説明

再活性化のために調製される無細胞有機組織およびその生産方法

本発明は、再活性化のために、詳細には生細胞を導入するためにヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織を調製する方法に関し、無細胞有機組織(2、12)にその表面(8、18)を通過して作成されて組織(2、12)の内部に向かって伸びる複数の孔(4、14)が備えられ、複数の孔(4、14)は1以上の針を用いて作成される段階を含む。孔(4、14)は部分的に交差するため、部分的に互いに連通する孔(4、14)が形成される。また、本発明は、再活性化のために、詳細には生細胞を導入するために調製されるヒトまたは動物に由来する対応する無細胞有機組織(2、12)に関し、それは針を用いて作成されて組織の表面(8、18)からその内部に向かって伸びる穿刺である孔(4、14)を含む。孔(4、14)は少なくとも部分的に交差するため、孔(4、14)は部分的に互いに連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術背景
本発明は、再活性化のために、詳細には生細胞を導入するためにヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織を調製する方法に関する。該方法は、無細胞有機組織の表面に組織の内部に向かって伸びる複数の孔が備えられ、該複数の孔は1以上の針を用いて作成される段階を含む。
【0002】
また、本発明は、再活性化のために、詳細には生細胞を導入するために調製されるヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織に関する。該組織は電気針を用いて作成されて組織の表面からその内部に向かって伸びる穿刺である孔を含む。
【背景技術】
【0003】
現代の技術
医療分野、より具体的には外科手術の分野において周知であるように、臓器の一部または臓器全体の取り替えに対する必要性の増加に応じるよう、生体に移植可能な組織を使用可能とすることがますます重要になってきている。
【0004】
研究室において調製され、動物またはヒトである宿主に移植される生物学的代替物の生産は、医療技術に属しており、かつ組織工学として知られている。
【0005】
周知の技術によれば、移植される組織の調製は、研究室において通常「足場」と呼ばれる無機支持体から成るマトリックスに細胞を挿入することで実施されている。
【0006】
治療される臓器の欠損を取り替えるために挿入される「足場」は、組織が完全に形成されるまで細胞の三次元構成を補助する。
【0007】
当然のことながら、前記足場は完全に消失するまで分解過程を経なければならず、そして再生組織によって取り替えられる。本過程は前記足場に移植される細胞によって促進される。
【0008】
このシステムにより得られる移植片は、人工の足場、および例えば食道壁などのヒトおよび動物に由来する(「ドナー」からの)天然の足場の両方から得ることが可能である。
【0009】
多くの刊行物が人工組織を扱っており、それらの中に以下の文献が記載されている。Tiaw K.S.ら、“Laser surface modification of poly(epsilon−caprolactone)(PCL)membrane for tissue engineering applications”(Biomaterials 26(2005)763−769);Tejas S.Karandeら、“Diffusion in Musculoskeletal Tissue Engineering Scaffolds:Design Issues Related to Porosity,Permeability,Architecture,and Nutrient Mixing”(Annals of Biomedical Engineering,Vol.32,no.12,December 2004,p.1728−1743);Tejas S.KarandeおよびC.Mauli Agrawal、“Functions and Requirements of Synthetic Scaffolds in Tissue Engineering”(“Nanotechnology and Tissue Engineering:The Scaffolds”,2008 CRC Press,Taylor & Francis Group,6000 Broken Sound Parkway NW,Suite 300,BOCA RATON,FL 33487−2742 USA,p.53−86);Curtis D.Chinら、“A microfabricated porous collagen−based scaffold as prototype for skin substitutes”(Biomed Microdevices(2008)10:459−467)。
【0010】
記載されている合成組織は、組織内部での十分な移動を得るために、所定の方法において構成される人工的に形成可能な構造的多孔性を有している。
【0011】
言及されている最後の刊行物にのみ、(多孔質組織において連続的に作成される)円筒形細孔が細胞の浸透を十分に改善するよう機能することが述べられている。
【0012】
ヒトまたは動物に由来する足場は有機組織において天然の多孔性を既に有しており、それはスポンジの細孔に類似した均質な様相を有する。
【0013】
ドナーから得られる足場を使用してヒトへの移植を可能とするためには、拒絶反応を避けるために、結合組織線維間に存在する全細胞を完全に除去し、続けて宿主のヒト細胞を再導入するという方法で組織を前処理する必要がある。
【0014】
足場を作成するための技術、すなわちドナーから採取された組織から出発する無細胞マトリックスは周知であるため、本明細書において網羅的には説明しないが、それらの技術は、結合組織線維を無傷に維持しつつ、組織に含まれる生細胞を消化および破壊することが可能な酵素物質を含む液体中に組織を浸漬して処理するものである。
【0015】
宿主から採取される細胞を受け取る用意ができたヒトまたは動物に由来する無細胞組織が得られると、前記組織または足場をあらゆる生物学研究室において使用される小さな容器である、いわゆる「ペトリカプセル」または類似のデバイスの底部に置き、該底部に再活性化される組織が配置される。
【0016】
再活性化は、細胞への栄養供給、生存の維持、増殖、および拡散が可能な培地において成長した宿主の幹細胞を導入することで行われる。
【0017】
実際には、初めに組織の上部表面にある幹細胞が、以前はドナーの細胞で占められていた組織中の天然間質を通って移動する。
【0018】
所定の時間が経過した後、生細胞は培地に含まれる栄養物質の存在下で制御された温度にて組織の間質に再配置され、宿主の臓器への移植に備える。
【0019】
一般に、足場を再活性化するために使用される細胞は、分化し得る、または既に分化した幹細胞であり、かつ再活性化組織が移植される臓器特有の機能を担うことに注目すべきである。記載の通りに処理された組織移植の成功または不成功は、組織内部における細胞の毛管拡散に左右される。
【0020】
前記拡散の実施において困難が生じ、または深部ではなく表面的である場合、移植組織は再活性化不可能であり、壊死する傾向にある。それは移植が不成功に終わることを意味している。
【0021】
上記の記載において、実質的に放棄することが不可能である満たされるべき不可欠かつ重要な条件は、組織のあらゆる部分、特に組織の深さ方向にわたる、組織の深部での再活性化であることが明確に示されている。
【0022】
現在では、調製および再活性化における処理を十分に長時間実施した場合でも、移植の成功を保証する一定の結果を得ることは不可能である。
【0023】
これは足場に移植されるはずの生細胞の深部への浸透が不十分であることによるものである。実際に、深部への浸透が不可能なやや厚めの組織は移植後に完全に再活性化しないように、この欠点は移植に適した組織を調製する機会を大幅に制限している。したがって、上述した技術は非常に限定した厚み、例えば約0.1mmを超えない厚みの組織の移植にのみ適していることは明らかである。
【0024】
この欠点を克服するために、本出願人の名前で出願した文献である、国際公開第2008/146106(A2)号には、無細胞有機組織に孔が備えられているため、全組織にわたって細胞の拡散を促進することによる方法が記載されている。米国特許第5,112,354号明細書には、骨部における穿孔が記載されており、該穿孔は脱塩剤に晒される表面を増加させ、かつ骨誘導のために導入される間葉細胞との相互作用を促進することを目的としたものである。
【0025】
記載の文献によれば、従来技術と比較するとかなり改善されているにも関わらず、細胞導入のための組織の調製を目的とした組織の単穿孔では、特に非常に厚くかつ拡張組織の場合、細胞の均一な浸透を達成するために比較的長時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】国際公開第2008/146106号
【特許文献2】米国特許第5,112,354号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】Tiaw K.S.et al.in“Laser surface modification of poly(epsilon−caprolactone)(PCL)membrane for tissue engineering applications”(Biomaterials 26(2005)763−769)
【非特許文献2】Tejas S.Karande et al.in“Diffusion in Musculoskeletal Tissue Engineering Scaffolds:Design Issues Related to Porosity,Permeability,Architecture,and Nutrient Mixing”(Annals of Biomedical Engineering,Vol.32,no.12,December 2004,p. 1728−1743)
【非特許文献3】Tejas S. Karande and C. Mauli Agrawal in“Functions and Requirements of Synthetic Scaffolds in Tissue Engineering”(“Nanotechnology and Tissue Engineering:The Scaffolds”,2008 CRC Press,Taylor & Francis Group,6000 Broken Sound Parkway NW,Suite 300,BOCA RATON,FL 33487−2742 USA,p. 53−86)
【非特許文献4】Curtis D.Chin et al. in“A microfabricated porous collagen−based scaffold as prototype for skin substitutes”(Biomed Microdevices(2008)10:459−467)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、国際公開第2008/146106(A2)号の文献に記載の通り作成された孔を伴うヒトまたは動物に由来する組織の天然多孔性は、組織内部での細胞移動の観点から未だ最適ではない。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、生細胞が定着できる状態にあり、かつ上述した欠点を克服することが可能なヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織、およびそれの生産方法を提供することを目的とする。
【0030】
より詳細には、本発明は、前記組織を幹細胞を用いて再活性化するときに、結合組織の繊維によって形成されるメッシュの一つ一つの間質に細胞が入り込み浸透することが現状の技術と比較してより容易であるため、失活する前の組織の状態を実質的に再現することが可能である無細胞有機組織を提供することを目的とする。
【0031】
また、本発明は、移植のための組織調製を目的として生細胞を導入するときに、無細胞足場を再活性化するために必要な処理時間のさらなる大幅かつ相当な短縮を確保することを目的とする。
【0032】
したがって、本発明は、再活性化細胞を均一かつ迅速に導入するために、改良型に調製される無細胞有機組織の生産方法を開発することを1つの目的とする。
【0033】
本発明の目的は、冒頭に記載した種類の方法によって達成され、該方法において、組織の外面からその内部に向かって伸びる孔は少なくとも部分的に交差するため、少なくとも部分的に互いに連通する孔が形成される。
【0034】
つまり、本発明の方法を用いて得られる組織は複数の孔を備え、かつ単一孔はその伸長部が1以上のその他の孔と連通するため、網状構造を形成することが可能である。連通孔のメッシュ構造により、該孔が再生細胞によって満たされる速度が著しく増加する。さらに、網状構造は細胞の均一な拡散を促進する。
【0035】
最も簡単な例では、前記連通孔はほぼ真直であり、前記組織の外面を通過するよう針を用いて作成されているため、孔は交差することが可能である。また湾曲した針の使用も考慮することが可能である。
【0036】
現状の技術において記載した文献は、いずれも組織の構造多孔性に属する孔に追加される相互に連結した孔を開示していない。むしろ、人工組織を扱う文献は、得られる細胞浸透の程度に関して充足する構造多孔性(および1つの例においてのみ、Curtis D.Chinの論文で、互いに分離した追加の円筒孔の応用)を検討している。
【0037】
本発明により提供される孔は、該孔の深さが少なくとも組織層の厚みの一部分に及び、しかしながら好ましくは組織層のほとんど全厚みに及び、または特定の場合では組織層の全厚みに及ぶように作成される。
【0038】
導入した細胞の流出を防ぐために、薄い穿孔されていない層を穿孔層の反対側に残しておくことが好ましい。
【0039】
有利には、孔は全組織およびその全面にわたって均一に伸びる。
【0040】
前記孔の実施によって、通常、孔の周りの結合組織、およびどのような場合にも足場において、いかなる劣化または変化(断裂、壊死、層厚の増減、液体量の変化、凝固)をもたらさない場合、孔は針および様々な方法によって処理される組織層の厚みを通過して作成可能である。
【0041】
本発明の特に有利な実施形態によれば、組織は前記孔の少なくとも一部と連通するリザーバ空洞も備えている。リザーバ空洞は陥凹、つまり、身体における貯蔵細胞の蓄積(例えば、腸の上皮細胞の蓄積)に相当する、組織に導入される細胞を貯蔵するための蓄積部と見なす事ができる。
【0042】
組織に導入される細胞が、単に組織の表面に適用されるだけでなく、組織に作成されて備えられた孔の少なくとも一部と連通するリザーバ空洞にも導入される場合、細胞の均一な分配をさらに改善し、かつ組織中での細胞の浸透をさらに加速することが可能である。
【0043】
組織に適用され(かつリザーバ空洞に導入され)る細胞、および孔のメッシュ構造へのアクセス点の数のために、前記孔の少なくとも一部と連通するリザーバ空洞の形成は増加する。
【0044】
有利には、リザーバ空洞は組織の表面にあるため、リザーバ空洞を細胞で満たすことがより容易である。つまりリザーバ空洞への容易な接近を確保することが可能である。
【0045】
リザーバ空洞の分布は、均一であることが好ましい。
【0046】
あらゆる場合において、形成される孔の直径は、細胞が前記孔に容易に入り込み、周囲の組織を再活性化するのに十分でなければならない。
【0047】
細胞の大きさに関して、細胞の直径は少なくとも50μmでなければならない。
【0048】
また、直径は、組織の構造の完全性を維持し、同時に孔における迅速な浸透および完全な充填を確保する必要に応じて選択されなければならない。
【0049】
リザーバ空洞は孔の作成前または後に調製することが可能である。
【0050】
チャネルは組織の安定性を確保するために、リザーバ空洞の形成後に適用されることが好ましい。
【0051】
リザーバ空洞は、最大で約1mmの直径を有しており、ほぼ円筒形状である。700μm〜1mmの直径を有するリザーバ空洞が本目的に特に適している。ほぼ円筒形のリザーバ空洞は、適した直径を有した対応する針を用いて作成される孔として、容易に形成可能である。当然のことながら、リザーバ空洞の直径は、組織の構造を弱めるようなものであってはならない。リザーバ空洞の直径はリザーバ空洞と連通するそのチャネルの直径よりも大きくなければならず、そのためリザーバ空洞は細胞貯蔵部として機能し、チャネルは組織自体の構造を弱めるさらなるリザーバ空洞に転換されない。リザーバ空洞の深度は組織の特性によって決まり、かつ当業者によって必要に応じて容易に最適化することが可能である。
【0052】
チャネルとリザーバ空洞との間の距離においても同様のことが適用される。単一リザーバ空洞間の距離が約200μmであっても想定可能であり、より長いまたはより短い距離も同様に想定され得る。
【0053】
理想的な距離は、組織における浸透速度および安定性の観点から必要に応じて選択されなければならない。
【0054】
本発明の他の好ましい実施形態では、孔は互いに異なる直径を有する。同様のことがリザーバ空洞にも適用され、組織内部において種々の直径を有していてもよい。直径分布の選択は、直径が大きくなるにつれて確実に上昇する浸透速度の上昇と、過度の穿孔による組織構造の脆弱化を避ける必要性との間において、妥協して決定しなければならない。組織内部の孔の直径が変化する可能性により、加速した浸透速度と組織の安定性との間の平衡を調節することにおいて、高い柔軟性がもたらされる。
【0055】
孔および/またはリザーバ空洞の形成する間の壊死の問題を効率よく回避するために、例えばすでに述べた国際公開第2008/146106(A2)号の文献に記載されるように、前記複数の孔および/またはリザーバ空洞は、好ましくは電力源に接続された1以上の金属針によって作成され、該電力源は、前記針の先端に近接する有機組織の分子間結合を切断するのに十分なエネルギー量を提供するような強度および波形の電流の流れを各針の先端にもたらす。
【0056】
このような方法で、各孔は、前記針の先端が前記分子結合の切断により自由になった空間に入ることで、前記孔が作成されて得られるものである。孔および/またはリザーバ空洞は、例えば機械式など、他の方法によっても作成可能であることを理解されたい。
【0057】
組織において作成される孔および/またはリザーバ空洞の質の観点から、一般に4MHzの高周波電圧を各針の先端に印加して、弱いが結合組織の分子間結合を切断するのに十分な通過電流を発生させて、分子自体を分解することなく孔を作成することにより最良の結果が得られる。孔および/またはリザーバ空洞は、上記に示す通り、4MHzの波周波数を有する電圧を動力源とした針を用いて作成することが好ましい。電圧は好ましくは200−230ボルトである。有利には、印加される正弦波電圧波は歪んだ正弦波であるため、少なくとも第1、第2、および第3の高調波を有する。
【0058】
各針の先端において利用可能な電流は、2〜2.5mAの間を含むように調整することが好ましい。
【0059】
いくつかの交差する孔を作成することは、組織の深部にまで至る新たな通路を移植細胞のために形成することを意味し、それが組織自体の完全な再活性化を保障することは論理的かつ明白である。
【0060】
再活性化のための無細胞有機組織の調製は、様々な材料、例えば、洗浄液、栄養液、異なる種類の細胞(例えば、自己細胞、異なるドナーからの細胞、または異なる種類の細胞、分化する細胞、または既に分化した細胞)などを導入する段階を含んでいてもよい。有利には、これらの材料の孔への導入は、材料が孔に入ることを促進する適した駆動機構を含む吸気装置を用いて実施される。
【0061】
吸気装置は蠕動ポンプから構成され得る。本発明による再活性化のために調製される組織は孔と共に、液体、および細胞に対して浸透性スポンジ様である。組織が貫通した孔を備えているため穿孔表面の反対側に非穿孔層を有さない場合、細胞は透過しないが液体は透過する微細孔を備えた生分解性膜を組織に配置する。それ故、吸引段階の間の細胞の流出を防ぐことが可能である。
【0062】
有利には、制御装置に従って移動および傾斜する針または針のアレイを使用して組織に孔が形成される。該制御装置は、孔が所定の密度で交差するように形成され、つまり孔が互いに交差する決められた数の交差点を形成することを保障するアルゴリズムによって管理されている。
【0063】
上述された方法は、あらゆる種類の有機組織に対して使用することが可能である。連通孔を備えた無細胞組織は、組織の将来的な使用に適したあらゆる種類の細胞を用いて再活性化することが可能である。
【0064】
組織層の全厚みを通過して、かつ組織の全表面にわたって作成される連通孔の存在によって完全な再活性化が保証されるため、本発明の組織は移植される組織層の厚みにおける制限を実際のところもたらさない。これは、無細胞足場、および好ましくはリザーバ空洞に再導入され得る生細胞が、組織のあらゆる部分に到達可能であるためである。
【0065】
また、本発明は、再活性化のために、詳細には生細胞を導入するために調製されるヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織を含む。該組織は針を用いて作成されて組織の表面からその内部に伸びる穿刺である孔を含む。該孔は少なくとも部分的に交差するため、少なくとも部分的に互いに連通する。
【0066】
上述した変形方法によれば、組織はリザーバ空洞を含んでいても良い。本発明によって調製された組織の孔および/またはリザーバ空洞は、特に上述した直径、深度、および距離において特徴を有する。
【0067】
本発明の構成変形は従属項における主題である。本発明のさらなる特徴および詳細は、非限定的な例として提供される本発明の好ましい実施形態の説明においてより詳細が強調されるであろう。
【0068】
本発明を添付の図面を用いて次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、再活性化のために調製され、かつ連通孔を備えた無細胞有機組織の断面図を示している。
【図2】図2は、再活性化のために調製され、かつリザーバ空洞および孔を備えた無細胞有機組織の上面図を示している。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った図2の組織の断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1に示されるように、2により全体が示されている無細胞有機組織は、交差点6において交差するために互いに連通する複数の孔4を備えている。
【0071】
示される実施例では、全ての孔4は組織2の表面8に対して傾斜している。しかしながら、孔の一部が組織2の表面8に対して垂直であると仮定することは可能である。
【0072】
当然のことながら、浸透/穿孔は、全厚みにおいて孔4の均一な分布を得るために足場2の全表面8上で、および移植されるために組織2の有用な全表面上で繰り返されなければならない。
【0073】
図2は本発明のさらなる実施形態の上面図を示しており、無細胞有機組織12は孔14(明確化のために、孔は図2の断面図、つまり図3においてのみ示されている)だけでなく、リザーバ空洞20も備えている。
【0074】
組織12の表面18上に、円形断面の大きな孔の形状の複数のリザーバ空洞20を観察することが可能である。
【0075】
最後に、図3は図2のIII−III線に沿った断面図において、どのように孔14が互いに、かつリザーバ空洞20と連通しているかを示している。
【0076】
一連の孔4、14(もし必要であればリザーバ空洞20)が上述したように無細胞組織2、12において作成されると、細胞が存在しない前記組織をペトリカプセルまたは類似のデバイスに配置可能であることは明白であり、次に一般には幹細胞である将来の宿主の生細胞を導入する。
【0077】
培地において適切に栄養が供給された前記幹細胞は備えられた全ての孔4、14に簡単かつ迅速に入り込むため、移植される全組織の完全かつ効果的な再活性化が保障され得る。
【0078】
一般的な工程を以下に構成した。故前処理されているため細胞が存在しない、足場と称される有機組織2、12を、好ましくは平面に置いて広げる。針は電流を動力源として、電流の通過に関わる分子間結合を断つのにちょうど十分なエネルギー量を処理される組織の分子に供給することが可能である。一方で、周辺領域は、あらゆる断裂もしくは破壊の現象、壊死、層厚の増減、液体量の変化、凝固、またはその他の変性作用の影響を受けない。
【0079】
実質的に、この分子結合の切断が微細孔4、14を形成することに相当し、実際のところ、微細孔は各針と同じ直径を有しており、あらゆる場合において針の最小直径は再活性化細胞の直径よりも小さくはなり得ない。
【0080】
そして、針は十分にゆっくりと導入されるため、針の先端は前進する間に、電流の通過および結果として生じた分子結合の断裂により、すでに調製された孔を見つけることが可能である。
【0081】
リサーバ空洞20は、適切な直径の針を選択して同様の方法にて形成することが可能であり、厳密に必要とはされていないが、孔の作成前にリザーバ空洞を作成することが好ましい。
【0082】
再導入される細胞が、組織の深部まで浸透し、孔の壁に定着し、増殖して全有機組織を非常にすばやく再活性化可能とするように、孔のメッシュ構造は特に重要かつ有用である。
【0083】
完全かつ効果的な再活性化が達成され、それ故実施しなければならない移植の障害によるあらゆる危険性を排除することが可能であるため、本発明の方法および組織は本発明の全ての目的を達成することが理解される。さらに、再活性化過程において、周知の技術よりも迅速かつ均一な細胞拡散が行われる。
【0084】
実施の際、本明細書に記載されていない本発明の方法および組織において、さらなる変更または構造変形も実施可能である。
【0085】
前記変更および構造変形は、以下に表される特許請求の範囲内である場合、本発明によって保護されるものと見なされる。
【0086】
あらゆる特許請求の範囲において言及される技術的特徴に引用符号が附随する場合、これらの引用部号は特許請求の範囲における理解を高める目的のためにのみ含まれる。従ってこのような引用符号は、該引用符号を用いた例示によって特定される各要素の保護において何ら制限の影響をもたらすものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再活性化のために、詳細には生細胞を導入するためにヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織を調製する方法であって、該方法は、前記無細胞有機組織(2、12)に該組織の表面(8、18)を通過して作成されて前記組織(2、12)の内部に向かって伸びる複数の孔(4、14)が備えられ、該複数の孔(4、14)は1以上の針を用いて作成される段階を含み、前記孔(4、14)は、少なくとも部分的に交差するため、少なくとも部分的に互いに連通する孔(4、14)が形成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該方法は前記孔(14)の少なくとも一部と連通するリザーバ空洞(20)が前記組織(12)に形成される段階も含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記孔および/またはリザーバ空洞は、電力源に接続された1以上の金属針によって作成され、該電力源は、前記針の先端に近接する有機組織の分子間結合を切断するのに十分なエネルギー量を提供するような強度および波形の電流の流れを各針の先端にもたらすことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記電流は4MHzの波周波数の電圧によって決定され、印加される正弦波電圧波は歪んだ正弦波であるため、少なくとも第1、第2、および第3の高調波を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の方法であって、前記孔(4、14)は少なくとも50μmの直径を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の方法であって、前記リザーバ空洞(20)はほぼ円筒形状であり、最大で1mmの直径を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の方法であって、前記孔(4、14)は種々の直径を有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項2〜7のうちいずれか一項に記載の方法であって、前記リザーバ空洞(20)は種々の直径を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一項に記載の方法であって、該方法は、様々な材料が吸気装置を用いて前記孔(4、14)に導入され、前記材料は、好ましくは洗浄液、栄養液、および/または生細胞の中から選択される段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
再活性化のために、詳細には生細胞を導入するために調製されるヒトまたは動物に由来する無細胞有機組織(2、12)であって、該組織は針を用いて作成されて組織の表面(8、18)から該組織の内部に向かって伸びる穿刺である孔(4、14)を含み、前記孔(4、14)は少なくとも部分的に交差するため、該孔(4、14)は少なくとも部分的に互いに連通することを特徴とする無細胞有機組織。
【請求項11】
請求項10に記載の無細胞有機組織であって、該組織は前記孔(4、14)の少なくとも1部と連通するリザーバ空洞(20)も含むことを特徴とする無細胞有機組織。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項に記載の無細胞有機組織であって、前記孔(4、14)は少なくとも50μmの直径を有することを特徴とする無細胞有機組織。
【請求項13】
請求項11または12に記載の無細胞有機組織であって、前記リザーバ空洞(20)はほぼ円筒形状であり、最大で1mmの直径を有することを特徴とする無細胞有機組織。
【請求項14】
請求項10〜13のうちいずれか一項に記載の無細胞有機組織であって、前記孔(4、14)は種々の直径を有することを特徴とする無細胞有機組織。
【請求項15】
請求項11〜14のうちいずれか一項に記載の無細胞有機組織であって、前記リザーバ空洞(20)は種々の直径を有することを特徴とする無細胞有機組織。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−509224(P2013−509224A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535950(P2012−535950)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/IB2010/002767
【国際公開番号】WO2011/051793
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512109253)テレア バイオテク エス.アール.エル. (1)
【Fターム(参考)】