説明

内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法

【課題】体腔が複数存在する場面においても、操作者の内視鏡の操作技術を補って操作者の所望の体腔への挿入部の操作を支援する。
【解決手段】体腔内に挿入可能な挿入部12と、該挿入部12の先端部分に設けられ湾曲することにより先端面の方向を変更可能な湾曲部13と、挿入部12に設けられ先端面の前方の視野を撮像する撮像部16と、該撮像部16によって撮像された画像から複数の体腔を抽出する体腔抽出部23と、該体腔抽出部23によって抽出された複数の体腔のうち、操作者による入力に基づいて一の体腔を指定する体腔指定部18と、該体腔指定部18によって指定された体腔を画像の略中心に配するように湾曲部13を湾曲させる湾曲制御部25とを備える内視鏡装置100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内に挿入された挿入部の適切な挿入方向を示す補助情報を操作者に対して提示することにより、操作者による内視鏡の操作を支援する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−93328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
体腔が途中位置で分岐していて内視鏡画像内に体腔の入口が複数存在し、一の入口を選択して内視鏡を導入する場合、湾曲部によって内視鏡の先端面の方向を変更することにより内視鏡の挿入方向を調節しなければならないなど、高度な内視鏡の操作技術が要求される。しかしながら、特許文献1の装置では、このような場面が想定されていないため、操作者の所望の一の体腔に挿入部を案内することができず、操作者を支援することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、体腔が複数存在する場面においても、操作者の内視鏡の操作技術を補って操作者の所望の体腔への挿入部の操作を支援することができる内視鏡装置および内視鏡装置の作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、体腔内に挿入可能な挿入部と、該挿入部の先端部分に設けられ湾曲することにより前記先端面の方向を変更可能な湾曲部と、前記先端面の前方の視野を撮像する撮像部と、該撮像部によって撮像された画像から複数の体腔を抽出する体腔抽出部と、該体腔抽出部によって抽出された複数の体腔のうち、操作者による入力に基づいて一の体腔を指定する体腔指定部と、該体腔指定部によって指定された体腔を前記画像の略中心に配するように前記湾曲部を湾曲させる湾曲制御部とを備える内視鏡装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、挿入部を体腔内へ挿入し、撮像部によって撮像された体腔内の画像をモニタ等に出力することにより、体腔内を観察することができる。この場合に、体腔が途中位置において複数に分岐する場面において、体腔抽出部がこれら複数の体腔を抽出する。操作者は、抽出された複数の体腔のうち所望の体腔を体腔指定部によって指定する。これにより、湾曲制御部が、画像内において指定された体腔が略中心に移動するように湾曲部を制御する。
【0008】
したがって、操作者は、挿入部を前進させるだけで、画像の略中央に配置された所望の体腔へ挿入部を導入することができる。すなわち、操作者による湾曲部の操作を補うことにより、従来湾曲部の複雑な操作が要求される場面においても、操作者の所望の体腔への挿入部の操作を支援することができる。
【0009】
上記発明においては、前記体腔抽出部が、前記撮像部によって時間軸方向に連続して撮像された画像から前記体腔を抽出し、前記体腔抽出部によって抽出された複数の体腔のうち、前記体腔指定部によって指定された体腔と同一の体腔を判定する指定体腔判定部を備え、前記湾曲制御部が、前記指定体腔判定部によって判定された体腔を前記画像の略中心に配するように前記湾曲部を湾曲させることとしてもよい。
【0010】
このようにすることで、操作者が体腔指定部によって体腔を指定した後、該体腔が追跡されて該体腔が画像の略中心に配されるように湾曲制御部によって湾曲部の制御が続けられる。これにより、従来湾曲部のより高度な操作が必要とされていた場面においても、操作者の操作技術をより強固に補って支援することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記湾曲部が、所定の方向に湾曲可能であり、前記体腔指定部によって指定された体腔が、前記湾曲部の湾曲可能な前記所定の方向に配置されるように、前記挿入部の周方向の回転を指示する回転指示表示を生成する表示生成部と、該表示生成部によって生成された前記回転指示表示を表示する表示部とを備えることとしてもよい。
【0012】
このようにすることで、湾曲部の湾曲可能な方向が制限されている場合に、操作者が体腔指定部によって指定した体腔が画像内において湾曲部の湾曲できない方向に配されていると、表示生成部によって回転指示表示が生成されて表示部に表示される。操作者は、回転指示表示が指示する方向に挿入部を回転させることにより、指定した体腔が湾曲部の湾曲可能な方向へと移動させることができる。このように、操作者は、回転指示表示に従って挿入部の周方向の操作を行えばよく、操作者による内視鏡の操作をより一層支援することができる。
【0013】
また、本発明は、先端面の方向を変更可能な湾曲部を有する挿入部を備える内視鏡装置の作動方法であって、撮像部により体腔を含む画像を撮像するステップと、体腔抽出部により前記画像から複数の体腔を抽出するステップと、入力部からの入力信号に基づいて体腔指定部が前記複数の体腔のうち一の体腔を指定するステップと、該体腔を指定するステップにおいて指定された体腔を前記画像の略中心に配するように湾曲制御部が前記湾曲部を湾曲させるステップとを含む内視鏡装置の作動方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、体腔が複数存在する場面においても、操作者の内視鏡の操作技術を補って操作者の所望の体腔への挿入部の操作を支援することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内視鏡装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の内視鏡装置の支援モードにおける作動方法を説明するフローチャートである。
【図3】図1の内視鏡装置の通常モードによる表示画面の一例を示す図である。
【図4】図1の内視鏡装置の支援モードによる表示画面の一例を示す図である。
【図5】図4の表示画面において湾曲部が制御された後の表示画面を示す図である。
【図6】図1の内視鏡装置の変形例における表示画面の一例を示す図である。
【図7】図6の表示画面において回転指示表示に従って挿入部を回転させた後の表示画面を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る内視鏡装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】図1の内視鏡装置の支援モードにおける作動方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の第1の実施形態に係る内視鏡装置100について図1〜図7を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置100は、図1に示されるように、挿入部12および該挿入部12の先端側に設けられた湾曲部13を備える内視鏡本体1と、該内視鏡本体1により取得された内視鏡画像(画像)G1を処理するとともに湾曲部13の動作を制御するコントロールユニット2とを備えている。
【0017】
内視鏡本体1は、細長い軟性の挿入部12と、該挿入部12の基端側に設けられ操作者によって把持される把持部14とを備えている。
挿入部12は、湾曲部13が湾曲することによりその先端面の方向が変更させられる。湾曲部13は、360°方向に湾曲可能であり、湾曲駆動部15によって駆動させられる。挿入部12の先端部には、挿入部12の前方の視野を撮像する撮像部16が内蔵されている。撮像部16は、撮像した内視鏡画像をコントロールユニット2内の動作モード切替部(後述)21に出力する。
【0018】
把持部14は、動作モード入力部17および指定体腔入力部(体腔指定部)18を備えている。
動作モード入力部17は、通常モードと支援モードのうちいずれか一方の動作モードが操作者による操作によって入力される。動作モード入力部17は、支援モードが入力された場合に、後述の指定体腔入力部18への番号の入力を有効にする。
【0019】
指定体腔入力部18は、後述する表示画面G2に表示された複数の番号表示Bのうち一の番号表示Bが示す番号が操作者による操作によって入力される。これにより、操作者は、表示画面G2に表示された複数の体腔のうち一の体腔を指定することができる。指定体腔入力部18は、例えば、数字を選定可能なダイヤルである。
【0020】
コントロールユニット2は、動作モード入力部17から入力された動作モードに応じて内視鏡画像G1の出力先を切り替える動作モード切替部21と、内視鏡画像G1に各種の表示を重畳して表示画面G2を生成する画面生成部22と、内視鏡画像G1から体腔の輪郭を抽出する体腔抽出部23と、指定体腔入力部18から入力された番号に対応する体腔(以下、指定体腔という。)の輪郭の重心位置を算出する指定体腔位置算出部24と、該指定体腔位置算出部24によって算出された重心位置に基づいて湾曲駆動部15を制御する湾曲制御部25とを備えている。
【0021】
動作モード切替部21は、動作モード入力部17から通常モードを示す信号が入力されたときには、撮像部16から入力された内視鏡画像G1を画面生成部22のみに出力する。一方、動作モード切替部21は、動作モード入力部17から支援モードを示す信号が入力されたときには、撮像部16から入力された内視鏡画像G1を画面生成部22および体腔抽出部23に出力する。これにより、操作者によって支援モードが選択された場合に、後述する体腔抽出部23、指定体腔位置算出部24および湾曲制御部25による処理が行われることとなる。動作モード切替部21は、通常モードに初期設定されており、操作者による入力に基づいて支援モードに切り替えた後、湾曲制御部25から湾曲制御終了信号(後述)が入力されることにより通常モードに切り替える。
【0022】
画面生成部22は、通常モードが選択されているときは、撮像部16から入力された内視鏡画像G1をそのまま表示画面G2として表示部3に出力する。一方、画面生成部22は、支援モードが選択されているときは、後述するように、体腔抽出部23および指定体腔位置算出部24から入力される情報に基づいて体腔の輪郭を示す輪郭表示A、各輪郭表示Aと対応付けられた番号表示B、内視鏡画像G1の中心位置を示す中心マーカC、および、指定体腔の輪郭の重心位置を示す重心マーカDを生成する。そして、画面生成部22は、これらの表示A〜Dを内視鏡画像G1に重畳することにより表示画面G2を生成し、該表示画面G2を表示部3に出力する。
【0023】
体腔抽出部23は、入力された内視鏡画像G1において、他の部分よりも暗く表示されている領域を体腔として認識し、該領域の輪郭を抽出する。体腔の輪郭の抽出には、例えば、画像の輝度値の微分、畳み込み、または、明度の2値化等の画像処理方法が利用される。体腔抽出部23は、抽出した体腔の輪郭の位置を示す位置情報を指定体腔位置算出部24および画面生成部22に出力する。また、体腔抽出部23は、抽出した各輪郭に番号を付し、この番号も輪郭の位置情報と対応付けて指定体腔位置算出部24および画面生成部22に出力する。
【0024】
指定体腔位置算出部24は、体腔抽出部23から入力された複数の輪郭の位置情報のうち、指定体腔入力部18に入力された番号と対応する輪郭の位置情報から、該輪郭の重心位置を算出する。指定体腔位置算出部24は、算出した重心位置を画面生成部22および湾曲制御部25に出力する。
【0025】
画面生成部22は、体腔抽出部23から入力された複数の体腔の輪郭と対応する位置の輪郭表示Aを生成する。また、画面生成部22は、体腔抽出部23から入力された番号を示す番号表示Bを、対応する輪郭表示Aの近傍に生成する。これにより、操作者は、支援モードを選択した際に、表示部3に表示される輪郭表示Aと番号表示Bとを確認し、所望の体腔を示す番号を指定体腔入力部18に入力することができる。
【0026】
また、画面生成部22は、指定体腔位置算出部24によって算出された指定体腔の輪郭の重心位置と対応する位置に重心マーカD、例えば、中心が重心位置と一致する十字マークを生成する。さらに、画面生成部22は、指定体腔入力部18に入力された番号の情報を受け取ることにより、指定体腔に対応する輪郭表示Aを、他の輪郭表示Aと異なる表示態様、例えば、異なる色やより太い線で表示してもよい。
【0027】
湾曲制御部25は、指定体腔位置算出部24から入力された重心位置と内視鏡画像G1の中心位置とを比較し、内視鏡画像G1の中心位置に対する重心位置のずれ量およびずれ方向を算出する。そして、湾曲制御部25は、算出したずれ方向に、算出したずれ量に基づく角度だけ湾曲するように指令する駆動信号を湾曲駆動部15に出力する。この駆動信号とともに、湾曲制御部25は湾曲制御終了信号を動作モード切替部21に出力する。この湾曲制御終了信号を受け取ることにより、動作モード切替部21は支援モードを終了して通常モードに復帰する。
【0028】
次に、このように構成された内視鏡装置100の作用について図2を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置100を使用して体腔内を観察するには、撮像部16によって撮像される内視鏡画像G1を表示部3で観察しながら、例えば、患者の口腔または鼻腔から挿入部12を挿入する。腔に沿って挿入部12を前進させると、体腔が食道Xと気管Yとに分岐する咽頭において、図3に示されるように、食道Xと気管Yとの入口が内視鏡画像G1に出現する。図3は、咽頭蓋Zが気管Yの入り口を開放し、気管Yに隣接する食道Xの中央部分が閉塞して食道Xが左右両側に分割された状態を示している。
【0029】
このように挿入部12の挿入経路が複数存在する場面において、操作者は、手元の動作モード入力部17により支援モードを選択する。支援モードによる動作が開始されると、内視鏡装置100はまず、取得した内視鏡画像G1から(ステップS1)気管Yおよび食道Xの入り口の輪郭を抽出し(ステップS2)、これらの輪郭表示Aおよび番号表示Bならびに中心マーカCを生成し、図4に示されるように、表示画面G2にこれらの表示A〜Cを表示させる(ステップS3)。
【0030】
操作者は、手元の指定体腔入力部18によって観察すべき体腔に対応する番号を入力することにより当該体腔を指定する(ステップS4)。例えば、食道X内を観察するために「1」を入力する。これにより、内視鏡装置100は、「1」に対応する輪郭表示Aの重心位置を算出し(ステップS5)輪郭表示Aの内部に重心マーカDを表示する。これとともに、内視鏡装置100は、重心位置に基づいて湾曲駆動部15による湾曲方向および湾曲角度を決定し(ステップS6)、重心マーカDが内視鏡画像G1の中心位置に向かって移動するように湾曲駆動部15を駆動する(ステップS7)。
【0031】
そして、図5に示されるように、重心マーカDが内視鏡画像G1の中心位置に配されると、内視鏡装置100が通常モードに復帰することにより表示画面G2から各種の表示A〜Dが消失する。この後、操作者は、挿入部12の基端部を口腔または鼻腔に押し入れるだけで、挿入部12の先端部を食道Xの入り口の左側から該食道X内へと導入することができる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、複数の体腔X,Yが存在する場面においても、操作者は湾曲部13の複雑な操作を必要とすることなく、同一の体腔内を前進させるときと同様の挿入部12の基端側を押し入れるだけの簡便な操作だけで、挿入部12を自身が指定した所望の体腔内へ導入することができる。すなわち、従来湾曲部の高度な操作技術が必要とされていた場面においても、操作者の内視鏡本体1の操作技術を補うことにより、内視鏡本体1の操作に熟練していない操作者に対してスムーズな操作を支援することができるという利点がある。
【0033】
なお、本実施形態においては、湾曲部13として、360°方向に湾曲可能なものを備えることとしたが、これに代えて、限定された方向にのみ湾曲可能なものを備えることとしてもよい。この場合には、指定体腔が、内視鏡画像G1内において湾曲部13が湾曲できない方向に配されることがあり、指定体腔の方向へ湾曲部13を湾曲可能な姿勢になるように挿入部12を周方向に回転させる必要が生じる。このような挿入部12の回転を指示する回転指示表示Eを画面生成部(表示生成部)22が生成してもよい。
【0034】
例えば、湾曲部13が内視鏡画像G1に対して左方向にのみ湾曲可能な場合、図6に示されるように、指定体腔の輪郭の重心位置が内視鏡画像G1の中心位置に対して左上方向に配されているときには挿入部12の先端面を指定体腔の方向へ向けることができない。この場合には、挿入部12の右方向への回転を指示する矢印を回転指示表示Eとして表示する。操作者は、回転指示表示Eに従って挿入部12を右方向に回転させることにより、図7に示されるように、指定体腔の輪郭の重心位置を内視鏡画像G1の中心位置に対して略左方向に配することができ、これにより挿入部12の先端面を指定体腔の方向へ変更可能な状態とすることができる。
【0035】
このように、操作者は、回転指示表示Eに従って挿入部12の回転操作を行えばよく、重心マーカDと内視鏡画像G1の中心位置との位置関係について操作者自身が考慮する必要がない。これにより、操作者の内視鏡本体1の操作技術をさらに強固に補って支援することができる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施形態に係る内視鏡装置100について図8および図9を参照して説明する。
本実施形態においては、上述した第1の実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる点について主に説明する。
【0037】
本実施形態に係る内視鏡装置100は、図8に示されるように、コントロールユニット2内に、逐次取得される内視鏡画像G1に表示されている複数の体腔のうち指定体腔を判定する指定体腔判定部26を備えている点、および、支援モードが操作者によって終了させられるまでの間、湾曲制御部25が湾曲駆動部15を連続的に制御する点において、第1の実施形態に係る内視鏡装置100と主に異なっている。
【0038】
動作モード切替部21は、第1の実施形態と同様に通常モードを初期状態として設定され、操作者による入力に基づいて支援モードに切り替えるが、支援モードから通常モードへの切り替えは、操作者による動作モード入力部17への通常モードの入力に基づいて行う。
体腔抽出部23は、動作モード切替部21から連続して入力される内視鏡画像G1から逐次体腔の輪郭を抽出し、抽出した体腔の輪郭の位置情報と番号情報とを指定体腔判定部26に出力する。
【0039】
指定体腔位置算出部24は、第1の実施形態と同様にして、指定体腔の輪郭の重心位置を算出する。そして、指定体腔位置算出部24は、算出した重心位置を画面生成部22および指定体腔判定部26に出力する。
【0040】
指定体腔判定部26は、まず、指定体腔位置算出部24から入力された指定体腔の輪郭の重心位置を記憶する。次に、指定体腔判定部26は、体腔抽出部23から輪郭の位置情報が入力されると、これらの全ての輪郭の位置情報から各輪郭の重心位置を算出し、算出した重心位置群と記憶している指定体腔の輪郭の重心位置とを比較する。指定体腔判定部26は、比較の結果、指定体腔の輪郭の重心位置と最も近い位置の重心位置と対応する輪郭を、指定体腔と同一の体腔の輪郭であると判定し、記憶していた重心位置を判定した重心位置に更新する。
【0041】
これにより、指定体腔判定部26は、指定体腔入力部18によって一度操作者により体腔を指定された後、体腔内における挿入部12の移動に伴って内視鏡画像G1内で移動する指定体腔の重心位置を追跡する。指定体腔判定部26は、最初に指定体腔位置算出部24から入力された重心位置を湾曲制御部25に出力した後は、更新した新しい重心位置を逐次湾曲制御部25に出力する。
【0042】
湾曲制御部25は、逐次指定体腔判定部26から入力される指定体腔の輪郭の重心位置から内視鏡画像G1の中心位置に対するずれ方向およびずれ量を算出し、算出したずれ方向およびずれ量に基づいて湾曲駆動部15に駆動信号を出力する。
【0043】
次に、このように構成された内視鏡装置100の作用について図9を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置100は、操作者によって指定された体腔の重心位置を算出する(ステップS5)までは第1の実施形態と同様に作動する。内視鏡装置100は、算出した重心位置を記憶した後(ステップS9)、第1の実施形態と同様に湾曲駆動部15を制御する(ステップS6,S7)。
【0044】
このようにして一度重心位置を記憶した後(ステップS8)、内視鏡装置100は、次に取得した内視鏡画像G1から抽出した全ての体腔の輪郭の重心位置を算出し、これら重心位置群と記憶している重心位置とを比較することにより(ステップS10)、指定体腔の移動後の重心位置を判定し(ステップS11)、記憶していた重心位置を更新し(ステップS12)、更新した重心位置に基づいて湾曲駆動部15を制御する(ステップS6,S7)。内視鏡装置100は、操作者によって通常モードに切り替えられるまで(ステップS13)、すなわち、挿入部12の先端が指定体腔内に到達して表示画面G2に表示される体腔が1つになるまで、指定体腔の重心位置の更新および湾曲駆動部15の制御を続ける。
【0045】
このように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、複数の体腔X,Yが存在し従来高度な湾曲部13の操作技術が必要とされていた場面においても、操作者の内視鏡本体1の操作技術を補うことにより、内視鏡本体1の操作に熟練していない操作者に対してスムーズな操作を支援することができるという利点がある。
【0046】
さらに、操作者によって一度指定された体腔に挿入部12の先端面が常に向けられるように連続的に湾曲駆動部15が制御される。これにより、例えば、体腔の形状が複雑であり一度の湾曲部13の湾曲操作だけでは所望の体腔まで挿入部12をスムーズに導入できないような、より高度な湾曲部の操作技術が要求される場面であっても、挿入部12の基端側を押し入れるだけの簡便な操作で挿入部12を所望の体腔へ導入することができ、操作者の内視鏡本体1の操作技術をさらに強固に支援することができるという利点がある。
【0047】
なお、上述した第1および第2の実施形態においては、通常モードと支援モードとを有し、支援モードにおいてのみ湾曲駆動部15を制御することとしたが、これに代えて、体腔内を観察中は常時湾曲駆動部15を制御することとしてもよい。
【0048】
すなわち、体腔が分岐していない位置において、体腔抽出部23は、挿入部12が挿入されている体腔の前方の暗い領域の輪郭1つのみを抽出することとなる。このようにすることで、例えば、体腔が比較的大きな曲率で湾曲していて湾曲部13の操作が必要となる場面においても、操作者は挿入部12を押し入れるだけで体腔の形状に沿ってスムーズに挿入部12を挿入することができ、操作者の内視鏡本体1の操作をさらに支援することができる。
【0049】
なお、上述した第1および第2の実施形態においては、操作者による入力に基づいて通常モードと支援モードとを切り替え、支援モード時において体腔抽出部23による体腔の抽出を行うこととした。これに代えて、体腔内を観察中は常時、体腔抽出部23により体腔を抽出するようにしてもよい。この場合、体腔抽出部23が複数の体腔を抽出した場合に、抽出した体腔の輪郭の位置を示す位置情報を指定体腔位置算出部24および画面生成部22に出力すると共に、抽出した各輪郭に付された番号を画面生成部22に出力する。
この後、操作者が目的の体腔に付された番号を指定体腔入力部18に入力することで、第1および第2の実施形態と同様に湾曲制御部25が湾曲駆動部15の駆動制御を行うことになる。
【0050】
この場合、操作者が任意にモード切替を行わなくても、コントロールユニット2が複数の体腔を認識した時点で自動的に支援モードと同様に体腔の指定のための画面が生成される。したがって、操作者が複数の体腔の有無を確認するまでもなく、第1および第2の実施形態と同様の挿入支援を行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 内視鏡本体
2 コントロールユニット
3 表示部
12 挿入部
13 湾曲部
14 把持部
15 湾曲駆動部
16 撮像部
17 動作モード入力部
18 指定体腔入力部(体腔指定部、入力部)
21 動作モード切替部
22 画面生成部(表示生成部)
23 体腔抽出部
24 指定体腔位置算出部
25 湾曲制御部
26 指定体腔判定部
100 内視鏡装置
A 輪郭表示
B 番号表示
C 中心マーカ
D 重心マーカ
G1 内視鏡画像
G2 表示画面
X 食道
Y 気管
Z 咽頭蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入可能な挿入部と、
該挿入部の先端部分に設けられ湾曲することにより前記先端面の方向を変更可能な湾曲部と、
前記先端面の前方の視野を撮像する撮像部と、
該撮像部によって撮像された画像から複数の体腔を抽出する体腔抽出部と、
該体腔抽出部によって抽出された複数の体腔のうち、操作者による入力に基づいて一の体腔を指定する体腔指定部と、
該体腔指定部によって指定された体腔を前記画像の略中心に配するように前記湾曲部を湾曲させる湾曲制御部とを備える内視鏡装置。
【請求項2】
前記体腔抽出部が、前記撮像部によって時間軸方向に連続して撮像された画像から前記体腔を抽出し、
前記体腔抽出部によって抽出された複数の体腔のうち、前記体腔指定部によって指定された体腔と同一の体腔を判定する指定体腔判定部を備え、
前記湾曲制御部が、前記指定体腔判定部によって判定された体腔を前記画像の略中心に配するように前記湾曲部を湾曲させる請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記湾曲部が、所定の方向に湾曲可能であり、
前記体腔指定部によって指定された体腔が、前記湾曲部の湾曲可能な前記所定の方向に配置されるように、前記挿入部の周方向の回転を指示する回転指示表示を生成する表示生成部と、
該表示生成部によって生成された前記回転指示表示を表示する表示部とを備える請求項1または請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
先端面の方向を変更可能な湾曲部を有する挿入部を備える内視鏡装置の作動方法であって、
撮像部により体腔を含む画像を撮像するステップと、
体腔抽出部により前記画像から複数の体腔を抽出するステップと、
入力部からの入力信号に基づいて体腔指定部が前記複数の体腔のうち一の体腔を指定するステップと、
該体腔を指定するステップにおいて指定された体腔を前記画像の略中心に配するように湾曲制御部が前記湾曲部を湾曲させるステップとを含む内視鏡装置の作動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate