説明

円板型排ワラカッタ

【課題】 受刃軸に円板状の受刃を並列装備した回転受刃と、円板状の切刃を並列装備した回転切断刃とを対向してカッタケースに軸支するとともに、前記受刃軸にスクレーパを相対回動可能に遊嵌装備した円板型排ワラカッタにおいて、カッタケースからの回転受刃の脱着を容易に行えるようにする。
【解決手段】 受刃軸14に遊嵌したスクレーパ20の端部をカッタケース10に備えた固定部Pに係合して、スクレーパ20の受刃軸14との共回りを阻止するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載された脱穀装置の後部に装着される円板型排ワラカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
円板型排ワラカッタは、受刃軸に円板状の受刃を並列装備した回転受刃と、円板状の切刃を並列装備した回転切断刃とを対向配備して構成されており、回転受刃でのワラ屑の巻き付きを防止するために、受刃軸にスクレーパを相対回動可能に外嵌するとともに、カッタケースにおけるカッタ側板に横架したロッドを各スクレーパに貫通させることで、スクレーパが受刃軸と共回りすることを阻止するよう構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−313673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来構造によると、点検整備、等のために回転受刃をカッタケースから脱着する際に、スクレーパを貫通支持したロッドもカッタケースから脱着する必要があり、点検整備に手数がかかるものとなっていた。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、カッタケースからの回転受刃の脱着を容易に行えるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、受刃軸に円板状の受刃を並列装備した回転受刃と、切断軸に円板状の切刃を並列装備した回転切断刃とを対向してカッタケースに軸支するとともに、前記受刃軸にスクレーパを相対回動可能に遊嵌装備した円板型排ワラカッタにおいて、
前記スクレーパの端部を前記カッタケースに備えた固定部に係合して、スクレーパの受刃軸との共回りを阻止するよう構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、回転受刃を切断用位置から移動させると、回転受刃と一体に移動するスクレーパはカッタケースの固定部から離れて係合が解除されることになる。カッタケースから取外した回転受刃を切断用位置に移動させる際に、スクレーパを所定の姿勢にして回転受刃と共に移動させることで、スクレーパの端部をカッタケースの固定部に係合させることができる。
従って、第1の発明によると、点検整備、等のために回転受刃をカッタケースから脱着する際に、スクレーパの回り止めを解除するための特別な連結解除操作や連結操作が不要であり、カッタケースからの回転受刃の脱着を容易に行えるようなった。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、
回転受刃に近接対向するケース壁を固定部としてあるものである。
【0008】
上記構成によると、既存の部材であるケース壁を固定部として兼用することができて、スクレーパの共回りを防止するための特別な部材が不要となり、スクレーパの共回りを防止するための構造の簡素化および部品点数の節減に有効となる。
【0009】
第3の発明は、上記第2の発明において、
ケース壁に形成した係合孔にスクレーパの端部を挿通係合して、スクレーパの受刃軸との共回りを阻止するように構成してあるものである。
【0010】
上記構成によると、ケース壁の打抜きプレス加工時に係合孔を同時に打抜き加工することが可能となり、部品加工コストの低減に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、自脱型のコンバインに搭載される脱穀装置1の縦断した側面が示されている。この脱穀装置1は、図外左方の刈取り部から搬送されてきた横倒れ姿勢の刈取り穀稈をフィードチェーン2で受取り、その穂部を扱室3に挿入した状態で図中左方から右方に挟持搬送することで、扱室3に駆動回転可能に軸支した扱胴4によって脱穀処理し、脱穀処理物を扱室下方の選別部5で選別処理し、穀粒を1番回収部6に回収して機外に搬出するとともに、2番物を2番回収部7に回収した後、選別部5の前部に還元搬送して再度の選別処理を行い、扱室3の後端から搬出された脱穀処理後の排ワラを排ワラ搬送装置8に受け渡して排ワラカッタ9に供給するよう構成されている。
【0012】
図6,図7に示すように、脱穀装置1の前側板1aには扱胴4の支軸30が貫通支承されており、この支軸30に回転動力を伝達するベルト伝動機構31が前側板1aの前方に配備されるとともに、ベルト伝動機構31を覆う前カバー32が設けられている。この前カバー32は上部支点xを中心に上下揺動可能に支持されており、前カバー32を振り上げ開放してベルト伝動機構31を容易に点検整備することができるようになっている。
【0013】
前記排ワラカッタ9は、上下に開放されたカッタケース10における左右のケース側壁10aに亘って回転受刃11と回転切断刃12とを前後所定間隔をもって左右水平に対向軸支して、互いに内向きに回転駆動するよう構成した円板型排ワラカッタが利用されており、カッタケース10の上部後寄り箇所には排ワラ流路切換え用の案内カバー13が後部支点a周りに上下揺動可能に配備されている。
【0014】
図3に示すように、前記案内カバー13を起立揺動した細断用姿勢に保持してカッタ入口Cを開放することで、前記排ワラ搬送装置8から放出供給された排ワラを回転受刃11と回転切断刃12の間に横倒れ姿勢で供給して細断処理することができ、図1に示すように、案内カバー13を前方に倒した放出用姿勢に保持してカッタ入口Cを閉じることで、排ワラを案内カバー13の上面に沿って後方に流して長ワラのまま放出することができるようになっている。
【0015】
回転受刃11は、左右のケース側壁10aに亘って水平支承されて後向きに低速駆動される六角軸からなる受刃軸14に、円板状の受刃15が軸心方向に所定の細断ピッチをもって並列装着されるとともに、各受刃15の軸心方向一側部に小間隔をもってギヤ状の掻込み板16が配備された構造となっている。回転切断刃12は、前記受刃軸14の後方においてケース側壁10aに水平支承されて前向きに高速駆動される六角軸からなる切断軸17に所定の細断ピッチをもって円板状の切刃18が取付けられた構造となっており、各切刃18が回転受刃11における各受刃15と掻込み板16との間に入り込むように、回転受刃11と回転切断刃12とが所定の軸間距離をもって平行に対向配置されている。
【0016】
回転受刃11における各受刃15と掻込み板16との間には、受刃軸14へワラ屑が巻き付くのを防止するためにスクレーパ20が相対回転可能に外嵌されている。このスクレーパ20は樹脂製の厚板材から形成されており、先細り状に形成された前端部が、カッタケース10における前方のケース壁10bに形成された係合孔21に後方から貫通係合され、カッタケース10における固定部Pとしてのケース壁10bとスクレーパ20との係合によって、スクレーパ20が受刃軸14と共回りすることが阻止されるようになっている。
【0017】
本発明に係る円板型排ワラカッタ9は以上のように構成されており、点検整備、等のために回転受刃11をカッタケース10から取外す場合、ケース側壁10aに対する受け刃軸14の支持を解除した回転受刃11をスクレーパ20と共に一旦後方に移動し、各スクレーパ20の前端部をケース壁10bの係合孔21から離脱させ、その後、回転受刃11をカッタケース10の外に取り出す。
【0018】
取外した回転受刃11をカッタケース10に装着する際には、左右のケース側壁10aの間に入り込ませた回転受刃11を一旦前方に動かして、各スクレーパ20の前端部をケース壁10bの係合孔21に差し入れ、その後、ケース側壁10aに対して受刃軸14を位置決めして軸支する。
【0019】
〔他の実施例〕
(1)図8に示すように、前記スクレーパ20の前端部に前向きに開口したスリット22を形成するとともに、ケース壁10bから舌片23を後向きに切り起こし、カッタケース10に備えた固定部Pとしての舌片23に前記スリット22を後方から係合させて、スクレーパ20の共回り阻止構造とすることもできる。
【0020】
(2)図9に示すように、前記スクレーパ20の前端部に前向きに開口した凹部24を形成するとともに、ケース壁10bから突起25を後向きに膨出形成して、カッタケース10に備えた固定部Pとしての突起25に前記凹部24を後方から係合させて、スクレーパ20の共回り阻止構造とすることもできる。
【0021】
(3)図10に示すように、前記スクレーパ20の前端部に前向きに開口した凹部24を形成するとともに、カッタケース10における左右のケース壁10bに亘って支持ロッド26を架設し、カッタケース10に備えた固定部Pとしての支持ロッド26に前記凹部24を後方から係合させて、スクレーパ20の共回り阻止構造とすることもできる。
【0022】
(4)図11に示すように、カッタケース10に備えた固定部Pとしてのケース壁10bの内面に前記スクレーパ20の前端縁を接当係合させて、スクレーパ20の共回り阻止構造とすることもできる。
【0023】
(5)回転受刃11が回転切断刃12の後方に配備される仕様においては、カッタケース10の後側のケース壁に固定部Pを備え、受刃軸14に遊嵌装備した前記スクレーパ20の後端部をその固定部Pに係合させて、スクレーパ20の受刃軸14との共回りを阻止するよう構成すればよい。
【0024】
(6)図12,図13に示すように、脱穀装置1の前部に配備する前カバー32を、穀稈穂先側の縦向き支点y周りに前方へ揺動開放可能に構成して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】脱穀装置の縦断側面図
【図2】排ワラカッタの平面図
【図3】排ワラカッタの縦断側面図
【図4】回転受刃における株元側の一部を示す縦断背面図
【図5】回転受刃における穂先側の一部を示す縦断背面図
【図6】脱穀装置前部の前カバー開閉構造を示す縦断側面図
【図7】脱穀装置前部の正面図
【図8】スクレーパの別実施例を示す側面図
【図9】スクレーパの別実施例を示す側面図
【図10】スクレーパの別実施例を示す側面図
【図11】スクレーパの別実施例を示す側面図
【図12】脱穀装置前部の前カバー開閉構造の別実施例を示す縦断側面図
【図13】別実施例における脱穀装置前部の正面図
【符号の説明】
【0026】
10 カッタケース
10b ケース壁
11 回転受刃
12 回転切断刃
14 受刃軸
15 受刃
17 切断軸
18 切刃
20 スクレーパ
21 係合孔
P 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受刃軸に円板状の受刃を並列装備した回転受刃と、切断軸に円板状の切刃を並列装備した回転切断刃とを対向してカッタケースに軸支するとともに、前記受刃軸にスクレーパを相対回動可能に遊嵌装備した円板型排ワラカッタにおいて、
前記スクレーパの端部を前記カッタケースに備えた固定部に係合して、スクレーパの受刃軸との共回りを阻止するよう構成してあることを特徴とする円板型排ワラカッタ。
【請求項2】
前記回転受刃に近接対向するケース壁を前記固定部としてある請求項1記載の円板型排ワラカッタ。
【請求項3】
前記ケース壁に形成した係合孔に前記スクレーパの端部を挿通係合して、前記スクレーパの受刃軸との共回りを阻止するように構成してある請求項2記載の円板型排ワラカッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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