説明

内視鏡装置

【課題】被検体を観察し又は画像を取得する場合において、挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得する。
【解決手段】2つの画像を取得し、一の画像における任意の点を基点とし、一の画像における一の光ファイバ21,22の走査軌跡の中心と他の画像における他の光ファイバの走査軌跡の中心とを結ぶ直線上に基点を投影させた投影点を第1の検出ポイントとし、他の画像における第1の検出ポイントと対応する点を第2の検出ポイントとして設定する検出ポイント設定部17と、一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、他の画像の第2の検出ポイントにおける前記他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とに基づいて、挿入部5の前記観察対象に対する深度Hを演算する内視鏡装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの光線を、観察対象のずれた位置に2次元走査しながら照射することにより、立体視観察可能な視点の異なる2つの画像(視差画像)を取得する内視鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0137893号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の内視鏡装置では、挿入部を被検体内に挿入して取得された病変部等の観察対象の視差画像を参照しても、挿入部先端の観察対象からの距離(深度)を把握することができない。従って、例えば、挿入部の観察対象からの距離を一定に維持することが困難であり、観察対象である患部にレーザ光を照射して治療を行うような場合において、治療精度が低下する等の不具合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被検体を観察し又は画像を取得する場合において、挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、挿入部内に所定の間隔を隔てて設けられ、光源から出射された照明光を導光し、観察対象に対して前記照明光の光軸に交差する方向の互いにずれた位置に夫々照射する2つの光ファイバと、各該光ファイバの先端を一体的に振動させて各前記照明光を予め設定された螺旋状の軌跡に従って2次元走査させる駆動部と、前記照明光の前記観察対象からの2つの戻り光を受光し、受光した該戻り光の強度を夫々検出する検出部と、該検出部によって検出された各前記戻り光の強度を、前記照明光の走査位置に基づいて画像化することにより各前記照明光の走査領域に応じた2つの画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部により生成された一の画像における任意の点を基点とし、前記一の画像における前記一の光ファイバの走査軌跡の中心と前記画像生成部により生成された他の画像における前記他の光ファイバの走査軌跡の中心とを結ぶ直線上に前記基点を投影させた投影点を第1の検出ポイントとし、前記他の画像における第1の検出ポイントと対応する点を第2の検出ポイントとして設定する検出ポイント設定部と、前記一の画像の前記第1の検出ポイントにおける前記一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、前記他の画像の前記第2の検出ポイントにおける前記他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とに基づいて、前記挿入部の前記観察対象に対する深度を演算する深度演算部と、を備えた内視鏡装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、2つの光ファイバ部から被検体内のずれた位置に照射された各照明光が駆動部によって2次元走査されることにより、位置がずれた2つの走査領域の画像、すなわち、2つの視点から観察された画像からなる視差画像が生成される。
このとき、検出ポイント設定部により、取得された2つの画像のうち、何れか一の画像において任意の点を挿入部と観察対象との距離である深度を把握するための基点として定め、一の画像において、2つの光ファイバの走査軌跡の中心を結ぶ直線上に基点を投影させた投影点が第1の検出ポイントとして設定される。続いて、他の画像における第1の検出ポイントと対応する点が第2の検出ポイントとして設定される。第2の検出ポイントは第1の検出ポイントと対応する点であるため、少なくとも2つの画像を立体視可能な一つの画像としたときに、第1の検出ポイントの位置と第2の検出ポイントの位置とが略一致する。
【0007】
光ファイバは、駆動部により予め設定された螺旋状の軌跡に従って振動させられるので、一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とは各検出ポイントから自動的に求めることができ、これによって、2つの光ファイバの走査軌跡の中心間の走査軌跡の数と、各光ファイバの走査軌跡の中心軸に対する振幅角とを把握することができる。また、2つの光ファイバ間の距離が既知であるので、第1の検出ポイント又は第2の検出ポイントの各光ファイバの走査軌跡の中心からの距離を求めることができる。
【0008】
従って、一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とに基づいて得られた、第1の検出ポイント又は第2の検出ポイントの各光ファイバの走査軌跡の中心からの距離と各光ファイバの振幅角とから、挿入部の観察対象に対する深度を演算することができる。これにより、被検体を観察し又は画像を取得する場合において、挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得することができる。
【0009】
上記した発明において、前記深度演算部が、前記一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの中心軸に対する振幅角と、前記他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの中心軸に対する振幅角とを演算し、以下の(1)式及び(2)式に基づいて前記挿入部の前記観察対象に対する深度Hを演算することが好ましい。
H’=d/(tanα+tanβ) ・・・ (1)
H =H’−h ・・・ (2)
ここで、H’は2つの光ファイバの振幅の支点から観察対象までの距離、hは2つの光ファイバの振幅の支点から挿入部先端面までの距離、dは一の光ファイバと他の光ファイバとの距離、αは一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの中心軸に対する振幅角、βは他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの中心軸に対する振幅角をそれぞれ示す。
【0010】
本発明によれば、一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とに基づいて、各光ファイバの走査軌跡の中心軸に対する振幅角とを演算することができる。また、一の光ファイバと他の光ファイバとの距離及び2つの光ファイバの振幅の支点から挿入部先端面までの距離が既知であることから、これらの距離と振幅角に基づいて、簡易な演算を行うことにより挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得することができる。
【0011】
なお、深度演算部が、光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数に応じて予め深度を記憶した記憶部を備える構成とすることもでき、この場合には、各光ファイバの振幅角をその都度求めることなく、直ちに深度情報を取得することができる。特に、光ファイバの先端にレンズ等が設けられている場合には、当該レンズの曲率半径や屈折率等を考慮して、光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と光ファイバの振幅角を対応づけて予め深度を記憶させておくことで、直ちに深度情報を取得することができる。
【0012】
また、上記した発明において、前記検出ポイント設定部が、前記一の画像において前記基点を操作者に指定させる基点指定部を備え、該基点指定部により指定された基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する前記他の画像における第2の検出ポイントを、前記一の画像と前記他の画像とのパターン認識により検出して設定することが好ましい。
【0013】
このようにすることで、操作者からの指定に基づいて基点指定部により一の画像に対する基点が設定されると、検出ポイント設定部が前記一の画像と前記他の画像とをパターン認識することにより基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する他の画像における第2のポイントを設定するので、基点を設定するだけで直ちに深度情報を取得することができる。
【0014】
また、上記した発明において、前記検出ポイント設定部が、前記一の画像における任意点を前記基点として設定し、設定された基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する前記他の画像における第2の検出ポイントを、前記一の画像と前記他の画像とのパターン認識により検出して設定することが好ましい。
【0015】
このようにすることで、基点が設定されると、検出ポイント設定部が前記一の画像と前記他の画像とをパターン認識することにより基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する他の画像における第2のポイントを設定するので、直ちに深度情報を取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被検体を観察し又は画像を取得する場合において、挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の全体構成図である。
【図2】本実施形態に係る内視鏡装置の画像生成部により生成される各照明光に基づく各画像の参考図である。
【図3】本実施形態に係る内視鏡装置によって照明光が走査される2つの走査領域を示す図である。
【図4】本実施形態に係る内視鏡装置によって照明光が走査される際の様子を示す模式図である。
【図5】本実施形態に係る内視鏡装置により観察面を観察する場合において、挿入部の観察面に対する深度を演算する際の処理を示すフローチャートである。
【図6】検出ポイントにおける螺旋状走査軌跡の周回数に応じて予め深度を定めたルックアップテーブルの例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、平行法により立体視可能な視差画像を取得するものであり、図1に示すように、照明光L1,L2を射出する投光ファイバ2(光ファイバ)、受光ファイバ3及び投光ファイバ2の先端部を振動させるアクチュエータ(駆動部)4を有する挿入部5、投光ファイバ2に照明光L1,L2を供給する照明ユニット6、アクチュエータ4を駆動させる駆動ユニット7、受光ファイバ3によって受光された照明光L1,L2の戻り光を光電変換する検出ユニット(検出部)8、検出部からの信号に基づいて視差画像を生成する画像生成ユニット9、照明ユニット6及び駆動ユニット7の作動を制御するとともに画像生成ユニット9により生成された視差画像をモニタ14に出力したり、視差画像に基づいて挿入部5の観察面に対する距離(深度)を演算したりする制御ユニット10を備えている。
【0019】
挿入部5は、その内部に長手方向に沿って配置された投光ファイバ2及び受光ファイバ3と、投光ファイバ2の先端側に配置された照明光学系11を備えている。
【0020】
投光ファイバ2は、所定の間隔dを隔てて配置され、先端部分が一体的に振動するように接合された2つの光ファイバ21,22を備えている。各光ファイバ21,22には1つずつコア(コア部)21a,22aを有するシングルモードファイバを適用することができ、この場合には、一方のコア21aから射出された第1の照明光L1及び他方のコア22aから射出された第2の照明光L2は、照明光学系11によって集束されて観察面Aに照射される。そして、2つの光ファイバ21,22が所定の間隔dをあけて配置されていることから、第1の照明光L1及び第2の照明光L2は観察面A上において光軸に交差する方向に所定の間隔dだけずれた位置を照射する。
【0021】
受光ファイバ3は、その先端面である受光面(受光部)31によって2つの照明光L1,L2の観察面Aによる戻り光を受光し、受光した戻り光を検出ユニット8へ導光する。
【0022】
アクチュエータ4は、例えば、電磁式又はピエゾ式であり、駆動ユニット7から駆動電圧が印加されると、投光ファイバ2の先端部分を螺旋状に振動させる。これにより、2つの照明光L1,L2が同時に観察面A上において螺旋状の走査軌跡に従って2次元走査される。
【0023】
ここで、2つの光ファイバ21,22の先端部分が一体的に振動するので、図2に示すように、2つの照明光L1,L2の螺旋状走査軌跡は同一形状となる。また、2つの照明光L1,L2によって走査される観察面A上の螺旋状走査軌跡S1,S2は、2つの照明光L1,L2の照射位置のずれ量、すなわち、2つの光ファイバ21,22の配置間隔dだけずれることとなる。
【0024】
照明ユニット6は、固体レーザ等の光源(図示せず)から照明光L1および照明光L2を射出し、射出された照明光L1を一方のコア21aに入射させ、照明光L2を他方のコア22aに入射させる。
【0025】
駆動ユニット7は、アクチュエータ4を駆動させる駆動信号をデジタル信号として生成する信号生成部71と、該信号生成部71によって生成された駆動信号をアナログ信号に変換するD/A変換部72a,72bと、該D/A変換部72a,72bの出力を増幅する信号増幅部73とを備えている。
【0026】
信号生成部71は、投光ファイバ2を振動させて螺旋状に走査させるための駆動信号を生成し、駆動信号をD/A変換部72に入力する。信号増幅部73は、D/A変換部72によって生成されたアナログ信号、つまり、駆動電圧を、アクチュエータ4の駆動に適した大きさまで増幅してアクチュエータ4に出力する。
【0027】
検出ユニット8は、各受光ファイバ3によって導光されてきた戻り光を波長によって分配する波長分波器(波長分岐手段)81と、該波長分波器81によって分配された各戻り光を検出して光電変換する2つの光検出器82a,82bとを備えている。
波長分波器81は、入力された戻り光のうち、第1の波長を有する戻り光と第2の波長を有する戻り光を抽出して別々の光検出器82a,83bに出力する。
光検出器82a,82bは、例えば、フォトダイオードや光電子増倍管である。各光検出器82a,83bは、検出した戻り光の光量に応じた大きさの光電流を各A/D変換部91a,92bに出力する。
【0028】
画像生成ユニット9は、各光検出器82a,82から出力された光電流をデジタル信号に変換する2つのA/D変換部91a,92bと、該各A/D変換部91a,92bによって生成されたデジタル信号から2次元画像を生成する視差画像生成部92と、を備えている。
【0029】
視差画像生成部92は、各A/D変換部91a,92bから受け取ったデジタル信号と、制御ユニット10から受け取った照射光L1,L2の走査位置の情報とに基づいて、2つの2次元画像を生成する。ここで、2つの2次元画像は、照明光L1による螺旋状走査軌跡S1からの戻り光から生成した画像P1(図2(a))と、照明光L2による螺旋状走査軌跡S2からの戻り光から生成した画像P2であり(図2(b))、図3に示すように、画像P1と画像P2とは、2つの照明光L1,L2の照射位置のずれ量dに相当する量だけ視点が平行に移動した画像である。すなわち、2つの2次元画像から視差画像を構成することができる。
【0030】
制御ユニット10は、信号生成部71に対して駆動信号の仕様、例えば、振動数や振幅などを指定する指定信号を出力するとともに、該指定信号の情報、つまり、照射光L1,L2の走査位置を含む情報を視差画像生成部92に出力する。
また、制御ユニット10は、視差画像生成部92で生成された2つの2次元画像を、立体視観察に適した状態に画像再構築しモニタ14に表示させるとともに、後述する深度演算部19により演算された挿入部5と観察面Aとの距離である深度をモニタ14に表示させる。
【0031】
制御ユニット10は、視差画像生成部92で生成された2つの2次元画像において、挿入部5と観察面Aとの距離である深度を演算するための基点及び検出ポイントを設定するための検出ポイント設定部17と、検出ポイント設定部17により設定された検出ポイントから挿入部5と観察面Aとの距離である深度を演算する深度演算部19とを備えている。
【0032】
検出ポイント設定部17は、視差画像生成部92で生成された2つの2次元画像のうち、照明光L1の戻り光に基づく画像を一の画像P1とし、照明光L2の戻り光に基づく画像を他の画像P2とした場合に、画像P1における任意の点を基点Zとして定める。そして、画像P1における光ファイバ21の走査軌跡の中心と画像P2における光ファイバ22の走査軌跡の中心とを結ぶ直線上に基点Zを投影させた投影点を検出ポイントX1とし、画像P2における検出ポイントX1と対応する点を検出ポイントX2として設定する。
【0033】
深度演算部19は、画像P1の検出ポイントX1における光ファイバ21の螺旋状走査軌跡の周回数(図2及び図3中の丸印)と、画像P2の検出ポイントX2における光ファイバ22の螺旋状走査軌跡の周回数(図2及び図3中の四角印)とに基づいて、挿入部5の観察面Aに対する深度を演算する。
【0034】
より詳細には、図4に示すように、深度演算部19は、画像P1の検出ポイントX1における光ファイバ21の中心軸に対する振幅角αと、画像P2の検出ポイントX2における光ファイバ22の中心軸に対する振幅角βとを演算し、以下の(3)式に基づいて2つの光ファイバの振幅の支点Rから観察対象までの距離H’を演算する。
【0035】
H’=d/(tanα+tanβ) ・・・ (3)
ここで、dは光ファイバ21と光ファイバ22との距離をそれぞれ示す。
【0036】
2つの光ファイバの振幅の支点Rから挿入部先端面までの距離をhとすると、挿入部先端面の観察面に対する深度Hは以下の(4)式で表わすことができる。
H =H’−h ・・・ (4)
【0037】
従って、上記した(3)式及び(4)式から、以下の(5)式を得ることができ、この(5)式に基づいて挿入部5の観察面Aに対する深度Hを演算する。
H=d/(tanα+tanβ)−h ・・・ (5)
【0038】
以下、上記した内視鏡装置1により観察面Aを観察する場合において、挿入部5の観察面Aに対する深度を演算する際の処理について図5のフローチャートに従って説明する。
内視鏡装置1の挿入部5を被検体に挿入し、観察面Aに光源からの照明光L1,L2を照射し、照明光L1,L2の戻り光を検出することにより観察面Aの画像P1及び画像P2を取得する。このときの挿入部5の先端面と観察面Aとの距離である深度を把握するには、まず検出ポイント設定部17により、画像P1において、深度を演算するための基準となる基点Zを指定する(ステップS11)。
【0039】
続いて、画像P1及び画像P2において、検出ポイントX1及び検出ポイントX2を夫々設定する(ステップS12)。検出ポイントX1は、画像P1上の、光ファイバ21の走査軌跡の中心と画像P2における光ファイバ22の走査軌跡の中心とを結ぶ直線上に基点Zを投影させ、その投影点を検出ポイントX1として設定する。
【0040】
そして、基点Zに対応して設定された検出ポイントX1に対応する画像P2における検出ポイントX2を設定する。すなわち、画像P1と画像P2とをパターン認識し、画像P1における検出ポイントX1と対応する画像P2における画素を検出し、当該画素を画像P2における検出ポイントX2として設定する。
【0041】
次のステップS13では、検出ポイントX1の螺旋状走査軌跡S1における周回数、すなわち、検出ポイントX1が螺旋状走査軌跡S1の中心から何番目の螺旋縞に位置するかを螺旋状走査軌跡S1に基づいて演算する。同様に、検出ポイントX2の螺旋状走査軌跡S2における周回数、すなわち、検出ポイントX2が螺旋状走査軌跡S2の中心から何番目の螺旋縞に位置するかを螺旋状走査軌跡S2に基づいて演算する。
【0042】
ステップS14では、先に演算された周回数に基づいて、検出ポイントX1の光ファイバ21の走査軌跡の中心軸に対する振幅角及び検出ポイントX2の光ファイバ22の走査軌跡の中心軸に対する振幅角を演算する。
そして、次のステップS15において、深度演算部19により、上記した(4)式に基づいて挿入部5の観察面Aに対する深度を演算する。
【0043】
このように、画像P1の検出ポイントX1における光ファイバ21の螺旋状走査軌跡S1の周回数と、画像P2の検出ポイントX2における光ファイバ22の螺旋状走査軌跡S2の周回数とに基づいて、各光ファイバ21,22の螺旋状走査軌跡の中心軸に対する振幅角を演算することができる。また、光ファイバ21,22同士の距離d及び光ファイバ21,22の振幅の支点Rから挿入部5の先端面までの距離hが既知であることから、この距離と振幅角に基づいて、簡易な演算を行うことにより挿入部先端の観察面に対する距離である深度に係る情報を取得することができる。
【0044】
このように、挿入部先端の深度を把握することができるので、例えば、挿入部先端により誤って生体を損傷させる虞がなく、また、挿入部の観察対象からの距離を一定に維持することができるので、観察対象である患部にレーザ光を照射して治療を行うような場合において、治療精度を向上させることができる。
【0045】
また、検出ポイント設定部17が画像P1と画像P2とをパターン認識することにより基点Zに対応して設定された検出ポイントX1に対応する画像P2における検出ポイントX2を設定するので、直ちに深度情報を取得することができる。
また、基点Zの設定は、検出ポイント設定部17により自動的に行うこととしてもよいし、内視鏡装置1の操作者による入力操作に基づいて行うこととしてもよい。この場合には、例えば、検出ポイント設定部17が、画像P1において基点Zを操作者に指定させる基点指定部を備える構成とすることができ、基点指定部により指定された基点Zに対応して設定された検出ポイントX1に対応する画像P2における検出ポイントP2を、画P1と画像P2とのパターン認識により検出して設定することができる。
【0046】
なお、各光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と各光ファイバの振幅角とが対応していることから、深度演算部が、各検出ポイントにおける螺旋状走査軌跡の周回数に応じて予め深度を定めたルックアップテーブル等を記憶した記憶部を備える構成とすることもでき、この場合には、各光ファイバの振幅角をその都度求めることなく、直ちに深度情報を取得することができる。
ルックアップテーブルの例を図6に示した。
【0047】
このように、本発明によれば、被検体を観察し又は画像を取得する場合において、挿入部先端の観察対象からの距離である深度に係る情報を取得することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 内視鏡装置
2 投光ファイバ
3 受光ファイバ
4 アクチュエータ(駆動部)
5 挿入部
6 照明ユニット
7 駆動ユニット
8 検出ユニット(検出部)
9 画像生成ユニット(画像生成部)
10 制御ユニット
11 照明光学系
14 モニタ
17 検出ポイント設定部
19 深度演算部
21,22 光ファイバ
92 視差画像生成部
A 観察面
L1 第1の照明光
L2 第2の照明光
P1 画像
P2 画像
S1 螺旋状走査軌跡
S2 螺旋状走査軌跡
X1 検出ポイント
X2 検出ポイント
Z 基点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部内に所定の間隔を隔てて設けられ、光源から出射された照明光を導光し、観察対象に対して前記照明光の光軸に交差する方向の互いにずれた位置に夫々照射する2つの光ファイバと、
各該光ファイバの先端を一体的に振動させて各前記照明光を予め設定された螺旋状の軌跡に従って2次元走査させる駆動部と、
前記照明光の前記観察対象からの2つの戻り光を受光し、受光した該戻り光の強度を夫々検出する検出部と、
該検出部によって検出された各前記戻り光の強度を、前記照明光の走査位置に基づいて画像化することにより各前記照明光の走査領域に応じた2つの画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された一の画像における任意の点を基点とし、前記一の画像における前記一の光ファイバの走査軌跡の中心と前記画像生成部により生成された他の画像における前記他の光ファイバの走査軌跡の中心とを結ぶ直線上に前記基点を投影させた投影点を第1の検出ポイントとし、前記他の画像における第1の検出ポイントと対応する点を第2の検出ポイントとして設定する検出ポイント設定部と、
前記一の画像の前記第1の検出ポイントにおける前記一の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数と、前記他の画像の前記第2の検出ポイントにおける前記他の光ファイバの螺旋状走査軌跡の周回数とに基づいて、前記挿入部の前記観察対象に対する深度を演算する深度演算部と、
を備えた内視鏡装置。
【請求項2】
前記深度演算部が、前記一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの中心軸に対する振幅角と、前記他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの中心軸に対する振幅角とを演算し、以下の(1)式及び(2)式に基づいて前記挿入部の前記観察対象に対する深度Hを演算する請求項1記載の内視鏡装置。
H’=d/(tanα+tanβ) ・・・ (1)
H =H’−h ・・・ (2)
ここで、H’は2つの光ファイバの振幅の支点から観察対象までの距離、hは2つの光ファイバの振幅の支点から挿入部先端面までの距離、dは一の光ファイバと他の光ファイバとの距離、αは一の画像の第1の検出ポイントにおける一の光ファイバの中心軸に対する振幅角、βは他の画像の第2の検出ポイントにおける他の光ファイバの中心軸に対する振幅角をそれぞれ示す。
【請求項3】
前記検出ポイント設定部が、前記一の画像において前記基点を操作者に指定させる基点指定部を備え、
該基点指定部により指定された基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する前記他の画像における第2の検出ポイントを、前記一の画像と前記他の画像とのパターン認識により検出して設定する請求項1又は請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記検出ポイント設定部が、前記一の画像における任意点を前記基点として設定し、設定された基点に対応して設定された第1の検出ポイントに対応する前記他の画像における第2の検出ポイントを、前記一の画像と前記他の画像とのパターン認識により検出して設定する請求項1又は請求項2に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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