説明

内視鏡装置

【課題】内視鏡装置で特殊光観察を行う際に、LED光と他の光との出射光量比を高い精度で一定に保つ。
【解決手段】LED及び蛍光体からなる光源K1と、光源K1とは異なる波長域の光を出射するLDからなる光源K2と、光源K1,K2の各々の駆動信号の振幅値と出射光量との関係を示す情報を記憶する記憶部71とを備え、制御部49は、光源K1,K2の各々からの出射光量を合計した全出射光量に対する目標光量と、光源K1,K2の各々の出射光量比と、記憶部71に記憶されている前記情報とに基づいて、光源K1に供給する駆動信号の第一の振幅値と、光源K2に供給する駆動信号の第二の振幅値を設定し、更に、目標光量に基づいて光源K1,K2に共通の駆動信号を生成し、共通の駆動信号の振幅値を第一の振幅値に変更して光源K1用の駆動信号を生成し、共通の駆動信号の振幅値を第二の振幅値に変更して光源K2用の駆動信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内の組織を観察する内視鏡装置が広く知られている。一般的に内視鏡装置は、キセノンランプ等の白色光源から出射された白色光(照射光)を、ライトガイドを通じて体腔内の被観察領域に照射し、被観察領域からの反射光に基づく像を撮像素子により受光して観察画像を生成する構成となっている。
【0003】
また近年になって、生体組織に特定波長の狭帯域光を照射して、組織表層の毛細血管や微細構造を観察する狭帯域光観察、或いは自家蛍光、薬剤蛍光による蛍光観察等の特殊光を用いた観察モードを有する内視鏡装置も利用されている。特殊光としては、キセノンランプ等の白色光源からの光と、レーザダイオード等の半導体光源からの狭帯域光とを混合したものが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された方式では、白色光源としてキセノンランプを用いているため、白色光と狭帯域光との出射光量比を細かく制御することは困難である。そこで、白色光源としてキセノンランプに代えて、長寿命で出力変動の少ない発光ダイオード(LED)と蛍光体とを組み合わせた光源を利用することができる。このように、特殊光観察時の光源として、2つの半導体光源を用いる場合、半導体光源の出力は細かに制御可能であるため、波長バランス(出射光量比)を高い精度で設定することができる。
【0005】
しかし、2つの半導体光源の波長バランスを高い精度で維持しつつ、それぞれを強度変調することは容易ではない。特に、LEDのように、入力電流値に対する出射光量の特性が非線形となる領域を有する光源を用いる場合には、この非線形性を考慮した制御が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−201940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力電流値に対する出射光量の特性が非線形となる領域を持つ半導体光源を少なくとも含む2つの光源を用いた内視鏡装置で特殊光観察を行う際に、これら2つの光源からの光の混合比率を高い精度で一定に保ち、所望の観察画像を取得できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡装置は、照明光を内視鏡挿入部の先端から被検体に照射し、当該被検体からの反射光を検出して当該被検体の画像信号を得る内視鏡装置であって、駆動信号の振幅値に対する発光強度の特性が非線形となる領域を持つ半導体光源を含む第一の光源と、前記第一の光源とは異なる波長域の光を出射する半導体光源からなる第二の光源と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々からの出射光量を合計した全出射光量に対する目標光量を設定する目標光量設定部と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の出射光量比を設定する光量比設定部と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の駆動信号の振幅値と出射光量との関係を示す情報を記憶する情報記憶部と、前記光量比設定部により設定された出射光量比と、前記情報記憶部に記憶されている前記情報と、前記目標光量設定部により設定された目標光量とに基づいて、前記第一の光源に供給する駆動信号の第一の振幅値と、前記第二の光源に供給する駆動信号の第二の振幅値を設定する振幅値設定部と、前記目標光量に基づいて前記第一の光源及び前記第二の光源に共通の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第一の振幅値に変更して前記第一の光源用の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第二の振幅値に変更して前記第二の光源用の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記第一の光源用の駆動信号を前記第一の光源に供給し、前記第二の光源用の駆動信号を前記第二の光源に供給して、前記全出射光量が前記目標光量となるように制御する信号供給部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力電流値に対する出射光量の特性が非線形となる領域を有する半導体光源を少なくとも含む2つの光源を用いた内視鏡装置で特殊光観察を行う際に、これら2つの光源からの光の混合比率を高い精度で一定に保ち、所望の観察画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための内視鏡装置100の外観図
【図2】図1に示される内視鏡装置100の内部構成を示す図
【図3】光源K1,K2から出射される光の波長と発光強度との関係を示す図
【図4】光源K1,K2に供給される駆動パルスの振幅値と、光源K1,K2の出射光量との関係を示す図
【図5】光源制御部49が生成する光源K1,K2に共通の駆動信号の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態を説明するための内視鏡装置100の外観図である。
【0013】
内視鏡装置100は、内視鏡11と、制御装置13と、液晶表示装置等の表示部15と、制御装置13に情報を入力するキーボードやマウス等の入力部17とを備える。
【0014】
制御装置13は、光源装置45と、内視鏡11から出力される撮像画像信号の信号処理等を行うプロセッサ47とを備える。
【0015】
内視鏡11は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部19と、内視鏡挿入部19の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部23と、内視鏡11を制御装置13に着脱自在に接続するコネクタ部25,27とを備える。
【0016】
内視鏡挿入部19は、可撓性を持つ軟性部29と、湾曲部31と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)33とから構成される。
【0017】
なお、図示はしないが、操作部23及び内視鏡挿入部19の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられる。
【0018】
図2は、図1に示される内視鏡装置100の内部構成を示す図である。
【0019】
内視鏡先端部33は、被観察領域へ光を照射するための照明窓35と、照明窓35に対向配置される拡散板58と、拡散板58と照明窓35の間に配置される照明用のレンズ59と、被観察領域からの反射光を受光するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子21と、撮像素子21の受光面に被観察領域からの反射光を入射させるための観察窓40と、観察窓40と撮像素子21との間に設けられる対物レンズユニット39とを備える。
【0020】
湾曲部31は、軟性部29と先端部33との間に設けられ、操作部23に配置されたアングルノブ43(図1参照)の回動操作により湾曲自在にされている。
【0021】
この湾曲部31は、内視鏡11が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲させることができ、内視鏡先端部33の照明窓35及び観察窓40を、所望の観察部位に向けることができる。
【0022】
制御装置13は、内視鏡先端部33の照明窓35より被観察領域に供給される照明光を発生する光源装置45と、撮像素子21から出力される赤(R)、緑(G)、青(B)の撮像画像信号を信号処理するプロセッサ47とを備える。光源装置45とプロセッサ47は、それぞれコネクタ部25,27を介して内視鏡11と接続される。
【0023】
光源装置45は、光源制御部49と、発光源としてLEDを用いた白色光を出射する光源K1と、中心波長405nmの狭帯域光を出射する光源K2と、光ファイババンドル51と、光ファイバ53とを備える。
【0024】
光源K1は、通常観察(白色光観察)のための光源である。光源K1は、LEDとこれを覆う蛍光体とによって構成されている。本実施形態では、光源K1は、波長445nmの青色光を発光するLEDと、このLEDから出射される光を励起光として黄色の蛍光を発するYAG系の蛍光体とによって構成される。そして、LEDから出射される青色光の一部によって励起された黄色光と、蛍光体を透過した当該青色光とが合わさることで、光源K1から白色光が出射されるようになっている。光源K1は、LEDを含むため、後述する図4に示すように、駆動信号の振幅値(入力電流値)に対する出射光量の特性が非線形となる領域を持つものとなっている。
【0025】
光源K2は、狭帯域光観察のための光源であり、半導体素子からなる。光源K2としては、駆動信号の振幅値に対する出射光量の特性が線形となるレーザダイオードや、駆動信号の振幅値に対する出射光量の特性が非線形となる領域を持つLEDを用いることができるが、その具体例として、中心波長405nmの紫色発光の半導体レーザが挙げられる。レーザ光源としては、例えばブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが使用できる。光源K2は、出射光の中心波長が370乃至470nmの範囲であれば、粘膜表層の毛細血管や微細構造等が強調される良好な狭帯域光観察を行うことができる。
【0026】
各光源K1,K2から出射される光は、光源制御部49により個別に制御される。光源制御部49は、通常観察モード時には、光源K1のみから光を出射させる。また、光源制御部49は、蛍光観察モード時には、光源K2のみから光を出射させる。更に、光源制御部49は、組織表層の毛細血管や微細構造を観察する狭帯域光観察モード時には、光源K1と光源K2からそれぞれ同時に所定の出射光量比で光を出射させる。
【0027】
図3は、光源K1,K2から出射される光の波長と発光強度との関係を示す図である。図3において、符号S1は光源K1から出射される光を示し、符号S2は光源K2から出射される光を示している。図3に示されるように、光源K2からの光は、波長445nm以上の範囲ではほとんど強度を持たない。したがって、光源K1と光源K2それぞれの出射光量の比の制御を高精度に行うことができる。また、光源K2からの光の強度の変動は、光源K1からの白色光へ実質的な影響を与えることがない。この結果、狭帯域光観察時の画質を良好なものにすることができる。
【0028】
光源K1から出射される白色光は、集光レンズ(図示略)により光ファイババンドル51に入力される。光源K2から出射される紫色光は、集光レンズ(図示略)により光ファイバ53に入力される。そして、光ファイババンドル51と光ファイバ53はライトガイド55によって一つに束ねられ、このライトガイド55は、コネクタ25を介して内視鏡先端部33まで延設されている。ライトガイド55の内視鏡先端部33側の端面から出射した光は、拡散板58で拡散された後に、レンズ59を通って観察窓35から出射される。
【0029】
光源制御部49は、パルス駆動によって光源K1,K2を制御する。つまり、光源制御部49は、駆動信号(駆動パルスのパターン)を光源K1,K2に供給する。この駆動パルスがハイレベルとなっている期間に光源K1,K2は光を出射する。
【0030】
プロセッサ47には、前述の表示部15と入力部17が接続されている。プロセッサ47は、信号処理部66と、制御部69と、記憶部71とを備える。
【0031】
信号処理部66は、内視鏡11の操作部23や入力部17からの指示にしたがい、内視鏡11から伝送されてくる撮像画像信号を信号処理して撮像画像データを生成する。また、信号処理部66は、内視鏡11から伝送されてくる撮像画像信号から、当該撮像画像信号の輝度情報(被検体画像の明るさ情報)を算出し、当該輝度情報を制御部69に出力する。信号処理部66において生成される撮像画像データは、制御部69の制御によって表示部15において再生されたり、記憶部71に記憶されたりする。
【0032】
記憶部71には、撮像画像信号の輝度情報と、光源装置45から出射させる光の1フレーム分の目標光量の値とを対応付けた輝度−目標光量テーブルが記憶される。
【0033】
また、記憶部71には、光源K1のLEDに供給される駆動信号を構成する駆動パルスの振幅値(駆動電流値)と光源K1の単位時間あたりの出射光量(1つの駆動パルスで出射される光量)とを対応付けた光源K1用テーブルと、光源K2に供給される駆動信号を構成する駆動パルスの振幅値(駆動電流値)と光源K2の単位時間あたりの出射光量(1つの駆動パルスで出射される光量)とを対応付けた光源K2用テーブルとが記憶される。図4に示すように、光源K1の駆動電流と出射光量との関係はある駆動電流までは線形であるが、その駆動電流を超えてからは非線形となっている。また、光源K2の駆動電流と出射光量との関係は全ての領域において線形となっている。
【0034】
制御部69は、信号処理部66から入力される輝度情報と、記憶部71に記憶されている輝度−目標光量テーブルとにより、当該輝度情報に対応する目標光量を求め、この目標光量の情報を光源制御部49に送信する。
【0035】
光源制御部49は、狭帯域光観察時において、制御部69から受信した目標光量の情報と、制御部69によって設定される光源K1と光源K2の1駆動パルスあたりの出射光量比(出射光強度比)と、記憶部71に記憶されている光源K1用テーブル及び光源K2用テーブルとに基づいて、光源K1と光源K2の1駆動パルスあたりの出射光量比を設定値に維持しながら、光源K1,K2の1フレーム中の各出射光量を合計した全出射光量が目標光量となるような駆動信号を生成して、この駆動信号を光源K1,K2それぞれに供給する。
【0036】
以下、狭帯域光観察モードにおける内視鏡装置100の動作について説明する。
【0037】
まず、内視鏡11に設けられ、観察モード選定部として機能する観察モード切り替えボタン73(図2参照)を術者が押下することにより、制御部69は、通常観察、狭帯域光観察、蛍光観察等の各種観察モードに切り替える制御を行う。制御部69は、通常観察モードでは、光源K1,K2の出射光量比Ra:Rbを1:0に設定する。制御部69は、狭帯域光観察モードでは、出射光量比Ra:Rbを例えば2:1等の予めプリセットされた任意の比率に設定する。制御部69は、蛍光観察モードでは、出射光量比Ra:Rbを0:1に設定する。
【0038】
狭帯域光観察モードにおいては、光源制御部49が、光源K1,K2の双方の出力を上記の出射光量比に保持しつつ、光源K1,K2からの全出射光量を目標光量にする制御を行う。以下、狭帯域光観察モードにおいて、光源K1,K2を駆動して所望の照明光を生成する手順を示す。
【0039】
まず、制御部69は、狭帯域光観察モードに対応する光源L1と光源L2の出射光量比Ra:Rb(以下では、Ra=2、Rb=1とする)を記憶部71から読み出して、光源制御部49に送信する。出射光量比Ra:Rbの情報を受信した光源制御部49は、この出射光量比Ra:Rbを、指定された出射光量比として設定する。
【0040】
信号処理部66に撮像画像信号が入力されると、信号処理部66がこの撮像画像信号から輝度情報を生成する。制御部69は、この輝度情報と記憶部71に記憶されている輝度−目標光量テーブルとに基づいて、目標光量を設定し、この目標光量の情報を光源制御部49に送信する。
【0041】
次に、光源制御部49は、制御部69から受信した出射光量比2:1の情報と、記憶部71に記憶されている光源K1用テーブル及び光源K2用テーブルと、制御部69から受信した目標光量の情報とに基づいて、光源K1,K2に供給する各駆動信号を構成する駆動パルスの振幅値(駆動電流値)を設定する。
【0042】
具体的には、光源制御部49は、目標光量が閾値以上の場合には、光源K1,K2に供給する各駆動パルスの振幅値を予め定められた基準値(例えば、光源K1の振幅値が最大となるときの振幅値の組み合わせ)に設定する。また、光源制御部49は、目標光量が閾値未満の場合には、光源K1,K2に供給される各駆動パルスの振幅値を、その目標光量に応じた値に設定する。
【0043】
例えば、図4に示すように、光源制御部49は、目標光量が閾値以上の場合には、光源K1に供給する駆動パルスの振幅値を最大値のi3aに設定し、振幅値i3aのときの出射光量の半分の光量が得られるときの振幅値i3bを、光源K2に供給する駆動パルスの振幅値として設定する。一方、光源制御部49は、目標光量が閾値未満の場合には、目標光量が小さくなるほど、光源K1,K2に供給する各駆動パルスの振幅値を小さく設定する。
【0044】
光源制御部49は、目標光量がどのような値であっても、(光源K1の単位時間あたりの出射光量):(光源K2の単位時間あたりの出射光量)が常に2:1となるように、光源K1,K2に供給する各駆動パルスの振幅値を設定する。
【0045】
例えば、目標光量が閾値よりも小さな所定値であったとき、光源制御部49は、図4に示すように、光源K1に供給する駆動パルスの振幅値をi2aに設定し、振幅値i2aのときの出射光量の半分の光量が得られるときの振幅値i2bを、光源K2に供給する駆動パルスの振幅値として設定する。また、目標光量が上記所定値よりも更に小さな値であったとき、光源制御部49は、光源K1に供給する駆動パルスの振幅値をi1aに設定し、振幅値i1aのときの出射光量の半分の光量が得られるときの振幅値i1bを、光源K2に供給する駆動パルスの振幅値として設定する。
【0046】
次に、光源制御部49は、目標光量が閾値以上の場合には、その目標光量に応じて光源K1,K2に共通の駆動信号(駆動パルスのパターン)を生成する。そして、光源制御部49は、光源K1,K2に共通の駆動信号を構成する各駆動パルスの振幅値を光源K1に対して設定された値に変更したものを光源K1用の駆動信号として生成し、光源K1,K2に共通の駆動信号を構成する各駆動パルスの振幅値を光源K2に対して設定された値に変更したものを光源K2用の駆動信号として生成する。
【0047】
光源制御部49は、目標光量が、光源装置45から出射させることのできる設計上の上限値(光源K1,K2に供給される駆動パルスの振幅値が基準値のときのもの)である第一の値から当該第一の値よりも小さい第二の値までの範囲では、駆動信号に含まれる駆動パルス数を変更するパルス数制御(PNM:Pulse Number Modulation)により、全出射光量が目標光量となるような光源K1,K2用の駆動信号を生成する。
【0048】
また、光源制御部49は、目標光量が上記第二の値から当該第二の値よりも小さい上記閾値までの範囲では、上記パルス数制御によって駆動パルス数が限界まで減少させられた駆動信号に対し、駆動パルスの密度を変更するパルス密度制御(PDM:Pulse Density Modulation)を行って、全出射光量が目標光量となるような光源K1,K2用の駆動信号を生成する。
【0049】
図5は、光源制御部49が生成する光源K1,K2に共通の駆動信号の一例を示す図である。
【0050】
目標光量が、光源装置45から出射させることのできる全出射光量の設計上限である場合、光源制御部49は、垂直同期信号VDにより規定される画像の1フレームの期間内において、電子シャッタで制御される露光期間Wの全てを点灯させる駆動パルスのパターンからなる駆動信号[1]を生成する。
【0051】
目標光量が上記設計上限から減少した場合、光源制御部49は、駆動信号[1]に対し、時間軸における後ろ詰めで駆動パルス数を減少させた駆動信号を生成する。図5に示した駆動信号[2]は、駆動信号[1]に対し、所定の最小割合になるまで駆動パルスの数を駆動パルスの供給開始タイミングが遅れるように減少させたときのものを示している。光源制御部49は、駆動信号[1]に対する駆動パルスの減少数を目標光量の大きさが小さくなるほど大きくする。
【0052】
駆動パルス数の減少によって決まる光源の点灯時間がPNM制御限界(図5のWmin)に達した後、更に目標光量が減少した場合、光源制御部49は、駆動信号[2]に対し、駆動パルスを間引いた駆動信号[3]を生成する。光源制御部49は、駆動信号[2]に対する駆動パルスの間引き率を、目標光量の大きさが小さくなるほど大きくする。
【0053】
図5の駆動パルス[4]は、光源K1,K2に対して共通に生成される駆動信号における駆動パルスの間隔がPDM制御限界に達したときのものである。光源制御部49は、目標光量が上記閾値であった場合には、駆動信号[4]の各駆動パルスの振幅値を光源K1,K2に対して設定されている振幅値の基準値にそれぞれ変更した駆動信号を生成する。つまり、この駆動信号にしたがって光源装置45から出射される全出射光量が、上述した目標光量の閾値として設定されている。
【0054】
目標光量が上記閾値よりも小さくなった場合、パルス変調制御はもう限界に達しているため、その目標光量を達成することができない。そこで、このような場合に、光源制御部49は、光源K1,K2に対してそれぞれ設定した駆動パルスの振幅値(基準値)を、目標光量に応じて減少させた値に設定する。
【0055】
例えば、目標光量が閾値以上のときに光源K1,K2に対して設定される駆動パルスの振幅値(基準値)が図4に示すi3a,i3bであった場合、光源制御部49は、記憶部71に記憶されている光源K1用テーブル及び光源K2用テーブルと、目標光量の情報と、観察モードに応じて決められている出射光量比とに基づいて、出射光量比を設定値に維持しつつ全出射光量が目標光量になるような、光源K1,K2に供給する各駆動パルスの振幅値(例えば、i2a,i2b)を算出し、この振幅値を光源K1,K2に供給する各駆動パルスの振幅値として設定する。
【0056】
駆動信号[4]に含まれる駆動パルスの数は既知であり、光源K1用テーブル及び光源K2用テーブルにより、駆動パルスの振幅値に対する光源K1,K2の出射光量は既知である。このため、振幅値をどの程度下げれば目標光量を達成できるのかを、光源制御部49はこれらの情報に基づいて算出することができる。
【0057】
そして、光源制御部49は、図5に示す駆動信号[4]の各駆動パルスの振幅値をi2aにした光源K1用の駆動信号と、図5に示す駆動信号[4]の各駆動パルスの振幅値をi2bにした光源K2用の駆動信号とを生成する。光源制御部49は、これら2つの駆動信号を光源K1,K2にそれぞれ供給する。これにより、目標光量が閾値未満になった場合でも、出射光量比は2:1に維持されながら、全出射光量が目標光量となるように制御される。
【0058】
以上のように、光源制御部49は、目標光量に対応する駆動信号を光源K1,K2で共通に生成し、この共通の駆動信号を元にして、光源K1用の駆動信号と、光源K2用の駆動信号とを、振幅値を変更することにより生成する。そして、目標光量が光源装置45から出射できる全出射光量の設定上限値から閾値の間で変化する場合には、各駆動信号の振幅値は固定のまま、各駆動信号の波形パターンがそれぞれ共通に変化される。これにより、目標光量の変化に応じてパルス変調制御しても出射光量比が固定されたままとなり、各光源K1,K2から出射される光量比が乱れることはない。また、目標光量が閾値未満になった場合には、各駆動信号の波形パターンは固定のまま、各駆動信号の振幅値だけが出射光量比を保ったままそれぞれ目標光量に応じて変化される。これにより、パルス変調制御の限界にまで目標光量が減少した場合でも、全出射光量を目標光量に一致させることができると共に、各光源K1,K2から出射される光量比を一定にすることができる。
【0059】
また、内視鏡装置100は、光源制御部49が、記憶部71に記憶されている光源K1用テーブル及び光源K2用テーブルを用いて、光源K1,K2に供給する駆動パルスの振幅値を設定する。このため、出射光量の特性が非線形となる領域を持つLEDを採用した本実施形態の構成であっても、光源K1,K2の出射光量比の制御を精度良く行うことができる。
【0060】
また、内視鏡装置100では、目標光量に応じた駆動信号を光源K1,K2に対して共通して用いる構成としている。このため、光源K1,K2用の各駆動信号をそれぞれ別々にパルス変調制御する場合と比較して、その変調制御を簡単化できる。更に、複数の光源を備えた場合であっても、各光源の目標光量比に対するパルス変調制御を全光源で共通化でき、駆動回路が複雑化することを防止できる。
【0061】
また、内視鏡装置100では、目標光量が閾値以上のときに、光源K1の振幅値が設定可能な最大値に設定される。光源K1に用いられるLEDは、振幅値(駆動電流値)が大きくなるほど、色味変動が大きくなる。目標光量が閾値以上のときは明るい撮影環境であるため、色味変動が目立ちやすい。したがって、目標光量が閾値以上のときに、光源K1の振幅値を設定可能な最大値にしておくことは、色味変動による画質劣化を防止する上で好ましい。内視鏡装置100では、目標光量が閾値未満の場合に、光源K1の振幅値が最大値よりも減少することになるが、この場合は被写体が暗く、色味変動は目立たないため、画質への影響は限定的である。
【0062】
なお、内視鏡装置100において、光源K1を光源装置45ではなく内視鏡先端部33に設けてもよい。この場合、光源K1をアダプタ等によって別の種類に交換する構成も考えられる。光源K1を別の種類に交換した場合には、記憶部71に記憶される光源K1用テーブルを新しいデータに書き換えるだけで、光源制御部49が上述した制御を行うことができる。
【0063】
以上の説明では、光源K1が白色光を出射し、光源K2が狭帯域光を出射するものとしたが、光源K1と光源K2はそれぞれ異なる波長域の光を出射するものであればよく、出射する光の波長域は白色光と狭帯域光の組み合わせに限定されない。
【0064】
また、以上の説明では、光源K1が発光特性として非線形の領域を持つもの(LED+蛍光体)であり、光源K2が発光特性として線形のもの(LD)としているが、これに限らない。光源K1,K2のそれぞれが、発光特性として非線形の領域を持つもの(例えば、LED+蛍光体からなる光源とLEDからなる光源との組み合わせ)であってもよい。
【0065】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。
【0066】
開示された内視鏡装置は、照明光を内視鏡挿入部の先端から被検体に照射し、当該被検体からの反射光を検出して当該被検体の画像信号を得る内視鏡装置であって、駆動信号の振幅値に対する発光強度の特性が非線形となる領域を持つ半導体光源を含む第一の光源と、前記第一の光源とは異なる波長域の光を出射する半導体光源からなる第二の光源と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々からの出射光量を合計した全出射光量に対する目標光量を設定する目標光量設定部と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の出射光量比を設定する光量比設定部と、前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の駆動信号の振幅値と出射光量との関係を示す情報を記憶する情報記憶部と、前記光量比設定部により設定された出射光量比と、前記情報記憶部に記憶されている前記情報と、前記目標光量設定部により設定された目標光量とに基づいて、前記第一の光源に供給する駆動信号の第一の振幅値と、前記第二の光源に供給する駆動信号の第二の振幅値を設定する振幅値設定部と、前記目標光量に基づいて前記第一の光源及び前記第二の光源に共通の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第一の振幅値に変更して前記第一の光源用の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第二の振幅値に変更して前記第二の光源用の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記第一の光源用の駆動信号を前記第一の光源に供給し、前記第二の光源用の駆動信号を前記第二の光源に供給して、前記全出射光量が前記目標光量となるように制御する信号供給部とを備えるものである。
【0067】
開示された内視鏡装置は、電子シャッタにより露光期間を調整して被検体を撮像する撮像部を備え、前記駆動信号生成部は、前記目標光量が前記全出射光量の最大値から閾値までの範囲では、前記電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで前記駆動信号に含まれる駆動パルスの数を減少させる第1のパルス変調制御と、前記第1のパルス変調制御によって駆動パルス数が限界まで減少した駆動信号に対し、駆動パルスを間引いて駆動パルスの密度を減少させる第2のパルス変調制御とを、前記目標光量の大きい順に行うことにより前記共通の駆動信号を生成し、前記目標光量が前記閾値未満の範囲では、前記第2のパルス変調制御によって駆動パルスの密度が限界まで減少した駆動信号を前記共通の駆動信号として生成し、前記振幅値設定部は、前記目標光量が前記最大値から前記閾値までの範囲では、前記情報において予め決められた振幅値を前記第一の振幅値として設定し、前記第一の振幅値によって前記第一の光源から出射される光量との比が前記光量比設定部によって設定された光量比となるような出射光量が得られる振幅値を前記第二の振幅値として設定し、前記目標光量が前記閾値未満の範囲では、前記目標光量の大きさに応じて前記第一の振幅値及び前記第二の振幅値を設定するものである。
【0068】
開示された内視鏡装置は、前記予め決められた振幅値は、前記第一の光源についての前記情報における最大の振幅値であるものを含む。
【0069】
開示された内視鏡装置は、前記撮像部によって取得される観察画像における強調対象がそれぞれ異なる複数の観察モードから、いずれかの観察モードを選定する観察モード選定部を備え、前記光量比設定部が、前記選定された観察モードに応じて前記出射光量比を設定するものである。
【0070】
開示された内視鏡装置は、前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて被検体像の輝度情報を生成する輝度情報生成部を備え、前記目標光量設定部が、前記輝度情報に基づいて前記目標光量を設定するものである。
【0071】
開示された内視鏡装置は、前記第一の光源が、発光ダイオードと蛍光体とから構成され、前記第二の光源がレーザダイオード又は発光ダイオードによって構成されるものである。
【符号の説明】
【0072】
K1 白色光源
K2 狭帯域光源
49 光源制御部
71 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を内視鏡挿入部の先端から被検体に照射し、当該被検体からの反射光を検出して当該被検体の画像信号を得る内視鏡装置であって、
駆動信号の振幅値に対する発光強度の特性が非線形となる領域を持つ半導体光源を含む第一の光源と、
前記第一の光源とは異なる波長域の光を出射する半導体光源からなる第二の光源と、
前記第一の光源及び前記第二の光源の各々からの出射光量を合計した全出射光量に対する目標光量を設定する目標光量設定部と、
前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の出射光量比を設定する光量比設定部と、
前記第一の光源及び前記第二の光源の各々の駆動信号の振幅値と出射光量との関係を示す情報を記憶する情報記憶部と、
前記光量比設定部により設定された出射光量比と、前記情報記憶部に記憶されている前記情報と、前記目標光量設定部により設定された目標光量とに基づいて、前記第一の光源に供給する駆動信号の第一の振幅値と、前記第二の光源に供給する駆動信号の第二の振幅値を設定する振幅値設定部と、
前記目標光量に基づいて前記第一の光源及び前記第二の光源に共通の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第一の振幅値に変更して前記第一の光源用の駆動信号を生成し、前記共通の駆動信号の振幅値を前記第二の振幅値に変更して前記第二の光源用の駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記第一の光源用の駆動信号を前記第一の光源に供給し、前記第二の光源用の駆動信号を前記第二の光源に供給して、前記全出射光量が前記目標光量となるように制御する信号供給部とを備える内視鏡装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡装置であって、
電子シャッタにより露光期間を調整して被検体を撮像する撮像部を備え、
前記駆動信号生成部は、前記目標光量が前記全出射光量の最大値から閾値までの範囲では、前記電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで前記駆動信号に含まれる駆動パルスの数を減少させる第1のパルス変調制御と、前記第1のパルス変調制御によって駆動パルス数が限界まで減少した駆動信号に対し、駆動パルスを間引いて駆動パルスの密度を減少させる第2のパルス変調制御とを、前記目標光量の大きい順に行うことにより前記共通の駆動信号を生成し、前記目標光量が前記閾値未満の範囲では、前記第2のパルス変調制御によって駆動パルスの密度が限界まで減少した駆動信号を前記共通の駆動信号として生成し、
前記振幅値設定部は、前記目標光量が前記最大値から前記閾値までの範囲では、前記情報において予め決められた振幅値を前記第一の振幅値として設定し、前記第一の振幅値によって前記第一の光源から出射される光量との比が前記光量比設定部によって設定された光量比となるような出射光量が得られる振幅値を前記第二の振幅値として設定し、前記目標光量が前記閾値未満の範囲では、前記目標光量の大きさに応じて前記第一の振幅値及び前記第二の振幅値を設定する内視鏡装置。
【請求項3】
請求項2記載の内視鏡装置であって、
前記予め決められた振幅値は、前記第一の光源についての前記情報における最大の振幅値である内視鏡装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の内視鏡装置であって、
前記撮像部によって取得される観察画像における強調対象がそれぞれ異なる複数の観察モードから、いずれかの観察モードを選定する観察モード選定部を備え、
前記光量比設定部が、前記選定された観察モードに応じて前記出射光量比を設定する内視鏡装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記撮像部から出力される撮像信号に基づいて被検体像の輝度情報を生成する輝度情報生成部を備え、
前記目標光量設定部が、前記輝度情報に基づいて前記目標光量を設定する内視鏡装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記第一の光源は、発光ダイオードと蛍光体によって構成され、
前記第二の光源は、レーザダイオード又は発光ダイオードによって構成される内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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