説明

内部観察装置及び内部観察方法

【課題】光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象の情報を高コントラストで検出可能な内部観察装置及び内部観察方法の提供。
【解決手段】光散乱性を有する物体20とその内部に存在しうる観察対象21とで光学特性の異なる波長を含む光を、物体20に照射する照明手段11と、照明光18の後方散乱光19を非接触に受光し光強度データを取得する検出手段12と、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、物体20の表面上における照明光18の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力する信号処理手段13と、画像生成用データを解析して画像を生成する画像化手段14と、画像を表示する表示手段15とを備え、特定の検出領域が、照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば生体などの光散乱性を有する物体に対し、照明光を照射してその後方散乱光を計測することにより、物体の内部に存在しうる観察対象を観測する内部観察装置及び内部観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光散乱性を有する物体の内部を光学的に観察することは、一般に容易ではない。従来、光の波長を選択することにより生体内部の特定の観察対象を観察する方法が提案されている。この方法では、特定の観察対象(異質部分)に吸収される波長の光を生体に照射し、その後方散乱光の強度を計測することにより、生体内部に存在する異質部分の位置情報を得ることができる。後方散乱光は、光散乱性を有する物体における光照射位置と光検出位置との距離が離れるほど、散乱体のより深部を通ってきた光であると仮定できることが知られている。
【0003】
また、この方法では、異質部分の位置情報を得るだけでなく、光照射位置からの相対的な距離が等しい夫々の光検出位置における後方散乱光の強度データを例えば二次元方向に集めることにより、画像(二次元データ)を作成することができる。その一例として、特許文献1には、光散乱体内部の情報を画像化する装置・方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−8286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の装置・方法においては、例えば、散乱体上に光が照射された位置を中心とする同心円状領域の夫々の点での後方散乱光の光強度データを抽出することで、一定の深度における二次元画像データを検出している。特許文献1に開示の装置・方法を用いると、散乱体内部の情報を非接触にて検出することが可能になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の装置・方法等、従来この種の後方散乱光を用いて散乱体内部の情報を検出する装置・方法においては、散乱体内部の情報のほかに、散乱体表面の情報(例えば、表面の凹凸形状等)も同時に検出される。特許文献1に開示の装置・方法において、同心円状領域が光の照射位置から近い場合には、同心円状領域における夫々の点での後方散乱光の光強度データは、光の照射位置付近における散乱体表層の情報の影響を強く受ける。
【0007】
また、散乱体表面に凹凸がある場合には、同心円状領域における夫々の点での後方散乱光の光強度データも、散乱体表面の凹凸の影響を強く受ける。しかし、特許文献1に開示の装置・方法においては、散乱体上に光が照射された位置を中心とする同心円状領域の夫々の点での後方散乱光の光強度データを、そのまま二次元画像データにおける個々の画像データとしている。このため、二次元画像データを構成する夫々の点での後方散乱光の光強度データが、散乱体表面の情報の影響を大きく受けたものとなり易い。これでは、散乱体内部の情報のみをコントラスト高く検出したい場合においても、この散乱体表面の情報によって画像のコントラストが低下してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象の情報を高コントラストで検出可能な内部観察装置及び内部観察方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による内部観察装置は、光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象を観察する内部観察装置であって、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、該光散乱性を有する物体に対して照射する照明手段と、前記照明手段により前記光散乱性を有する物体に対して照射された照明光の後方散乱光を非接触にて受光し、光強度データを取得する検出手段と、前記検出手段により取得された光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力する信号処理手段と、前記信号処理手段により出力された前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する画像化手段と、前記画像化手段により生成された画像を表示する表示手段と、を備え、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含むことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の内部観察装置においては、前記所定の半径が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの半径であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の内部観察装置においては、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点を中心とした帯状同心円領域の全体又はその一部分であり、かつ前記帯状同心円領域の内径が、前記照明光の照射スポットの半径よりも大きいのが好ましい。
【0012】
また、本発明の内部観察装置においては、前記信号処理手段が施す前記所定の演算処理が、前記特定の検出領域における個々の点での光強度データの積算又は平均であるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の内部観察装置においては、前記検出手段が、二次元方向での前記光強度データを一括で取得できる撮像手段であるのが好ましい。
【0014】
また、本発明の内部観察装置においては、前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体の表面に複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射し、前記信号処理手段が、夫々の前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像作成用データとして出力し、前記画像化手段が、前記信号処理手段により出力された、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するのが好ましい。
【0015】
また、本発明の内部観察装置においては、前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体の表面における夫々の前記特定の検出領域が重ならない位置に、複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射するのが好ましい。
【0016】
また、本発明の内部観察装置においては、さらに、前記照明手段による前記照明光の照射スポットの中心点を、前記光散乱性を有する物体に対して走査する走査手段を備え、前記信号処理手段が、前記走査手段により走査される前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、夫々の前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、前記画像化手段が、前記信号処理手段により出力された、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の内部観察装置においては、前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を出射するレーザ光源を備えるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の内部観察装置においては、前記照明手段が、さらに、照明光学系と、前記レーザ光源からの出射光を前記照明光学系の入射端へ導光する光ファイバを備えるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の内部観察装置においては、前記照明手段が、さらに、出射端から出射した照明光が前記光散乱性を有する物体を照射するまでの光路において平行光となるように照明光のNAを調整する、NA調整光学系を備えるのが好ましい。
【0020】
また、本発明の内部観察装置においては、前記光散乱性を有する物体又は前記観察対象が生体組織であるのが好ましい。
【0021】
また、本発明の内部観察装置においては、前記内部観察装置が、医療用内視鏡であるのが好ましい。
【0022】
また、本発明の内部観察装置においては、前記医療用内視鏡が、硬性内視鏡であるのが好ましい。
【0023】
また、本発明による内部観察方法は、光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象を観察する内部観察方法であって、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、前記光散乱性を有する物体に対して照射する第1の工程と、前記第1の工程を介して前記光散乱性を有する物体に対して照射した照明光の後方散乱光を非接触にて受光し、光強度データを取得する第2の工程と、前記第2の工程を介して取得した光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力する第3の工程と、前記第3の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する第4の工程と、前記第4の工程を介して生成した画像を表示する第5の工程と、を備え、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含むことを特徴としている。
【0024】
また、本発明の内部観察方法においては、前記所定の半径が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの半径であるのが好ましい。
【0025】
また、本発明の内部観察方法においては、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点を中心とした帯状同心円領域の全体又はその一部分であり、かつ前記帯状同心円領域の内径が、前記照明光の照射スポットの半径よりも大きいのが好ましい。
【0026】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第3の工程において施す前記所定の演算処理が、前記特定の検出領域における個々の点での光強度データの積算又は平均であるのが好ましい。
【0027】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第2の工程において、二次元方向での光強度データを一括で取得できる撮像手段を用いるのが好ましい。
【0028】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、前記光散乱性を有する物体の表面に複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射し、前記第3の工程において、夫々の前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像作成用データとして出力し、前記第4の工程において、前記第4の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するのが好ましい。
【0029】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、前記光散乱性を有する物体の表面における夫々の前記特定の検出領域が重ならない位置に、複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射するのが好ましい。
【0030】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、前記照明光の照射スポットの中心点を、前記光散乱性を有する物体に対して走査し、前記第3の工程において、前記第1の工程を介して走査した前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、前記第4の工程において、前記第3の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するのが好ましい。
【0031】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、レーザ光源を用いて前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含むレーザ光を出射するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、さらに、光ファイバを用いて前記レーザ光源からの出射光を照明光学系の入射端へ導光するのが好ましい。
【0033】
また、本発明の内部観察方法においては、前記第1の工程において、さらに、NA調整光学系を用いて、出射端から出射した照明光が前記光散乱性を有する物体を照射するまでの光路において平行光となるように照明光のNAを調整するのが好ましい。
【0034】
また、本発明の内部観察方法においては、前記光散乱性を有する物体又は前記観察対象が生体組織であるのが好ましい。
【0035】
また、本発明の内部観察方法においては、前記内部観察方法を、医療用内視鏡を用いて行うのが好ましい。
【0036】
また、本発明の内部観察方法においては、前記医療用内視鏡が、硬性内視鏡であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象の情報を高コントラストで検出可能な内部観察装置及び内部観察方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内部観察方法に用いる内部観察装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】(a)は図1の内部観察装置に備わる検出手段によって検出された第1の生体組織の画像において信号処理手段が処理対象とする特定の検出領域の一例を概念的に示す説明図、(b)は(a)に示される特定の検出領域における各点での出力信号に対し信号処理手段が所定の演算処理を施すことによって出力した照明光の照射スポットの中心点での画像生成データを概念的に示す説明図である。
【図3】図1の内部観察装置に備わる走査手段によって、第1の生体組織上における照明光の照射スポットの中心点を二次元方向に走査したときに得られる二次元画像の一例を示す説明図である。
【図4】図1の内部観察装置に備わる検出手段によって検出された第1の生体組織の画像において信号処理手段が処理対象とする特定の検出領域の変形例を概念的に示す説明図で、(a)は一変形例を示す図、(b)は他の変形例を示す図である。
【図5】図1の内部観察装置に備わる検出手段によって検出された第1の生体組織の画像において信号処理手段が処理対象とする特定の検出領域のさらに他の変形例を概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の内部観察方法に用いる内部観察装置の一実施例にかかるヒト脂肪下の血管可視化装置として構成された医療用硬性内視鏡の全体構成を概略的に示す説明図である。
【図7】光散乱性を有する物体において照射光が伝播する経路を概念的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
本発明の内部観察装置及び内部観察方法は、上記のように、光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含む。
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、好ましくは、前記所定の半径が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの半径である。
【0040】
本発明の内部観察装置及び内部観察方法のように、照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含む特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、光散乱性を有する物体の表面上における照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力するようにすれば、後方散乱光の光強度データが受ける光照射位置での光散乱性を有する物体の表面形状の影響を低減することができる。
【0041】
さらに、所定の演算処理の対象となる特定の検出領域を、光散乱性を有する物体の表面上における照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在するようにすることで、光散乱性を有する物体の内部に存在する観察対象の情報を、特許文献1に記載されているような従来の装置に比べて高コントラストに検出することが可能になる。
【0042】
図7は光散乱性を有する物体において照射光が伝播する経路を概念的に示す断面図である。図7中、点Aiは、照明光の照射スポットの中心点、領域Biは、中心点Aiから所定の半径r1〜半径r2離れた範囲に位置する領域である。
光が生体などの散乱体中を伝搬する場合、前方に散乱される確率が高いことがこれまでに分かっている。つまり、生体などの散乱体に光を照射すると、散乱体入射直後の時点では、光は直進性が高い状態になっている。従って、照明光は高い確率で照明点(図7における照射スポットの中心点Ai)の真下を透過し、後方散乱光は照明点Aiの真下の情報を高い確率で含むことになる。また、特許文献1にも記載のように、後方散乱光は、照明点近傍では光散乱性を有する物体の表層部分のみを透過した光が支配的になり、照明点より遠ざかるほど物体の深部を透過した光が支配的になる(図7参照)。
しかるに、本発明の内部観察装置及び内部観察方法のように、照明点近傍を避けた領域の後方散乱光を検出するようにすれば、照明点の真下の物体の深部の情報を効率的に得ることができ、従来よりも観察対象の信号を高コントラストに検出できるようになる。
【0043】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点を中心とした帯状同心円領域の全体又はその一部分であり、かつ前記帯状同心円領域の内径が、前記照明光の照射スポットの半径よりも大きいのが好ましい。
このように、信号処理手段による信号処理範囲を限定すれば、信号処理対象の点の数を低減することができ、その結果、信号処理時間を低減することができる。
【0044】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記所定の演算処理が、前記特定の検出領域における個々の点での光強度データの積算又は平均であるのが好ましい。
このようにすれば、簡単な信号処理で物体の表面形状の影響を低減することが可能になる。
【0045】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、二次元方向での前記光強度データを一括で取得できる撮像手段を用いるのが好ましい。
このようにすれば、簡便かつ高速に二次元データを取得することができる。
【0046】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記光散乱性を有する物体の表面に複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射し、夫々の前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像作成用データを出力し、出力された前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するようにするのが好ましい。
このようにすれば、物体の内部の画像をより高速に取得することが可能になる。
【0047】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記光散乱性を有する物体の表面における夫々の前記特定の検出領域が重ならない位置に、複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射するようにするのが好ましい。
このようにすれば、物体の内部に存在する観察対象の信号をより高コントラストに検出でき、物体の内部の画像がより鮮明になる。
【0048】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、さらに、前記照明光の照射スポットの中心点を、前記光散乱性を有する物体に対して走査し、走査した前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、夫々の前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、出力した前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成するようにするのが好ましい。
このようにすれば、物体の内部の二次元画像を得ることができるようになる。
【0049】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、レーザ光源を用いて前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を出射するようにするのが好ましい。
このようにすれば、物体の表面上における照明光の照射スポットを小さくすることができ、物体の内部に存在する観察対象の信号をより高コントラストに検出できるようになる。
【0050】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、さらに、光ファイバを用いて前記レーザ光源からの出射光を照明光学系の入射端へ導光するようにするのが好ましい。
このようにすれば、操作性が向上する。
【0051】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、さらに、NA調整光学系を用いて、出射端から出射した照明光が前記光散乱性を有する物体を照射するまでの光路において平行光となるように照明光のNAを調整するようにするのが好ましい。
このようにすれば、表面の起伏の大きな物体、奥行きのある物体や表面が傾いている物体を観察する場合に、物体の表面上における照明光の照射スポットの大きさが変わらないので、信号処理が容易になる。
【0052】
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記光散乱性を有する物体又は前記観察対象が生体組織であるのが好ましい。
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、医療用内視鏡を用いるようにするのが好ましい。
また、本発明の内部観察装置及び内部観察方法においては、上記のように、前記医療用内視鏡が、硬性内視鏡であるのが好ましい。
これらのようにすれば、本発明は、外科の手術におけるヒトの脂肪下の血管等の観察に非常に有用なものとなる。
【0053】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
実施形態
図1は本発明の一実施形態にかかる内部観察方法に用いる内部観察装置の全体構成を概略的に示すブロック図である。
本実施形態の内部観察装置10は、照明手段11と、走査手段16と、検出手段12と、信号処理手段13と、画像化手段14と、表示手段15と、それらを制御する制御手段17を備えている。
【0054】
照明手段11は、制御手段17からの制御に基づいて、第1の生体組織20とその内部に存在しうる観察対象としての第2の生体組織21とで散乱特性や吸収特性などの光学特性の異なる波長を含む照明光18を第1の生体組織20へ向けて照射するように構成されている。なお、第1の生体組織20には、照明光18を散乱する光学特性を持つものを用いている。
走査手段16は、照明手段11による照明光18の照射スポットの中心点を第1の生体組織20に対して走査するように構成されている。なお、走査手段16は、第1の生体組織20とは非接触に配置されている。
【0055】
検出手段12は、照明手段11により第1の生体組織20に対して照明光18を照射することで生じる後方散乱光19を受光し、電気信号へ変換することで、光強度データを取得するように構成されている。なお、検出手段12は、第1の生体組織20とは非接触に配置されている。
【0056】
信号処理手段13は、検出手段12により取得された光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、第1の生体組織20上における照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力するように構成されている。
特定の検出領域は、第1の生体組織20上における照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含む。
例えば、検出手段12により取得された光強度データの領域のうち照明光の照射スポットの中心点から所定の半径の円の外側全体の領域は、本発明における特定の検出領域に該当する。また、検出手段により取得された光強度データの領域のうち照明光の照射スポットの中心点から所定の半径の円の外側において、照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する複数の領域も、本発明における特定の検出領域に該当する。さらに、検出手段により取得された光強度データの領域のうち照明光の照射スポットの中心点から所定の半径の円の外側において、照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する領域の数が2つで、その2つの領域が夫々1つの点(画素)からなるものも、本発明における特定の検出領域に該当する。
【0057】
信号処理手段13が行う所定の演算処理の詳細について、図2を用いて説明する。
図2(a)は検出手段12によって検出された第1の生体組織20の画像において信号処理手段13が処理対象とする特定の検出領域の一例を概念的に示す図である。ここで、点Ai(i=0,1,・・・,N−1)は、照明光18の照射スポットの中心点(但し、Nは検出手段12によって検出される第1の生体組織20の画像領域内においてとり得る照射スポットの中心点の総数)、領域Biは、本発明における特定の領域であり、本例では、点Aiから第1の生体組織20上において距離rin以上離れた領域(図2(a)中の網掛け部分)である。領域Biは、第1の生体組織20上における照明光18の照射スポットの半径をRとしたとき、R<rinの関係を満足する。また、領域Biは、照明光18の照射スポットの中心点Aiから異なる方向に互いに離れて存在する2点を含んでいる。
信号処理手段13では、検出手段12により取得された光強度データのうち、図2(a)中の領域Biにおける個々の点(画素)での光強度データを積算又は平均し、点Aiにおける検出値Ci(画像生成用データ)として出力する(図2(b)参照)。
【0058】
ここで、走査手段16を用いて、照明手段11による照明光18の照射スポットの中心点Aiを、第1の生体組織20上を例えば二次元方向に走査すると、検出手段12及び信号処理手段13を介して、走査した各点Aiにおける各検出値Ciを得ることができる。即ち、第1の生体組織20の内部に存在する第2の生体組織21の二次元分布を検出することが可能となる。
【0059】
画像化手段14は、例えば、図3に示すように、信号処理手段13から出力される検出値Ciの二次元分布データに対し、所定の解析(例えば、二次元分布データを構成する個々のデータ値の比較等)を行い濃淡画像やカラー画像として生成する。
表示手段15は、画像化手段14により生成された画像を表示する。
【0060】
本実施形態の内部観察装置によれば、第1の生体組織20の表面の形状の影響を低減して、第2の生体組織21の画像を得ることができる。なお、このとき、走査手段16の走査の方法は、ラスタースキャン、スパイラルスキャンなど任意の走査方法を用いることができる。
【0061】
また、領域Biは、R<rinの関係を満たし、且つ、照明光18の照射スポットの中心点Aiから異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含むものであれば、図2(a)に示すようなR<rinの関係を満足する領域全体でなくても良い。
例えば、一変形例として図4(a)に示すように、内側半径rinと外側半径routで囲まれた点Aiを中心とする帯状同心円の領域を領域Biとすることもできる。このように信号処理手段13における処理対象とする領域Biをrin以上且つrout以内の帯状同心円の領域に制限すると、信号処理手段13が処理する点の数を低減することができ、その結果、信号処理速度が向上する。
【0062】
また、検出手段12により取得される後方散乱光19は、第1の生体組織20上の点Aiからの距離が離れる程、光強度が微弱になる。
このため、信号処理手段13による処理対象の領域Biの内側半径rinを、検出手段12により取得される後方散乱光19が十分に微弱となる所定の半径にまで拡げれば、物体である第1の生体組織20の表層部分を透過した光を排除して、第1の生体組織20の深部に存在する観察対象である第2の生体組織21からの信号を高コントラストに検出できる。
一方、信号処理手段13による処理対象の領域Biの外側半径routを、検出手段12により取得される後方散乱光19が微弱になりすぎる所定の半径にまで拡げると、点Aiにおける検出値Ciとして領域Biにおける個々の点の平均値を出力する場合に、その平均値が微弱になりすぎてしまい、却って、検出感度が低下してしまう。従って、後方散乱光10の強度が十分に微弱になる範囲においてroutを設ければ、検出感度の低下を抑えることができる。
【0063】
さらに、他の変形例として図4(b)に示すように、R<rinの関係を満足する領域内の一部分を領域Biとしてもよい。本変形例も、図4(a)の変形例と同様、信号処理手段13が処理する点の数を低減することができ、その結果、信号処理速度が向上する。
【0064】
また、さらに他の変形例として図5に示すように、2点以上の複数点(点Ai1,Ai2)を照明光18の照射スポットの中心点として同時に照明し、夫々の照明光18の照射スポットの中心点Ai1,Ai2に対応させた領域(領域Bi1,Bi2)を信号処理手段13による処理対象の領域とするように構成しても良い。このようにすれば、走査手段16を介して照明光18の照射スポットの中心点を、並列した状態で走査することが可能となり、第2の生体組織21の画像を取得するための処理時間の短縮につながる。
なお、この場合、物体(第1の生体組織20)の表層部分を透過した光を排除して、物体の深部に存在する観察対象(第2の生体組織21)からの信号を高コントラストに検出するために、領域Bi1及び領域Bi2は、重ならないようにするのが望ましい。
【0065】
また、信号処理手段13における所定の演算処理として、領域Biにおける個々の点(画素)での光強度データの積算を行う場合、各点における光強度データを単純に加算する以外にも、例えば、各点における光強度データに対し、照明光18の照射スポットの中心点Aiからの距離に応じた係数を掛けてから加算するようにしてもよい。
また、領域Biが、帯状同心円の領域等、所定の限定された領域とした場合、照明光18の照射スポットの中心点Aiが第1の生体組織20上の端部に位置するとき、所定の限定された領域のうち信号処理手段13の処理対象から外れる部分が生じ、照明光18の照射スポットの中心点Aiが第1の生体組織20上の中心部に位置するときと比較して、演算処理後の画像生成用データである検出値Ciに大きな差が生じる。そこで、信号処理手段13における所定の演算処理として、領域Biにおける個々の点(画素)での光強度データの積算・平均を行う場合、その積算・平均値に対し、第1の生体組織20上における照明光18の照射スポットの中心点Aiの位置に応じた係数を掛けるようにしてもよい。
【0066】
実施例
次に、本発明の内部観察方法に用いる内部観察装置の一実施例について図面を用いて説明する。
図6は本発明の内部観察方法に用いる内部観察装置の一実施例にかかるヒト脂肪下の血管可視化装置として構成された医療用硬性内視鏡の全体構成を概略的に示す説明図である。本実施例では、第1の生体組織20はヒト腹部の脂肪、第2の生体組織21は血管である。なお、図1の実施形態と同じ構成部材については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0067】
本実施例の血管可視化装置では、照明手段11は、レーザ光源11aと、光ファイバ11bと、NA調整光学系11dと、照明用光学系11cを有している。
レーザ光源11aは、laser diode(LD)11a1と、LD11a1を駆動するLDドライバ11a2を備えている。LD11a1は、照明光18として波長940nmのレーザ光を出射する。レーザ光を使用することにより、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面における照明光18の照射スポットの大きさを、簡便に小さくすることができる。ここでは、LD11a1は、照明光18の照射スポットの直径が1mmとなるように設計されている。
光ファイバ11bは、レーザ光源11aからの出射光を、NA調整用光学系11d、走査手段16を経由させて、照明用光学系11cの入射端へ導光する。
numerical aperture(NA)調整光学系11dは、照明手段11の出射端から出射した照明光18が、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面を照射するまでの光路において平行光となるように、照明光18のNAを調整可能に構成されている。
【0068】
そして、照明手段11においては、レーザ光源11aから出射したレーザ光が、光ファイバ11b、numerical aperture(NA)調整光学系11dを経由して、走査手段16を構成する二軸スキャナミラー16aへ入射する。二軸スキャナミラー16aで反射した光は、照明用光学系11cを経由して、ヒト腹部の脂肪の表面へ照射される。このとき、NA調整光学系11dを介して、光ファイバ11bからの出射光を、所望のNAの照明光、ここでは平行光に変換して、ヒト腹部の脂肪の表面へ照射できるようになっている。また、二軸スキャナミラー16aによって、照明光18の照射スポットの中心点が、ヒト腹部の脂肪の表面上をラスタースキャンするようになっている。
【0069】
検出手段12では、検出用光学系12aと、倍率調整光学系12b(例えば、ビーム拡大用の対物レンズ)と、charge coupled device(CCD)イメージャ12cと、analog−to−digital(AD)変換器12dを有している。
そして、検出手段12においては、まず、検出用光学系12a及び倍率調整光学系12bを介して、CCDイメージャ12cの撮像面に、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面の像を結像し、CCDイメージャ12cが撮像する。次に、CCDイメージャ12cで出力されたアナログ信号を、AD変換器12dがデジタル信号へと変換する。
【0070】
このとき、倍率調整光学系12b(例えば、ビーム拡大用の対物レンズ)を介して、検出用光学系12aを経由した光のビーム径をアパーチャ12eの開口部にほぼ一致するように調整するようにすれば、迷光を高精度で遮光することができる。また、アパーチャ12eを、検出用光学系12aにおいて、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面と共役な位置に配置すれば、脂肪の表面以外の深度から発せられる焦点のボケた光を容易に遮光することができる。
【0071】
AD変換器12dからの出力信号は、personal computer(PC)22へ入力される。PC22は、制御手段17、信号処理手段13及び画像化手段14としての機能を兼ねている。
【0072】
制御手段17の機能としては、PC22は、LDドライバ11a2及びスキャナドライバ16bを制御する。PC22は、LDドライバ11a2へ信号を送ることで、LD11a1の出力光量を調整する。また、二軸スキャナミラー16aの駆動によって照明光18の照射スポットの中心点が第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面上をラスタースキャンするように、PC22は、スキャナドライバ16bへ信号を送る。
【0073】
信号処理手段13の機能としては、PC22は、まず、AD変換器12dでデジタル変換された画像データから、照明光18の照射スポットの中心点を特定する。そして、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面上において、照明光18の照射スポットの中心点から5mm以上離れた領域における複数の個々の点(画素)の光強度データを演算処理することとし、具体的には平均し、照明光18の照射スポットの中心点の出力値(画像作成用データ)とする。
ここで、演算処理するための検出用の領域は、照射スポットの中心から、該照射スポットの半径より離れた領域であるのが好ましい。さらに、生体組織による検討では、照射スポットの大きさに関係なく、照射スポットの外縁より3〜5mm以内の領域については検出用の領域としないことがS/N比を高める上で好ましいことが分かった。
【0074】
画像化手段14の機能としては、PC22は、照明光18の照射スポットの中心点を、第1の生体組織20であるヒト腹部の脂肪の表面上をラスタースキャンさせながら信号処理手段13としての機能により得た、照明光18の照射スポットの中心点での画像作成用データの出力値を用いて二次元画像化する。画像作成用データの出力値の大小は、ここでは、画像の濃淡によって表示されるようにしている。二次元画像化されたデータは、表示手段15としてのモニタに、ヒト腹部の脂肪の内部の画像として表示される。
【0075】
本実施例の血管可視化装置によれば、簡便な構成で、ヒト腹部の脂肪の表面形状の影響が低減された、ヒト腹部の脂肪の内部に存在する血管分布を二次元画像として観察することができる。また、本実施例の血管可視化装置によれば、ヒト腹部の脂肪の表面上において照明光18の照射スポットの中心点から5mm以上離れた領域の光強度データを平均するため、画像中の雑音が低減された、高感度な画像観察が可能になる。さらに、本実施例の血管可視化装置によれば、走査手段16を介して高速な画像撮影が可能であるため、動画撮影も可能となる。
【0076】
なお、本実施例の血管可視化装置においては、CCDイメージャ12cの代わりに、complementary metal Oxide semiconductor(CMOS)、electron multiplying (EM)−CCD、electron bombardment(EB)−CCDやintensified(I)−CCDなどを用いても良い。また、走査手段16は、図6の例ではスキャナミラーを用いて構成したが、光ファイバを振動させる方式や複数の光源による照明光の照射及び複数の検出手段による光強度データの取得を時分割で切り替える方式などを用いて構成しても良い。
また、本実施例では、ヒト脂肪下の血管可視化装置の例について説明したが、本発明の内部観察装置及び内部観察方法は、ヒト脂肪下の血管観察に用途が限定されるものではない。
【0077】
また、上述した説明では、照明手段と検出手段の両方が物体(例えば、生体組織)に対し非接触の状態で観察する場合を例示したが、本発明においては必ずしも両方が非接触の状態である必要はなく、照明手段については物体に対し接触した状態で観察するような装置または方法にも同様に適用できる。この場合、照明手段と検出手段は一体に備える必要はない。しかし、照明手段と検出手段が一体に備えたほうが、物体に対して略同じ距離で照明および検出できるので、連続的な観察等において毎回の検出データを定量的に比較する上で望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の内部観察装置及び内部観察方法は、光散乱性を有する物体に対し、照明光を照射してその後方散乱光を計測することにより、物体の内部に存在しうる観察対象を観測することが求められるあらゆる分野に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 内部観察装置
11 照明手段
11a レーザ光源
11a1 LD
11a2 LDドライバ
11b 光ファイバ
11c 照明用光学系
11d NA調整光学系
12 検出手段
12a 検出用光学系
12b 倍率調整光学系
12c イメージャ
12d AD変換器
12e アパーチャ
13 信号処理手段
14 画像化手段
15 表示手段
16 走査手段
16a 二軸スキャナミラー
16b スキャナドライバ
17 制御手段
18 照明光
19 後方散乱光
20 第1の生体組織(光散乱性を有する物体)
21 第2の生体組織(観察対象)
22 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象を観察する内部観察装置であって、
前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、該光散乱性を有する物体に対して照射する照明手段と、
前記照明手段により前記光散乱性を有する物体に対して照射された照明光の後方散乱光を非接触にて受光し、光強度データを取得する検出手段と、
前記検出手段により取得された光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力する信号処理手段と、
前記信号処理手段により出力された前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する画像化手段と、
前記画像化手段により生成された画像を表示する表示手段と、を備え、
前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含むことを特徴とする、内部観察装置。
【請求項2】
前記所定の半径が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの半径であることを特徴とする請求項1に記載の内部観察装置。
【請求項3】
前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点を中心とした帯状同心円領域の全体又はその一部分であり、かつ前記帯状同心円領域の内径が、前記照明光の照射スポットの半径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の内部観察装置。
【請求項4】
前記信号処理手段が施す前記所定の演算処理が、前記特定の検出領域における個々の点での光強度データの積算又は平均であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項5】
前記検出手段が、二次元方向での前記光強度データを一括で取得できる撮像手段であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項6】
前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体の表面に複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射し、
前記信号処理手段が、夫々の前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像作成用データとして出力し、
前記画像化手段が、前記信号処理手段により出力された、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する、ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項7】
前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体の表面における夫々の前記特定の検出領域が重ならない位置に、複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射することを特徴とする、請求項6に記載の内部観察装置。
【請求項8】
さらに、前記照明手段による前記照明光の照射スポットの中心点を、前記光散乱性を有する物体に対して走査する走査手段を備え、
前記信号処理手段が、前記走査手段により走査される前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、夫々の前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、
前記画像化手段が、前記信号処理手段により出力された、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する、ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項9】
前記照明手段が、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を出射するレーザ光源を備えたことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項10】
前記照明手段が、さらに、照明光学系と、前記レーザ光源からの出射光を前記照明光学系の入射端へ導光する光ファイバを備えたことを特徴とする、請求項9に記載の内部観察装置。
【請求項11】
前記照明手段が、さらに、出射端から出射した照明光が前記光散乱性を有する物体を照射するまでの光路において平行光となるように照明光のNAを調整する、NA調整光学系を備えたことを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項12】
前記光散乱性を有する物体又は前記観察対象が生体組織であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項13】
前記内部観察装置が、医療用内視鏡であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の内部観察装置。
【請求項14】
前記医療用内視鏡が、硬性内視鏡であることを特徴とする請求項13に記載の内部観察装置。
【請求項15】
光散乱性を有する物体の内部に存在しうる観察対象を観察する内部観察方法であって、
前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、前記光散乱性を有する物体に対して照射する第1の工程と、
前記第1の工程を介して前記光散乱性を有する物体に対して照射した照明光の後方散乱光を非接触にて受光し、光強度データを取得する第2の工程と、
前記第2の工程を介して取得した光強度データのうち、特定の検出領域での光強度データを用いて所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力する第3の工程と、
前記第3の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する第4の工程と、
前記第4の工程を介して生成した画像を表示する第5の工程と、を備え、
前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点から所定の半径よりも離れた位置に存在し、かつ、該照明光の照射スポットの中心点から異なる方向に互いに離れて存在する2点を少なくとも含むことを特徴とする、内部観察方法。
【請求項16】
前記所定の半径が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの半径であることを特徴とする請求項15に記載の内部観察方法。
【請求項17】
前記特定の検出領域が、前記光散乱性を有する物体の表面上における前記照明光の照射スポットの中心点を中心とした帯状同心円領域の全体又はその一部分であり、かつ前記帯状同心円領域の内径が、前記照明光の照射スポットの半径よりも大きいことを特徴とする請求項16に記載の内部観察方法。
【請求項18】
前記第3の工程において施す前記所定の演算処理が、前記特定の検出領域における個々の点での光強度データの積算又は平均であることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項19】
前記第2の工程において、二次元方向での光強度データを一括で取得できる撮像手段を用いることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項20】
前記第1の工程において、前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含む光を、前記光散乱性を有する物体の表面に複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射し、
前記第3の工程において、夫々の前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像作成用データとして出力し、
前記第4の工程において、前記第3の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する、ことを特徴とする、請求項15〜19のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項21】
前記第1の工程において、前記光散乱性を有する物体の表面における夫々の前記特定の検出領域が重ならない位置に、複数の前記照明光の照射スポットを同時に照射することを特徴とする、請求項20に記載の内部観察方法。
【請求項22】
前記第1の工程において、前記照明光の照射スポットの中心点を、前記光散乱性を有する物体に対して走査し、
前記第3の工程において、前記第1の工程を介して走査した前記照明光の照射スポットの中心点に対応させた前記特定の検出領域での光強度データを用いて前記所定の演算処理を施して、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データとして出力し、
前記第4の工程において、前記第3の工程を介して出力した、前記光散乱性を有する物体の表面上における夫々の前記照明光の照射スポットの中心点での画像生成用データを解析して画像を生成する、ことを特徴とする、請求項15〜21のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項23】
前記第1の工程において、レーザ光源を用いて前記光散乱性を有する物体と前記観察対象とで光学特性の異なる波長を含むレーザ光を出射することを特徴とする、請求項15〜22のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項24】
前記第1の工程において、さらに、光ファイバを用いて前記レーザ光源からの出射光を照明光学系の入射端へ導光することを特徴とする、請求項23に記載の内部観察方法。
【請求項25】
前記第1の工程において、さらに、NA調整光学系を用いて、出射端から出射した照明光が前記光散乱性を有する物体を照射するまでの光路において平行光となるように照明光のNAを調整することを特徴とする、請求項15〜24のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項26】
前記光散乱性を有する物体又は前記観察対象が生体組織であることを特徴とする請求項15〜25のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項27】
前記内部観察方法を、医療用内視鏡を用いて行うことを特徴とする請求項15〜26のいずれかに記載の内部観察方法。
【請求項28】
前記医療用内視鏡が、硬性内視鏡であることを特徴とする請求項27に記載の内部観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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