処理方法。

【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−66646(P2013−66646A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208734(P2011−208734)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】