説明

内視鏡装置用カートのスコープホルダー

【課題】術中にスコープを一時的に保持することができ、また手術・処置に必要な器具の増加の抑制が可能となり、利便性の高いスコープホルダーを提供する。
【解決手段】スコープが載置される保持部13を支持する第1支柱部14と、カート10に取り付けられ、上記第1支柱部14を第1軸19で軸支する第2支柱部15とを備え、上記第1軸19に、操作レバー20を有する第1ネジ締め固定部18を設け、この第1ネジ締め固定部18にて、第1支柱部14の第2支柱部15に対する傾斜角が変えられるようにする。即ち、下側へ回動させた第1支柱部14の保持部13にスコープを一時的に載置することができる。また、第1支柱部の下端部を挿入するための嵌合穴を複数の角度方向に設けた挿入固定具を設け、この挿入固定具にて第1支柱部を所定の角度で固定するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の使用に必要な装置類を載置する内視鏡装置用カートに配置され、スコープを支承するホルダーで、このスコープホルダーの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内視鏡装置では、プロセッサ装置、光源装置、モニタ、記録装置、吸引物容器等の各種装置を効率よく配置し、かつ搬出入を容易にするためにカートが用いられており、このカートには、スコープ(内視鏡)自体を支承するホルダー(ハンガーとも言われる)が設けられる。
【0003】
図7には、従来の内視鏡装置用カート及びスコープホルダーが示されており、図示されるように、カート1の左右の一方の側面に、スコープホルダー2が取り付けられる。このスコープホルダー2は、支柱部2aの上部に、保持部(支承部)2bが設けられており、この保持部2bに、スコープ3が掛けられる。
【特許文献1】WO 2007/077610 A1
【特許文献2】特開平10−258017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の内視鏡装置用カート1のスコープホルダー2では、図7に示されるように、スコープ3の挿入部3aが長いため、保持部2bが比較的高い位置にあり、スコープ挿入部3aを被観察体内に挿入しているときには、保持部2bにスコープ3を掛けることはできない。
【0005】
即ち、スコープ3の使用中では、術中の各種処置やその他の準備のため、術者がスコープ3を離さなければならないこともあり、この場合は、補助スタッフ等が代わりにスコープ3を持ったりしており、スコープ3を一時的に保持できるものがあれば便利となる。一方、このような利便性に応え、専用のスコープホルダーを製作することもできるが、この場合は、手術・処置に必要な器具が増え、手術・処置室が混雑するという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、術中にスコープを一時的に保持することができ、また手術・処置に必要な器具の増加の抑制が可能となり、利便性の高い内視鏡装置用カートのスコープホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、内視鏡装置の各機器を載せるカートに配置され、スコープを保持するための内視鏡装置用カートのスコープホルダーであって、スコープが載置される保持部を支持する第1支柱部と、上記カートに取り付けられるか又は該カート自体の骨部材として設けられ、上記第1支柱部を支持する第2支柱部と、上記第1支柱部の垂直方向に対する傾斜角を変化させる角度変換手段と、を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、上記角度変換手段として、上記第1支柱部を上記第2支柱部に回動自在に軸支する第1軸と、この第1軸で第2支柱部を第1支柱部にネジ締め固定する第1ネジ締め固定部とを設け、この第1ネジ締め固定部にて上記第1支柱部を任意の傾斜角で固定することを特徴とする。
請求項3の発明は、上記角度変換手段として、上記第1支柱部の端部(例えば下端部)を挿入するための嵌合穴を所定の角度方向に複数設けた挿入固定具を設け、この挿入固定具にて上記第1支柱部を所定の角度で固定することを特徴とする。
請求項4の発明は、上記角度変換手段として、上記第1支柱部を上記第2支柱部に回動自在に軸支する第1軸と、上記第2支柱部を上記カートに回動自在に軸支する第2軸と、この第2軸で第1支柱部をカートにネジ締め固定する第2ネジ締め固定部と、上記第1支柱部を略水平方向に維持するための水平維持部材と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記請求項1乃至3の構成によれば、例えばカートに垂直配置された第1支柱部に対し第2支柱部を真っ直ぐにした垂直状態から水平方向へ向けて曲げることにより、保持部の高さ、保持部のカートからの距離を任意に設定することができ、術中でも、カートに配置したスコープホルダーの保持部へスコープを掛けることが可能となる。
【0009】
上記請求項4の構成によれば、例えば第1支柱部をカート上部から下側に配置し、この第1支柱部に重なるように第2支柱部を折り畳んで収納すると共に、この第2支柱部を第1支柱部側から回動させて水平に配置することができ、この水平の第1支柱部の先端の保持部に、使用中のスコープを一時的に掛けることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内視鏡装置用カートのスコープホルダーによれば、術前のスコープを掛ける位置よりも低い位置で、カートから少し離れた位置に保持部が配置されるので、術中にスコープを一時的に保持することができる。また、ホルダーが従来と同様にカートに取り付けられているので、手術・処置に必要な器具の増加の抑制が可能で、利便性の高いスコープホルダーが得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図3には、第1実施例に係る内視鏡装置用カートのスコープホルダーの構成が示されており、この第1実施例は、従来と同様のスコープホルダーの途中で先端側が曲げられるようにしたものである。図1に示されるように、第1実施例では、カート10の左側に、スコープホルダー12Aが取付け、固定されており、このスコープホルダー12Aは、図2に示されるように、スコープを掛ける保持部(ホルダー)13、金属製棒状の第1支柱部14、同様に金属製棒状の第2支柱部15を有している。
【0012】
上記保持部13は、上記第1支柱部14の上側先端に、軸17を介して回動自在に取り付けられており、この保持部13は、第1支柱部14の傾斜角度が変わった場合でも、同一の姿勢が維持できるように構成される。
【0013】
また、上記第2支柱部15は、カート10の底面板10aと中間板10bに固定具で固定され、この第2支柱部15に対し第1支柱部14が第1ネジ締め固定部18の第1軸19で連結される。この第1ネジ締め固定部18では、例えば図3(A)に示されるように、第2支柱部15の上側連結部に、雌ネジが形成された貫通孔15aが形成され、第1支柱部14の下側連結部に、貫通孔14aが形成されると共に、これらの貫通孔14a,15aに第1軸19が挿入される。この第1軸19には、その先端部に雄ネジが形成されると共に、その基端部に操作レバー20が取付け・固定される。また、第2支柱部15の連結部と第1支柱部14の連結部の両方の合せ面(平面)には、固定状態を強固に保持するために、放射状に複数の突起22が形成される。
【0014】
このような第1実施例によれば、スコープホルダー12Aを、図1及び図2(A)の鎖線で示される垂直配置の状態で使用できると共に、任意の角度に傾けた状態で使用することが可能になる。即ち、垂直配置状態から操作レバー20を反時計方向に回して固定状態を解除し、第1支柱部14を回動させて約180度の範囲の任意の位置に配置し、その後、操作レバー20を時計方向に回して締め付けることにより、第1支柱部14を任意の傾斜角度で固定することができる。これにより、被観察体内へスコープが挿入されているときであっても、各種処置やその他の準備のため、保持部13にスコープを掛けることができる。
【0015】
図4には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、第1支柱部を第2支柱部の複数の嵌合穴に挿入配置するように構成したものである。図4に示されるスコープホルダー12Bでは、第2支柱部24の上部に、例えば上向きの嵌合穴25aと斜め向きの嵌合穴25bを有する挿入固定具25が設けられる。この嵌合穴25a,25bの角度方向は、任意であり、水平方向でもよく、また3つ以上設けてもよい。一方、第1支柱部27では、下端部が上記嵌合穴25a,25bに嵌合する形状とされ、上部には、第1実施例と同様に保持部13が軸17で取り付けられる。
【0016】
このような第2実施例によれば、保持部13を有する第1支柱部27の下端部を一方の嵌合穴25aに挿入嵌合することにより、第1支柱部27を垂直配置にしてスコープホルダー12Bを使用できると共に、第1支柱部27の下端部を他方の嵌合穴25bに挿入嵌合することにより、第1支柱部27を斜め配置にし、この斜め配置状態の保持部13にスコープを掛けることができる。
【0017】
図5及び図6には、第3実施例の構成が示されており、この第3実施例は、カート上部から第2支柱部を下側へ向けて配置し、第1支柱部を水平に配置するものである。この第3実施例のスコープホルダー12Cは、各図に示されるように、第1支柱部30に、上記実施例の場合と同様に保持部13が設けられ、この第1支柱部30が第2支柱部31に第1軸32を介して回動自在に取り付けられる。この第1支柱部30と第2支柱部31とは、互いに重なって折り畳むことができるように連結されると共に、第2支柱部31の下端部に設けた水平維持部材(片)33によって、第1支柱部30が第2支持部31に対し略直角(又は90度よりも少し大きな角度)の位置で固定保持されるようになっている。
【0018】
また、第2支柱部31は、カート10の上面板10cの先端部に、第2軸35を介してネジ締め固定できる第2ネジ締め固定部36で取り付けられており、この第2ネジ締め固定部36は、例えば第1実施例の第1ネジ締め固定部18と同様の構成とし、操作レバー20の代わりに操作ノブ37を設けたものである。
【0019】
このような第3実施例のスコープホルダー12Cによれば、図6(B)の収納状態から、図6(A)のように、第1支柱部30を倒すように回動させ、水平維持部材33を介して水平位置にセットすることができ、この水平位置の保持部13にスコープを掛けることができる。このとき、第2ネジ締め固定部36の操作レバー37を操作することにより、第2支柱部31の傾斜角度を変え、保持部13の位置(高さ、カートからの距離)を調整することが可能である。
【0020】
一方、使用しないときには、第1支柱部30を起こすように回動させ、第2支柱部31に重なる位置に戻して、第1支柱部30(スコープホルダー12C)をカート10側へ収納することができる。なお、この収納状態で、第1支柱部30を第2支柱部31へ固定する固定手段を設けてもよい。また、第1支柱部30と第2支柱部31を連結する第1軸32の部分に、第2ネジ締め固定部35と同様のネジ締め固定部を設け、任意の角度で固定できるようにしてもよい。
【0021】
なお、上記実施例では、第2支柱部15,24,31をカート10と別体に設けたが、カート10を組み立てるための骨部材として設けられた縦方向の支持柱等を、第2支柱部として利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例に係る内視鏡装置用カート及びスコープホルダーの構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施例のスコープホルダーの構成を示し、図(A)は側面図、図(B)は一部断面正面図である。
【図3】第1実施例のスコープホルダーの第1ネジ締め固定部の構成を示す図である。
【図4】第2実施例のスコープホルダーの構成を示す図である。
【図5】第3実施例の内視鏡装置用カート及びスコープホルダーの構成を示す側面図である。
【図6】第3実施例のスコープホルダーの構成を示し、図(A)は展開時の図、図(B)は収納時の図である。
【図7】従来の内視鏡装置用カートのスコープホルダーにスコープを掛ける際の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1,10…カート、 10C…上面板、
2,12A〜12C…スコープホルダー、
2b,13…保持部、 14,27,30…第1支柱部、
15,24,31…第2支柱部、 18…第1ネジ締め固定部、
19,32…第1軸、 20…操作レバー、
25…挿入固定具、 25a,25b…嵌合穴、
33…水平維持部材、 35…第2軸、
36…第2ネジ締め固定部、 37…操作ノブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡装置の各機器を載せるカートに配置され、スコープを保持するための内視鏡装置用カートのスコープホルダーであって、
スコープが載置される保持部を支持する第1支柱部と、
上記カートに取り付けられるか又は該カート自体の骨部材として設けられ、上記第1支柱部を支持する第2支柱部と、
上記第1支柱部の垂直方向に対する傾斜角を変化させる角度変換手段と、を設けた内視鏡装置用カートのスコープホルダー。
【請求項2】
上記角度変換手段として、上記第1支柱部を上記第2支柱部に回動自在に軸支する第1軸と、この第1軸で第2支柱部を第1支柱部にネジ締め固定する第1ネジ締め固定部とを設け、この第1ネジ締め固定部にて上記第1支柱部を任意の傾斜角で固定することを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置用カートのスコープホルダー。
【請求項3】
上記角度変換手段として、上記第1支柱部の端部を挿入するための嵌合穴を所定の角度方向に複数設けた挿入固定具を設け、この挿入固定具にて上記第1支柱部を所定の角度で固定することを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置用カートのスコープホルダー。
【請求項4】
上記角度変換手段として、上記第1支柱部を上記第2支柱部に回動自在に軸支する第1軸と、上記第2支柱部を上記カートに回動自在に軸支する第2軸と、この第2軸で第1支柱部をカートにネジ締め固定する第2ネジ締め固定部と、上記第1支柱部を略水平方向に維持するための水平維持部材と、を設けたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置用カートのスコープホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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