説明

再生パルプ製造装置、古紙処理装置及び古紙処理方法

【課題】品質の高い再生紙を製造可能な再生パルプ製造装置、古紙処理装置及び古紙処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】再生パルプ製造装置100は、古紙6を給水部182から給水された水とともに攪拌羽根184により攪拌し離解する攪拌槽181と、前記攪拌槽181内の離解途中の古紙62及び少なくともインク成分を含有する水を含んだ再生パルプ含有液を取り出す再生パルプ含有液取出部201と、前記再生パルプ含有液取出部201から取り出された再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を除去する脱水部202と、前記脱水部202で脱水された離解途中の古紙62を前記攪拌槽181に戻す脱水パルプ返戻部203とを備え、前記離解途中の古紙62に対する攪拌槽181における離解と脱水部202における脱水とを繰り返し可能に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生パルプ製造装置、古紙処理装置及び古紙処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、わが国においては、一度使用した古紙、例えば古新聞紙やオフィス等で生じる古紙を回収して紙を再生する技術ならびに社会システムが確立している。
しかし、古紙から再生紙を製紙する場合には、古新聞紙がリサイクル品として回収される住宅街等やオフィス等の紙の消費場所と、古紙から紙を再生する再製紙工場とは離れており、古紙の回収、運搬にコストとエネルギーを要する。また、オフィスでは古紙の持ち出しにより紙に記載された機密情報等が外部へ漏洩するおそれがある。
【0003】
そこで、下記特許文献1〜3には、装置を小型化し、紙の消費場所で古紙を処理することの可能な古紙処理装置に関する開示があり、特許文献1には、古紙再生方法および装置として、文書裁断機によって裁断した古紙を離解して再生パルプとする工程と、再生パルプを貯蔵する工程と、再生パルプを噴射装置に充填して繊維シートに吹きかける工程と、繊維シートに吹きかけた再生パルプを抄紙する工程とからなる構成等が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、古紙処理装置として、什器サイズの装置ケース内にパルプ製造部と抄紙部と制御部を備え、パルプ製造部において古紙を離解し.さらに叩解して古紙パルプを製造し、抄紙部において古紙パルプを抄紙して再生紙を製造し、制御部によってパルプ製造部および抄紙部を連動して駆動制御する構成が記載されている。
【0005】
更に、特許文献3には、再生紙の製造方法として、原料古紙を離解し、ソーキング、脱墨後に、凝集性を有する酵母を添加し、酵母によりインキに含まれる微細な無機顔料、カーボン粒子などを凝集させ、ついでフローテーションにより凝集物を分離除去する構成が記載されている。
【0006】
更に、特許文献4には、古紙処理装置として、古紙の裁断紙片を離解して再生パルプを調製する再生パルプ部と、再生パルプを漂白して脱墨パルプを調製する脱墨パルプ部と、脱墨パルプを抄紙して再生紙を調製する抄紙部を一体的に備えた構成が記載されている。これは、本願特許出願人が脱墨パルプ部において再生パルプを脱墨し、漂白することでトナー成分等の印刷成分を除去可能な技術の提案を行ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-317290号公報
【特許文献2】特開2007-23450号公報
【特許文献3】特開平8-60570号公報
【特許文献4】特願2008−156068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2においては、再生紙の製造の際に印刷済みの古紙に含まれるインク成分やトナー成分等を除去する構成がなく、得られた再生紙はインク成分によって灰色に染色され白色度の低いものとなる。また、トナー粒子の混入により得られた再生紙に微細な多くの黒い斑点が存在する品質の低いものとなる。
【0009】
これに対し、上記特許文献3においては、脱墨によってトナー成分を除去可能であり、更に凝集性を有する酵母を用いてインク成分に含まれる微細な無機顔料、カーボン粒子などを凝集させ、分離除去するので、得られる再生紙の品質を向上することができるが、インク成分の除去に非常に時間と手間がかかる。また、古紙の離解、ソーキング、脱墨の各処理の間に、一旦古紙から滲み出てきたインク成分が古紙の離解によって生じた繊維に再度染み込み、除去することが困難となっているので、得られる再生紙の品質の更なる向上が必要である。
【0010】
そして、特許文献4における古紙処理装置では、脱墨パルプ部において脱墨することでオフセット印刷用のインク成分やトナー成分といった印刷成分を除去可能であるが、オフィスで普及している孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分のような印刷成分の除去が比較的困難であり、かかる印刷成分の残留するパルプ含有液を抄紙することにより最終的に得られた再生紙は白色度の低いものとなる。
【0011】
本発明は上記した課題を解決するものであり、古紙の離解処理の間に、一旦古紙から滲み出てきたインク成分が古紙の離解によって生じた繊維に再度染み込むことを防止し、古紙に含まれる孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分等の印刷成分を容易に除去することで、より品質の高い再生紙を製造可能な再生パルプ製造装置、古紙処理装置及び古紙処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の再生パルプ製造装置は、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌し離解する攪拌槽と、前記攪拌槽内の離解途中の古紙及び少なくともインク成分を含有する水を含んだ再生パルプ含有液を取り出す再生パルプ含有液取出部と、前記再生パルプ含有液取出部から取り出された再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を除去する脱水部と、前記脱水部で脱水された離解途中の古紙を前記攪拌槽に戻す脱水パルプ返戻部とを備え、前記離解途中の古紙に対する攪拌槽における離解と脱水部における脱水とを繰り返し可能に構成してある。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の再生パルプ製造装置において、再生パルプ含有液取出部は、攪拌槽の下部に設けられているものである。
【0014】
そして、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の再生パルプ製造装置において、脱水部は、濾過により少なくともインク成分を含有する水を除去する濾過部を備えているものである。
【0015】
更に、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、脱水部において再生パルプ含有液から除去された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けたものである。
【0016】
更に、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、脱水部は、離間配置された複数の回転ローラの間に掛け渡された無端状のメッシュベルトと、前記メッシュベルト上の再生パルプ含有液を挟圧して圧搾する圧搾ローラとを備えたものである。
【0017】
そして、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、少なくともインク成分を含有する水に含まれる少なくともインク成分を除去するための印刷成分除去部と、
印刷成分除去部で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部とを備えたものである。
【0018】
更に、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の再生パルプ製造装置において、印刷成分除去部は、再生パルプ含有液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側の配管に設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部とを有するものである。
【0019】
そして、請求項8に記載の発明は、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌し離解する攪拌槽と、前記攪拌槽の周壁に形成され、攪拌槽内の少なくともインク成分を含有する水を取り出す上澄み液取出部と、前記上澄み液取出部より取り出された少なくともインク成分を含有する水中の少なくともインク成分を除去する印刷成分除去部と、印刷成分除去部で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部とを備えた再生パルプ製造装置についてのものである。
【0020】
更に、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の再生パルプ製造装置において、上澄み液取出部から取り出された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けたものである。
【0021】
更に、請求項10に記載の発明は、請求項8または請求項9に記載の再生パルプ製造装置において、上澄み液取出部は、少なくともインク成分を含有する水が流通可能な複数の水流通孔が形成されてなるものである。
【0022】
更に、請求項11記載の発明は、請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、上澄み液取出部は、水流通孔を閉止するための閉止部材と、該閉止部材を攪拌槽の周壁に沿って摺接させるための駆動手段とを備えてなることにより、開閉可能に構成されているものである。
【0023】
更に、請求項12に記載の古紙処理装置は、請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、印刷成分除去部は、上澄み液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側に設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部とを有するものである。
【0024】
更に、請求項13記載の古紙処理方法は、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置において、古紙の離解を促進する離解促進剤を供給するための離解促進剤供給部を、攪拌槽の上部開口の上方に設けたものである。
【0025】
更に、請求項14に記載の古紙処理装置は、少なくとも請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の再生パルプ製造部と、再生パルプ製造部において製造された再生パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えたものである。
【0026】
更に、請求項15に記載の古紙処理方法は、水で古紙を離解して再生パルプを製造し、得られた再生パルプを抄紙して再生紙を製造する古紙処理方法において、再生パルプの製造の際、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌槽内で攪拌して再生パルプ含有液を形成するとともに、前記再生パルプ含有液を取り出し、取り出した再生パルプ含有液に含まれる少なくともインク成分を含有する水を脱水した離解途中の古紙を前記攪拌槽に戻すことにより、前記離解途中の古紙に対する攪拌槽における離解と脱水部における脱水とを繰り返すよう構成したものである。
【0027】
更に、請求項16に記載の古紙処理方法は、水で古紙を離解して再生パルプを製造し、得られた再生パルプを抄紙して再生紙を製造する古紙処理方法において、再生パルプの製造の際、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌槽内で攪拌して離解し、再生パルプ含有液を形成するとともに、前記再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を取り出し、取り出した少なくともインク成分を含有する水に含まれる少なくともインク成分を除去し、その少なくともインク成分の除去された水を古紙の離解用として前記攪拌槽に戻すものである。
【0028】
更に、請求項17に記載の古紙処理方法は、請求項15または請求項16に記載の古紙処理方法において、攪拌槽から取り出した少なくともインク成分を含有する水に、インク成分を凝集する凝集剤を添加し、フィルター部に通すことで少なくともインク成分を除去するものである。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の再生パルプ製造装置によれば、再生パルプ含有液取出部から取り出された再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を除去する脱水部と、脱水部で脱水された離解途中の古紙を攪拌槽に戻す脱水パルプ返戻部とを備え、離解と脱水とを繰り返し可能に構成したので、再生パルプ製造装置において、最終的に得られる再生パルプを含有する再生パルプ含有液に含まれる少なくともインク成分の量を低減でき、再生パルプ含有液の着色を抑制可能である。
【0030】
また、請求項2に記載の再生パルプ製造装置によれば、再生パルプ含有液取出部は、攪拌槽の下部に設けられている場合は、離解途中の古紙及び水を含む再生パルプ含有液を重力に従って攪拌槽から容易に取り出すことができる。
【0031】
そして、請求項3に記載の再生パルプ製造装置によれば脱水部が濾過により少なくともインク成分を含有する水を除去する濾過部を備えた場合は、濾過によって離解途中の古紙を含む再生パルプ含有液から少なくともインク成分等を容易に除去可能である。
【0032】
更に、請求項4に記載の再生パルプ製造装置によれば、脱水部において再生パルプ含有液から除去された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けた場合には、離解により水中に溶出したインク成分等を含有する水を排出部より外部に排出することができ、再生パルプ含有液に含まれるインク成分等の量を低減可能である。
【0033】
更に、請求項5に記載の再生パルプ製造装置によれば、脱水部が、離間配置された複数の回転ローラの間に掛け渡された無端状のメッシュベルトと、前記メッシュベルト上の再生パルプ含有液を挟圧して圧搾する圧搾ローラとを備えた場合は、メッシュベルト上に供給された離解途中の古紙を含む再生パルプ含有液を挟圧して圧搾でき、連続的に効率よくインク成分を含有する水を除去可能である。
【0034】
更に、請求項6に記載の再生パルプ製造装置によれば、少なくともインク成分を含有する水に含まれる少なくともインク成分を除去する印刷成分除去部と、印刷成分除去部で少なくともインク成分が除去された水を攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部を備えた場合は、少なくともインク成分を含有する水から少なくともインク成分を除去して印刷成分除去液返戻部によって水を攪拌槽に返戻して再度古紙の離解に利用可能であり、よって、節水及び排水量の低減ができる。
【0035】
また、請求項7に記載の再生パルプ製造装置によれば、印刷成分除去部は、再生パルプ含有液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側の配管に設けられ、凝集剤により凝集されたインク成分を除去するためのフィルター部とを有する場合には、少なくともインク成分を含有する水に凝集剤を添加して少なくともインク成分の凝集体を形成し、生じたインク成分等の凝集体をフィルター部において捕獲して少なくともインク成分を除去可能であり、印刷成分除去部を簡単な構造で安価に製造可能なものとすることができ、容易にインク成分等を除去可能である。
【0036】
更に、請求項8に記載の再生パルプ製造装置によれば、攪拌槽と、前記攪拌槽内の少なくともインク成分を含有する水を取り出す上澄み液取出部と、前記上澄み液取出部より取り出された少なくともインク成分を含有する水中のインク成分を除去する印刷成分除去部と、印刷成分除去部でインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部とを備えた場合は、上澄み液取出部より少なくともインク成分を含有する水を取り出し、取り出した少なくともインク成分を含有する水中の少なくともインク成分を印刷成分除去部において除去し、インク成分の除去された液体を攪拌槽に戻すことができるので、再生パルプ製造装置で製造する再生パルプを含む再生パルプ含有液中のインク成分の量を容易に低減することができる。
【0037】
更に、請求項9に記載の再生パルプ製造装置によれば、上澄み液取出部から取り出された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けた場合には、上澄み液取出部から取り出された少なくともインク成分を含有する水を再生パルプ製造装置の外部に排出することで、製造された再生パルプを含む液体中のインク成分の量をより低減可能である。
【0038】
更に、請求項10に記載の再生パルプ製造装置によれば、上澄み液取出部が少なくともインク成分を含有する水が流通可能な複数の水流通孔が形成されてなる場合には、離解途中の古紙を攪拌槽内に残留させつつインク成分等を含有する水等の液体を水流通孔から容易に取り出すことができる。
【0039】
更に、請求項11に記載の再生パルプ製造装置によれば、上澄み液取出部は、水流通孔を閉止するための閉止部材と、該閉止部材を攪拌槽の周壁に沿って摺接させるための駆動手段とを備えてなる場合には、容易に水流通孔を閉止可能であり、離解処理を行っている間上澄み液取出部を閉止することで、離解の不十分な粉状の微細な古紙の裁断紙片等が印刷成分除去部に至り、不具合を起こすといったことがない。
【0040】
更に、請求項12に記載の再生パルプ製造装置によれば、印刷成分除去部は、上澄み液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側に設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部とを有する場合には、上記と同様に、少なくともインク成分を含有する水に凝集剤を添加して少なくともインク成分の凝集体を形成し、生じたインク成分等の凝集体をフィルター部において捕獲して少なくともインク成分を除去可能であり、印刷成分除去部を簡単な構造で安価に製造可能なものとすることができ、容易にインク成分等を除去可能である。
【0041】
更に、請求項13に記載の再生パルプ製造装置によれば、古紙の離解を促進する離解促進剤を供給するための離解促進剤供給部を、攪拌槽の上部開口の上方に設けた場合には、離解促進剤を攪拌槽の上方より攪拌槽内へ投入することができ、容易に古紙の離解を促進させることができ、短時間で再生パルプを製造することができる。
【0042】
そして、請求項14に記載の再生パルプ製造装置によれば、本発明にかかる古紙処理装置は、前記各構成の再生パルプ製造装置で古紙を離解して再生パルプを製造する再生パルプ製造部と、再生パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えたので、再生パルプ製造装置において古紙の印刷インクを効率よく除去しつつ再生パルプを製造することができ、得られたインク成分の少ない水と再生パルプとの再生パルプ含有液を抄紙することで、得られる再生紙をより白くすることができる。
【0043】
そして、請求項15に記載の再生パルプ製造装置によれば、本発明にかかる古紙処理方法は、再生パルプの製造の際、古紙を離解して得られた再生パルプ含有液を取り出し、取り出した再生パルプ含有液に含まれる少なくともインク成分を含有する水を脱水し、離解途中の古紙を前記攪拌槽に戻すことにより、離解と脱水とを繰り返すよう構成したので、古紙の離解の際に一旦古紙から水中に溶出したインク成分を脱水して除去でき、インク成分が再生パルプの繊維中に再度染み込むことを防止することができる。
【0044】
更に、請求項16に記載の再生パルプ製造装置によれば、再生パルプの製造の際、古紙を離解して得られた再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を取り出し、取り出した少なくともインク成分を含有する水に含まれるインク成分を除去し、そのインク成分の除去された水を古紙の離解用として前記攪拌槽に戻す場合は、再生パルプ含有液に含まれるインク成分の量を低減することで、インク成分が再生パルプの繊維中に再度染み込むことを防止でき、インク成分の除去された水を再利用することで節水及び排液量の低減を可能とする。
【0045】
更に、請求項17に記載の再生パルプ製造装置によれば、前記各構成において、攪拌槽から取り出した少なくともインク成分を含有する水に、少なくともインク成分を凝集する凝集剤を添加し、フィルター部に通すことで少なくともインク成分を除去する場合には、簡易且つ効率よくインク成分を除去可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る古紙処理装置の構成概略図である。
【図2】前記古紙処理装置の再生パルプ製造部の内部構造を示す概略図である。
【図3】前記再生パルプ製造部の待機状態の押圧部の平面図である。
【図4】前記押圧部の使用態様図である。
【図5】前記再生パルプ製造部の裁断紙量調整部の使用態様図である。
【図6】前記再生パルプ製造部のパルパー、脱水部及び脱水パルプ返戻部の構成概略図である。
【図7】前記再生パルプ製造部のパルパー及び循環機構の構成概略図である。
【図8】前記再生パルプ製造部の脱水部の構成概略図である。
【図9】前記古紙処理装置の脱墨部の斜視図である。
【図10】前記脱墨部の平面図である。
【図11】前記古紙処理装置のすすぎ部の構成概略図である。
【図12】前記古紙処理装置の抄紙部及び仕上部のカレンダー部の概略斜視図である。
【図13】前記抄紙部を構成するヘッドボックス及びワイヤー部の斜視図である。
【図14】前記ヘッドボックス及びワイヤー部の側面図である。
【図15】前記抄紙部の脱水部の構成概略図である。
【図16】前記抄紙部のドライヤー部の構成概略図である。
【図17】前記ドライヤー部の内部の拡大図である。
【図18】前記仕上げ部の拡大図である。
【図19】前記再生パルプ製造装置の動作を示す図である。
【図20】本発明の他の実施形態に係る再生パルプ製造装置のパルパー及び循環機構の概略図である。
【図21】前記パルパーの攪拌槽の斜視図である。
【図22】前記攪拌槽の使用態様を示す断面図である。
【図23】前記再生パルプ製造装置の動作を示す図である。
【図24】本発明にかかる更に他の再生パルプ製造装置の攪拌槽の斜視図である。
【図25】前記攪拌槽の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明にかかる古紙処理装置の構成概略図である。図1において、古紙処理装置100は、再生パルプ製造部1、脱墨パルプ部2、抄紙部3、仕上げ部4、排液処理部5を一体的に備えるものである。再生パルプ製造部1は、古紙6を離解して再生パルプを製造するものであり、脱墨パルプ部2は、再生パルプ製造部1において製造された再生パルプを脱墨するものであり、抄紙部3は、脱墨部2において得られた脱墨パルプを抄紙し、抄紙により得られた湿紙の乾燥を行うものであり、仕上げ部4は、抄紙部3において湿紙の乾燥を行ったものを裁断等することにより仕上げを行って再生紙7を得るものであり、排液処理部5は、前記再生パルプ製造部1、脱墨部2、抄紙部3においてそれぞれ生じた排液の処理を行うものである。
【0048】
(再生パルプ製造部)
図2は、再生パルプ製造部1の内部構造を示す概略図である。再生パルプ製造部1は、古紙の裁断紙片61を離解して再生パルプを製造するものであり、再生パルプ製造装置Kにより構成される。図2に示すように、再生パルプ製造装置Kは、古紙投入部11、シュレッダー13、金属片除去部14、押圧部15、シュレッダータンク16、裁断紙量調整部17、パルパー18、ニーダー19、循環機構20を備えている。
【0049】
古紙投入部11は、処理を行う古紙6を再生パルプ製造装置Kのポッパー12内に投入するための開口部であり、該古紙投入部11からポッパー12内の古紙6を覗き見ることが不可能または困難な構造とすることが好ましい。即ち、例えば、古紙6の搬送手段(図示省略)をポッパー12内に備え、一度に多量の古紙6が投入された場合に古紙6を順次ポッパー12の内部に搬送可能な構造とすることなどが挙げられる。これにより古紙6となった文書の機密性を保持可能である。
【0050】
また、古紙投入部11より投入される古紙6の量を計測する計測部(図示省略)を古紙投入部11の近傍に設けてもよい。このように古紙投入部11の近傍に計測部を設ける場合には後述する裁断紙量調整部17を設けなくても構わない。そして、古紙投入部11の近傍に設けた計測部で古紙量を計測する場合には、例えば、一定量の再生紙の製造に必要となる所定量の古紙6が古紙投入部11から投入された時点で、自動的に以後の処理を進行させるようにしてもよい。これにより、古紙6をシュレッダータンク16内に大量に貯留する必要がなくなり、シュレッダータンク16を小さくすることができるとともに、再生紙製造開始の操作を手動により行わなくても自動的に再生紙の製造を開始でき、手間が省ける。
【0051】
シュレッダー13は、投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化する裁断刃131を有する。ここで、仮に再生パルプ製造装置Kとは別途設けられたシュレッダー装置等の紙片裁断装置によって、既に所定の大きさに裁断処理済みの紙片を古紙投入部11より投入するような場合には再生パルプ製造装置K内にシュレッダー13を設けない構成としても構わない。
【0052】
金属片除去部14は、ステープラーの針等の金属類を取り除くため設けられ、マグネット等により構成される。金属片除去部14の設置位置は、図2において実線で示すようにシュレッダー13の下方近傍としてもよいが、図2において破線で示すようにシュレッダータンク16の排出口163の下方近傍等としてもよい。
【0053】
押圧部15は、シュレッダータンク16内の裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを抑えるためのものであり、裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる押圧部材151と、押圧部材151を昇降する昇降手段152とを備えている。図3に待機状態の押圧部15の平面図を、図4に裁断紙片61を押圧した状態を示している。
【0054】
図2に示すように、シュレッダータンク16は、古紙の裁断紙片61を一時的に貯留するものであり、底面162が排出口163に向けて傾斜する傾斜面をなす。
排出口163には古紙の裁断紙片61を排出する排出装置164を設けている。排出装置164としては種々のものがあるが、ここでは複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の排出装置164を示している。排出装置164の上方には紙量検知センサ165が配置してあり、紙量検知センサ165はシュレッダータンク16の内部に貯留する古紙の裁断紙片61の有無を検出するもので、ロードセル、光センサ等を用いる。
【0055】
裁断紙量調整部17は、シュレッダータンク16の排出口163の下方に配置してあり、排出口163から排出する古紙の裁断紙片61を受け止める受け皿部171と、受け皿部171を支持する計測部172を備えており、計測部172は受け皿部171に投入した古紙の裁断紙片61の重量を計測するようになっている。
【0056】
図5に示すように、受け皿部171は、受け皿171aが水平姿勢からパルパー18へ向けて傾斜する傾斜姿勢にまで傾動するものであり、受け皿171aを傾動させるモータ等の駆動手段(図示省略)を有する。また、受け皿171aはパルパー18に隣接する側壁部171bが図2に示す立ち姿勢の通常位置と、図5に示すパルパー18へ向けて傾倒する傾倒位置とにわたって開閉可能に設けてあり、該側壁部171bは受け皿171aの傾動に伴って傾倒し、受け皿171aの復動に伴って立ち姿勢に復帰するようになっている。
【0057】
図2に示すように、パルパー18は、古紙の裁断紙片61を水及び離解促進剤の液体中において、繊維、つまり再生パルプにまで離解させるものであり、古紙の裁断紙片61が投入される攪拌槽181と、攪拌槽181に給水するための給水部182と、離解促進剤供給部183とを設けている。離解促進剤供給部183から供給される古紙6の離解を促進する離解促進剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、水酸化カリウム、亜硫酸ナトリウムなどのアルカリ類から選ばれる1種以上若しくはその水溶液等を用いることができ、更に、スルファミン酸、塩酸、硫酸、リン酸、硫酸アルミニウムなどの酸類、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素などの酸化剤、界面活性剤、漂白剤、PH安定剤、キレート剤、分散剤などを補助的に用いることもできる。
【0058】
離解促進剤供給部183は、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けており、これにより攪拌槽181に貯留する再生パルプ含有液の液面が攪拌に伴って変動する場合であっても、各供給口を開閉するだけで離解促進剤を攪拌槽181に投入することができる。ここで、再生パルプ含有液とは、攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61(古紙6)を離解することにより得られた再生パルプを含む液体のことであり、該再生パルプの他、離解途中の古紙62、水、水中に取り出されたインク成分やトナー成分等の印刷成分、離解促進剤等を含む液体である。
【0059】
仮に、攪拌槽181の底部に水及び/または離解促進剤の供給口が形成された場合には、離解促進剤供給部183の供給口に攪拌槽181内の再生パルプ含有液が流入し、水分が蒸発する等して離解途中の古紙62が乾燥して固くなり、離解促進剤供給部183の供給口を詰まらせるといったことが生じる恐れがあるが、上記のように、攪拌槽181の上方に離解促進剤の供給口を開閉可能に設けた場合にはそのようなことは起こり得ない。給水部182についても同様である。
【0060】
攪拌槽181の底部には、古紙の裁断紙片61を給水部182から給水された水とともに攪拌し離解するための攪拌羽根184が設けられ、前記攪拌羽根184を回転駆動するモータ等の駆動手段188を有している。
【0061】
攪拌槽181には攪拌槽181内に貯留する再生パルプ、古紙の裁断紙片61、水、離解促進剤を含有する再生パルプ含有液を所定温度まで加温するためのヒータ186および温度センサ185を設けてある。更に、攪拌槽181の底部には、パルパー18にて古紙6から製造された再生パルプ及び水等を含有する再生パルプ含有液を取り出す再生パルプ含有液取出部187を設けている。再生パルプ含有液取出部187は、ポンプ209a及び開閉弁208aを備えた配管207aに接続されており(図6参照)、再生パルプ含有液取出部187からポンプ209aにより取り出した再生パプル含有液を開閉弁208aを介してニーダー19へ送るようになっている。
【0062】
ニーダー19は、再生パルプに混入しているトナー成分等を該再生パルプから分離させるように混練するものであり、公知のニーダー装置により構成される。
【0063】
図6は、パルパー18、脱水部202及び脱水パルプ返戻部203の構成概略図であり、図7は、パルパー18及び循環機構20の構成概略図である。図7に示すように、循環機構20は、再生パルプ含有液取出部201、脱水部202、脱水パルプ返戻部203、排出部204、印刷成分除去部205、印刷成分除去液返戻部206を備えている。
【0064】
再生パルプ含有液取出部201は、攪拌槽181内に貯留する離解途中の古紙62と、古紙6に付着していたインク成分(染料系、顔料系)やトナー成分等のうち少なくともインク成分を含有する水とを含んだ再生パルプ含有液を取り出すものであり、上述したパルパー18にて古紙6から製造された再生パルプ及び水等を含有する再生パルプ含有液を取り出すための再生パルプ含有液取出部187により兼用される。
【0065】
ここで、再生パルプ含有液に含まれる染料系、顔料系等のインク成分には、オフセット印刷用のインク成分やトナー成分等の比較的親油性の印刷成分と、孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分のような多量の水に対する分散性の高い、或いは、水溶性のインク成分とのいずれも含み、これらのうちから選ばれる二種以上のインク成分の混合物も含む。
【0066】
脱水部202は、再生パルプ含有液取出部201から取り出され、ポンプ209aにより移送された再生パルプ含有液からインク成分等を含有する水を除去するためのものである。図8に脱水部202の構成概略図を示す。図8に示すように、脱水部202は、濾過によりインク成分等を含有する水を除去する濾過部202aを備えており、該濾過部202aは、離間配置された一対の回転ローラ202dの間に掛け渡されたメッシュベルト202gを備え、該メッシュベルト202gは上部の往路軌道202gaと下部の復路軌道202gbからなる無端軌道を形成している。
【0067】
メッシュベルト202gの目の粗さは離解途中の古紙62が抜け落ちない程度の大きさ、例えば20メッシュ〜50メッシュとすることが好ましい。この脱水部202のメッシュベルト202gの目の粗さは後述する抄紙を行うための抄紙部3のメッシュベルト323の目の粗さより粗くても構わない。これは、再生パルプ製造装置Kにおける再生パルプの製造の場合には、抄紙部3の抄紙の場合よりも水に対する繊維の濃度が高く、近接した繊維が相互に水素結合するために比較的目の大きな網目であっても抜け落ち難いからである。
【0068】
また、脱水部202は、往路軌道202gaのメッシュベルト202gを上下より挟持する一対の圧搾ローラ202cを備えており、メッシュベルト202g上に供給された離解途中の古紙62を挟圧して圧搾するようになっている。更に、往路軌道202gaのメッシュベルト202gの始端側には、離解途中の古紙62をメッシュベルト202g上に供給するためのホッパー202bを設けるとともに、復路軌道202gbの始端側には脱水した離解途中の古紙62をメッシュベルト202gから剥離するスクレーパ202eを設けている。
【0069】
往路軌道202gaのメッシュベルト202gの下方には受水槽202fを設けており、該受水槽202fは、メッシュベルト202gにより濾過されたインク成分等を含有する水を受け止めて貯留するようになっている。受水槽202fには、図7に示すように、配管207cが接続され、該配管207cは途中で配管207d及び配管207eに枝分かれし、配管207dは排出部204に、配管207eは印刷成分除去部205にそれぞれ接続されている。
【0070】
脱水パルプ返戻部203は、脱水され、上述したメッシュベルト202gからスクレーパ202eにより剥離された離解途中の古紙62を攪拌槽181に戻すものである。排出部204は、受水槽202fに貯留するインク成分等を含有する水を再生パルプ製造装置Kから外部に排出するためのものであり、再生パルプ製造装置Kから排出されたインク成分等を含有する水は後述する排液処理部5の離解排水タンク51に移送される(図1参照)。
【0071】
印刷成分除去部205は、受水槽202fに貯留するインク成分等を含有する水に含まれるインク成分、トナー成分等の印刷成分のうち少なくともインク成分を除去するものであり、配管207eの途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部205aと、前記凝集剤供給部205aの下流側の配管207eに設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部205bとを有する。
【0072】
凝集剤としては、種々のものが使用でき、有機系及び無機系のいずれも使用可能である。有機系では、ノニオン性、アニオン性、及びカチオン性のいずれも使用可能であり、ノニオン性ではポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイドなどが、アニオン性ではポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、マレイン酸共重合体などが、カチオン性ではポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサンなどが使用可能である。また、無機系では、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸バンド、アンモニウムミョウバン、カリウムミョウバン、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、消石灰、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等が使用可能である。これらのうち凝集剤を添加した際の再生パルプ含有液に及ぼす影響が少ない点で、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。
【0073】
また、凝集剤は、オフセット印刷用インク成分、孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分等のうちの一種以上のインク成分を凝集させるものであればよいが、特に、脱墨パルプ部2での脱墨の困難な孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分を凝集させるものであることが好ましい。
【0074】
また、フィルター部205bを構成するフィルターは、凝集剤の添加によって生じた少なくともインク成分の凝集体を捕獲可能であれば、特に限定されないが、濾紙、不織布、平織布地等の織物布地、トリコット編物布地等の編物布地、ガラス繊維等を用いることができる。これらのうちインク成分等の凝集体が絡みやすく容易に捕獲可能であり、且つ通水性がよい点で不織布が好ましい。
【0075】
フィルター部205bには、これらのうちいずれかのフィルターを配管207eの凝集剤供給部205aの下流側において、インク成分等を含有する水の流通路を遮るよう設置する。また、活性炭フィルターや電位吸着フィルターも利用可能である。
【0076】
印刷成分除去液返戻部206は、印刷成分除去部205において少なくともインク成分を除去された液体をポンプ209bの駆動によって攪拌槽181に戻すものである。
【0077】
再生パルプ含有液取出部201と脱水部202とを接続する配管207bに開閉弁208bを、脱水部202と排出部204とを接続する配管207dに開閉弁208cを、脱水部202と印刷成分除去部205とを接続する配管207eに開閉弁208dをそれぞれを設けている。各開閉弁208a,208b,208c,208dは所定のタイミングで電気的に開閉制御可能な電磁弁が用いられる。
【0078】
(脱墨パルプ部)
図1に示すように、 脱墨パルプ部2は、脱墨前希釈部21、脱墨部22、すすぎ部23を備え、各部の間には配管、ポンプ等からなる移送部(図示省略)を設けている。
【0079】
脱墨前希釈部21は、再生パルプ製造装置Kのニーダー19から送られた再生パルプ含有液を脱墨に適した繊維濃度、ここでは0.1重量%〜5.0重量%程度、より好ましくは0.3重量%〜2.0重量%程度にまで希釈するものであり、希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤等を投入する希釈液供給部(図示省略)を備えている。
【0080】
繊維濃度が0.1重量%以上5.0重量%以下であることにより、後の脱墨部22においてトナー成分と脱墨剤とを効率よく接触させトナー成分等を容易に除去することができる。
【0081】
図9に脱墨部22の斜視図を、図10(a)に脱墨部22の平面図を、同図(b)に図10(a)のA−A線矢視断面図を示す。脱墨部22は、フローテータと呼ばれ、インク成分、トナー成分等の印刷成分を再生パルプ含有液から分離して脱墨パルプを製造するためのものであり、再生パルプ含有液流通槽221、ブレード222及び気泡排出槽223を備えている。
【0082】
再生パルプ含有液流通槽221は、脱墨前希釈部21で希釈液の供給により所定濃度に調整された再生パルプ含有液を流通させるものである。再生パルプ含有液流通槽221内は、複数の仕切壁224により複数の脱墨室225に区画されており、図10(b)に示すように、仕切り壁224の上部または下部が交互に開口することで全ての脱墨室225は連通している。
【0083】
各脱墨室225の底部には、再生パルプ含有液流通槽221内を流通する再生パルプ含有液中に、微細な気泡を供給するための気泡供給部226を設けるとともに、各仕切り壁224の双方の面の高さ方向略中央部に温度センサ227と、ヒータ228とをそれぞれ配置している。
【0084】
また、再生パルプ含有液流通槽221内のうち、再生パルプ含有液の流速が低下し該再生パルプ含有液が淀みやすい所定位置に淀んだ再生パルプ含有液を攪拌し下流側へと流動させるための攪拌翼(図示省略)を配置している。攪拌翼としては種々のものがあるが、例えば複数の羽根を回転軸の周りに放射状に配置した構造の攪拌翼等が挙げられる。更に、再生パルプ含有液を再生パルプ含有液流通槽221内に流入させる流入部229aと、脱墨処理後生じた脱墨パルプを含有する脱墨パルプ含有液を再生パルプ含有液流通槽221外に流出させる流出部229bとを設けている。
【0085】
ブレード222は、再生パルプ含有液流通槽221の上部を浮遊する気泡を、再生パルプ含有液流通槽221の周壁を溢流させ気泡排出槽223側へ掃き出すためのものであり、再生パルプ含有液流通槽221の上方に設けられ、モータ222aの駆動によりガイドレール222bに案内されつつ往復移動するよう構成されている。
【0086】
図10(a)に示すように、気泡排出槽223は、再生パルプ含有液流通槽221の外周を取り囲むよう平面視ロ字状に設けられ、脱墨の際再生パルプ含有液流通槽221内で生じ、ブレード222により掃き出された気泡を一旦貯留するようになっている。気泡排出槽223には、気泡排出槽223内及びブレード222等に付着した気泡を洗い流すための水などの洗浄液を噴出する洗浄液噴出部223aを設けている。洗浄液噴出部223aは、気泡排出槽内の壁面の上段部及び中段部の全周に亘って複数配備されている。
【0087】
更に、気泡排出槽223は、生じた気泡を消滅させるための消泡部(図示省略)を備えていることが好ましい。消泡部は気泡を消滅させることができればその構造は限定されないが、例えば、温風や熱風を供給する風供給部(図示省略)等が挙げられ、風供給部から気泡に温風又は熱風を吹き付けて気泡の水分を吹き飛ばすことで気泡を消滅させる。かかる風供給部を設ける場合には、風供給部からの温風や熱風を水分含有量の低い乾燥した温風又は熱風とすることがより好ましい。これにより、気泡の水分をより容易に吹き飛ばすことができるからである。
【0088】
図11に、すすぎ部23の構成概略図を示す。すすぎ部23は、脱墨部22において得られた脱墨パルプ63を含む脱墨パルプ含有液中の脱墨剤を洗浄し除去するものであり、離間配置された回転ローラ231の間に掛け渡して展張したメッシュベルト233を有し、該メッシュベルト233が上部の往路軌道233aと下部の復路軌道233bからなる無端軌道を形成している。
【0089】
往路軌道233aには始端側に脱墨パルプ含有液をメッシュベルト233の上に供給するホッパー234を設けており、該ポッパー234からメッシュベルト233の上に供給された脱墨パルプ含有液に向けて水などの洗浄液を噴射する洗浄ノズル235と、洗浄ノズル235からの洗浄液により洗浄された脱墨パルプ含有液を圧搾する上下一対の圧搾ローラ236とを往路軌道233aの始端側から終端側に向けて交互に複数設けている。
【0090】
復路軌道233bの始端側にはメッシュベルト233からすすぎの終了した脱墨パルプ含有液を剥離するためのスクレーパ237を設けている。また、往路軌道233aの下方には洗浄液を受ける洗浄液収容槽232を設置し、洗浄液収容槽232は配管(図示省略)によりすすぎ排水タンク52に接続されている。
【0091】
(抄紙部)
図12は、抄紙部3及び仕上部4のカレンダー部41の概略斜視図、図13は、抄紙部3を構成するヘッドボックス31及びワイヤー部32の斜視図、図14は、図13に示すヘッドボックス31及びワイヤー部32の側面図、図15は、脱水部33の構成概略図、図16は、ドライヤー部34の構成概略図、図17はドライヤー部34の内部の拡大図、図18は仕上げ部4の拡大図である。抄紙部3は、すすぎ部23によるすすぎの終了した脱墨パルプ含有液を抄紙するものであり、図12に示すように、ヘッドボックス31、ワイヤー部32、脱水部33、ドライヤー部34からなる。
【0092】
ヘッドボックス31は、すすぎ部23によるすすぎの終了した脱墨パルプ含有液をワイヤー部32に均一に供給するためのものであり、図13に示すように、ヘッドボックス31の上部は開口しており、下部に脱墨パルプ含有液の供給口31aが形成されている。脱墨パルプ含有液の供給口31aの長手方向両端部には、ワイヤー部32のメッシュベルト323の両側縁部に沿って所定長さを有するガイド部材31bが片持ち支持されている。ガイド部材31bは、ヘッドボックス31からワイヤー部32のメッシュベルト323上に供給された脱墨パルプ含有液がメッシュベルト323の側縁から外方に流れ落ちるのを防止するようになっている。
【0093】
ワイヤー部32は、 複数の回転ローラ321に掛け渡して展張したメッシュベルト323を有し、メッシュベルト323が往路軌道323aと復路軌道323bからなる無端軌道を形成している。また、往路軌道323aの下方には、往路軌道323aの網目から流下する水を受ける受水部325を設けている。受水部325は後述する排液処理部5の抄紙排水タンク54に接続されている。
【0094】
図15に示すように、 脱水部33は、複数の回転ローラ331の間にそれぞれ掛け渡したフェルトからなる無端状の吸水ベルト332a,332bを上下一対有し、上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接している。この上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとが一部当接した部分において、双方の吸水ベルト332a,332bを挟圧して圧搾する一対の圧搾ローラ334を複数備えている。
【0095】
上側の吸水ベルト332aと下側の吸水ベルト332bとは設置位置を所定長さだけずらせており、上側の吸水ベルト332aの方が下側の吸水ベルト332bよりも湿紙64の走行方向上流側に配置されている。これにより、メッシュベルト323上を搬送されてきた湿紙64をまず上側の吸水ベルト332aに転移し、その後、圧搾ローラ334による圧搾の直前まで湿紙64を下側の吸水ベルト332bに接触させないようにしている。
【0096】
圧搾ローラ334は、上流側の圧搾ローラ334aの方が下流側の圧搾ローラ334bよりも押圧力を弱くすることが好ましい。上流側の圧搾ローラ334aによる圧搾の時点では、下流側の圧搾ローラ334bによる圧搾の時点よりも湿紙64の含水量が高い状態である。よって、上流側の圧搾ローラ334aを下流側の圧搾ローラ334bよりも弱い力で圧搾することにより、図15において破線矢印で示すように、圧搾により生じた水によって湿紙64中の繊維成分が下側の吸水ベルト332b上を圧搾ローラ334aの上流側に逆流し、均一な繊維の層を形成できなくなるといったことを防止する。一方、上流側の圧搾ローラ334aによって一旦比較的弱い押圧力で圧搾され、湿紙64の含有する水分量を減少させた後、下流側の圧搾ローラ334bによって上流側の圧搾ローラ334aより強い押圧力で圧搾することで、最終的に得られる再生紙7の強度を向上させることができる。
【0097】
図16に示すように、ドライヤー部34は、フード346内に複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343を配置し、この複数の回転ローラ351及び乾燥ローラ343の間に掛け渡した搬送ベルト342を上下一対備えている。搬送ベルト342の材質は特に限定されず、例えば、布、耐熱樹脂または金属等とし、上下の搬送ベルト342は一部が当接した状態で走行し、上下の搬送ベルト342の当接箇所に複数の乾燥ローラ343が配置されている。図17に示すように、乾燥ローラ343は、内部にヒータ345を備えるとともに、外周面に搬送ベルト342を巻回しており、また、乾燥ローラ343の表面の温度を測定する温度センサ344を有している。
【0098】
図16に示すように、フード346の天井面は傾斜して形成され、フード346内において湿紙64の乾燥により生じた水蒸気がフード346の天井面において冷却され結露した場合に、付着した水滴を傾斜に従ってフード346の天井の高さが高い箇所から低い箇所に案内するようになっている。更に、フード346の天井の高さが低い側の側壁346aにはドレン水受部347を設けており、天井の傾斜に従ってフード346の天井の高さが低い側の側壁346aに至った水滴を集め、外部に排出するようになっている。このドレン水受部347よりフード346の外部に排出された水滴は抄紙排水タンク54に送られるよう構成されている。
【0099】
また、ドライヤー部34には、フード346内の高温多湿の空気をフード346の外に排気する排気部348と、フード346の外の空気をフード346の内部に取り込む吸気部349とを設けており、排気部348より排気するフード346内の高温の空気と、吸気部349よりフード346内に取り込む、フード346内の空気より低い温度の空気との間で熱交換を行う熱交換器354を備えている。熱交換器354には、ドレン水排出部354aを設けており、ドレン水排出部354aは、排気部348から排気された高温多湿の空気が冷却されることで生じる水滴を熱交換器354の外部に排出し、抄紙排水タンク54に送るよう構成されている。
【0100】
(仕上げ部)
図1に示すように、仕上げ部4は、カレンダー部41及びカット部42を有しており、図18に示すように、カレンダー部41は紙の平坦度を上げるための複数のプレスローラ411を備え、カット部42は紙を所定のシートサイズにカットする裁断刃(図示省略)を備えている。
【0101】
(排液処理部)
図1に示すように排液処理部5は、離解排水タンク51、脱墨排水タンク53、すすぎ排水タンク52、抄紙排水タンク54の各槽体を有し、汚染の程度が高く再利用が困難な離解排水タンク51および脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を行って無毒化した後古紙処理装置100の外部に排出するよう構成されている。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、フィルターを通してインク、トナー等を除去し、必要により薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、もう一度パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用可能に構成されている。
【0102】
(第1の実施形態の作用)
本実施形態にかかる古紙処理装置100の作用につき以下に説明する。
まず、図2に示すように、古紙6を古紙投入部11よりポッパー12内に投入すると、シュレッダー13が投入された古紙6を裁断処理して再生パルプの製造に適した所定の大きさに紙片化し、金属片除去部14がステープラーの針等の金属類を除去する。そして、シュレッダータンク16内に裁断された紙片を一時的に貯留する。
【0103】
シュレッダータンク16内に一定量以上の古紙の裁断紙片61を貯留する場合、図4に示すように、昇降手段152によって押圧部材151を降下し裁断紙片61を押圧して裁断紙片61の嵩高さを低減させる。
【0104】
次に、排出装置164を作動して古紙の裁断紙片61を受け皿部171に徐々に投下し、計測部172で測定する。計測部172の測定値が設定値に達した時点で排出装置164を停止し、図5に示すように、駆動手段を駆動して受け皿171aを傾動し、側壁部171bを傾倒して古紙の裁断紙片61を攪拌槽181へ投入する。
【0105】
パルパー18では、古紙の裁断紙片61の攪拌槽181への投入に先立って予め投入される古紙の裁断紙片61の量に応じた量の水を、給水部182から供給しておき、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し、攪拌槽181内の水を攪拌しておく。このような状態で、上記のようにして攪拌槽181内へ古紙の裁断紙片61の投入を行う。これにより、古紙の裁断紙片61と水とを容易に混合することができる。そして、離解促進剤供給部183より離解促進剤を攪拌槽181に投入する。
【0106】
この離解促進剤供給部183からの攪拌槽181への離解促進剤の投入は、古紙の裁断紙片61の投入後、所定時間経過後に行うことが好ましい。これにより、まず水により裁断紙片61を十分膨潤させた後、膨潤した裁断紙片61の内部に離解促進剤を速やかに浸透させることができ、離解処理の時間を短縮可能である。
【0107】
そして、攪拌羽根184の回転により攪拌槽181内で古紙の裁断紙片61を攪拌して再生パルプ含有液を形成する。この間、温度センサ185で攪拌槽181内の温度を検出し、必要により温度ヒータ186を通電することで攪拌槽181内に貯留する再生パルプ含有液を離解処理に適する所定温度に維持する。
【0108】
パルパー18での滞留時間を長くすることにより古紙の裁断紙片61の離解の度合いが高くなり、逆に短くすることにより古紙6の離解の度合いが低くなる。このため単位処理量当たりの運転時間を可変調整することにより、パルパー18の離解の度合いを任意の度合いに設定することができ、この結果、処理時間の短縮を重視するか得られる再生紙7の品質を重視するかについてユーザーが任意に選択の上で、再生紙を製造することが可能となる。
【0109】
攪拌槽181内において所定時間離解を行った後、循環機構20により攪拌槽181内の再生パルプ含有液を循環し、脱水部202において脱水を行い、この離解と脱水とを繰り返して、再生パルプ含有液からインク成分やトナー成分等を含有する水を除去する。即ち、処理を行う古紙6の量にもよるが、例えば攪拌槽181内で2分〜10分、好ましくは3分〜8分といった所定時間古紙6の離解を行う。この1回目の攪拌槽181内での古紙6の離解処理を2分より長くすることで、古紙6の繊維が徐々に解れ、繊維に染み込んだインク成分や付着したトナー成分を繊維の内部から水中に取り出すことができ、その後の脱水部202での脱水の際、多くのインク成分やトナー成分等を除去できる。また、1回目の攪拌槽181内での古紙6の離解時間を10分より短くすることで、再生パルプの製造時間を短縮可能である。
【0110】
この1回目の離解の後、駆動手段188による攪拌羽根184の回転速度を減速するとともに、攪拌槽181内に貯留する離解途中の古紙62と、インク、トナー等の成分を含有する水とを含んだ再生パルプ含有液を再生パルプ含有液取出部201より取り出し、取り出した再生パルプ含有液を脱水部202に移送する。攪拌槽181内の攪拌羽根184は槽内の再生パルプ含有液を全て取り出した時点で停止する。また、脱水部202において再生パルプ含有液を脱水し、脱水によりインク成分等を含有する水の除去された離解途中の古紙62を脱水パルプ返戻部203により攪拌槽181に戻す処理を行う。
【0111】
その際、循環機構20は、開閉弁208aを閉止した状態で、開閉弁208bを開放し、ポンプ209aにより再生パルプ含有液を配管207bに流入させ脱水部202へと送る。脱水部202では、図8に示すように、回転ローラ202dの駆動により走行するメッシュベルト202g上に、ホッパー202bから再生パルプ含有液を均一に供給し、濾過部202aとしてのメッシュベルト202gの網目によって再生パルプ含有液を濾過して脱水を行い、更に、圧搾ローラ202cが離解途中の古紙62を圧搾して脱水する。圧搾ローラ202cの押圧力は、十分に脱水でき、また繊維を痛め過ぎない程度、例えば、1.0kg/cm〜5.0kg/cm程度が好ましい。
【0112】
そして、脱水後の離解途中の古紙62はメッシュベルト202gの走行によって復路軌道202gbの始端部に至り、スクレーパ202eによってメッシュベルト202gから該離解途中の古紙62を剥離し、脱水パルプ返戻部203に移送される。
【0113】
濾過によりメッシュベルト202gの下方に流下したインク成分等を含有する水を受水槽202fが受ける。この受水槽202f内に貯留するインク成分等を含有する水は、古紙6に付着していたインク成分やトナー成分等を多量に含有する黒或いは他の印刷成分の色に着色した液体であるので、図6に示す開閉弁208dを閉止した状態で、開閉弁208cを開放し、配管207c、配管207d、及び排出部204を経て離解排水タンク51に送られる。
【0114】
攪拌槽181では、脱水部202における脱水によって減少した量だけ給水部182から水を補給し、また、同様に脱水により減少した量だけ離解促進剤供給部183から離解促進剤を補給し、離解に必要な離解途中の古紙62及び離解促進剤の濃度に調整する。そして、駆動手段188によって攪拌羽根184を回転し、2回目の離解を行う。
【0115】
2回目の離解は、例えば1分〜5分程度、より好ましくは2分〜3分程度とする。2回目以降の離解に要する時間は、1回目の離解に要する時間より若干短い時間とすることが好ましい。これは、古紙の裁断紙片61(古紙6)を攪拌槽181に投入した直後である1回目の離解の場合は、古紙の裁断紙片61(古紙6)を膨潤させ徐々に繊維へと解し、離解促進剤を投入してある程度離解を進行させ、古紙の裁断紙片61(古紙6)に染み込んだインク成分や付着したトナー成分等を水中に取り出す必要があるので、比較的長い時間を要するのに対し、2回目以降は1回目より短時間であってもインク成分やトナー成分等を水中に取り出しやすいからである。
【0116】
また、2回目以降の攪拌槽181内での離解を1分以上とすることで、古紙の裁断紙片61(古紙6)の繊維が十分に解れ、繊維に染み込んだインク成分や付着したトナー成分を水中に取り出すことができ、その後の脱水の際、効率よく比較的多くのインク成分やトナー成分等を除去できる。更に、2回目以降の攪拌槽181内での離解を5分より短くすることで、再生パルプの製造時間を短縮可能である。
【0117】
この2回目の離解の後、1回目と同様に、駆動手段188による攪拌羽根184の回転速度を減速し、開閉弁208aを閉止した状態で、開閉弁208bを開放し、ポンプ209aの作動により攪拌槽181内に貯留する離解途中の古紙62及びインク成分やトナー成分等を含有する水の再生パルプ含有液を再生パルプ含有液取出部201から再度取り出し上記と同様に脱水部202を介して離解途中の古紙62を攪拌槽181に戻す。
【0118】
ここで、1回目の脱水部202による脱水の場合には、受水槽202fが受けたインク成分等を含有する水を図6に示すバルブ208cを開放し、配管207c、配管207d及び排出部204を介して離解排水タンク51に移送することで再生パルプ製造装置Kの外部に排出したが、2回目以降の脱水の場合には、インク成分等を含有する水に含まれるインク成分やトナー成分等が1回目の脱水の場合よりも少量でありインク成分等を含有する水の着色の程度が低いものである。よって、排出部204には送らないこととし、これに替えて、2回目以降の脱水の場合に受水槽202fに貯留するインク成分等を含有する水は、開閉弁208cを閉止し開閉弁208dを開放することで配管207c、配管207eを介して印刷成分除去部205に移送する。
【0119】
印刷成分除去部205では、凝集剤供給部205aからインク成分やトナー成分等のうち少なくともインク成分を凝集する凝集剤を、インク成分等を含有する水に供給する。そして、インク成分等を凝集して凝集体とし、生じた凝集体をフィルター部205bが捕獲してインク成分やトナー成分等を含有する水からインク成分やトナー成分等の印刷成分を除去する。
【0120】
印刷成分除去部205で除去する印刷成分には、オフセット印刷用のインク成分等の比較的親油性の印刷成分、及び、孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分のような多量の水に対する分散性の高い或いは親水性の印刷成分のいずれも含み、これらのうちから選ばれる二種以上の印刷成分の混合物も含む。印刷成分除去部205において特に、多量の水への分散性の高い或いは親水性のインク成分を除去することにより、後の工程となる脱墨パルプ部2での脱墨工程で、除去することが比較的困難な印刷成分を除去でき、最終的に得られる再生紙を白色度の非常に高い高品質のものとすることができる。
【0121】
更に、印刷成分除去部205で除去する印刷成分には、上記に加え、トナー成分等のインク成分以外の印刷成分を含み、そして、後の工程となる脱墨及び抄紙の際に除去しておくことが好ましい異物等についてもフィルター部205aにおいて捕獲し除去することが可能である。
【0122】
その後、印刷成分除去部205においてインク成分やトナー成分、異物等が除去され綺麗になった水をポンプ209bによって攪拌槽181に戻し、再度離解に利用する。これにより、給水部182からの水、及び離解促進剤供給部183からの離解促進剤の節約が可能であるとともに再生パルプ製造装置K及び古紙処理装置100から生じる排液量を少なくでき、排液による河川等の汚染を軽減できる。
【0123】
攪拌槽181では、再生パルプ含有液取出部201から取り出した水に比較して印刷成分除去液返戻部206によって返戻された水が減少した量だけ給水部182から水を補給するとともに、再生パルプ含有液取出部201から取り出した離解促進剤に比較して印刷成分除去液返戻部206によって返戻された離解促進剤が減少した量だけ離解促進剤供給部183から離解促進剤を補給し、離解途中の古紙62に対する水及び離解促進剤の割合の調整を適宜行う。そして、駆動手段188を作動して攪拌羽根184を回転し3回目の離解を行う。
【0124】
このようにして、離解と脱水との繰り返しを所定回数行い、再生パルプ含有液からインク成分やトナー成分等のうち少なくともインク成分を除去する。離解及び脱水の繰り返しの回数は特に限定されないが、繰り返し回数を多くすることで再生パルプ含有液に含まれるインク成分やトナー成分等の除去率を高めることが可能である。よって、繰り返し回数を多くした場合は再生パルプ含有液の着色の程度を少なくすることが可能であり、最終的に製造した再生紙の白色度をより高くすることができ、品質を向上することができる。一方、繰り返しの回数を1,2回程度に少なく抑えることで、製造した再生紙の品質を従来より向上させつつ、再生パルプの製造に要する時間を短縮することができる。
【0125】
以上の動作について、経過した時間に対する各部の状態を図19に示す。図19において、縦軸は、駆動手段188、ポンプ209a,209bの作動の有無、開閉弁208a,208b,208c,208dの開閉の状態、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給の有無を、横軸は、時間の経過を示す。
【0126】
t0は、古紙の裁断紙片61を攪拌槽181への投入する前の段階として、給水部182から攪拌槽181へ水を供給開始した状態であり、駆動手段188、ポンプ209a,209bを停止し、全ての開閉弁208a,208b,208c,208dを閉止し、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。
【0127】
t1は、駆動手段188のみを作動した状態で、これにより攪拌羽根184が回転し、槽内の水が攪拌される。その後t2までの間に、古紙の裁断紙片61を攪拌槽181に投入した後、古紙の裁断紙片61(古紙6)が膨潤し解け始めた頃に離解促進剤供給部183より離解促進剤を供給する。
【0128】
t2は、脱水部202による脱水を行うため再生パルプ含有液取出部201から離解途中の古紙62を含む再生パルプ含有液の取り出しを開始する時点であり、駆動手段188の減速を開始、ポンプ209aを作動し、ポンプ209bを停止し、開閉弁208aを閉止し、開閉弁208bを開放し、開閉弁208c,208dを閉止し、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。t2からt3までの間に駆動手段188を徐々に減速していき、再生パルプ含有液取出部201から再生パルプ含有液を取り出す。
【0129】
t3は、再生パルプ含有液取出部201からの再生パルプ含有液の取り出しを終了した時点であり、駆動手段188は停止、ポンプ209a,209bを停止、開閉弁208a,208bを閉止、開閉弁208cを開放、開閉弁208dを閉止、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。t3からt4までの間に脱水部202で再生パルプ含有液を脱水し、脱水された離解途中の古紙62を脱水パルプ返戻部203により攪拌槽181へ返戻するとともに、インク成分等を含有する水を排出部204より排出する。攪拌槽181では脱水により減少した水及び離解促進剤を補給する。
【0130】
t4は、脱水部202での再生パルプ含有液の脱水を終了し、2回目の離解を開始する時点であり、駆動手段188を作動、ポンプ209a,209bを停止、開閉弁208a,208b,208c,208dを閉止、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。
【0131】
t5は、2回目の離解を終了し、再生パルプ含有液取出部201から再生パルプ含有液の取り出しを開始する時点であり、駆動手段188の減速を開始し、ポンプ209aを作動、ポンプ209bを停止、開閉弁208aを閉止、開閉弁208bを開放、開閉弁208c,208dを閉止、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。t5からt6までの間に駆動手段188を徐々に減速しつつ、再生パルプ含有液取出部201から再生パルプ含有液を取り出す。
【0132】
t6は、2回目の再生パルプ含有液取出部201から再生パルプ含有液の取り出しを終了した時点であり、駆動手段188は停止、ポンプ209aを停止、ポンプ209bを作動、開閉弁208a,208b,208cを閉止、開閉弁208dを開放、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を有りとしている。t6からt7までの間に脱水部202で再生パルプ含有液を脱水しつつ、離解途中の古紙62を脱水パルプ返戻部203により攪拌槽181へ返戻する。また、印刷成分除去部205でインク成分等を除去し、インク成分等の除去された液体を印刷成分除去液返戻部206により攪拌槽181へ戻す。
【0133】
t7は、2回目の脱水部202での再生パルプ含有液の脱水及び印刷成分除去部205でのインク成分等の除去を終了し、3回目の離解を開始する時点であり、駆動手段188を作動、ポンプ209a,209bを停止、開閉弁208a,208b,208c,208dを閉止、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしており、その後、t4〜t7の動作を繰り返し行う。
【0134】
t8は、パルパー18での再生パルプの製造を完了した時点であり、駆動手段188の減速を開始、ポンプ209aを作動、ポンプ209bを停止、開閉弁208aを開放、開閉弁208b,208c,208dを閉止、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。t8からt9までの間に再生パルプ含有液取出部187から得られた再生パルプを含む再生パルプ含有液を取り出す。
【0135】
t9は、再生パルプ含有液取出部187からの再生パルプ含有液の取り出しを終了した時点であり、駆動手段188、ポンプ209a,209bを停止し、全ての開閉弁208a,208b,208c,208dを閉止し、凝集剤供給部205aからの凝集剤の供給を無しとしている。
【0136】
パルパー18において得られた再生パルプを含有する再生パルプ含有液を再生パルプ含有液取出部187より取り出した後は、この再生パルプ含有液をニーダー19へ送り、再生パルプを混練し、混練後の再生パルプを含む再生パルプ含有液を、図1に示すように、脱墨パルプ部2へ送る。
【0137】
脱墨パルプ部2では、まず、再生パルプ含有液を脱墨前希釈部21において脱墨に適した繊維濃度になるよう希釈液供給部から希釈用水および脱墨剤としての界面活性剤を投入して再生パルプ含有液の希釈を行う。次に、所定の繊維濃度に調整された再生パルプ含有液を脱墨部22に送る。
【0138】
脱墨部22では、図9,10に示す再生パルプ含有液流通槽221に流入部229aから流入した再生パルプ含有液を、仕切壁224の上方または下方の開口から隣接する脱墨室225へ順次流通させる。各脱墨室225では脱墨剤の存在下、再生パルプ含有液中に気泡供給部226から微細な気泡を吹き込み、脱墨剤の存在によって消失することなく多量に発生した気泡の表面にトナー粒子等の疎水性の異物を付着させて各脱墨室225の上部に浮上させる。また、必要により攪拌翼を作動し、再生パルプ流通槽221内の再生パルプ含有液の円滑な流通を促すようにする。
【0139】
親水性の繊維は、水とともに脱墨室225を順次流通していく。このようにして再生パルプ含有液からトナー成分等を除去する脱墨を行う。その際、温度センサ227で再生パルプ含有液の温度の検出を行い、ヒータ228で再生パルプ含有液を所定温度に維持するよう加熱する温度制御を行う。
【0140】
脱墨部22に再生パルプ含有液を導入した後、所定時間経過し、脱墨処理が進行して各脱墨室225の上部に気泡が浮遊した際に、モータ222aを駆動し、ガイドレール222bに案内させつつブレード222を図10(a)において上下方向に往復移動し、再生パルプ含有液流通槽221の上部に浮遊する気泡を気泡排出槽223に掃き出す。気泡排出槽223に掃き出された気泡は、洗浄液噴出部223aから噴出した洗浄液によって洗い流され、気泡排出槽223内に溜まった洗浄液、脱墨剤、トナー成分等を含む液体は脱墨排水タンク53に送られる。
【0141】
脱墨部22では単位処理量当たりの運転時間、つまり再生パルプ含有液流通槽221での滞留時間を長くすることにより脱墨の度合いが高くなり、短くすることにより脱墨の度合いが低くなる。このため、単位処理量当たりの運転時間を可変調整可能とすることにより、脱墨部22での脱墨の度合いを任意の度合いに設定することができる。この結果、処理時間を短縮することを重視するか、または得られる再生紙7の品質を重視するかについてユーザーが任意に選択の上で、再生紙を製造することが可能となる。脱墨パルプ部2での単位処理量当たりの運転時間の制御は、再生パルプ含有液流通槽221へ供給する再生パルプ含有液の単位時間当たりの供給量を加減調整することにより行う。
【0142】
再生パルプ含有液流通槽221内の全ての脱墨室225に再生パルプ含有液を流通させ、再生パルプ含有液を脱墨して脱墨パルプ63を得て、得られた脱墨パルプ63を含む脱墨パルプ含有液を流出部229bから流出させ、図11に示すすすぎ部23に送る。
【0143】
図11に示すように、すすぎ部23では、回転ローラ231の駆動により走行するメッシュベルト233上に、ホッパー234から脱墨パルプ含有液を供給し、メッシュベルト233の走行方向上流側の洗浄ノズル235から脱墨パルプ含有液に洗浄液を噴射し脱墨パルプ含有液中の脱墨剤を洗浄する。続いて、圧搾ローラ236によって脱墨パルプ含有液を圧搾することで脱水を行う。かかる洗浄、脱水の動作を下流側の洗浄ノズル235及び圧搾ローラ236によって複数回繰り返す。
【0144】
すすぎを終了したメッシュベルト233上の脱墨パルプ63は、復路軌道233bの始端側に至り、スクレーパ237によってメッシュベルト233から剥離された後、加水され、脱墨パルプ含有液中の繊維濃度を0.3〜1.0重量%程度となるように調整された上で、抄紙部3へ送られる。また、メッシュベルト233から洗浄液収容槽232に流下した洗浄液は、すすぎ排水タンク52へ送られる。
【0145】
図12に示すように、抄紙部3では、ヘッドボックス31から走行するメッシュベルト323上に、脱墨パルプ63を含む脱墨パルプ含有液をガイド部材31bに案内させつつ均一に供給し、水切りして水分を比較的多く含んだ繊維の層である湿紙64を形成する。メッシュベルト323の下方に流下した水は受水部325に受水され、該受水部325から抄紙排水タンク54に送られる。
【0146】
メッシュベルト323上の湿紙64が往路軌道の終端部に至ると、脱水部33の上側の吸水ベルト332aに転移される。その後下側の吸水ベルト332bとの間に挟まれ、湿紙64に含まれる水分を吸水ベルト332a,332b側に吸収させることで脱水し、更に、圧搾ローラ334a,334bで圧搾して脱水する。
【0147】
この圧搾ローラ334a,334bの圧搾の際、各圧搾ローラ334a,334bの押圧力を上流側の圧搾ローラ334aの方が下流側の圧搾ローラ334bよりも弱くした場合には、圧搾で生じた水によって湿紙64を構成する繊維が上流側の圧搾ローラ334aの上流側に流されるのを防止することができ、更に、下流側の圧搾ローラ334bの押圧力を上流側の圧搾ローラ334aより強くすることで、湿紙64を乾燥し、仕上げした後に得られる再生紙の強度を向上させることができる。
【0148】
脱水部33で脱水された湿紙64は、ドライヤー部34に送られ、走行する上下一対の搬送ベルト342の間に挟持される。そして、ヒータ345により加熱され所定温度に維持された複数の乾燥ローラ343に湿紙64を当接させつつ搬送することで湿紙64の乾燥を行い仕上げ前の再生紙65を得る。尚、図16に示すフード346の天井面において結露し、傾斜に従って側壁346aに達した水滴は、ドレン水受部347から抄紙排水タンク54に送られる。
【0149】
また、熱交換器354では、排気部348から排気されたフード346内の高温多湿の空気と、フード346外の空気とを熱交換し、フード346外の空気を加温した上で吸気部349からフード346内に取り込む。更に、熱交換器354内において排気部348からの高温多湿の空気を冷却することで生じたドレン水をドレン水排出部354aから抄紙排水タンク54に送る。
【0150】
ドライヤー部34を出た仕上げ前の再生紙65はカレンダー部41に送られ、複数のプレスローラ411の間に通される。これにより、仕上げ前の再生紙65の平坦度を向上させ、更に、カット部42で所定のシートサイズに裁断して再生紙7が完成する。
【0151】
カット部42において裁断された結果不要となった仕上げ前の再生紙65の破材は、図1に示すようにシュレッダー13又はシュレッダータンク16に戻され、再度再生紙の製造に利用される。
【0152】
各工程において排液処理部5へ送られた排水のうち汚染の程度が高く再利用が困難な離解排水タンク51および脱墨排水タンク53内の排水は、必要により所定の廃液処理を施した後古紙処理装置100の外部に排出する。汚染の程度が低く再利用が可能な抄紙排水タンク54、すすぎ排水タンク52内の排水は、必要によりフィルターを通してインク成分、トナー成分等を除去し、薬剤を添加し中和するなどの処理を施した後、パルパー18、脱墨前希釈部21等へ供給し再度利用する。
【0153】
以上より、本発明にかかる再生パルプ製造装置Kは、古紙の裁断紙片61(古紙6)を給水部182から給水された水とともに攪拌羽根184により攪拌し離解する攪拌槽181と、攪拌槽181内に貯留する離解途中の古紙62及びインク成分等を含有する水を含んだ再生パルプ含有液を取り出す再生パルプ含有液取出部201と、再生パルプ含有液取出部201から取り出された再生パルプ含有液からインク成分を含有する水を除去する脱水部202と、脱水部202で脱水された離解途中の古紙62を攪拌槽181に戻す脱水パルプ返戻部203とを備え、離解と脱水とを繰り返し可能に構成したので、古紙の裁断紙片61(古紙6)を水とともに攪拌して離解し、古紙の裁断紙片61(古紙6)に染み込んだインク成分やトナー成分等を水中に溶出させ、離解途中の古紙62及びインク成分等を含有する水を含んだ再生パルプ含有液とし、この再生パルプ含有液を再生パルプ含有液取出部201から取り出し、脱水部202において再生パルプ含有液からインク成分等を含有する水を除去し、更に脱水パルプ返戻部203によって離解途中の古紙62を攪拌槽181に返戻して再び離解処理を行う。これにより、再生パルプ製造装置Kにおいて、最終的に得られる再生パルプを含有する再生パルプ含有液に含まれるインク成分等の量を低減でき、再生パルプ含有液の着色を抑制可能である。得られたインク成分等の含有量の低い再生パルプ含有液を用いて再生紙を製造した場合には、再生紙の白色度を向上させることができる。
【0154】
特に、従来の古紙処理装置では除去の困難であった孔版印刷用のインク成分やインクジェットプリンター用のインク成分のような印刷成分についても、脱水部202における再生パルプ含有液の脱水によって容易に除去可能であるので、従来より大幅に白色度の高い高品質の再生紙を製造可能である。
【0155】
また、離解と脱水との繰り返しによって、古紙6の離解処理の間に、一旦古紙6から滲み出てきたあらゆる種類のインク成分を、脱水によって除去し、古紙6の離解により生じた繊維に再度染み込ませないようにすることができる。従って、再生パルプ製造装置Kで製造される再生パルプ含有液を、あらゆる種類のインク成分及びトナー成分等の印刷成分の含有量を低く抑えることができ、これを抄紙して得られた再生紙を白く高品質のものとすることができる。
【0156】
また、脱水部202は、濾過によりインク成分等を含有する水を除去する濾過部202aを備えたので、離解途中の古紙62を含む再生パルプ含有液から容易にインク成分等を除去可能である。
【0157】
そして、脱水部202は、離間配置された複数の回転ローラ202dの間に掛け渡された無端状のメッシュベルト202gと、前記メッシュベルト202g上の再生パルプ含有液を挟圧して圧搾する圧搾ローラ202cとを備えたので、メッシュベルト202g上に供給された離解途中の古紙62を含む再生パルプ含有液を圧搾ローラ202cにより挟圧して圧搾でき、連続的に効率よくインク成分等を含有する水を除去可能である。
【0158】
更に、インク成分等を含有する水に含まれるインク成分を除去する印刷成分除去部205と、印刷成分除去部205でインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽181に戻す印刷成分除去液返戻部206を備えたので、インク成分等を含有する水からインク成分を除去して印刷成分除去液返戻部206によって水を攪拌槽181に返戻して再度古紙62の離解に利用することにより、節水が可能であるとともに、外部に排出される排水量の低減が可能である。
【0159】
更に、印刷成分除去部205は、再生パルプ含有液取出部201と印刷成分除去液返戻部206とを接続する配管207cの途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部205aと、凝集剤供給部205aの下流側に設けられ、凝集剤により凝集されたインク成分を除去するためのフィルター部205bとを有するので、インク成分等を含有する水に凝集剤を添加してインク成分等の凝集体を形成し、生じたインク成分等の凝集体をフィルター部205bにおいて捕獲してインク成分を除去可能であり、印刷成分除去部205を簡単な構造で安価に製造可能なものとすることができ、容易にインク成分を除去可能である。
【0160】
更に、古紙の裁断紙片61(古紙6)の離解を促進する離解促進剤を供給するための離解促進剤供給部183を設けたので、古紙の裁断紙片61(古紙6)の離解を短時間で進行させることができ、これにより、古紙の裁断紙片61(古紙6)に浸透したインク成分や古紙6に付着したトナー成分等を短時間のうちに水中に溶出させることができる。
【0161】
また、本発明にかかる古紙処理装置100は、上記各構成の再生パルプ製造装置Kで古紙の裁断紙片61(古紙6)を離解して再生パルプを製造する再生パルプ製造部1と、製造された再生パルプを脱墨し脱墨パルプを得る脱墨部2と、得られた脱墨パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部3とを備えたので、再生パルプ製造部1において、水溶性であるために脱墨部2では除去の比較的困難なインク成分等を大幅に低減し、更に、脱墨部2においてトナー成分等の疎水性の印刷成分を低減することができ、かかるインク成分やトナー成分等の印刷成分の少ない脱墨パルプ含有液を抄紙部3に供給し、抄紙して再生パルプを製造することで、最終的に得られる再生紙7を非常に白色度の高い格段に品質の優れたものとすることができる。
【0162】
(第2の実施形態)
本発明にかかる再生パルプ製造装置の他の実施形態を以下に示す。尚、以下の説明において、上記第1の実施形態と同一の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。図20は、本発明にかかる他の再生パルプ製造装置のパルパー18a及び循環機構20aの概略図、図21は、前記パルパー18aの攪拌槽181aの斜視図、図22は、前記攪拌槽181aの使用態様を示す断面図である。
【0163】
図20に示すように、第2の他の実施形態としての再生パルプ製造装置は、古紙の裁断紙片61(古紙6)を給水部182から給水された水とともに攪拌羽根184により攪拌し離解する攪拌槽181aと、攪拌槽181aの周壁に形成され、攪拌槽181a内の少なくともインク成分を含有する水を取り出す上澄み液取出部81と、上澄み液取出部81より取り出された少なくともインク成分を含有する水中の少なくともインク成分を除去する印刷成分除去部205と、印刷成分除去部205で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽181aに戻す印刷成分除去液返戻部206とを備えている。
【0164】
図21,22に示すように、上澄み液取出部81は、有底筒状の攪拌槽181aの周壁の高さ方向略中央部乃至やや高めの位置に設けられている。この上澄み液取出部81は、攪拌槽181a内に貯留する離解途中の古紙62、水及び離解促進剤等を含む再生パルプ含有液から、主として水を取り出すためのものであり、上澄み液取出部81から取り出される水には古紙の裁断紙片61(古紙6)の離解により古紙の裁断紙片61(古紙6)から水中に溶出したインク成分や取り出されたトナー成分等のうち少なくともインク成分が含まれている。
【0165】
上澄み液取出部81から少なくともインク成分を含有する水を取り出す際、攪拌槽181aには離解途中の古紙62、水及び離解促進剤及び離解により得られた再生パルプ等を含む再生パルプ含有液を貯留しており、この再生パルプ含有液は攪拌羽根184の回転により古紙の裁断紙片62(古紙6)等の固形分が沈殿する等といったことはない。よって、この固形分とインク成分等の溶出した水及び離解促進剤を含む液体成分とが混合されつつ攪拌された状態となっており、かかる固形分と液体分とが略均一に混合した状態の再生パルプ含有液のうち主として水、離解促進剤、水に溶出したインク成分及び水の水面近傍に浮遊するトナー成分等を上澄み液取出部81の後述する水流通孔82から取り出すものである。
【0166】
上澄み液取出部81には複数の水流通孔82が形成されている。水流通孔82の孔径は攪拌槽181a内に貯留する再生パルプの直径と同程度若しくは再生パルプの直径より大きくなっている。この水流通孔82の孔径を再生パルプの直径より大きくする理由は、攪拌槽181a内に貯留する再生パルプ含有液中の繊維の濃度が水等の液体成分に対して比較的高い割合となっているために近接する繊維が相互に水素結合しており、よって、水流通孔82の孔径を再生パルプの直径より大きくしても水流通孔82から繊維が流出し難くく、且つ、水等の液体を水流通孔82より容易に流出させることが可能なためである。
【0167】
また、上澄み液取出部81は、攪拌槽181aの周壁の外周面に上下方向に摺接し、水流通孔82を閉止するための閉止部材83と、該閉止部材83を上下方向に摺接移動させるための駆動手段(昇降手段84)とを備えており、これにより、上澄み液取出部81は開閉可能に構成されている。図22(a)に示すように、昇降手段84によって閉止部材83を上昇することで、水流通孔82を開放するようになっており、逆に、図22(b)に示すように、昇降手段84の作動により閉止部材83を下降することで、水流通孔82を閉止するようになっている。
【0168】
図20に示すように、上澄み液取出部81は、配管207fに接続され、配管207fは途中位置で配管207g及び配管207hに枝分かれし、配管207gは排出部204に、配管207hは印刷成分除去部205にそれぞれ接続されている。また、配管207fに開閉弁208eを、配管207gに開閉弁208fを、配管207hに開閉弁208gをそれぞれを設けている。
【0169】
排出部204、印刷成分除去部205及び印刷成分除去液返戻部206は、上記した第1の実施形態にかかる再生パルプ製造装置Kの各部と同様の構成を有している。
【0170】
(第2の実施形態の作用)
他の実施形態としての再生パルプ製造装置の作用を以下に説明する。閉止部材83により上澄み液取出部81の水流通孔82を閉止した状態で、上記実施形態にかかる再生パルプ処理装置Kと同様に、攪拌槽181a内へ給水部182から給水し、駆動手段188の作動により攪拌羽根184を回転し、古紙の裁断紙片61を投入し、離解促進剤供給部183から離解促進剤供給して所定時間古紙の裁断紙片61(古紙6)の離解を行う。
【0171】
古紙の裁断紙片61(古紙6)の投入時及びその離解の間、水流通孔82を閉止部材83により閉止することで、未だ十分に離解されていない古紙の裁断紙片61(古紙6)の粉状の微細な紙片等がフィルター部205bに至り、フィルター部205bの目を詰まらせ、交換までの期間を短くするといったことがない。
【0172】
そして、上記第1の実施形態と同様に、例えば2分〜10分、好ましくは3分〜8分といった古紙6の繊維が徐々に解れ、繊維に染み込んだインク成分や付着したトナー成分を繊維の内部から水中に取り出すことの可能となる所定時間の離解処理の後、昇降手段84によって閉止部材83を上昇させ、攪拌槽181aに貯留する攪拌槽181a内に貯留する離解途中の古紙62、水及び離解促進剤等を含む再生パルプ含有液から、主として水を取り出す。
【0173】
この上澄み液取出部81から取り出される水には古紙の裁断紙片61(古紙6)の離解により古紙の裁断紙片61(古紙6)から水中に溶出したインク成分やトナー成分等のうち少なくともインク成分が含まれている。また、上澄み液取出部81からは水とともに離解促進剤や離解途中の古紙62が若干取り出されることがある。そして、上澄み液取出部81からの水の取り出しの際にも、駆動手段188による攪拌羽根184の回転を維持したままとし、離解処理を継続して行うこととする。
【0174】
上澄み液取出部81から取り出されたインク成分等を含有する水は、古紙の裁断紙片61(古紙6)に付着等していたインク成分やトナー成分等を多量に含む黒や他の印刷成分の色に着色した水であるので、再利用することなく再生パルプ製造装置の外部に排出することとする。このため、図20に示す開閉弁208e,208fを開放し、開閉弁208gを閉止して、上澄み液取出部81から取り出した水を配管207f、配管207gを流通させ、排出部204を経て離解排水タンク51に送る。
【0175】
この際、開閉弁208gを閉止することで、仮に離解途中の古紙62が水流通孔82を通過した場合であっても、フィルター部205bまでに至ることがないので、上記と同様にフィルターの交換までの期間を長くすることができる。
【0176】
閉止部材83を上昇し、上澄み液取出部81からインク成分等を含有する水を取り出し、外部への排出を行う時間は、例えば10秒〜5分程度、より好ましくは30秒〜3分程度とする。インク成分等を含有する水の取り出しの時間を10秒より長くすることで、攪拌槽181a内のインク成分やトナー成分等を多量に含有する水を排出部204より排出することができ、5分より短くすることで排出部204より排出する水の量を制限することで、節水及び排水量の低減が可能となる。
【0177】
その後、昇降手段84により閉止部材83を下降し、上澄み液取出部81からの水の取り出しを一旦中断した後、攪拌槽181aに、上澄み液取出部81からのインク成分等を含有する水の取り出しによって減少した量だけ給水部182から水を補給し、また、同様に水の取り出しにより減少した量だけ離解促進剤供給部183から離解促進剤を補給し、離解処理に必要な離解途中の古紙62及び離解促進剤の濃度に調整する。
【0178】
そして、上澄み液取出部81を閉止した状態で例えば1分〜5分程度、より好ましくは2分〜3分程度上澄み液取出部81からの水の取り出しを行わないで離解を行った後、昇降手段84を作動させ、閉止部材83を上昇させて、攪拌槽181a内のインク成分等を含有する水を取り出す。この2回目の閉止部材38を上昇させた上澄み液取出部81からのインク成分等を含有する水の取り出しの際には、1回目に閉止部材83を上昇させインク成分等を含有する水を取り出した場合に比較して、上澄み液取出部81から取り出した水に含まれるインク成分やトナー成分等の印刷成分が少量となっており、取り出した水の着色の程度が低くなっているので、印刷成分除去部205へ送り少なくともインク成分を除去した後、印刷成分除去液返戻部206から攪拌槽181aへ戻すこととする。
【0179】
このため、開閉弁208g,208eを開放して、開閉弁208fを閉止し、攪拌槽181a内のインク成分等を含有する水を配管207fから印刷成分除去部205に送る。印刷成分除去部205では、凝集剤供給部205aから凝集剤を供給し、配管207h、開閉弁208gを流通する間にインク成分等を凝集させ凝集体とし、生じた凝集体をフィルター部205bにおいて捕獲してインク成分等を含有する水からインク成分等を除去する。
【0180】
その後、インク成分等が除去され綺麗になった水をポンプ209bによって攪拌槽181aに戻す。これにより、給水部182からの水、及び離解促進剤供給部183からの離解促進剤の節約が可能であるとともに再生パルプ製造装置から生じる排液量を軽減可能である。
【0181】
そして、このような閉止部材83により水流通孔82を閉止した状態で行うインク成分等を含有する水の取り出しを伴わない離解と、閉止部材83を上昇して上澄み液取出部81からインク成分等を含有する水を取り出し、印刷成分除去部205によってインク成分等を除去し、印刷成分除去液返戻部206によってインク成分を除去した水を返戻する処理を離解処理と同時に行う状態とを繰り返し行って再生パルプを製造する。
【0182】
上澄み液取出部81からインク成分等の含有する水の取り出しを行わない離解処理と、澄み液取出部81からのインク成分等を含有する水の取り出し及び印刷成分の除去を伴う離解処理との繰り返しの回数は特に限定されないが、繰り返し回数を多くすることでインク成分等を含有する水に残留するインク成分等の量を低減することが可能である。よって、繰り返し回数を多くした場合は再生パルプ含有液の着色の程度を少なくすることが可能であり、最終的に製造した再生紙の白色度をより高くすることができ、品質を向上することができる。一方、繰り返しの回数を1,2回程度に少なく抑えることで、製造した再生紙の品質を従来より向上させつつ、再生パルプの製造に要する時間を短縮することができる。
【0183】
以上の動作について、経過した時間に対する各部の状態を図23に示す。図23において、縦軸は、駆動手段188及びポンプ209bの作動の有無、開閉弁208e,208f,208gの開閉の状態を、横軸は、時間の経過を示す。t0は、給水部182から攪拌槽181aへ水の供給を開始した状態であり、駆動手段188、ポンプ209bを停止し、全ての開閉弁208e,208f,208gを閉止ししている。
【0184】
t1は、駆動手段188のみを作動した状態で、これにより攪拌羽根184が回転し、槽内の水が攪拌され、その後t2までの間に、古紙の裁断紙片61を攪拌槽181aに投入し、古紙の裁断紙片61(古紙6)が膨潤し解れ始めた頃に離解促進剤供給部183より離解促進剤を供給し、離解を行う。
【0185】
t2は、昇降手段84により閉止部材83を上昇し上澄み液取出部81からインク成分等を含有する水の1回目の取り出しを開始する時点であり、駆動手段188を作動させたままポンプ209bを停止し、開閉弁208e,208fを開放し、開閉弁208gを閉止ししている。そして、t2からt3までの間に上澄み液取出部81からインク成分等を含有する水を取り出し、排出部204から排出する。
【0186】
t3は、閉止部材83を降下し上澄み液取出部81からインク成分等を含有する水の取り出しを終了した時点であり、駆動手段188は作動、ポンプ209bを停止、開閉弁208e,208f,208gを全て閉止している。t3からt4までの間に上澄み液取出部81からの取り出しを伴わない離解処理を行う。
【0187】
t4は、昇降手段84により閉止部材83を上昇し上澄み液取出部81から2回目のインク成分等を含有する水の取り出しを開始する時点であるが、この時点では、開閉弁208eを開放し、開閉弁208fを閉止し、開閉弁208gを開放し、ポンプ209bを作動して印刷成分除去部205にインク成分等を含有する水を流入させ、インク成分等を含有する水から少なくともインク成分を除去し、印刷成分除去液返戻部206により少なくともインク成分を除去した水を攪拌槽181aに戻す。
【0188】
t5は、インク成分等を含有する水の取り出しを終了した時点であり、駆動手段188は作動、ポンプ209bを停止、開閉弁208e,208f,208gを全て閉止している。その後、t3〜t5の動作を繰り返し行って、インク成分等を含有する水の取り出しを伴わない離解と、逆に該インク成分等を含有する水の取り出しを伴う離解とを所定回数繰り返す。
【0189】
t6は、離解処理を終了し、再生パルプの製造を完了し、再生パルプ含有液取出部187より再生パルプ含有液を取り出す時点であり、駆動手段188を停止、全ての開閉弁208a,208b,208cを閉止している。
【0190】
以上より、第2の実施形態にかかる再生パルプ製造装置は、古紙の裁断紙片61(古紙6)を給水部182から給水された水とともに攪拌羽根184により攪拌し離解する攪拌槽181aと、攪拌槽181aの周壁に形成され、攪拌槽181a内の少なくともインク成分を含有する水を取り出す上澄み液81と、上澄み液取出部81より取り出された少なくともインク成分を含有する水中の少なくともインク成分を除去する205と、印刷成分除去部205で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽181aに戻す印刷成分除去液返戻部206とを備えたので、再生パルプ製造装置で製造する再生パルプ含有液のインク成分等の量を容易に低減することができるとともに、節水が可能であり、排液量の低減が可能である。
【0191】
また、上澄み液取出部81から取り出された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部204を設けているので、古紙の裁断紙片61(古紙6)の投入後最初に上澄み液取出部81から取り出されたインク成分等を含有する水を排出部204から再生パルプ製造装置の外部に排出できるので、製造された再生パルプ含有液中のインク成分等の量をより低減可能である。
【0192】
更に、上澄み液取出部81が少なくともインク成分を含有する水が流通可能な複数の水流通孔82が形成されてなるので、離解途中の古紙62を攪拌槽181a内に残留させつつインク成分等を含有する水等の液体を水流通孔82から容易に取り出すことができる。
【0193】
更に、上澄み液取出部81は、水流通孔82を閉止するための閉止部材83と、該閉止部材83を攪拌槽181aの周壁に沿って摺接させるための駆動手段(昇降手段84)とを備えてなることにより、容易に水流通孔83を閉止可能であり、離解処理を行っている間上澄み液取出部81を閉止することで、離解の不十分な粉状の微細な古紙の裁断紙片61等が印刷成分除去部に至り、不具合を起こすといったことがない。
【0194】
(第3の実施形態)
本発明にかかる再生パルプ製造装置の更に他の実施形態を説明する。尚、以下の説明において、上記した第1、第2の実施形態と同一の構成に関しては同一の符号を付して説明を省略する。図24は、本発明にかかる更に他の再生パルプ製造装置の攪拌槽181bの斜視図、図25は、前記攪拌槽181bの平面図である。図24,25に示すように、第3の実施形態としての再生パルプ製造装置は、上記第2の実施形態における攪拌槽181aの周壁に形成した上澄み液取出部81に替えて、攪拌槽181b内に乱流を生じさせるための邪魔板91に上澄み液取出部81aを形成している。
【0195】
図25に示すように、邪魔板91は、攪拌槽181bの周壁181cの内面の2箇所にそれぞれ、平面視V字状に突設されており、邪魔板91の上部は開口し、下部は閉塞し、邪魔板91及び邪魔板設置箇所の周壁181cにより形成される空間が略三角柱状となっている。邪魔板91の上端部は攪拌槽181b内に貯留する再生パルプ含有液の液面より高い位置となるよう位置合わせされており、邪魔板91の側面を形成する板材91aに、上澄み液取出部81aを構成する複数の水流通孔82aが形成されている。
【0196】
そして、邪魔板91によって覆われた攪拌槽181bの周壁181cの所定箇所に、配管207fが接続され、配管207fは、図20に示した上記第2の実施形態と同様に排出部204及び印刷成分除去部205にそれぞれ配管207g及び配管207hにより接続されている。
【0197】
水流通孔82aの直径及び隣接する水流通孔82aの中心間の距離pは、上記第2の実施形態の上澄み液取出部81の水流通孔82と同様である。また、この第3の実施形態にかかる再生パルプ製造装置の作用は、上記した第2の実施形態のうち閉止部材83による開閉に替えて配管207fに設けた開閉弁208eにより開閉を行った場合と同様とする。
【0198】
このように、邪魔板91に上澄み液取出部81aを設けた場合には、上澄み液取出部81aを単純な構造とでき、占有面積を小さくでき、安価に製造可能である。
【0199】
(確認試験)
上記第1の実施形態にかかる再生パルプ製造装置Kを用いて、再生パルプを製造し、得られた再生パルプを用いて再生紙7を製造した。古紙6には、A4サイズの上質紙を4枚(約16g)用い、インクの種類及び印字率を、インクジェットプリンター用の黒色インクで印字率8%、孔版印刷用の黒色エマルジョンインクで印字率50%の2種類とした。
【0200】
古紙6の濃度を4.0重量%となるよう給水部182より給水し、離解促進剤として一ケイ酸四ナトリウムn水和物(和光純薬工業社製)を0.2g用いた。攪拌槽181での離解処理時間は3分間を5回行い、各離解処理の後に脱水を行い、脱水により生じた濾液は排出部204より排出した。1回の脱水処理において排出部204より排出した排液量は約300mLであり、5回の脱水により全体ので排液量は約1.5Lとなった。尚、印刷成分除去部205によるインク成分やトナー成分の除去は行わなかった。
【0201】
5回目の脱水後、繊維の濃度が0.5重量%となるよう加水を行って再生パルプ含有液を3.2L得た。得られた再生パルプ含有液を手動により抄紙し、100℃のヒータローラに約10秒間掛けて1回通し乾燥を行い、ハガキの大きさの再生紙を16枚製造した。得られた再生紙の表面をランダムに10箇所抽出し、再生紙の表面の印刷成分の濃淡を測定した。測定機器はGretagMacbeth社製RD−19を用い、測定条件を絶対白基準とした。
(比較試験)
【0202】
上記実施例の脱水を全く行わずに攪拌槽181で15分間連続して離解処理し、加水して再生パルプ含有液を得た後、得られた再生パルプ含有液を上記確認試験と同様の条件で抄紙し、乾燥し、再生紙を製造した。そして、上記確認試験と同様の条件で再生紙の表面の印刷成分の濃淡を測定した。
【0203】
また、基準用紙として、印刷していない市販の上質紙について、上記と同様の条件で再生紙の表面の印刷成分の濃淡を測定したところ、0.08〜0.12との結果が得られた。上記確認試験及び比較試験の測定結果を表1に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
表1よりインクジェットインク、エマルジョンインクともに良好な結果が得られた。目視においても確認を行ったところ、得られた再生紙の白色度は全く異なり、本発明にかかる再生パルプ製造装置Kによる脱水を行って製造した再生紙は比較試験品に比べて明らかに白色度が高かった。
【符号の説明】
【0206】
K 再生パルプ製造装置
1 再生パルプ製造部
3 抄紙部
6 古紙
7 再生紙
62 離解途中の古紙
81,81a 上澄み液取出部
82,82a 水流通孔
181,181a,181b 攪拌槽
182 給水部
183 離解促進剤供給部
184 攪拌羽根
201 再生パルプ含有液取出部
202 脱水部
202a 濾過部
202c 圧搾ローラ
202d 回転ローラ
203 脱水パルプ返戻部
204 排出部
205 印刷成分除去部
205a 凝集剤供給部
205b フィルター部
206 印刷成分除去液返戻部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌し離解する攪拌槽と、
前記攪拌槽内の離解途中の古紙及び少なくともインク成分を含有する水を含んだ再生パルプ含有液を取り出す再生パルプ含有液取出部と、
前記再生パルプ含有液取出部から取り出された再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を除去する脱水部と、
前記脱水部で脱水された離解途中の古紙を前記攪拌槽に戻す脱水パルプ返戻部とを備え、前記離解途中の古紙に対する攪拌槽における離解と脱水部における脱水とを繰り返し可能に構成したことを特徴とする再生パルプ製造装置。
【請求項2】
再生パルプ含有液取出部は、攪拌槽の下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項3】
脱水部は、濾過により少なくともインク成分を含有する水を除去する濾過部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項4】
脱水部において再生パルプ含有液から除去された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項5】
脱水部は、離間配置された複数の回転ローラの間に掛け渡された無端状のメッシュベルトと、前記メッシュベルト上の再生パルプ含有液を挟圧して圧搾する圧搾ローラとを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項6】
少なくともインク成分を含有する水に含まれる少なくともインク成分を除去するための印刷成分除去部と、
印刷成分除去部で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項7】
印刷成分除去部は、再生パルプ含有液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側の配管に設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部とを有することを特徴とする請求項6に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項8】
古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌し離解する攪拌槽と、
前記攪拌槽の周壁に形成され、攪拌槽内の少なくともインク成分を含有する水を取り出す上澄み液取出部と、
前記上澄み液取出部より取り出された少なくともインク成分を含有する水中の少なくともインク成分を除去する印刷成分除去部と、
印刷成分除去部で少なくともインク成分が除去された水を離解用の水として攪拌槽に戻す印刷成分除去液返戻部とを備えたことを特徴とする再生パルプ製造装置。
【請求項9】
上澄み液取出部から取り出された少なくともインク成分を含有する水を外部に排出するための排出部を設けたことを特徴とする請求項8に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項10】
上澄み液取出部は、少なくともインク成分を含有する水が流通可能な複数の水流通孔が形成されてなることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項11】
上澄み液取出部は、水流通孔を閉止するための閉止部材と、該閉止部材を攪拌槽の周壁に沿って摺接させるための駆動手段とを備えてなることにより、開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項8乃至請求項10のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項12】
印刷成分除去部は、上澄み液取出部と印刷成分除去液返戻部とを接続する配管の途中位置に設けられ、少なくともインク成分を凝集させる凝集剤を供給する凝集剤供給部と、前記凝集剤供給部の下流側に設けられ、凝集剤により凝集された少なくともインク成分を除去するためのフィルター部とを有することを特徴とする請求項8乃至請求項11のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項13】
古紙の離解を促進する離解促進剤を供給するための離解促進剤供給部を、攪拌槽の上部開口の上方に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の再生パルプ製造装置。
【請求項14】
少なくとも請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の再生パルプ製造部と、
再生パルプ製造部において製造された再生パルプを抄紙して再生紙を製造する抄紙部とを備えた古紙処理装置。
【請求項15】
水で古紙を離解して再生パルプを製造し、
得られた再生パルプを抄紙して再生紙を製造する古紙処理方法において、
再生パルプの製造の際、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌槽内で攪拌して再生パルプ含有液を形成するとともに、前記再生パルプ含有液を取り出し、
取り出した再生パルプ含有液に含まれる少なくともインク成分を含有する水を脱水した離解途中の古紙を前記攪拌槽に戻すことにより、前記離解途中の古紙に対する攪拌槽における離解と脱水部における脱水とを繰り返すよう構成したことを特徴とする古紙処理方法。
【請求項16】
水で古紙を離解して再生パルプを製造し、
得られた再生パルプを抄紙して再生紙を製造する古紙処理方法において、
再生パルプの製造の際、古紙を給水部から給水された水とともに攪拌羽根により攪拌槽内で攪拌して離解し、再生パルプ含有液を形成するとともに、前記再生パルプ含有液から少なくともインク成分を含有する水を取り出し、
取り出した少なくともインク成分を含有する水に含まれる少なくともインク成分を除去し、その少なくともインク成分の除去された水を古紙の離解用として前記攪拌槽に戻すことを特徴とする古紙処理方法。
【請求項17】
攪拌槽から取り出した少なくともインク成分を含有する水に、インク成分を凝集する凝集剤を添加し、フィルター部に通すことで少なくともインク成分を除去することを特徴とする請求項15または請求項16に記載の古紙処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−242263(P2010−242263A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92923(P2009−92923)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】