説明

再生パルプ製造方法、再生パルプ製造装置および古紙再生処理装置

【課題】攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避可能で、短時間で効率よく確実に離解処理を行って再生パルプを製造する再生パルプ製造方法、再生パルプ製造装置、及び該再生パルプ製造装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】再生パルプ製造方法は、古紙原料6を給水部182から供給された水とともに攪拌槽181内で攪拌羽根187により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ製造方法において、前記攪拌槽181内における古紙原料6及び給水部182からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根187によって攪拌が行われている状態で、前記攪拌羽根187を浸漬可能な高さとして攪拌を行う構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生パルプ製造方法、再生パルプ製造装置および古紙再生処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国においては、一度使用した古紙、例えば古新聞紙やオフィス等で生じる古紙を回収して紙を再生する技術ならびに社会システムが確立している。
しかし、古紙から再生紙を製紙する場合には、古新聞がリサイクル品として回収される住宅街等やオフィス等の紙の消費場所と、古紙から紙を再生する再製紙工場とは離れており、古紙の回収、運搬にコストとエネルギーを要する。また、オフィスでは古紙の持ち出しにより古紙に記載された機密情報等が外部へ漏洩するおそれがある。
【0003】
そこで、下記特許文献1、2には、装置を小型化し、紙の消費場所で古紙を処理することの可能な古紙処理装置に関する開示があり、特許文献1には、古紙再生方法および装置として、文書裁断機によって裁断した古紙を離解して再生パルプとする工程と、再生パルプを貯蔵する工程と、再生パルプを噴射装置に充填して繊維シートに吹きかける工程と、繊維シートに吹きかけた再生パルプを抄紙する工程とからなる構成等が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、古紙の裁断紙片を離解して再生パルプを調製する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を一体的に備える古紙処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-317290号公報
【特許文献2】特開2009−299228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2では、再生パルプを製造する際、攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下といった問題を生じ、短時間で効率よく確実に離解処理を行い、再生パルプを製造する方法が求められている。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避可能で、短時間で効率よく確実に離解処理を行って再生パルプを製造する再生パルプ製造方法、再生パルプ製造装置、及び該再生パルプ製造装置を備えた古紙再生処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の再生パルプ製造方法は、古紙原料を給水部から供給された水とともに攪拌槽内で攪拌羽根により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ製造方法において、前記攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、前記攪拌羽根を浸漬可能な高さとして攪拌を行う構成にしてある。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の再生パルプ製造方法において攪拌槽の内径が、75mm〜500mmである攪拌槽内で攪拌を行うものである。
【0010】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の再生パルプ製造方法において、攪拌槽における古紙原料及び給水部からの水を含む液体中の古紙原料の濃度を、4.5重量%〜8.0重量%として再生パルプを製造するものである。
【0011】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項3に記載の再生パルプ製造方法において、古紙原料及び給水部からの水を含む液体の攪拌羽根による攪拌時間を、30分以上としたものである。
【0012】
更に、請求項5に記載の発明は、古紙原料を給水部から供給された水とともに攪拌槽内で攪拌羽根により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ部と、再生パルプ部の動作を制御する制御部とを備えた再生パルプ製造装置において、制御部は、攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で該攪拌羽根を浸漬可能な高さとなるよう給水部からの給水量を制御する再生パルプ製造装置に関するものである。
【0013】
更に、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の再生パルプ製造装置と、前記再生パルプ製造装置で製造された再生パルプ含有液を抄紙する抄紙装置とを備えた古紙再生処理装置についてのものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の再生パルプ製造方法によれば、攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で前記攪拌羽根を浸漬可能な高さとして攪拌を行うので、攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避することができる。
【0015】
また、請求項2に記載の再生パルプ製造方法によれば、攪拌槽の内径が、75mm〜500mmである攪拌槽内で攪拌を行うので、離解処理効率を十分なものとしつつ、占有面積が小さいために再生パルプ装置の小型化を実現可能である。
【0016】
そして、請求項3に記載の再生パルプ製造方法によれば、攪拌槽における古紙原料及び給水部からの水を含む液体中の古紙原料の濃度を、4.5重量%〜8.0重量%として再生パルプを製造するので、攪拌槽内で水中に分散する古紙原料同士が相互に接触する割合、及び古紙原料と攪拌羽根とが接触する割合を高くすることができ、離解処理を短時間で効率よく進行させることができるとともに、離解処理が進行し、粘度が上昇した状態においても駆動手段の消費電力を抑えつつ液体を十分に攪拌することができる。
【0017】
更に、請求項4に記載の再生パルプ製造方法によれば、古紙原料及び給水部からの水を含む液体の攪拌羽根による攪拌時間を、30分以上としたので、古紙原料を十分に離解することができる。
【0018】
本発明にかかる再生パルプ製造装置によれば、古紙原料を給水部から供給された水とともに攪拌槽内で攪拌羽根により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ部と、再生パルプ部の動作を制御する制御部とを備えた再生パルプ製造装置において、制御部は、攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、攪拌羽根を浸漬可能な高さとなるよう給水部からの給水量を制御するので、攪拌槽内における攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避することができる。
【0019】
本発明にかかる古紙再生処理装置によれば、請求項5に記載の再生パルプ製造装置と、前記再生パルプ製造装置で製造された再生パルプ含有液を抄紙する抄紙装置とを備えたので、再生パルプ製造装置において効率よく再生パルプを製造でき、得られた再生パルプを含有する再生パルプ含有液を抄紙装置で抄紙するとで、品質の良好な再生紙を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙再生処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙再生処理装置の再生パルプ部の構成概略図である。
【図3】前記再生パルプ部のパルパーの攪拌羽根の斜視図である。
【図4】前記パルパーの攪拌羽根の他の例を示す斜視図である。
【図5】前記古紙再生処理装置の脱墨処理部の平面図及び断面図である。
【図6】前記古紙再生処理装置の抄紙部及び仕上部のカレンダー部の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(古紙再生処理装置の概略)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる古紙処理装置の構成概略図である。図1において、古紙再生処理装置100は、再生パルプ部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5、制御部(図示省略)を一体的に備えるものである。再生パルプ部1は、古紙原料6を離解して再生パルプを製造するものであり、脱墨パルプ部2は、再生パルプ部1において製造された再生パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨パルプ部2において得られた脱墨パルプを抄紙し、抄紙により得られた湿紙の乾燥を行うものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において湿紙の乾燥を行ったものをカレンダー処理及び裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものであり、制御部は、各部の動作を制御するものである。
【0022】
(再生パルプ部)
図2は、再生パルプ部1の構成概略図である。再生パルプ部1は、再生パルプ製造装置Kにより構成される。図2に示すように、再生パルプ製造装置Kは、古紙原料供給部9、計測部17、パルパー18を備えている。
【0023】
古紙原料6としては、所定サイズ以上の大きさを有する古紙原料6である粗紙66と、所定サイズより小さいサイズの古紙原料6である細断紙67との双方を処理可能である。粗紙66にはA4、B5等といった定型紙が含まれ、更に、正方形等の定型紙以外の古紙原料6も含まれる。また、細断紙67にはシュレッダー等の切断機器によって所定サイズより小さいサイズに切断された古紙原料6が含まれ、更に、切断機器により切断を行っていない古紙原料6も含まれる。
【0024】
古紙原料供給部9は、粗紙66を供給する粗紙供給部11と、細断紙67を供給する細断紙供給部12とを備えている。粗紙供給部11には、粗紙66を載置する粗紙載置台111と、粗紙載置台111を昇降する昇降手段(図示省略)と、粗紙載置台111上に載置された複数の粗紙66のうち最上位の粗紙66を計測部17へと搬送する給紙ローラ112とを設けている。
【0025】
細断紙供給部12には、細断紙67を貯留するシュレッダータンク121を設けており、該シュレッダータンク121の底部には細断紙67の排出口122が形成されている。排出口122には、図2において二点鎖線で示すように揺動することで開閉自在に構成された開閉部材124を設けており、開閉部材124の上方には、開閉部材124の開放時にシュレッダータンク121内の細断紙67を下方に排出する排出装置125を備えている。排出装置125の構成は、細断紙67を下方に排出可能であればよく、特に限定されないが、図2では一対の回転体127を示しており、該回転体127は、双方の回転体127の間に細断紙67を挟持し、回転することで細断紙67を下方に排出するようになっている。
【0026】
計測部17は、粗紙供給部11及び細断紙供給部12より供給された古紙原料6の重量を計測するものである。計測部17は、排出口122の下方、且つ、給紙ローラ112による粗紙66の搬送方向下流側のやや低い位置に配設してある。計測部17は、粗紙66および細断紙67を受け止める受皿171を備えている。
【0027】
受皿171は、図2において二点鎖線で示すように、水平姿勢からパルパー18へ向けて傾倒する傾倒姿勢にまで傾倒可能に構成され、受皿171を傾動させるモータ等の駆動手段(図示省略)を有する。また、受皿171は傾倒姿勢において、低位置となる側には側壁を設けておらず、受皿171を傾倒するのみで古紙原料6をパルパー18へ投下可能となっている。
【0028】
パルパー18は、計測部17より投入された古紙原料6を水及び離解促進剤の液体中において、繊維、つまり再生パルプにまで離解するものであり、攪拌槽181、給水部182、離解促進剤供給部183、脱墨剤供給部184、攪拌手段189、再生パルプ含有液取出部186を備えている。
【0029】
攪拌槽181の形状及び大きさは、特に限定されないが、攪拌効率が良好な点から有底略円筒状に形成されたものを用いることが好ましい。また、離解処理効率及び装置の小型化の観点から、内径が75mm〜500mm、より好ましくは300mm〜400mm程度で、容量が0.4L〜30L、より好ましくは7L〜25L程度の大きさのものを用いることが好ましい。
【0030】
攪拌槽181の内壁面には、複数の邪魔板50を設けている。邪魔板50は、攪拌槽181内に貯留する液体を適正に攪拌し、攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転を抑制するものであれば、その形状及び設置箇所、個数につき特に限定されないが、図2においては、一例として、三角柱状に形成された邪魔板を攪拌槽181の高さ方向略中央部の内壁面の複数箇所に突設してなるものを示している。
【0031】
給水部182は、攪拌槽181の上方に設けられており、該給水部182は、配管(図示省略)により、水道水等の上水の供給部(図示省略)、及び後述する排液処理部5の白水タンク54の双方に接続され、これら上水または白水タンク54内の白水のうち、いずれかの水を攪拌槽181に供給するようになっている。
【0032】
離解促進剤供給部183は、攪拌槽181の上方に設けられている。離解促進剤供給部183から供給される離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ類から選ばれる1種以上若しくはその水溶液等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0033】
脱墨剤供給部184は、後段の脱墨パルプ部2において行う脱墨処理の際に必要となる脱墨剤を、パルパー18において予め添加しておくため設けられるものである。該脱墨剤供給部184は、攪拌槽181の上方に設けられ、脱墨剤供給部184から供給される脱墨剤としては、たとえば脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸などのアルキレンオキシド付加物など、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等の公知のものを用いることができる。
【0034】
攪拌手段189は、攪拌槽181の底部に設けられ、古紙原料6を給水部182から供給された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根187と、前記攪拌羽根187を回転駆動するモータ等の駆動手段188とを備えている。図3に、攪拌羽根187の一例としての薄平板状の攪拌羽根187の斜視図を示す。攪拌羽根187は、平面視十字状に形成された薄平板36を上下2段に回転軸38に固設してなり、回転軸38の頂部にはテーパ状に突出して形成されたテーパ部39を設けている。また、攪拌羽根184の回転軸38は、攪拌槽181の中心より若干偏心した位置に設けられ、これにより、攪拌槽181内に貯留する液体を効率よく攪拌できる。
【0035】
攪拌羽根187の厚さは、2mm〜5mm程度が好ましい。2mm以上であることにより、攪拌槽181内に貯留する古紙原料6、水等の液体を十分に攪拌することができ、5mm以下であることより、古紙原料6を攪拌羽根187によって効率よく切断し、再生パルプを製造できる。
【0036】
攪拌羽根187は、攪拌槽181の底面から20mm〜100mm程度の高さ位置に設けることが好ましい。攪拌羽根187の高さ位置を20mmより高くすることで、離解処理の際、細断紙67及び粗紙66を、攪拌羽根187の下方に容易に潜り込ませることができ、これら細断紙67及び粗紙を攪拌羽根187により切断して再生パルプを製造することができる。また、攪拌羽根187の高さ位置を100mmより低くすることで、少量の古紙原料6を離解処理する際、攪拌羽根187を古紙原料6及び給水部182からの水を含む液体に浸漬可能な高さとし、攪拌羽根187の空気を巻き込みながらの回転を防止することができる。
【0037】
攪拌羽根187の薄板36は図3に示すものに限定されず、他の形状のものであってもよい。例えば、図4に示す薄板37のように、平面部分37aと、該平面部分37aから所定角度で屈曲した屈曲部分37bとを備えたものでもよい。これらのうち、離解処理の際に水に浸漬された古紙原料6を容易に切断して短時間で離解処理を終えることが可能な点で、図3に示す平面状の薄板36からなる攪拌羽根187が好ましい。尚、図3では平面視十字状の4枚羽根の薄板36を備えた攪拌羽根187を示すが、3枚羽根や5枚以上の羽根によって星型等の他の形状とされたものであっても構わない。
【0038】
また、図示は省略するが、攪拌槽181には、該攪拌槽181内に貯留する液体を所定温度まで加温するためのヒータおよび温度センサを設けてある。
【0039】
再生パルプ含有液取出部186は、攪拌槽181の底部に設けられ、パルパー18にて古紙原料6を離解することにより製造された再生パルプ、水等を含有する再生パルプ含有液を取り出すようになっている。再生パルプ含有液取出部186は、開閉弁208及びポンプ209を備えた配管207に接続されており、再生パルプ含有液取出部186からポンプ209により取り出した再生パルプ含有液を脱墨パルプ部2又は抄紙部3へ送るようになっている。
【0040】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21及び脱墨処理部22を備え、各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0041】
脱墨前希釈部21は、再生パルプ製造装置Kから送られた再生パルプ含有液を脱墨に適した繊維濃度に希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。
【0042】
尚、脱墨処理部22による脱墨処理は省略することも可能であり、脱墨処理を省略する場合には、再生パルプ製造装置Kから送られた再生パルプ含有液を、脱墨前希釈部21で抄紙に適する繊維濃度に希釈する。
【0043】
図5(a)に脱墨処理部22の平面図を、同図(b)に図5(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨処理部22は、フローテータと呼ばれ、インク成分、トナー成分等の印刷成分を再生パルプ含有液から分離して脱墨パルプを製造するためのものであり、再生パルプ含有液流通槽221、ブレード222及び気泡排出槽223を備えている。
【0044】
再生パルプ含有液流通槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整された再生パルプ含有液を流通させるものである。再生パルプ含有液流通槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、図5(b)に示すように、仕切り壁224の左方または右方が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。
【0045】
各脱墨室225の底部には、再生パルプ含有液流通槽221内を流通する再生パルプ含有液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けるとともに、各仕切り壁224の双方の面の高さ方向略中央部に温度センサ227と、ヒータ228とをそれぞれ配置している。また、再生パルプ含有液を再生パルプ含有液流通槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有する脱墨パルプ含有液を再生パルプ含有液流通槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0046】
ブレード222は、再生パルプ含有液流通槽221の上部を浮遊する気泡を、再生パルプ含有液流通槽221の周壁を溢流させ気泡排出槽223側へ掃き出すためのものであり、再生パルプ含有液流通槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するよう構成されている。
【0047】
図5(a)に示すように、気泡排出槽223は、再生パルプ含有液流通槽221の外周を取り囲むよう平面視ロ字状に設けられ、脱墨の際再生パルプ含有液流通槽221内で生じ、ブレード222により掃き出された気泡を一旦貯留するようになっている。気泡排出槽223には、気泡排出槽223内及びブレード222等に付着した気泡を洗い流すための水などの洗浄液を噴出する洗浄液噴出部223aを設けている。洗浄液噴出部223aは、気泡排出槽内の壁面の上段部及び中段部の全周に亘って複数配備されている。
【0048】
更に、気泡排出槽223は、生じた気泡を消滅させるための消泡部(図示省略)を備えていることが好ましい。消泡部は気泡を消滅させることができればその構造は限定されないが、例えば、温風や熱風を供給する風供給部(図示省略)等が挙げられ、風供給部から気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させる。かかる風供給部を設ける場合には、風供給部からの温風や熱風を水分含有量の低い乾燥した温風又は熱風とすることがより好ましい。これにより、気泡の水分をより容易に吹き飛ばすことができるからである。
【0049】
気泡排出槽223の底部には、該気泡排出槽223内に貯留する洗浄液噴出部223aからの洗浄液及び気泡の消滅により生じた液等を含む脱墨排水を取り出す脱墨排水取出部75を設けており、脱墨排水取出部75から取り出した脱墨排水は、脱墨排水タンク53に送られるようになっている。
【0050】
(抄紙部)
図6は、抄紙部3及び仕上部4のカレンダー部41の概略斜視図である。抄紙部3は、脱墨処理部22による脱墨の終了した脱墨パルプ含有液、または脱墨処理を省略した場合には、脱墨前希釈部21で所定濃度に希釈された再生パルプ含有液を抄紙するものであり、抄紙装置Sにより構成される。図6に示すように、抄紙部3は、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、ドライヤー部34からなる。
【0051】
ヘッドボックス31は、脱墨パルプ含有液または再生パルプ含有液をワイヤー部32に均一に供給するためのものであり、ヘッドボックス31の上部は開口しており、下部に脱墨パルプ含有液の供給口31aが形成されている。脱墨パルプ含有液の供給口31aの長手方向両端部には、ワイヤー部32のメッシュベルト323の両側縁部に沿って所定長さを有するガイド部材31bが片持ち支持されている。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31からワイヤー部32のメッシュベルト323上に供給された脱墨パルプ含有液がメッシュベルト323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するようになっている。
【0052】
ワイヤー部32は、 複数の回転ローラ321に掛け渡して展張したメッシュベルト323を有し、メッシュベルト323が往路軌道323aと復路軌道323bからなる無端軌道を形成している。また、往路軌道323aの下方には、往路軌道323aの網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は後述する排液処理部5の白水タンク54(図1参照)に接続されている。
【0053】
図6に示すように、 脱水部33は、複数の回転ローラ331の間にそれぞれ掛け渡したフェルトからなる無端状の吸水ベルト332a,332bを上下一対有し、上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接している。この上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接した部分において、双方の吸水ベルト332a,332bを挟圧して圧搾する一対の圧搾ローラ334を複数備えている。
【0054】
上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとは設置位置を所定長さだけずらせており、上側の吸水ベルト332aの方が下側の吸水ベルト332bよりも湿紙64の走行方向上流側に配置されている。これにより、メッシュベルト323上を搬送されてきた湿紙64をまず上側の吸水ベルト332aに転移し、その後、圧搾ローラ334による圧搾の直前まで湿紙64を下側の吸水ベルト332bに接触させないようにしている。
【0055】
ドライヤー部34は、フード(図示省略)内に複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343を配置し、この複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343の間に掛け渡した搬送ベルト342を上下一対備えている。搬送ベルト342の材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とし、上下の搬送ベルト342は一部が当接した状態で走行し、上下の搬送ベルト342の当接箇所に複数の乾燥ローラ343が配置されている。乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えるとともに、外周面に搬送ベルト342を巻回しており、また、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ(図示省略)を有している。
【0056】
(仕上げ部)
図1に示すように、仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42を有しており、図6に示すように、カレンダー部41は紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ411を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0057】
(排液処理部)
図1に示すように排液処理部5は、脱墨排水タンク53、白水タンク54の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後古紙処理装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク54内の白水は、フィルターを通してインク、トナー等を除去し、必要により薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0058】
(制御部)
制御部は、古紙再生処理装置100の各部の動作を制御することで、装置全体の動作を制御する。制御部は、再生パルプ部1について、攪拌槽181内における古紙原料6及び給水部182からの水を含む液体の水位が、攪拌羽根187を浸漬可能な高さとなるよう給水部182からの給水量を制御する。
【0059】
(作用)
本実施形態にかかる古紙処理装置100の作用につき以下に説明する。まず、図2に示すように、粗紙66と細断紙67とのいずれかの古紙原料6を計測部17で計測し、計測した古紙原料6をパルパー18に投入する。古紙原料6のうち粗紙66と細断紙67とのいずれの古紙原料6を先に処理してもよく、いずれかに限定されない。
【0060】
粗紙載置台111上の粗紙66の供給は、昇降手段により粗紙載置台111を昇降し、積層された複数の粗紙66のうち最上位の粗紙66を給紙ローラ112に当接させるよう位置あわせした後、給紙ローラ112を回転して最上位の粗紙66を一枚ずつ受皿171へと搬送する。計測部17の計測値が予め設定した一回のバッチ式離解処理において処理を行う古紙原料6の全重量として、予め設定した所定値となったところで給紙ローラ112による搬送を停止し、受皿171を傾倒しパルパー18へと投入する。
【0061】
一方、細断紙67を古紙原料6として処理する際は、図2において二点鎖線で示すように、開閉部材124を開放し、排出装置125を作動してシュレッダータンク121内の細断紙67を受皿171に徐々に投下し、受皿171上に載置された細断紙67の重量を測定する。計測部17の測定値が所定値に達した時点で排出装置125を停止し、受皿171を傾倒する駆動手段を駆動して受皿171を傾倒し、細断紙67を攪拌槽181へ投入する。
【0062】
パルパー18では、古紙原料6の攪拌槽181への投入に伴い、設定された離解処理に必要となる量の一部を予め給水部182から給水し、駆動手段188を駆動して、攪拌羽根187を回動しておく。そして、上記のように古紙原料6を投入し、離解処理を開始し、離解処理を行っている間に、残部の離解用の水を、所定時間毎に所定量ずつ徐々に給水することで複数回に分割して供給する。
【0063】
また、離解促進剤供給部183により離解促進剤を攪拌槽181に投入する。この離解促進剤供給部183からの攪拌槽181への離解促進剤の投入は、古紙原料6の投入開始から所定時間経過した後に行うことが好ましい。これにより、まず離解用の水により古紙原料6を十分膨潤させた後、膨潤した古紙原料6の内部に離解促進剤を速やかに浸透させることができ、離解処理の時間を短縮可能である。
【0064】
離解処理の際に、攪拌槽181内に貯留している給水部182から供給された水、離解促進剤及び古紙原料6を含む液体の水位を、攪拌羽根187a、187bによって攪拌が行われている状態で、上下双方の攪拌羽根187a、187bを浸漬可能な高さとなるように設定する。また、より好ましくは、攪拌槽181内に貯留している液体の水位を、攪拌羽根187a、187bの回動を行って、離解処理を行っている間中継続して、上下双方の攪拌羽根187a、187bを浸漬したままとなるように設定する。即ち、攪拌羽根187a、187bの回動により、攪拌槽181内に貯留している液体の水位が、槽内の中央部が低く、側壁近傍が高くなった場合においても、液体が攪拌羽根187a、187bの全体をずっと浸漬した状態とすることがより好ましい。これにより、攪拌羽根187の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避するとともに、攪拌槽181内の古紙原料6を攪拌羽根187に十分に接触させ、短時間で離解処理を行うことができる。
【0065】
また、離解処理が進行し、液体の粘度が上昇した状態で、攪拌羽根187によって液体を十分に攪拌できる程度の所定値以下の水位となるよう上限を設定する。
【0066】
例えば、攪拌槽181の内径が300mm、攪拌槽181の底面から上段の攪拌羽根187aの上面までの高さが90mm程度とした場合には、水、離解促進剤及び古紙原料6を含む液体の全容量を7L以上となるよう設定することで、離解処理の際攪拌槽181内に貯留する液体の水位を99mm程度とし、上段の攪拌羽根187aを浸漬できる高さとする。また、液体の容量を25L以下となるよう設定することで水位を35mm以下として、小型の駆動手段188を用いても攪拌羽根187によって液体全体を十分に攪拌できるようにする。
【0067】
この離解処理における攪拌槽181に貯留する液体中の古紙原料6の濃度は、4.5重量%〜8.0重量%程度とする。4.5重量%以上とすることにより水中に分散する古紙原料6同士が相互に接触する割合、及び古紙原料6と攪拌羽根187とが接触する割合を高くすることができるので、離解処理を短時間で効率よく進行させることができる。一方、古紙原料6の濃度を8.0%以下とすることにより、離解処理が進行し、粘度が上昇した状態においても小型の駆動手段188により、消費電力を抑えつつ液体を十分に攪拌することができる。
【0068】
かかる古紙原料6の濃度で離解処理され、製造された再生パルプ含有液は、離解処理が十分行われているので、印刷成分が再生パルプから剥離した状態となっている。このような再生パルプ含有液を脱墨パルプ部2において脱墨すると、非常に効率よく印刷成分を分離、除去することとができ、脱墨後得られた脱墨パルプ含有液を抄紙することで製造される再生紙7を白色度の高いものとすることができる。従って、ニーダーを用いた混練処理を省略した場合であっても、白色度の高い再生紙7を得ることが可能となる。
【0069】
駆動手段188を構成するモータの回転数は、400rpmから3000rpm程度まで、より好ましくは、400rpmから2600rpm程度にまで徐々に上昇させつつ離解処理を行う。本実施形態では、好ましくは攪拌槽181内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根187が回動した状態において液体が攪拌羽根187の全体を浸漬可能な高さとして攪拌を行うので、上記範囲の回転数で十分に攪拌槽181内に貯留する液体を攪拌して再生パルプを製造でき、これにより消費電力を抑えることができる。
【0070】
このように攪拌羽根187の回転数を徐々に上昇したために、攪拌槽181内に貯留している液体の水位が、槽内の中央部と側壁近傍とで高低差が大きくなり、液体が上下の攪拌羽根187a、187bの一部を浸漬しなくなって、攪拌羽根187a,187bの一部がむきだしとなるときに、給水部182より給水を行って、攪拌羽根187a、187bの全体が浸漬可能となるよう制御することもできる。このようにして、離解処理の間中継続して、上下双方の攪拌羽根187a、187bを攪拌槽181内の液体が浸漬した状態となるように設定することが更に好ましい。
【0071】
古紙原料6の投入後離解終了までの時間は、30分以上とすることが好ましい。30分以上とすることで古紙原料6を十分に離解することができる。
【0072】
そして、このパルパー18での離解処理の間、必要により、温度センサで攪拌槽181内の温度を検出し、温度ヒータを通電することで攪拌槽181内に貯留する古紙原料6及び水等の含む液体を離解処理に適する所定温度に維持する。
【0073】
5分程度といった所定時間だけ離解処理終了より前の時点で、脱墨剤供給部184から所定量の脱墨剤を供給する。脱墨剤供給部184からの脱墨剤の供給を離解処理終了より所定時間だけ前の時点とすることで、脱墨剤添加後の所定時間の攪拌によって、脱墨剤を再生パルプ含有液中で十分に分散させ、溶解することができる。また、離解処理開始前後の早い段階で脱墨剤を添加する場合のように、離解処理中の多量の気泡の発生を抑制することができる。
【0074】
脱墨剤供給部184から供給する脱墨剤の量は、処理を行う古紙原料6の印字率に応じて加減することが好ましい。古紙原料6の印字率が高い場合には、脱墨剤の供給量を多くし、逆に、印字率が低い場合には脱墨剤の供給量を少なくする。これにより、得られる再生紙7を、処理を行う古紙原料6の印字率が高い場合であっても良好な白色度を有するものとすることができる。また、古紙原料6の印字率が低い場合には脱墨剤の消費量を節約することができる。
【0075】
また、古紙原料6の印字率に応じて離解処理時間を調整することが好ましい。印字率が高い場合には、離解処理時間を長くし、逆に、印字率が低い場合には離解処理時間を短くする。離解処理時間を長くすることで、攪拌槽181で製造された再生パルプに付着している印刷成分を、該再生パルプからより多く剥離することができ、脱墨パルプ部2における脱墨効率を向上させることで、得られる再生紙7の白色度を高めることができる。一方、印字率が低い場合に離解処理時間を短くすることで、再生パルプの製造時間及び再生紙7の製造時間を短縮可能である。
【0076】
古紙原料6の印字率の検知方法は、公知の方法が利用可能であって特に限定されず、例えば、透過型センサ(図示省略)を用いて粗紙供給部11から計測部17へ供給される粗紙66の透過光量から印字率を検知する方法や、パルパー18においてCCDセンサ(図示省略)等を用いて攪拌槽181内の液体の着色度を撮像することにより検知する方法等を利用可能である。
【0077】
攪拌槽181には、邪魔板50を設けているので、攪拌槽181内に貯留する液体を十分に攪拌することができ、離解処理時間を短縮可能である。
【0078】
離解処理の終了後、開閉弁208を開放し、パルパー18において製造された再生パルプを含有する再生パルプ含有液を再生パルプ含有液取出部186より取り出し、ポンプ209の駆動により、図1に示す脱墨前希釈部21へ送る。
【0079】
そして、攪拌槽181から再生パルプ含有液を取出した直後に、給水部182から所定量の水を給水する。これにより、空になった攪拌槽181の内壁面に付着し残存している再生パルプがある場合に、この再生パルプを洗い流し、攪拌槽181内に再生パルプを残存させないようにすることができる。再生パルプ含有液を取出した後の給水部182からの給水は、次工程となる脱墨前希釈部21における希釈液としての水の一部を流用することにより行う。
【0080】
脱墨前希釈部21では、再生パルプ含有液を脱墨処理に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水を投入して再生パルプ含有液の希釈を行う。次に、所定の繊維濃度に調整された再生パルプ含有液を脱墨処理部22に送る。尚、脱墨パルプ部22における脱墨処理は省略することも可能であり、脱墨処理を省略する場合には、脱墨前希釈部21において再生パルプ含有液を抄紙に適した繊維濃度に希釈した後、抄紙部3へと送る。
【0081】
脱墨処理部22では、図5に示す再生パルプ含有液流通槽221に流入部229aから流入した再生パルプ含有液を、仕切壁224の左方または右方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、再生パルプ含有液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、再生パルプ流通槽221内の再生パルプ含有液の円滑な流通を促すようにする。
【0082】
親水性の繊維は、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにして再生パルプ含有液からトナー成分等を除去する脱墨を行う。その際、温度センサ227で再生パルプ含有液の温度の検出を行い、ヒータ228で再生パルプ含有液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行う。
【0083】
脱墨処理部22に再生パルプ含有液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を図5(a)において上下方向に往復移動し、再生パルプ含有液流通槽221の上部に浮遊する気泡を気泡排出槽223に掃き出す。気泡排出槽223に掃き出された気泡は、洗浄液噴出部223aから噴出した洗浄液によって洗い流され、気泡排出槽223内に溜まった洗浄液、脱墨剤、トナー成分等を含む脱墨排水は脱墨排水取出部75から取り出され、脱墨排水タンク53に送られる。
【0084】
再生パルプ含有液流通槽221内の全ての脱墨室225に再生パルプ含有液を流通させ、再生パルプ含有液を脱墨して脱墨パルプを得て、得られた脱墨パルプを含む脱墨パルプ含有液を流出部229bから流出させ、図1に示すように、抄紙部3へ送られる。
【0085】
抄紙部3では、図6に示すように、ヘッドボックス31から走行するメッシュベルト323上に、脱墨パルプを含む脱墨パルプ含有液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。メッシュベルト323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から白水タンク54に送られる。
【0086】
メッシュベルト323上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、脱水部33の上側の吸水ベルト332aに転移される。その後下側の吸水ベルト332bとの間に挟まれ、湿紙64に含まれる水分を吸水ベルト332a,332b側に吸収させることで脱水し、更に、圧搾ローラ334で圧搾して脱水する。
【0087】
脱水部33で脱水された湿紙64は、ドライヤー部34に送られ、走行する上下一対の搬送ベルト342の間に挟持される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に湿紙64を当接させつつ搬送することで湿紙64の乾燥を行い仕上げ前の再生紙65を得る。
【0088】
ドライヤー部34を出た仕上げ前の再生紙65はカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラ411の間に通される。これにより、仕上げ前の再生紙65の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0089】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すように再生パルプ部1に戻され、再度古紙原料6として利用される。
【0090】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を施した後古紙処理装置100の外部に排出する。汚染の程度が低く再利用が可能な白水タンク54内の白水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用する。
【0091】
(実験)
攪拌槽内に貯留する液体の水位による影響を実験するため、上記実施形態にかかる再生パルプ製造装置Kを用い、攪拌槽内に貯留する古紙原料及び水からなる液体の容量を10L、14.3Lの2種類として、それぞれ離解処理を行った。処理を行う古紙原料は細断紙とし、攪拌槽181の内径を300mm、450mmの2種類とした。攪拌羽根187は厚さが2.0mmで、図3に示す屈曲部分のない平面状薄板36よりなる攪拌羽根187及び図4に示す平面部分37aから約45度屈曲した屈曲部分37bを備えたものを1段及び2段のいずれかを用い、攪拌槽の底面から30mm及び60mmの高さ位置に設置した。
【0092】
給水部からの水を水道水とし、古紙原料の投入前に攪拌槽内に貯留する水の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、攪拌羽根を浸漬できない高さである2Lまたは5L、或いは攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、攪拌羽根を継続的に浸漬可能な高さである9Lのいずれかとした。そして、古紙原料の投入後追加で給水し、古紙原料及び水道水からなる液体中の古紙原料の濃度を約7重量%とした。攪拌羽根の回転数を古紙原料の投入開始時400rpmとし、約3分ごとに200rpmずつ上昇し、約30分間で最大2600rpmまで上げた。尚、離解促進剤は使用しなかった。各実験の条件及び、騒音の発生等の離解処理の状態を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1において、◎は騒音の発生がほとんどなく、非常に良好な離解状態であることを示し、○は騒音の発生が少なく、良好な離解状態であることを示し、×は大きな騒音が発生し、古紙原料の離解が不十分であることを示す。表1より、実験番号2、3、5、7、8、10のように攪拌槽内に貯留する水の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で攪拌羽根を浸漬する高さとした場合には、攪拌羽根の空気を巻き込みながらの回転による騒音や攪拌効率の低下を回避し、離解状態を良好なものとすることができることがわかった。また、攪拌羽根の種類は、実験番号6〜10で用いた屈曲部分のあるものより、実験番号1〜5で用いた平板状の薄板の方が離解状態をより良好にできることがわかった。
【符号の説明】
【0095】
K 再生パルプ製造装置
S 抄紙装置
1 再生パルプ部
6 古紙原料
8 制御部
100 古紙再生処理装置
181 攪拌槽
182 給水部
187 攪拌羽根
189 攪拌手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙原料を給水部から供給された水とともに攪拌槽内で攪拌羽根により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ製造方法において、
前記攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、前記攪拌羽根を浸漬可能な高さとして攪拌を行うことを特徴とする再生パルプ製造方法。
【請求項2】
攪拌槽の内径が、75mm〜500mmである攪拌槽内で攪拌を行う請求項1に記載の再生パルプ製造方法。
【請求項3】
攪拌槽における古紙原料及び給水部からの水を含む液体中の古紙原料の濃度を、4.5重量%〜8.0重量%として再生パルプを製造する請求項1または請求項2に記載の再生パルプ製造方法。
【請求項4】
古紙原料及び給水部からの水を含む液体の攪拌羽根による攪拌時間を、30分以上とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の再生パルプ製造方法。
【請求項5】
古紙原料を給水部から供給された水とともに攪拌槽内で攪拌羽根により攪拌し、再生パルプを製造する再生パルプ部と、
再生パルプ部の動作を制御する制御部とを備えた再生パルプ製造装置において、
制御部は、攪拌槽内における古紙原料及び給水部からの水を含む液体の水位を、攪拌羽根によって攪拌が行われている状態で、該攪拌羽根を浸漬可能な高さとなるよう給水部からの給水量を制御することを特徴とする再生パルプ製造装置。
【請求項6】
請求項5に記載の再生パルプ製造装置と、前記再生パルプ製造装置で製造された再生パルプ含有液を抄紙する抄紙装置とを備えた古紙再生処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219893(P2011−219893A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90532(P2010−90532)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】