説明

内視鏡装置

【課題】体内に挿入され、体内の被観察部に特殊光を照射する挿入部を備えた内視鏡装置において、光源から発せられた特殊光を導光する導光部を挿入部から取り外した際、その導光部の出射端から出射された励起光が人の目に入射して損傷を与えることを防止する。
【解決手段】体内に挿入され、体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、その特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、挿入部に光学的に接続され、光源から発せられた特殊光を挿入部まで導光する導光部とを備えた内視鏡装置において、導光部の特殊光の出射端にその導光部によって導光された特殊光を拡散する拡散部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、その特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部を備えた内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の組織を観察する内視鏡システムが広く知られており、白色光の照射によって体腔内の被観察部を撮像して通常画像を得、この通常画像をモニタ画面上に表示する電子式内視鏡システムが広く実用化されている。
【0003】
そして、このような内視鏡システムの1つとして、たとえば、脂肪下の血管走行および血流、リンパ管、リンパ流、胆管走行、胆汁流など通常画像上には現れないものを観察するため、予め被観察部にICG(インドシアニングリーン)を投入し、被観察部に近赤外光の励起光を照射することによってICGの蛍光画像を取得する内視鏡システムが提案されている。
【0004】
特許文献1においては、このような蛍光画像を取得する内視鏡システムの1つとして、たとえば体腔内に挿入される硬性鏡を用いたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−153850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述したようなICGの蛍光は微弱な光であるため、より鮮明な蛍光画像を得るためには、強い励起光を照射することが必要となる。そこで、たとえば、励起光源として、波長域が狭く励起光と蛍光のコントラストへの影響が少ないレーザ光源が用いられるが、高出力なレーザ光は直視すると目への障害が懸念される。
【0007】
たとえば、特許文献1においては、光源装置から射出された励起光を、光源装置に接続されたライトガイドを介して硬性鏡本体に供給する硬性鏡システムが提案されており、この硬性鏡システムにおいては、ライトガイドと硬性鏡本体とが着脱可能に構成されているが、たとえば、このライトガイドを硬性鏡本体に取り付ける際や手技を終了してライトガイドを硬性鏡本体から取り外す際、誤って光源装置から励起光を射出させたままの状態である場合には、ライトガイドの接続部から出射された励起光が目に入射してしまうおそれがあるため危険である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑み、ライトガイドを取り外した際、そのライトガイドの接続部から出射された励起光が人の目に入射して損傷を与えることを防止することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内視鏡装置は、体内に挿入され、体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、その特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、挿入部に光学的に接続され、光源から発せられた特殊光を挿入部まで導光する導光部とを備えた内視鏡装置において、導光部の特殊光の出射端に導光部によって導光された特殊光を拡散する拡散部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の内視鏡装置においては、特殊光として近赤外光を用いることができる。
【0011】
また、拡散部における特殊光を拡散する拡散面が、導光部の出射端側に向くように拡散部を設けることができる。
【0012】
また、拡散部と挿入部の特殊光の入射端との間に、導光部と同等の屈折率を有し、導光部から出射された特殊光を透過する透過部材を設けることができる。
【0013】
また、透過部材として弾力性を有するものを用いることができる。
【0014】
また、透過部材として樹脂から形成されるものを用いることができる。
【0015】
また、透過部材を、導光部の出射端または挿入部の入射端に着脱可能に設けることができる。
【0016】
また、拡散部と挿入部の特殊光の入射端との間に、導光部と同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材を設け、その供給部材を、導光部の出射端または挿入部の入射端に着脱可能に設けることができる。
【0017】
また、上記のような透過部材や供給部材を設ける場合には、拡散部における特殊光を拡散する拡散面が、挿入部の入射端側に向くように拡散部を設けることができる。
【0018】
また、拡散部としてレンズ拡散板を用いることができる。
【0019】
また、挿入部を、導光部から出射された特殊光が入射され、その入射された特殊光を導光する光ファイバを備えたものとし、その光ファイバの特殊光の入射端部を、導光部の出射端側に向けてコア径が大きくなるようにテーパ状に形成することができる。
【0020】
また、導光部を、特殊光とともに、白色光源から発せられた白色光も導光するものとし、挿入部を、導光部によって導光された白色光を被観察部に照射するものとすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の内視鏡装置によれば、体内に挿入され、体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、その特殊光の照射によって被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、挿入部に光学的に接続され、光源から発せられた特殊光を挿入部まで導光する導光部とを備えた内視鏡装置において、導光部の特殊光の出射端にその導光部によって導光された特殊光を拡散する拡散部を設けるようにしたので、導光部を挿入部から取り外した際、その導光部の出射端から出射された励起光が人の目に入射して損傷を与えることを防止することができる。
【0022】
また、上記本発明の内視鏡装置において、導光部と挿入部とを接続した状態において、拡散部と挿入部の特殊光の入射端との間に、導光部と同等の屈折率を有し、導光部から出射された特殊光を透過する透過部材を設けるようにした場合には、導光部と挿入部との間の特殊光の伝達効率を向上させることができる。
【0023】
また、透過部材として弾力性を有するものを用いるようにした場合には、拡散部の拡散面が透過部材に密着することによってその拡散効果を抑制することができるので、特殊光の伝達効率をさらに向上させることができる。
【0024】
また、導光部と挿入部とを接続した状態において、拡散部と挿入部の特殊光の入射端との間に、導光部と同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材を設けるようにした場合には、導光部と挿入部との間の特殊光の伝達効率を向上させることができる。また、その供給部材を、導光部の出射端または挿入部の入射端に着脱可能に設けるようにした場合には、供給部材をディスポーザブルなものにすることができる。
【0025】
また、上記のような供給部材を設けるようにした場合、拡散部の拡散面が挿入部の入射端面側に向くように拡散部を設けるようにすれば、拡散部の拡散面が上記液体またはジェルに接触することによってその拡散効果を抑制することができるので、特殊光の伝達効率を向上させることができる。
【0026】
また、挿入部内に特殊光を導光する光ファイバを設け、その光ファイバの特殊光の入射端部を、導光部の出射端側に向けてコア径が大きくなるようにテーパ状に形成するようにした場合には、特殊光の集光効率を向上させることができる。さらに光ファイバの入射端のコアの面積よりも光ファイバの出射端のコアの面積を小さくするようにすれば、エタンデュの保存法則により、出射端から射出される光の拡散角を広げることができるので、被観察部に対する特殊光の照射範囲を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムの概略構成図
【図2】体腔挿入部の概略構成図
【図3】ライトガイドの構成を示す断面図
【図4】ライトガイドと挿入部材とを接続した状態を示す断面図
【図5】撮像ユニットの概略構成図
【図6】画像処理装置および光源装置の概略構成を示すブロック図
【図7】挿入部材内に設けられるマルチモード光ファイバのその他の実施形態を示す断面図
【図8】ライトガイドのマルチモード光ファイバの出射端と挿入部材のマルチモード光ファイバとの間に透過部材を設けた場合の一実施形態を示す断面図
【図9】ライトガイドと挿入部材のケーブル接続部との間に供給部材を設けた場合の一実施形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の内視鏡装置の一実施形態を用いた硬性鏡システムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の硬性鏡システム1の概略構成を示す外観図である。
【0029】
本実施形態の硬性鏡システム1は、図1に示すように、白色の通常光および励起光を射出する光源装置2と、光源装置2から射出された通常光および励起光を導光して被観察部に照射するとともに、通常光の照射により被観察部から反射された反射光に基づく通常像および励起光の照射により被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像を撮像する硬性鏡撮像装置10と、硬性鏡撮像装置10によって撮像された画像信号に所定の処理を施すプロセッサ3と、プロセッサ3において生成された表示制御信号に基づいて被観察部の通常画像および蛍光画像を表示するモニタ4とを備えている。
【0030】
硬性鏡撮像装置10は、図1に示すように、体腔内に挿入される体腔挿入部30と、体腔挿入部30によって導光された被観察部の通常像および蛍光像を撮像する撮像ユニット20とを備えている。
【0031】
また、硬性鏡撮像装置10は、図2に示すように、体腔挿入部30と撮像ユニット20とが着脱可能に接続されている。そして、体腔挿入部30は接続部材30a、挿入部材30b、ケーブル接続部30c、および照射窓30dを備えている。
【0032】
接続部材30aは、体腔挿入部30(挿入部材30b)の撮像ユニット20側の一端部30Xに設けられており、たとえば撮像ユニット20に形成された開口20aに嵌め合わされることにより、撮像ユニット20と体腔挿入部30とが着脱可能に接続される。
【0033】
挿入部材30bは、体腔内の撮影を行う際に体腔内に挿入されるものであって、硬質な材料から形成され、たとえば、直径略5mmの円柱形状を有している。挿入部材30bの内部には、被観察部の像を結像するためのレンズ群が収容されるとともに、通常光および励起光を挿入部材30bの先端まで導光する、後述するマルチモード光ファイバ31がバンドル化されて延設されている。
【0034】
挿入部材30bに対して入射された通常光および励起光は、バンドル化されたマルチモード光ファイバ31によって導光され、その先端部30Yから被観察部に向けて照射される。そして、通常光および励起光の照射によって被観察部から発せられた通常像および蛍光像が先端部30Yから入射され、上述したレンズ群を介して撮像ユニット20側の一端部30Xから射出される。
【0035】
挿入部材30bの側面にはケーブル接続部30cが設けられており、このケーブル接続部30cに対してライトガイドLGがコネクタCによって機械的に接続される。これにより、光源装置2と挿入部材30bとがライトガイドLGを介して光学的に接続されることになる。
【0036】
ライトガイドLG内には、図3に示すように、通常光と励起光とが一端から入射され、その入射された通常光および励起光を導光するマルチモード光ファイバ61がバンドルされて延設されている。
【0037】
そして、マルチモード光ファイバ61の通常光および励起光の出射端部には、挿入部材30bのケーブル接続部30cに嵌合して接続されるコネクタCが設けられ、そのコネクタC内には、マルチモード光ファイバ61の出射端面と光学的に接続される拡散部60が設けられている。拡散部60としては、たとえば、レンズ拡散板(LSD:Light shaping Diffusers)、拡散フィルム、拡散シート、拡散フィルタなどを用いることができ、要するに入射される光を拡散して透過するものであれば如何なるものでもよい。
【0038】
そして、拡散部60として、たとえばレンズ拡散板を用いる場合には、図3に示すように、サーフェス・レリーフ・ホログラムパターンが形成された拡散面60aが通常光および励起光の入射面となるように、すなわち、拡散面60aがマルチモード光ファイバ61の光の出射端面側となるように設置することが望ましい。拡散面60aを上述の向きに配置することによって、拡散面に汚れや水などが付着して拡散機能が低下するのを防止することができる。
【0039】
図4は、ライトガイドLGのコネクタCと挿入部材30bのケーブル接続部30cとを接続した状態を示している。図4に示すように、本実施形態においては、ライトガイドLGと挿入部材30bが接続された状態において、拡散部60の光の出射面と、挿入部材30b内に設けられたマルチモード光ファイバ31の光の入射面との間に間隔が空くように構成されている。これにより拡散部60とマルチモード光ファイバ31とが衝突して破損するのを防止することができる。
【0040】
そして、ライトガイドLG内のマルチモード光ファイバ61によって導光された通常光L1および励起光L2は拡散部60に入射され、拡散部60の拡散面60aにおいて拡散されて出射された後、挿入部材30b内に設けられたマルチモード光ファイバ31の入射面から入射される。
【0041】
そして、挿入部材30bの先端部30Yには、図2に示すように、照射窓30dが設けられている。照射窓30dは、挿入部材30b内に延設されたマルチモード光ファイバ31によって導光された通常光および励起光を被観察部に対し照射するものである。
【0042】
図5は、撮像ユニット20の概略構成を示す図である。撮像ユニット20は、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の蛍光像を撮像して被観察部の蛍光画像信号を生成する第1の撮像系と、体腔挿入部30内のレンズ群により結像された被観察部の通常像を撮像して通常画像信号を生成する第2の撮像系とを備えている。これらの撮像系は、通常像を反射するとともに、蛍光像を透過する分光特性を有するダイクロイックプリズム21によって、互いに直交する2つの光軸に分けられている。
【0043】
第1の撮像系は、被観察部において反射し、ダイクロイックプリズム21を透過した励起光の波長以下の光をカットするとともに、後述する蛍光波長域照明光を透過する励起光カットフィルタ22と、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を透過した蛍光像L4を結像する第1結像光学系23と、第1結像光学系23により結像された蛍光像L4を撮像する高感度撮像素子24とを備えている。
【0044】
高感度撮像素子24は、蛍光像L4の波長帯域の光を高感度に検出し、蛍光画像信号に変換して出力するものである。高感度撮像素子24としては、たとえばモノクロの撮像素子を用いることができる。
【0045】
第2の撮像系は、体腔挿入部30から射出され、ダイクロイックプリズム21を反射した通常像L3を結像する第2結像光学系25と、第2結像光学系25により結像された通常像L3を撮像する撮像素子26を備えている。
【0046】
撮像素子26は、通常像の波長帯域の光を検出し、通常画像信号に変換して出力するものである。撮像素子26の撮像面には、3原色の赤(R)、緑(G)および青(B)、またはシアン(C)、マゼンダ(M)およびイエロー(Y)のカラーフィルタがベイヤー配列またはハニカム配列で設けられている。
【0047】
また、撮像ユニット20は、撮像制御ユニット27を備えている。撮像制御ユニット27は、高感度撮像素子24から出力された蛍光画像信号と撮像素子26から出力された通常画像信号とに対し、CDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理を施し、ケーブル5(図1参照)を介してプロセッサ3に出力するものである。
【0048】
プロセッサ3は、図6に示すように、通常画像入力コントローラ41、蛍光画像入力コントローラ42、画像処理部43、メモリ44、ビデオ出力部45、操作部46、TG(タイミングジェネレータ)47およびCPU48を備えている。
【0049】
通常画像入力コントローラ41および蛍光画像入力コントローラ42は、所定容量のラインバッファを備えており、通常画像入力コントローラ41は、撮像ユニット20の撮像制御ユニット27から出力された1フレーム毎の通常画像信号を一時的に記憶するものであり、蛍光画像入力コントローラ42は、蛍光画像信号を一時的に記憶するものである。そして、通常画像入力コントローラ41に記憶された通常画像信号および蛍光画像入力コントローラ42に記憶された蛍光画像信号はバスを介してメモリ44に格納される。
【0050】
画像処理部43は、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号および蛍光画像信号が入力され、これらの画像信号に所定の画像処理を施し、バスに出力するものである。
【0051】
ビデオ出力部45は、画像処理部43から出力された通常画像信号および蛍光画像信号がバスを介して入力され、所定の処理を施して表示制御信号を生成し、その表示制御信号をモニタ4に出力するものである。
【0052】
操作部46は、種々の操作指示や制御パラメータなどの操作者による入力を受け付けるものである。また、TG47は、撮像ユニット20の高感度撮像素子24、撮像素子26および後述する光源装置2のLDドライバ55を駆動するための駆動パルス信号を出力するものである。また、CPU48は装置全体を制御するものである。
【0053】
光源装置2は、約400〜700nmの広帯域の波長からなる通常光(白色光)L1を射出する通常光源50と、通常光源50から射出された通常光L1を集光する集光レンズ52と、集光レンズ52によって集光された通常光L1を透過するとともに、後述する励起光L2を反射し、通常光L1および励起光L2とをライトガイドLGのマルチモード光ファイバ61の入射端に入射させるダイクロイックミラー53とを備えている。なお、通常光源50としては、たとえばキセノンランプが用いられる。また、通常光源50と集光レンズ52との間には、絞り51が設けられており、ALC(Automatic light control)58からの制御信号に基づいてその絞り量が制御される。
【0054】
また、光源装置2は、750〜790nmの近赤外光を励起光L2として射出する近赤外LD光源54と、近赤外LD光源54を駆動するLDドライバ55と、近赤外LD光源54から射出された励起光L2を集光する集光レンズ56と、集光レンズ56によって集光された励起光L2をダイクロイックミラー53に向けて反射するミラー57とを備えている。
【0055】
なお、励起光L2としては、広帯域の波長からなる通常光よりも狭帯域の波長が用いられる。そして、励起光L2の波長は、上記波長域の光に限定されず、蛍光色素の種類もしくは自家蛍光させる生体組織の種類によって適宜決定されるものである。
【0056】
次に、本実施形態の硬性鏡システムの作用について説明する。
【0057】
まず、光源装置2に接続されたライトガイドLGのコネクタCが、体腔挿入部30の挿入部材30bのケーブル接続部30cに接続されるとともに、プロセッサ3に接続されたケーブル5が撮像ユニット20に接続される。
【0058】
このとき通常は、光源装置2の電源はオフされた状態であるのでライトガイドLGのコネクタCから光が出射されることはない。しかしながら、たとえば誤って光源装置2の電源がオンされた状態であり、光源装置2から射出された励起光L2がライトガイドLGにより導光されてコネクタCから外部に対して出射されている場合が発生しうる。
【0059】
しかしながら、こうような状態が発生したとしても、上述したようにマルチモード光ファイバ61に出射端に設けられた拡散部60によって励起光L2は拡散されるので、そのエネルギー密度を小さくすることができ、励起光L2が目に入ったとしても安全性を確保することができる。
【0060】
そして、通常はライトガイドLGおよびケーブル5がそれぞれ体腔挿入部30および撮像ユニット20にそれぞれ接続された後に光源装置2の電源がオンされ、操作者により体腔挿入部30が体腔内に挿入され、体腔挿入部30の先端が被観察部の近傍に設置される。
【0061】
そして、光源装置2の通常光源50から射出された通常光L1と近赤外LD光源54から射出された励起光L2がライトガイドLGのマルチモード光ファイバ61によって導光され、マルチモード光ファイバ61の出射端から出射された後、拡散部60に入射される。拡散部60に入射された通常光L1と励起光L2は、拡散部60の拡散面60aにおいて拡散されて出射され、挿入部材30b内のマルチモード光ファイバ31の入射端に入射される。
【0062】
挿入部材30b内のマルチモード光ファイバ31によって導光された通常光L1および励起光L2は、挿入部材30bの先端部30Yに設けられた照射窓30dから被観察部に照射される。
【0063】
次いで、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像が撮像されるとともに、励起光L2の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像が撮像される。なお、被観察部には、予めICGが投与されており、このICGから発せられる蛍光を撮像するものとする。
【0064】
具体的には、通常像の撮像の際には、通常光L1の照射によって被観察部から反射された反射光に基づく通常像L3が挿入部材30bの先端部30Yから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0065】
撮像ユニット20に入射された通常像L3は、ダイクロイックプリズム21により撮像素子26に向けて直角方向に反射され、第2結像光学系25により撮像素子26の撮像面上に結像され、撮像素子26によって所定のフレームレートで順次撮像される。
【0066】
撮像素子26から順次出力された通常画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に順次出力される。
【0067】
そして、プロセッサ3に入力された通常画像信号は、通常画像入力コントローラ41において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の通常画像信号は、画像処理部43において階調補正処理およびシャープネス補正処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0068】
そして、ビデオ出力部45は、入力された通常画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて通常画像を表示する。
【0069】
一方、蛍光像の撮像の際には、励起光の照射によって被観察部から発せられた蛍光に基づく蛍光像L4が挿入部材30bの先端部30Yから入射し、挿入部材30b内のレンズ群により導光されて撮像ユニット20に向けて射出される。
【0070】
撮像ユニット20に入射された蛍光像L4は、ダイクロイックプリズム21および励起光カットフィルタ22を通過した後、第1結像光学系23により高感度撮像素子24の撮像面上に結像され、高感度撮像素子24によって所定のフレームレートで撮像される。
【0071】
高感度撮像素子24から順次出力された蛍光画像信号は、撮像制御ユニット27においてCDS/AGC(相関二重サンプリング/自動利得制御)処理やA/D変換処理が施された後、ケーブル5を介してプロセッサ3に順次出力される。
【0072】
そして、プロセッサ3に入力された蛍光画像信号は、蛍光画像入力コントローラ42において一時的に記憶された後、メモリ44に格納される。そして、メモリ44から読み出された1フレーム毎の蛍光画像信号は、画像処理部43において所定の画像処理が施された後、ビデオ出力部45に順次出力される。
【0073】
そして、ビデオ出力部45は、入力された蛍光画像信号に所定の処理を施して表示制御信号を生成し、1フレーム毎の表示制御信号をモニタ4に順次出力する。そして、モニタ4は、入力された表示制御信号に基づいて蛍光画像を表示する。
【0074】
そして、上述したような通常画像および蛍光画像の撮像が終了した後、通常は光源装置2の電源がオフされた後にライトガイドLGが挿入部材30bのケーブル接続部30cから取り外されることになり、取り外されたライトガイドLGのコネクタCから光が出射されることはない。しかしながら、たとえば誤って光源装置2の電源がオンされた状態のままライトガイドLGが挿入部材30bのケーブル接続部30cから取り外される場合が発生しうる。
【0075】
しかしながら、上述したようにマルチモード光ファイバ61に出射端に設けられた拡散部60によって励起光L2は拡散されるので、そのエネルギー密度を小さくすることができ、励起光L2が目に入ったとしても安全性を確保することができる。なお、通常画像および蛍光画像を撮像しているときに誤ってライトガイドLGが挿入部材30bのケーブル接続部30cから取り外された場合も同様である。
【0076】
また、上記実施形態においては、励起光に対する安全性を確保するためにライトガイドLGの出射端に拡散部60を設けるようにしたが、このように拡散部60を設けた場合、通常光L1および励起光L2が拡散された状態で挿入部材30bのマルチモード光ファイバ31に入射されることになるので、光の伝達効率という観点ではあまり好ましくはない。
【0077】
そこで、たとえば図7に示すように、挿入部材30b内に、通常光L1および励起光L2の入射端に向けてコア径が次第に大きくなるようなテーパ部を有するマルチモード光ファイバ32を設けるようにしてもよい。これにより拡散部60から出射された通常光L1および励起光L2の集光効率を向上することができ、伝達効率の向上を図ることができる。また、このようにマルチモード光ファイバ32の入射端にテーパ部を形成した場合、この入射端のコアの面積よりもマルチモード光ファイバ32の出射端のコアの面積を小さくするようにすれば、エタンデュの保存法則により、出射端から射出される光の拡散角を広げることができるので、被観察部に対する通常光L1および励起光L2の照射範囲を広げることができより好ましい。
【0078】
なお、図7に示すようなマルチモード光ファイバ32を用いる場合、拡散部60の拡散面60aがマルチモード光ファイバ32の入射面側となるように配置するようにしてもよい。
【0079】
また、ライトガイドLGと挿入部材30bのマルチモード光ファイバ31との間の伝達効率を上げる方法はこれに限らず、たとえば、図8に示すように、挿入部材30bのケーブル接続部30c内に、ライトガイドLGのマルチモード光ファイバ31と同等の屈折率を有し、ライトガイドLGから出射された通常光L1および励起光L2を透過する透過部材33を設けるようにしてもよい。この透過部材33を設けることによって、ライトガイドLGと挿入部材30bとを接続した際、拡散部60と挿入部材30bのマルチモード光ファイバ31とを光学的に接続することができ、通常光L1および励起光L2の伝達効率を向上することができる。
【0080】
また、この透過部材33としては、弾力性を有する材料から形成されたものを用いることが望ましく、たとえば樹脂から形成されたものを用いることが望ましい。このような透過部材33としては、たとえばLED用シリコーン材料(SLJ9101,SLJ9102,SLJ9105,SLJ9106(旭化成製)など)や、高透明ウレタンゴムなどを用いることができる。
【0081】
このように弾力性のある透過部材33を用いることにより、拡散部60と透過部材33との間の密着性および透過部材33とマルチモード光ファイバ31の入射面との間の密着性を向上させることができる。
【0082】
特に、図8に示すように、拡散部60の拡散面60aがマルチモード光ファイバ31の入射面側に向くように配置した場合には、拡散部60の拡散面60aと透過部材33との間の密着性を向上させることによって拡散面60aにおける拡散効果を抑制することができるので、通常光L1および励起光L2の伝達効率をさらに向上させることができる。
【0083】
ただし、拡散面60aの向きはこれに限らず、上記実施形態と同様に、マルチモード光ファイバ61の光の出射端面側に向くようにしてもよい。
【0084】
また、上述した透過部材33は、挿入部材30bのケーブル接続部30cに対して着脱可能に設けることが望ましい。このように構成することにより、たとえば透過部材33にゴミなどが付着した場合でも、透過部材33を取り外してゴミを取り除き、再び装着することができる。透過部材33を着脱可能にする構成としては、たとえば、透過部材33をケーブル接続部30cに対して固定して設置することなく、手で自由に取り出せるようにしてもよいし、ケーブル接続部30cに対して着脱可能な部材に対して透過部材33を設けるようにしてもよい。
【0085】
また、透過部材33を挿入部材30bのケーブル接続部30cに設けるのではなく、ライトガイドLGのコネクタC内に、拡散部60の拡散面60aに接するように設けるようにしてもよい。
【0086】
また、図9に示すように、ライトガイドLGと挿入部材30bのケーブル接続部30cとの間に、マルチモード光ファイバ61と同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材70を設けるようにしてもよい。
【0087】
供給部材70は、ライトガイドLGのコネクタCと挿入部材30bのケーブル接続部30cとが嵌合することによってこれを繋ぎ合せる筒形状の接続部71と、接続部71に設けられ、上述した液体やジェルが溜められた溜部72とを備えている。そして、接続部71は、ライトガイドLGのコネクタCと挿入部材30bのケーブル接続部30cとに着脱可能に構成されており、これにより供給部材70はディスポーザブルな構成となっている。また、溜部72は、人の手で押されることによって変形可能な樹脂などの材料によって形成されるものであり、その中に充填される液体やジェルは、マルチモード光ファイバ61と同等の屈折率を有するものである。このような液体としてマッチングオイルやマッチングジェルなどがある。たとえば、http://www.cargille.com/refractivestandards.shtmlに記載されているカーギル社製の屈折液を利用することができる。
【0088】
そして、供給部材70に対し、ライトガイドLGのコネクタCと挿入部材30bのケーブル接続部30cとが嵌合されて接続された後、溜部72が人の手で押されて変形することよって溜部72内の液体などが接続部71に形成された穴71aを介して吐出される。
【0089】
この吐出された液体などはライドガイドLGの拡散部60と挿入部材30bのマルチモード光ファイバ31の入射面との間に供給され、これにより拡散部60とマルチモード光ファイバ31とが光学的に接続され、伝達効率を向上させることができる。なお、接続部71には、上述したように供給された液体などが漏れないように、水密リング73が設けられている。
【0090】
なお、上述したような供給部材70を用いる場合には、拡散部60は、図9に示すように、その拡散面60aが、マルチモード光ファイバ31の入射端側に向くように設けることができる。このように構成した場合、拡散部60の拡散面60aと供給部材70から供給された液体などとを接触させることによって拡散面60aにおける拡散効果を抑制することができるので、通常光L1および励起光L2の伝達効率を向上させることができる。
【0091】
ただし、拡散面60aの向きはこれに限らず、上記実施形態と同様に、マルチモード光ファイバ61の光の出射端面側に向くようにしてもよい。このように拡散部60を設けた場合には、供給部材70から供給された液体などが拡散面60aに付着してその拡散効果が低減するのを防止することができる。
【0092】
なお、上記実施形態においては、第1の撮像系により蛍光画像を撮像するようにしたが、これに限らず、被観察部への特殊光の照射による被観察部の吸光特性に基づく画像を撮像するようにしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態は、本発明の内視鏡装置を硬性鏡システムに適用したものであるが、これに限らず、たとえば、軟性内視鏡システムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 硬性鏡システム
2 光源装置
3 プロセッサ
4 モニタ
5 ケーブル
10 硬性鏡撮像装置
20 撮像ユニット
24 高感度撮像素子
26 撮像素子
30 体腔挿入部
30c ケーブル接続部
30d 照射窓
31 マルチモード光ファイバ
32 マルチモード光ファイバ
33 透過部材
50 通常光源
52 集光レンズ
53 ダイクロイックミラー
54 近赤外LD光源
60 拡散部
60a 拡散面
61 マルチモード光ファイバ
70 供給部材
71 接続部
71a 穴
72 溜部
73 水密リング
C コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入され、該体内の被観察部に特殊光を照射するとともに、該特殊光の照射によって前記被観察部から発せられた光を受光する挿入部と、該挿入部に光学的に接続され、光源から発せられた前記特殊光を前記挿入部まで導光する導光部とを備えた内視鏡装置において、
前記導光部の前記特殊光の出射端に該導光部によって導光された特殊光を拡散する拡散部が設けられていることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記特殊光が近赤外光であることを特徴とする請求項1記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記拡散部における前記特殊光を拡散する拡散面が、前記導光部の出射端側に向くように前記拡散部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記拡散部と前記挿入部の前記特殊光の入射端との間に、前記導光部と同等の屈折率を有し、前記導光部から出射された前記特殊光を透過する透過部材が設けられていることを特徴とする請求項1または2項記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記透過部材が、弾力性を有するものであることを特徴とする請求項4記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記透過部材が、樹脂から形成されるものであることを特徴とする請求項4または5記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記透過部材が、前記導光部の出射端または前記挿入部の入射端に着脱可能に設けられるものであることを特徴とする請求項4から6いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記拡散部と前記挿入部の前記特殊光の入射端との間に、前記導光部と同等の屈折率を有する液体またはジェルを供給する供給部材が設けられており、
該供給部材が、前記導光部の出射端または前記挿入部の入射端に着脱可能に設けられるものであることを特徴とする請求項1または2記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記拡散部における前記特殊光を拡散する拡散面が、前記挿入部の入射端側に向くように前記拡散部が設けられていることを特徴とする請求項4から8いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記拡散部が、レンズ拡散板であることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記挿入部が、前記導光部から出射された前記特殊光が入射され、該入射された特殊光を導光する光ファイバを備えたものであり、
該光ファイバの前記特殊光の入射端部が、前記導光部の出射端側に向けてコア径が大きくなるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の内視鏡装置。
【請求項12】
前記導光部が、前記特殊光とともに、白色光源から発せられた白色光も導光するものであり、
前記挿入部が、前記導光部によって導光された前記白色光を前記被観察部に照射するものであることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の内視鏡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate