説明

円筒状容器の識別番号検査方法

【課題】円筒状容器の外周面に付された識別番号の文字列を高精度で自動認識すると共に、印字不良やラベル剥がれ等の外観異常を自動判定する。
【解決手段】円筒状容器1の外周面に付された複数の文字からなる識別番号7を認識する識別番号検査方法において、ターンテーブル5上を回転する円筒状容器1の外周面を撮影し特定マークを読み込む第1のステップと、前記特定マークを基準位置としての前記円筒状容器1の外周面を所定のコマ数撮影する第2のステップと、前記第2のステップで撮影された所定のコマ数の撮影画像から一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像を抽出する第3のステップと、前記第3のステップで抽出された一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像から中央位置にあるコマの撮影画像を抽出し文字認識を行う第4のステップと、前記文字認識にエラーが生じた場合読み取り条件を変更して前記第2から第4のステップを所定回数繰り返す第5のステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば放射性廃棄体等の円筒状容器の外周面に付された識別番号の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所並びに廃棄物受入・保管施設では、低レベル/高レベル合わせて年間数千体もの廃棄体の外観検査を行っているが、現状では直接もしくはカメラ映像の目視により監視員が一体毎に廃棄体の識別番号や傷・汚損有無等を確認している。
【0003】
従来の撮影装置を用いた外観検査方法を図4により説明する。検査対象の放射性廃棄体1を載置したターンテーブル5を一定速度で回転させる。その映像をITVカメラ等からなる撮影装置2により撮影し、録画装置3に録画データを保存するとともに、表示モニタ8で監視員の目視により廃棄体の識別番号や傷・汚損有無等を確認する。
【0004】
しかしながら、人間系による確認は誤判定のリスクを常に含んでいるため、人間系以外の外観検査方法の一つとしてカメラ映像による文字認識手法が提案されている。
例えば、一般的な文字認識の従来技術として、カメラの撮影範囲よりも広い領域の文章を、撮影範囲が徐々に変化する時系列で撮影された画像から文字列を作成することで、文章全体の文字認識を行う方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、ペットボトル等の円筒形の物体に対し、物体の上部にカメラ設置し、側面に反射鏡を配置することで、複数の画像を繋ぎ合わせること無く、1台のカメラで円筒形の物体の側面に印字された文字を読み取る方法も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−293122号公報
【特許文献2】特開2008−310783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1では人間系以外の外観検査方法の一つとしてカメラ映像による文字認識手段が提案されているが、放射性廃棄体等の円筒状容器(ドラム缶等)の場合、識別番号の両端の映像が歪んだり、1枚の静止画に映らない(入らない)といった問題から、複数枚の静止画を繋ぎ合わせる技術(モザイキング)が必要となるが、その場合、識別番号を自動で文字が重なることなく繋ぎ合わせることは極めて困難である。そのため、現時点では放射性廃棄体の識別番号の自動読み取り検査は採用には至っていない。
【0008】
このように、従来の複数の平面画像を繋ぎ合わせる手法は、放射性廃棄体のような円筒状容器に印字された文字列の読み取りには利用できない。また文字自体の汚れやラベル剥がれ等があった場合への対策も考慮されていない。
【0009】
また、特許文献2ではカメラを上部に設置し、側面に反射鏡を配置する装置が提案されているが、その場合、1枚の静止画で円筒上物体の側面全体の文字認識はできるが、反射鏡での読み取りにより文字が歪んでしまうため認識精度が確保できないといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、放射性廃棄体等の円筒状容器の外観検査において、容器外周面に付された識別番号の文字列を高精度で自動認識するとともに、印字不良やラベル剥がれ等の外観異常を自動判定することのできる、円筒状容器の識別番号検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る円筒状容器の識別番号検査方法は、円筒状容器の外周面に付された複数の文字からなる識別番号を認識する識別番号検査方法において、ターンテーブル上を回転する円筒状容器の外周面を撮影し特定マークを読み込む第1のステップと、前記特定マークを基準位置としての前記円筒状容器の外周面を所定のコマ数撮影する第2のステップと、前記第2のステップで撮影された所定のコマ数の撮影画像から一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像を抽出する第3のステップと、前記第3のステップで抽出された一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像から中央位置にあるコマの撮影画像を抽出し文字認識を行う第4のステップと、前記文字認識にエラーが生じた場合読み取り条件を変更して前記第2から第4のステップを所定回数繰り返す第5のステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円筒状容器の外周面に付された複数の文字からなる識別番号を、歪みに影響されずに高精度で文字認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る識別番号検査方法の全体構成図。
【図2】本実施形態に係る識別番号検査方法の処理フロー図。
【図3】(a)〜(c)は本実施形態に係る識別番号検査方法の処理例を示す模式図。
【図4】従来の識別番号検査方法の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る円筒状容器の識別番号検査方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(構成)
本実施形態に係る識別番号検査方法に用いられる識別番号検査装置は、図1に示すように、検査対象である円筒状の放射性廃棄体等からなる円筒状容器1を撮影するITVカメラ等からなる撮影装置2と、この撮影装置2で撮影された録画データを保存すると録画装置3と、録画装置3から録画データを取り込み画像処理を行う画像処理装置4と、容器1を回転させるターンテーブル5と、監視員へ文字認識結果もしくはエラーが判定された場合の外観異常発生位置結果を表示する表示モニタ6から構成される。
【0016】
検査対象の容器は半径rの円筒状容器1であり、その外周面には、例えば放射性物質が収納されていることを示す放射線標識等の特定マーク9が付与されているとともに、複数の英数字等の文字からなる識別番号7が印字されているか又はラベルとして貼着されている。その際、特定マーク9は円筒状容器の外周面の任意の箇所に付与され、また、複数の文字からなる識別番号7はそれぞれの文字幅(w)が同一であり横一列に略等間隔に付与されている。
撮影装置2は、例えば、容器1全体をカバーする撮影範囲で容器1を撮影するが、これに限定されず、数文字分をカバーする撮影範囲としてもよい。
【0017】
(作用)
上記のように構成された識別番号検査装置を用いて円筒状容器1の外周面に付された識別番号を自動で読み取り検査する方法を図2、図3を用いて説明する。
まず、検査対象である円筒状容器1を載せたターンテーブル5を回転させ、撮影装置2により円筒状容器1の外周面を撮影する。
【0018】
次に、円筒状容器1に印字されている特定マーク9(例えば、放射線標識)を読み込み基準位置とする。
撮影装置2は、この基準位置を1コマ目として、円筒状容器1を所定の周回時間(t)で回転させ、特定マーク9が再度出現する位置までLコマ撮影する(図3(a))。ここで、単位回転量当たりのコマ数はL/2πrで表され、また、一文字分のコマ数MはM=wL/2πrで表される。なお、wは一文字分の文字幅である
このコマ数Mが整数とならない場合は、コマ数Mが整数になるように円筒状容器1の周回時間(t)又は録画レート(L/t)を調整する。これにより、円筒状容器1の外周面の幅wの一文字分の領域に対し、それぞれMコマの画像が得られる(図3(b)参照)。なお、本実施形態では、各コマの撮影範囲は円筒状容器1全体である。
【0019】
次に、Mコマの画像から中央位置にあるコマの画像を取り込み、中心位置に文字があれば当該文字を円筒状容器1の識別番号を表す文字として認識し表示モニタ6に表示する。図3(c)は中央位置にあるコマの画像で、文字「2」が画像の中心に配置されているので歪みのない画像を得ることができる。この動作を円筒状容器1の外周面全体にわたって複数回繰り返す。
【0020】
一方、文字が中心位置にないことによる歪み又は不鮮明で文字を明確に認識できない等のエラーが判定された場合は、例えば、特定マーク9から所定距離離れた位置を基準位置として1コマ目の撮影開始位置を変更したり、撮影位置を変更する等して、再度、上記の文字認識操作をおこない、エラーが無くなるまで所定の回数実施する。
指定された回数実施してもエラーとなる文字については外観異常として判定し、外観異常の発生位置を監視員への表示モニタ6に表示する。
【0021】
図2は上述した文字認識操作の処理フロー図である。
(効果)
本実施形態によれば、1文字分に対応する複数コマの画像から中央位置にあるコマの画像を取り込むことにより、円筒状容器外周面に付された複数の文字からなる識別番号について、歪みが少なく精度の高い文字認識が可能となる。また、一文字分の領域ごとに認識処理を行うことにより、同じ文字が連続した場合でも文字が重なること無く文字認識することが可能となり文字数判定精度も向上する。
【0022】
さらに、所定回数繰り返しても文字認識や文字数のエラーが発生した場合、容器の識別番号の印字不良・文字の重なりやラベル剥がれ等の外観異常として自動判定することが可能となる。
【0023】
なお、上記実施形態では、検査対象として放射性廃棄体等からなる円筒状容器を対象としているが、これに限定されず円筒状、楕円状又は多角形状の容器、物体にも適用できる。
【0024】
また、本実施形態では、特定マークとして放射線標識を用いているが、これに限定されず、他の標識又は特定の文字を特定マークとして用いてもよい。しかしながら、放射線標識を特定マークとすることにより、サイズ、仕様が異なる放射性廃棄体について共通のデータベースの作成、記録管理が容易となる。
【符号の説明】
【0025】
1…容器、2…撮影装置、3…録画装置、4…画像処理装置、5…ターンテーブル、6…表示モニタ、7…識別番号、8…表示モニタ、9…特定マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状容器の外周面に付された複数の文字からなる識別番号を認識する識別番号検査方法において、
ターンテーブル上を回転する円筒状容器の外周面を撮影し特定マークを読み込む第1のステップと、前記特定マークを基準位置としての前記円筒状容器の外周面を所定のコマ数撮影する第2のステップと、前記第2のステップで撮影された所定のコマ数の撮影画像から一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像を抽出する第3のステップと、前記第3のステップで抽出された一文字分の幅に相当するコマ数の撮影画像から中央位置にあるコマの撮影画像を抽出し文字認識を行う第4のステップと、前記文字認識にエラーが生じた場合読み取り条件を変更して前記第2から第4のステップを所定回数繰り返す第5のステップと、を有することを特徴とする円筒状容器の識別番号検査方法。
【請求項2】
前記第5のステップにおいて所定回数文字認識を繰り返してもエラーが生じる場合、当該エラーの発生位置を表示モニタに表示することを特徴とする請求項1記載の円筒状容器の識別番号検査方法。
【請求項3】
前記第5のステップにおいて基準位置を変更することにより読み取り条件を変更することを特徴とする請求項1又は2記載の円筒状容器の識別番号検査方法。
【請求項4】
前記特定マークは前記円筒状容器の外周面に付された標識であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の円筒状容器の識別番号検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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