説明

再帰反射シート

【課題】通常の封入型再帰反射シートと同様に製造できる封入型再帰反射シートで、被着体から剥離した際に、再帰反射シートの色相が変わるもので、改竄しようとしたことが判別できる再帰反射シートの提供。
【解決手段】少なくとも表面保護層、硝子球を保持する1層以上の保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる表面保護層と1層以上の保持層の内、少なくとも他の層と異なる色相の層が設けられている封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該再帰反射シート中に破壊層が設けられており、基材に貼り付けられた再帰反射シートを基材から剥離した際に、剥離前と剥離後で可視光下での色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることを特徴とする再帰反射シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路標識、工事標識等の標識類、自動車やオートバイ等の車両のナンバープレート類、衣料、救命具等の安全資材類、看板等のマーキング、各種の認証ステッカー類、可視光、レーザー光あるいは赤外光反射型センサー類の反射板等において有用な、新規な構造をもつ再帰反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入射した光を光源に向かって反射する再帰反射シートはよく知られており、その再帰反射性を利用した該シートは上記のごとき利用分野で広く利用されている。
このような再帰反射シートとしては、微小ガラス球と金属、ほとんどの場合アルミニウムを真空蒸着して鏡面反射層をもうけたものを再帰反射素子として用いた、封入レンズ型再帰反射シートがよく知られている。
【0003】
封入レンズ型再帰反射シートの例としては、ベリスレの特開昭59−71848号公報(特許文献1、対応米国特許第4,721,649号明細書)に詳しく開示されており、ここでは、これらの文献の引用をもって、これら再帰反射シートの具体的記述に代えるものとする。
【0004】
また、本発明者らは、少なくとも、多数の微小ガラス球、該ガラス球を保持する光透過性の樹脂からなる保持層、入射した光を反射する鏡面反射層、該ガラス球と鏡面反射層の間に設置された少なくとも一層の光透過性の樹脂からなる焦点形成層、および鏡面反射層からなる封入レンズ型再帰反射シートにおいて、更に該再帰反射シートの鏡面反射層の下部に接着剤層を設け、該接着剤層を介して基材に貼着される再帰反射シートであって、上記の再帰反射シートを該基材から剥離しようとすると、該焦点形成層が該ガラス球および/または該保持層と層間剥離するかおよび/または該焦点形成層が破壊し、それによって、再帰反射性能が損傷ないし喪失するように構成されていることを特徴とする再帰反射シートに関して出願している。(特許文献2)
【0005】
また、本発明者らは、少なくとも表面保護層、硝子球を保持する保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該保持層が2層以上からなり、光入射側の保持層が透明であり、他の少なくとも1層の保持層が着色されていることを特徴とする再帰反射シートに関して出願をしている。(特許文献3)
【0006】
また、少なくとも表面保護層、硝子球を保持する保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該保持層が2層以上からなり、該保持層それぞれ単独で測定したときの色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることを特徴とする再帰反射シートに関して出願している。(特許文献4)
【0007】
しかしながら、特許文献1には、保持層が2層以上であることに関する記載も示唆も無い。また、破壊に関する記載も示唆も無い。
【0008】
特許文献2には、再帰反射シートの焦点形成層を破壊性とした偽造、改竄防止に関する再帰反射シートが記載されているが、保持層、焦点形成層ともに無着色であり、剥離後に色相が変化するものではない。また、保持層が2層以上であることに関する記載も示唆も無い。
【0009】
特許文献3には、保持層が2層以上からなることは記載されているが、光入射側の保持層は無色透明か焦点形成層側の保持層と同色系で淡色のものが記載されているだけで、破壊に関する記載も示唆も無い。
【0010】
特許文献4には、保持層が2層以上からなり、該保持層それぞれ単独で測定したときの色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることに関する記載はされているが、破壊に関する記載も示唆も無い。

【0011】
【特許文献1】特開昭59− 71848号 公報
【特許文献2】PCT/JP2006/302790号 明細書
【特許文献3】特願2006−78470号 明細書
【特許文献4】特願2006−191002号 明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、通常の封入型再帰反射シートと同様に製造できる封入型再帰反射シートで、被着体から剥離した際に、再帰反射シートの色相が変わるもので、改竄しようとしたことが判別できる再帰反射シートを提供できる。
【0013】
特に、少なくとも表面保護層、硝子球を保持する1層以上の保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる表面保護層と1層以上の保持層の内少なくとも他の層と異なる色相の層が設けられている封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該再帰反射シート中に破壊層が設けられており、基材に貼り付けられた再帰反射シートを基材から剥離した際に、剥離前と剥離後で可視光下での色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることを特徴とする再帰反射シート。
【課題を解決するための手段】
【0014】
少なくとも表面保護層、硝子球を保持する1層以上の保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる表面保護層と1層以上の保持層の内少なくとも他の層と異なる色相の層が設けられている封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該再帰反射シート中に破壊層が設けられており、基材に貼り付けられた再帰反射シートを基材から剥離した際に、剥離前と剥離後で可視光下での色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることを特徴とする再帰反射シート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の再帰反射シートについて、更に詳細に説明する。
【0016】
図1及び図2は、封入レンズ型再帰反射シートを表す断面構成概略図である。
図1に示される、封入レンズ型再帰反射シートは、表面保護層(1)と、硝子(4)を保持する着色された保持層(3a)と3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)、硝子球の焦点位置に配置された鏡面反射層(6)と、鏡面反射層を焦点位置配置させるための焦点形成層(5)よりなっている。
【0017】
また、観測者に情報を伝達したり、シートを着色したりするための印刷層(2)を設けるのも好ましい。
【0018】
本発明において、表面保護層は(1)は全光線透過率80%以上の透明性を有した再帰反射シートの表面層を形成する層であって、通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて使用して形成される。耐候性、加工性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂が好ましく、塗工適性や着色する際の着色剤の分散性等を考慮するとアクリル樹脂が特に好ましい。
【0019】
表面保護層には、透明性を著しく損なわない範囲で、紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、架橋剤等の様々な添加剤を添加することが出来る。また、表面に透明保護フィルムや透明板を使う場合には、表面保護層(1)は省略することも出来る。
【0020】
本発明の再帰反射シートは、図1(4)に示される硝子球を着色された保持層(3a)と3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)で保持している。
【0021】
本発明では、第1の態様として保持層(3a)および/または(3b)の層を破壊層とするときには、破壊性の保持層(3a)または(3b)に用いることの出来る化合物としては、ポリマーでもプレポリマーでも良く、脂環式ポリオレフィン樹脂または脂環式アクリル樹脂、セルロース誘導体、シリコン系化合物、フッ素系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂またはそれらの混合物が好ましく、破壊形態に応じて適宜選択する。
【0022】
本発明の好ましい脂環式ポリオレフィン樹脂は主鎖に脂環式構造を持つものであり、シクロペンタン系樹脂としては、シクロペンタン系樹脂(化学式1a)、ビシクロペンタン系樹脂(化学式1b)、シクロペンタノルボルネン系樹脂(化学式1c)であり、また、ビニルシクロペンタン系樹脂としては、ビニルシクロペンタン系樹脂(化学式2a)、ビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂(化学式2b)であり、またはシクロヘキサジエン系樹脂(化学式3a)、シクロヘキサン系樹脂(化学式3b)であり、

(R、R、R、R、及びRはそれぞれ水素原子、アルキル基、 シアノ基、シクロヘキシル基、またはアルキルカルボキシレート基であり、nは数平均重合度を示す)
【0023】
通常、シクロペンタン系樹脂(化学式1a)はノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびテトラシクロドデセンなどのシクロオレフイン類を、タングステン、モリブデンなどの遷移金属化合物とアルキルアルミニウムからなるメタセシス触媒を用いて開環重合することによって得られる中間重合物を水素添加によって二重結合を飽和して得られる。市販の製品としては日本ゼオン株式会社製のゼオネックスを用いる事ができる。
【0024】
上記のシクロペンタン系樹脂(化学式1a)の置換基Rは水素原子、シクロヘキシル基であることが特に好ましい。二つの置換基が水素原子であるような構造においては、結晶性が増加して透明性が低下する傾向がある。置換基Rが水素原子、シクロヘキシル基の場合には非晶性ポリマーとなり透明性が向上するために、本発明の破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いるには特に好ましい。
【0025】
本発明の破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられる樹脂としては、通常、ビニルシクロペンタン系樹脂(化学式2a)およびビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂(化学式2b)は、ノルボルネンとメチルメタクリレートによって得られるメタクリル基を側鎖に持つノルボルネン誘導体をタングステン−アルミニウム化合物を組み合わせた触媒を用いて開環重合させて得られる中間化合物を水素添加によってビニル基を飽和することにより得られる。この様な化合物は、エステル基構造を持つので再帰反射シートを構成する他の樹脂層や反射層との密着性が比較的高い傾向がある。市販の製品としては、JSR株式会社製のARTONをあげる事ができる。
【0026】
このビニルシクロペンタン系樹脂(化学式2a)およびビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂(化学式2b)の置換基R及びRは水素原子(−H)、メチル基(−CH)、シアノ基(−CN)、メトキシカルボニル基(−COOCH)、エトキシカルボニル基(−COOC)、シクロヘキシルオキシカルボニル基(−COO(cyclo−C11))、n−ブトキシカルボニル基(−COO(n−C))を用いる事が透明性や屈折率などの光学的特性、耐熱性の点および隣接する層との密着性を調整するうえで特に好ましい。
【0027】
さらに、シクロヘキサジエン系樹脂(化学式3a、3b)は1,3−シクロヘキサジエン樹脂、シクロヘキサン樹脂であることが特に好ましい。これらのシクロヘキサジエン系ポリマーはアルキルリチウムとアミン化合物からなる触媒を用いて1,3−シクロヘキサジエンをリビングアニオン重合することによって得られる。特に、1,3−シクロヘキサジエン樹脂は耐熱性の面から特に好ましい。
【0028】
本発明の破壊性の保持層(3a)または(3b)に用いられる脂環式アクリル樹脂としては、アクリルのエステル部分に脂環構造をもつものであり、化学式(4)で示される脂環式アクリル樹脂

(Rは水素原子、メチル基、Rはシクロヘキシル基、下記 化学式(4−1)、又は化学式(4−2)で示される基を示す)

が好ましい。
【0029】
脂環式アクリル樹脂はメタクリル酸エステル系ポリマー(化学式4)特にトリシクロデシルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体が好ましく、市販の製品としては日立化成株式会社製のオプトレットを用いる事ができる。さらに、耐熱性の高いベンジルメタクリレート、トリシクロデカニエルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体も用いる事ができる。
【0030】
本発明の破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられる樹脂として用いられるセルロース誘導体は、セルロースアセテート(以下CAともいう)、セルロースアセテートプロピオネート(以下、CAPともいう)またはセルロースアセテートブチレート(以下、CABともいう)のいずれかまたはそれらの混合物であることが好ましい。これらのセルロース誘導体は、透明性が良くガラス球や樹脂との密着性も弱く、剥離した際には、ガラス球または保持層との層間剥離および/または凝集破壊により剥離して再帰反射性能を損傷ないし喪失させることができる。市販の製品としてはイーストマンケミカル社製のCABを用いる事ができる。
【0031】
また、本発明破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられる化合物としては、フェニルメチル系シリコーンレジンやメチル系シリコーンレジンなどのシリコーン系樹脂、あるいは変性もしくは非変性のシリコーンワニスのいずれかまたはそれらの混合物であることが好ましい。これらのシリコーン系化合物はガラス球や樹脂との密着性が適度であり、剥離した際には、ガラス球または保持層との層間剥離および/または凝集破壊により剥離して再帰反射性能を損傷ないし喪失させることができる。市販の製品としては、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンコーティング剤を用いることができる。
【0032】
本発明の破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられるフッ素系樹脂は、長鎖のフッ化アルキル基と反応基を有する反応性有機フッ素化合物が好ましい。これらのフッ素化合物は塗工することでフッ素の薄膜を形成し、ほかの樹脂層と層間剥離して再帰反射性能を損傷ないし喪失させることができる。市販の製品としては、旭硝子株式会社製のルミフロンを用いることができる。
【0033】
本発明の破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられるポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂およびポリエステル樹脂は、分子量を小さくすることで、凝集破壊しやすくすることができ、凝集破壊層として用いることができる。
【0034】
これらの破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いることのできる樹脂は、剥離が生じやすいように、適宜、分子量や架橋密度などを調節することが好ましい。
【0035】
適切な分子量の範囲としてはスチレン換算重量分子量で1,000〜100,000、好ましくは、5,000〜50,000である。該ガラス球(3)と破壊性の保持層(3a)間での層間剥離、または破壊性の保持層(3b)と焦点形成層(4)の間での層間剥離が生じるような破壊性の保持層に用いられる化合物の分子量は10,000〜100,000、好ましくは50,000〜100,000であり、破壊性の保持層(3a)および/または(3b)の破壊によって剥離が生じるような破壊性の保持層に用いられる化合物の分子量は1,000〜5,000好ましくは1,000〜3,000であるが分子構造や重合方法によって適宜調整されなければならない。
【0036】
また、破壊性の保持層(3a)および/または(3b)に用いられる樹脂に他の樹脂類を添加することにより隣接する層との接着力の調整や該破壊性の保持層(3a)および/または(3b)の凝集力を低下させることも可能である。
【0037】
用いることの出来る添加樹脂としては、各種のセルロース化合物、例えばセルロースアセテートブチレート、および各種のワックス類、例えば脂肪族炭化水素系、脂肪酸エステル系、飽和脂肪族酸類、飽和アルコール系および金属石鹸を例示することができ、更に脂肪族炭化水素系のものとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスおよびフィッシャートロプスワックス等を例示でき、脂肪酸エステル系のものとしては、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、蜜蝋およびキャンデリラワックスなど例示でき、飽和脂肪族酸類のものとしては、ステアリン酸およびモンタン酸などを例示でき、飽和アルコール系のものとしては、ステアリンアルコールおよびベヘニルアルコールなどを例示でき、金属石鹸としては、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛などを例示でき、これらのワックス類を添加量1〜100重量部の範囲で加えることが出来る。
【0038】
また、破壊の形態が破壊性の保持層(3a)および/または(3b)と隣接する層との界面で容易に剥離できるように、シリコン樹脂、フッ素樹脂などをそれぞれ単独にあるいは用いる樹脂に混合して用いることが出来る。
【0039】
本発明では第2の態様として、保持層(3a)および(3b)とは別に硝子球(4)と保持層(3a)の間および/または(3a)と(3b)の間に図2のように破壊性の層(3c,3d)を設けることができる。
【0040】
第2の態様では、保持層(3a)および保持層(3b)は、破壊性であっても破壊性でなくても良く、3〜4層の保持層中少なくとも1層の保持層が破壊性であればよい。
【0041】
保持層(3a)も3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)も、破壊性の無い層とするときは通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて使用して形成される。耐候性、加工性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、塗工性や着色剤の分散性を考えると、アクリル系樹脂が最も好ましい。
【0042】
本発明の破壊性の層(3c,3d)に用いることのできる化合物としては、上記の破壊性の保持層(3a,3b)に用いることのできる化合物を挙げることができ、単独または2種以上混合して用いることができる。
【0043】
本発明において、表面保護層や保持層に含有する着色剤は、着色剤を母体樹脂の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部、より好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部含有する。着色剤の添加量が該下限値以上であれば充分な着色が得られ、優れた視認性が得られるので好ましく、また、該上限値以下であれば保持層が硬くなり過ぎて脆くなるなどの不都合が生ずることがなく、機械強度、柔軟性等の特性が損なわれることがないので好ましい。
【0044】
表面保護層の光透過性が悪いと優れた再帰反射性能が得られないので、表面保護層は、無着色であるかまたは透明性の得られる着色剤で着色されていることが好ましい。
【0045】
本発明の第2の態様では、硝子球は着色された保持層(3a)と3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)と破壊性の層(3c、3d)の3〜4層の保持層に保持されるが、(3a、3b)は破壊性であってもよく、(3c,3d)は着色されていても良い。
【0046】
本発明では、再帰反射シートの鏡面反射層側に接着剤層を設けて、その接着剤層を介して被着体に再帰反射シートを貼ることもできるし、再帰反射シートの光入射側に光透過性の接着剤層を設けて、その接着剤層を介して光透過性の被着体に再帰反射シートを貼ることもできる。
【0047】
鏡面反射層側に接着剤層を設けて、再帰反射シートを被着体に貼る態様では、剥離した後では、被着体には硝子球も保持層(3a)も存在しないので、再帰反射性もなく、剥離前と剥離後で色相も大きく変化するので、改竄しようとしたことを容易に認識できる。
【0048】
再帰反射シートの光入射側に光透過性の接着剤層を設けて、再帰反射シートを被着体に貼る態様では、剥離した後では、被着体には、保持層(3b)も鏡面反射層も存在しないので、剥離前に比べ剥離後の再帰反射性は著しく劣り、色相も変化するので、改竄しようとしたことを容易に認識できる。
【0049】
この時、保持層3a、保持層3b、保持層3c、保持層3dを同じ色相の保持層とした場合には、剥離後の色相の変化は濃淡だけであるので、濃淡を大きく変えるか、複数の保持層の内、少なくとも1層の保持層は他の保持層と色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることが偽造を困難にし、改竄を容易に認識するために好ましい。
【0050】
着色剤以外にも保持層には、その物性を損なわない範囲で紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、架橋剤等の様々な添加剤を添加することが出来る。
【0051】
また、必要に応じてアルキル化アミノ樹脂、アルキル化尿素樹脂、イソシアネート系架橋剤等の硬化剤;シリコン系剥離剤、セルロース系剥離剤等の剥離剤; ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、シリコン系界面活性剤、アクリル系重合物等の表面調整剤などの添加剤を含んでいても良い
【0052】
破壊性の無い保持層を形成する樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、樹脂の重量平均分子量(以下Mwと略称することがある)が5万以上である樹脂、より好ましくは5万〜40万の樹脂、更に好ましくは10万〜30万の樹脂を用いるのがよい。該範囲であり、かつ適当な硬化剤と反応させた樹脂を用いると、樹脂中にビーズを適度に沈めることができる。
【0053】
各保持層(3a、3b、3c、3d)は、それぞれ必要に応じて数回に分けて塗工することもでき、異なる種類の樹脂が積層されても良い。
【0054】
本発明では、第3の態様として、着色された表面保護層と1層以上の着色された保持層のいずれかが破壊性であるか、着色された表面保護層と1層以上の着色された保持層の間に図2の破壊性の層(3c)を設けることができる。
【0055】
本発明では、第4の態様として、該再帰反射シートの表面保護層又は保持層のいずれかのみが着色されており、表面保護層および/または保持層が破壊性であるか、保持層と破壊層の間に図2の破壊性の層(3c)を設けることができる。
【0056】
第3の態様および第4の態様では、表面保護層も着色された保持層(3a、3b)も破壊性の無い層とするときは通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて使用して形成される。耐候性、加工性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、塗工性や着色剤の分散性を考えると、アクリル系樹脂が最も好ましい。
【0057】
本発明の表面保護層も着色された保持層(3a、3b)も破壊性の層とするときは、用いることのできる化合物としては、上記の破壊性の保持層(3a,3b)に用いることのできる化合物を挙げることができ、単独または2種以上混合して用いることができる。
【0058】
本発明では、再帰反射シートの鏡面反射層側に接着剤層を設けて、その接着剤層を介して被着体に再帰反射シートを貼ることもできるし、再帰反射シートの光入射側に光透過性の接着剤層を設けて、その接着剤層を介して光透過性の被着体に再帰反射シートを貼ることもできる。
【0059】
鏡面反射層側に接着剤層を設けて、再帰反射シートを被着体に貼る態様では、剥離した後では、被着体には硝子球も着色された保持層も存在しないので、再帰反射性もなく、剥離前と剥離後で色相も大きく変化するので、改竄しようとしたことを容易に認識できる。
【0060】
再帰反射シートの光入射側に光透過性の接着剤層を設けて、再帰反射シートを被着体に貼る態様では、剥離した後では、被着体には、着色された保持層も鏡面反射層も存在しないので、剥離前に比べ剥離後の再帰反射性は著しく劣り、色相も変化するので、改竄しようとしたことを容易に認識できる。
【0061】
この時、表面保護層と同じ色相の保持層とした場合には、剥離後の色相の変化は濃淡だけであるので、濃淡を大きく変えることが改竄を容易に認識するために好ましい。
【0062】
本発明では、第1の態様又は第2の態様では、保持層は少なくとも2層以上である。製法としては、表面保護層に着色された保持層(3a)を積層し半乾燥して、その上に3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)を積層し半乾燥し、硝子球を塗布し、硝子球を保持層(3a及び3b)中に埋めるものである。この時、保持層(3a)の乾燥が不充分であると保持層(3b)の塗工が困難であるし、保持層(3a)の乾燥が充分すぎると硝子球が着色された保持層(3a)まで達しない。
【0063】
保持層(3a)の乾燥が進み過ぎないようにするには、例えば、保持層(3b)の半乾燥に比べ保持層(3a)を低い温度で半乾燥したり、保持層(3b)に用いられる樹脂より保持層(3a)に用いる樹脂の重量平均分子量を小さくしたり、保持層(3b)に用いられる架橋剤量に比べ保持層(3a)に用いられる架橋剤量を少なくしたりして、硝子球塗布時に保持層(3a)が硝子球を保持できるようにすることが好ましい。
【0064】
保持層用樹脂の樹脂固形分は25〜50%、好ましくは30〜40%、更に好ましくは33〜38%であり、保持層の樹脂塗布厚みは15μm〜50μmである。数層積層される場合、硝子球を保持する保持層の塗付厚みは、硝子球径等の条件に合わせ決定される。
【0065】
本発明の再帰反射シートは、焦点位置に位置する鏡面反射層と協働して光を再帰反射させる機能を有する硝子球を用いて形成されることが好ましい。硝子球の屈折率は2.0〜2.5、好ましくは2.0〜2.3である。
【0066】
再帰反射要素として用いられる硝子球の大きさは、通常、10μm〜150μm程度のものが用いられるが、正面への反射性を大きくするためには、より大きな径のものを用いるのが良く、好ましくは25μm〜120μm、より好ましくは40μm〜90μm程度の平均直径を有するものが使用される。
【0067】
本発明の再帰反射シートの硝子球は、着色された保持層(3a)と3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)の少なくとも2層の保持層に保持される。
【0068】
本発明では、色相が調節可能な範囲で、再帰反射シートの輝度が考慮されるが、着色された保持層の全光線透過率が、例えば60%以上であるなど透明性が良い場合には、硝子球の直径の1/15以上が着色された保持層(3a)で保持されているのが硝子球に十分な光を供給するために好ましい。さらには、硝子球の直径の1/5以上が着色された保持層(3a)で保持されているのが硝子球に十分な光を供給するために好ましい。
【0069】
着色された保持層(3a)の全光線透過率が、例えば60%未満であるなど透明性が劣る場合には、表面保護層から硝子球までの距離を15μm以下、好ましくは5μm以下とすることが硝子球に充分な光を供給するために好ましい。
【0070】
本発明の再帰反射シートでは、該硝子球の直径が大きいものであればより高い反射性能が得られるので、硝子球に入射する光がやや少なくても、充分な反射性能が得られるが、該硝子球の直径が小さいときは、硝子球に入射する光を多くするため、表面保護層から硝子球までの距離を小さくするのが好ましい。
【0071】
本発明の第3の態様および第4の態様では、保持層が1層以上である。保持層を2層以上とするときは、第1の態様や第2の態様の保持層の製法と同様の製法とするのが好ましい。
【0072】
保持層を1層以上とする場合には、表面保護層に保持層を積層する場合でも、表面保護層の裏面に積層された破壊層に保持層を積層する場合でも、保持層を半乾燥した状態で硝子球を塗布し、保持層に埋設するものである。
【0073】
第3の態様の保持層に関するその他の要件については、保持層を2層以上とする以外は、第1の態様の保持層や第2の態様の保持層と同様にすることが出来る。重複するが以下に記載する。
【0074】
保持層用樹脂の樹脂固形分は25〜50%、好ましくは30〜40%、更に好ましくは33〜38%であり、保持層の樹脂塗布厚みは15μm〜50μmである。数層積層される場合、硝子球を保持する保持層の塗付厚みは、硝子球径等の条件に合わせ決定される。
【0075】
本発明の再帰反射シートは、焦点位置に位置する鏡面反射層と協働して光を再帰反射させる機能を有する硝子球を用いて形成されることが好ましい。硝子球の屈折率は2.0〜2.5、好ましくは2.0〜2.3である。
【0076】
再帰反射要素として用いられる硝子球の大きさは、通常、10μm〜150μm程度のものが用いられるが、正面への反射性を大きくするためには、より大きな径のものを用いるのが良く、好ましくは25μm〜120μm、より好ましくは40μm〜90μm程度の平均直径を有するものが使用される。
【0077】
本発明では、色相が調節可能な範囲で、再帰反射シートの輝度が考慮されるが、着色された保持層の全光線透過率が、例えば60%以上であるなど透明性が良い場合には、硝子球の直径の1/15以上が着色された保持層(3a)で保持されているのが硝子球に十分な光を供給するために好ましい。さらには、硝子球の直径の1/5以上が着色された保持層(3a)で保持されているのが硝子球に十分な光を供給するために好ましい。
【0078】
着色された保持層(3a)の全光線透過率が、例えば60%未満であるなど透明性が劣る場合には、表面保護層から硝子球までの距離を15μm以下、好ましくは5μm以下とすることが硝子球に充分な光を供給するために好ましい。
【0079】
本発明の再帰反射シートでは、該硝子球の直径が大きいものであればより高い反射性能が得られるので、硝子球に入射する光がやや少なくても、充分な反射性能が得られるが、該硝子球の直径が小さいときは、硝子球に入射する光を多くするため、表面保護層から硝子球までの距離を小さくするのが好ましい。

【0080】
本発明の再帰反射シートは、さらに、図1(5)に示される焦点形成層を有する。焦点形成層は鏡面反射層を硝子球の焦点位置に配置するための層であって、通常、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ブチラール樹脂等の樹脂を単独で、あるいは組み合わせて使用して形成されるが耐候性、塗工適性、熱安定性の点からアクリル樹脂、ブチラール樹脂が好ましい。
【0081】
焦点形成層には、透明性を著しく損なわない範囲で着色剤や紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤、架橋剤等の様々な添加剤を添加することが出来る。
焦点樹脂層を形成する樹脂は特に制限されるものではないが、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。耐久性から、アクリル樹脂、ブチラール樹脂が好ましく、塗工性を考えると、アクリル樹脂が最も好ましい。
【0082】
焦点形成層を形成する樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、樹脂のMwが10万以上である樹脂、より好ましくは10万〜40万の樹脂、更に好ましくは15万〜30万の樹脂を用いるのがよい。該範囲であり、かつ適当な硬化剤と反応させた樹脂を用いると、球面状の焦点形成層を形成することができる。
【0083】
焦点形成層を形成する樹脂の塗工時における粘度は10〜600cP、好ましくは30〜600cP、更に好ましくは50〜200cPであるのがよく、焦点形成層樹脂の樹脂固形分は10〜40%、好ましくは15〜35%、更に好ましくは15〜25%であるのがよい。樹脂固形分が多いと気泡を巻き込みやすく発泡しやすくなり、10%未満であれば塗布量がかなり多くなり、好ましくない。
【0084】
焦点形成層の厚みは、入射した光線が鏡面反射層上に焦点を結ぶように樹脂の屈折率等を勘案して決定されるが、通常10μm〜60μm、好ましくは15μm〜50μm、特に好ましくは20μm〜40μmである。
【0085】
本発明の再帰反射シートはまた、図1(6)に示す鏡面反射層を有する。鏡面反射層は、光を反射するための層であって、通常、アルミニウム、銀等の金属を用いて、真空蒸着、スパッタリング等の手段で形成されるが、下地の形状を反映した金属薄膜を均一に形成するためには、蒸着法が特に好ましい。金属層の厚みは、0.05μm〜0.2μm、好ましくは0.05μm〜0.15μm 、特に好ましくは0.05〜0.1μmである。
【0086】
本発明の発色性再帰反射シートは、基材に該シートを接着するための接着剤層を有する。 接着剤層を形成する樹脂の種類は特に制限されるものではなく、通常の接着剤用樹脂として用いられる樹脂を使用すればよく、例えば、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノール系樹脂等が用いられる。中でも耐候性に優れ、接着特性の良好なアクリル系樹脂またはシリコン系樹脂が好適に用いられる。
【0087】
接着剤層を形成する樹脂の分子量は特に制限されるものではないが、分子量の高い樹脂ほど好適な保持力が得られやすい傾向にあり、重量平均分子量(以下Mwと略称することがある)50万以上の樹脂、より好ましくは50万〜100万の樹脂、更に好ましくは60万〜100万の樹脂を用いることが好適である。中でも官能基を有するMw
50万以上の樹脂をイソシアネート系架橋剤等の架橋剤を用いて架橋反応させた樹脂を用いると特に優れた保持力が得られ最も好適である。
【0088】
本発明の再帰反射シートは、以下に述べる方法によって製造される。まず、
工程基材表面保護層用の樹脂を塗工、乾燥する。工程基材は、十分な強度があり、熱をかけた際に膨張、収縮が十分小さいものであれば特に制限されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、塩化ビニル等の材質の基材が使用可能であり、PETが特に好ましい。
【0089】
塗工方法は、所定の厚さで均一に塗工できる方法であれば特に制限されるものではないが、リバースロールコーティング、コンマダイレクトコーティング等の方法がる。
【0090】
次に表面保護層上に着色された保持層(3a)用の樹脂を塗工、半乾燥する。次いでこの半乾燥された着色された保持層(3a)上に3aとは異なる色相に着色された保持層(3b)用の樹脂を塗工、半乾燥する。
【0091】
本発明では、表面保護層と保持層(3a)の間および/または保持層(3a)と保持層(3b)の間に破壊性の保持層(3c、3d)を設ける態様もあるが、表面保護層に順次保持層を積層、半乾燥して次の層の積層半乾燥を繰り返す。
【0092】
全ての保持層の積層、半乾燥についで、最後に積層、半乾燥した保持層の上に硝子球を散布する。それぞれの保持層の半乾燥の程度で、硝子球を保持層中へ埋設する埋設率を調節することができ、例えば樹脂としてアクリルを使用する場合は、50℃〜150℃、好ましくは70℃〜130℃、特に好ましくは80℃〜120℃で5分間ほど乾燥し、硝子球を埋設し易くするのがよい。
【0093】
ここで、先に積層、半乾燥された保持層にはその半乾燥時と、次の保持層半乾燥時の乾燥工程が入るので、先に積層された保持層の半乾燥は、次の保持層が塗工可能であって、乾燥が甘い方が好ましい。
【0094】
硝子球散布後さらに処理をすることで、保持層の表面張力によって該硝子球を保持層中へ埋設させる。
【0095】
硝子球の保持層中への埋設率は、特に制限されるものではなく、保持層樹脂の種類によっても異なるが、例えば樹脂としてアクリルを使用する場合は、硝子球を保持させる点から、20%以上とするのが良い。
【0096】
次に前記焦点形成用層樹脂を硝子球の表面に塗工する。塗工方法は、所定の厚さで均一に塗工できる方法であれば特に制限されるものではないが、リバースロールコーティング、コンマダイレクトコーティング等の方法がある。
【0097】
室温で塗工し、必要に応じて加熱処理して樹脂を硬化させる。硬化温度は樹脂・硬化剤の種類により異なるがアクリル樹脂を焦点形成層用樹脂として使用する場合50℃〜160℃、好ましくは70℃〜155℃に加熱するのがよい。また、必要に応じて数回に分けて焦点形成層を塗布しても良い。
【0098】
次に焦点形成層上に金属薄膜を形成する。金属薄膜の形成方法としては塗布法、蒸着法、等が可能であるが、下地の形状を反映した金属薄膜を均一に形成するためには、蒸着法が特に好ましい。金属層の厚みは、0.05μm〜0.2μm、好ましくは0.05μm〜0.15μm 、特に好ましくは0.05〜0.1μmである。
【0099】
蒸着の速度・温度・真空度等の条件は機器に応じて適当な条件を選択すればよいが、金属薄膜が均一に所定の厚みとなるように速度・温度・真空度を選定するのが好ましい。
【0100】
接着剤層を持つ態様の場合は、次に接着剤層を剥離フィルム上に塗布し、金属蒸着後の中間製品と接着剤層面で貼り合わせる。貼り合わせ条件は接着剤により異なるが、接着剤としてアクリル系樹脂を用いた場合には、ある程度の熱をかけながら圧力をかけるのが好ましい。
【0101】
最後に工程基材を剥離すれば、本発明の再帰反射シートを得ることができる。剥離の角度、剥離の速度等は特に制限されるものではないが、シートが破壊しないように角度、速度を適宜調節して剥離する。
【0102】
本発明の再帰反射シートの反射性は、発色性とのバランスを考慮して所望により決定されるが、再帰反射シートとしての機能を十分果たすためには、正面反射性能(入射角
0.2°、観測角5°における再帰反射性能)が20cd/lx.m2以上、好ましくは30cd/lx.m2以上、より好ましくは 40cd/lx.m2以上とするのがよい。

【実施例】
【0103】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例及び比較例において用いた測定方法は以下の通りである。
【0104】
(1)色相
日本電色製色差計(Model SE-2000)を用い、JIS Z 9117に従って再帰反射シートの色相を測定した。
また、本発明における保持層の色相は、保持層形成用の樹脂を乾燥後の厚みで30μmになるようにPETフィルム上に塗布して、色相測定時にはSE-2000用の白色標準板をフィルムの上に置いて測定した。
【0105】
(2)正面再帰反射性能
再帰反射性能測定器として、アドバンスト・レトロ・テクノロジー社(Advantced RetroTechnology,INC)製「Model 920」を用い、100mm × 100mm の再帰反射シート試料の再帰反射光量を JISZ9117 に準じて、観測角0.2°、入射角5°により適宜の5点について測定して、その平均値をもって再帰反射性能の値とした。
【0106】
3)剥離強度 再帰反射シートを貼着する基材として厚さ2mmのアルミ板を用いた。JIS Z−0237に準じて試験に用いる再帰反射シートに接着剤層を設けるための剥離紙をはがし、2Kgのローラーを用いて貼り合わせた後に、温度23℃、相対湿度60%の条件下で3日間保持した。この、試験片の剥離強度(N/25mm)を測定した。剥離強度は引張試験器を用いて、貼り付けた反射シートの一端を、アルミ板と垂直90°方向に300mm/minの速度で引張ることで、測定した。測定は3回行い、その平均値をもって剥離強度(N/25mm)とした。
【0107】
4)剥離状態 試験後の試験片の剥離個所および剥離状態を目視で観察し、以下の評価基準で剥離状態を観測して評価を行なった。評価基準:剥離状態 A:表面保護層と保持層(3a)との層間で剥離 B:保持層(3a−3d)内の凝集破壊により剥離 C:反射シートが破断、あるいは他の層の間で剥離 試験後の試験片の剥離個所および剥離状態を目視で観察し、以下の評価基準で剥離状態を観測して評価を行なった。

【0108】
実施例1
キャリヤーフィルムとして帝人株式会社製の厚さ75μmの透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名、帝人テトロンフィルムS−75)を用い、その上に、恩希愛化工有限公司製アクリル樹脂溶液(商品名、RS−1200)を100重量部に、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を14重量部に特殊色料株式会社製セルロース誘導体(商品名、CAB)4重量部に、シプロ化成株式会社製紫外線吸収剤(商品名、シーソープ103)を0.5重量部に、ビックケミー・ジャパン株式会社製レベリング剤(商品名、BYK−300)を0.04重量部に、大日本インキ化学工業株式会社製触媒(商品名、ベッカミンP−198)を0.12重量部に、溶剤としてMIBK/トルエン=8/2の比になるように16.7重量部を加えて、攪拌混合したものを塗布して厚さ36μmの無色透明表面保護層を形成した。
【0109】
その表面保護層上に、恩希愛有限公司製アクリル樹脂(商品名RS−3000)を100重量部に、JSR株式会社製のビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂(商品名、ARTON FX4727)の不揮発分20重量%となるトルエン溶液100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-4300)を120重量部に、住友バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を20重量部に、溶剤としてトルエンを15重量部に、MIBKを36重量部混合攪拌したものを表面保護層上に塗布し、70℃で5分間乾燥し、厚み10μmの黄色透明光入射側の保持層を得た。
次いで、RS−3000を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-4300)を30重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-5300)を86重量部に、スミジュールN−75を21重量部にトルエンを26重量部に、MIBKを61重量部混合攪拌したものを光入射側の保持層の上に塗布し、100℃で5分間乾燥し、厚み13μmの赤色透明焦点形成層側の保持層を得た。
【0110】
この焦点形成層側の保持層に恩希愛有限公司製ガラス球(商品名、NB−45S)を付着させ、熱処理をして、ガラス球を保持層中に沈めた。
顕微鏡で断面を観察したところ、ガラスビーズの頭は、表面保護層に接しており、光入射側の保持層にガラス球の直径のほぼ1/5が保持されていた。
なお、それぞれの保持層の厚みは、別途、厚み75μmの帝人株式会社製ポリエステルフィルム(商品名、帝人テトロンフィルムS−75)上に塗布乾燥したものを用い、厚みは総厚みから75を引いて求めた。
【0111】
次いで、保持層及び硝子球の上に、恩希愛化工有限公司製アクリル樹脂溶液(商品名、RS−5000)を100重量部に、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を5.5重量部に、溶剤として、MIBK/トルエン=4/6の比率で39.3重量部加えて攪拌混合したものを塗布乾燥して、平均厚みが23μmの焦点形成層を形成した。
【0112】
次いで、焦点形成層の上から、アルミニウムを真空蒸着させ、鏡面反射層を得た。
【0113】
また、剥離紙として、リンテック株式会社製剥離紙(商品名、E2P−H(P))を用い、その上にBA/AA共重合体(重量比:BA/AA=90/10)の酢酸エチル/トルエン(1/1)溶液(固形分34%)100重量部に、株式会社トクシキ製白色着色剤(商品名、AR−9127W)を9重量部に、日本ポリウレタン工業株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、コロネートL)を0.5重量部に、溶剤として酢酸エチルを16.1重量部を加えて、攪拌混合したものを塗布乾燥して、厚さ41μmの粘着剤層を形成した。
【0114】
鏡面反射層と粘着剤層を貼り合わせた後、キャリヤーフィルムを剥がし、本発明の再帰反射シートを得た。
【0115】
実施例2
実施例1において、焦点形成層側の保持層の塗工液を、RS−3000を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-6300)を113重量部に、スミジュールN−75を21重量部にトルエンを25重量部に、MIBKを59重量部として混合攪拌したものを光入射側の保持層の上に塗布し、90℃で5分間乾燥し、厚み13μmの青色透明焦点形成層側の保持層を得た以外は実施例1と同様にして再帰反射シートを得た。
【0116】
実施例3
光入射側の保持層を、恩希愛有限公司製アクリル樹脂(商品名RS−3000)を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-4300)を120重量部に、住友バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を20重量部に、溶剤としてトルエンを26重量部に、MIBKを61重量部混合攪拌したものを表面保護層上に塗布し、70℃で5分間乾燥し、厚み10μmとし、焦点形成層側の保持層との間にJSR株式会社製のビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂(商品名、ARTON FX4727)の不揮発分20重量%となるトルエン溶液を用いて約0.5μmの破壊層を設けた以外は実施例1と同様にして再帰反射シートを得た。
【0117】
実施例4
実施例1において、表面保護層の塗工液を、恩希愛化工有限公司製アクリル樹脂溶液(商品名、RS−1200)を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名、AR−N−4100)を26重量部に、株式会社三和ケミカル製のメチル化メラミン樹脂溶液(商品名、ニカラックMS−11)を14重量部に、特殊色料株式会社製セルロース誘導体(商品名、CAB)4重量部に、シプロ化成株式会社製紫外線吸収剤(商品名、シーソープ103)を0.5重量部に、ビックケミー・ジャパン株式会社製レべリング剤(商品名、BYK−300)を0.04重量部に、大日本インキ化学工業株式会社製触媒(商品名、ベッカミンP−198)を0.12重量部に、溶剤としてMIBK/トルエン=8/2の比になるように13.1重量部を加えて、攪拌混合したものを用い、保持層の塗工液に恩希愛有限公司製アクリル樹脂(商品名RS−3000)を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-4300)を120重量部に、住友バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を20重量部に、溶剤としてトルエンを26重量部に、MIBKを61重量部混合攪拌したものを表面保護層上に塗布し、100℃で5分間乾燥し、厚み23μmの1層のみとし保持層を得た以外は実施例1と同様にして再帰反射シートを得た。
【0118】
実施例5
保持層塗工液を、RS−3000を100重量部に、株式会社トクシキ製カラーベース(商品名AR-6300)を113重量部に、スミジュールN−75を21重量部にトルエンを25重量部に、MIBKを59重量部として混合攪拌したものを表面保護層の上に塗布した以外は実施例4と同様にして再帰反射シートを得た。
【0119】
比較例1
ビニルシクロペンタノルボルネン系樹脂による破壊層を設けなかった以外は実施例3と同様にして再帰反射シートを得た。
【0120】
比較例2
表面保護層を実施例2と同じとし、保持層の塗工液配合を恩希愛有限公司製アクリル樹脂(商品名RS−3000)100重量部に、住友バイエルウレタン株式会社製イソシアネート系架橋剤(商品名、スミジュールN−75)を12重量部に、溶剤としてトルエンを9重量部に、MIBKを23重量部混合攪拌したものとした以外は実施例4と同様にして再帰反射シートを得た。

得られた再帰反射シートの色相を表1に、δ(x−y)、反射性能、剥離強度、剥離状態を表2に示した。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の封入レンズ型再帰反射シートの断面図である。
【図2】本発明の封入レンズ型再帰反射シートの断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 表面保護層
2 印刷層
3a,3b,3d 保持層または破壊層
3c 破壊層
4 硝子球
5 焦点形成層
6 鏡面反射層
7 接着剤層
8 剥離基材
9 光の入射方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面保護層、硝子球を保持する1層以上の保持層、硝子球、焦点形成層、と鏡面反射層からなる表面保護層と1層以上の保持層の内、少なくとも他の層と異なる色相の層が設けられている封入レンズ型再帰反射シートにおいて、該再帰反射シート中に破壊層が設けられており、基材に貼り付けられた再帰反射シートを基材から剥離した際に、剥離前と剥離後で可視光下での色相がXYZ系の測色方法で測定したときのx-yδで0.05以上異なることを特徴とする再帰反射シート。
【請求項2】
該再帰反射シートの保持層が2層以上で異なる色相に着色されており、該2層以上の保持層のいずれかが破壊性であるか、該硝子球と保持層の間、および/または該2層の保持層間に破壊性の層を設けたことを特徴とする請求項1記載の再帰反射シート。
【請求項3】
該再帰反射シートの表面保護層又は保持層のいずれかのみが着色されており、表面保護層および/または保持層が破壊性であるか、保持層と破壊層の間に破壊性の層を設けたものであることを特徴とする請求項1記載の再帰反射シート。
【請求項4】
該再帰反射シートの、表面保護層と1層以上の保持層が着色されており、表面保護層又は着色された保持層のいずれかが破壊性であるか、表面保護層と着色された保持層の間に破壊層を設けた再帰反射シートであることを特徴とする再帰反射シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−33002(P2008−33002A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206199(P2006−206199)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】