内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法
【課題】簡易な構成で内面管内に容易に取り付けることができ、下水の流れを阻害することのない内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法を提供する。
【解決手段】内面管110の伸長方向と直交する断面の形状に倣った内周形状を有し、かつ内面管110の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体11、フレーム体11を内面管110の内周方向に伸長するように設置した状態でフレーム体11を押し拡げて端部11a、11aの間に挿入される介装部材16、介装部材16の挿入状態で端部11a、11aの間を結合する結合部を備え、簡易な構成で内面管110の形成過程において内面管110を内部から支持する。
【解決手段】内面管110の伸長方向と直交する断面の形状に倣った内周形状を有し、かつ内面管110の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体11、フレーム体11を内面管110の内周方向に伸長するように設置した状態でフレーム体11を押し拡げて端部11a、11aの間に挿入される介装部材16、介装部材16の挿入状態で端部11a、11aの間を結合する結合部を備え、簡易な構成で内面管110の形成過程において内面管110を内部から支持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法、特に、既設管路内への内面管の形成過程で内面管を内部から支持する内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の下水道普及率はおよそ74%であり、都市部では、ほぼ100%に近い普及率である。従って、老朽化した下水管路の維持管理が重要になっている。下水管路の総延長は約43万kmであり、かかる下水管路のうち、耐用年数50年を越えた下水管路は10000km以上となっている。また、今後、年間数千kmずつ増加する見込みである。
【0003】
このような下水管路は、下水から発生した硫化水素等の有害な酸化物質による腐食で劣化し、その結果破損することがある。また、設置からの年数の経過に伴って、土圧による静荷重、重量車両が地表面を走行することに起因する活荷重や繰り返し荷重等による影響によって様々な変形、例えば、ズレによる段差及び破損、径の変化が発生することがある。
【0004】
このような下水管路を補修する方法としては、下水管路の伸長方向に亘って下水管路内に内面管を形成し、下水管路とその内壁部に設けられた内面管との間に裏込め材を圧力によって注入し、下水管路と内面管とを裏込め材によって一体化する管路の更生方法が知られている。この内面管は、例えば、複数のセグメント材を組み合わせて形成することができ、また、図14で示すように、下水が流れる下水管路112の内部に配置された螺旋管製管機120を用いて、合成樹脂製の帯状部材100を下水管路112の内壁部に螺旋状に巻回することによっても形成することができる。
【0005】
下水管路と内面管との一体化によって形成される更生管の品質を確保するためには、裏込め材を一定の圧力で注入して、下水管路と内面管との間に裏込め材をまんべんなく充填する必要がある。この裏込め材を注入する際の注入圧と、裏込め材自体の流体圧によって、内面管が下水管路内で変形したり浮き上がったりすることがある。このような変形や浮き上がりが発生すると、下水管路と内面管とを安定的に一体化させることができず、下水管路の更生品質が低下することとなる。そこで、かかる変形や浮き上がりを抑制して下水管路112と内面管110とを安定的に一体化させる技術が、種々存在している。
【0006】
特許文献1には、内面管内部に挿入設置される内面管の支保工装置が開示されている。この特許文献1の支保工装置は、内面管に固定支持されて内面管の内部において内面管の内周方向に沿って設けられた環状のフレーム体を備え、フレーム体に放射状に配置されて内面管の外径方向及び内径方向に進退可能な進退杆が設けられる。このようなフレーム体が、内面管の延在方向に沿って所定間隔をおいて複数配置され、それぞれのフレーム体の進退杆の先端間に、内面管の延在方向に亘って内壁部を押圧する腹起し材が架設される。
【0007】
この状態で、進退杆を内面管の内径方向及び外径方向に進退させて腹起し材を内面管の内壁部に押圧させることで、内面管が支保工装置によって支持され、裏込め材を注入する際の圧力により内面管が変形したり浮き上がったりすることが支保工装置によって抑えこまれる。従って、下水管路と支保工装置とが安定的に一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−121565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1によると、腹起し材で内面管の延在方向に亘って内壁部を押圧するために、フレーム体に進退杆を設けてこの進退杆を進退させて腹起し材を内壁部に押圧させる構造が必要となることから、部材点数が増加する可能性があり、支保工装置の構造が複雑となる可能性が生じる。その結果、支保工装置の製造コストの増大及び現場での装置・施工の管理が煩雑になることが懸念される。
【0010】
また、環状に形成されたフレーム体に放射線状に配置された進退杆を外径方向及び内径方向に進退させて、内面管の径方向でバランスを整えて腹起し材による内面管の内壁部の押圧を行うことから、内面管内への支保工装置の取付時の位置決め等が難しくなる。
【0011】
しかも、腹起し材を内面管の伸長方向に押圧する進退杆を支持するフレーム体が内面管の内径方向に突出して設けられることから、支保工装置の取付作業が大掛かりなものとなっている。また、内面管の内径方向に突出するフレーム体及び進退杆が、内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することが懸念される。更に、作業員が内面管内を歩行する際に支障を生じたり、作業スペースの確保が困難となったりすることが懸念される。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で内面管内に容易に取り付けることができ、かつ下水の流下を阻害することのない内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による内面管の支保工装置は、既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する内面管の支保工装置において、前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体と、該フレーム体を内周方向に伸長するように設置した状態で前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に挿入される介装部材と、該介装部材の挿入状態で前記端部の間を結合する結合部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、フレーム体を押し拡げることによって、フレーム体が内面管の内周方向に沿った内壁部を押圧する。その状態で、フレーム体の端部の間に介装部材を挿入し、結合部で端部の間を結合することで、内面管の内径方向から外径方向に向かってフレーム体が内面管の内周方向に沿った内壁部を十分に押圧するアーチ状態が保持される。すなわち、フレーム体のみによって内面管の内壁部を押圧して内面管を支持することが可能となる。従って、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等を設ける必要がなくなり、部材点数を抑えた簡易な構成によって、支保工装置を内面管内に設置することができる。更に、上記のような簡易な構成によって支保工装置が形成されることから、取付作業の簡易化及び迅速化が図られる。
【0015】
しかも、内面管の内周方向に伸長するフレーム体のみによって内壁部を押圧することから、内面管の内径方向に突出する上記の構成部材を設ける必要がない。従って、支保工装置を設置しても内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することがなく、かつ作業員が内面管内を歩行する際に支障を生じさせることがなくなるとともに作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体の端部が互いに対向して形成されたことを特徴とする。この構成によれば、フレーム体の端部が互いに対向することから、フレーム体の押し拡げを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1または2に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体は、複数のフレーム体構成片が連結されて形成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、フレーム体が複数のフレーム体構成片を連結して形成されることから、既設管路に内面管を形成している過程で支保工装置を設置する場合に、支保工装置を構成する部材の搬入を容易に行うことができ、かつ、支保工装置を解体して内面管内から搬出する作業も容易に行うことができる。
【0019】
更に、支保工装置の設置対象となる内面管の内周長に合わせてフレーム体の長さを調整することができるように、種々の長さのフレーム体構成片を予め形成することによって、内周長の長短に関わらず支保工装置を設置することができ、支保工装置の汎用性を拡大することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項3に記載の内面管の支保工装置において、前記介装部材が挿入される前記端部が複数形成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、支保工装置の設置対象となる内面管の形状によってはフレーム体を押し拡げる方向に発生する作用力を及ぼしにくい部分が生じるものの、この部分にフレーム体を押し拡げる方向に作用力が生じるように、介装部材が挿入される端部を複数形成することで、フレーム体による内面管の内周方向の内壁部の押圧を容易に行うことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体の設置は、前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に設置されたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、内面管の伸長方向に間隔をおいてフレーム体を設置することで、形成された内面管の全長に亘って、内面管の内部から内面管を支持することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項5に記載の内面管の支保工装置において、前記複数箇所に設置されたフレーム体が前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、内面管の伸長方向に伸長する連結部材が内面管の内壁部を内面管の伸長方向に沿って押圧して、内面管を支持することができる。その結果、内面管の伸長方向に複数設置されるフレーム体の数を抑制することができ、支保工装置の設置コストを抑制することができる。しかも、内面管の伸長方向に複数設置されたフレーム体を連結部材で互いに連結することで、フレーム体の互いの傾倒を防止することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置において、前記結合部は、前記介装部材が挿入される前記互いに対向する端部に設けられた板状の接合プレートを有することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、フレーム体の互いに対向する端部にそれぞれ接合プレートが設けられていることから、対向する端部の間に挿入される介装部材の挿入を容易に行うことができ、その結果、支保工装置の結合を簡易に行うことができる。
【0028】
請求項8に記載の発明による支保工装置の取付方法は、既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する支保工装置の取付方法において、前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体を内周方向に伸長するように前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に配置し、該複数箇所に配置したフレーム体を連結部材で互いに連結し、前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に介装部材を挿入して該端部で前記介装部材を挟持させ、該介装部材が前記端部に挟持された状態で該端部の間を結合する、ことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、内面管の伸長方向に間隔をおいて複数設置されたフレーム体を連結部材で連結した上で、フレーム体を押し拡げることで、フレーム体によって内面管の内周方向の内壁部を容易に押圧することができ、フレーム体の端部の間に介装部材を挿入してフレーム体が内面管の内壁部を押圧した状態を保持することができる。この状態で、介装部材を介して端部の間を結合するという簡易な手法によって、支保工装置を内面管の内部に設置することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、内面管の内周方向の内壁部を押圧するフレーム体、フレーム体が内面管を押圧した状態で端部の間に挿入される介装部材、介装部材が挿入された状態で端部の間を結合する結合部によって、内面管の内周方向の内壁部を押圧するアーチ状態でフレーム体の設置が行われる。従って、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等の大掛かりな部材を設ける必要がないことから、部材点数を抑えた簡易な構成で設置コストを抑制したうえで、支保工装置を内面管内に設置することができる。その結果、支保工装置の設置の迅速化が図られ、設置作業時間の短縮化を実現することができる。
【0031】
しかも、内面管の内径方向に突出する上記の構成部材を設ける必要がないことから、支保工装置を設置しても内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することがない。更に、作業員の内面管内の歩行に支障が生じることがなく、かつ作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図2】同じく、本実施の形態に係る支保工装置のフレーム体構成片の端部に設けられた連結部の概略を説明する図である。
【図3】同じく、本実施の形態に係る支保工装置の結合部材及び介装部材の概略を説明する図である。
【図4】本実施の形態に係る支保工装置のフレーム体構成片を形成する過程の概略を説明する図である。
【図5】本実施の形態に係る支保工装置を内面管内に取り付ける過程の概略を説明する図である。
【図6】同じく、本実施の形態に係る支保工装置を内面管内に取り付ける過程の概略を説明する図である。
【図7】他の実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図8】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図9】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図10】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図11】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図12】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図13】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図14】下水管路に内面管を形成する概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜6に基づいて説明する。なお、図1〜図6において、図14と同様の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、本実施の形態では、既設管路が下水管路である場合を例として説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る支保工装置10の概略を説明する図である。図示のように、支保工装置10は、既設管路となる下水管路112内に設けられた内面管110の内壁部110aに設置され、この内面管110の内部から内面管110を支持している。
【0035】
この支保工装置10は、内面管110の伸長方向と直交する断面の内周形状、本実施の形態では、断面円形に形成された内面管110の形状に倣った断面略円形の形状を有するフレーム体11を備える。このフレーム体11は、内面管110の内周長よりも短い外周長を有し、本実施の形態では、フレーム体11を内面管110の内周方向に沿って配置すると間隙を介して互いに対向する端部11a、11aを有して形成される。
【0036】
このフレーム体11は、内面管110の内周方向に伸長するように内面管110の内部に配置され、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aを押し拡げて互いに離間させてフレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧した状態で、端部11a、11aの間に介装部材となるスペーサ16が挿入され、端部11a、11aによってスペーサ16が挟持保持される。
【0037】
スペーサ16がフレーム体11の端部11a、11aの間に挿入されて端部11a、11aによって挟持されている状態で、端部11a、11a間が結合される。これにより、フレーム体11が一体化されて、内面管110の内径方向から外径方向に向かってフレーム体11が内面管110の内周方向の内壁部110aを十分に押圧するアーチ状態が保持され、内面管110が、支保工装置10によって内面管110の内部から支持される。
【0038】
次に、本実施の形態に係る支保工装置10の各部の具体的構成について説明する。
【0039】
フレーム体11は、図1で示したように、複数のフレーム体構成片11−1〜11−4が連結されて形成される。このフレーム体構成片11−1〜11−4は、支保工装置10が設置される内面管110の内径の相違に合わせてフレーム体長を調整できるように、種々の長さのものが予め形成されている。本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4は、いずれもほぼ同じ長さのものが4本用いられている。このフレーム体構成片11−1〜11−4は、本実施の形態では、金属製で中空断面環状に形成され、例えば、建設工事現場の足場材として用いられる鉄管等を用いて簡易に構成することができる。フレーム体構成片11−1〜11−4は、各フレーム体構成片11−1〜11−4の端部に設けられた連結部14においてそれぞれ連結される。
【0040】
図2は、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部に設けられた連結部14の概略を説明する図である。図2(a)で示すように、連結部14は、本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部における一端側に、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部における他端側に嵌合する突起部14aを有する。なお、内面管110の内径は、各現場でそれぞれ異なることから、図2(b)で示すように、連結部14にスペーサ15を介在させて、フレーム体11のフレーム体長を微調整して設置対象となる内面管110の内径に合わせるように構成してもよい。
【0041】
図3は、本実施の形態に係る結合部及びスペーサ16の概略を説明する図である。図3(a)で示すように、スペーサ16が挿入される対向する端部11a、11aには、正面視略矩形に形成された板状の接合プレート18、18がフレーム体11の伸長方向と交差する方向に設けられる。フレーム体11が内面管110の内壁部110aに設けられた状態において、接合プレート18、18が互いに対向する。この接合プレート18、18には、複数の結合孔18aが穿孔されている。
【0042】
図3(b)は、図3(a)のIV−IV線断面図である。図示のように、接合プレート18、18の間には、正面視略矩形に形成された接合プレート18、18の形状に倣って形成されたスペーサ16が挿入される。このスペーサ16には、スペーサ16が接合プレート18、18の間に挿入された状態で接合プレート18、18に穿孔された複数の結合孔18aと重なって連通する連通孔16aが穿孔されている。
【0043】
スペーサ16が接合プレート18、18の間に挿入された状態で、結合孔18aと連通孔16aとが連通し、結合孔18aから挿入されたボルト19aにナット19bが締結されることで、フレーム体11の対向する端部11a、11aの間が結合される。この接合プレート18、18とボルト19a及びナット19bによって、結合部が構成される。
【0044】
なお、結合部は、本実施の形態では、図1の矢線Aで示すフレーム体11のA位置に形成されているが、例えば、矢線B〜Gで示すフレーム体11のB〜G位置に形成してもよい。すなわち、支保工装置10を内面管110内に設置しやすい所望の位置に、結合部を形成することができる。
【0045】
次に、図4〜図6、図14に基づいて、支保工装置10を内面管110の内部に取り付ける方法について説明する。なお、本実施の形態では、内面管110の伸長方向に所定間隔をおいて支保工装置10を複数配置し、それぞれの支保工装置10を連結部材で連結する場合について説明する。
【0046】
まず、図14で示したように、内面管110を形成する。この内面管110の形成は、一定の区間、例えば、一のマンホールと他のマンホールとの間で行い、順次、次の区間に進んでいく。
【0047】
内面管110の形成に続いて、フレーム体構成片11−1〜11−4を内面管110内に搬入する。フレーム体構成片11−1〜11−4の内面管110内への搬入に先立ち、内面管110の内径に合わせてフレーム体構成片11−1〜11−4を形成あるいは選択しておく。
【0048】
本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4は、図4で示すように、突起部14aが形成されたパイプ管12及び十字継手13によって形成される。十字継手13は、パイプ管12を上下方向に連結する上部連結部13a及び下部連結部13bと、上部連結部13a及び下部連結部13bと直交する方向に突出する側部連結部13cとを有して形成される。
【0049】
まず、一の十字継手13の下部連結部13bと他の十字継手13の上部連結部13aとをパイプ管12を介して連結する。そして、一の十字継手13の上部連結部13aにパイプ管12を連結し、他の十字継手13の下部連結部13bにパイプ管12を連結して、フレーム体構成片11−1を形成する。
【0050】
なお、図4では、フレーム体構成片11−1を形成する場合を例として説明したが、フレーム体構成片11−2〜11−4も同様に形成されることから、その説明を省略する。
【0051】
内面管110内に搬入したフレーム体構成片11−1〜11−4を連結してフレーム体11を形成し、内面管110を形成した一定の区間に亘って、フレーム体11を、内面管110の伸長方向で所定の間隔(例えば1m〜2m)をおいて複数箇所に配設する。
【0052】
図5で示すように、本実施の形態では、内面管110の伸長方向で所定の間隔をおいて複数配置されたフレーム体11同士を、内面管110の伸長方向に伸長する連結部材20を用いて連結する。本実施の形態では、一のフレーム体11に設けられた十字継手13の側部連結部13cと他のフレーム体11に設けられた十字継手13の側部連結部13cとを連結部材20で連結して、内面管110の前後方向に配置された複数のフレーム体11を互いに連結する。本実施の形態では、8個の十字継手13が用いられてフレーム体11が形成されていることから、一のフレーム体11と他のフレーム体11とを8本の連結部材20で連結する。これにより、連結部材20が内面管110をその伸長方向に沿って押圧して内面管110を支持するとともに、フレーム体11の互いの傾倒が抑制される。
【0053】
次に、図6(a)で示すように、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aに設けられて互いに対向する接合プレート18、18を、図6(b)で示すように互いに離間させる。接合プレート18、18の離間は、図示しない公知の手動のジャッキ機構等によって実行される。接合プレート18、18の離間によって、フレーム体長が長尺状に形成されたことに起因してフレーム体11が拡径し、内面管110の内壁部110aを押圧する。この状態で、互いに離間した接合プレート18、18の間にスペーサ16を挿入する。このとき、図6(c)で示すように、接合プレート18、18に穿孔された結合孔18aとスペーサ16に穿孔された連通孔16aとを重ね合わせて結合孔18aと連通孔16aとを連通させ、結合孔18aからボルト19aを挿入する。図6(d)で示すように、挿入したボルト19aをナット19bで締結する。これにより、フレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧した状態で支保工装置10が内面管110の内部に設置され、内面管110がその内部から支保工装置10によって支持される。
【0054】
すなわち、内面管110は、支保工装置10のフレーム体11が内面管110の内壁部110aを内面管110の内径方向から外径方向に押圧することにより、及び連結部材20が内面管110の伸長方向に沿って内面管110の内径方向から外径方向に内面管110の内壁部110aを押圧することによって支持される。
【0055】
支保工装置10を、内面管110が設けられた一定区間に亘って設置した後、図13で示したように、螺旋管製管機120を介して内面管110と下水管路112との間に裏込め材mを圧力注入する。このとき、内面管110はその内部から支保工装置10によって支持されていることから、裏込め材mを注入する際の圧力によっても、内面管110が下水管路112から離間して変形したり浮き上がったりすることが抑制される。従って、内面管110が支保工装置10によって抑えこまれることから、注入された裏込め材mによって内面管110と下水管路112とが安定して一体化され、更生品質が向上される。
【0056】
裏込め材mが硬化して内面管110と下水管路112とが一体形成された後、支保工装置10を解体する。そして、下水管路112における次の区間において内面管110を設け、上記同様の手順によって支保工装置10を設置し、内面管110と下水管路112とを一体形成する。
【0057】
上記構成を有する支保工装置10によれば、中空断面環状のフレーム体11と、接合プレート18、18及びボルト19a、ナット19bで構成される結合部とで構成することができ、部材点数を抑制したうえで簡易な構成によって形成することができる。従って、繰り返しの使用によっても、不備が発生して支保工装置10が損傷する可能性が低減され、長期に亘って安定的に支保工装置10を用いることができる。
【0058】
支保工装置10を内面管110の内部に取り付けるに際しては、互いに対向する接合プレート18、18を押し拡げて離間させてフレーム体11を拡径させることで、フレーム体11によって内面管110の内壁部110aを容易に押圧することができ、離間した接合プレート18、18の間にスペーサ16を挿入してフレーム体11が内面管110の内壁部110aを十分に押圧したアーチ状態を保持することができる。この状態で、スペーサ16を介して接合プレート18、18を固定することによって、支保工装置10を内面管110の内部に設置することができる。
【0059】
すなわち、支保工装置10は、上記のような簡易な構造によって形成され、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等を設ける必要がなく、内面管110の内周方向の内壁部110aに沿って伸長するフレーム体11を撓ませて内面管110の内壁部110aを押圧して、フレーム体11のその状態を保持させるという容易な取付方法によって、支保工装置10を内面管110内に設置することができる。
【0060】
しかも、支保工装置10は、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aに設けられた接合プレート18、18を押し拡げて離間させることで内面管110の内壁部110aを押圧することから、内面管110の内壁部110aを押圧するために内面管110の内径方向に突出する構成部材を設ける必要がない。従って、内面管110内の下水の流下を阻害することもない。更に、作業員が内面管110内を歩行する際に支障を生じさせることがなくなり、かつ作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【0061】
支保工装置10は、フレーム体11がフレーム体構成片11−1〜11−4によって構成され、フレーム体構成片は、設置対象となる内面管110の内径に合わせてフレーム体長を調整することができるように、種々の長さのものが予め形成されていることから、形成された設置対象となる内面管110の内径に合わせてフレーム体構成片を選択することによって、容易にフレーム体長を設定することができる。
【0062】
また、予め形成したフレーム体構成片の長さによってフレーム体長を調整するのみならず、接合プレート18、18の間に挿入されるスペーサ16や、連結部14に介在させるスペーサ15の厚みを増減させたものを予め種々準備しておき、フレーム体長を微調整することもできる。
【0063】
内面管110の延在方向で所定の間隔をおいて複数箇所に配設された支保工装置10が、連結部材20によって、内面管110内で前後方向に配設されたフレーム体11と連結されることから、フレーム体11を拡径させることでフレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧することに追従して、連結部材20が内面管110の伸長方向に沿って内面管110の内径方向から外径方向に内面管110を押圧する。従って、内面管110を確実に押圧するとともに、内面管110の伸長方向に複数配置されるフレーム体11の数を抑制することができ、支保工装置10の設置コストを抑制することができる。
【0064】
更に、連結部材20によって、それぞれのフレーム体11の傾倒が抑制される。従って、内面管110と下水管路112とが裏込め材によって一体的に形成される際に、連結部材20によって前後方向で連結されたフレーム体11によって、内面管110が安定して支持されることから、下水管路112の更生品質が向上する。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図7で示すように、伸長方向と直交する方向の断面形状が略矩形の下水管路112に合わせて断面略矩形に形成された内面管110を支持する場合にも、支保工装置30のフレーム体31あるいはフレーム体構成片31−1〜31−8の形状を、内面管110の伸長方向と直交する方向の断面の形状(略矩形)に倣って断面略矩形の形状を有するフレーム体31を形成することで適用することができる。
【0066】
この場合、図7で示すように、フレーム体構成片31−1〜31−8で形成されたフレーム体31の任意の連結部34の複数箇所を、スペーサ16が挿入される互いに対向する端部31a、31aとして形成し、接合プレート18、18を設けてもよい。本例では、断面略矩形の内面管110において、フレーム体31の屈曲部分にフレーム体31を押し拡げる方向に発生する作用力が及ぶように、任意の2カ所に接合プレート18、18を設けることで、フレーム体31による内面管110の内周方向の内壁部110aの押圧を容易に行うことができる。
【0067】
また、図8で示すように、伸長方向と直交する方向の断面形状が馬蹄形に形成された内面管110を支持する場合にも、支保工装置40のフレーム体41あるいはフレーム体構成片41−1〜41−7の形状を、内面管110の伸長方向と直交する方向の断面の形状(馬蹄形)に倣って断面略馬蹄形の形状を有するフレーム体41を形成することで適用することができる。
【0068】
この場合、図8で示すように、フレーム体構成片41−1〜41−7で形成されたフレーム体41の任意の連結部44の複数箇所を、スペーサ16が挿入される互いに対向する端部41a、41aとして形成し、接合プレート18、18を設けてもよい。本例では、断面略馬蹄形の内面管110aにおいて、フレーム体41の屈曲部分にフレーム体41を押し拡げる方向に発生する作用力が及ぶように、任意の2カ所に接合プレート18、18を設けることで、フレーム体41による内面管110の内周方向の内壁部110aの押圧を容易に行うことができる。
【0069】
また、図9で示すように、フレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4の外周部分や連結部材20の外周部分、すなわち内面管110の内壁部110aを押圧する部分に板状のプレート22を介在させて、このプレート22で内面管110の内壁部110aを押圧するように構成してもよい。これにより、フレーム体11にプレート22を設けていない場合に比べて、内面管110の内壁部110aを押圧する面積を広げることができ、フレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4の外周部分が押圧する内壁部110aの応力集中を回避した上で、内面管110をその内周方向に沿って更に確実に支持することができる。なお、プレート22は、溶接等によってフレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4等に結合することもできる。
【0070】
上記実施の形態では、フレーム体11、31、41及び各フレーム体構成片11−1〜11−4、31−1〜31−8、41−1〜41−7の断面形状が中空環状に形成された場合を説明したが、図10(a)で示すように、断面中空略矩形状に形成することもでき、図10(b)で示すように、断面中空略三角形状に形成することもできる。なお、この場合であっても、図9で示したプレート22をフレーム体及び各フレーム体構成片の外周部分に設けてもよい。
【0071】
また、図11で示すように、フレーム体11の内径方向から外径方向に突出する長尺状のねじ棒で形成された反力部材24をフレーム体11に設け、この反力部材24で内面管110を貫通させて下水管路112の内壁部に反力部材24を当接させるように構成してもよい。これにより、下水管路112内において内面管110が浮き上がることをより的確に防止し、下水管路112の管底に内面管110を高精度に位置決めして、下水管路112の更生を実現することができる。この場合、図11で示すように、反力部材24を複数箇所に設けて、下水管路112内における内面管110の位置合わせを制御するように構成してもよい。
【0072】
内面管110の位置合わせは、図11で示した場合に限られない。例えば、反力部材24を、内面管110の内周方向に沿って均等な間隔をおいて複数設けることによって、内面管110を、下水管路112と略同軸上に配置するように位置合わせをしてもよい。
【0073】
図12で示すように、フレーム体11の端部11a、11aのうち、一方の端部を他方の端部に対して小径に形成し、一方の端部を他方の端部側に嵌め込むように構成してもよい。この場合、図示のように、それぞれの端部11a、11aに結合孔11bを複数形成しておき、それぞれの端部11a、11aの結合孔11bを重ね合わせてボルト19aを挿入してナット19bで締結することで、フレーム体11の端部11a、11aの間を結合することができる。この場合、結合孔11b、ボルト19a及びナット19bによって、結合部が構成される。
【0074】
上記実施の形態では、フレーム体11の端部11a、11aに接合プレート18、18が設けられた場合を説明したが、例えば、図13で示すように、フレーム体11に、一端側が右ねじにネジ切りされるとともに他端側が左ねじにネジ切りされたネジ棒26a、及びネジ棒26aに螺合するスペーサ26bを有するジョイント機構26を、フレーム体11の端部11a、11aの間に介在させてもよい。スペーサ26bをネジ棒26a上で往復移動させることによって、フレーム体11を拡径することができる。これにより、手動のジャッキ機構等の別部材を用いてフレーム体11の拡径を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。この場合、スペーサ26bによって介装部材が構成される。
【0075】
また、上記実施の形態では、フレーム体11の連結部14にスペーサ15を介在させてフレーム体11のフレーム体長を微調整する場合を説明したが、ジョイント機構26をフレーム体11の連結部14に設け、スペーサ26bをネジ棒26a上で往復移動させることによって、フレーム体11の伸縮が可能となる。従って、フレーム体11のフレーム体長の微調整幅を広げることができ、支保工装置10の汎用性が拡大する。
【0076】
上記実施の形態では、フレーム体11が各フレーム体構成片11−1〜11−4を連結して形成する場合を説明したが、単体のフレーム体によって、内面管110の内周方向の内壁部110aに沿って伸長するように構成してもよい。
【0077】
上記実施の形態では、既設管路が下水管路112である場合を説明したが、例えば、農業用水用管路を更生する場合にも適用することができる。すなわち、既設管路と内面管との間に高圧で裏込め材を注入する管路の更生方法であれば、どのような既設管路であっても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、30、40 支保工装置
11、31、41 フレーム体
11a、11a 端部
11−1〜11−4 フレーム体構成片
14、34、44 連結部
16 スペーサ(介装部材)
18、18 接合プレート(結合部)
19a ボルト(結合部)
19b ナット(結合部)
20 連結部材
22 プレート
100 プロファイル
110 内面管
110a 内壁部
112 下水管路(既設管路)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法、特に、既設管路内への内面管の形成過程で内面管を内部から支持する内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の下水道普及率はおよそ74%であり、都市部では、ほぼ100%に近い普及率である。従って、老朽化した下水管路の維持管理が重要になっている。下水管路の総延長は約43万kmであり、かかる下水管路のうち、耐用年数50年を越えた下水管路は10000km以上となっている。また、今後、年間数千kmずつ増加する見込みである。
【0003】
このような下水管路は、下水から発生した硫化水素等の有害な酸化物質による腐食で劣化し、その結果破損することがある。また、設置からの年数の経過に伴って、土圧による静荷重、重量車両が地表面を走行することに起因する活荷重や繰り返し荷重等による影響によって様々な変形、例えば、ズレによる段差及び破損、径の変化が発生することがある。
【0004】
このような下水管路を補修する方法としては、下水管路の伸長方向に亘って下水管路内に内面管を形成し、下水管路とその内壁部に設けられた内面管との間に裏込め材を圧力によって注入し、下水管路と内面管とを裏込め材によって一体化する管路の更生方法が知られている。この内面管は、例えば、複数のセグメント材を組み合わせて形成することができ、また、図14で示すように、下水が流れる下水管路112の内部に配置された螺旋管製管機120を用いて、合成樹脂製の帯状部材100を下水管路112の内壁部に螺旋状に巻回することによっても形成することができる。
【0005】
下水管路と内面管との一体化によって形成される更生管の品質を確保するためには、裏込め材を一定の圧力で注入して、下水管路と内面管との間に裏込め材をまんべんなく充填する必要がある。この裏込め材を注入する際の注入圧と、裏込め材自体の流体圧によって、内面管が下水管路内で変形したり浮き上がったりすることがある。このような変形や浮き上がりが発生すると、下水管路と内面管とを安定的に一体化させることができず、下水管路の更生品質が低下することとなる。そこで、かかる変形や浮き上がりを抑制して下水管路112と内面管110とを安定的に一体化させる技術が、種々存在している。
【0006】
特許文献1には、内面管内部に挿入設置される内面管の支保工装置が開示されている。この特許文献1の支保工装置は、内面管に固定支持されて内面管の内部において内面管の内周方向に沿って設けられた環状のフレーム体を備え、フレーム体に放射状に配置されて内面管の外径方向及び内径方向に進退可能な進退杆が設けられる。このようなフレーム体が、内面管の延在方向に沿って所定間隔をおいて複数配置され、それぞれのフレーム体の進退杆の先端間に、内面管の延在方向に亘って内壁部を押圧する腹起し材が架設される。
【0007】
この状態で、進退杆を内面管の内径方向及び外径方向に進退させて腹起し材を内面管の内壁部に押圧させることで、内面管が支保工装置によって支持され、裏込め材を注入する際の圧力により内面管が変形したり浮き上がったりすることが支保工装置によって抑えこまれる。従って、下水管路と支保工装置とが安定的に一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−121565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1によると、腹起し材で内面管の延在方向に亘って内壁部を押圧するために、フレーム体に進退杆を設けてこの進退杆を進退させて腹起し材を内壁部に押圧させる構造が必要となることから、部材点数が増加する可能性があり、支保工装置の構造が複雑となる可能性が生じる。その結果、支保工装置の製造コストの増大及び現場での装置・施工の管理が煩雑になることが懸念される。
【0010】
また、環状に形成されたフレーム体に放射線状に配置された進退杆を外径方向及び内径方向に進退させて、内面管の径方向でバランスを整えて腹起し材による内面管の内壁部の押圧を行うことから、内面管内への支保工装置の取付時の位置決め等が難しくなる。
【0011】
しかも、腹起し材を内面管の伸長方向に押圧する進退杆を支持するフレーム体が内面管の内径方向に突出して設けられることから、支保工装置の取付作業が大掛かりなものとなっている。また、内面管の内径方向に突出するフレーム体及び進退杆が、内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することが懸念される。更に、作業員が内面管内を歩行する際に支障を生じたり、作業スペースの確保が困難となったりすることが懸念される。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成で内面管内に容易に取り付けることができ、かつ下水の流下を阻害することのない内面管の支保工装置及び支保工装置の取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による内面管の支保工装置は、既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する内面管の支保工装置において、前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体と、該フレーム体を内周方向に伸長するように設置した状態で前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に挿入される介装部材と、該介装部材の挿入状態で前記端部の間を結合する結合部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、フレーム体を押し拡げることによって、フレーム体が内面管の内周方向に沿った内壁部を押圧する。その状態で、フレーム体の端部の間に介装部材を挿入し、結合部で端部の間を結合することで、内面管の内径方向から外径方向に向かってフレーム体が内面管の内周方向に沿った内壁部を十分に押圧するアーチ状態が保持される。すなわち、フレーム体のみによって内面管の内壁部を押圧して内面管を支持することが可能となる。従って、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等を設ける必要がなくなり、部材点数を抑えた簡易な構成によって、支保工装置を内面管内に設置することができる。更に、上記のような簡易な構成によって支保工装置が形成されることから、取付作業の簡易化及び迅速化が図られる。
【0015】
しかも、内面管の内周方向に伸長するフレーム体のみによって内壁部を押圧することから、内面管の内径方向に突出する上記の構成部材を設ける必要がない。従って、支保工装置を設置しても内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することがなく、かつ作業員が内面管内を歩行する際に支障を生じさせることがなくなるとともに作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【0016】
請求項2に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体の端部が互いに対向して形成されたことを特徴とする。この構成によれば、フレーム体の端部が互いに対向することから、フレーム体の押し拡げを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1または2に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体は、複数のフレーム体構成片が連結されて形成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、フレーム体が複数のフレーム体構成片を連結して形成されることから、既設管路に内面管を形成している過程で支保工装置を設置する場合に、支保工装置を構成する部材の搬入を容易に行うことができ、かつ、支保工装置を解体して内面管内から搬出する作業も容易に行うことができる。
【0019】
更に、支保工装置の設置対象となる内面管の内周長に合わせてフレーム体の長さを調整することができるように、種々の長さのフレーム体構成片を予め形成することによって、内周長の長短に関わらず支保工装置を設置することができ、支保工装置の汎用性を拡大することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項3に記載の内面管の支保工装置において、前記介装部材が挿入される前記端部が複数形成されたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、支保工装置の設置対象となる内面管の形状によってはフレーム体を押し拡げる方向に発生する作用力を及ぼしにくい部分が生じるものの、この部分にフレーム体を押し拡げる方向に作用力が生じるように、介装部材が挿入される端部を複数形成することで、フレーム体による内面管の内周方向の内壁部の押圧を容易に行うことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置において、前記フレーム体の設置は、前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に設置されたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、内面管の伸長方向に間隔をおいてフレーム体を設置することで、形成された内面管の全長に亘って、内面管の内部から内面管を支持することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項5に記載の内面管の支保工装置において、前記複数箇所に設置されたフレーム体が前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結されたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、内面管の伸長方向に伸長する連結部材が内面管の内壁部を内面管の伸長方向に沿って押圧して、内面管を支持することができる。その結果、内面管の伸長方向に複数設置されるフレーム体の数を抑制することができ、支保工装置の設置コストを抑制することができる。しかも、内面管の伸長方向に複数設置されたフレーム体を連結部材で互いに連結することで、フレーム体の互いの傾倒を防止することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明による内面管の支保工装置は、請求項2〜6のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置において、前記結合部は、前記介装部材が挿入される前記互いに対向する端部に設けられた板状の接合プレートを有することを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、フレーム体の互いに対向する端部にそれぞれ接合プレートが設けられていることから、対向する端部の間に挿入される介装部材の挿入を容易に行うことができ、その結果、支保工装置の結合を簡易に行うことができる。
【0028】
請求項8に記載の発明による支保工装置の取付方法は、既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する支保工装置の取付方法において、前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体を内周方向に伸長するように前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に配置し、該複数箇所に配置したフレーム体を連結部材で互いに連結し、前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に介装部材を挿入して該端部で前記介装部材を挟持させ、該介装部材が前記端部に挟持された状態で該端部の間を結合する、ことを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、内面管の伸長方向に間隔をおいて複数設置されたフレーム体を連結部材で連結した上で、フレーム体を押し拡げることで、フレーム体によって内面管の内周方向の内壁部を容易に押圧することができ、フレーム体の端部の間に介装部材を挿入してフレーム体が内面管の内壁部を押圧した状態を保持することができる。この状態で、介装部材を介して端部の間を結合するという簡易な手法によって、支保工装置を内面管の内部に設置することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、内面管の内周方向の内壁部を押圧するフレーム体、フレーム体が内面管を押圧した状態で端部の間に挿入される介装部材、介装部材が挿入された状態で端部の間を結合する結合部によって、内面管の内周方向の内壁部を押圧するアーチ状態でフレーム体の設置が行われる。従って、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等の大掛かりな部材を設ける必要がないことから、部材点数を抑えた簡易な構成で設置コストを抑制したうえで、支保工装置を内面管内に設置することができる。その結果、支保工装置の設置の迅速化が図られ、設置作業時間の短縮化を実現することができる。
【0031】
しかも、内面管の内径方向に突出する上記の構成部材を設ける必要がないことから、支保工装置を設置しても内面管の内部を流れる下水の流下を阻害することがない。更に、作業員の内面管内の歩行に支障が生じることがなく、かつ作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図2】同じく、本実施の形態に係る支保工装置のフレーム体構成片の端部に設けられた連結部の概略を説明する図である。
【図3】同じく、本実施の形態に係る支保工装置の結合部材及び介装部材の概略を説明する図である。
【図4】本実施の形態に係る支保工装置のフレーム体構成片を形成する過程の概略を説明する図である。
【図5】本実施の形態に係る支保工装置を内面管内に取り付ける過程の概略を説明する図である。
【図6】同じく、本実施の形態に係る支保工装置を内面管内に取り付ける過程の概略を説明する図である。
【図7】他の実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図8】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置の概略を説明する図である。
【図9】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図10】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図11】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図12】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図13】同じく、他の実施の形態に係る支保工装置のフレーム体の概略を説明する図である。
【図14】下水管路に内面管を形成する概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜6に基づいて説明する。なお、図1〜図6において、図14と同様の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。また、本実施の形態では、既設管路が下水管路である場合を例として説明する。
【0034】
図1は、本実施の形態に係る支保工装置10の概略を説明する図である。図示のように、支保工装置10は、既設管路となる下水管路112内に設けられた内面管110の内壁部110aに設置され、この内面管110の内部から内面管110を支持している。
【0035】
この支保工装置10は、内面管110の伸長方向と直交する断面の内周形状、本実施の形態では、断面円形に形成された内面管110の形状に倣った断面略円形の形状を有するフレーム体11を備える。このフレーム体11は、内面管110の内周長よりも短い外周長を有し、本実施の形態では、フレーム体11を内面管110の内周方向に沿って配置すると間隙を介して互いに対向する端部11a、11aを有して形成される。
【0036】
このフレーム体11は、内面管110の内周方向に伸長するように内面管110の内部に配置され、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aを押し拡げて互いに離間させてフレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧した状態で、端部11a、11aの間に介装部材となるスペーサ16が挿入され、端部11a、11aによってスペーサ16が挟持保持される。
【0037】
スペーサ16がフレーム体11の端部11a、11aの間に挿入されて端部11a、11aによって挟持されている状態で、端部11a、11a間が結合される。これにより、フレーム体11が一体化されて、内面管110の内径方向から外径方向に向かってフレーム体11が内面管110の内周方向の内壁部110aを十分に押圧するアーチ状態が保持され、内面管110が、支保工装置10によって内面管110の内部から支持される。
【0038】
次に、本実施の形態に係る支保工装置10の各部の具体的構成について説明する。
【0039】
フレーム体11は、図1で示したように、複数のフレーム体構成片11−1〜11−4が連結されて形成される。このフレーム体構成片11−1〜11−4は、支保工装置10が設置される内面管110の内径の相違に合わせてフレーム体長を調整できるように、種々の長さのものが予め形成されている。本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4は、いずれもほぼ同じ長さのものが4本用いられている。このフレーム体構成片11−1〜11−4は、本実施の形態では、金属製で中空断面環状に形成され、例えば、建設工事現場の足場材として用いられる鉄管等を用いて簡易に構成することができる。フレーム体構成片11−1〜11−4は、各フレーム体構成片11−1〜11−4の端部に設けられた連結部14においてそれぞれ連結される。
【0040】
図2は、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部に設けられた連結部14の概略を説明する図である。図2(a)で示すように、連結部14は、本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部における一端側に、フレーム体構成片11−1〜11−4の端部における他端側に嵌合する突起部14aを有する。なお、内面管110の内径は、各現場でそれぞれ異なることから、図2(b)で示すように、連結部14にスペーサ15を介在させて、フレーム体11のフレーム体長を微調整して設置対象となる内面管110の内径に合わせるように構成してもよい。
【0041】
図3は、本実施の形態に係る結合部及びスペーサ16の概略を説明する図である。図3(a)で示すように、スペーサ16が挿入される対向する端部11a、11aには、正面視略矩形に形成された板状の接合プレート18、18がフレーム体11の伸長方向と交差する方向に設けられる。フレーム体11が内面管110の内壁部110aに設けられた状態において、接合プレート18、18が互いに対向する。この接合プレート18、18には、複数の結合孔18aが穿孔されている。
【0042】
図3(b)は、図3(a)のIV−IV線断面図である。図示のように、接合プレート18、18の間には、正面視略矩形に形成された接合プレート18、18の形状に倣って形成されたスペーサ16が挿入される。このスペーサ16には、スペーサ16が接合プレート18、18の間に挿入された状態で接合プレート18、18に穿孔された複数の結合孔18aと重なって連通する連通孔16aが穿孔されている。
【0043】
スペーサ16が接合プレート18、18の間に挿入された状態で、結合孔18aと連通孔16aとが連通し、結合孔18aから挿入されたボルト19aにナット19bが締結されることで、フレーム体11の対向する端部11a、11aの間が結合される。この接合プレート18、18とボルト19a及びナット19bによって、結合部が構成される。
【0044】
なお、結合部は、本実施の形態では、図1の矢線Aで示すフレーム体11のA位置に形成されているが、例えば、矢線B〜Gで示すフレーム体11のB〜G位置に形成してもよい。すなわち、支保工装置10を内面管110内に設置しやすい所望の位置に、結合部を形成することができる。
【0045】
次に、図4〜図6、図14に基づいて、支保工装置10を内面管110の内部に取り付ける方法について説明する。なお、本実施の形態では、内面管110の伸長方向に所定間隔をおいて支保工装置10を複数配置し、それぞれの支保工装置10を連結部材で連結する場合について説明する。
【0046】
まず、図14で示したように、内面管110を形成する。この内面管110の形成は、一定の区間、例えば、一のマンホールと他のマンホールとの間で行い、順次、次の区間に進んでいく。
【0047】
内面管110の形成に続いて、フレーム体構成片11−1〜11−4を内面管110内に搬入する。フレーム体構成片11−1〜11−4の内面管110内への搬入に先立ち、内面管110の内径に合わせてフレーム体構成片11−1〜11−4を形成あるいは選択しておく。
【0048】
本実施の形態では、フレーム体構成片11−1〜11−4は、図4で示すように、突起部14aが形成されたパイプ管12及び十字継手13によって形成される。十字継手13は、パイプ管12を上下方向に連結する上部連結部13a及び下部連結部13bと、上部連結部13a及び下部連結部13bと直交する方向に突出する側部連結部13cとを有して形成される。
【0049】
まず、一の十字継手13の下部連結部13bと他の十字継手13の上部連結部13aとをパイプ管12を介して連結する。そして、一の十字継手13の上部連結部13aにパイプ管12を連結し、他の十字継手13の下部連結部13bにパイプ管12を連結して、フレーム体構成片11−1を形成する。
【0050】
なお、図4では、フレーム体構成片11−1を形成する場合を例として説明したが、フレーム体構成片11−2〜11−4も同様に形成されることから、その説明を省略する。
【0051】
内面管110内に搬入したフレーム体構成片11−1〜11−4を連結してフレーム体11を形成し、内面管110を形成した一定の区間に亘って、フレーム体11を、内面管110の伸長方向で所定の間隔(例えば1m〜2m)をおいて複数箇所に配設する。
【0052】
図5で示すように、本実施の形態では、内面管110の伸長方向で所定の間隔をおいて複数配置されたフレーム体11同士を、内面管110の伸長方向に伸長する連結部材20を用いて連結する。本実施の形態では、一のフレーム体11に設けられた十字継手13の側部連結部13cと他のフレーム体11に設けられた十字継手13の側部連結部13cとを連結部材20で連結して、内面管110の前後方向に配置された複数のフレーム体11を互いに連結する。本実施の形態では、8個の十字継手13が用いられてフレーム体11が形成されていることから、一のフレーム体11と他のフレーム体11とを8本の連結部材20で連結する。これにより、連結部材20が内面管110をその伸長方向に沿って押圧して内面管110を支持するとともに、フレーム体11の互いの傾倒が抑制される。
【0053】
次に、図6(a)で示すように、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aに設けられて互いに対向する接合プレート18、18を、図6(b)で示すように互いに離間させる。接合プレート18、18の離間は、図示しない公知の手動のジャッキ機構等によって実行される。接合プレート18、18の離間によって、フレーム体長が長尺状に形成されたことに起因してフレーム体11が拡径し、内面管110の内壁部110aを押圧する。この状態で、互いに離間した接合プレート18、18の間にスペーサ16を挿入する。このとき、図6(c)で示すように、接合プレート18、18に穿孔された結合孔18aとスペーサ16に穿孔された連通孔16aとを重ね合わせて結合孔18aと連通孔16aとを連通させ、結合孔18aからボルト19aを挿入する。図6(d)で示すように、挿入したボルト19aをナット19bで締結する。これにより、フレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧した状態で支保工装置10が内面管110の内部に設置され、内面管110がその内部から支保工装置10によって支持される。
【0054】
すなわち、内面管110は、支保工装置10のフレーム体11が内面管110の内壁部110aを内面管110の内径方向から外径方向に押圧することにより、及び連結部材20が内面管110の伸長方向に沿って内面管110の内径方向から外径方向に内面管110の内壁部110aを押圧することによって支持される。
【0055】
支保工装置10を、内面管110が設けられた一定区間に亘って設置した後、図13で示したように、螺旋管製管機120を介して内面管110と下水管路112との間に裏込め材mを圧力注入する。このとき、内面管110はその内部から支保工装置10によって支持されていることから、裏込め材mを注入する際の圧力によっても、内面管110が下水管路112から離間して変形したり浮き上がったりすることが抑制される。従って、内面管110が支保工装置10によって抑えこまれることから、注入された裏込め材mによって内面管110と下水管路112とが安定して一体化され、更生品質が向上される。
【0056】
裏込め材mが硬化して内面管110と下水管路112とが一体形成された後、支保工装置10を解体する。そして、下水管路112における次の区間において内面管110を設け、上記同様の手順によって支保工装置10を設置し、内面管110と下水管路112とを一体形成する。
【0057】
上記構成を有する支保工装置10によれば、中空断面環状のフレーム体11と、接合プレート18、18及びボルト19a、ナット19bで構成される結合部とで構成することができ、部材点数を抑制したうえで簡易な構成によって形成することができる。従って、繰り返しの使用によっても、不備が発生して支保工装置10が損傷する可能性が低減され、長期に亘って安定的に支保工装置10を用いることができる。
【0058】
支保工装置10を内面管110の内部に取り付けるに際しては、互いに対向する接合プレート18、18を押し拡げて離間させてフレーム体11を拡径させることで、フレーム体11によって内面管110の内壁部110aを容易に押圧することができ、離間した接合プレート18、18の間にスペーサ16を挿入してフレーム体11が内面管110の内壁部110aを十分に押圧したアーチ状態を保持することができる。この状態で、スペーサ16を介して接合プレート18、18を固定することによって、支保工装置10を内面管110の内部に設置することができる。
【0059】
すなわち、支保工装置10は、上記のような簡易な構造によって形成され、通常の支保工装置で必要とされる腹起し材や、腹起し材を内面管の内壁部に押圧するシリンダ等を設ける必要がなく、内面管110の内周方向の内壁部110aに沿って伸長するフレーム体11を撓ませて内面管110の内壁部110aを押圧して、フレーム体11のその状態を保持させるという容易な取付方法によって、支保工装置10を内面管110内に設置することができる。
【0060】
しかも、支保工装置10は、フレーム体11の互いに対向する端部11a、11aに設けられた接合プレート18、18を押し拡げて離間させることで内面管110の内壁部110aを押圧することから、内面管110の内壁部110aを押圧するために内面管110の内径方向に突出する構成部材を設ける必要がない。従って、内面管110内の下水の流下を阻害することもない。更に、作業員が内面管110内を歩行する際に支障を生じさせることがなくなり、かつ作業スペースの確保を十分に行うことができる。
【0061】
支保工装置10は、フレーム体11がフレーム体構成片11−1〜11−4によって構成され、フレーム体構成片は、設置対象となる内面管110の内径に合わせてフレーム体長を調整することができるように、種々の長さのものが予め形成されていることから、形成された設置対象となる内面管110の内径に合わせてフレーム体構成片を選択することによって、容易にフレーム体長を設定することができる。
【0062】
また、予め形成したフレーム体構成片の長さによってフレーム体長を調整するのみならず、接合プレート18、18の間に挿入されるスペーサ16や、連結部14に介在させるスペーサ15の厚みを増減させたものを予め種々準備しておき、フレーム体長を微調整することもできる。
【0063】
内面管110の延在方向で所定の間隔をおいて複数箇所に配設された支保工装置10が、連結部材20によって、内面管110内で前後方向に配設されたフレーム体11と連結されることから、フレーム体11を拡径させることでフレーム体11が内面管110の内壁部110aを押圧することに追従して、連結部材20が内面管110の伸長方向に沿って内面管110の内径方向から外径方向に内面管110を押圧する。従って、内面管110を確実に押圧するとともに、内面管110の伸長方向に複数配置されるフレーム体11の数を抑制することができ、支保工装置10の設置コストを抑制することができる。
【0064】
更に、連結部材20によって、それぞれのフレーム体11の傾倒が抑制される。従って、内面管110と下水管路112とが裏込め材によって一体的に形成される際に、連結部材20によって前後方向で連結されたフレーム体11によって、内面管110が安定して支持されることから、下水管路112の更生品質が向上する。
【0065】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、図7で示すように、伸長方向と直交する方向の断面形状が略矩形の下水管路112に合わせて断面略矩形に形成された内面管110を支持する場合にも、支保工装置30のフレーム体31あるいはフレーム体構成片31−1〜31−8の形状を、内面管110の伸長方向と直交する方向の断面の形状(略矩形)に倣って断面略矩形の形状を有するフレーム体31を形成することで適用することができる。
【0066】
この場合、図7で示すように、フレーム体構成片31−1〜31−8で形成されたフレーム体31の任意の連結部34の複数箇所を、スペーサ16が挿入される互いに対向する端部31a、31aとして形成し、接合プレート18、18を設けてもよい。本例では、断面略矩形の内面管110において、フレーム体31の屈曲部分にフレーム体31を押し拡げる方向に発生する作用力が及ぶように、任意の2カ所に接合プレート18、18を設けることで、フレーム体31による内面管110の内周方向の内壁部110aの押圧を容易に行うことができる。
【0067】
また、図8で示すように、伸長方向と直交する方向の断面形状が馬蹄形に形成された内面管110を支持する場合にも、支保工装置40のフレーム体41あるいはフレーム体構成片41−1〜41−7の形状を、内面管110の伸長方向と直交する方向の断面の形状(馬蹄形)に倣って断面略馬蹄形の形状を有するフレーム体41を形成することで適用することができる。
【0068】
この場合、図8で示すように、フレーム体構成片41−1〜41−7で形成されたフレーム体41の任意の連結部44の複数箇所を、スペーサ16が挿入される互いに対向する端部41a、41aとして形成し、接合プレート18、18を設けてもよい。本例では、断面略馬蹄形の内面管110aにおいて、フレーム体41の屈曲部分にフレーム体41を押し拡げる方向に発生する作用力が及ぶように、任意の2カ所に接合プレート18、18を設けることで、フレーム体41による内面管110の内周方向の内壁部110aの押圧を容易に行うことができる。
【0069】
また、図9で示すように、フレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4の外周部分や連結部材20の外周部分、すなわち内面管110の内壁部110aを押圧する部分に板状のプレート22を介在させて、このプレート22で内面管110の内壁部110aを押圧するように構成してもよい。これにより、フレーム体11にプレート22を設けていない場合に比べて、内面管110の内壁部110aを押圧する面積を広げることができ、フレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4の外周部分が押圧する内壁部110aの応力集中を回避した上で、内面管110をその内周方向に沿って更に確実に支持することができる。なお、プレート22は、溶接等によってフレーム体11あるいはフレーム体構成片11−1〜11−4等に結合することもできる。
【0070】
上記実施の形態では、フレーム体11、31、41及び各フレーム体構成片11−1〜11−4、31−1〜31−8、41−1〜41−7の断面形状が中空環状に形成された場合を説明したが、図10(a)で示すように、断面中空略矩形状に形成することもでき、図10(b)で示すように、断面中空略三角形状に形成することもできる。なお、この場合であっても、図9で示したプレート22をフレーム体及び各フレーム体構成片の外周部分に設けてもよい。
【0071】
また、図11で示すように、フレーム体11の内径方向から外径方向に突出する長尺状のねじ棒で形成された反力部材24をフレーム体11に設け、この反力部材24で内面管110を貫通させて下水管路112の内壁部に反力部材24を当接させるように構成してもよい。これにより、下水管路112内において内面管110が浮き上がることをより的確に防止し、下水管路112の管底に内面管110を高精度に位置決めして、下水管路112の更生を実現することができる。この場合、図11で示すように、反力部材24を複数箇所に設けて、下水管路112内における内面管110の位置合わせを制御するように構成してもよい。
【0072】
内面管110の位置合わせは、図11で示した場合に限られない。例えば、反力部材24を、内面管110の内周方向に沿って均等な間隔をおいて複数設けることによって、内面管110を、下水管路112と略同軸上に配置するように位置合わせをしてもよい。
【0073】
図12で示すように、フレーム体11の端部11a、11aのうち、一方の端部を他方の端部に対して小径に形成し、一方の端部を他方の端部側に嵌め込むように構成してもよい。この場合、図示のように、それぞれの端部11a、11aに結合孔11bを複数形成しておき、それぞれの端部11a、11aの結合孔11bを重ね合わせてボルト19aを挿入してナット19bで締結することで、フレーム体11の端部11a、11aの間を結合することができる。この場合、結合孔11b、ボルト19a及びナット19bによって、結合部が構成される。
【0074】
上記実施の形態では、フレーム体11の端部11a、11aに接合プレート18、18が設けられた場合を説明したが、例えば、図13で示すように、フレーム体11に、一端側が右ねじにネジ切りされるとともに他端側が左ねじにネジ切りされたネジ棒26a、及びネジ棒26aに螺合するスペーサ26bを有するジョイント機構26を、フレーム体11の端部11a、11aの間に介在させてもよい。スペーサ26bをネジ棒26a上で往復移動させることによって、フレーム体11を拡径することができる。これにより、手動のジャッキ機構等の別部材を用いてフレーム体11の拡径を行う必要がなくなり、作業効率が向上する。この場合、スペーサ26bによって介装部材が構成される。
【0075】
また、上記実施の形態では、フレーム体11の連結部14にスペーサ15を介在させてフレーム体11のフレーム体長を微調整する場合を説明したが、ジョイント機構26をフレーム体11の連結部14に設け、スペーサ26bをネジ棒26a上で往復移動させることによって、フレーム体11の伸縮が可能となる。従って、フレーム体11のフレーム体長の微調整幅を広げることができ、支保工装置10の汎用性が拡大する。
【0076】
上記実施の形態では、フレーム体11が各フレーム体構成片11−1〜11−4を連結して形成する場合を説明したが、単体のフレーム体によって、内面管110の内周方向の内壁部110aに沿って伸長するように構成してもよい。
【0077】
上記実施の形態では、既設管路が下水管路112である場合を説明したが、例えば、農業用水用管路を更生する場合にも適用することができる。すなわち、既設管路と内面管との間に高圧で裏込め材を注入する管路の更生方法であれば、どのような既設管路であっても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10、30、40 支保工装置
11、31、41 フレーム体
11a、11a 端部
11−1〜11−4 フレーム体構成片
14、34、44 連結部
16 スペーサ(介装部材)
18、18 接合プレート(結合部)
19a ボルト(結合部)
19b ナット(結合部)
20 連結部材
22 プレート
100 プロファイル
110 内面管
110a 内壁部
112 下水管路(既設管路)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する内面管の支保工装置において、
前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体と、
該フレーム体を内周方向に伸長するように設置した状態で前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に挿入される介装部材と、
該介装部材の挿入状態で前記端部の間を結合する結合部と、
を備えることを特徴とする内面管の支保工装置。
【請求項2】
前記フレーム体の端部が互いに対向して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内面管の支保工装置。
【請求項3】
前記フレーム体は、
複数のフレーム体構成片が連結されて形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の内面管の支保工装置。
【請求項4】
前記介装部材が挿入される前記端部が複数形成されたことを特徴とする請求項3に記載の内面管の支保工装置。
【請求項5】
前記フレーム体の設置は、
前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に設置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置。
【請求項6】
前記複数箇所に設置されたフレーム体が前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結されたことを特徴とする請求項5に記載の内面管の支保工装置。
【請求項7】
前記結合部は、
前記介装部材が挿入される前記互いに対向する端部にそれぞれ設けられた板状の接合プレートを有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置。
【請求項8】
既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する支保工装置の取付方法において、
前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体を内周方向に伸長するように前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に配置し、
該複数箇所に配置したフレーム体を前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結し、
前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に介装部材を挿入して該端部で前記介装部材を挟持させ、
該介装部材が前記端部に挟持された状態で該端部の間を結合する、
ことを特徴とする支保工装置の取付方法。
【請求項1】
既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する内面管の支保工装置において、
前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体と、
該フレーム体を内周方向に伸長するように設置した状態で前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に挿入される介装部材と、
該介装部材の挿入状態で前記端部の間を結合する結合部と、
を備えることを特徴とする内面管の支保工装置。
【請求項2】
前記フレーム体の端部が互いに対向して形成されたことを特徴とする請求項1に記載の内面管の支保工装置。
【請求項3】
前記フレーム体は、
複数のフレーム体構成片が連結されて形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の内面管の支保工装置。
【請求項4】
前記介装部材が挿入される前記端部が複数形成されたことを特徴とする請求項3に記載の内面管の支保工装置。
【請求項5】
前記フレーム体の設置は、
前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に設置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置。
【請求項6】
前記複数箇所に設置されたフレーム体が前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結されたことを特徴とする請求項5に記載の内面管の支保工装置。
【請求項7】
前記結合部は、
前記介装部材が挿入される前記互いに対向する端部にそれぞれ設けられた板状の接合プレートを有することを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の内面管の支保工装置。
【請求項8】
既設管路内への内面管の形成過程で該内面管を内部から支持する支保工装置の取付方法において、
前記内面管の伸長方向と直交する断面の内周形状に倣った形状を有し、かつ前記内面管の内周長よりも短い外周長を有するフレーム体を内周方向に伸長するように前記内面管の伸長方向に間隔をおいて複数箇所に配置し、
該複数箇所に配置したフレーム体を前記内面管の伸長方向に伸長する連結部材で互いに連結し、
前記フレーム体を押し拡げて該フレーム体の端部の間に介装部材を挿入して該端部で前記介装部材を挟持させ、
該介装部材が前記端部に挟持された状態で該端部の間を結合する、
ことを特徴とする支保工装置の取付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−2133(P2013−2133A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133900(P2011−133900)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(595053777)吉佳エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(595053777)吉佳エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
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