説明

円筒状印刷原版成形装置

【課題】円筒状支持体上にシート状樹脂を接着し、円筒状印刷原版を生産性高く、しかも厚み精度高く製造するための円筒状印刷原版成形装置を提供すること。
【解決手段】円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着するための円筒状印刷原版成形装置であって、
(1)光硬化性接着剤層を表面に有する前記円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構と、
(2)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、前記円筒状支持体(a)の表面との間隔を変化させる機構と、
(3)前記光線透過性スリットを通して光を照射し、前記機構(2)内に配設される光源と、
(4)前記板状物または円筒状物と前記円筒状支持体(a)の間に前記シート状樹脂を挟み、前記板状物または円筒状物を通して、前記シート状樹脂と前記円筒状支持体(a)との間に存在する前記光硬化性接着剤層に、前記光源からの光を集光するための光学系と、を備える円筒状印刷原版成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状印刷原版成形装置に関する。本発明は、具体的には、光を用いて円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着する円筒状印刷原版成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびレタープレス印刷といった樹脂凸版を製造する場合や、エンボス加工等の表面加工を行う場合において、樹脂層表面にレーザー光を照射して照射された部分の樹脂が除去されることにより表面に凹凸パターンを形成するレーザー彫刻法が用いられるようになってきた。
レーザー彫刻法に適用される印刷版の材料としては、加硫ゴム、感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる感光性樹脂硬化物、および熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる熱硬化性樹脂硬化物が用いられている。特に、近年、処理時間の短縮の観点から、感光性樹脂硬化物をレーザー彫刻する技術が増えてきた。
【0003】
特許文献1には、シート状感光性樹脂を円筒状支持体に巻き付け、端部を溶着して円筒状印刷原版を製造する方法の記載がある。この方法では、一連の作業中、シート状感光性樹脂は未硬化状態であるため、作業中に手が表面に触れたり、シート状感光性樹脂が他の物体と接触したりすることにより、厚み精度の低下がもたらされる。また、厚み精度を確保するために円筒状に成形した後に、表面に熱カレンダー処理や研磨を実施する、さらなる表面調整工程が必要となる。特に印刷技術分野においては、印刷版の厚み精度を確保することが極めて重要となる。
【0004】
【特許文献1】特許第2846954号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着し、円筒状印刷原版を生産性高く、しかも厚み精度高く製造するための装置が強く求められていたが、従来技術では、そのような装置は存在していなかった。
本発明が解決しようとする課題は、生産性高く、しかも厚み精度高く、円筒状支持体上にシート状樹脂を接着して円筒状印刷原版を製造するための円筒状印刷原版成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着するための円筒状印刷原版成形装置が、(1)光硬化性接着剤層を表面に有する前記円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構と、(2)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、前記円筒状支持体(a)の表面との間隔を変化させる機構と、(3)前記光線透過性スリットを通して光を照射し、前記機構(2)内に配設される光源と、(4)前記板状物または円筒状物と前記円筒状支持体(a)の間に前記シート状樹脂を挟み、前記板状物または円筒状物を通して、前記シート状樹脂と前記円筒状支持体(a)との間に存在する前記光硬化性接着剤層に、前記光源からの光を集光するための光学系と、を備えることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は以下の通りである。
1.
円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着するための円筒状印刷原版成形装置であって、
(1)光硬化性接着剤層を表面に有する前記円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構と、
(2)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、前記円筒状支持体(a)の表面との間隔を変化させる機構と、
(3)前記光線透過性スリットを通して光を照射し、前記機構(2)内に配設される光源と、
(4)前記板状物または円筒状物と前記円筒状支持体(a)の間に前記シート状樹脂を挟み、前記板状物または円筒状物を通して、前記シート状樹脂と前記円筒状支持体(a)との間に存在する前記光硬化性接着剤層に、前記光源からの光を集光するための光学系と、を備える円筒状印刷原版成形装置。
2.
前記光源が、波長200nm以上400nm以下の光線を発する光源である、1.に記載の円筒状印刷原版成形装置。
3.
前記光線透過性スリットの幅が、0.5mm以上20mm以下である、1.または2.に記載の円筒状印刷原版成形装置。
4.
前記円筒状支持体(a)が、繊維強化プラスチック製または金属製の中空円筒状支持体であり、
前記機構(1)が、金属、ゴム、およびプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなるシリンダー状物を有する、1.から3.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
5.
前記光学系(4)が、集光レンズと、該集光レンズと前記円筒状支持体(a)の表面との距離を変化させる機構と、を有する、1.から4.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
6.
前記板状物または円筒状物が、石英ガラスからなり、波長350nmでの光線透過率が80%以上100%以下である、1.から5.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
7.
前記円筒状支持体(a)と、前記板状物または円筒状物と、が同期して動き、
前記円筒状支持体(a)と、前記シート状樹脂と、が常時接触している部分を有し、該接触している部分に光が照射される、1.から6.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
8.
1.から7.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置を用いて製造される円筒状印刷原版。
9.
円筒状支持体(a)と、前記円筒状支持体(a)上に接着されてなるシート状樹脂と、を有する円筒状印刷原版の製造方法であって、
(i)前記円筒状支持体(a)の表面に光硬化性接着剤層を形成する工程と、
(ii)前記光硬化性接着剤層の上に前記シート状樹脂を設置する工程と、
(iii)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物と、前記円筒状支持体(a)と、の間に前記シート状樹脂を挟む工程と、
(iv)前記光線透過性スリットを通して前記光硬化性接着剤層に光を照射する工程と、
(v)前記円筒状支持体(a)を回転させ、前記工程(iv)とは異なる位置で光を照射する工程と、を含む円筒状印刷原版の製造方法。
10.
前記シート状樹脂が、熱可塑性樹脂、感光性樹脂組成物、および熱硬化性樹脂組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなる、9.に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
11.
前記シート状樹脂が、熱可塑性樹脂からなるシート状支持体上に、感光性樹脂硬化物または熱硬化性樹脂硬化物が積層されるシート状印刷原版である、9.または10.に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
12.
前記感光性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、10.または11.に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
13.
前記円筒状印刷原版が、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、またはグラビア印刷で使用される円筒状印刷原版または円筒状印刷版である、9.から12.のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
14.
前記円筒状印刷原版が、レーザー彫刻用円筒状印刷原版である、13.に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着して円筒状印刷原版を生産性高く、しかも厚み精度高く製造するための円筒状印刷原版成形装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[円筒状印刷原版成形装置の概要]
本実施の形態の円筒状印刷原版成形装置は、円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着するための装置であって、
(1)光硬化性接着剤層を表面に有する前記円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構と、
(2)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、前記円筒状支持体(a)の表面との間隔を変化させる機構と、
(3)前記光線透過性スリットを通して光を照射し、前記機構(2)内に配設される光源と、
(4)前記板状物または円筒状物と前記円筒状支持体(a)の間に前記シート状樹脂を挟み、前記板状物または円筒状物を通して、前記シート状樹脂と前記円筒状支持体(a)との間に存在する前記光硬化性接着剤層に、前記光源からの光を集光するための光学系と、を備える円筒状印刷原版成形装置である。
【0011】
本実施の形態の円筒状印刷原版成形装置は、円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を設置して、その界面に存在する光硬化性接着剤層に光を照射することにより円筒状支持体(a)とシート状樹脂とを接着させる装置である。
【0012】
円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構(1)として、金属、ゴム、およびプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなるシリンダー状物を有することが好ましい。
該シリンダー状物として、円筒状支持体(a)が中空円筒状支持体の場合、エアーシリンダー、および円筒の外径を変化させる機構を有するエアーシャフト等の治具を挙げることができる。該治具を用いて円筒状支持体(a)を保持する。また、該冶具は、中空円筒状支持体を周方向へ回転させるための軸を有し、この軸を保持して該中空円筒状支持体を周方向へ回転させることが好ましい。
冶具にジャーナル等の軸部分が存在し、軸部分を保持して回転させるための回転機構を円筒状印刷原版成形装置が備えることが好ましい。回転機構としては、位置精度を確保するためにエンコーダーを有するステッピングモーターを挙げることができる。
【0013】
円筒状印刷原版成形装置は、光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、円筒状支持体(a)とシート状樹脂が接触するように、円筒状支持体(a)の表面と板状物または円筒状物との間隔を変化させる機構(2)を備える。
円筒状支持体(a)と板状物または円筒状物とに挟まれることにより、円筒状支持体(a)の表面(光硬化性接着剤層)とシート状樹脂とは接触することができる。
円筒状印刷原版成形装置は、作業性の観点から、円筒状支持体(a)の表面と、板状物または円筒状物と、の間の距離を変化させることができる機構を備える。円筒状支持体(a)の表面と、板状物または円筒状物と、の間隔を変化させる機構により、該間隔を狭めることにより、円筒状支持体(a)と、板状物または円筒状物と、に挟まれるシート樹脂は、円筒状支持体(a)と接触することができる。
【0014】
円筒状印刷原版成形装置において、光線透過性スリットを通して光を照射するため、円筒状支持体(a)とシート状樹脂が接触している部分を光硬化させることができる。光線透過性スリットは、円筒状支持体(a)の長軸に概ね平行なスリットを形成し、円筒状支持体(a)を回転させることにより、円筒状支持体(a)の円筒面上を全面的に光硬化させることができる。
【0015】
光線透過性のスリットを有する板状物または円筒状物は、波長350nmにおいて光線透過率は、80%以上100%以下であることが好ましい。板状物または円筒状支持体の350nmにおける光線透過率は、より好ましくは90%以上100%以下であり、さらに好ましくは95%以上100%以下である。
光線透過率が上記範囲内にあれば、照射される光のエネルギーを消失させることなく、光硬化性樹脂層において確保することができ、効率良く照射される光を円筒状支持体(a)とシート状樹脂との接着に用いることができる。
円筒状物として、中空円筒状のものが好ましく、板状物または円筒状物の厚さは0.1mm以上50mm以下であることが好ましい。板状物または円筒状物の厚さは、より好ましくは0.5mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは1mm以上5mm以下である。
板状物または円筒状物の厚さが上記範囲内にあれば、機械的な強度を十分に確保でき、過度に重量が重たくなく、板状物または円筒状物を使用することができる。
板状物または円筒状物の材質は、石英ガラスが好ましい。
【0016】
板状物または円筒状物上に形成される光線透過性スリット付き遮光部は、遮光性のあるものであれば用いる材料は特に限定されるものではない。
光透過性スリット付き遮光部の材料として、高い遮光性の確保の観点から、クロムおよびアルミニウム等の金属薄膜、またはカーボンブラックおよびグラファイト等の黒色顔料を含む有機系材料等を挙げることができる。
板状物の場合、シート状樹脂と接していない側の面に光線透過性スリット付き遮光部は設置されていることが好ましい。円筒状支持体(a)と、板状物と、が同期して動く場合は、光線透過性スリットが板状物の表面に固定されていると光線透過性スリットの位置も動いてしまうので、光線透過性スリットは、板状物とは別途、円筒状支持体(a)とシート状樹脂とが接触している部分の光透過性樹脂層に光を照射することができるように配置して固定されていることが好ましい。
円筒状物の場合、光線透過性スリット付き遮光部は円筒状物の内側に設置されていることが好ましい。また、円筒状物は、完全な円筒であってもよく、円筒の一部の円周部分からなる半円筒状の形状であってもよい。
【0017】
光線透過性スリットの幅は、好ましくは0.5mm以上20mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上10mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以上5mm以下である。
【0018】
円筒状印刷原版成形装置は、光線透過性スリットを通して光を照射し、機構(2)内に配設される光源(3)を備える。
光源(3)として、特に限定されるものではないが、光硬化性接着剤を光硬化させ、円筒状支持体(a)とシート状樹脂とを接着させることができるものであり、波長200nm以上400nm以下の光を発する光源が好ましい。
光源(3)としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、ケミカルランプ、および殺菌灯等を挙げることができる。
光源は、連続光源であっても、パルス光源であってもよい。光硬化性接着剤に照射される光のシート状樹脂表面において、波長350nmにおける照度が10mW/cm2以上2W/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは50mW/cm2以上500mW/cm2以下であり、さらに好ましくは80mW/cm2以上300mW/cm2以下である。
出力の高い光源を用いる場合、熱がこもらないように、円筒状印刷原版成形装置が吸気排気機構や水冷機構を備えていてもよい。
【0019】
円筒状印刷原版成形装置は、板状物または円筒状物と円筒状支持体(a)の間にシート状樹脂を挟み、板状物または円筒状物を通して、シート状樹脂と円筒状支持体との間に存在する光硬化性接着剤層に、光源からの光を集光するための光学系(4)を備える。
光学系(4)は、集光レンズを有し、該集光レンズと円筒状支持体(a)の表面との距離を変化させる機構とを有することが好ましい。光学系(4)は、光源内に配設されていてもよく、当該光源の表面に設置されていてもよい。
【0020】
円筒状支持体(a)の表面に有る光硬化性接着剤層とシート状樹脂との接触界面近傍に光の焦点を絞ることが好ましいため、光学系(4)の集光レンズの距離を変化させる機構や、円筒状支持体(a)の位置を変える機構(2)で、円筒状支持体(a)の表面と集光レンズとの間の距離を制御することが好ましい。
【0021】
円筒状支持体(a)とシート状樹脂を接着する箇所は、複数であることが好ましく、より好ましくは全面である。
円筒状支持体(a)の長軸方向に長尺であるランプから発する光を集光レンズで集光し光線透過性スリットを通して照射する場合、円筒状支持体(a)を回転させれば全面的に光硬化させることができる。
【0022】
円筒状印刷原版成形装置は、光を照射する位置を移動させる機構を備えることが好ましく、光源が点光源である場合、集光レンズが光学系の最後に配置されていることが一般的であるので、光を照射する位置を移動させる機構として、このレンズの位置を円筒状支持体(a)の長軸方向に動かす機構、集光レンズの前に光線を走査するためのガルバノミラーやポリゴンミラーを配置する機構等を挙げることができる。
光は、正確に長軸に沿って動かす必要はなく、概ね長軸方向に動かせればよい。また、円筒状支持体(a)は回転させて、周方向に光が照射される位置を変えることができる。光が照射される箇所は、円筒面内で隙間なく実施されても、少し間を空けて実施されてもよい。
【0023】
本実施の形態において、光線透過性の板状物または円筒状物と、円筒状支持体(a)と、が同期して動くことが好ましい。両者が同期して動くことによって、円筒状支持体(a)と、シート状樹脂と、を、常時、接触させることができるので、円筒状支持体(a)とシート状樹脂との間にボイドが入ることを防ぐことができる。
本実施の形態において、円筒状支持体(a)と、シート状樹脂と、が常時接触している部分を有し、該接触している部分に光が照射されることが好ましい。円筒状樹脂(a)と、シート状樹脂と、が常時、接触していることにより、厚み精度高く、円筒状支持体上にシート状樹脂を接着させることができる。
【0024】
本実施の形態の円筒状印刷原版成形装置を用いることにより、円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着することができる。本実施の形態において、以下に記載する円筒状支持体(a)とシート状樹脂とを用いることが好適である。
【0025】
[円筒状支持体(a)]
円筒状支持体(a)としては、金属製、ゴム製、またはプラスチック製のシリンダー、および金属製、プラスチック製、または繊維強化プラスチック製のスリーブ等の中空円筒状支持体等を挙げることができ、重量や取り扱いの観点から、中空円筒状支持体であることが好ましい。
金属性シリンダーまたは金属製スリーブを構成する材料として、アルミニウム、ニッケル、および鉄等の材料を挙げることができる。
プラスチック製シリンダーまたはプラスチック製スリーブを構成する材料として、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンチオエーテル、ポリスルホン、およびエポキシ樹脂等の材料を挙げることができる。
繊維強化プラスチック製スリーブを構成する繊維材料として、ポリエステル繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミックス繊維、および炭素繊維等の材料を挙げることができる。
ゴム製シリンダーを構成する材料として、EPDMゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、SBゴム、およびウレタンゴム等の材料を挙げることができる。
【0026】
円筒状支持体(a)が中空円筒状支持体の場合、中空円筒状支持体の厚さは0.2mm以上2mm以下であることが好ましい。中円筒状支持体の厚さは、より好ましくは0.3mm以上1.5mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上1mm以下である。
中空円筒状支持体の厚さが上記範囲内にあれば、前記機構(1)への装着が容易であり、折れたり割れたりせずに、充分に機械的強度を確保することができる。
【0027】
[シート状樹脂]
シート状樹脂は、熱可塑性樹脂、感光性樹脂組成物、および熱硬化性樹脂組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなることが好ましい。
シート状樹脂として、レーザー彫刻性、画像形成性、フレキシビリティー、機械的強度の確保の観点で、熱可塑性樹脂からなるシート状支持体上に、感光性樹脂硬化物または熱硬化性樹脂硬化物が積層されるシート状積層体であることが好ましい。
【0028】
本実施の形態において、感光性樹脂硬化物は感光性樹脂組成物を光硬化させて得られる樹脂硬化物であり、熱硬化性樹脂硬化物は、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる樹脂硬化物を意味する(以下、単に、感光性樹脂組成物および熱硬化性樹脂組成物を、「樹脂組成物」と、感光性樹脂硬化物および熱硬化性樹脂硬化物を、「樹脂硬化物」と記載する場合がある。)。
樹脂組成物として、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有していることが好ましい。
【0029】
円筒状印刷原版がフレキソ印刷用である場合には、樹脂組成物が、比較的硬度の低いポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体等の材料を含有していることが好ましい。
円筒状印刷原版がドライオフセット印刷またはグラビア印刷用である場合には、樹脂組成物が、比較的硬度の高いポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、およびポリカーボネート等の材料を含有していることが好ましい。
【0030】
シート状支持体としては、寸法安定性、軽量性、フレキシビリティー、平面平滑性の観点で、厚みが10μm以上500μm以下であることが好ましい。シート状支持体の厚みは、より好ましくは50μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。
シート状支持体の材料として、ニッケル、アルミニウム、または鉄等の金属と、ポリエステル、ポリアミド、およびポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種である熱可塑性樹脂と、を挙げることができる。
【0031】
シート状樹脂は、用いる光線を透過する材料であることが好ましく、使用する光線の波長におけるシート状樹脂の光線透過率は、50%以上100%以下であることが好ましく、より好ましくは70%以上100%以下であり、さらに好ましくは80%以上100%以下である。
【0032】
シート状樹脂の厚さは、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
シート状樹脂の厚みがこの範囲であれば、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷等の印刷用途で使用することが可能となる。
【0033】
本実施の形態において、樹脂組成物は、樹脂(b)および有機化合物(c)を含有していることが好ましい。
【0034】
[樹脂(b)]
樹脂(b)の数平均分子量は、1000以上30万以下であることが好ましく、より好ましくは2000以上20万以下であり、さらに好ましくは5000以上15万以下である。
樹脂(b)の数平均分子量が1000以上であれば、後に架橋して作成する樹脂硬化物が強度を保ち、印刷用基材等として用いる場合、繰り返しの使用にも耐えられる。
樹脂(b)の数平均分子量が30万以下であれば、押し出し成形時に樹脂組成物の溶融粘度が過度に上昇することもなく、シート状の樹脂硬化物を作製することができる。
【0035】
本実施の形態において、数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定し、分子量既知のポリスチレンで検量し換算した値を意味する。
【0036】
樹脂(b)は、分子内に重合性不飽和基を有していてもよい。
樹脂(b)として、好適には、1分子あたり平均で0.7以上の重合性不飽和基の数を有する化合物を挙げることができる。
重合性不飽和基の数が1分子あたり平均で0.7以上であれば、樹脂硬化物の機械強度に優れ、耐久性も良好で、特に印刷用基材として繰り返しの使用にも耐えられるものとなり好ましい。
樹脂硬化物の機械強度の観点で、樹脂(b)の重合性不飽和基の数は1分子あたり0.7以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、より好ましくは1以上10以下であり、さらに好ましくは1以上5以下である。
樹脂(b)の1分子あたりの重合性不飽和基の数の上限については特に限定されるものではないが、1分子あたりの重合性不飽和基の数は20以下であることが好ましい。樹脂(b)の1分子あたりの重合性不飽和基の数が20以下であれば、硬化時の収縮を低く抑えることができ、また表面近傍でのクラック等の発生も抑制することができる。
【0037】
本実施の形態において分子内に重合性不飽和基を有するとは高分子主鎖の末端、高分子側鎖の末端、高分子主鎖中、および高分子側鎖中に直接、重合性不飽和基が付いている場合等も含まれる。
【0038】
樹脂(b)として、下記に示すようなポリマーを骨格として、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を挙げることができる。
ポリマーの例として、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン類;ポリブタジエンおよびポリイソプレン等のポリジエン類;ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン等のポリハロオレフィン類;ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリアミド、ポリウレア、ポリエーテルポリオール、およびポリイミド等の主鎖にヘテロ原子を有する高分子、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体等からなる群より選ばれる1種若しくは2種以上のポリマーをもちいることができる。複数の高分子を用いる場合の形態としては共重合体、ブレンドどちらでもよい。
【0039】
フレキソ印刷版用途のように柔軟なレリーフ画像が必要な場合には、樹脂(b)の一部として、ガラス転移温度が20℃以下の液状樹脂、好ましくはガラス転移温度が0℃以下の液状樹脂を添加することもできる。
液状樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン、および水添ポイソプレン等の炭化水素類;アジペートおよびポリカプロラクトン等のポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル類;脂肪族ポリカーボネート;ポリジメチルシロキサン等のシリコーン類;(メタ)アクリル酸および/またはその誘導体の重合体ならびにこれらの混合物やコポリマー類を挙げることができる。
液状樹脂の含有量は、樹脂(b)全体に対して30質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。
液状樹脂として、耐候性の観点から、ポリカーボネート構造を有する不飽和ポリウレタン類が好ましい。不飽和ポリウレタン類として、ポリウレタン分子鎖の末端にアクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を有する樹脂およびポリウレタン分子鎖中に二重結合を有する樹脂等を挙げることができる。
【0040】
樹脂(b)の分子中に重合性不飽和基を導入する方法として、例えば、直接、重合性の不飽和基をその分子末端または分子鎖中に導入した単量体を用いて重合する方法を挙げることができる。
別法として、樹脂(ポリマー)と、重合性不飽和基を有する化合物と、を反応させて樹脂の末端に重合性不飽和基を導入する方法も挙げることができる。具体的には、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ケトン基、ヒドラジン残基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、環状カーボネート基、およびエステル基等の反応性基を複数有する化合物に、反応性基と結合しうる官能基を複数有する結合剤(例えば、反応性基が水酸基またはアミノ基である場合、結合剤としてポリイソシアネート等を挙げることができる。)を反応させ、分子量の調節、および末端の結合性基への変換を行った後に、該反応によって得られた樹脂と、該樹脂の末端結合性基と反応する官能基および重合性不飽和基を有する化合物とを反応させて、該樹脂の末端に重合性不飽和基を導入する方法である。
【0041】
樹脂硬化物をレーザー彫刻用印刷基材として使用する場合、樹脂(b)として、熱分解性の高いポリマーを使用することが好ましい。例えば、α−メチルスチレン、メタクリル酸エステル、およびアクリル酸エステルの単位、またはカーボネート結合およびカーバメート結合等を分子内に有するポリマーは、熱分解性の高い化合物として知られている。
熱分解性の指標として、不活性ガス雰囲気中でサンプルを加熱した際の重量減少を測定した熱重量分析法のデータを用いることができる。
樹脂(b)の重量が半減する時点の温度が、150℃以上450℃以下の範囲内であることが好ましい。樹脂(b)の重量が半減する時点の温度は、より好ましくは250℃以上400℃以下の範囲内であり、さらに好ましくは250℃以上380℃以下の範囲内である。
【0042】
樹脂(b)として、熱分解が狭い温度範囲で起こる化合物が好ましい。熱分解が狭い温度範囲で起こることの指標として、熱重量分析において、重量が初期重量の80%に減少する温度と、重量が初期重量の20%に減少する温度との差が、100℃以下であることが好ましい。温度差がより好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは60℃以下である。
【0043】
[有機化合物(c)]
有機化合物(c)は、ラジカル重合反応または開環重合反応に関与する重合性不飽和基を有した化合物であり、樹脂(b)との希釈のし易さを考慮すると数平均分子量は1000以下であることが好ましい。
有機化合物(c)として、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン等のオレフィン類;アセチレン類;(メタ)アクリル酸およびその誘導体;ハロオレフィン類;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;アリルアルコールおよびアリルイソシアネート等のアリル化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸ならびにそれらの誘導体;酢酸ビニル類;N−ビニルピロリドン;N−ビニルカルバゾール;シアネートエステル類等を挙げることができる。
有機化合物(c)として、種類の豊富さおよび価格等の観点から、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル等の誘導体が好ましい。
【0044】
上記誘導体として、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、シクロアルケン基、およびビシクロアルケン基等の官能基を有する脂環族化合物;ベンジル基、フェニル基、フェノキシ基、メチルスチリル基、およびスチリル基等の官能基を有する芳香族化合物;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、テトラヒドロフルフリル基、およびグリシジル基等の官能基を有する化合物等のエステル化合物またはアミド化合物、ならびにアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、(アルキル/アリルオキシ)ポリアルキレングリコールやトリメチロールプロパン等の多価アルコールのエステル化合物等を挙げることができる。
【0045】
重合性不飽和基を有する有機化合物(c)は、その目的に応じて1種または2種以上の化合物を選択できる。例えば、円筒状印刷原版を印刷版として用いる場合、印刷インキの溶剤であるアルコールやエステル等の有機溶剤に対する膨潤を押さえるため、有機化合物(c)として、長鎖脂肪族、脂環族、または芳香族の誘導体を少なくとも1種類以上を選択することが好ましい。
【0046】
樹脂硬化物の機械強度を高めるためには、有機化合物(c)として、脂環族基または芳香族基等の置換基(官能基)を有する化合物を少なくとも1種類以上を選択することが好ましく、脂環族基または芳香族基等の置換基を有する化合物が、有機化合物(c)の全体量の20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0047】
本実施の形態におけるシート樹脂は、感光性樹脂組成物または感光性樹脂硬化物であってもよく、感光性樹脂組成物中に光重合開始剤を含有していることが好ましい。
【0048】
[光重合開始剤]
感光性樹脂組成物を光硬化する際の光として、紫外線、可視光線、電子線、およびX線等の高エネルギー線を用いることができる。
紫外線または可視光線を用いて光硬化させる場合、感光性樹脂組成物に光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤として、水素引き抜き型光重合開始剤(d)および/または崩壊型光重合開始剤(e)を挙げることができる。
【0049】
[水素引き抜き型光重合開始剤(d)]
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、特に限定されるものではないが、芳香族ケトンを挙げることができる。
芳香族ケトンは、光励起により効率よく励起三重項状態になる。この励起三重項状態として、周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化学反応機構が提案されている。生成したラジカルが光架橋反応に関与すると考えられる。
【0050】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)として、励起三重項状態を経て周囲の媒体から水素を引き抜いてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されない。
芳香族ケトンとして、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、キサンテン類、チオキサントン類、およびアントラキノン類を挙げることができ、前述した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
【0051】
ベンゾフェノン類として、ベンゾフェノンおよびその誘導体を挙げることができ、具体的には、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ミヒラーケトン類として、ミヒラーケトンおよびその誘導体を挙げることができる。
キサンテン類として、キサンテンおよびアルキル基、フェニル基、またはハロゲン基で置換された誘導体を挙げることができる。
チオキサントン類として、チオキサントンおよびアルキル基、フェニル基、ハロゲン基で置換された誘導体を挙げることができ、具体的には、エチルチオキサントン、メチルチオキサントン、およびクロロチオキサントン等を挙げることができる。
アントラキノン類として、アントラキノンおよびアルキル基、フェニル基、またはハロゲン基等で置換された誘導体を挙げることができる。
【0052】
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
水素引き抜き型光重合開始剤(d)の添加量が、上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物表面の硬化性は充分に確保でき、また、硬化物として、長期保存時に表面にクラック等が発生せず、耐候性を確保することができる。
【0053】
「崩壊型光重合開始剤(e)」
崩壊型光重合開始剤(e)として、光吸収後に分子内で開裂反応が発生し活性なラジカルが生成する化合物を意味し、特に限定されるものではない。
具体的には、ベンゾインアルキルエーテル類、2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類、アセトフェノン類、アシルオキシムエステル類、アゾ化合物類、有機イオウ化合物類、アシルホスフィンオキシド類、およびジケトン類等を挙げることができる。
崩壊型光重合開始剤(e)として、前述した化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが好ましい。
【0054】
ベンゾインアルキルエーテル類として、ベンゾインイソプロピルエーテルおよびベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
2,2−ジアルコキシ−2−フェニルアセトフェノン類として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンおよび2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン等を挙げることができる。
アセトフェノン類として、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルアセトフェノン、および2,2−ジエトキシアセトフェノン等を挙げることができる。
アシルオキシムエステル類として、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム等を挙げることができる。
アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾニウム化合物、およびテトラゼン化合物等を挙げることができる。
ジケトン類としては、ベンジルおよびメチルベンゾイルホルメート等を挙げることができる。
【0055】
崩壊型光重合開始剤(e)の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
崩壊型光重合開始剤(e)の添加量が、上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合、硬化物内部の硬化性を充分に確保することができる。
【0056】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する化合物を、光重合開始剤として用いることもできる。
該光重合開始剤として、α−アミノアセトフェノン類を挙げることができる。
α−アミノアセトフェノン類として、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等を挙げることができる。
【0057】
水素引き抜き型光重合開始剤として機能する部位と崩壊型光重合開始剤として機能する部位を同一分子内に有する光重合開始剤の添加量は、感光性樹脂組成物全体量の0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。
該光重合開始剤の添加量が上記範囲内にあれば、感光性樹脂組成物を大気中で光硬化させた場合であっても、硬化物の機械的物性を充分に確保することができる。
【0058】
[光酸発生剤、光塩基発生剤]
光照射によって、酸または塩基を発生する光酸発生剤または光塩基発生剤を光重合開始剤として用いることができる。
光酸発生剤または光塩基発生剤を用いることにより、開環重合反応する官能基を有する化合物、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等を開環重合させることができる。
【0059】
本実施の形態におけるシート樹脂は、熱硬化性樹脂組成物または熱硬化性樹脂硬化物であってもよく、熱硬化性樹脂組成物中に熱重合開始剤を含有していることが好ましい。
【0060】
[熱重合開始剤]
熱重合開始剤として、好適な化合物は、ラジカル重合反応または開環重合反応に使用できる全ての熱重合開始剤である。
ラジカル重合反応に用いられる熱重合開始剤として、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、有機珪素過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ化合物、チオール化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ハロゲン化合物、およびアルデヒド化合物等を挙げることができる。
開環重合反応に用いられる熱重合開始剤としては、マイクロカプセル中に熱重合開始剤を入れた潜在性熱重合開始剤を挙げることができる。
【0061】
熱重合開始剤は、樹脂(b)または有機化合物(c)との混合の容易性の観点から、20℃において液状であることが好ましい。
熱重合開始剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物全体量に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。熱重合開始剤の含有量は、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上5質量%以下である。
熱重合開始剤の含有量が上記範囲内にあれば、熱硬化性樹脂組成物を十分に硬化させることができ、熱硬化物の表面の粘着性を低減することが可能となる。
【0062】
本実施の形態において、好適に熱重合を行うためには、熱重合開始剤の選択は重要である。熱重合開始剤の熱安定性は、通常、10時間半減期温度(10h−t1/2)の方法によって、すなわち、熱重合開始剤の当初の量の50%が、10時間後に分解してフリーラジカルを形成する温度で示される。
10時間半減期温度に関する詳細については、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」,11巻、1頁以降、John Wiley & Sons,ニューヨーク,1988年、に示されている。
熱重合開始剤の10時間半減期温度が、少なくとも60℃であることが好ましく、より好ましくは少なくとも70℃であり、さらに好ましくは80℃〜150℃である。
【0063】
熱重合開始剤として、熱硬化性の観点および熱硬化性樹脂組成物との相溶性の観点から、有機過酸化物が特に好ましい。
熱重合開始剤として、例えば、過オクタン酸t−ブチル、過オクタン酸t−アミル、ペルオキシイソ酪酸t−ブチル、ペルオキシマレイン酸t−ブチル、過安息香酸t−アミル、ジペルオキシフタール酸ジ−t−ブチル、過安息香酸t−ブチル、過酢酸t−ブチル、および2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のペルオキシエステル類;1,1−ジ(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、およびエチル3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート等のジペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、および2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン等のジアルキルぺルオキシド;ジベンゾイルペルオキシドおよびジアセチルペルオキシド等のジアシルペルオキシド;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、およびクミルヒドロペルオキシド等のt−アルキルヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
【0064】
熱重合性開始剤として、気泡を含有させるクッション層を形成する際に好ましい化合物として、アゾ化合物を挙げることができる。
アゾ化合物として、例えば、1−(t−ブチルアゾ)ホルムアミド、2−(t−ブチルアゾ)イソブチロニトリル、1−(t−ブチルアゾ)シクロヘキサンカルボニトリル、2−(t−ブチルアゾ)−2−メチルブタンニトリル、2,2’−アゾビス(2−アセトキシプロパン)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、および2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)等を挙げることができる。
【0065】
[微粒子]
樹脂組成物に無機系微粒子、有機系微粒子、および/または有機無機複合微粒子を添加することができる。これらの微粒子を添加することにより硬化させて得られる樹脂硬化物の機械的物性の向上、樹脂硬化物表面の濡れ性改善、また、樹脂組成物の粘度の調整、樹脂硬化物の粘弾性特性の調整等が可能となる。
無機系微粒子または有機系微粒子として、その材質は特に限定されるものではなく、公知の微粒子を用いることができる。
有機無機複合微粒子として、無機系微粒子の表面に有機物層もしくは有機系微粒子を形成した微粒子、または有機系微粒子表面に無機物層もしくは無機微粒子を形成した微粒子等を挙げることができる。
【0066】
微粒子として、樹脂硬化物の機械的物性を向上させる目的で、窒化珪素、窒化ホウ素、および炭化珪素等の剛性の高い無機系微粒子またはポリイミド等の有機系微粒子を用いることができる。
得られた樹脂硬化物の耐溶剤特性を向上させる目的で、無機系微粒子や、使用する溶剤への膨潤特性の良好な材質で形成された有機系微粒子を添加することもできる。
【0067】
レーザー彫刻法により樹脂硬化物層表面または樹脂硬化物を貫通したパターンを形成する目的のために、レーザー彫刻時に発生する粘稠性液状残渣の吸着除去特性に優れる無機多孔質微粒子を添加してもよい。
【0068】
微粒子として、特に限定されるものではないが、例えば、多孔質シリカ、メソポーラスシリカ、シリカ−ジルコニア多孔質ゲル、ポーラスアルミナ、および多孔質ガラス等を挙げることができる。
【0069】
微粒子の数平均粒子径が0.01〜100μmであることが好ましい。 微粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μmであり、より好ましくは1〜10μmである。数平均粒子径の範囲が上記範囲内にある微粒子を用いた場合、樹脂(b)および有機化合物(c)との混合を行う際に粘度の上昇、気泡の巻き込み、粉塵の大量発生等の不都合を生じることなく、樹脂硬化物表面に凹凸が発生することもない。
【0070】
本実施の形態において、微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した値を意味する。
【0071】
微粒子の粒子形状は特に限定されるものではなく、微粒子として、球状、扁平状、針状、無定形、または表面に突起のある粒子等を用いることができ、耐磨耗性の観点からは、球状粒子であることが好ましい。
【0072】
微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、およびその他の有機化合物で被覆し表面改質処理を行い、より親水性化または疎水性化した微粒子を用いることもできる。
本実施の形態において、これらの微粒子は1種または2種以上のものを選択することができる。
【0073】
[樹脂組成物の組成比率]
樹脂組成物における樹脂(b)、有機化合物(c)、微粒子の割合は、樹脂(b)100質量部に対して、有機化合物(c)は5〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましい。
樹脂(b)100質量部に対して、微粒子は1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜50質量部であり、さらに好ましくは2〜20質量部である。
有機化合物(c)の割合が、上記範囲内にある場合、得られる樹脂硬化物の硬度と引張強伸度のバランスがとりやすく、硬化時の収縮も小さい範囲に収まり、厚み精度を確保することができる。
【0074】
樹脂組成物には用途や目的に応じて、重合禁止剤、紫外線吸収剤、滑剤、界面活性剤、可塑剤、および香料等を添加することができる。
【0075】
[シート状樹脂の製造方法]
シート状樹脂の製造方法として、既存の樹脂の成形方法を用いることができる。
シート状樹脂製造方法として、例えば、注型法、ポンプまたは押し出し機等の機械で樹脂をノズルやダイスから押し出し、ブレードで厚みを合わせる方法、ロールによりカレンダー加工して厚みを合わせる方法、およびスプレー等を用いて噴霧する方法等を挙げることができる。
シート状樹脂を成形する際、熱分解を起こさない範囲で加熱しながら成形を行うことも可能であり、必要に応じて、圧延処理および研削処理等をほどこしてもよい。
【0076】
[光硬化方法]
成形された感光性樹脂組成物は、光照射により架橋せしめ、感光性樹脂硬化物を形成する。
感光性樹脂組成物を成形しながら光照射により架橋させて感光性樹脂硬化物を形成することもできる。
光硬化に用いられる光源としては高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、殺菌灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、およびメタルハライドランプ等を挙げることができる。
感光性樹脂組成物に照射される光は、200nmから400nmの波長の光を有することが好ましい。
水素引き抜き型光重合開始剤は、この波長領域に強い光吸収を有するものが多いため、200nmから400nmの波長の光を有する場合、感光性樹脂硬化物の表面の硬化性を充分に確保することができる。光硬化に用いる光源は、1種類でもよいが、波長の異なる2種類以上の光源を用いて硬化させることにより、樹脂の硬化性が向上することがあるので、2種類以上の光源を用いることも好ましい。
【0077】
[熱硬化方法]
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合、加熱処理により、熱硬化性樹脂硬化物とする。
加熱方法は、赤外線を照射する方法、オーブン等で加熱した雰囲気に曝す方法、および加熱した金属等の物体と接触する方法等が挙げられる。加熱温度は、熱重合開始剤の種類に応じて選択する。
【0078】
[クッション層]
本実施の形態において、光硬化性接着剤層がクッション層を兼ねていてもよく、シート状樹脂の下部(円筒状支持体(a)と接触する側)にエラストマーからなるクッション層を形成することもできる。また、円筒状支持体(a)の表面にクッション層を形成してもよい。
クッション層としては、ショアA硬度が10以上70度以下の、またはASKER−C型硬度計で測定したASKER−C硬度が20度以上85度以下のエラストマー層であることが好ましい。
ショアA硬度が10度以上またはASKER−C硬度が20度以上である場合、適度に変形するため、印刷品質を確保することができる。
ショアA硬度が70度以下またはASKER−C硬度が85度以下である場合、クッション層としての役割を果たすことができる。
ショアA硬度は20〜60度またはASKER−C硬度は45〜75度であることが好ましい。ショアA硬度とASKER−C硬度は、クッション層に使用する材質により使い分けることが好ましい。2種類の硬度の違いは、測定に用いる硬度計の押針形状の違いに由来する。均一な樹脂組成の場合、ショアA硬度を用いることが好ましく、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の発泡性基材のように不均一な樹脂組成の場合には、ASKER−C硬度を用いることが好ましい。ASKER−C硬度は、JIS K7312規格に準拠する測定法である。
【0079】
クッション層の材料として、特に限定されるものではなく、熱可塑性エラストマー、光硬化型エラストマー、および熱硬化型エラストマー等のゴム弾性を有するエラストマーを挙げることができる。
円筒状印刷版への加工性の観点から、光で硬化する液状感光性樹脂組成物を用い、硬化後にエラストマー化する材料を用いることが簡便であり好ましい。
【0080】
クッション層が、樹脂硬化物を含み、且つ気泡または有機系微粒子を含有することが好ましい。有機系微粒子が中空マイクロカプセルであって、中空マイクロカプセルの表面に無機系微粒子が付着しているものを用いることが好ましい。有機系微粒子の平均粒子径が1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上300μm以下であり、さらに好ましくは80μm以上200μm以下である。
【0081】
クッション層の密度は、0.1g/cm3以上0.9g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.3g/cm3以上0.7g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.4g/cm3以上0.6g/cm3以下である。
クッション層の密度が上記範囲内にあれば、印刷工程においてレーザー彫刻層にかかる衝撃を充分に吸収することができる。
【0082】
クッション層に用いる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、SBS(ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン)、SIS(ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、およびSEBS(ポリスチレン−ポリエチレン/ポリブチレン−ポリスチレン)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコン系熱可塑性エラストマー、ならびにフッ素系熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0083】
クッション層に用いる光硬化型エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーに光重合性モノマー、可塑剤、および光重合開始剤等を混合した組成物、液状樹脂に光重合性モノマーおよび光重合開始剤等を混合した組成物等を挙げることができる。
【0084】
クッション層に用いるエラストマーとしては、硫黄架橋型ゴム、有機過酸化物、フェノール樹脂初期縮合物、キノンジオキシム、金属酸化物、およびチオ尿素等の化合物を架橋剤として用いる非硫黄架橋型ゴムでもよい。テレケリック液状ゴムを反応する硬化剤を用いて3次元架橋させてエラストマー化したものを使用することもできる。
【0085】
クッション層として、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン等の材質で、独立または連続気泡を層内に有するクッション層であってもよく、市販品として入手可能なクッション材、クッションテープを使用することもでき、クッション層の片面または両面に、接着剤または粘着剤が塗布されたものであってもよい。
【0086】
本実施の形態の感光性樹脂硬化物の表面に改質層を形成させることにより、印刷基材表面のタックの低減、インク濡れ性の向上を行うこともできる。改質層としては、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤等の表面水酸基と反応する化合物で処理した被膜、または多孔質無機粒子を含有するポリマーフィルムを挙げることができる。
広く用いられているシランカップリング剤は、基材の表面水酸基との反応性の高い官能基を分子内に有する化合物であり、そのような官能基とは、例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、ジモノクロロシリル基、モノエトキシシリル基、モノメトキシシリル基、およびモノクロロシリル基を挙げることができる。
これらの官能基は分子内に少なくとも1つ以上存在し、基材の表面水酸基と反応することにより基材表面に固定化される。
【0087】
シランカップリング剤を構成する化合物として、分子内に反応性官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、活性水素含有アミノ基、エポキシ基、ビニル基、パーフルオロアルキル基、およびメルカプト基からなる群から選ばれる少なくとも1個の官能基を有する化合物、または長鎖アルキル基を有する化合物を用いることができる。
【0088】
本実施の形態において樹脂硬化物を、レーザー彫刻法を用いてパターンを形成する印刷基材として使用する場合、レーザー彫刻法においては、形成したい画像をデジタル型のデータとしてコンピューターを利用してレーザー装置を操作し、印刷基材にレリーフ画像を作成する。レーザー彫刻に用いるレーザー光は、原版が吸収を有する波長を含むものであればどのようなものを用いてもよいが、彫刻を高速度で行うためには出力の高いものが好ましく、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、および半導体レーザー等の赤外線または赤外線放出固体レーザーを挙げることができる。
可視光線領域に発振波長を有するYAGレーザーの第2高調波、銅蒸気レーザー、紫外線領域に発振波長を有する紫外線レーザー、例えばエキシマレーザー、第3または第4高調波へ波長変換したYAGレーザーは、有機分子の結合を切断するアブレージョン加工が可能であり、微細加工に適する。また、レーザーは連続照射でも、パルス照射でもよい。
【0089】
レーザーによる彫刻は酸素含有ガス下、一般には空気存在下もしくは気流下に実施するが、炭酸ガス、窒素ガス下でも実施できる。彫刻終了後、レリーフ印刷版面にわずかに発生する粉末状もしくは液状の物質は適当な方法、例えば溶剤や界面活性剤の入った水等で洗いとる方法、高圧スプレー等により水系洗浄剤を照射する方法、または高圧スチームを照射する方法等を用いて除去してもよい。
【0090】
本実施の形態において、レーザー光を照射し凹パターンを形成する彫刻後に、版表面に残存する粉末状または粘性のある液状カスを除去する工程に引き続き、パターンを形成した印刷版表面に波長200nm〜450nmの光を照射する後露光を実施することもできる。表面のタック除去に効果がある方法である。後露光は大気中、不活性ガス雰囲気中、水中のいずれの環境で行ってもよい。用いる感光性樹脂組成物中に水素引き抜き型光重合開始剤が含まれている場合、特に効果的である。さらに、後露光工程前に印刷版表面を、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液で処理し露光してもよい。また、水素引き抜き型光重合開始剤を含む処理液中に印刷版を浸漬した状態で露光してもよい。
【0091】
本実施の形態の円筒状支持体(a)と、前記円筒状支持体(a)上に接着されてなるシート状樹脂と、を有する円筒状印刷原版の製造方法は、
(i)前記円筒状支持体(a)の表面に光硬化性接着剤層を形成する工程と、
(ii)前記光硬化性接着剤層の上に前記シート状樹脂を設置する工程と、
(iii)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物と、前記円筒状支持体(a)と、の間に前記シート状樹脂を挟む工程と、
(iv)前記光線透過性スリットを通して前記光硬化性接着剤層に光を照射する工程と、
(v)前記円筒状支持体(a)を回転させ、前記工程(iv)とは異なる位置で光を照射する工程と、を含む円筒状印刷原版の製造方法である。
【0092】
[工程(i)]
工程(i)において、円筒状支持体(a)の表面に光硬化性接着剤層を形成する。
光硬化性接着剤層は、光硬化性接着剤からなり、光硬化性接着剤は、樹脂(b)、有機化合物(c)、および光重合開始剤として上記したような化合物を含有することが好ましく、光硬化性接着剤は、シート状樹脂と組成が異なっていてもよい。
【0093】
[光硬化性接着剤]
光硬化性接着剤は、20℃において液状であっても固体状であってもよい。
20℃において液状である場合、粘度は100Pa・s以上10kPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは500Pa・s以上5kPa・s以下であり、さらに好ましくは1kPa・s以上5kPa・s以下である。
20℃における粘度が上記範囲内にあれば、円筒状支持体(a)上に塗布した際に、重力に耐えて液ダレを起こさずに形状を保持することができる。
【0094】
20℃において固体状である場合、工程(2)においてシート状樹脂を設置する際に、光硬化性接着剤が軟化する温度まで加熱することが好ましい。20℃において固体状の光硬化性接着剤は、溶剤に溶解させてスプレーコート、ブレードコート、またはロールコート等の方法を用いて塗布後、溶剤を乾燥除去することが好ましい。無溶剤タイプのホットメルト光硬化性接着剤を加熱した状態で塗布してもよい。
【0095】
[円筒状支持体(a)の表面処理]
円筒状支持体(a)の表面に物理的または化学的処理を行うことにより、光硬化性接着剤層との接着性を向上させることができる。
物理的処理方法としては、サンドブラスト法、微粒子を含有した液体を噴射するウエットブラスト法、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、および紫外線または真空紫外線照射法等を挙げることができる。
化学的処理方法としては、強酸・強アルカリ処理法、酸化剤処理法、およびカップリング剤処理法等を挙げることができる。
【0096】
[工程(ii)]
工程(ii)において、光硬化性接着剤層の上に前記シート状樹脂を設置する。
具体的には、円筒状印刷原版成形装置の機構(1)に保持された円筒状支持体(a)の表面に有る光硬化性接着剤層の上に、シート状樹脂を設置する。
【0097】
[工程(iii)]
工程(iii)において、光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物と、円筒状支持体(a)と、の間にシート状樹脂を挟む。
具体的には、板状物または円筒状物と機構(1)に保持された円筒状支持体(a)の表面との間隔を機構(2)により変化させて、板状物または円筒状物と、円筒状支持体(a)と、の間にシート状樹脂を挟み、シート状樹脂と光硬化性接着剤層とを接触させる。
【0098】
[工程(iv)]
工程(iv)において、光線透過性スリットを通して前記光硬化性接着剤層に光を照射する。
具体的には、円筒状印刷原版成形装置の光源(3)から光を照射し、シート状樹脂と光硬化性接着剤層との接触界面に、光学系(4)により光を集光させて、シート状樹脂と円筒状支持体(a)とを接着させる。
【0099】
[工程(v)]
工程(v)において、円筒状支持体(a)を回転させ、工程(iv)とは異なる位置で光を照射する。
具体的には、機構(1)により円筒状支持体(a)を回転させ、工程(iv)において、シート状樹脂と円筒状支持体(a)が接着した位置以外において、シート状樹脂と光硬化性接着剤層とを接触させ、接触界面に光源(3)から光を照射することにより、シート状樹脂と円筒状支持体(a)とを接着させる。
工程(v)を複数回行うことにより、シート状樹脂が円筒状支持体(a)に接着され、円筒状印刷原版を製造することができる。
【0100】
本実施の形態の円筒状印刷原版成形装置により製造される円筒状印刷原版の用途として、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷等の印刷技術において用いられる印刷原版または印刷版を挙げることができる。特に精度の高い印刷物が要求されるフレキソ印刷のラベル印刷等のナローウェッブや、缶印刷やチューブ印刷等のドライオフセット印刷の曲面印刷が、好ましい用途である。
【0101】
印刷においてインキが脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素を含む場合、シート状樹脂にポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体を含有することが好ましい。これらの樹脂材料は、上記の溶剤に対する耐性を有するため好ましい。
脂肪族炭化水素として、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジペンテン、ゴム揮発油、ミネラルスピリット、および高沸点石油溶剤(インキオイル)等の化合物を挙げることができる。
芳香族炭化水素として、トルエン、キシレン、ジメチルベンゼン、ジクロロベンゼン、ソルベントナフタ、およびテトラリン等の化合物を挙げることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本実施の形態を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施の形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる測定方法および評価方法は以下のとおりである。
【0103】
(1)レーザー彫刻
レーザー彫刻は炭酸ガスレーザー彫刻機(ZED−mini−1000、英国、ZED社製、米国、コヒーレント社製、出力250W炭酸ガスレーザーを搭載、レーザーの発振波長は10.6μm)を用いて行った。彫刻は、網点(120線/インチ、面積率10%)パターンを作成して実施した。彫刻深さは0.55mmとした。
【0104】
(2)粘度
樹脂組成物の粘度は、B型粘度計(商標、B8H型;日本国、東京計器社製)を用い、20℃で測定した。
【0105】
(3)数平均分子量の測定
樹脂(b)、有機化合物(c)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)を用いて、分子量既知のポリスチレンで換算して求めた。高速GPC装置(日本国、東ソー社製、HLC−8020)とポリスチレン充填カラム(TSKgel GMHXL;日本国、東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランで展開して測定した。カラムの温度は40℃に設定した。GPC装置に注入する試料としては、樹脂(b)濃度が1質量%のテトラヒドロフラン溶液を調製し、注入量10μLとした。検出器としては、示差屈折計を用いた。
【0106】
(4)光のエネルギー量の測定
照度と照射時間からエネルギー量を計算した。照度は、照度計(オーク製作所社製、「M02」)にセンサー部(オーク製作所社製、「APR―350」)を取り付け測定した。
【0107】
(実施例1)
[円筒状印刷原版製造装置1]
エアーシリンダーを保持し回転できる機構として、三つ爪チャックと芯押しテールストックを有する小型旋盤を改造し、回転機構としてエンコーダーの付いたステッピングモーターを取り付け、低速回転できるようにした。繊維強化プラスチック製スリーブや金属製スリーブは、エアーシリンダーの細孔から空気を噴出させることによって装着し、空気の噴出を止めることによって固定することができる。
図1に示したようにエアーシリンダー10の上部に、ガラス製中空円筒15を支える2本のロール(16、17)を設置し、ロール16は、エアーシリンダー10の回転に同期して回転できる機構を取り付けた。もう一方のロール17は、周方向に自由回転できるように支える機構とした。この2本のロール(16、17)の上に石英ガラス製中空円筒15を保持した。さらに、2本のロール(16、17)は、上下に移動できるようにステッピングモーターで駆動する上下動機構を取り付けた。シート状樹脂12を円筒状支持体(a)11上に置き、石英ガラス製中空円筒15がシート状樹脂12の上に接し、動かないように、2本のロール(16、17)の位置を決める。石英ガラス製中空円筒15の内径は300mm、厚み5mmのものを使用した。用いた石英ガラス製中空円筒15の波長350nmにおける光線透過率は95%以上であった。
光源14として、平均出力10W/cmのケミカルランプ(蘭国フィリップス社製、「10Rランプ」)を使用し、石英ガラス製中空円筒15の内部に設置した。
下部にスリット24(スリット幅:3mm)が開いた金属円筒遮光部13を図1に示したように、石英ガラス製中空円筒15の中に設置し、ケミカルランプの光をスリット部から放出させ、スリット部に設置したシリンドリカルレンズ23で集光し、円筒状支持体(a)11上に照射した。
円筒状支持体(a)11表面の光硬化性接着剤層を光硬化させてシート状樹脂12と接着させた。光照射時は、光硬化性接着剤層とシート状樹脂12を常時接触させた。所定量のエネルギー照射をさせながら、円筒状支持体(a)11を所定量回転させ、別の位置を光硬化させていった。円筒状支持体(a)11の回転と同期させて石英ガラス製中空円筒15が同じだけ回転するように、ロール16の回転を調整した。
図1に示すように、円筒状支持体(a)11は、光硬化性接着剤層25を有する。
【0108】
[シート状樹脂の作製]
樹脂(b)として、数平均分子量が約10万のポリカーボネートポリウレタン(大日精化社製、「レザミン(登録商標)P890」) 70質量部、有機化合物(c)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190) 30質量部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(分子量338) 1質量部、微粒子として、多孔質性微粉末シリカ(富士シリシア化学社製、「サイロスフェア(登録商標)C−1504」) 5室量部、光重合開始剤として、ベンゾフェノン 0.5質量部および2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン 0.6質量部、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン 0.5質量部を、小容量加圧型ニーダー(モリヤマ社製、「D1−5」)を用いて温度130℃で混合し、感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を2軸押し出し装置(テクノベル社製、「KZW−TW」)を用いて、ウレタン接着剤が表面に薄く塗布されている厚さ50μmのPETフィルム(東レ社製)上に、厚さ0.4mmで押し出し、さらにシリコーン離型処理した厚み50μmのPETカバーシート(藤森工業社製)で挟み、シート状樹脂を形成した。シート状樹脂の感光性樹脂組成物は、20℃において固体状であった。
得られたシート状樹脂を幅180mm、長さ710mmにカットした。中空円筒状支持体上に巻きつける前に、ガラス平板上でケミカルランプ(蘭国、フィリップス社、「10R」)から発する紫外線で4000mJ/cm2(350nmにおける積算光量)照射し、光硬化させたシート状樹脂を得た。
【0109】
[円筒状印刷原版の製造]
エアーシリンダーに装着された内径225mm、厚み1mm、幅200mmのガラス繊維強化プラスチック製スリーブ(独国、ポリベスト社製)上に、光硬化性接着剤(ノーテープ工業社製、「アクリタック(登録商標)」)を厚さ0.1mmで塗布し、シート状樹脂を巻き付け、円筒状印刷原版製造装置を用いて両者を接着させて、円筒状印刷原版を作製した。
得られた円筒状印刷原版の外径を同一周上で5箇所、長軸方向に5箇所についてレーザー測長器(キーエンス社製、「LS−5120」)を用いて測定した。ただし、シート状樹脂硬化物の継ぎ目部が入らない部分を測定に選定した。外径精度は、±15μmであった。
【0110】
(実施例2)
[円筒状印刷原版製造装置1]
図2に示したように、円筒状支持体(a)11の上部に厚み5mmのアクリル板18を設置して、円筒状支持体(a)11とアクリル板18の間にシート状樹脂12を挟む装置とした。ロール19およびロール20は、アクリル板18を支え、かつ円筒状支持体(a)11の回転に合わせてアクリル板18を左右に動かせるように回転機構を有する。また、ロール21とロール22は、アクリル板18が上に動かないように保持するためのロールであり、自由回転するようになっている。アクリル板18の波長350nmにおける光線透過率は95%以上であった。
光源14は、実施例1と同じものを使用した。下部にスリット24(スリット幅:3mm)の開いた金属製円筒遮光部13の中に、光源14として実施例1と同じケミカルランプを設置した。図2に示すように、円筒状支持体(a)11は、光硬化性接着剤層25を有する。
【0111】
[シート状樹脂]
樹脂(b)として、数平均分子量が約10万のポリカーボネートポリウレタン(大日精化社製、「レザミン(登録商標)P890」) 70質量部、有機化合物(c)として、フェノキシエチルメタクリレート(分子量190) 30質量部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(分子量338) 1質量部、微粒子として、多孔質性微粉末シリカ(富士シリシア化学社製、「サイロスフェア(登録商標)C−1504」) 5重量部、安定剤として、2,6−ジ−t−ブチルアセトフェノン 0.5質量部を、小容量加圧型ニーダー(モリヤマ社製、「D1−5」)を用いて温度130℃で混合し、その後、70℃まで冷却し、熱重合開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(日本油脂株式会社製 「パーブチルE(登録商標)」) 1質量部を添加して、熱硬化性樹脂組成物を調製した。得られた熱硬化性樹脂組成物を、表面にウレタン接着剤が塗布されている厚み50μmのPETフィルム(東レ社製)とシリコーン離型処理されたPETフィルム(藤森工業社製)の間に挿入し、2枚の金属板で熱プレスした。2枚の金属板の間には厚み0.5mmの金属製スペーサーを挿入してあり、130℃において30分間熱処理を行い、熱硬化させたシート状樹脂を得た。
【0112】
[円筒状印刷原版の製造]
円筒状支持体(a)として厚み0.4mmのアラミド繊維強化プラスチック(エポキシ樹脂)製スリーブを用い、金属製エアーシリンダーに装着した。装着したスリーブ上に光硬化性接着剤(ノーテープ工業社製、「アクリタック(登録商標)」)を厚さ0.1mmで塗布し、その上に作製したシート状樹脂を設置し、円筒状支持体(a)とアクリル板の間に挟み、シート状樹脂が光硬化性接着剤層に接触した状態で、ケミカルランプ(蘭国、フィリップス社製、「10R」)の光を照射し、円筒状支持体(a)を低速回転させながら、シート状樹脂を円筒状支持体(a)に接着し、円筒状印刷原版を作製した。得られた円筒状印刷原版の外径精度は、±15μm以内であった。
【0113】
[円筒状印刷版の製造と印刷]
得られた円筒状印刷原版表面に炭酸ガスレーザー彫刻機を用いて線速度10m/秒で凹凸パターンを形成し、円筒状印刷版とした。その後、フレキソ印刷機に装着し、溶剤インキを用いて毎分200mの印刷速度でポリエチレンフィルムへの印刷を行った。レーザー彫刻工程、印刷工程において、シート状樹脂が円筒状支持体(a)から剥がれることはなかった。また、得られた印刷物の網点部の印刷品質も良好であった。
【0114】
(実施例3)
[円筒状印刷原版の製造]
実施例1で作製した未硬化状態のシート状樹脂を、実施例1で用いた光硬化性接着剤層の上に載せ、実施例1で用いた円筒状印刷原版成形装置を用いて、光硬化性接着剤層を光硬化させると同時に、シート状樹脂も光硬化させて、円筒状印刷原版を作製した。照射した光のエネルギー量は、8000mJ/cm2であった。
得られた円筒状印刷原版の外径を同一周上で5箇所、長軸方向に5箇所についてレーザー測長器(キーエンス社製、「LS−5120」)を用いて測定した。ただし、シート状樹脂硬化物の継ぎ目部が入らない部分を測定に選定した。外径精度は、±20μmであった。
【0115】
(比較例1)
実施例1で用いた円筒状印刷原版成形装置から、石英ガラス製中空円筒を外した。実施例1で用いた光硬化させたシート状樹脂を、光硬化性接着剤層が形成されたスリーブ上に巻きつけ、端部をテープで固定した。その後、円筒状印刷原版成形装置を用いて、スリーブを低速で回転させながら、光を照射した。
得られた円筒状印刷原版の外径を同一周上で5箇所、長軸方向に5箇所についてレーザー測長器(キーエンス社製、「LS−5120」)を用いて測定した。ただし、シート状樹脂硬化物の継ぎ目部が入らない部分を測定に選定した。外径精度は、±100μmであった。
また、得られた円筒状印刷原版をレーザー彫刻機で線速度10m/秒で高速回転させたところ、シート状樹脂が、スリーブから脱落した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、円筒状支持体上にシート状樹脂を接着し、円筒状印刷原版を生産性高く、しかも厚み精度高く製造するための円筒状印刷原版成形装置を提供することができる。
本発明は、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、およびグラビア印刷等の印刷分野において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】実施例1の円筒状印刷原版成形装置の概略側面図を示す。
【図2】実施例2の円筒状印刷原版成形装置の概略側面図を示す。
【符号の説明】
【0118】
1:円筒状印刷原版成形装置
10:エアーシリンダー
11:円筒状支持体(a)
12:シート状樹脂
13:金属性円筒遮光部
14:光源
15:円筒状物(例えば、石英ガラス製中空円筒)
16:ロール
17:ロール
18:板状物(例えば、アクリル板)
19:ロール
20:ロール
21:ロール
22:ロール
23:シリンドリカルレンズ
24:スリット
25:光硬化性接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状支持体(a)上にシート状樹脂を接着するための円筒状印刷原版成形装置であって、
(1)光硬化性接着剤層を表面に有する前記円筒状支持体(a)を保持し、周方向に回転させる機構と、
(2)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物を有し、前記円筒状支持体(a)の表面との間隔を変化させる機構と、
(3)前記光線透過性スリットを通して光を照射し、前記機構(2)内に配設される光源と、
(4)前記板状物または円筒状物と前記円筒状支持体(a)の間に前記シート状樹脂を挟み、前記板状物または円筒状物を通して、前記シート状樹脂と前記円筒状支持体(a)との間に存在する前記光硬化性接着剤層に、前記光源からの光を集光するための光学系と、を備える円筒状印刷原版成形装置。
【請求項2】
前記光源が、波長200nm以上400nm以下の光線を発する光源である、請求項1に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項3】
前記光線透過性スリットの幅が、0.5mm以上20mm以下である、請求項1または2に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項4】
前記円筒状支持体(a)が、繊維強化プラスチック製または金属製の中空円筒状支持体であり、
前記機構(1)が、金属、ゴム、およびプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなるシリンダー状物を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項5】
前記光学系(4)が、集光レンズと、該集光レンズと前記円筒状支持体(a)の表面との距離を変化させる機構と、を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項6】
前記板状物または円筒状物が、石英ガラスからなり、波長350nmでの光線透過率が80%以上100%以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項7】
前記円筒状支持体(a)と、前記板状物または円筒状物と、が同期して動き、
前記円筒状支持体(a)と、前記シート状樹脂と、が常時接触している部分を有し、該接触している部分に光が照射される、請求項1から6のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版成形装置を用いて製造される円筒状印刷原版。
【請求項9】
円筒状支持体(a)と、前記円筒状支持体(a)上に接着されてなるシート状樹脂と、を有する円筒状印刷原版の製造方法であって、
(i)前記円筒状支持体(a)の表面に光硬化性接着剤層を形成する工程と、
(ii)前記光硬化性接着剤層の上に前記シート状樹脂を設置する工程と、
(iii)光線透過性スリットを有する板状物または円筒状物と、前記円筒状支持体(a)と、の間に前記シート状樹脂を挟む工程と、
(iv)前記光線透過性スリットを通して前記光硬化性接着剤層に光を照射する工程と、
(v)前記円筒状支持体(a)を回転させ、前記工程(iv)とは異なる位置で光を照射する工程と、を含む円筒状印刷原版の製造方法。
【請求項10】
前記シート状樹脂が、熱可塑性樹脂、感光性樹脂組成物、および熱硬化性樹脂組成物からなる群から選ばれる少なくとも1種の材料からなる、請求項9に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
【請求項11】
前記シート状樹脂が、熱可塑性樹脂からなるシート状支持体上に、感光性樹脂硬化物または熱硬化性樹脂硬化物が積層されるシート状印刷原版である、請求項9または10に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
【請求項12】
前記感光性樹脂組成物または熱硬化性樹脂組成物が、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルポリオール、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、およびスチレン−イソプレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む、請求項10または11に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
【請求項13】
前記円筒状印刷原版が、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、またはグラビア印刷で使用される円筒状印刷原版または円筒状印刷版である、請求項9から12のいずれか1項に記載の円筒状印刷原版の製造方法。
【請求項14】
前記円筒状印刷原版が、レーザー彫刻用円筒状印刷原版である、請求項13に記載の円筒状印刷原版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−76387(P2010−76387A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250620(P2008−250620)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】