説明

円筒状基体の洗浄装置、洗浄方法および電子写真感光体の製造方法

【課題】円筒状基体の洗浄におけるシミの発生を抑制し、付着物の残留を低減することのできる円筒状基体の洗浄装置、円筒状基体の洗浄方法および電子写真感光体の製造方法を提供する。
【解決手段】円筒状基体を浸漬可能な洗浄槽、前記円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で前記円筒状基体の上部内面を保持しながら前記洗浄槽へ昇降させる第1の搬送手段、および前記洗浄槽の中で前記円筒状基体を載置して昇降させる第2の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う洗浄装置であって、前記第2の搬送手段が円筒状基体の下端を稜線部分で支持する形状の載置台を有し、第1の搬送手段と第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う位置が、載置面が洗浄液の液面より上に上昇した位置となる洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状基体の洗浄装置、洗浄方法および電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体の堆積膜を形成するための基体の材料としては、ガラス、耐熱性合成樹脂、ステンレス、アルミニウムなどが提案されている。しかしながら、実用的には帯電、露光、現像、転写、クリーニングといった電子写真プロセスに耐え、また画質を落とさないために常に位置精度を高く保つため、金属を使用する場合が多い。中でもアルミニウムは加工性が良好で、コストが低く、重量が軽い点から電子写真感光体の基体として最適な材料の1つである。
そして、必要に応じて、旋盤、フライス盤等を用いたダイヤモンドバイト切削により電子写真感光体の基体部分を所定範囲内の平面度に表面加工する。
【0003】
表面加工を施した前記基体については、表面加工の際に付着した油の除去を行う脱脂工程、腐食防止の膜を生成するリンス工程、二酸化炭素を溶解した水溶液を用いた乾燥工程などの一連の洗浄を行うことが提案されている。
アルミニウム合金からなる基体を洗浄する場合において、腐食防止技術として、二酸化炭素を溶解した水により基体を洗浄する技術についての提案がなされている。また、洗浄槽内の搬送手段と洗浄槽外での搬送手段による受け渡しが開示されている(特許文献1参照)。さらに、複数のノズルから噴出される洗浄液による洗浄および洗浄槽内における円筒状基体の移動について提案されている(特許文献2参照)。また、洗浄装置における円筒状基体の載置台の形状について、シミや付着物の観点からテーパー面への載置が提案されている(特許文献3参照)。
【0004】
そして、基体にこのような表面加工や一連の洗浄工程を行った後に、基体の表面にはグロー放電分解法に代表されるプラズマ成膜法や各種堆積膜形成法によって、光導電部材の堆積膜が形成される。
電子写真感光体に用いられる光導電部材の材料としては、従来からセレン、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、アモルファスシリコン、フタロシアニン等の有機物など各種の材料が提案されている。中でも、アモルファスシリコンに代表されるケイ素原子を主成分として含む非単結晶堆積膜がある。例えば水素および(または)ハロゲン(例えば弗素、塩素等)で補償されたアモルファスシリコン等のアモルファス堆積膜は高性能、高耐久性、無公害の感光体として提案され、その幾つかは実用に付されている。
【0005】
前記特許文献2には光導電層を主としてアモルファスシリコンで形成した電子写真感光体の技術が開示されている。
そして、こうしたケイ素(シリコン)原子を主成分として含む非単結晶堆積膜の形成方法として従来、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する方法(熱CVD法)が知られている。また、光により原料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)が知られている。
プラズマCVD法、すなわち、直流、高周波またはマイクロ波グロー放電等によって発生するプラズマを用いて原料ガスを分解し、基体の表面に薄膜状の堆積膜を形成する方法は、電子写真感光体用アモルファスシリコン堆積膜の形成方法に最適である。現在、実用化が進んでいる。
【0006】
ところで、従来技術の電子写真感光体では,堆積膜中に異常成長の部分、言い替えれば微小な面積の表面電荷の乗らない部分に起因する画像欠陥が存在していた。この異常成長部分は特にアモルファスシリコンのようなプラズマCVD法で堆積膜を形成した電子写真感光体に特に顕著に存在する。
上記の感光体の製造工程で発生する堆積膜の異常成長部分とは次のようなものである。
アモルファスシリコン膜は円筒状基体の表面に数μmオーダーのダストが付着した場合、成膜中にそのダストを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。球状突起はダストを起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常堆積部分と球状突起部分の界面では局在準位が非常に多いために低抵抗化し、帯電電荷が界面を通って円筒状基体側に抜けてしまう。このため、球状突起のある部分は、画像上ではベタ黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はベタ白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっており、大きさによってはA3用紙に数個存在していても不良として扱われることがある。さらには、カラー複写機に搭載される場合にはさらに規格は厳しくなり、A3用紙に1個存在していても不良となる場合がある。
【0007】
これらの問題に対して従来は、基体の表面加工条件、洗浄条件および堆積条件の最適化を行うことでそれらの異常成長部分の数を減らしていた。また従来は現像時の解像力が現在ほど高く要求されていなかったため、実用上大きな問題とはならなかった。
また、従来はコピー又はプリントの用途として、活字だけの原稿(いわゆるラインコピー)をコピーすることが中心であった。そのため、これらの画像欠陥は実用上顕著に目立つというものではなかった。しかし、近年のように写真などのハーフトーンを含む原稿が多くコピー又はプリントされるようになると、複写機又はプリンタの画質のさらなる向上が要求されるようになった。特に、近来普及してきたカラー複写機又はカラープリンタにおいては、画質がより改善されることが望ましい。
【0008】
このような状況下で、電荷の乗らない微小な部分が画像欠陥として指摘されるようになってきた。これらの状況の中で、洗浄工程で発生する端部のシミや洗浄の際に残留した付着物によって発生する欠陥が問題となってきている。そして、生産工程で行われる外観検査や画像検査で問題となり、歩留まりを悪化させる場合があるため改善されることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−273955号公報
【特許文献2】特開2000−162789号公報
【特許文献3】特開平03−154679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の従来技術の洗浄方法では、洗浄液が入った洗浄槽からの引上げ、引上げ乾燥の際の搬送において、円筒状基体が振動することで、シミが発生する場合があった。また、円筒状基体と洗浄装置における載置台との接触部分周辺において、洗浄液や付着物が残留したり、液面から離れる際に発生する液垂れや飛散によってシミや欠陥になる場合があった。さらに、洗浄が終了した後に、円筒状基体の下端部に残留する液体が多い場合に、乾燥工程後も乾燥が不十分になり、その状態で保管されることで前記下端部にシミが発生する場合があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、不十分な洗浄に起因するシミの発生を抑制し、付着物の残留を低減することのできる円筒状基体の洗浄装置、洗浄方法およびそれを用いた電子写真感光体の製造方法を提供することにある。さらに本発明の目的は、上述のごとき従来の電子写真感光体の製造方法での諸問題を改善することで歩留まりをよくし、安価な電子写真感光体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は以下の洗浄装置、洗浄方法および電子写真感光体の製造方法によって達成される。
本発明は、円筒状基体を浸漬可能な洗浄槽、前記円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で前記円筒状基体の上部内面を保持しながら前記洗浄槽へ昇降させる第1の搬送手段、および前記洗浄槽の中で前記円筒状基体を載置して昇降させる第2の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う洗浄装置であって、前記第2の搬送手段が、前記円筒状基体の下端を稜線部分で支持する形状の載置台を有し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う位置は、載置面が洗浄液の液面より上に上昇した位置となる円筒状基体洗浄装置であることを第1の特徴とする洗浄装置に関する。
また、本発明は、円筒状基体を浸漬可能な洗浄槽、前記円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で前記円筒状基体の上部内面を保持しながら前記洗浄槽へ昇降させる第1の搬送手段、および前記洗浄槽の中で前記円筒状基体を載置して昇降させる第2の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う洗浄装置を使用する円筒状基体の洗浄方法であり、
前記第2の搬送手段が、前記円筒状基体の下端を稜線部分で支持する形状の載置台を用い、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う位置が、載置面が洗浄液の液面より上に上昇した位置とした円筒状基体の洗浄方法であることを第2の特徴とする円筒状基体の洗浄方法に関する。
また、本発明は、第2の特徴を備える円筒状基体の洗浄方法を用いて洗浄した円筒状基体の上に非単結晶堆積膜を形成することを第3の特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明の洗浄方法および洗浄装置により、円筒状基体のシミの発生を抑制し、付着物の残留を低減することができる。また、本発明の洗浄方法および洗浄装置を用いた電子写真感光体の製造方法により、電子写真感光体の製造の歩留まりが良化し、電子写真感光体が安価に製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の洗浄装置の一実施形態を示す概略図
【図2】本発明に用いることができる円筒状基体を半径方向に稜線支持する載置台の一実施形態を示す概略図
【図3】本発明に用いることができる円筒状基体の水平方向の位置を決める位置決めガイドを有し位置決めガイドと円筒状基体が稜線接触する載置台の一実施形態を示す概略図
【図4】本発明に用いることができる円筒状基体の水平方向の位置を決める位置決めガイドを有し位置決めガイドと円筒状基体が稜線接触する載置台の一実施形態を示す概略図
【図5】本発明に用いることができる異なる径の円筒状基体を稜線支持する載置台の一実施形態を示す概略図
【図6】本発明の受け渡し位置および搬出ストッカーへの搬出動作の概略図
【図7】電子写真感光体に用いられる層構成の断面図
【図8】本発明のプラズマCVDによる堆積膜形成装置の一実施形態を示す概略図
【図9】比較例1に用いた載置台の概略図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
<基体>
まず、本実施の形態で用いられる円筒状基体は、例えばアルミニウム合金製シリンダー等であるが、これは、基体洗浄装置で処理される前に例えば表面を鏡面切削されることがある。鏡面切削の具体的な方法を以下にまとめて述べる。まず、精密切削用のエアダンパー付旋盤に、ダイヤモンドバイト(商品名:ミラクルバイト、東京ダイヤモンド製)を、シリンダー中心角に対して5°のすくい角を得るようにセットする。ついで、この旋盤の回転フランジに、基体を真空チャックする。そして、付設したノズルから白燈油噴霧、同じく付設した真空ノズルから切り粉の吸引を併用しつつ、周速1000m/分、送り速度0.01mm/Rの条件で目的の外径となるように鏡面切削を施す。
このように切削が終了した基体は洗浄装置に搬送される。なお、本発明で使用される基体は必ずしも上述の鏡面切削処理が予めなされている必要はない。
【0016】
<洗浄装置>
次に、上述した円筒状基体の表面を洗浄する洗浄装置について図1を用いて説明する。図1は本発明において用いられる洗浄装置を側方から模式的にあらわした図である。
洗浄装置は、大きく分けて、処理部102と基体搬送部103より構成されている。
処理部102は、昇降台104、基体投入台111、脱脂槽121、リンス槽131、濯ぎ槽141、乾燥槽151、基体搬出ストッカー171よりなっている。脱脂槽121、リンス槽131、濯ぎ槽141、乾燥槽151を総称して、洗浄槽とも言う。
昇降台104は、円筒状基体101を昇降させる第2の搬送手段として、載置台105および昇降機構106とで構成され、各槽に取り付けられている。
各槽の深さは、長尺型の基体を立たせて槽に収容しても液面が基体の最上部より上になる深さである。つまり、円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で円筒状基体を浸漬可能な深さである。各槽は互いに離間して設置されている。また、各槽の液はそれぞれの槽毎に用いられ、他の槽においては用いられない。脱脂槽121、リンス槽131、濯ぎ槽141、乾燥槽151とも液の温度をそれぞれ一定に保つための温度調節装置(図示せず)が付いている。各槽に収容される液を、各槽の目的毎にその成分あるいは温度を異ならせた状態で使用できる。また脱脂槽121、リンス層131には脱脂効果および付着物の再付着を防止し皮膜形成効果を上げる為の超音波振動子(図示せず)が取り付けられている。また脱脂槽121、濯ぎ槽141にはそれぞれ基体を引き上げる際に基体の表面にシャワーする為のノズル181,182が取り付けられている。
【0017】
また脱脂槽121、リンス槽131、濯ぎ槽141、および乾燥槽151はそれぞれ液を収容するための液収容空間197となる容器と、オーバーフローした液を回収するための液回収空間196となる容器とから構成されている。さらに各槽は液を液収容空間197へ供給し且つその液収容空間197から回収するための循環経路を設けている。循環経路は、オーバーフローライン191、貯槽192、循環ポンプ193から構成されている。例えば液を槽に供給する際の流量を増量する場合に液収容空間197からオーバーフローした液は各槽121、131、141、151上部の液回収空間196からオーバーフローライン191を介して貯槽192に貯えられる。オーバーフローライン191は液回収空間196となる容器の下方に接続している。貯槽192に貯えられた液は循環ポンプ193によって再び各槽121、131、141、151の下部から供給される。このとき液の供給量を流量調節手段であるバルブ付きのバイパスライン195を用いて調節して、液を槽に再び供給する前にフィルター194を用いて屑等の粒子を各槽毎に回収する。例えば液の循環量を増やす場合は、バイパスライン195をとじる。そして反対に液の循環量を減らす場合はバイパスライン195をひらく。そして循環量を一定にする場合はバイパスライン195のラインの開放量を一定に設定する。またこのとき不図示の成分調整手段を設けることで回収されて再び槽に供給される液体の成分を調整することも出来る。また、オーバーフローした液が液回収空間196に回収されている間、油やハロゲン化合物等が基体101に再付着することなく基体101を液収容空間197から引き上ることができる。これは、液回収空間196に回収されたオーバーフローした液の液面の位置が、液収容空間197の開口部198の位置よりも常に下となるように液回収空間196が設けられているからである。
基体搬送部103は、搬送レール163と第1の搬送手段としての搬送アーム161より構成されている。また、搬送アーム161は、レール163上を移動する移動機構164、円筒状基体101の上部内面を保持するためにアームを径方向に開閉するチャッキング機構162を持つ。さらに、円筒状基体101を昇降台104と受け渡しを行うために、搬送アーム161を上下させるためのエアーシリンダー165が設けられている。
【0018】
<載置台>
また、本発明の特徴である第2の搬送手段である上述の昇降台104を構成している載置台105の形状について例を挙げて詳細に説明する。
図2は、本発明に用いられる載置台105の例として、円筒状基体を稜線部分で支持(以下、「稜線支持」とも言う。)する形状の載置台を示したものである。
円筒状基体を面支持せずに稜線支持することで、円筒状基体の下端と載置台の接触面積を小さくすることができる。これによって、引き上げ工程において載置台が液面より上に上昇した際に、円筒状基体の下端と載置台の間に残留する洗浄液を減少させて、乾燥した際のシミを抑制できる。
なお、本発明の稜線支持方向は円筒状基体の半径方向とされる。これは、円筒状基体の内外面に付着した洗浄液が半径方向に位置した稜線支持部分を伝わって載置台に流れ落ち液切れがよくなるためである。
【0019】
さらに、図3の載置台は円筒状基体の水平方向の位置を決める位置決めガイドを有している。そして、図4に示すのように位置決めガイド304の下部の稜線部分305と円筒状基体301が稜線接触する。
これは洗浄液から引き上げた際に円筒状基体の内面と稜線接触されていることで、円筒状基体の内面の洗浄液が稜線部分305を伝わって速やかに円筒状基体の下端方向へ流れる。そして、載置部分の稜線302を伝わって円筒状基体から洗浄液が効率的に除去される。これによって洗浄液の残留により発生するシミを抑制する効果がさらに得られる。
【0020】
また、図5は、本発明に用いられる載置台105の例として、異なる径の円筒状基体を稜線支持する載置台を示したものである。
これは異なる径の円筒状基体を同一の洗浄装置で洗浄できるため、効率化とコストの削減が可能となる。
そして、前述の稜線支持の載置台と同様に稜線部分を伝わって洗浄液が効率的に除去され、かつ接触面積を小さくすることで、円筒状基体の下端と載置台の間に残留する洗浄液を減少させて乾燥した際のシミを抑制できる。
以上が、本発明における実施形態の洗浄装置の構成の一例である。
【0021】
<洗浄工程動作>
次に、本発明の特徴である洗浄装置内の動作について以下に示す。
まず、洗浄装置内における動作の特徴の1つは、円筒状基体を第1の搬送手段である図6の搬送アーム661と前述の載置台605を持つ第2の搬送手段である昇降台604との間で、載置台605の載置面が洗浄槽の液面より上となる位置で受け渡しを行うことである。「載置面」とは、図4に示した稜線302が含まれる平面である。
この動作の1つ目の目的は、受け渡し時におけるシミの発生を抑制することである。これは、引き上げる工程では、液槽内から円筒状基体を一定速度で引き上げることが重要であり、円筒状基体の一部が液槽内にある状態での受け渡しでは、第1と第2の搬送手段間の速度差や受け渡しの時の振動や遅延によりシミが発生するためである。
また、この動作の2つ目の目的は、搬送手段からの液垂れや円筒状基体が液面から離れる際の飛散を抑制することである。これは、液槽内に第1の搬送手段の搬送アーム661を直接浸漬して引き上げる方法では、搬送アーム661からの液垂れが発生しシミの発生原因となる場合があるためである。また搬送アーム661のみで引き上げた場合、円筒状基体の下端が液面から離れる際に液の飛散が発生し、これが円筒状基体に付着してシミの原因となる場合がある。
【0022】
そして、円筒状基体を稜線支持とする載置台を併せて用いることで、円筒状基体の下端および内面の洗浄液を速やかに除去でき、残留する洗浄液が原因で発生するシミを抑制する効果が得られる。
また、図1に示す第1の搬送手段である搬送アーム661を予め受け渡し位置に待機するように配置することで受け渡しの際に、搬送アーム661が受け渡し位置まで移動する時間を待つ必要がなくなる。結果として搬送時間を短縮できる効果が得られる。また、第2の搬送手段である昇降台604の載置台605と円筒状基体が接している時間が短縮されるため、昇降台604の載置台605の接触部分に残留する液によるシミを抑制する効果が得られるため好ましい。
そして、図1に示す第2の搬送手段である昇降台605の上昇速度を2mm/秒以上、50mm/秒以下にすることがより好ましい。これは、上昇速度が速すぎる場合には洗浄液の残留によるシミの発生を十分に抑制する効果が得られない場合があるためである。また、上昇速度が遅すぎる場合には腐食の発生が十分に抑制する効果が得られない場合があるためである。
【0023】
さらに、洗浄槽からの引上げ工程後に、図6に示すように、第1の搬送手段である搬送アーム661が20秒以上円筒状基体を保持した後に、収納部である搬出ストッカー671に収納することがさらに好ましい。円筒状基体601が搬出ストッカー671に収納される前に、例えば図6の点線672の位置で保持されることで、円筒状基体自体の余熱によって、残留した洗浄液を乾燥させることができる。このことによって、その後搬出ストッカー671に収納することで円筒状基体の下端に残った洗浄液が再付着することによるシミの発生を防止する効果がさらに得られる。
また、図1の構成のように第1の搬送手段が複数の洗浄槽間で円筒状基体を移動させることである。これによって、連続的かつ効率的に搬送を行うことができ、時間短縮や外部からの付着物による汚染を防止する効果が得られる。
そして、以上の動作を特徴とする円筒状基体の上に堆積膜(非単結晶堆積膜など)を成膜する成膜工程の前に行う洗浄の実施形態としては、前述の構成の洗浄装置を用いて次のような洗浄工程を行う。まず、円筒状基体の表面を脱脂洗浄する脱脂洗浄工程、円筒状基体の表面に皮膜形成を行うリンス工程、円筒状基体の表面をすすぐ濯ぎ工程、そして円筒状基体の表面を乾燥する乾燥工程の順で処理する。
【0024】
以下に実際の洗浄装置内での動作の流れの一例を詳細に説明する。
まず、投入台111の上に置かれた円筒状基体101の上方に、搬送機構103の搬送アーム161が移動機構164により移動し、エアーシリンダー165により搬送アーム161を下降させ、チャッキング機構162により円筒状基体101がチャッキングされる。
チャッキングされた円筒状基体101は、エアーシリンダー165により搬送アーム161と共に上昇させられ、搬送レール163によって水平方向に移動させられ、脱脂槽121の上方まで搬送される。
そして、搬送アーム161を下降させ、脱脂槽121の中の昇降台104により液面の上に上昇させた載置台105に円筒状基体101を載置する。載置した後に、チャッキング機構162を解除して搬送アーム161を上昇させると同時に載置台105を下降させ、脱脂洗浄工程が行われる。
【0025】
脱脂槽121の中には界面活性剤を純水中に溶解させた水122が入っており、その中で基体101を超音波洗浄して表面に付着している塵、油脂等を基体101から分離させて洗浄する。その後に、脱脂槽121の中の昇降台104によって円筒状基体101を上昇させる。このとき円筒状基体101が引き上げられる前後の循環液量は異なる。また、上昇する際には、シャワーノズル181によって円筒状基体101に向かって付着物を分離した水洗浄剤122をシャワーする。
そして、昇降台104の載置台の載置面が脱脂槽121の液面より上昇した位置で、時間短縮と洗浄液の残留を抑制するために予め下降させ配置しておいた搬送アーム161のチャッキング機構162で円筒状基体101がチャッキングされる。その後に、上下動機構であるエアーシリンダー165により引き上げられる。
【0026】
次に、脱脂洗浄工程を終了した円筒状基体101はリンス工程に至るため、搬送機構103の搬送レール163に沿ってリンス槽131の上方へ運ばれる。そして、脱脂槽121の際と同様にリンス槽131の液面の上に上昇している載置台105に載置される。載置された後に、昇降台104を下降させ、円筒状基体101をリンス槽に浸漬させる。リンス槽131には25℃〜30℃の温度に保たれたケイ酸塩を純水中に溶解させた水123が入っておりそこで基体の表面に皮膜形成を行う。また必要に応じて超音波を併用し、付着物が基体に付着することを防ぐ。
そして、昇降台104の載置台の載置面がリンス槽131の液面より上昇した位置で、時間短縮と洗浄液の残留を抑制するのため予め下降させ配置しておいた搬送アーム161のチャッキング機構162で円筒状基体101がチャッキングされる。その後に、上下動機構であるエアーシリンダー165により引き上げられる。
【0027】
その後、リンス洗浄を終了した円筒状基体101は、搬送機構103により次の濯ぎ工程である濯ぎ槽141の上方へ運ばれる。そして、前述の2工程と同様に濯ぎ槽141の液面の上に上昇している載置台105に載置される。載置された後に、昇降台104を下降させ、円筒状基体101を濯ぎ槽141に浸漬させる。濯ぎ槽141の中には25℃の温度に保たれた純水124が入っており、そこで円筒状基体101をすすぎ洗浄する。純水124は工業用導電率計(商品名:α900R/C、堀場製作所製)により一定にその純度が制御されている。その後必要に応じ円筒状基体101を昇降台により上下動させすすぎ洗浄する。その後、脱脂工程と同様に昇降台104で円筒状基体101を上昇させながら、シャワーノズル182から基体101に向かって純水124をシャワーする。
そして、昇降台104の載置台の載置面が濯ぎ槽141の液面より上昇した位置で、時間短縮と洗浄液の残留を抑制するために予め下降させ配置しておいた搬送アーム161のチャッキング機構162で円筒状基体101がチャッキングされる。その後に、上下動機構であるエアーシリンダー165により引き上げられる。
【0028】
最後に、濯ぎ工程が終了した円筒状基体101は乾燥工程を行うために搬送機構103により乾燥槽151へ運ばれる。そして、前述の3工程と同様に乾燥槽151の液面の上に上昇している載置台105に載置される。載置された後に、昇降台104を下降させ、円筒状基体101を乾燥槽151の中の温純水125に浸漬させる。乾燥槽151には、50℃の温度に保たれた温純水125が入っており、温純水125は工業用導電率計(商品名:α900R/C、堀場製作所製)により純度が一定に制御されている。
そして、円筒状基体101は昇降台104と搬送アーム161によって温純水125から引き上げられ、引き上げ乾燥をする。
【0029】
この際、円筒状基体101の下端のシミ、付着物を低減するために前述の動作の特徴に示した動作を行う。まず、図6に示す第2の搬送手段である昇降台604によって2mm/秒以上、60mm/秒以下の上昇速度で円筒状基体601を乾燥槽の中から液面607の上まで移動させる。次に、予め下降して待機していた第1の搬送手段である搬送アーム661と第2の搬送手段である昇降台604との間での円筒状基体601の受け渡しを行う。当然、受け渡し位置は、載置台605の載置面が液面607より上昇した位置となる。
そして、円筒状基体601をチャッキング機構662によりチャッキングした後に搬送アーム661を上昇させ、円筒状基体601を移動機構664により搬出ストッカー671の上方に運ぶ。
最後に、端部のシミを抑制するために搬出ストッカー671の上方でチャッキングした状態で円筒状基体601を20秒間保持した後、搬出ストッカー671に格納する。
【0030】
次に、本発明の基体洗浄装置に適用可能な各洗浄工程の詳細について説明する。
<脱脂工程>
まず、脱脂工程について説明する。脱脂工程において用いられる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、又はそれらの混合したもの等いずれの物でも可能である。中でも、液体(水)中がアルカリ性である場合カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、又は、脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を使用することがより好ましい。
また、脱脂工程において、界面活性剤を含む水系洗浄剤の温度が高すぎると基体の表面に液跡によるシミが発生し、堆積膜を剥れ易くしてしまう。一方、温度が低すぎると充分な脱脂効果を得ることができない。液体(水系洗浄剤)の温度の範囲としては、10℃以上、60℃以下、好ましくは15℃以上、50℃以下、最適には20℃以上、40℃以下の範囲である。
脱脂工程おいて、脱脂洗浄工程で用いられる単位体積中の水に含まれる界面活性剤の重量%濃度が濃すぎると液跡によるシミが発生してしまい、堆積膜の剥れ等の原因となる。一方、界面活性剤の重量%濃度が薄すぎると脱脂効果が小さくなってしまう。本発明において用いられる単位体積中の液体(水)に含まれる界面活性剤の重量%濃度の範囲は、0.1wt%以上、20wt%以下、好ましくは1wt%以上、10wt%以下、最適には2wt%以上、8wt%以下の範囲である。
また、脱脂工程において、界面活性剤を含む水系洗浄剤のpHが高すぎると液跡によるシミが発生してしまい、堆積膜を剥れ易くしてしまう。一方、水系洗浄剤のpHが低すぎると脱脂効果が小さくなってしまう。本発明において用いられる界面活性剤を含む水系洗浄剤のpH値の範囲は、8以上、12.5以下、好ましくは9以上、12以下、最適には10以上、11.5以下の範囲である。
【0031】
<リンス工程>
次に、リンス工程について説明する。基体の表面に皮膜形成を行うリンス工程に用いられる水に含まれるケイ酸塩の濃度が濃すぎると液跡によるシミが発生してしまい、堆積膜を剥れ易くしてしまう。一方、ケイ酸塩の濃度が薄すぎると皮膜効果が小さくなってしまう。この為、単位体積あたりの前記水に含まれるケイ酸塩の重量%濃度の範囲は、0.05wt%以上、2wt%以下、好ましくは0.1wt%以上、1.5wt%以下、最適には0.2wt%以上、1wt%以下の範囲である。
また、リンス工程において、アルミニウム基体上に形成される皮膜の膜厚が薄くては効果が現れず、一方、皮膜の膜厚が厚過ぎるとアルミニウム基体とその上に形成される堆積膜との導電性が下がるという弊害が出てしまう。この為、皮膜の膜厚の範囲としては5Å以上150Å以下、好ましくは10Å以上130Å以下、最適には15Å以上120Å以下の範囲である。
【0032】
リンス工程において、アルミニウム基体上に形成されるAl−Si−O皮膜の組成比としてはSiやOが少なくてはAlの成分が多く皮膜として不十分であり、一方、SiやOが多くても導電性が下がってしまう為適さない。原子組成比で、Alを1とした時にSiは0.1以上1.0以下、好ましくは0.15以上0.8以下、最適には0.2以上0.6以下が適している。
また、リンス工程では二酸化炭素を溶解させてリンス効果を向上させても良い。この際、リンス工程において二酸化炭素の溶解量は水の導電率またはpHで管理することが実用的である。導電率で管理した場合は、好ましい範囲は2μS/cm以上、40μS/cm以下、更に好ましい範囲は4μS/cm以上、30μS/cm以下、最も好ましい範囲は6μS/cm以上、25μS/cm以下である。pHで管理した場合は、好ましい範囲は3.8以上、6.0以下、より好ましい範囲は4.0以上、5.0以下である。導電率の測定は導電率計等により行い、値としては温度補正により25℃に換算した値を用いる。
【0033】
二酸化炭素を含む水の温度は、5℃以上、90℃以下、好ましくは10℃以上、55℃以下、最適には15℃以上、40℃以下が本発明には適している。
二酸化炭素を水に溶解させる方法はバブリングによる方法、隔膜を用いる方法等いずれでも良い。又、本発明においては、溶質として二酸化炭素を用いるが、その理由は、溶質として例えば炭酸ナトリウム等の炭酸塩を用いた場合に起こりうる、ナトリウムイオン等の陽イオンによる基体への影響を防ぐことが出来る。
この様にして二酸化炭素を溶解した水を用いて基体の表面を洗浄する時は、二酸化炭素を溶解した水を導入した水槽に基体を浸漬することが基本である。そして、その際に超音波を印加したり、水流を与えたり、空気等によりバブリングを行ったりすることを併用すると本発明は更に効果的なものとなる。
二酸化炭素を溶解した水による洗浄処理の処理時間は、10秒以上、30分以下、好ましくは20秒以上、20分以下、最適には30秒以上、10分以下が本発明には適している。
【0034】
<濯ぎ工程>
次に、濯ぎ工程について説明する。濯ぎ工程はリンス工程後に純水または二酸化炭素を溶解した純水に基体を浸漬する。
また濯ぎ工程の浸漬の終了後、シャワー洗浄を行う場合、水の圧力は、強すぎると皮膜が剥がれ落ちてしまい、又、弱すぎるとリンスの効果が現れない。その為、シャワーする水の圧力と流量のバランスを上手く取ることが重要である。水の圧力は4.9×103(Pa)以上9.8×104(Pa)以下、より好ましくは6.9×103(Pa)以上7.8×104(Pa)以下が適している。同時に流量は1(l/分)以上、20(l/分)以下、より好ましくは3(l/分)以上、16(l/分)以下が本発明には適している。このとき、例えば図1に示すパソコン等の制御手段180によって水の圧力と流量をコントロールすることも精度の高い洗浄を短時間で行えるので好ましい。あるいは制御手段180を用いず手動で制御してもよい。
【0035】
<乾燥工程>
最後に、乾燥工程について説明する。乾燥工程においても、リンス工程と同様に二酸化炭素の溶解量は水の導電率又はpHで管理することが実用的である。導電率で管理した場合、好ましい範囲は5μS/cm以上、40μS/cm以下、更に好ましい範囲は6μS/cm以上、35μS/cm以下、最も好ましい範囲は8μS/cm以上、30μS/cm以下である。pHで管理した場合、好ましい範囲は3.8以上、6.0以下、更に好ましくい範囲は4.0以上、5.0以下である。導電率の測定は導電率計等により行い、値としては温度補正により25℃に換算した値を用いる。
なお二酸化炭素を溶解させる水の純度、二酸化炭素を溶解させる溶解方法はリンス工程における方法と同じである。
温水の温度は、30℃以上、90℃以下、好ましくは35℃以上、80℃以下、最適には40℃以上、70℃以下が本発明には適している。
引き上げ乾燥する際の引き上げ速度は非常に重要である。乾燥によるムラを発生させないようにすることが必要で、前記引き上げ速度の好ましい範囲は100mm/分以上、2000mm/分、最適には300mm/分以上、600mm/分の以下範囲が適している。
【0036】
また、脱脂洗浄工程、リンス工程で、超音波を用いることは脱脂効果、あるいはリンス効果を出す上で有効である。超音波の周波数の範囲は、好ましくは100Hz以上、10MHz以下、更に好ましくは1kHz以上、5MHz以下、最適には10kHz以上100kHz以下の範囲が効果的である。超音波の出力は、好ましくは0.1W/リットル以上、1kW/リットル以下、更に好ましくは1W/リットル以上、100W/リットル以下が効果的である。
さらに、脱脂洗浄工程、リンス工程、濯ぎ工程、あるいは乾燥工程において用いられる水は半導体グレードの純水、特に超LSIグレードの超純水が望ましい。具体的には、水温25℃の時の抵抗率として、下限値は1MΩ・cm以上、好ましくは3MΩ・cm以上、最適には5Ω・cm以上が本発明には適している。上限値は理論抵抗値(18.25MΩ・cm)までの何れの値でも可能であるが、コスト、生産性の面から17MΩ・cm以下、好ましくは15MΩ・cm以下、最適には13MΩ・cm以下が本発明には適している。微粒子量としては、0.2μm以上が1ミリリットル中に10000個以下、好ましくは1000個以下、最適には100個以下が本発明には適している。微生物量としては、総生菌数が1ミリリットル中に100個以下、好ましくは10個以下、最適には1個以下が本発明には適している。有機物量(TOC:Total Organic Carbon)は、1リットル中に10mg以下、好ましくは1mg以下、最適には0.2mg以下が本発明には適している。
上記の水質の水を得る方法としては、活性炭法、蒸留法、イオン交換法、フィルター濾過法、逆浸透法、紫外線殺菌法等があるが、これらの方法を複数組み合わせて用い、要求される水質まで高めることが望ましい。
【0037】
<電子写真感光体>
次に、本発明において、上述のように洗浄された円筒状基体を使用する電子写真感光体および電子写真感光体の形成方法について説明する。
まず図7は、本発明における電子写真感光体の実施形態の一例として、洗浄後の円筒状基体7101の表面に電荷注入阻止層7201、光導電層7202および表面層7301を順次積層した電子写真感光体7000の模式図である。
それでは、図1を使用して電子写真感光体を構成する各層について説明する。
まず、光導電層7202について説明する。光導電層7202は、電子写真感光体に照射される光の波長に感度を有する材料である必要があり、シリコン原子を含む材料が挙げられる。さらに、材質としては、シリコン原子を母体とするアモルファス材料を含むことが好ましい。また、光導電層には、光導電性および電荷保持特性を向上させるため、水素原子や、必要に応じてハロゲン原子を含有していてもよい。光導電層中の水素原子やハロゲン原子は、シリコン原子の未結合手に結合し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させ得る。水素原子の含有量は、特に制限はなく、露光系の波長に合わせて適宜変化させることができ、例えばシリコン原子と水素原子の和に対して10〜40原子%などとすることができる。また、その分布形状に関しても、露光系の波長に合わせて適宜調整することが好ましい。特に、水素原子やハロゲン原子の含有量をある程度多くすると、光学的バンドギャップが大きくなり、感度のピークが短波長側にシフトすることが知られている。
加えて、光導電層7202には伝導性を制御する原子を含有させても良い。
【0038】
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期表第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)、または周期表第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子としては、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sbが好適である。伝導性を制御する原子の光導電層中の含有量は、特に制限されないが、一般には0.05〜5原子ppmとすることができる。また、電子写真感光体の深さ方向に対して、画像露光の光が到達する範囲においては、伝導性を制御する原子を実質的に含有しない光導電層7202であってもよい。
また、光導電層7202は、その他、物性の制御性、作製上などの点から、ヘリウム原子、水素原子など適宜含有していてもよい。
【0039】
光導電層7202の層厚は所望の電子写真特性が得られることおよび製造上の効率や経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、例えば10〜50μm、好ましくは15〜45μm、より好ましくは20〜40μmである。層厚が10μm以上であれば、帯電能や感度等の電子写真特性が実用上充分となり、50μm以下であれば、光導電層7202を効率よく製造することができる。
このような光導電層7202は、電荷注入阻止層7201の表面に例えばグロー放電法により作製することができる。かかるグロー放電法としては、後述する高周波プラズマCVD装置を用いた方法を挙げることができる。
例えば、シリコン原子(Si)を供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子(H)を供給し得るH供給用の原料ガスと、必要に応じてハロゲン原子(X)を供給し得るX供給用の原料ガスとを、内部を減圧できる反応容器内に所望のガス状態で導入する。そして、反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある基体の表面にa-Si:H,Xからなる膜を形成する方法などを挙げることができる。
【0040】
Si供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、またはガス化し得る水素化ケイ素(シラン類)が挙げられる。層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点からSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。なお、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合してもよい。そして、膜の物性の制御性、ガスの供給の利便性などを考慮し、これらのガスに更に、H2、Heおよび水素原子を含むケイ素化合物から選ばれる1種以上のガスを所望量混合して層形成することもできる。
上記ハロゲン原子供給用の原料ガスとしては、具体的には、フッ素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物、SiF4、Si26等のフッ化ケイ素を好ましいものとして挙げることができる。光導電層中に含有されるハロゲン元素の量を制御するには、例えば、基体の温度、ハロゲン元素を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電空間の圧力、放電電力等を制御すればよい。
【0041】
また、光導電層7202の伝導性を制御する第13族原子であるホウ素原子導入用の原料物質としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化ホウ素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化ホウ素等が挙げられる。
この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH33、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。また、第15族原子であるリン原子導入用の原料物質としては、PH3、P24等の水素化リン、PH4I、PF3、PF5、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化リンが挙げられる。
この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第15族原子導入用の原料物質として挙げることができる。
これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
これらの原料ガスを用いて所望の膜特性を有する光導電層を形成するには、Si供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することができる。
【0042】
希釈ガスとして使用するH2および/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される。そして、Si供給用ガスに対し、例えば3〜30倍、好ましくは4〜15倍、より好ましくは5〜10倍の範囲である。
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択される。例えば1×10−2〜1×103Pa、好ましくは5×10−2〜5×102Pa、より好ましくは1×10−1〜2×102Paである。
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量に対する放電電力の比を、0.5〜8W/{ml/min(normal)}、好ましくは2〜6の範囲に設定することができる。
さらに、基体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、例えば100〜350℃、好ましくは150〜330℃、より好ましくは180〜300℃である。
光導電層7202を形成するための基体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられる。しかし、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する光導電層を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが好ましい。
【0043】
次に、電荷注入阻止層7201について説明する。電荷注入阻止層7201は光受容層が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、基体側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない。いわゆる極性依存性を有している。
そのような機能を付与するために、電荷注入阻止層7201には伝導性を制御する原子を光導電層7202に比ベて多く含有させる。
該層に含有される伝導性を制御する原子は、該層中に万偏なく均一に分布されてもよいし、或いは、不均一に分布する状態で含有している部分があってもよい。
分布濃度が不均一な場合には、基体側に多く分布するように含有させるのが好適である。しかしながら、いずれの場合にも基体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化をはかる点からも必要である。
【0044】
電荷注入阻止層7201に含有される伝導性を制御する原子としては、光導電層7202と同様に周期表第13族に属する原子(第13族原子とも略記する)、または周期表第15族に属する原子(第15族原子とも略記する)を用いることができる。
電荷注入阻止層7201に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定されることが好ましい。例えば、好ましくは1×10−2〜1×10原子ppm、より好ましくは5×10−2〜5×10原子ppm、最適には1×10−1〜1×10原子ppmとされるのが望ましい。さらに、電荷注入阻止層には、炭素原子の他に、窒素原子および酸素原子の少なくとも一種を含有させることによって、該電荷注入阻止層7201に直接接触して設けられる他の層との間の密着性の向上をより一層図ることができる。
電荷注入阻止層7201の堆積膜形成については、光導電層7202と同様の原料ガスを用いて形成できる。しかし、所望の特性を得るためにはSi供給用、ハロゲン添加用等のガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに基体温度を適宜設定することが必要である。
【0045】
次に、表面層7301について説明する。表面層7301は、アモルファスシリコン系の材料であればいずれの材質でも可能である。しかし、例えば、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、さらに炭素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a・SiC:H,X」とも表記する)材料も好適に用いられる。また、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、さらに酸素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a・SiO:H,X」とも表記する)材料も好適に用いられる。また、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、さらに窒素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a・SiN:H,X」とも表記する)材料も好適に用いられる。または、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、炭素原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも一つを含有するアモルファスシリコン(以下「a・SiCON:H,X」とも表記する)等の材料も好適に用いられる。
表面層7301は真空堆積膜形成方法によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件が設定されて作成されるが、光受容部材の生産性から光導電層7202および電荷注入阻止層7201と同等の堆積法によることが好ましい。
【0046】
炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4,C26,C38,C410等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられる。さらに層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率のよさ等の点でCH4,C26が好ましいものとして挙げられる。また、これらのC供給用の原料ガスを必要に応じて例えばH2や、希ガスのHe,Ar,Neにより希釈して使用してもよい。
表面層7301の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと光受容部材を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われる場合がある。また、3μmを越える場合は、例えば残留電位の増加、感度の変動による電子写真特性の低下がみられる場合がある。
以上が電子写真感光体を構成する各層に求められる特性および役割である。
次に、電荷注入阻止層7201、光導電層7202、表面層7301にa−Siを採用した場合における堆積膜形成の流れについて、プラズマCVD法を例にとって説明する。
【0047】
<堆積膜形成装置>
図8は、本発明の電子写真感光体の製造方法に使用できる、高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体を形成する堆積膜形成装置の一例の模式図である。
この装置は大別すると、反応容器8110を有する堆積形成装置8100、原料ガス供給装置8200、および、反応容器8110の中を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。
反応容器8110の中にはアースに接続された円筒状基体8112、円筒状基体加熱用ヒーター8113および原料ガス導入管8114が設置される。さらにカソード電極8111には高周波マッチングボックス8115を介して高周波電源8120が接続されている。
原料ガス供給装置8200は、SiH4,H2,CH4,NO,B26,CF4等の原料ガスボンベ8221〜8225、バルブ8231〜8235、圧力調整器8261〜8265、流入バルブ8241〜8245、流出バルブ8251〜8255およびマスフローコントローラー8211〜8215から構成される。また各原料ガスを封入したガスのボンベは補助バルブ8260を介して反応容器8110の中の原料ガス導入管8114に接続されている。
【0048】
次にこの装置を使った堆積膜の形成方法について説明する。まず、円筒状基体8112を反応容器8110に受け台8123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器8110の中を排気する。真空計8119の表示を見ながら、反応容器8110の中の圧力がたとえば1Pa以下の所定の圧力になったところで、円筒状基体加熱用ヒーター8113に電力を供給し、円筒状基体8112を例えば100℃から350℃の所望の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置8200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器8110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
次に、電子写真感光体を構成する各層、例えば電荷注入阻止層と光導電層、表面層に応じてガス供給装置8200より各堆積膜の形成に用いるガスを反応容器8110に供給する。すなわち、必要に応じバルブ8231〜8235、流入バルブ8241〜8245、流出バルブ8251〜8255を開き、マスフローコントローラ8211〜8215に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、真空計8119の表示を見ながらメインバルブ8118を操作し、反応容器8110の中の圧力が所望の圧力になるように調整する。所望の圧力が得られたところで高周波電源8120より高周波電力を印加すると同時に高周波マッチングボックス8115を操作し、反応容器8110の中にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
【0049】
そして、多層膜を形成する場合には、各層の堆積膜が所望の膜厚になった時点で高周波電力の印加を停止し、再び上記の手順を繰り返してそれぞれの層を形成すれば良い。または、連続的に高周波電力、原料ガスの種類、流量設定、円筒状基体加熱用ヒーター8113の電力、反応容器8110の中の圧力を再設定して堆積膜を形成してもよい。例えば、原料ガス流量や、圧力等を光導電層形成用の条件に一定の時間で変化させて、中間層の形成を行うこともできる。
以上のようにして、所定の層だけ堆積膜の形成が終わったところで、高周波電力の印加を停止する。そして、バルブ8231〜8235、流入バルブ8241〜8245、流出バルブ8251〜8255、および補助バルブ8260を閉じる。そして、原料ガスの供給を終えると同時に、メインバルブ8118を開き、反応容器8110の中を1Pa以下の圧力まで排気する。
【0050】
このようにして、すべての堆積膜形成が終わった後は、メインバルブ8118を閉じ、反応容器8110の中に不活性ガスを導入し大気圧に戻した後、円筒状基体8112を取り出す。
以上がRFプラズマCVD法による堆積膜形成を用いた電子写真感光体の製造方法である。
また、本発明は、プラズマを発生させるエネルギーは、DC、RF、マイクロ波あるいはVHF帯域の波等いずれでも可能であり、電子写真感光体の製造方法として使用できる。
そして、製造された電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版機などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の効果を、電子写真感光体用の基体を洗浄する方法の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
<実施例1>
円筒状基体としてアルミニウムよりなる直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体を得るために、前述の本発明による電子写真感光体の製造方法における手順の一例と同様の手順で表面の切削を行った。
円筒状基体を切削工程終了15分後に図1に示す本発明の洗浄装置に搬送し、表1に示す条件にて洗剤(純水+界面活性剤)による脱脂工程およびリンス工程、濯ぎ工程、そして乾燥工程の各工程において洗浄を実施した。その際、図1に示す第1の搬送手段である搬送アーム161と第2の搬送手段である昇降台104の間での円筒状基体の受け渡しの時に、搬送アーム161は予め受け渡し位置に配置した。また、円筒状基体の受け渡しは、図6に示すように洗浄槽の液面607より上とした。また、引き上げ速度は各工程ともに10mm/秒とし、乾燥工程後、搬出ストッカー671の上で30秒待ってから搬出ストッカー671の中に収納した。
【0052】
【表1】

【0053】
洗浄装置の各槽内にある図1の載置台105として、図2に示す稜線支持形状の載置台を使用した。
次に、これらの切削および洗浄を施した円筒状基体を前述の本発明による電子写真感光体の製造方法における手順の一例で示した図8の堆積膜形成装置に搬送した。
そして、堆積膜形成条件を表2の条件にして、前述の手順の一例と同様の方法で、円筒状基体上に図7に示す層構成のアモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。
【0054】
【表2】

【0055】
成膜終了後に以下の評価を行った。
[外観(外面、内面、端部シミ)]
洗浄装置による処理が終了した後、基体の外観シミについて下記の評価基準にもとづいて目視検査をした。また、○以上で本発明の効果が得られていると考える。
◎…外面、内面に全くシミが無く非常に良好
○…内面に僅かにシミが認められるが外面にはなく良好
△…外面に僅かにシミが認められる
×…外面にはっきり認められる
【0056】
[画像欠陥]
作製した電子写真感光体について、シミと付着物を評価するために、シミや付着物によって発生する画像欠陥を評価した。作製した電子写真感光体を電子写真装置(キヤノン社製iR5065を本テスト用に改造したもの)にセットし、黒チヤートを原稿台に置き、コピーしたときに得られたコピー画像の感光体の面積内にある直径0.1mm以下の白点について、その数を計数した。結果を表3に示す。ただし、「◎」は同一面積内に0〜2個、「○」は3〜5個、「△」は6〜10個、また「×」は11個以上それぞれ存在したものを表わす。また、○以上で本発明の効果が得られていると考える。
【0057】
【表3】

【0058】
<比較例1>
図1の載置台105として、円筒状基体の端部を面で支持する図9に示す形状の載置台を用いた以外は、実施例1と同様の洗浄条件で円筒状基体の洗浄(脱脂工程、リンス工程、濯ぎ工程及び乾燥工程)を実施した。
その後に、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。そして、実施例1と同様に外観(外面、内面、端部シミ)および画像欠陥の評価を実施した。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
<比較例2>
比較例2では、実施例1と同様に図2に示す稜線支持する形状の載置台を用いた。円筒状基体の受け渡し位置を載置面が図6に示す洗浄槽の液面607より下とし、円筒状基体の半分が液槽内にある時に受け渡しを行った。それ以外は実施例1と同様の洗浄条件で円筒状基体の洗浄(脱脂工程、リンス工程、濯ぎ工程及び乾燥工程)を実施した。そして、その後アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。また、実施例1同様に外観(外面、内面、端部シミ)および画像欠陥の評価を実施した。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】

【0062】
<実施例2>
実施例2では、洗浄装置の各槽内にある図1の円筒状基体の載置台105として、図3に示す円筒状基体の下端を稜線支持し、円筒状基体の内面と稜線接触する載置台を使用した。その他は、実施例1と同様の洗浄条件で洗浄(脱脂工程、リンス工程、濯ぎ工程及び乾燥工程)を実施した。その後、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。また、実施例1同様に外観(外面、内面、端部シミ)および画像欠陥の評価を実施した。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】

【0064】
<実施例3>
実施例3では、円筒状基体をアルミニウムよりなる直径108mm、長さ358mm、肉厚5mmの円筒状基体に変更し、前述の本発明による電子写真感光体の製造方法における手順の一例と同様の手順で表面の切削を行った。
そして、洗浄装置の各槽内にある図1の円筒状基体の載置台105として、図4に示す稜線支持形状でかつ位置決めガイドのある載置台を使用した。その他は実施例1と同様の洗浄条件で洗浄(脱脂工程、リンス工程、濯ぎ工程及び乾燥工程)を実施した。
その後、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。また、実施例1同様に外観(端部シミ)の評価を実施し、電子写真装置をキヤノン社製iR105に変更し改造したもので画像欠陥の評価を実施した。結果を表7に示す。
【0065】
【表7】

【0066】
<実施例4〜8>
実施例4は、引き上げ速度だけ1mm/秒に変更し、他の条件は実施例2と同様にして円筒状基体の洗浄を行い、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。実施例5は、引き上げ速度だけ2mm/秒に変更し、他の条件は実施例2と同様にして円筒状基体の洗浄を行い、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。実施例6は、引き上げ速度だけ30mm/秒に変更し、他の条件は実施例2と同様にして円筒状基体の洗浄を行い、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。実施例7は、引き上げ速度だけ50mm/秒に変更し、他の条件は実施例2と同様にして円筒状基体の洗浄を行い、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。実施例8は、引き上げ速度だけ60mm/秒に変更し、他の条件は実施例2と同様にして円筒状基体の洗浄を行い、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。
また、実施例1同様に外観(端部シミ)および画像欠陥の評価を実施した。結果を表8に示す。
【0067】
【表8】

【0068】
<実施例9〜13>
実施例9は、円筒状基体を図6の点線672の位置で5秒間保持した後に搬出ストッカーの中へ収納する以外は実施例2と同様の洗浄条件で円筒状基体の洗浄を実施した。また、同様に実施例10は10秒間保持、実施例11は20秒間保持、実施例12は60秒間保持、実施例12は180秒間保持した後に搬出ストッカーの中へ収納する以外は実施例2と同様の洗浄条件で円筒状基体の洗浄を実施した。その後、アモルファスシリコン堆積膜を形成し、電子写真感光体を作製した。また、実施例1と同様に外観(外面、内面、端部シミ)および画像欠陥の評価を実施した。結果を表9に示す。
【0069】
【表9】

【0070】
表3、表4から明らかな様に、円筒状基体を半径方向に稜線支持する載置台は、下端を面支持する載置台に対して、シミについて良好であることがわかった。また、表3、表5から明らかな様に、稜線支持する載置台を用いた場合でも、第1の搬送手段と第2の搬送手段による受け渡しの時に載置面の位置が液面より下の場合においては効果が得られない。したがって、稜線支持する載置台を用いて、第1の搬送手段と第2の搬送手段による受け渡しの時に載置面の位置を液面より上にすることで顕著な効果が得られることがわかった。
また、表3、表6から明らかな様に、稜線支持する載置台において、円筒状基体の水平方向の位置を決める位置決めガイドを有し、位置決めガイドと円筒状基体が稜線接触する載置台では、さらにシミについて良化することがわかった。
また、表7から明らかな様に、異なる径の円筒状基体について載置可能とした載置台についても同様の効果があり、シミについて良化することがわかった。
また、表6、表8から明らかな様に引き上げ速度は2mm/秒以上、50mm/秒以下の範囲にすることが、シミの低減に良いことがわかった。
さらに、表6、表9から明らかな様に、搬出ストッカーの上で円筒状基体を20秒以上保持した後に搬出ストッカーの中へ収納することが、シミの良化に良いことがわかった。また、実際には保持時間を余り長く取りすぎると洗浄のタクトが長くなってコストアップ要因になるため、好ましくは20秒以上60秒以下程度が選択される
また、当然のことながら、脱脂工程、リンス工程、濯ぎ工程、乾燥工程を連続して行うことで、時間を短縮でき効率的になった。
同様に、第1の搬送手段である図6の搬送アーム661を受け渡し位置で待機させることで、受け渡し時間が短縮でき効率的になった。
【符号の説明】
【0071】
101、701 円筒状基体
102 処理部
103 基体搬送機構
104 昇降台
105 載置台
111 基体投入台
121 脱脂槽
131 リンス槽
122、123 水
124 純水
125 温純水
141 濯ぎ槽
151 乾燥槽
161、661 搬送アーム
162、662 移動機構
163、663 チャッキング機構
164、664 エアーシリンダー
165、665 搬送レール
171、671 搬出ストッカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状基体を浸漬可能な洗浄槽、前記円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で前記円筒状基体の上部内面を保持しながら前記洗浄槽へ昇降させる第1の搬送手段、および前記洗浄槽の中で前記円筒状基体を載置して昇降させる第2の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う洗浄装置であって、
前記第2の搬送手段が前記円筒状基体の下端を稜線部分で支持する形状の載置台を有し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う位置は、載置面が洗浄液の液面より上に上昇した位置となることを特徴とする円筒状基体の洗浄装置。
【請求項2】
前記載置台が、さらに前記円筒状基体の水平方向の位置を決める位置決めガイドを有し、
前記位置決めガイドと前記円筒状基体が稜線接触することを特徴とする請求項1に記載の円筒状基体の洗浄装置。
【請求項3】
前記第2の搬送手段が、異なる径の円筒状基体を載置可能な載置台を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の円筒状基体の洗浄装置。
【請求項4】
前記第2の搬送手段の上昇速度が2mm/秒以上、50mm/秒以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄装置は、洗浄後の前記円筒状基体を収納する収納部をさらに具備し、前記洗浄槽からの引上げ工程後に、前記第1の搬送手段が前記円筒状基体を20秒以上保持した後に、収納部へ収納することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の円筒状基体の洗浄装置。
【請求項6】
円筒状基体を浸漬可能な洗浄槽、前記円筒状基体の円筒軸が鉛直となる状態で前記円筒状基体の上部内面を保持しながら前記洗浄槽へ昇降させる第1の搬送手段、および前記洗浄槽の中で前記円筒状基体を載置して昇降させる第2の搬送手段を具備し、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う洗浄装置を使用する円筒状基体の洗浄方法であり、
前記第2の搬送手段が、前記円筒状基体の下端を稜線部分で支持する形状の載置台を用い、前記第1の搬送手段と前記第2の搬送手段との間で前記円筒状基体の受け渡しを行う位置が、載置面が洗浄液の液面より上に上昇した位置であることを特徴とする円筒状基体の洗浄方法。
【請求項7】
請求項6の円筒状基体の洗浄方法を用いて洗浄した円筒状基体の上に非単結晶堆積膜を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−41901(P2011−41901A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191484(P2009−191484)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】