説明

冊子処理装置

【課題】平坦なレイアアウトにしても、設置箇所が限定されることなく、また、操作者による冊子の供給、取出し作業を容易化できるようにする。
【解決手段】水平に配置される上部側及び下部側の搬送路16,17の対向部にそれぞれスイッチバック搬送機能を有するチルト搬送部16b,17bを設け、冊子3が上部側のチルト搬送部16b内に搬送されるのに基づいて、上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bをそれぞれ互いに逆方向に鋭角に回動させることにより接続して傾斜搬送路18を構成し、この傾斜搬送路18を介して冊子3を下部側搬送路17へ移送するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、銀行通帳等の冊子を作成する冊子処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冊子処理装置には、その装置本体内の一側上部側に冊子供給部を備えるとともに、この冊子供給部の下方部に冊子集積部を備えるものがある。
【0003】
この冊子処理装置では上記冊子供給部から冊子を供給し、この冊子を上部側の水平な搬送路に沿って装置本体内の他側部側に向かって搬送して頁捲り部で頁を捲って開く。そして、この冊子を下方に向かって搬送して印刷部で情報を印刷し、この印刷後、冊子を下部側の水平な搬送路に沿って装置本体内の一側部側に向かって搬送してその印刷状態を検査部で検査する。この検査後、冊子の頁を折畳部で折り畳んで閉じてから上記した冊子集積部に排出して集積するようになっている。
【0004】
しかしながら、上記した冊子処理装置は、装置本体内に冊子供給部と冊子集積部を上下方向に沿って配設するため、上下方向の寸法が大きくなり、カウンタ上などに設置した場合には、冊子供給部の位置が高くなり過ぎてしまう。このため、冊子供給部への冊子の補充作業がし難くなるという問題があった。
【0005】
そこで、冊子供給部、印刷部、検査部、折畳部、及び冊子集積部などを一方向に沿って配置することにより平坦なレイアウトにし、これにより、カウンタ上などに設置した場合でも冊子供給部の位置が高くなり過ぎないようにしたものが開発されている。
【0006】
しかしながら、冊子供給部、印刷部、検査部、折畳部及び冊子集積部を一方向に沿って配置した場合には、水平方向に沿う冊子搬送路の全長が長くなり、設置箇所が限定されてしまうという問題があった
また、冊子供給部と冊子集積部との間の距離が長くなるため、操作者が冊子供給部へ冊子を補充したのち、冊子集積部に集積された冊子を取出すために冊子集積部へ移動する際には移動距離が長くなり、作業効率が低下するという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−197329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、平坦なレイアアウトにしても、設置箇所が限定されることなく、また、操作者による冊子の補充、取出し作業を容易化できる冊子処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施の形態は、ICを有した冊子を供給する冊子供給部と、この冊子供給部から供給された冊子を開かれた状態で搬送する水平な上部側搬送路と、この上部側搬送路に所定間隔を存して一部対向させ、前記上部側搬送路から送り出される前記冊子を受けて搬送する水平な下部側搬送路と、前記搬送される冊子のICに対し情報の読書き、及び書込情報の正誤を判別する情報処理手段と、この情報処理手段により情報処理されて搬送されてくる前記冊子に情報を印刷する印刷手段と、この印刷手段により情報が印刷されて搬送されてくる冊子を集積する冊子集積部と、前記上部側及び下部側の搬送路の対向部にそれぞれ設けられ、前記冊子を正逆方向に搬送するスイッチバック機能を有するチルト搬送部と、前記冊子が前記上部側のチルト搬送部内に搬送されるのに基づいて、前記上部側及び下部側のチルト搬送部をそれぞれ互いに逆方向に鋭角に回動させることにより接続して傾斜搬送路を構成し、この傾斜搬送路を介して前記冊子を前記下部側搬送路へ移送するように制御する制御手段とを具備し、前記情報処理手段は、前記上部側のチルト搬送部に設けられることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施の形態である冊子処理装置を示す概略的構成図。
【図2】図1の上部側及び下部側のチルト搬送部を示す構成図。
【図3】図2の上部側のチルト搬送部に向かって冊子が搬送される状態を示す図。
【図4】図3の上部側のチルト搬送部に冊子が受け入れられた状態を示す図。
【図5】図4の上部側及び下部側のチルト搬送部がそれぞれチルトされて傾斜搬送路が構成された状態を示す図。
【図6】図5の傾斜搬送路の上部側のチルト搬送部から下部側のチルト搬送部に向かって冊子が搬送される状態を示す図。
【図7】図6の傾斜搬送路から冊子が排出されて回収部に排除される状態を示す図。
【図8】図5の傾斜搬送路の上部側のチルト搬送部から下部側のチルト搬送部に冊子が送られたのち、上部側及び下部側のチルト搬送部が水平にチルトされて初期位置に復帰された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、実施形態である冊子処理装置を示す概略的構成図である。
【0013】
冊子処理装置は装置本体1を有し、この装置本体1内の一側部側には冊子供給部2が設けられている。この冊子供給部2内には閉じられた状態で、固有情報が記録されたICを備える冊子3が複数通積層状態で収納されている。冊子供給部2内の冊子3は、その下部側から一通ずつ取出ローラ(図示しない)により取り出されて搬送ローラ対22によって搬送路5に沿って挟持搬送されるようになっている。
【0014】
搬送路5中には、冊子搬送方向に沿って順次、冊子3の特定の頁を捲る頁捲り部7、情報処理手段としてのIC−RW部6、印刷手段としての印刷部8が配設されている。
【0015】
IC−RW部6は、冊子3のICに記録された固有情報を読み取るとともに、ICに対し、外部端末12から制御処理部(制御手段)13に入力される印字データに基づいて固有データを書き込み、さらに、書き込んだ固有データをベリファイするものである。
【0016】
印刷部8は、外部端末12から制御処理部13に入力される印字データに基づいて冊子3の頁に固有データを印刷するものである。
【0017】
また、搬送路5中には、冊子3に印刷された印刷面をカメラによって撮像してその撮像内容と、外部端末12によって入力された印字データの内容を照合して正しく印刷されたか否かを検査する検査部9、及び、検査部9によって検査された冊子3の頁を折り畳む折畳部10が配設されている。
【0018】
さらに、搬送路5の搬出側には、搬送路5から排出される冊子3を積層状態に集積する冊子集積部14が設けられている。
【0019】
ところで、上記した冊子3の搬送路5は、上下に水平に配設される上部側搬送路16と下部側搬送路17とからなり、図2に拡大して示すように、その一部、即ち、上部側搬送路16の冊子搬送方向下流側の第1の搬送エリア16aと、下部側搬送路17の冊子搬送方向上流側の第2の搬送エリア17aとを所定間隔を存して対向させている。
【0020】
第1の搬送エリア16aには上部側のチルト搬送部16b、第2の搬送エリア17aには下部側のチルト搬送部17bが設けられている。
【0021】
上部側のチルト搬送部16bは、冊子搬送方向の最下流側の支点16cを中心として下方に鋭角、例えば、20°〜30°の角度で回動されるようになっている。下部側のチルト搬送部17bは、冊子搬送方向の最上流側の支点17cを中心として上方に鋭角、例えば、20°〜30°の角度で回動されるようになっている。
【0022】
上部側のチルト搬送部16bには正逆回転する搬送ローラ対23、下部側のチルト搬送部17bには正逆回転する搬送ローラ対24がそれぞれ冊子の搬送方向に沿って所定間隔を存して配設され、スイッチバック搬送機能が持たされている。
【0023】
上記した制御処理部13は、上部側のチルト搬送部16b内に冊子3が搬送されるのに基づいて、上、下部のチルト搬送部16b,17bを、上記した角度で回動させることにより、その回動端側を接続して傾斜搬送路18を構成するように制御する。
【0024】
また、制御処理部13は、傾斜搬送路18を構成したのちは、上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bの搬送ローラ対23,24をそれぞれ逆回転させて冊子3を挟持搬送させ、冊子3が上部側のチルト搬送部16bから下部側のチルト搬送部17b内に搬送されたのちは、上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bを回動させて初期位置に復帰させ、下部側のチルト搬送部17bの搬送ローラ対24を正回転させて送り出すように制御する。
【0025】
さらに、制御処理部13は、IC−RW部6のベリファイによりICに書き込まれた情報が誤っていると判断された冊子3が傾斜搬送路18に搬送されてきた場合には、傾斜状態を保ったまま、傾斜搬送路18から冊子3を排出させるように制御する。
【0026】
一方、上記したIC−RW部6は、上部側のチルト搬送部16bに設けられている。
【0027】
また、上記した下部側搬送路17のチルト搬送部17bを備える第2の搬送エリア17a、冊子3を印刷部8に向かって搬送する際に、一時的に冊子を2通分待機させる待機部として兼用されるようになっている。
【0028】
さらに、傾斜搬送路18の冊子排出側には、排出される冊子3を回収するための回収部20が設けられている。
【0029】
次に、上記した冊子処理装置の処理動作について説明する。
【0030】
図1に示すように、冊子供給部2に収納された冊子3は取出ローラ(図示しない)により下部側のものから一通ずつ取り出されて供給され、搬送ローラ対22によって搬送路5に沿って挟持搬送される。
【0031】
この冊子3は頁捲り部7に送られ、ここで特定の頁が捲られたのち、図3に示すように上部側のチルト搬送部16bに向かって搬送される。そして、冊子3が図4に示すように上部側のチルト搬送部16bに至ると停止され、冊子3のICに記録されている固有情報がIC−RW部6によって読み取られるとともに、固有データが書き込まれ、さらに、書き込まれた固有データがベリファイされる。
【0032】
このベリファイが完了すると、チルト搬送部16bは冊子3を取り込んだまま図5に示すように下方へ所定角度(30°以下)チルトする。また、このとき、下部側のチルト搬送部17bが上方へ同じ角度チルトしてその回動端側を、上部側のチルト搬送部16bの回動端側に接続させて傾斜搬送路18を構成する。
【0033】
こののち、傾斜搬送路18を構成する上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bの搬送ローラ対23,24が逆回転されて図6に示すように、冊子3が矢印方向に沿って搬送される。この搬送される冊子3のICに書き込まれた固有データがベリファイの結果、誤ったものであると判断されたものである場合には、図7に示すように、そのまま搬送されて回収部20に排出される。
【0034】
また、冊子3のICに書き込まれた固有データがベリファイの結果、正しいものであると判断されたものである場合には、冊子3が上部側のチルト搬送部16bから下部側のチルト搬送部17bに取り込まれた時点で一時停止される。そして、この停止後、図8に示すように上部側のチルト搬送部16bが上方へチルトして初期位置に復帰し、下部側のチルト搬送部17bが下方へチルトして初期位置に復帰し互いに平行状態になる。ここで、冊子3は一時的に待機されたのち、搬送ローラ対24、搬送ローラ対22が正回転されて矢印方向に搬送されて印刷部8へ送られ、印字情報が印刷される。印刷された冊子3は図1に示す検査部9に搬送されて印字内容が検査されたのち、折畳部10に搬送されて頁が折り畳まれて閉じられる。そして、この閉じられた冊子3は、冊子集積部11に排出されて集積され、処理が終了する。
【0035】
この実施の形態によれば、水平に配設される上部側及び下部側の搬送路16,17の一部を所定間隔を存して対向させ、その対向部にそれぞれスイッチバック機能を有するチルト搬送部16b,17bを設け、冊子3が上部側のチルト搬送部16b内に搬送されるのに基づいて、上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bをそれぞれ互いに逆方向に鋭角に回動させることにより接続して傾斜搬送路18を構成し、この傾斜搬送路18を介して冊子3を下部側搬送路17へ移送するように制御するため、搬送路の長さを短縮化して冊子供給部2と冊子集積部11との間の距離を短くできる。従って、平坦なレイアアウトにしても、設置箇所が限定されることなく、また、操作者による冊子の供給、取出し作業を容易化できる。
【0036】
また、上部側及び下部側のチルト搬送部16b,17bをそれぞれ互いに逆方向に鋭角に回動させることにより接続して傾斜搬送路18を構成するため、チルト角を浅くでき、上下部2段の搬送路の高さの差異を最小限にとどめることが出来る。
【0037】
なお、上記した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
2…冊子供給部、3…冊子、6…IC−RW(情報処理手段)、8…印刷部(印刷手段)、11…冊子集積部、13…制御処理部(制御手段)、16…上部側搬送路、17…下部側搬送路、16b,17b…チルト搬送部、18…傾斜搬送路、20…回収部、22,23,24…搬送ローラ対。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICを有した冊子を供給する冊子供給部と、
この冊子供給部から供給された冊子を開かれた状態で搬送する水平な上部側搬送路と、
この上部側搬送路に所定間隔を存して一部対向させ、前記上部側搬送路から送り出される前記冊子を受けて搬送する水平な下部側搬送路と、
前記搬送される冊子のICに対し情報の読書き、及び書込情報の正誤を判別する情報処理手段と、
この情報処理手段により情報処理されて搬送されてくる前記冊子に情報を印刷する印刷手段と
この印刷手段により情報が印刷されて搬送されてくる冊子を集積する冊子集積部と、
前記上部側及び下部側の搬送路の対向部にそれぞれ設けられ、前記冊子を正逆方向に
搬送するスイッチバック機能を有するチルト搬送部と、
前記冊子が前記上部側のチルト搬送部内に搬送されるのに基づいて、前記上部側及び下部側のチルト搬送部をそれぞれ互いに逆方向に鋭角に回動させることにより接続して傾斜搬送路を構成し、この傾斜搬送路を介して前記冊子を前記下部側搬送路へ移送するように制御する制御手段とを具備し、
前記情報処理手段は、前記上部側のチルト搬送部に設けられることを特徴とする冊子処理装置。
【請求項2】
前記傾斜搬送路の近傍に設けられ、前記ICの書込情報に誤りがあると判別されて前記傾斜搬送路から排出される冊子を回収する回収部を備えることを特徴とする請求項1記載の冊子処理装置。
【請求項3】
前記下部側のチルト搬送部は、前記印刷手段に向かって搬送される冊子を一時的に待機させる待機部として兼用されることを特徴とする請求項1または2記載の冊子処理装置。
【請求項4】
前記上部側及び下部側のチルト搬送部は、20°から30°の角度で回動することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の冊子処理装置。
【請求項5】
前記上部側及び下部側のチルト搬送部は、正逆方向に回転して前記冊子を正逆方向に挟持搬送する搬送ローラ対を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の冊子処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221232(P2012−221232A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86522(P2011−86522)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】