説明

再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法

【課題】資源の循環使用が可能となり、電子写真転写性に優れたものとされた電子写真用転写紙となる。
【解決手段】パルプと填料とを主構成原料とし、填料を内添した電子写真用転写紙であって、前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経ることにより得られ、所定の組成となるように調整した再生粒子凝集体を製造し、JIS P 8124に準拠した坪量が45〜70g/m2であり、 紙中にJIS P 8251に基づく紙灰分として前記再生粒子凝集体を1〜30質量%含有させ、 JIS P 8149に基づく不透明度が80〜90%である、再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙から、紙の主要構成要素である填料、顔料等の無機粒子を、好ましくは原料パルプ(古紙パルプ)をも回収して使用する、資源の循環使用を可能にした再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各社において環境問題に対する取り組みが推進されている。その取り組みの一つとして官公庁をはじめ、企業、個人に至るまで、環境保護や資源保護、ゴミ減少を目的として、古紙から古紙パルプを回収しこれらを用いて製造した再生紙の利用が年々増加している。この再生紙の利用の中でも官公庁、企業が特に推進してきたのが、日々多量に使用している電子写真用転写紙である。
電子写真用転写紙は、年々古紙パルプを使用した再生紙の利用が増加するとともに、古紙配合率が増加している。また、最近では企業、オフィスから発生する廃事務用紙などを、その地区や企業、ビル単位で回収し、製紙工場で電子写真用転写紙として再生する循環型の環境・資源保護の取り組みも見られる。
このような状況により、製紙工場では古紙パルプを使用した電子写真用転写紙の生産比率の増加と古紙配合率の増加が進むとともに、生産効率向上のため、電子写真用転写紙の製造工程の生産スピードが益々高速化している状況である。
しかしながら、再生紙の普及に伴って、近年は再生紙である古紙をさらに再利用し、すなわちパルプ繊維を繰り返し再利用している状況にあることから、得られる古紙パルプは微細繊維が多く、強度などの品質が低下する傾向にある。
より具体的には、古紙(古紙パルプ)の高配合化、古紙の繰り返し使用による劣化した古紙パルプ繊維の使用に伴い、電子写真用転写紙の嵩の低下、表面強度、表面性の低下、不透明度の低下による裏抜けや隠蔽性の低下、用紙強度の低下などが問題となっている。
電子写真印刷(転写)は、感光体材料(半導体材料)又は中間転写体上にあるトナー像と電子写真用転写紙等の受像材とを、機械的圧力によって密着させるために、電子写真用転写紙等の受像材にいかに適度なクッション性や密着性を持たせるかが重要であり、電子写真用転写紙の嵩の低下、摩擦や表面粗さなどの表面性向上が重要である。
【0003】
一方、製紙工場においては、近年の微細繊維の多い古紙パルプの高配合化や抄紙機の高速化に伴うワイヤーパートでの急激なそして強制的な脱水により、微細繊維の歩留まりや灰分(無機物)の歩留まりが極めて低い状況になっており、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジが増加している。
また、古紙パルプを使用した再生紙の生産比率の増加と古紙パルプの高配合化とによって、多くの古紙パルプが必要となり、新聞古紙や雑誌古紙をはじめとした古紙の使用量が増大している。そして、これらの古紙には、非塗工紙に使用された填料や塗工紙に使用された填料・顔料に由来する無機物が多く含まれているため、古紙処理工程からは、パルプ繊維と分離され、填料・顔料等の無機物が多量に含まれた脱墨フロスの発生量が増大している。
これら填料・顔料等の無機物を多量に含む古紙処理工程から排出される脱墨フロス、各製紙工程から排出される排水・脱水スラッジ等の製紙スラッジは、従来は燃焼し、減容化を図った上で、多くは埋立処分されてきた。しかしながら、前記背景技術により、環境保護、資源保護、ゴミ減少に貢献できる再生紙の品質を維持、向上しながら継続的に製造するためには、製紙工場にとって、この製紙スラッジの再資源化、有効利用は重大な課題となってきている。
そこで、製紙スラッジを燃焼して得た燃焼灰をセメント原料や土壌改良材として活用する等の努力もなされているが、これらの方法において、燃焼灰は助剤として使用されており、多量に使用されるわけではないため、結局、大部分の燃焼灰は埋立処分されることになる。
【0004】
燃焼灰を有効に活用する方法としては、紙の内添填料として使用することも考えられるが、燃焼灰は白色度が低いため、そのままの状態では紙の内添填料として使用するのに適していない。そこで、特許文献1は、燃焼灰(焼却灰)を再燃焼し、白色度を向上させてから使用する方法を開示している。
しかしながら、特許文献1の焼却灰を再燃焼する方法の場合、未燃焼カーボンを完全に燃焼させるために再燃焼温度を500〜900℃に設定する必要があり、また、焼却灰の白色度は50%程度までしか向上せず、紙の填料として使用するに適するものとはならないことが知見された。さらに、再燃焼温度を900℃超に設定すると、燃焼灰(無機物)が焼結、溶融し、極めて硬くなることが知見された。加えて、再燃焼灰を填料として使用すると、この再燃焼灰は非常に硬い性質をもつため、抄紙ワイヤーの磨耗進行が早く、抄紙ワイヤーの寿命が非常に短くなるため、実操業には使用できるものではなかった。
この点、再燃焼灰を粉砕し、その粒径を小さくして、磨耗の低減、平滑性の向上を図ることも考えられるが、内添填料として使用する場合には、抄紙時における歩留りが低いものとなり、燃焼灰自体が極めて硬いため、粉砕のためのエネルギーコストが極めて高いものとなる。
【0005】
先行する特許文献1に記載の製紙スラッジを原料とする場合における最も大きな問題点は、原料とする製紙スラッジが、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したもの、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収したもの、排水処理工程において、沈殿あるいは浮上などを利用した固形分分離装置によりその固形分を分離、回収したもの、古紙処理工程での混入異物除去したもの等の各種スラッジが混在している点である。これらの製紙スラッジのうち、例えば、抄紙工程でワイヤーを通過して流出したものは、紙力剤等が混入しており、また、抄紙工程における抄造物の変更によって品質に変動が生じる。さらに、排水スラッジであれば凝集剤が混入しており、更に工場全体の抄造物、生産量の変動、あるいは生産設備の工程内洗浄などにより大きな変動が生じる。パルプ化工程での洗浄過程から生じる製紙スラッジにおいては、チップ水分やパルプ製造条件で変動が生じるなど、さまざまな填料、顔料とすることができない物質が混入し、品質変動が生じる。したがって、全ての製紙スラッジを無選別に用いようとすると、製紙用の填料・顔料の品質が大きく低下し、しかも品質の変動が極めて大きく、不安定なものとなる。
すなわち、特許文献1の方法で得られる再生粒子は、単なる製紙用粒子の回収に終始し、電子写真用転写紙用の再生粒子として使用するには品質が適さず、品質安定性に欠けるものであった。
本発明者らは、古紙から、紙の主要構成要素である原料パルプ、填料を回収して使用する資源の循環使用に着目し鋭意研究を重ねた結果、再生粒子を形成する成分構成や、それらの成分が粒子全体に占める割合等を限定することによって、解決することができることを見出した。
【特許文献1】特開平11‐310732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素である填料、顔料等の無機粒子を、好ましくは原料パルプ(古紙パルプ)をも回収して使用する、資源の循環使用が可能となり、電子写真転写性に優れたものとされた電子写真用転写紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
パルプに填料を内添した電子写真用転写紙の製造方法であって、
前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体を製造し、
JIS P 8124に準拠した坪量が45〜70g/m2であり、
紙中にJIS P 8251に基づく紙灰分として前記再生粒子凝集体を1〜30質量%含有させ、
JIS P 8149に基づく不透明度が80〜90%である、
ことを特徴とする再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
【0008】
なお、本発明でいう脱墨フロスとは、古紙パルプを製造する古紙処理工程において、主に、古紙に付着したインクを取り除く脱墨工程で、パルプ繊維から分離されるものをいう。
【0009】
(作用効果)
・ 本発明にかかる再生粒子内添電子写真用転写紙のJIS P 8124に準拠した坪量は、45〜70g/m2である。電子写真用転写紙のビジュアル化に伴うポスターやポップ、意匠物品の作成用途などへの多用途性が求められる中で、既存の電子写真転写装置への適用性を考慮した結果、坪量を45〜70g/m2の範囲内に収めることで、本発明の効果を好適に発揮することができる。すなわち、坪量45g/m2未満では、嵩が出にくく、電子写真転写適性が劣ってくる問題が生じ易く、他方、70g/m2を超えると、電子写真転写装置における搬送性、ソーター等での操作性が劣る問題が生じる。
・ 本発明で使用する再生粒子凝集体は、脱墨フロスを焼成して得られた循環使用可能なものなので、廃棄物としての埋立などの処分が不要となり、環境に優しく、省資源に貢献するものである。また、原料が古紙処理工程から発生する脱墨フロスであるため安価であり、新たな無機粒子の使用量を抑えることができるため、製造コストが削減される。
・ 本発明で使用する再生粒子凝集体は、カルシウムが酸化物換算で30質量割合以上とされているので、内添した紙(電子写真用転写紙)の白色度が高い。
・ 炭酸カルシウムには、六方結晶系のカルサイト結晶(方解石)や、斜方結晶系のアラゴナイト結晶(あられ石)などの同質異像があり、天然に産する石灰石はそのほとんどがカルサイト系で、貝殻類にはカルサイト結晶のほかアラゴナイト結晶がある。また、炭酸カルシウムには、天然には存在しないがバテライト系がある。脱墨フロスから得られるカルシウムは多種多様であるが、焼成凝集化することでほぼ均一の炭酸カルシウム性状となる。したがって、脱墨フロスを焼成することは、再生粒子凝集体そのものの品質安定性に寄与し、異なる成分で構成される凝集体でありながら、性状が安定した再生粒子凝集体が得られる。
・ 本発明の再生粒子凝集体は、ケイ素を含むところ、ケイ素からなるシリカの一次粒子は微細なので、光学的屈折率が高い。したがって、ケイ素が酸化物換算で9質量割合以上とされている本発明の再生粒子凝集体を填料として内添した紙(電子写真用転写紙)は、不透明度が高い。
・ 本発明の再生粒子凝集体は、微細な粒子が二次凝集した柔軟かつポーラスな性状を有するため、電子写真感光体を摩耗させる問題がなく、また、紙粉の発生が少ないため、紙粉による電子写真感光体の摩耗や、バックグランドかぶり、象の白抜け、給紙不良等のトラブルが極めて少ない。さらに、粒子が二次凝集性状を呈することによるものか、組成によるものか定かではないが、複写時のトナー定着性が炭酸カルシウムあるいはクレーを内添した市販品に比べて良好である。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
導電剤を塗布して、JIS K 6911に準拠して測定した表面電気抵抗を109〜1011Ωとした、
請求項1記載の再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法。
【0011】
(作用効果)
・ 本発明に使用する原料パルプとして、古紙パルプを50〜100質量%使用することで、バージンパルプの使用が削減され、資源が有効に使用された、資源循環型の電子写真用転写紙となる。古紙パルプの使用が50%未満では、環境(資源)循環性が高いとは言えず、また、再生粒子凝集体との併用による嵩高性やトナー定着性に寄与する効果を発揮し難い。
・ 再生粒子凝集体の有する多孔性と、柔軟な塊状による嵩高性と、トナー定着性と、更に一度抄紙され古紙処理工程を経て剛直性が低くなった古紙パルプを50%以上配合することと、の組合せにより、クッション性を醸し出す嵩高性を併せ持たせることで、電子写真用転写性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、古紙から、古紙(紙)の主要構成要素である填料、顔料等の無機粒子を、好ましくは原料パルプ(古紙パルプ)をも回収して使用する、資源の循環使用が可能となり、電子写真転写性に優れたものとされた再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法実施の形態について詳細に説明する。
本形態の再生粒子内添電子写真用転写紙は、原料パルプと填料としての再生粒子凝集体とを主構成原料とする。そして、再生粒子凝集体は、脱墨フロスを主原料とし、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経て得られる(粉砕工程後に粒子を凝集させる工程を経ることなく、再生粒子凝集体を得る。)。さらに、脱墨フロスの凝集工程、造粒工程、各工程間に設けられる分級工程等を経てもよい。
【0014】
再生粒子凝集体の製造設備には、各種センサーを設け、被処理物や設備の状態、処理速度のコントロール等を行うのが望ましい。
再生粒子凝集体は、粉砕工程を経ることで、そのまま製紙用(電子写真用転写紙用)の填料として使用することが可能であるが、更に再生粒子凝集体に対し、シリカを定着させることで、再生粒子凝集体としての機能をより高めることが可能である。
【0015】
再生粒子凝集体にシリカを被覆・定着させる事例を以下に記述する。シリカを被覆・定着させる好適な方策としては、再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーを調製した後に加熱攪拌しながら、液温を70〜100℃、より好ましくは密閉容器内で所定の圧力に保持し酸を添加し、シリカゾルを生成させ、最終反応液のpHを8.0〜11.0の範囲に調整することにより、再生粒子凝集体表面にシリカを被覆・定着させることができる。再生粒子凝集体表面に被覆・定着させられるシリカは、珪酸ナトリウム(水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液と高温下で反応させ、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる粒子径10〜80nmのシリカゾル粒子である。
【0016】
珪酸ナトリウム溶液に希硫酸などの酸を添加することにより生成する数nm程度のシリカゾル微粒子を再生粒子凝集体の多孔性を有する表面全体を被覆するように付着(定着)させ、シリカゾルの結晶成長にともない、再生粒子凝集体表面上のシリカゾル微粒子と再生粒子凝集体に包含されるケイ素やカルシウム、アルミニウムとの間で結合が生じ、再生粒子凝集体表面にシリカを被覆・定着させる。
【0017】
pHは中性〜弱アルカリ性の範囲とし、好ましいpHは8〜11の範囲である。pHが8未満の酸性条件になるまで硫酸を添加してしまうと、シリカゾルではなくホワイトカーボンが生成する。
【0018】
ここに使用する珪酸アルカリ水溶液は特に限定されないが、珪酸ナトリウム水溶液(3号水ガラス)が入手性の点で望ましい。珪酸アルカリ水溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO2換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えると、再生粒子凝集体に定着されるシリカは、シリカゾルの形態からホワイトカーボンになり、再生粒子凝集体の多孔性を阻害し、不透明性、トナー定着性の向上効果が低くなる。また、3質量%未満では再生粒子凝集体中のシリカ成分が減るため、再生粒子凝集体表面へのシリカ定着が生じにくくなってしまう。
【0019】
再生粒子凝集体表面にシリカを定着させ、シリカ被覆再生粒子凝集体とする場合においては、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜62:29〜55:9〜35の質量割合とすることが望ましく、シリカ定着効果によるトナー定着性、不透明性を向上させることができる。
【0020】
他の再生粒子凝集体にシリカを定着させる事例としては、脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経る再生粒子凝集体製造工程において、焼成工程で生じる酸化カルシウムに炭酸ガスを反応させて炭酸カルシウム化を図る手段において、珪酸ナトリウム(水ガラス)を原料として、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸の希釈液と高温下で反応させ、加水分解反応と珪酸の重合化により得られる粒子径25〜75nmのシリカゾル粒子を定着させる手段がある。
【0021】
製造設備において、より品質の安定化を求めるにおいては、再生粒子凝集体の粒度を、各工程で均一に揃えるための分級を行うのが好ましく、粗大や微小粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。
【0022】
また、乾燥工程の前段階において、脱水処理を行った脱水物を造粒するのが好ましく、更には造粒物の粒度を均一に揃えるための分級を行うのがより好ましい。粗大や微小の造粒粒子を前工程にフィードバックすることでより品質の安定化を図ることができる。造粒においては、公知の造粒設備を使用でき、回転式、攪拌式、押し出し式等の設備が好適である。
【0023】
製造設備においては、再生粒子凝集体以外の異物を除去するのが好ましく、例えば古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階において用いられるパルパーやスクリーン、クリーナー等で砂、プラスチック異物、金属等を除去することが、除去効率の面で好ましい。特に鉄分の混入は、鉄分が酸化により微粒子の白色度低下の起因物質になるため、鉄分の混入を避け、選択的に取り除くことが推奨され、各工程を鉄以外の素材で設計又はライニングし、磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、更に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置し選択的に鉄分を除去することが好ましい。
【0024】
本形態の再生粒子凝集体(以下断りのない限りシリカ被覆においてもシリカ被覆前の再生粒子凝集体を意味する)は、カルシウム、ケイ素及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含むことを特徴とする。好ましくは、40〜82:9〜30:9〜30の質量割合、より好ましくは、60〜82:9〜20:9〜20の質量割合である。
【0025】
再生粒子凝集体のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの酸化物換算割合を調整するための方法としては、脱墨フロスにおける原料構成を調整する方法が本筋ではあるが、乾燥・分級工程や焼成工程において、出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で工程内に含有させる方法や、焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法などによって調整することもできる。
【0026】
より具体的には、例えば、再生粒子凝集体中のカルシウムの調整には、中性抄紙系の排水スラッジや塗工紙製造工程の排水スラッジを用い、ケイ素の調整には、不透明度向上剤として多量添加されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用い、アルミニウムの調整には、酸性抄紙系等の硫酸バンドの使用がある抄紙系の排水スラッジやクレー使用の多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いることができる。
【0027】
本形態の再生粒子凝集体は、例えば、吸油量が30〜100ml/100gで、抄紙工程における内添用として用いる場合は、平均粒径が0.1〜10μmとなるように調整するのが好ましい。
【0028】
本形態の再生粒子凝集体は、前述した脱水工程、乾燥工程及び焼成工程等を経た際の粉砕工程前に、40μm以下の粒子が90%以上となるよう処理されているのが好ましい。これにより、従来一般的に行われている乾式粉砕による大粒子の粉砕及び湿式粉砕による微粒子化といった複数段の粉砕処理を行うことなく、湿式による1段粉砕処理も可能となる。
【0029】
これにより、コールターカウンター法による粒度分布の微分曲線における平均粒子径のピーク高さを30%以上とすることができ、更には脱墨フロス中のカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合に調整することで、再生粒子凝集体の細孔容積を0.15〜0.60cc/g、細孔表面積を10〜25m2/g、細孔半径を300〜1000オングストロームとすることができる。
【0030】
本発明では、以上のような再生粒子凝集体を単独で使用することもできるが、かかる再生粒子凝集体と、内添用填料として通常使用される、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、合成シリカ、水酸化アルミニウム等の無機填料、ポリスチレン樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の合成高分子微粒子等から選ばれる少なくとも1種の填料(粒子)を併用することもできる。
【0031】
ただし、再生粒子凝集体を含む填料の添加率が30質量%を超えると紙力が低下するため、再生粒子内添電子写真用転写紙中に紙灰分として1〜30質量%、より好ましくは2〜25質量%含むのが好ましい。
【0032】
また、紙料スラリーに添加する添加剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、紙力増強剤としては、澱粉類、植物性ガム、水性セルロース誘導体、ケイ酸ソーダ等を、サイズ剤としては、ロジン、澱粉、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、ポリビニルアルコール、アルキルケテンダイマー、ASA(アルケニル無水こはく酸)、中性ロジン等を、歩留り向上剤としては、ポリアクリルアミド及び共重合体、ケイ酸ソーダ等を、内添又はサイズプレスにて添加することができる。さらに、必要に応じて染料、顔料等の色料を添加することもできる。
【0033】
本発明において使用することができる古紙パルプの原料となる古紙は、その種類が特に限定されない。例えば、新聞古紙のほか、塗工紙や非塗工紙にカラーあるいは白黒印刷されたチラシ古紙、雑誌古紙、製本、印刷工場、裁断工場などにおいて発生する裁落・損紙、オフィスなどで使用された電子写真方式・感熱方式・熱転写方式・感圧記録方式・インクジェット記録方式などで印字された古紙、などを使用することができる。
【0034】
特に、古紙パルプを50質量%以上、好ましくは70質量%以上配合した再生粒子内添電子写真用転写紙の場合は、古紙パルプ由来の嵩が出にくくクッション性に劣るとの問題に対応し、クッション性の維持や同一米坪比較においてより高い嵩高性を得ることができるようになる。
【0035】
他方、シリカを定着させたシリカ被覆再生粒子凝集体は、密度が低く、嵩高効果が顕著である。シリカ被覆再生粒子凝集体である場合には、これらカルシウム、ケイ素及びアルミニウムの割合は、酸化物換算で、カルシウム:ケイ素:アルミニウムが30〜62:29〜55:9〜35であることが好ましい。このように、例えばカルシウムが酸化物換算で30質量割合以上含有された再生粒子凝集体を填料として原料パルプに内添した場合には、特に得られる紙の白色度を向上させることができる。
【0036】
このほかにバージンパルプも使用することができ、広葉樹材、針葉樹材の制限はなく両者の原料から得られるパルプを任意に配合できる。また、製造方法においても蒸解液によって脱リグニンされる化学的パルプ化法であるクラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)や機械的に砕木される砕木パルプ(GP)、リファイナーパルプ砕木パルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミグランドパルプ(CGP)、セミケミカルパルプ(SCP)等の機械パルプ化法のどちらでもかまわない。これらのパルプと再生粒子凝集体とが主構成原料となるように混合し、公知の抄紙機を用いるなどして、再生粒子内添電子写真用転写紙を製造することができる。
【0037】
本発明の再生粒子凝集体は、原料パルプに対して1〜30質量%とするのが好ましい。再生粒子凝集体が1質量%未満では、抄紙機におけるカレンダー処理において、平滑化の効果を受けにくくなり、再生粒子内添電子写真用転写紙の不透明性が低下し、プリントスルーの問題が発生する。また、紙の剛直度が高くなり、電子写真用複写機(印刷機)上での走行性に問題が生じる。また、トナー定着性の効果が得られない。
一方、再生粒子凝集体の添加量が30質量%を超えると、表面性や剛度の面では望ましいものとなるが、所望のサイズ効果を発現することができなくなるとともに、電子写真用複写機(印刷機)内での搬送に伴って填料等の灰分が脱落しやすくなり、ハイバックグランド(転写工程で感光体に付着した紙粉中の填料が現像部で現像剤に混入すると、トナーと填料が逆極性の場合、凝集体が形成され、この凝集体が非画線部に現像される)、及びディリーション(感光体の暗所での電気抵抗の低下により、正常な静電潜像が得られない)と呼ばれる現象の発生が多くなる。
【0038】
再生粒子凝集体の添加は、従来公知のいずれの場所でも行うことが可能であるが、原料配合チェストからインレットの間で行うことが好ましい。この間に添加することにより、再生粒子凝集体が分散しやすくなり、繊維への定着性がよくなる。その結果、填料(再生粒子凝集体)の歩留りが向上する。また、再生粒子凝集体が繊維間の結合を阻害しないので、原紙の剛度が低下することもない。再生粒子凝集体をより均一に分散させ、繊維への定着を向上させるためには、できる限りインレットの近傍工程で添加することが好ましい。
【0039】
またより好適には、画像の乱れを防止し、適当なコピー画像濃度を維持するために、塩化ナトリウム、塩化カリウム、スチレン−マレイン酸コポリマー、第4級アンモニウム塩等の導電剤を抄紙機のサイズプレスで表面塗布して、再生粒子内添電子写真用転写紙の表面電気抵抗(JIS K 6911)を109〜1011Ω(温度20℃、湿度65%RH)にすることが好ましい。
【0040】
また、コピー画像部の鮮鋭度を向上させるために、カレンダー処理等により表面の凹凸を少なくして再生粒子内添電子写真用転写紙の平滑度(JIS P 8119)を10秒以上、好ましくは20秒以上にすることが好ましい。さらに、開封直後の製品水分は、波打ちやコピー後カールの原因となるため、これらの発生を抑えるために、適正水分の4.0〜6.5%になるよう抄紙機のドライヤー、カレンダー工程や、断裁工程等で調整することが好ましい。
【0041】
本発明に基づく再生粒子内添電子写真用転写紙は、カルシウム成分の多い見た目白色度の高い再生粒子凝集体を使用するため、白色度が82%以上、84%程度の物で、不透明度が約80〜90%程度の好適に再生粒子内添電子写真用転写紙として供せられる品質を得ることができる。
【0042】
更に、十点平均粗さにおいても、10.6〜16.6と過度に平坦性が高いことによる搬送性の問題を招くことなく、また、粗面過ぎて印刷適性を損なうことなく好適な再生粒子内添電子写真用転写紙を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示した条件で再生粒子凝集体を製造し、この再生粒子凝集体を使用して再生粒子内添電子写真用転写紙を製造した。再生粒子凝集体及び再生粒子内添電子写真用転写紙の性状を表1及び表2に、電子写真用転写紙の評価を表3に、それぞれ示した。
また、市販の電子写真用転写紙を試験紙として準備し、表2及び表3に、比較例5〜7として、以上の電子写真用転写紙と同様に、性状及び評価を示した。
測定、分析、評価は次のとおりとした。
〔(乾燥工程出口の)平均粒子径〕
X線マイクロアナライザーにて電子顕微鏡写真を撮影し、実測した。
〔(乾燥工程出口の)質量割合〕
4.7メッシュの篩にて2000μmを超える質量割合を、42メッシュの篩にて355μm未満の質量割合を測定し、焼成工程入口における質量割合を測定した。
〔ワイヤー磨耗性(再生粒子凝集体内磨耗性)〕
プラスチックワイヤー磨耗度(日本フィルコン製 3時間)、スラリー濃度2質量%で測定した。
〔生産性〕
原料の脱水効率、生産性、粉砕に必要な電力を4段階評価し、最も効率の良かった条件を◎、良かったものを○、効率、生産性、粉砕のいずれかに問題を見出したものを△、実操業困難なものを×とした。
〔品質安定性〕
所定の方法で得られた再生粒子凝集体の、白色度、粒径、一定時間間隔における生産量の各項目について、変動程度を測定し、変動が少ない順にランク付けを行い、上位10位までを◎、11位から22位を〇、23位から25位を△、それ以下を×とした。
〔見た目〕
目視で再生粒子凝集体の色を比較判断し、白色と灰色に区分した。
〔酸化物換算質量分析〕
X線マイクロアナライザー(EMAX・S−2150/日立堀場製)により酸化物換算の成分分析を、CaO、SiO2及びAl23それぞれについて行った。
〔平均粒子径〕
サンプル10mgをメタノール溶液8mlに添加し、超音波分散機(出力80ワット)で3分間分散させた。この溶液をコールターカウンター粒度分布測定装置(COULTER ELECTRONICS社製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定を行った。ただし、50μmのアパチャーで測定不可能なものについては200μmのアパチャーを使用して測定した。また、電解液は、ISOTON II(商品名:COULTER ELECTRONICS社製、0.7%の高純度NaCl水溶液)を用いた。
〔坪量〕
JIS P 8124に準拠した。
〔密度〕
JIS P 8118に準拠した。
〔再生填料(粒子)配合割合(灰分)〕
JIS P 8251(温度525℃)に準拠した。
〔熱水抽出pH〕
JIS P 8133(1976)に準拠した。
〔(ベック)平滑度〕
JIS P 8119に準拠した。
〔(ハンター)白色度〕
JIS P 8148に準拠した。
〔(ハンター)不透明度〕
JIS P 8149に準拠した。
〔十点平均粗さ(Rz)〕
小坂研究所製の触針式三次元表面粗さ計を使用し、基準長さ2.5mm、評価長さ12.5mmの条件で測定した。なお、評価結果は、8ヶ所を測定した平均値である。
〔紙粉発生量〕
PPC複写機(5055、富士ゼロックス社製)で1000枚の紙を複写後測定した感光体上に付着した紙粉の質量である。良好な画質を長期にわたって維持するためには40mg以下、より好ましくは38mg以下であることが必要である。
〔重送〕
A4判の紙を抄紙と直角方向(CD方向)に2,500枚片面通紙した時の、重送の発生枚数で評価した。電子写真用転写紙としては、7枚以下が必要とされている。
〔カール〕
A4判の紙をCD方向に通紙して片面複写をした後、カール面を上にして平らな台の上に置き、四隅の中で最も台の面より高い値を測定し、10枚の平均値で評価した。電子写真用転写紙としては、3mm以下が望ましい。
〔製造安定性〕
抄紙機による電子写真用転写紙の製造にあたっては、各種の操業条件を適切に調整・監視しながら製造するが、そのときの操業安定性を、次に示すように5段階に評価した。なお、評価が2以下の場合、商業上の実用レベルには無く、転写紙の品質を一定以上に維持しつつ安定に製造を続けることが難しい。
5:抄紙機上の紙匹の状態が安定で、通常の製造条件で問題なく安定に製造できる。
4:抄紙機上の紙匹は概ね安定であり、操業条件の調整により安定に製造が行える。
3:抄紙機上の紙匹は多少不安定であるが、操業条件の調整により製造が可能である。
2:抄紙機上の紙匹の状態が不安定で、操業条件を調整してもしばしば断紙が発生する。
1:抄紙機上の紙匹の強度が低く、操業条件の調整による対応が難しく、頻繁に断紙が発生する。
〔トナー定着性〕
PPC複写機(5055、富士ゼロックス社製)で複写した光学濃度が約1.4の画像部に、市販の18mm幅粘着テープ(セロハンテープ、ニチバン社製)を、平坦な金属板上で、金属製の直径102mm、面長250mm、7500gのロールにて、300g/cmの線圧で貼付け、1cm/秒の速度で剥離した際の、剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比である。電子写真用転写紙としては、剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比で0.7以上のトナー定着性が必要とされている。なお、画像濃度の測定にはマクベス反射型濃度計(Macbeth社製:RD−918)を使用した。トナー定着性を評価するための指標として以下に示す剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比を用いた。
剥離前の画像濃度に対する剥離後の画像濃度の比 = 剥離後の画像濃度 / 剥離前の画像濃度
〔静摩擦〕
JIS P 8147に準じて測定を行った。電子写真用転写紙において、紙の表面と裏面とを横方向(CD方向)同士でこすった際静摩擦を測定し評価した。電子写真用転写紙としては、0.45〜0.75が望ましい。
表2中のCaO、SiO2、Al23は、粒子構成成分中の3成分の比率を、表2中の「合計含有率」は、粒子中の3成分の合計含有率を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、再生させた無機粒子(再生粒子凝集体)が内添された電子写真用転写紙として、適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプに填料を内添した電子写真用転写紙の製造方法であって、
前記填料として古紙処理工程から排出される脱墨フロスを主原料とし、
前記主原料を脱水工程、乾燥工程、焼成工程及び粉砕工程を経ることにより得られ、下記組成となるように調整した再生粒子凝集体を製造し、
JIS P 8124に準拠した坪量が45〜70g/m2であり、
紙中にJIS P 8251に基づく紙灰分として前記再生粒子凝集体を1〜30質量%含有させ、
JIS P 8149に基づく不透明度が80〜90%である、
ことを特徴とする再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法。
(組成)
前記再生粒子凝集体は、再生粒子凝集体の構成成分がカルシウム、ケイ素及びアルミニウムを、酸化物換算で30〜82:9〜35:9〜35の質量割合で含有し、かつ、前記再生粒子凝集体の構成成分の内、前記カルシウム、前記ケイ素及び前記アルミニウムの合計含有割合が再生粒子凝集体構成成分中の90質量%以上である再生粒子凝集体。
【請求項2】
前記パルプが、古紙パルプ50〜100質量%からなり、
導電剤を塗布して、JIS K 6911に準拠して測定した表面電気抵抗を109〜1011Ωとした、
請求項1記載の再生粒子内添電子写真用転写紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−188049(P2007−188049A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−240848(P2006−240848)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【分割の表示】特願2005−380281(P2005−380281)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【特許番号】特許第3907691号(P3907691)
【特許公報発行日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】