説明

再生可能プリーツフィルタ媒体

本発明は、空気中の分子汚染物質の除去のためのクリーンルーム環境で用いる再生可能プリーツ媒体、および、フィルタ要素、ならびに、その組み合わせを提供する。活性炭または高分子からなる第1の吸着体層を少なくとも備え、前記活性炭または高分子が、繊維および/または接着剤と共に、不織布からなる2つの第2の層間に封入され、その場合、100℃を上回る1atmの加熱空気流によって再生されるときにプリーツフィルタ媒体の変形を防止するため、グリッドが第2の層の少なくとも一方側に配置されまたは第1の層中に組み込まれる、クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野および背景技術】
【0001】
クリーンルームおよびマイクロ電子産業に関連する分野では、酸、塩基、凝結物、ドーパント、酸化体、および、揮発性有機化合物(VOC)の形態を成す空気中の分子汚染物質(AMC)の除去が分子フィルタおよびフィルタ要素によって達成される。AMCは、プロセスウエハ、回路基板、工具、機器等の腐食を引き起こす場合がある。また、AMCは、ドーピング誤り、核生成誤り、リソグラフィプロセス関連の欠陥、ウエハ、光学素子、レンズのヘージング(hazing)、および、製造において歩留まり損失または製造機器への損傷を生み出す場合がある多くの他の問題を引き起こす可能性がある。様々な濾過技術を選択して利用できるが、これらは一般に5つの形態に分けることができる。
【0002】
吸着粉末スラリーコーティングされた不織布は、安価であり、小さい圧力降下を有するが、少量の吸着体の存在に起因して、また、その大半が接着剤で覆われるという事実に起因して、吸着性能が低い。このタイプは、一般に、クリーンルーム用途に適さない。
【0003】
バルク吸着体充填層およびパネルは、おそらく最もよく知られており、幅広い価格および性能組み合わせで利用できる。これらは、一般に、交換するのにかなりの労力を要する大型で重量のあるシステムであるが、比較的高い汚染レベルを伴う用途においてまたは高いフィルタ効率を長期間にわたって維持しなければならないときに特に有効である。しかしながら、性能は、フィルタがどのように製造されて設置されるかに応じてかなりばらつきが大きくなり得る。発塵、バイパス、および、高い圧力降下がこのタイプのフィルタにおける懸案事項となる場合もある。
【0004】
炭素繊維から全体が形成されるファブリック:炭素繊維フィルタに伴う1つの主要な欠点は、それらがあまりにも汚すぎるため、これらの繊維がシェディングを引き起こすにつれて、下流側に粒子フィルタが無ければ先進的なクリーンルーム環境で使用できないという点である。炭素は導電材料であり、また、シェディング(shedding)が電子部品を製造する設備に深刻な問題をもたらす可能性がある。ハニカムフィルタは、小さい圧力降下を維持しつつ比較的高い効率に達することができる他のタイプであるが、大体の場合、少量の吸着体の存在に起因して低い吸着性能を有する。発塵もこのタイプのフィルタにおける懸案事項である。
【0005】
吸着体が取り込まれた不織布は、一般にプリーツ形態で適用される比較的新しい「ハイブリッド」製品である。適切な構成および用途を伴うと、これらの製品は、高い効率および耐用年数に関して、および、小さい圧力降下および取扱いの容易さに関して、極めて高い値を示すことができる。また、プリーツフィルタは前述したハニカム構造よりも柔軟である。すなわち、プリーツフィルタは、プリーツの数またはプリーツ高さを変えて性能を自由自在に変えることができる単一の可能性を有する。これは、高さしか調整できず、圧力降下の影響を伴い、または、1cm当たりに多数のセルを伴い、新たな高価な製造プロセスの開発を要するハニカム構造を用いると不可能である。また、吸着体のタイプを変えることは、プリーツ要素を使用するよりもかなり複雑である。
【0006】
高レベルの汚染を伴うまたは低沸点VOCなどの除去が困難な汚染物質を伴う一部の用途では、通常、妥当な寿命/耐用年数を得るためにバルク吸着体充填層フィルタが必要とされる。この種のフィルタは、圧力降下およびエネルギコストが生み出されるため、クリーンルーム(空調ユニット、ファンフィルタユニット、ミニ環境、または、工具)内では受け入れられない。非常に多くの場合、既存のクリーンルームは、再構成を伴わなければ、また、結果としてかなりの投資を伴わなければ、これらのシステムを後から取り付けることができない。また、クリーンルームの高レベルの清浄度を保つためには、ベッドフィルタと組み合わせて粒子フィルタを設置しなければならず、そのため、更なる圧力降下が付加され、エネルギコストが増大する。一方、更に小型の更に清浄なフィルタの使用は、非常に頻繁なフィルタ交換に起因して、顧客にとってあまり魅力的でない所有コスト(CoO)をもたらす。
【0007】
AMCの除去に関与する物理化学的機構を以下のように説明することができる。すなわち、ガス/蒸気分子は吸着体の内側で拡散する。すなわち、ガス/蒸気分子は高濃度領域から低濃度領域へ移動する。拡散速度は、2つの濃度間の差に直接に関連する。吸着体の内面はガス/蒸気分子で覆われるため、フィルタ効率が減少し始める。内面の特性、すなわち、存在する活性表面群および最も大きな孔径分布は、いずれのガスまたは蒸気分子が差し止められるのかを決定する。排出ガス/蒸気が許容できないレベルに達すると、フィルタを交換する必要がある。通常、フィルタが廃棄され、新たな比較的高価なフィルタが設置される。
【0008】
所定の設備では、例えば交互に使用されるまたは再生を受ける吸着体の対の層では、再生可能フィルタが知られている。通常、このタイプのシステムでは、たった1つのタイプの吸着体が使用される。
【0009】
国際公開第0209847号パンフレットは、フィルタを再生すべき時期を決定するようになっている制御システムを有する再生可能な空気清浄装置を開示する。そのフィルタで使用される活性炭繊維は、繊維で空気を汚染しており、したがって、二次的な粒子フィルタを使用しなければクリーンルーム環境で使用できない。
【0010】
紙もしくはセラミック構造体上の活性炭から形成されるまたは全体として炭化されて活性され得るベース材料から構成されるハニカム構造を使用する新たなシステムが出回るようになってきた。米国特許第6964695号明細書または欧州特許第04724071号明細書または米国特許第10/344248号明細書は、直接的な電気加熱により再生されるべき炭素モノリスを示す。このおよび他のハニカム/モノリスベースのシステムの欠点は、主に、それらが空気方向の延在により濾過にしか適合され得ない所定の形状を有し、したがって、実際のフィルタの外寸を拡大することにより圧力降下の増大を被り、そのため、既に構成されたシステムでまたは標準的な部品を使用しようとするシステムで殆ど許容されないという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、先に言及された今日使用される方法およびフィルタに伴う問題および欠点を克服する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、空気中の分子汚染物質の除去のためのクリーンルーム環境で用いる再生可能プリーツ媒体、および、フィルタ要素、ならびに、その組み合わせを提供する。
【0013】
本発明は、活性炭および/または高分子からなる吸着体を少なくとも備え、前記活性炭または高分子が、繊維および/または接着剤と共に、不織布からなる2つの第2の層間に囲まれ、その場合、100℃を上回る1atmの加熱空気流によって再生されるときにプリーツフィルタ媒体の変形を防止するため、グリッドが媒体の少なくとも一方側または中央に配置されることを特徴とするクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体を開示する。
【0014】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、活性炭または高分子からなる吸着体が100℃を上回る1atmの加熱空気流による再生を可能にする細孔構造を有することも特徴とし得る。通常、温度は100〜190℃であり、または、更に好ましい例は、良好な結果を得るために125〜190℃、150〜190℃、150〜180℃である。
【0015】
2つの第2の層は、グリッドを有する耐熱不織布を備えることが好ましい。プリーツフィルタ媒体は、少なくとも190℃までの温度において溶融または燃焼に対して耐性がなければならない。
【0016】
また、プリーツフィルタ媒体は、フィルタのために使用される通常の空気流を受けるときに規格ISO14644−1にしたがってISO Class6環境を上回る粒子を解放しない。
【0017】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、活性炭の吸着体が、繊維、粉末、粒状、ペレット、または、ビードの形態を有することも特徴とし得る。
【0018】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、活性炭が、石炭、ココナツ、高分子、および、ナフサ、更にはマクロ多孔性スチレンジビニルベンゼンなどの高分子吸着体から選択されることも特徴とし得る。
【0019】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、グリッドが、アルミニウム、スチール、または、高温耐性プラスチック材料から形成されることも特徴とし得る。
【0020】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、グリッドが総面積の50〜95%の開口面積を有することも特徴とし得る。
【0021】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、グリッドが総面積の50〜95%の開口面積を有する網の形態を成して形成されることも特徴とし得る。
【0022】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、平坦な媒体上にわたる圧力降下が0.11m/sの空気面速度で最大75Paであることも特徴とし得る。
【0023】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、繊維が耐熱二成分繊維であることも徴とし得る。
【0024】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、吸着体が、500m/g〜3000m/gの内面積と0.2cm/g〜0.8cm/gのミクロ細孔容積とを有する高分子材料または活性炭材料から形成されることも特徴とし得る。
【0025】
クリーンルーム環境用のフィルタ要素は、少なくとも1つのプリーツフィルタ媒体とフレームとを備えることができる。また、フィルタ要素は耐熱封止材剤を備えることもできる。封止剤およびフレームは少なくとも190℃までの温度に耐えなければならない。
【0026】
プリーツフィルタ媒体は、マイクロ電子産業、クリーンルーム、ベアウエハ、半導体、プリント回路基板、ハードディスク製造、フラットパネル製造、バイオチップ、医薬産業、食品産業、病院クリーン環境、IVF研究室、ソーラーパネル製造、キャビネット、ヒュームフードにおいて、フィルタで、すなわち、上記の特徴のいずれかに係るクリーンルーム環境用のフィルタ要素で使用することもできる。
【0027】
プリーツフィルタ媒体は、少なくとも2つのプリーツフィルタ要素が連続して配置されるときに使用することもできる。
【0028】
先の特徴のいずれかに係るクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体は、除去されるべき揮発性有機化合物の対象とする混合物と適合するために少なくとも2つの異なる吸着体が選択されてフィルタ要素内または異なるフィルタ要素内の異なる層で使用されることも特徴とし得る。
【0029】
先の特徴のいずれかに係るクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、有機酸の形態を成す空気中の分子汚染物質(AMC)、有機塩基、凝結物、ドーパント、酸化体、揮発性有機化合物(VOC)、および、吸着体の多孔質構造内に物理吸着により吸着され得る全ての化合物を除去するために使用することもできる。
【0030】
100〜190℃でのフィルタ要素の再生によって更に脱離され得る先に開示されたクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素の使用。
【0031】
本発明は、クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素を提供する。プリーツフィルタ媒体は、吸着体として、繊維、粉末、粒状、ペレット、ビード、または、石炭、ココナツ、高分子、ナフサ、もしくは、任意の他の根源からの任意の他の形態の活性炭を使用する。また、非炭化高分子吸着体が使用されてもよい。使用される1または複数の吸着体は、意図される吸着/脱離サイクルと除去されるべきAMCのタイプとに適合するように、それらの異なる特性によって、例えば寸法、内側表面積、および、孔径分布によって選択される。吸着体は、フィルタ媒体の少なくとも一方側または中央に支持グリッドが配置される不織ファブリック/布内に捉えられる。この構造体は、プリーツが付けられて、フィルタ要素へ形成される。フィルタ要素は、主にそれらの異なる物理的特性によって特徴付けられる単一のフィルタ要素または一連のフィルタ要素からなってもよい。実際のケースで除去されるべきAMCの混合物は、要素の最良の組み合わせを決定する。本発明で開示されるプリーツフィルタ媒体およびフィルタ要素は、熱を加えることにより、または、熱、低圧、および、蒸気の組み合わせを加えることにより再生できる。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面と併せて解釈される本発明の以下の詳細な説明からも明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】グリッドが一方側に配置されるプリーツフィルタ媒体を示している。
【図2】グリッドが2つの側に配置されるプリーツフィルタ媒体のアセンブリを示している。
【図3】グリッドが吸着体内に配置される、すなわち、グリッドが吸着体の第1の層中に組み込まれるプリーツフィルタ媒体のアセンブリを示している。
【図4】プリーツフィルタ媒体に適合するように調整されるフレームにプリーツフィルタ媒体が組み込まれて成るフィルタ要素を示している。
【図5】意図的な連続順序のカスケードで使用される異なるフィルタ要素を示している。
【図6】1サイクル後の再生を伴うトルエンまたはイソプロパノール(IPA)が人工的に取り込まれる3層再生可能プリーツフィルタの再生を示している。
【図7】2〜4サイクル後の再生を伴うトルエンまたはイソプロパノール(IPA)が人工的に取り込まれる3層再生可能プリーツフィルタの再生を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
幾つかの実施形態を使用してファブリック/布内に吸着体を捉えることができる。1つの好ましい例では、任意の接着剤をフィルタ媒体中に含まないように、熱に耐える高温二成分繊維を使用することにより、また、プリーツフィルタに対する支持グリッドの使用により、今日のフィルタを用いてよく見られる問題を克服できることが明らかにされた。
【0035】
吸着体、ポリエステル、封止剤、および、グリッドを本発明にしたがって組み合わせることにより、予期しない好結果を伴ってプリーツフィルタ媒体を再生できることが見い出された。したがって、従来技術のフィルタの問題が解決される。
【0036】
再生され得るこのプリーツAMCフィルタ媒体に伴う利点のうちの1つは、余分な粒子フィルタが出口側に必要とされず、また、クリーンルーム使用、例えば空調ユニット、ファンフィルタユニット、ミニ環境、および、プロセスツールにとって許容できるレベルに圧力降下を維持できるという点である。
【0037】
他の利点は、再生中に熱および空気流に晒されるときに媒体の少なくとも一方側または中央に配置されるグリッドがプリーツフィルタの変形を防止するという点である。したがって、フィルタは、熱および空気流に晒されるときに潰れない。
【0038】
同様の例では、フィルタ媒体に吸着体を捕捉するために高温接着剤を使用することができ、一方、フィルタの残りの部分が先の高温二成分繊維フィルタバージョンに関して説明したように構成される。
【0039】
グリッドは、フィルタ媒体に適した任意の形態を成してもよい。しかしながら、殆どの場合、明確な開口面積を伴う、アルミニウム、スチール、または、高温耐性高分子材料から形成される網の形状が使用される。グリッドは、第2の層の一方側、層の両側、または、第1の層の中央に配置されてもよい。
【0040】
開口面積が非常に小さい場合には、圧力降下が非常に大きい。開口面積は、グリッドの全表面積の50〜95%の範囲でなければならない。
【0041】
平坦な媒体における圧力降下は、0.11m/sの面速度で最大75Paでなければならない。
【0042】
一部のフィルタは1つのフィルタ要素だけを必要とし、一方、他のフィルタは、カスケード態様で中間沸点から低沸点を越える高沸点VOCを優先的に除去する、粗いマクロ多孔質構造からメソ多孔質構造を経て細かいミクロ多孔質構造へ至る構造の中から選択される孔径分布を伴う連続した幾つかのフィルタ要素からなる、。異なる少なくとも2つの吸着体をフィルタ要素で使用すると、幅広い範囲のVOCを除去して、再生サイクルを最適化することができ、したがって、許容できるサービスサイクルの数を最適化できる。
【0043】
より簡単な態様では、異なるフィルタ要素を異なる数のサイクルで再生できる場合、または、行なわれるサービスサイクルの数に応じて異なるフィルタ要素を上流側に連続して配置させることができる場合、連続する幾つかのフィルタ要素で同じ吸着体が使用されてもよい。また、幾つかのケースでは、一回だけ再生されるまたは再生されないフィルタとして使用される最後の要素を有することが最良の技術的機能および最良の所有コストを与える場合がある。
【0044】
1つの例において、再生可能プリーツフィルタ媒体は、選択された吸着体の第1の層と、不織布高温繊維またはファブリックの2つの第2の層とを備える。高温繊維と混合される選択された吸着体の第1の層は、高温繊維またはファブリックの前記2つの第2の層同士の間で囲まれる。再生可能プリーツフィルタ媒体は、第2の層の外側に配置されまたは第1の層内に組み込まれる少なくとも1つの支持グリッドを有する。これについては図1〜図3を参照されたい。
【0045】
本発明の再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、小さい圧力降下、長い寿命、小さい形状因子、および、清浄な製品を与える。また、本発明の再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、これまで経済的な解決策が存在しなかった低沸点VOCの除去も可能にする。数回再生される単一のまたは一連のフィルタ要素を有するフィルタの使用は、低沸点VOCの除去を可能にする。
【0046】
フィルタ媒体またはフィルタ要素を数回使用できるため、用途に必要な性能を維持しつつ所有コストが低減される。
【0047】
フィルタ媒体またはフィルタ要素の主な用途は、クリーンルーム、または、ベアウエハ、半導体、プリント回路基板、ハードディスク製造、フラットパネル製造、バイオチップなどのマイクロ電子産業である。マイクロ電子クリーンルーム環境としては、例えば、リソグラフィ領域のスキャナのような半導体処理ツール、コーターデベロッパ、拡散炉、ミニ環境、ツールインタフェース、金属蒸着機器等が挙げられる。フィルタは、空調ユニット(新鮮な空気または再循環空気)の内側またはクリーンルームファンフィルタユニットの上端に設置することもできる。
【0048】
しかしながら、フィルタ媒体またはフィルタ要素は、危険な化合物の臭いまたは制御のための製薬会社、食品産業、病院クリーン環境、IVF研究室、および、ソーラーパネル製造などの他の用途で使用することができる。フィルタ媒体またはフィルタ要素は、層流または安全キャビネット、ヒュームフード、エアポートのため、および、手術中に医師および患者を保護するための病院用途において使用することもできる。
【0049】
図1は、グリッドが不織布の一方側に配置される本発明の再生可能プリーツフィルタ媒体の図である。断面は、高温繊維と、該繊維間に配置される吸着体とを示している。
【0050】
図2は、グリッドがフィルタの両側に配置されるプリーツフィルタ媒体の一例を開示する。
【0051】
図3は、不織布層間に囲まれた吸着体内にグリッドが配置されるプリーツフィルタ媒体のアセンブリの一例を開示する。
【0052】
図4はフィルタ要素を示しており、この場合、プリーツフィルタ媒体に適合するように調整されるフレームにプリーツフィルタ媒体が組み込まれ、それにより、フィルタ要素が形成される。フレームは異なる方法で構成される。本発明に係るプリーツフィルタ媒体のために使用されるフレームは、使用されるプリーツフィルタ媒体に応じて当業者によって構成され得る。
【0053】
図5は、異なる細孔分布を有する吸着体を使用する、別個のフィルタモジュール/サブフレーム内または同じ不織布媒体内の再生可能媒体の別個の層の2例を開示する。また、再生可能媒体と再生不可能媒体との組み合わせまたは異なるタイプの再生可能媒体を使用する、別個のフィルタモジュール/サブフレーム内または同じ不織布媒体内の別個の層の例。
【0054】
全ての材料は200℃までの温度に関して溶融または燃焼に対して耐性があり、また、プリーツフィルタ媒体は、ISO規格14644−1により規定されるISO Class6環境を上回る粒子を解放していない。
【0055】
試験ダクトは、ASHRAE規格52−76,Eurovent 4/5に基づくフィルタ試験で使用されるタイプからなる。吸入空気は、タイプ1D 1000(0.3μmのDOP試験エアロゾルにおいて99.99%保持力)の絶対フィルタを使用して浄化される。
【0056】
PMS社によって製造されるLAS−X粒子カウンタ(直接読み取り機器)を用いて粒子分析が行なわれる。
【0057】
測定値が取得される前に、試験ダクトおよびチャンバが洗浄される。サンプリングプローブがダクト内に配置される。換気システムが始動されて試験フィルタを伴わずに動作される。ダクトに粒子が無いことをチェックするために、直接読み取り機器を使用して10分間にわたって粒子含有量が測定される。この初期ブランク後に、換気システムがOFFに切り換えられる。空気流が製品における公称値に設定され、また、測定が等速となるように粒子サンプリングが調整される。フィルタを位置決めした後、測定が数秒で開始される。
1.その後、対照として10分洗浄が報告される。
2.10分間(20秒間隔)にわたって初期粒子放出(particle shedding)が行なわれる。
3.その後、更なる20分間(20秒間隔)にわたって試験が続く。
【0058】
結果は表として示される(以下参照)。
【表1】

【0059】
再生のために使用される温度が高ければ高いほど、脱離機構を介した活性炭の表面からの全てのタイプの有機化合物の除去が良好になる。吸着された有機化合物を効果的に除去するために、化合物沸点を上回る温度が使用されなければならない。
【0060】
実際には、クリーンルームフィルタの再生のために使用される良好な最大温度は150〜180℃の区間内である。これは、フィルタ媒体に吸着される化合物の大部分がこれらの値を下回る沸点(b.p.)を有するからである。したがって、その区間内で良好な結果を得ることができる。
【0061】
幾つかの異なる温度区間125〜180,125〜150,150〜180,160〜180℃が検査された。125℃を上回る温度、特に150℃を上回る温度を用いると良好な結果が観測された。
【0062】
フィルタの内側に吸着される重要な有機化合物の例は、それらの沸点と共に、以下を含む:
ヘキサメチルジシロキサン(b.p.101℃)、トルエン(b.p.111℃)、酢酸ブチル(b.p.126℃)、エチルベンゼン(b.p.136℃)、キシレン(b.p.144℃)、PGMEA(b.p.146℃)、乳酸エチル(b.p.154℃)、トリメチルベンゼン(b.p.165℃)、デカン(b.p.174℃)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(b.p.175℃)。
【0063】
本発明に係る再生可能プリーツフィルタ媒体および/またはフィルタ要素は、幾つかの異なるサイズで製造することができる。サイズの例は、100mm×100mm〜最大で1220mm×1220mmの範囲である。
【0064】
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、空気流のために利用できる媒体領域を広げるようにプリーツが付けられる耐熱不織布フリース媒体中に組み込まれる吸着体から形成される。平坦な媒体における吸着体量は、50〜2000g/m2の範囲であり、好ましくは100〜1000g/m2の範囲である。
【0065】
不織布材料はPESまたはPES/PEから形成できるが、それらの材料が再生プロセスによって必要とされる温度まで耐熱性がある場合には、任意の他の高分子材料を使用できる。
【0066】
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、約10mm〜600mmのプリーツ高さと、2〜20プリーツ/100mmのプリーツ分布とを使用する。形態は、吸入空気中のVOCの濃度、最大流出濃度、許容される最大圧力降下、および、空間を含むがこれらに限定されない多くのファクタによって決まる。
【0067】
再生可能プリーツフィルタ媒体を備えるフィルタ要素の数は典型的な1〜10である。フィルタ要素の数は、意図される用途のために必要であると考えられる吸着体のタイプ、最大許容圧力降下、空気中のVOCの濃度、最大許容流出濃度、および、空間制限を含むがこれらに限定されない多くのファクタによって決まる。
【0068】
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、再生プロセスにおける温度サイクル中に支持を行なうために、支持グリッド(図1〜図3参照)を有していなければならない。支持グリッドは、50〜95%、好ましくは88%を上回る開口面積を有するとともに、0.1〜1.5mm、好ましくは0.5〜0.8mmの厚さを有する。グリッドは、再生サイクル中にプリーツ形態が損なわれない状態に保たれるようにする。支持グリッドが無ければ、再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、高い温度および流量に晒されるときに潰れる。
【0069】
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、媒体を固定してバイパス漏れを避けるために、再生サイクル中に材料応力に耐えるための更なる特徴を伴う耐熱接着剤、例えばポリウレタンを使用することができる。
【0070】
更なる例において、再生可能プリーツフィルタ媒体は、亜鉛メッキ鋼、ステンレススチール、耐酸スチール、アルミニウム、または、陽極酸化アルミから形成されるフレームによって取り囲まれる。
【0071】
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、最大3000m/gの内面積と、用途および除去すべきガスに依存するミクロ/メソ/マクロ細孔容積(ミクロ孔容積の場合には一般的に0.2〜0.8cm/g)とを有する、高分子材料または活性炭材料からなる吸着体を使用する。
【0072】
再生可能プリーツフィルタ媒体は、幾つかの異なる方法で構成することができる。すなわち、幾つかの異なる層が使用される:
不織布/吸着体1+繊維/吸着体2+繊維/吸着体3+繊維/等/不織布
不織布/吸着体1+2+3+等+繊維/不織布
不織布/吸着体1+2+3+等+繊維/不織布/吸着体1+2+3+等+繊維/不織布/等
不織布/吸着体1+繊維/不織布/吸着体2+繊維/不織布/等
【0073】
前述した例において、グリッドは、吸着体層の中央または不織布層のそれぞれの少なくとも一方側に組み込まれる。
【0074】
布またはファブリックは、織るもしくは編む(編物)ことにより形成されまたはフェルトに押し込まれる天然繊維または人工繊維(より糸または編み糸)の網目構造から形成される柔軟な人工材料である。不織布は、織りを含まないプロセスにより形成される材料または布地である。この用途において、不織布は繊維から形成される布地である。
【0075】
上記例における繊維は、耐熱性接着剤または繊維と接着剤との組み合わせに取って代えることができる。
【0076】
フィルタ要素は、1つの例では、再生可能プリーツフィルタ媒体と、フレームと、耐熱性封止剤とを備える。異なるフィルタ要素を適切に使用できる。
【0077】
再生例:
図6および図7は、全部で4サイクルの再生を伴うトルエンまたはイソプロパノール(IPA)が人工的に取り込まれる3層再生可能プリーツフィルタ媒体の再生を示している。図6は1サイクル後の結果を示している。フィルタ媒体には最初にトルエンが取り込まれ、この特定の混入物質におけるフィルタの効率が記録される。このチャレンジ試験が完了されると、フィルタ媒体が再生プロセスを経由しており、トルエンを用いる同じチャレンジ試験が再び行なわれる。両方の曲線は、この混入物質におけるフィルタ媒体の能力の完全な回復を示す同一のものである。これらの2つの試験の後、同じフィルタ媒体がイソプロパノールを受けて2回以上再生される。この場合も先と同様に、性能の完全な回復を示している。
【0078】
フィルタ媒体がフルスケール空調試験装置で検査され、ガスクロマトグラフ炎イオン化検出機器を使用して濃度がオンラインで監視された。この試験では、78〜80ppmvトルエンと13.8ppmイソプロパノール(IPA)が使用された。
【0079】
通常、フィルタ媒体またはフィルタ要素は、効率が90%〜50%の区間にあるときに交換される。
【0080】
これらの再生のために使用される温度は100〜180℃の区間にあった。この場合、180℃が、非常に高速で信頼できる再生に達するために使用できる好ましい最大温度である。
【0081】
以下の方法を使用することにより結果の検証が行なわれる:
再生可能プリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素は、サイズ、揮発度、および、沸点が異なるVOC分子を除去するために使用される。この場合、分子中には、異なる官能基および/または非炭素原子または非水素原子が存在する。
【0082】
そのような分子の全ては、異なる吸着特性と想定し得る反応経路とを吸着体でまたは再生中に有する。
【0083】
一部の分子は、除去することが極めて困難であり、経時的に、使用中に、および、再生サイクルにわたって蓄積して、有用な再生サイクルの数を制限して最終的にフィルタ全体またはフィルタ構成要素の交換をもたらす再生不可能残留物を形成する。
【0084】
商標名Gigamonitor下の屋内方法は、残留物の抽出を使用し、その後、GC−FID/GC−MSに基づく分析を使用して、3つの異なる沸点区間での蓄積VOC量を示す容易に解釈される棒グラフを形成する。
【0085】
この分析は、再生の度合いを示すための信頼できる方法であり、特定の用途に関して特定の顧客で推奨され得る再生サイクルが幾つであるのかを決定するために使用される。
【0086】
別の検証技術は、チャレンジVOCを除去するための更なる再生を伴う残りの取り込み能力を決定するために流量試験装置でチャレンジVOCによる露出量を使用することである。
【0087】
また、再生機器の出口側にFIDを接続して、有機化合物の送出濃度を測定することもできる。測定された値は、温度、湿度、空気流、および、圧力の所定の状態における再生手続きの終端を示す。ガスがもはや機器から出ていっていないときに、これらの状態において脱離が完了される。唯一の残りの試験は、この文書で前述した方法を使用して、フィルタから脱離されなかったVOCの量をチェックすること、または、チャレンジ試験を行なうことである。
【0088】
特定の実施形態に関連して十分な内容で本発明を説明してきたが、当業者であれば分かるように、本発明は、限定的ではなく例示的な目的で与えられた前述の実施形態および例以外によって実施することができる。したがって、添付の請求項の範囲は、本明細書中に含まれる例の説明に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体において、
活性炭または高分子をからなる第1の吸着体層を少なくとも備え、
前記活性炭または高分子が、繊維および/または接着剤と共に、不織布からなる2つの第2の層間に囲まれ、100℃を上回る1atmの加熱空気流によって再生されるときにプリーツフィルタ媒体の変形を防止するため、グリッドが前記第2の層の少なくとも一方側に配置されまたは前記第1の層中に組み込まれることを特徴とするクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項2】
前記活性炭の層における前記吸着体が、繊維、粉末、粒状、ペレット、または、ビードの形態を有することを特徴とする、請求項1に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項3】
前記活性炭が、石炭、ココナツ、高分子、および、ナフサ、更にはマクロ多孔性スチレンジビニルベンゼンなどの高分子吸着体から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項4】
前記グリッドが、アルミニウム、スチール、または、高温耐性プラスチック材料から形成されることを特徴とする、請求項1〜3に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項5】
前記グリッドが、総面積の50〜95%の開口面積を有することを特徴とする、請求項1〜4に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項6】
前記グリッドが、網の形態を成して形成されることを特徴とする、請求項5に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項7】
平坦な媒体上にわたる圧力降下が0.11m/sの空気面速度で最大75Paであることを特徴とする、請求項1〜6に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項8】
前記繊維が耐熱二成分繊維であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項9】
前記吸着体が、500m/g〜3000m/gの内面積と0.2cm/g〜0.8cm/gのミクロ細孔容積とを有する高分子材料または活性炭材料から形成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項10】
除去されるべき揮発性有機化合物の対象とする混合物と適合するために少なくとも2つの異なる吸着体が選択されてフィルタ要素内の異なる層で使用されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのプリーツフィルタ媒体とフレームとを備えることを特徴とするクリーンルーム環境用のフィルタ要素。
【請求項12】
耐熱封止材剤を備えることを特徴とする、請求項11に記載のクリーンルーム環境用のフィルタ要素。
【請求項13】
マイクロ電子産業、ベアウエハ製造、半導体産業、プリント回路基板アセンブリ、ハードディスク製造、フラットパネル製造、バイオチップ製造、医薬産業、食品産業、病院クリーン環境、IVF研究室、ソーラーパネル製造研究室、キャビネット、ヒュームフードエアシステムにおける請求項1〜12のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素の使用。
【請求項14】
少なくとも2つのプリーツフィルタ要素が連続して配置されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素の使用。
【請求項15】
有機酸の形態を成す空気中の分子汚染物質(AMC)、有機塩基、凝結物、ドーパント、酸化体、揮発性有機化合物(VOC)、および、前記吸着体層の多孔質構造内に物理吸着により吸着され得る全ての化合物を除去するための請求項1〜14のいずれか一項に記載のクリーンルーム環境用のプリーツフィルタ媒体またはフィルタ要素の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−519074(P2012−519074A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552909(P2011−552909)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/SE2010/050242
【国際公開番号】WO2010/101520
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(505275697)
【Fターム(参考)】