説明

再生装置、ナビゲーション装置及びプログラム

【課題】複数の機能で用いられる各種データを記憶した記憶媒体から音響又は映像に係るコンテンツデータ読み込んで再生する装置において、再生を開始するまでの時間を短縮し、ひいては他の機能の起動に要する時間をも短縮する。
【解決手段】制御装置30は、HDD26に格納されている音楽データの再生を行う。ACCスイッチがオンにされることに伴う再生開始時には、RAM31に保持されている楽曲の圧縮データに基づいて再生を開始する。これにより、再生を開始するまでの時間を短縮する。その後、楽曲の再生の進行に伴って順次HDD26から圧縮データをRAM31に読み込み、この読み込んだ圧縮データに基づいて再生を行う。その後、HDDオーディオ再生を終了する際には、RAM31が記憶している圧縮データを保持させる。RAM31はACCスイッチがオフにされた後も記憶内容を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数の機能で用いられる各種データを記憶した記憶媒体から、音響又は映像の再生に用いるコンテンツデータを読み込んで再生する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音楽等の音響や映像(以下、音響等と表記する)を再生するためのコンテンツデータをハードディスク等に記憶しておき、この記憶されているコンテンツデータを読み込んで音響等を再生する装置が実用化されている。そして、このような装置は、例えば車載用のナビゲーション装置といった形態で実現されている(いわゆる、AV一体型ナビゲーション装置)。このようなナビゲーション装置では、ナビゲーション機能に用いるデータ(例えば地図データ等)や上記のコンテンツデータを記憶する記憶媒体としてハードディスクを共用している。また、昨今のナビゲーション装置の多機能化に伴い、例えばインターネットに接続するためのアプリケーション等のハードディスクを利用する機能が増加している。
【0003】
このようにハードディスクを複数の機能で共用する場合、各機能によるハードディスクへのアクセスが頻繁に行われる。特に電源投入後の起動時においては、各機能による起動処理に伴うデータの読み取りが集中する。物理的な駆動部を有するハードディスクドライブでは、各機能からのアクセスが集中するとデータの読み書きを行うためにヘッドを目的のエリアまで移動する動作(シーク)が頻繁に発生する。シーク動作中はデータの読み書きを行うことができないため、ヘッドのシークが頻繁に発生すればその分起動に必要なデータの読み込みに時間が掛かり、結果として、電源投入時から音響等の再生が開始されるまでにかなりの時間を要することになる。また、音響等の再生だけでなく、地図表示等の各種機能の立ち上げにも、かなりの時間を要することになる。
【0004】
一方、例えばラジオチューナや音楽CD(Compact Disk、登録商標)プレーヤ等のように、音源としてハードディスクを用いないオーディオソースは、電源投入後に比較的速やかに音声の再生(ここでいう「再生」とは、録音・録画したものを機械にかけて元の音声等を出力することを指すだけでなく、ラジオ放送やテレビ放送等を受信したものを基に音声等を出力することも含む)が開始される。これに対して、ハードディスクに格納された音響等に係るコンテンツデータについては、電源投入後から再生が開始されるまでに時間が掛かり、その間ユーザを待たせてしまうという事態は、AV一体型のナビゲーション装置としての利便性を損なうものである。
【0005】
特許文献1では、ナビゲーション装置の電源をオフにした後にも記憶内容が保持されるRAM(Random Access Memory)に地図表示に必要なデータを保持しておき、起動時にこのRAMに記憶されているデータに基づいて地図を表示する技術が開示されている。これにより、起動時における記憶媒体からの地図データの読み込みを省略し、ナビゲーション装置の立ち上げ処理に掛かる時間を短縮するとしている。
【特許文献1】特開2001−330446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、昨今のナビゲーション装置では、地図画像の見栄え向上のために地図上に三次元表示の図形を配置するなどしており、地図表示の複雑化に伴って地図を表示するために必要なデータ量は増加の一途をたどっている。したがって、特許文献1に記載のような手法でナビゲーション装置の立ち上げ処理の高速化を実現する場合、RAMに保持すべき情報量は膨大になり、これに対応するためには、より大容量のRAMを備える必要がある。しかし、RAMの容量を大きくするには相応のコストが必要となり、膨大な地図データを保持するのに十分な容量のRAMを備えることは、コストの面で現実的ではない。よって、現状では、起動時において地図を表示するのに必要とするデータは、依然としてハードディスクからの読み取りを余儀なくされており、起動時におけるハードディスクへのアクセスの集中を十分に軽減することはできていない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、複数の機能で用いられる各種データを記憶した記憶媒体から音響又は映像に係るコンテンツデータ読み込んで再生する装置において、再生を開始するまでの時間を短縮し、ひいては他の機能の起動に要する時間をも短縮することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するためになされた請求項1に記載の再生装置は、次のような特徴を有する。すなわち、コンテンツデータの再生処理を開始する際にバッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始する。その後、コンテンツデータの再生の進行に伴って順次記憶手段からコンテンツデータを読み込み、これを一旦バッファ記憶手段に保存し、この保存したコンテンツデータに基づいて順次再生を行う。そして、当該再生処理を終了する際にバッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させる。
【0009】
このように構成された再生装置によれば、例えば上述のAV一体型ナビゲーション装置等のように、ハードディスク等の記憶手段を複数の機能で共用する場合において、再生処理を開始する際に各機能からの記憶手段へのアクセスが集中する記憶手段記憶手段からコンテンツデータを読み込む必要がない。よって、音響等の出力を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0010】
なお、音響や映像の再生に係るコンテンツデータは、地図表示に必要なデータと比較した場合、より小さなデータ量で十分な再生時間を確保でき、更にデータの圧縮技術も進歩している。よって、十分な時間のコンテンツデータをバックアップするのに必要なバッファ記憶手段(例えばRAM等)の容量は、地図データ等をバックアップする場合に比べて小さくて済み、コスト面で有利である。
【0011】
ところで、電源投入後の起動時においては、各機能からの記憶手段へのアクセスが特に集中するため、音響等の再生を開始する際は、この時期における記憶手段からのコンテンツデータの読み込みを回避することが肝要である。
【0012】
そこで、請求項2に記載のように構成するとよい。すなわち、制御手段は、再生処理を実行するのに必要な電源がオフ状態からオン状態にされることに伴う起動時に、バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始し、再生処理を実行するのに必要な電源がオン状態からオフ状態にされることに伴って再生処理を終了する際に、バッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させる。
【0013】
このようの構成された再生装置によれば、各機能からの記憶手段へのアクセスが特に集中する起動時において、記憶手段からコンテンツデータを読み込む必要がないため、再生を開始するまでの時間を短縮できる。また、起動時における記憶手段へのアクセスの集中が軽減されるので、他の機能の起動に要する時間をも短縮することができる。
【0014】
ところで、上述のようなAV一体型のナビゲーション装置では、ハードディスクに記憶されたコンテンツデータ以外に、例えば音楽CDやDVD、ラジオ、テレビといった他のソースも再生可能に構成されていることが多い。従来、このような装置においては、ユーザからの指示等によって再生するソースを前記他のソースからハードディスクに記憶されたコンテンツデータに切り替える際にも、ハードディスクからコンテンツデータを読み込む必要があるため、再生を開始するまでに時間が掛かってしまう。また、コンテンツデータの再生を開始するタイミングで他の機能によるハードディスクへのアクセスがあれば、その間はコンテンツデータの読み込みを行うことができず、更に再生開始までに時間を要することになる。
【0015】
そこで、請求項3に記載の再生装置のように構成するとよい。すなわち、制御手段は、再生するソースとして選択中のソースを他のソースから記憶手段に記憶されているコンテンツデータに変更することに伴って再生処理開始をする際に、バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始する。そして、再生するソースとして選択中のソースを記憶手段に記憶されているコンテンツデータから他のソースへ変更することに伴って再生処理を終了する際に、バッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させる。このように構成された再生装置によれば、再生するソースを切り替える際においても、コンテンツデータの再生を速やかに開始することができる。
【0016】
つぎに、請求項4に記載の再生装置は、以下のような特徴を有する。まず、制御手段は、再生処理を終了する際、バッファ記憶手段の記憶内容の誤りを検出するための検査データを生成し、これをコンテンツデータと共にバッファ記憶手段に保持させる。そして、再生処理を開始する際、バッファ記憶手段に記憶されている検査データに基づいてバッファ記憶手段の記憶内容に誤りがあるか否かを検査する。誤りがない場合、バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始する。誤りがある場合、記憶手段からコンテンツデータを読み出して再生を開始する。
【0017】
このように構成された再生装置によれば、バッファ記憶手段の記憶内容に誤りがある場合は、改めて記憶手段からコンテンツデータを読み出して再生を開始するため、誤った記憶内容に基づいて再生を開始するといった異常動作を防止できる。
【0018】
つぎに、請求項5に記載の再生装置は、以下のような特徴を有する。バッファ記憶手段は、データの書き込みと読み出しとをそれぞれ独立して行える複数の記憶領域を有する。制御手段は、この複数の記憶領域に対して再生側記憶領域と待機側記憶領域とをそれぞれ割り当て、再生側記憶領域に保存されているコンテンツデータに基づいて再生を行うと共に、記憶手段から読み込んだコンテンツデータを待機側記憶領域に保存する。そして、再生側記憶領域に保存されていたコンテンツデータの再生が終了すると、再生側記憶領域と待機側記憶領域とを切り替えて、切替後の再生側記憶領域によるコンテンツデータの再生と、切替後の待機側記憶領域へのコンテンツデータの保存とを順次繰り返す。
【0019】
ここではバッファ記憶手段が有する複数の記憶領域は、例えば複数のRAMチップを備えるような構成であってもよいし、1つのRAMチップ内に複数の記憶領域を備え、書き込みと読み出しとを全二重で実行可能に構成されたものであってもよい。
【0020】
このように構成された再生装置によれば、バッファ記憶手段へコンテンツデータを書きみ込むためのアクセスと、バッファ記憶手段からのコンテンツデータを読み出すためのアクセスとを並行して実行可能であり、高速にデータ処理を行うことができる。
【0021】
ところで、上述した再生装置は、請求項6に示すように、ナビゲーション装置の一部として構成することが考えられる。この場合、記憶手段には、コンテンツデータと共にナビゲーション処理に用いる地図データ等が記憶される。すなわち、記憶手段は、ナビゲーション機能とコンテンツデータ再生機能とで共用される。
【0022】
このように構成されたナビゲーション装置によれば、コンテンツデータの再生を開始する際に記憶手段へアクセスする必要がないため、ナビゲーション機能による記憶手段へのアクセスが行われていても、速やかに再生を開始できる。また、ナビゲーション装置の起動時においては、記憶手段へのアクセスの集中が軽減されるので、再生を開始するまでの時間を短縮できるだけでなく、ナビゲーション機能の起動に要する時間をも短縮することができる。
【0023】
以上で説明したような再生装置における制御手段をコンピュータシステムで実現するには、請求項7に記載のようにコンピュータシステム上で稼働するプログラムとして備えればよい。このようなプログラムは、例えば磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク、ROM、RAM等のコンピュータにて読取可能な記憶媒体に記録し、必要に応じてコンピュータにロードすることにより、上述の制御手段としての機能を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[車載用AV一体型ナビゲーション装置1の構成の説明]
図1は、実施形態の車載用AV一体型ナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、実施形態の車載用AV一体型ナビゲーション装置1は、位置検出器21と、操作スイッチ群22と、CDドライブ23と、DVDドライブ24と、AM・FMチューナ25と、外部記憶装置(HDD:Hard Disc Drive)26と、表示装置27と、オーディオアンプ28と、スピーカ29と、上述の各部を統括制御する制御装置30とを備えている。
【0026】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの送信電波をGPSアンテナを介して受信し、車両の位置等を検出するGPS受信機と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロスコープと、車両の走行した距離を検出するための距離センサ等を備えている。そして、これら各センサ等は、各々が性質の異なる誤差を有しているため、互いに補完しながら使用するように構成されている。なお、精度によっては、上述したうちの一部のセンサで構成してもよく、またステアリングの回転センサや各転動輪の車輪センサ等を用いてもよい。
【0027】
操作スイッチ群22は、表示装置27と一体に構成され表示面上に設置されるタッチパネル及び表示装置27の周囲に設けられたメカニカルなキースイッチ等が用いられる。
CDドライブ23は、可搬記憶媒体であるCDが挿入されることで、このCDに記憶された各種データを読み出すための装置である。このCDドライブ23にて読み出す対象となるCDとしては、楽曲信号が記憶されたいわゆる音楽CD等がある。
【0028】
DVDドライブ24は、可搬記憶媒体であるDVDが挿入されることで、このDVDに記憶された各種データを読み出すための装置である。このDVDドライブ24にて読み出す対象となるDVDには、映像・音声・字幕等を記憶するもの(例えば、DVD‐Video)や、地図情報等の各種データを記憶するもの(例えば、DVD‐ROM)等がある。
【0029】
AM・FMチューナ25は、アンテナを介して受信したAM放送及びFM放送のラジオ信号を検波し、得られた音声の信号を制御装置30へ出力する。
外部記憶装置(以下、HDD)26は、各種情報を記憶するためのものであり、制御装置30からの制御に基づき、内蔵されたハードディスクに対してデータの読み書きを行う。このHDD26には、上述の位置検出精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、地図データや経路案内用データ等を含むナビゲーション用データや、CDドライブ23等からダビングした音楽再生のための音楽データ、車載用AV一体型ナビゲーション装置1の作動のためのプログラム等が格納されている。なお、HDD26に格納されている音楽データは、アナログ音声信号をパルス列に変調したPCM(Pulse Code Modulation)データを所定の圧縮フォーマットにて圧縮した圧縮データである。
【0030】
表示装置27は、液晶ディスプレイ等の表示面を有するカラー表示装置である。表示装置27は、制御装置30からの映像信号の入力に応じて各種画像を表示面に表示する。例えば、ナビゲーション画面として、位置検出器21にて検出した車両の現在位置とHDD26から入力された地図データとから特定した現在地を示すマーク、目的地までの誘導経路、名称、目印、各種ランドマークのシンボル等の付加データとが重ねて表示される。また、表示装置27は、CDドライブ23、DVDドライブ24、AM・FMチューナ25、HDD26に格納された音楽データ等の再生状況や、タッチパネル式の操作スイッチ等の各種画像を表示できる。
【0031】
オーディオアンプ28は音声信号を増幅するためのものであり、その増幅された音声はスピーカ29から出力される。スピーカ29は、複数(例えば4個、5個)から構成され、車両内の各所に配置されている。そして、HDD26に記憶された各種案内の音声データに基づいて制御装置30が実行する処理の結果としてのガイド音声や、CDドライブ23、DVDドライブ24、AM・FMチューナ25、HDD26等から入力された信号に基づいて再生された音声を出力できる。
【0032】
制御装置30は、CPU,ROM,RAM,エンコーダ,デコーダ,デジタルアナログコンバータ,I/O及びこれらの構成を接続するバスライン等からなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、上述した各部構成を制御する。この制御装置30は、ROMやHDD26等から読み込んだプログラムに従って、ナビゲーションや音響・映像(AV)出力に関する各種処理を実行する。
【0033】
例えば、ナビゲーション関係の処理としては、地図表示処理や経路案内処理等が挙げられる。地図表示処理は、位置検出器21からの各検出信号に基づいて座標及び進行方向の組として車両の現在位置を算出し、HDD26から読み込んだ現在位置付近の地図等を表示装置27に表示する処理である。また、経路案内処理は、HDD26に格納されている地点データと、操作スイッチ群22の操作に従って設定された目的地とに基づいて、現在位置から目的地までの最適な経路である目的地経路を算出し、その算出した目的地経路に対する走行案内を行う処理である。
【0034】
一方、オーディオビジュアル関係の処理としては、CDドライブ23、DVDドライブ24、AM・FMチューナ25及びHDD26に格納された音楽データ等の各種AVソースのうち、ユーザによって選択されたソースからの音響・映像信号に基づく音響・映像をスピーカ29及び表示装置27から出力する処理がある。
【0035】
ここで、制御装置30がHDD26に記憶された音楽データに基づく音響再生(以下、HDDオーディオ再生とも称する)を行う処理の概要を、図2に基づいて説明する。図2に示すように、制御装置30は、まずHDD26から圧縮された音楽データ(以下、圧縮データと称する)を読み出し、これをRAM31に一旦保存する。つぎに、デコードソフトウェア32によって、RAM31に保存されている圧縮データを再生の速度に合わせて順次PCMデータに復元(デコード)する。つづいて、デコードソフトウェア32によって復元したPCMデータをデジタルアナログコンバータ(DAC)33によってアナログ音声信号に変換する。DAC33によって変換されたアナログ音声信号はオーディオアンプ28によって増幅され、スピーカ29から音声として出力される。
【0036】
上述のHDDオーディオ再生において、制御装置30が備えるRAM31は、各部間におけるデータの処理速度や転送速度の差を補うために、HDD26から読み出したデータを一時的に保存しておくバッファ記憶装置として用いられる。また、RAM31は、車載用AV一体型ナビゲーション装置1の電源がオフ状態であっても、車両のバッテリからの電力供給により記憶内容が保持されるように構成されている。また、再生するAVソースが、HDDオーディオ再生から他のソースに切り替えられることに伴う再生終了後においてもその記憶内容が保持されるように構成されている。
【0037】
本実施形態では、RAM31は、図3に示すようにA面,B面の2つのRAM31a,31bで構成されており、それぞれに対して再生側と待機側とが交互に割り当てられ、HDD26からのデータ読み込み、及びデコードソフトウェアへのデータの読み出しが順次行われる。
【0038】
具体的には、A面、B面のどちらにも再生可能な音楽データ(圧縮データ)が記憶されていない状態であれば、まず、図3(a)に示すように、再生側に設定されているA面のRAM31aにHDD26から圧縮データが読み込まれる。A面のRAM31aへの圧縮データの読み込みが完了すると、図3(b)に示すように、A面のRAM31aからデコードソフトウェア32への圧縮データが読み出されることで音楽データの再生が行われる。これに並行して、待機側に設定されているB面のRAM31bへHDD26からの圧縮データの読み込みが行われる。
【0039】
そして、再生側であるA面のRAM31aに記憶されていた圧縮データのデコードが完了すると、図3(c)に示すように、A面とB面とで再生側と待機側とが切り替えられ、再生側であるB面のRAM31bからデコードソフトウェア32への圧縮データの読み出しが行われる。これに並行して、待機側であるA面のRAM31aへHDD26からの圧縮データの読み込みが行われる。
【0040】
以上のような手順を順次繰り返すことで、A面、B面の2つのRAM31a,31bに対して再生側と待機側とを交互に割り当てつつ、HDD26からのデータ読み込み及びデコードソフトウェアへのデータの読み出しを行い、音楽データの再生を継続する。なお、説明の便宜上、以下においてRAM31aとRAM31bとを特に区別しない場合は、単に「RAM31」と表記する。
【0041】
本実施形態の制御装置30は、上述のHDDオーディオ再生に係る処理におけるプロセスとして、次のような処理を実行する(「HDDオーディオ再生処理」)。まず、再生を開始する際には、制御装置30内のRAM31に保持されている音楽データに基づいて再生を開始する。その後、再生の進行に応じてHDD26から順次音楽データを読み込み、これを一旦RAM31へ保存しつつ音楽データの再生を継続する。そして、車両のアクセサリ(ACC)スイッチがオフにされたり、ユーザからの指示等によって再生するAVソースをHDDオーディオ再生から他のソースへと切り替えることに伴ってHDDオーディオ再生を中止する際、その時のRAM31の記憶内容を保持する。なお、この「HDDオーディオ再生処理」の詳細な説明は後述する。
【0042】
以上、車載用AV一体型ナビゲーション装置1の概略構成について説明したが、本実施形態における車載用AV一体型ナビゲーション装置1の構成と特許請求の範囲に記載した構成との対応は次のとおりである。本実施形態における車載用AV一体型ナビゲーション装置1のHDD26が、特許請求の範囲における記憶手段に相当する。また、制御装置30が制御手段及び案内手段に相当し、制御装置30内のRAM31がバッファ記憶装置に相当する。
【0043】
以下、車載用AV一体型ナビゲーション装置1の制御装置30が実行する「HDDオーディオ再生処理」について、図4〜6のフローチャートを参照しながら説明する。
[HDDオーディオ再生処理の説明]
図4は、車載用AV一体型ナビゲーション装置1の制御装置30が実行する「HDDオーディオ再生処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、車両のACCスイッチがオン状態にされることで車載用AV一体型ナビゲーション装置1に対して電源が供給された時に、再生を開始するAVソースとしてHDDオーディオが指定されている場合や、通常の稼動中において、ユーザからの指示等により再生するAVソースとしてHDDオーディオが選択されるなどして、HDDオーディオの再生開始が指示された場合に開始される。
【0044】
制御装置30は、まず、RAM31に記憶されているデータを用いて、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)コードを算出する(S100)。CRCは、データの誤りを検出するための周知の仕組みであり、元データから生成したCRCコードと、後に同じデータから生成したCRCコードとを比較することで、データが壊れているか否かを調べることができる。
【0045】
つぎに、S100で算出したCRCコードと、前回の再生終了時にRAM31に記録(詳細は後述する)されたCRCコードとが一致するか否かを判定する(S200)。ここで、S100で算出したCRCコードと、RAM31に記憶されているCRCコードとが一致すると判定した場合(S200:YES)、「RAMデータデコード・再生処理」を実行する(S300)。すなわち、CRCコードが一致する場合は、RAM31の記憶内容に誤りがない(データが壊れていない)ため、RAM31に記憶されている圧縮データに基づいて音楽データの再生を開始する。なお、S300の「RAMデータデコード・再生処理」の詳細な説明については後述する。
【0046】
一方、S100で算出したCRCコードと、RAM31に記憶されているCRCコードとが一致しないと判定した場合(S200:NO)、HDD26からの読み込みが初回である旨を示す初回読込フラグをオンにセットし(S400)、「HDDデータ読込処理」を実行する(S500)。すなわち、CRCコードが一致しない場合は、RAM31の記憶内容に誤りがある(データが壊れている)ため、RAM31に記憶されている圧縮データによる再生は行わず、新たにHDD26から圧縮データを読み込む。なお、S500の「HDDデータ読込処理」の詳細な説明については後述する。
【0047】
[HDDデータ読込処理の説明]
図5は、制御装置30が実行する「HDDデータ読込処理」の手順を示すフローチャートである。この処理は、上述の「HDDオーディオ再生処理」(図4参照)のS500、あるいは、後述の「RAMデータデコード・再生処理」(図6参照)のS307において実行される処理である。
【0048】
制御装置30は、まず、初回読込フラグがオンになっているか否かを判定する(S501)。ここで、初回読込フラグがオンになっていると判定した場合(S501:YES)、A面のRAM31aを再生側に、B面のRAM31bを待機側に設定する(S502)。つづいて、HDD26から再生側であるA面のRAM31aへ再生すべき楽曲の圧縮データを読み込む(S503)。A面のRAM31aへの圧縮データの読み込みが完了した後、初回読込フラグをオフにセットし(S504)、S501の処理へ戻る。
【0049】
一方、S501で初回読込フラグがオフになっていると判定した場合(S501:NO)、A面のRAM31aが再生側に設定されているか否かを判定する(S505)。ここで、A面のRAM31aが再生側に設定されていると判定した場合(S505:YES)、HDD26から待機側であるB面のRAM31bへ再生すべき楽曲の圧縮データの読み込みを開始する(S506)。一方、A面のRAM31aが再生側に設定されていない判定した場合(S505:NO)、すなわち、B面のRAM31bが再生側に設定されている場合、HDD26から待機側であるA面のRAM31aへ再生すべき楽曲の圧縮データの読み込みを開始する(S507)。
【0050】
[RAMデータデコード・再生処理の説明]
図6は、制御装置30が実行する「RAMデータデコード・再生処理」の手順を示すフローチャートである。この処理は、上述の「HDDオーディオ再生処理」(図4参照)のS300において実行される処理である。
【0051】
制御装置30は、まず、再生側のRAM31に記憶されている再生すべき楽曲の圧縮データを所定のデータ単位で読み出し、これをデコードソフトウェア32によって順次PCMデータにデコードする(S301)。そして、このデコードしたPCMデータをDAC33へ送出する(S302)。ここで送出されたPCMデータは、後段のDAC33とオーディオアンプ28とを介して変換・増幅され、スピーカ29から音声として出力される。
【0052】
つぎに、特定のイベント待ちを行う(S303)。このイベント待ちにおいては、S304,S308,S310,S311の各ステップに該当する何れかのイベントを検知するまで待機する。このイベント待ちの過程において、S302で送出したデータ対するDAC33によるデジタル/アナログ変換処理が終了したと判定した場合(S304:YES)、再生側のRAM31に未処理の圧縮データが残っているか否かを判定する(S305)。ここで、再生側のRAM31に未処理の圧縮データが残っていると判定した場合(S305:YES)、S301の処理へ戻る。一方、S305で再生側のRAM31に未処理の圧縮データが残っていないと判定した場合(S305:NO)、再生側のRAM31を待機側へ、待機側のRAM31を再生側へ切り替える(S306)。そして、上述の「HDDデータ読込処理」(図5参照)によってHDD26から待機側のRAM31へ再生すべき楽曲の圧縮データの読み込みを開始し(S307)、S301の処理へ戻る。
【0053】
S303でのイベント待ちの過程において、ユーザからの指示等により再生する楽曲(トラック)を変更する要求を検知した場合(S308:YES)、初回読込フラグをオンにセットする(S309)。そして、上述の「HDDデータ読込処理」(図5参照)によって、HDD26から再生すべき楽曲の圧縮データを再生側及び待機側のRAM31へと順次読み込み(S307)、S301の処理へ戻る。
【0054】
S303でのイベント待ちの過程において、車両のACCスイッチがオフ状態にされたことを検知した場合(S310:YES)、あるいは、再生するAVソースの切り替え、楽曲の再生停止、オーディオ機能停止の各要求を検知した場合(S311:YES)は、何れもS312へ移行する。S312では、現在RAM31に記憶されている圧縮データを含む保持すべき記憶内容に対するCRCコードを算出して、これを保持すべき記憶内容共にRAM31へ記録し、RAM31の記憶内容を保持させる(S312)。
【0055】
なお、再生終了時にRAM31に保持させる記憶内容には、HDD26から読み込んだ圧縮データの他に、再生すべき楽曲のHDD26内でのファイル名、次回HDD26から読み込むべきファイルポインタ、次にデコードすべき圧縮データのメモリアドレス、再生側のRAM31の識別情報、次回起動時に再生すべきAVソース種別(ACCスイッチがオフの時)等があり、更にこれらのデータの誤りを検知するためのCRCコードが含まれる。
【0056】
[効果]
実施形態の車載用AV一体型ナビゲーション装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0057】
(1)HDD26をナビゲーション処理やHDDオーディオ再生といった複数の機能で共用する場合において、HDDオーディオ再生を開始する際に、各機能によるアクセスが頻繁に行われるHDD26から音楽データを読み込む必要がない。したがって、音響出力を開始するまでの時間を短縮することができる。
【0058】
特に、各機能からのHDD26へのアクセスが集中する電源投入後の起動時において、HDD26からコンテンツデータを読み込む必要がないため、再生を開始するまでの時間を短縮できる。また、起動時におけるHDD26へのアクセスの集中が軽減されるので、ナビゲーション機能等の起動に要する時間をも短縮することができる。
【0059】
さらに、再生するAVソースを他のソースからHDDオーディオに切り替えた際も、RAM31に記憶された圧縮データに基づいて再生を開始するので、HDDオーディオの再生を速やかに開始することができる。
【0060】
なお、音楽データは、地図表示に必要なデータと比較した場合、より小さなデータ量で十分な再生時間を確保でき、更にデータの圧縮技術も進歩している。よって、音楽データのバックアップとして十分な再生時間を確保するのに必要なRAM31の容量は、地図データ等をバックアップする場合に比べて小さくて済み、コスト面で有利である。
【0061】
(2)音楽データのバックアップ用として、RAM31a,31bの2つのメモリを備え、これらを再生側と待機側とで交互に切り替えつつ、圧縮データの書き込み及び読み出しを並行して行うことで、高速にデータ処理を行うことができる。なお、本実施形態では、RAM31として2つのメモリチップを備えているが、更に多くのメモリチップを備え、再生側と待機側とを順次切り替えるような構成であってもよい。また、複数のメモリチップを備える替わりに、1つのメモリチップ内に複数の独立した記憶領域を備え、1つのメモリチップで書き込みと読み出しとを全二重で実行可能に構成されたものを利用してもよい。
【0062】
(3)制御装置30は、RAM31に保持されている圧縮データに基づく再生を開始する際、前回の再生終了時にRAM31の記憶内容から予め算出しておいたCRCコードと、再生開始に伴って改めて算出したCRCコードとを比較し、RAM31の記憶内容に誤りがあるか否かを検査する。このとき、RAM31に記憶内容に誤りがある場合は、改めてHDD26から圧縮データを読み出して再生を開始する。このようにすることで、誤ったデータに基づいて再生を開始するといった異常動作を防止できる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、様々な態様にて実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、HDD26に格納された再生対象として音楽データを想定して説明したが、音楽コンテンツの代わりに映像コンテンツ(例えば、映画やTV録画等)や、音声コンテンツ(例えば、小説を読み上げたものやラジオドラマ等)等を再生対象としてもよい。このような場合であっても、起動時等にRAM等に保持されているデータに基づいて再生を開始することの有意性があるからである。
【0064】
また、上記実施形態では、本発明をナビゲーション装置に適用した一例について説明したが、本発明はナビゲーション装置に限定されることなく種々の装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態の車載用AV一体型ナビゲーション装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】制御装置30による音楽データ再生の手順を模式的に示す説明図である。
【図3】RAM31への音楽データの書き込み/読み出しの手順を模式的に示す説明図である。
【図4】車載用AV一体型ナビゲーション装置1の制御装置30が実行する「HDDオーディオ再生処理」のメイン処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】車載用AV一体型ナビゲーション装置1の制御装置30が実行する「HDDデータ読込処理」の手順を示すフローチャートである。
【図6】車載用AV一体型ナビゲーション装置1の制御装置30が実行する「RAMデータデコード・再生処理」の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
1…車載用AV一体型ナビゲーション装置、21…位置検出器、22…操作スイッチ群、23…CDドライブ、24…DVDドライブ、25…AM・FMチューナ25、26…外部記憶装置(HDD)、27…表示装置、28…オーディオアンプ、29…スピーカ、30…制御装置、31,31a,31b…RAM、32…デコードソフトウェア、33…デジタルアナログコンバータ(DAC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能で利用される各種データを記憶する記憶手段から音響又は映像の再生に係るコンテンツデータを読み込み、この読み込んだコンテンツデータに基づく音響又は映像を再生する再生装置において、
前記記憶手段からコンテンツデータを読み込み、この読み込んだコンテンツデータの再生に係る再生処理を行う制御手段と、
前記再生処理の過程で前記記憶手段から読み込まれたコンテンツデータを記憶し、かつ当該再生処理終了後も記憶内容を保持するバッファ記憶手段とを備え、
前記制御手段は、
前記再生処理を開始する際に前記バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始し、
その後、コンテンツデータの再生の進行に伴って順次前記記憶手段からコンテンツデータを読み込み、これを一旦前記バッファ記憶手段に保存し、この保存したコンテンツデータに基づいて順次再生を行い、
当該再生処理を終了する際に前記バッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させること
を特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再生装置において、
前記制御手段は、
前記再生処理を実行するのに必要な電源がオフ状態からオン状態にされることに伴う起動時に、前記バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始し、
前記再生処理を実行するのに必要な電源がオン状態からオフ状態にされることに伴って前記再生処理を終了する際に、前記バッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させること
を特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の再生装置において、
当該再生装置は、前記記憶手段に記憶されているコンテンツデータ以外の他のソースを含む複数のソースを選択的に再生可能であり、
前記制御手段は、
再生するソースとして選択中のソースを前記他のソースから前記記憶手段に記憶されているコンテンツデータに変更することに伴って前記再生処理開始をする際に、前記バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始し、
再生するソースとして選択中のソースを前記記憶手段に記憶されているコンテンツデータから前記他のソースへ変更することに伴って前記再生処理を終了する際に、前記バッファ記憶手段が記憶しているコンテンツデータを保持させること
を特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の再生装置において、
前記制御手段は、
前記再生処理を終了する際、前記バッファ記憶手段の記憶内容の誤りを検出するための検査データを生成し、これをコンテンツデータと共に前記バッファ記憶手段に保持させ、
前記再生処理を開始する際、前記バッファ記憶手段に記憶されている検査データに基づいて前記バッファ記憶手段の記憶内容に誤りがあるか否かを検査し、誤りがない場合、前記バッファ記憶手段に保持されているコンテンツデータに基づいて再生を開始し、誤りがある場合、前記記憶手段からコンテンツデータを読み出して再生を開始すること
を特徴とする再生装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の再生装置において、
前記バッファ記憶手段は、データの書き込みと読み出しとをそれぞれ独立して行える複数の記憶領域を有し、
前記制御手段は、
前記複数の記憶領域に対して再生側記憶領域と待機側記憶領域とをそれぞれ割り当て、前記再生側記憶領域に保存されているコンテンツデータに基づいて再生を行うと共に、前記記憶手段から読み込んだコンテンツデータを前記待機側記憶領域に保存し、
前記再生側記憶領域に保存されていたコンテンツデータの再生が終了すると、前記再生側記憶領域と前記待機側記憶領域とを切り替えて、前記再生側記憶領域によるコンテンツデータの再生と、前記待機側記憶領域へのコンテンツデータの保存とを順次繰り返すこと
を特徴とする再生装置。
【請求項6】
地図データ及び音響又は映像の再生に係るコンテンツデータを記憶する記憶手段と、
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の再生装置と、
前記記憶手段に記憶された地図データを読み出し、この読み出した地図データに基づく経路案内を行う案内手段とを備えること
を特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の再生装置に用いられるコンピュータを制御するためのプログラムであって、当該コンピュータを前記制御手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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