説明

再フォーマット方法及びコンピュータプログラム、並びに情報処理装置

【課題】記録媒体のフォーマットが不完全であっても、情報処理装置が誤認識しないようにするための記録媒体の再フォーマット技術を提供する。
【解決手段】FATファイルシステムでフォーマット済みの記録媒体を、FATファイルシステムで再フォーマットする再フォーマット方法であって、記録媒体上の既存のシステム領域のデータを消去する消去ステップ(S103、S104)を行う。また、消去ステップを行った後、記録媒体上にFAT領域を生成するFAT領域生成ステップ(S109、S110)を行う。また、FAT領域生成ステップを行った後、記録媒体上にBPB領域を生成するBPB領域生成ステップ(S111)を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるファイルシステム(例えばFATファイルシステム)でフォーマット済みの記録媒体を、同じファイルシステムで再フォーマットする再フォーマット方法及びコンピュータプログラム、並びに情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来例に係るFATファイルシステムでフォーマット済みの記録媒体を、FATファイルシステムで再フォーマットする再フォーマット方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0003】
まず、ステップS201で、MBR(マスターブートレコード)領域が正常であるか否かが判断される。MBR領域が正常でなければ、ステップS202で、MBR領域が初期化される。
【0004】
MBR領域が正常であるとき、及びステップS202でMBR領域が初期化されたときは、ステップS203で、記録媒体の物理サイズからフォーマットに必要なパラメータが算出(計算)される。
【0005】
次に、BPB(BIOSパラメーターブロック)領域の初期化(S204)、FAT1領域の初期化(S205)、FAT2領域の初期化(S206)、ルートディレクトリ領域の初期化(S207)が順に実行される。
【0006】
その後、ステップS208で、この再フォーマットがクイックフォーマットであるか否かが判断される。クイックフォーマットであれば、本フローチャートを終了し、そうでなければ(フルフォーマットであれば)、ステップS209でユーザー領域が消去される。
【0007】
尚、上記再フォーマット方法に関連した技術として特許文献1記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−47136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、情報処理装置が、上記の手順で既にフォーマット済みの記録媒体を再フォーマットする場合、その再フォーマットの実行中にユーザーが強制的に記録媒体を引き抜いて、再フォーマットを中断させてしまうことがある。この場合、再フォーマットの処理は途中までしか完了していない。例えば、図4の処理でステップS204までの処理が完了し、ステップS205を行っているときに記録媒体が引き抜かれると、MBR領域及びBPB領域は再フォーマット済みで、FAT1領域、FAT2領域及びルートディレクトリ領域が再フォーマットされてない記録媒体ができあがる。この記録媒体は、つまり、既に再フォーマットの処理が完了した領域(MBR領域及びBPB領域)と、それ以外の再フォーマットの処理が未完了の領域(FAT1領域、FAT2領域及びルートディレクトリ領域)とが整合しない状態となる。
【0010】
このとき、その記録媒体があらためて情報処理装置に装着されると、MBR領域及びBPB領域が正常に存在するため、この情報処理装置は、挿入された記録媒体をFATファイルシステムで正常にフォーマットされた記録媒体と誤認識する。つまり、情報処理装置から見ると、その記録媒体は一見正常に見えるが、FAT1領域、FAT2領域及びルートディレクトリ領域がMBR領域及びBPB領域と不整合であるため、実際には、その記録媒体に格納されているデータを正常に認識することができない。従って、情報処理装置は、この記録媒体についてエラーが発生したことをユーザーに報知する。
【0011】
しかしながら、ユーザーはこのエラーの原因が再フォーマット処理の中断に起因する誤認識であることは気付きにくい。そのため、ユーザーは対処方法がわからずに、困惑してしまうことが多い。
【0012】
あるいは、上記のような不整合状態の記録媒体が挿入されても、情報処理装置がまったくエラーを検知することなく、一見正常にデータを記録することができる場合もある。しかし、このときは、ユーザーが別の情報処理装置でそのデータを読み出そうとしても、それを読み出すことができないという問題が生じる。
【0013】
記録媒体の容量が2GB程度の場合には、このような誤認識が生じることは稀であった。なぜならば、システム領域が1MB程度と比較的小さく、システム領域の再フォーマットに要する時間はそれほど長くない。従って、再フォーマット途中で記録媒体が引き抜かれることが少ないし、仮に引き抜かれたとしても、システム領域の初期化が終了している場合も多い。
【0014】
一方、最近の記録媒体は32GBなどの大容量の記録媒体も広く普及し始めている。この記録媒体ではシステム領域が数MBになり、それに応じて、システム領域の初期化に要する時間も長くなっている。その結果、上記のような、システム領域に不整合を有する記録媒体ができあがる可能性が高まっている。
【0015】
そこで、本発明の目的は、フォーマットが中断された状態の記録媒体であっても、情報処理装置が誤認識しないようにするための記録媒体の再フォーマットの技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一つの実施態様に係る、FATファイルシステムでフォーマット済みの記録媒体を、FATファイルシステムで再フォーマットする再フォーマット方法は、前記記録媒体上の既存のシステム領域のデータを消去する消去ステップと、前記消去ステップを行った後、前記記録媒体上にFAT領域を生成するFAT領域生成ステップと、前記FAT領域生成ステップを行った後、前記記録媒体上にBPB(BIOSパラメーターブロック)領域を生成するBPB領域生成ステップと、を行う。
【0017】
この再フォーマット方法で再フォーマットを行っている途中で、再フォーマット処理が中断されたときには、BPB領域とFAT領域とが不整合となることを防止できる。
【0018】
好適な実施形態では、前記消去ステップを行う前に、前記記録媒体の記憶容量に基づいて前記フォーマットに必要なフォーマットパラメータを算出する算出ステップを、さらに実行し、前記FAT領域生成ステップでは、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置に、前記FAT領域を生成し、前記BPB領域生成ステップでは、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置に、前記BPB領域を生成するようにしてもよい。
【0019】
好適な実施形態では、前記消去ステップを行った後であり、かつ、前記FAT領域生成ステップを行う前に、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置にルートディレクトリ領域を生成するルートディレクトリ領域生成ステップを、さらに行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置のブロック図である。
【図2】FATファイルシステムの構成図である。
【図3】図1の情報処理装置によって実行される再フォーマット方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】従来例に係る再フォーマット方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置のブロック図である。ここで、情報処理装置としては、例えば、デジタルカメラ、フォトビューワー、プリンター、パソコン等が挙げられる。
【0023】
図1において、情報処理装置100は、全体の制御を司るCPU101と、処理のプログラムを記憶したROM102と、CPU101がプログラムを実行するときに使用するRAM103と、メモリーカード105が着脱可能なカードスロット104とを備える。記録媒体(外部記録媒体)としてのメモリーカード105がカードスロット104に装着される。
【0024】
情報処理装置100は、指定されたファイルシステムでメモリーカード105をフォーマットする。特に、既にフォーマット済みのメモリーカード105を同一のファイルシステムでフォーマットする場合は、そのファイルシステムでの再フォーマットとなる。ここでは、ファイルシステムの一例として、FATファイルシステムを例にとって説明する。FATファイルシステムで再フォーマットの場合には、後述するように、ユーザー領域の初期化を行わないクイックフォーマットを行うこともできる。以下に説明する再フォーマット方法は、CPU101が、ROM102に格納されている所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
図2は、FATファイルシステムに従うメモリーカード105の記録領域の論理的な構成図である。
【0026】
図2において、メモリーカード105は、MBR(マスターブートレコード)領域210と、FATファイルシステムに従うシステム領域220及びユーザー領域230を有する。
【0027】
システム領域220は、BPB領域221、FAT1領域222、FAT2領域223、及びルートディレクトリ領域224を有する。情報処理装置が記憶媒体を認識する際、BPB領域221が正常であることが不可欠である。つまり、情報処理装置がBPB領域221を認識できないときは、そのメモリーカード105ではFATファイルシステムに従うフォーマットになっていない(初期化エラー)と認識される。
【0028】
図3は、図1の情報処理装置によって実行される再フォーマット方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0029】
図3において、CPU101は、まず、メモリーカード105の物理サイズ(記憶容量)からフォーマットに必要なパラメータを算出(計算)する(ステップS101)。つまり、ステップS101は、メモリーカード105の記憶容量に基づいてフォーマットに必要なフォーマットパラメータを算出する算出ステップである。ここで算出されるパラメータは、例えば、SDメモリーカードであれば、図4のステップS203において示したものと同様である。
【0030】
次に、CPU101は、フォーマット種別がクイックフォーマットであるか、フルフォーマットであるかを判断する(ステップS102)。クイックフォーマットの場合は、CPU101は、システム領域220の記憶内容のみを消去する(ステップS103)。フルフォーマットの場合は、CPU101は、システム領域220及びユーザー領域230の記憶内容をいずれも消去する(ステップS104)。ここで、少なくともシステム領域の消去に関しては、それ以前のデータが残らないように、意味のないデータ(例えば0x00または0xFF)を上書きする。
【0031】
ステップS103及びS104は、いずれも、記録媒体(メモリーカード105)上の既存のシステム領域のデータを消去する消去ステップである。
【0032】
次に、CPU101は、MBR領域210が必要であるか否か判断する(ステップS105)。これは、記録媒体のフォーマットの規格によっては、MBR領域210を必要としないものもあるからである。MBR領域210が必要でないときは(ステップS105:No)、以下のステップS106,S107をスキップする。
【0033】
そして、MBR領域210が必要であれば(ステップS105:Yes)、CPU101は、既に存在するMBR領域210が正常か否か判断する(ステップS106)。MBR領域210が正常でなければ(ステップS106:No)、CPU101は、MBR領域210を初期化する(ステップS107)。
【0034】
MBR領域210が必要でないとき(ステップS105:No)、MBR領域210が正常であるとき(ステップS106:Yes)、または、ステップS107でMBR領域210を初期化したときは、CPU101が、システム領域220及びユーザー領域230を初期化する。すなわち、CPU101は、ルートディレクトリ領域224の初期化(ステップS108)、FAT2領域223の初期化(ステップS109)、FAT1領域222の初期化(ステップS110)、及びBPB領域221の初期化(ステップS111)を順次実行して、本処理を終了する。なお、FAT1領域222、FAT2領域223の初期化処理は、物理的な初期化処理でもよいし、論理的な初期化処理でもよい。
【0035】
BPB領域221の初期化処理は、FAT1領域222、FAT2領域223の初期化処理と比べると、短時間で終了する。従って、比較的長い時間を要するFAT1領域222、FAT2領域223の初期化処理を先に行い、これが完了した後に、BPB領域221を初期化することによって、BPB領域221が初期化されているときには、必ずFAT1領域222、FAT2領域223の初期化が完了していることを担保できる。
【0036】
ステップS109及びS110は、消去ステップを行った後、記録媒体(メモリーカード105)上にFAT領域を生成するFAT領域生成ステップである。
【0037】
また、ステップS111は、FAT領域生成ステップを行った後、記録媒体上(メモリーカード105)にBPB領域を生成するBPB領域生成ステップである。
【0038】
また、FAT領域生成ステップでは、ステップS101(算出ステップ)で算出されたフォーマットパラメータにより定まる記録媒体(メモリーカード105)上の位置に、FAT領域(FAT1領域、FAT2領域)を生成(初期化)する。
【0039】
また、ステップS111(BPB領域生成ステップ)では、ステップS101(算出ステップ)で算出されたフォーマットパラメータにより定まる記録媒体(メモリーカード105)上の位置に、BPB領域221を生成する。
【0040】
また、ステップS108は、ステップS101の算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる記録媒体(メモリーカード105)上の位置に、ルートディレクトリ領域224を生成するルートディレクトリ領域生成ステップである。そして、このステップS108は、ステップS103またはS104の消去ステップを行った後であり、かつ、ステップS109及びS110のFAT領域生成ステップを行う前に実行される。
【0041】
以上のように、本発明の再フォーマット方法では、各領域の初期化の前に、ステップS103またはS104で、予めシステム領域及びユーザー領域を消去しておく。これによって、再フォーマット中にメモリーカード105がカードスロット104から抜き出されたときには、システム領域220の一部(例えばBPB領域221、あるいはBPB領域221とFAT1領域222、あるいはBPB領域221とFAT1領域222とFAT2領域223など)が存在しないことになる。このため、このメモリーカード105が改めてカードスロット104に装着された場合、システム領域が不完全(特に、BPB領域221の不存在)であるため、初期化エラーが確実に発生する。
【0042】
従って、このメモリーカード105が中途半端に動作してユーザーに無用の混乱を与えるということはなくなる。また、情報処理装置の誤動作の可能性も最小限に抑えることができる。また、ユーザーもメモリーカード105が正確に再フォーマットされていないことを容易に把握することができる。
【0043】
本実施形態に係る記録媒体の再フォーマット方法によれば、再フォーマットが中断された状態の記録媒体であっても、情報処理装置に誤認識させないようにすることができる。
その結果、ユーザーはその記録媒体はフォーマットが完了していないことを知ることができる。
【0044】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 カードスロット
105 メモリーカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FATファイルシステムでフォーマット済みの記録媒体を、FATファイルシステムで再フォーマットする再フォーマット方法であって、
前記記録媒体上の既存のシステム領域のデータを消去する消去ステップと、
前記消去ステップを行った後、前記記録媒体上にFAT領域を生成するFAT領域生成ステップと、
前記FAT領域生成ステップを行った後、前記記録媒体上にBPB(BIOSパラメーターブロック)領域を生成するBPB領域生成ステップと、を行う再フォーマット方法。
【請求項2】
前記消去ステップを行う前に、前記記録媒体の記憶容量に基づいて前記フォーマットに必要なフォーマットパラメータを算出する算出ステップを、さらに実行し、
前記FAT領域生成ステップでは、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置に、前記FAT領域を生成し、
前記BPB領域生成ステップでは、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置に、前記BPB領域を生成する、請求項1記載の再フォーマット方法。
【請求項3】
前記消去ステップを行った後であり、かつ、前記FAT領域生成ステップを行う前に、前記算出ステップで算出されたフォーマットパラメータにより定まる前記記録媒体上の位置にルートディレクトリ領域を生成するルートディレクトリ領域生成ステップを、さらに行う、請求項2記載の再フォーマット方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の再フォーマット方法を情報処理装置に実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の再フォーマット方法を実行する情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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