再生装置、再生方法、記録再生装置、トラックフォーマット、及び記録媒体
【課題】再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を安定して行うことができ、データ再生を良好に行う再生装置を提供する。
【解決手段】ユニットの両側に配置されるガードバンドに、ゲイン制御パターンを含むブリアンブルを設け、再生時に、再生信号ゲイン制御処理部233は、1つの再生ヘッドによってガードバンドとトラックとから同時に再生された各ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、この再生ヘッドごとの再生信号に対してゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する。これにより、トラックオフセットが発生した場合でも、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができ、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【解決手段】ユニットの両側に配置されるガードバンドに、ゲイン制御パターンを含むブリアンブルを設け、再生時に、再生信号ゲイン制御処理部233は、1つの再生ヘッドによってガードバンドとトラックとから同時に再生された各ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、この再生ヘッドごとの再生信号に対してゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する。これにより、トラックオフセットが発生した場合でも、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができ、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に設けられた複数のトラックからデータを再生する再生装置、再生方法、記録再生装置、トラックフォーマット、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラッキング制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データ検出のための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図18は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図19は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラックの進行する方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0030】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0031】
図20は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0032】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0033】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0034】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0035】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0036】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0037】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算及び信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0038】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0039】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0040】
図21は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0041】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0042】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0043】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0044】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0045】
ところで、上記の磁気記録再生方式を採用する場合における、より安定した再生信号を得るための技術的課題として、例えば、再生時においてトラックオフセットなどの変動が発生した場合の再生信号の品質の低下があった。
【0046】
上記の磁気記録再生方式においては、ユニットを構成する複数のトラックにおける端のトラックは、隣のユニットとの再生時の干渉を防止するように設けられた、何も情報を持たないガードバンドと呼ばれるエリアと接しているため、この端のトラックを再生する際には、ガードバンド部分とともに当該端のトラックの情報が再生ヘッドによって再生される。
【0047】
再生ヘッドごとの再生出力のばらつきを低減するために、再生信号ごとにゲイン制御を行う場合において、例えば、再生ヘッドごとのゲイン制御パターンの再生信号に対して、ゲイン制御パターンごとの再生信号のピーク値の平均加算などの演算処理によって基準出力を求め、この基準出力を各再生ヘッドの再生信号に掛け合わせる。この時、ガードバンド部分を含めて端のトラックの再生を行う再生ヘッドの再生信号は、必ずしも正しい基準出力が得られず、所望のゲイン制御処理を行うことが困難であり、再生信号の品質が低下するという問題があった。また、ガードバンド部分を含めて端のトラックの再生を行う再生ヘッドの再生信号に対する所望のゲイン制御処理が困難であるという上記の問題は、トラックオフセットが発生した場合において、より顕著になる。
【0048】
本発明は、かかる事情を鑑み、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を安定して行うことができ、データ再生を良好に行うことのできる再生装置、再生方法、記録再生装置、トラックフォーマット、及び記録媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の課題を解決するために、本発明の再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部とを具備する。
【0050】
この発明によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、再生信号ゲイン制御処理部にて、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0051】
また、本発明の再生装置は、前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0052】
また、本発明の再生装置において、前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることとしてもよい。
【0053】
また、本発明の再生装置は、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部とをさらに具備するものであってもよい。
【0054】
また、本発明の再生装置は、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、スキャンごとの再生ヘッドの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0055】
本発明の別の観点に基づく再生方法は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側には前記データを有さないガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを設けておき、前記再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するステップを具備する。
【0056】
この発明の再生方法によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0057】
本発明の再生方法は、前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0058】
また、本発明の再生方法において、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることとしてもよい。
【0059】
また、本発明の再生方法において、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するステップと、前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離するステップとをさらに具備することとしてもよい。
【0060】
また、本発明の再生方法において、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、スキャンごとの再生ヘッドの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0061】
本発明の別の観点に基づく記録再生装置は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、前記記録装置は、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にガードバンドとしてのトラックを記録するガードバンド記録部を具備し、前記再生装置は、前記再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備する。
【0062】
この発明の記録再生装置によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0063】
本発明の別の観点に基づくトラックフォーマットは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが配置されたものである。
【0064】
この発明のトラックフォーマットによれば、ガードバンドとしてのトラックに、ユニットを構成するトラックと同様に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが配置されているので、再生装置の1つの再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0065】
また、本発明のトラックフォーマットにおいて、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むこととしてもよい。
【0066】
本発明の別の観点に基づく記録媒体は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録されたものである。
【0067】
この発明の記録媒体によれば、ガードバンドとしてのトラックに、ユニットを構成するトラックと同様に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが配置されているので、再生装置の1つの再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0068】
また、本発明の記録媒体において、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明によれば、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を安定して行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0071】
(第1の実施形態)
【0072】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。この実施形態の記録装置は、テープ状の磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録する装置であり、再生装置は、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する装置である。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとする。この実施形態では、M=6、N=6とする。
【0073】
図1は本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0074】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部160で構成される。
【0075】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1をM個分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0076】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で構成される。
【0077】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6で構成される。
【0078】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−6と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,・・・,144−6と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−6とで構成される。
【0079】
記録ヘッドアレイ150は、磁気記録メディア2にデータを含むトラックを記録するために用いられるM個の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6と、データを含まないトラックをガードバンドとして記録するために用いられる1個の記録ヘッドW−0とを有している。
【0080】
ガードバンド記録部160は、ガードバンド記録用の記録ヘッドW−0を使って、データ再生の制御に必要なプリアンブルが付加されたガードバンドを磁気記録メディア2に記録する手段である。
【0081】
このガードバンド記録部160は、消去信号発生部161、プリアンブル付加部131−0、出力タイミング設定部141−0、記録補償部144−0、及び記録アンプ147−0を有している。
【0082】
消去信号発生部161は、ガードバンドに記録する消去信号を発生する手段である。消去信号には、例えば、最短記録波長以下の記録波長の繰り返し信号や、直流信号など、データの符号列に用いられない符号列が用いられる。
【0083】
プリアンブル付加部131−0は、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むガードバンド用のプリアンブルを付加する。
【0084】
出力タイミング設定部141−0は、プリアンブルが付加された消去信号の記録符号列に所望のタイミングを与える。記録補償部144−0は、出力タイミング設定部141−0の出力に対する記録補償処理を行う。記録アンプ147−0は、記録補償処理後のガードバンド用の記録符号列をもとに記録ヘッドW−0を駆動する。
【0085】
図2は、この記録装置100によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、データを含むM(M=6)本のトラックを記録する動作と1本のガードバンドを記録する動作とが切り替えて実行される。まず、これから行う記録の対象がガードバンドかトラックかを判断する(ステップS101)。
【0086】
これから行う記録の対象がトラックである場合には、次のように動作を行うように制御する。まず、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、トラック記録用の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6の数(M=6)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配する(ステップS102)。
【0087】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS103)。
【0088】
次に、符号化されたそれぞれの記録データに、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6によって、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向にずれた位置関係で、データ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS104)。
【0089】
ここで、データを再生する制御のために必要なプリアンブルのパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、トラックを識別するための識別パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの先頭位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0090】
トラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−6にてそれぞれ所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,・・・,144−6にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施されたトラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−6において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS105)。
【0091】
一方、ステップS101で、これから行う記録の対象がガードバンドである場合には次のように動作を行うように制御する。まず、ガードバンド記録部160の消去信号発生部161から所定の単位分の消去信号が出力される(ステップS106)。次に、プリアンブル付加部131−0にて、消去信号の符号列にガードバンド用のプリアンブルが付加される(ステップS107)。
【0092】
プリアンブル付加部131−0より出力された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の出力タイミング設定部141−0にて所望のタイミングが与えられた後、ガードバンド記録部160内の記録補償部144−0にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の記録アンプ147−0において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−0に送られ、記録ヘッドW−0によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS108)。
【0093】
記録装置100は、以上のように、ユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録した後、記録ヘッドアレイ150を磁気記録メディア2のテープ幅方向に一定量移動して、同様に、次のユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録し、これを一定回数(s回)繰り返す。最終的には、例えば、図6に示すように、個々のユニット51の両側にガードバンド52が配置されてユニット51間にガードバンド52が介在するように、ガードバンド52の記録がユニット51の記録より一回多く実行される。すなわち、図6の例では、磁気記録メディア2の幅方向における一端からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われる。ここで、ガードバンド#s+1は、記録ヘッドアレイ150をトラック幅方向へ最後に移動した位置で、ガードバンド記録部160によってガードバンド52の記録のみを行うことによって作成されたものである。
【0094】
次に、本発明の一実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0095】
図3は本発明の一実施形態である磁気記録再生方式における再生装置200の構成を示す図である。
【0096】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0097】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=6)個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6は、磁気記録メディア2上で隣接する2以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0098】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6と、N個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6と、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6とを備える。
【0099】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6の直前に、必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0100】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6は、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0101】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、及び信号分離演算部236を有している。
【0102】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6より出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6ごとの再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0103】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターン情報を検出し、識別情報を出力する。
【0104】
再生信号ゲイン制御処理部233は、識別情報検出部232を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のレベルを制御する。
【0105】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231により検出された同期信号を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンの再生信号を用いて、所定のチャネル推定演算によって、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める。
【0106】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0107】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233より入力された各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0108】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0109】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−6と、等化器241−1,241−2,・・・,241−6の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−6と、PLL242−1,242−2,・・・,242−6で生成されたビット同期信号を用いて各トラックR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−6と、検出部243−1,243−2,・・・,243−6の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6と、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0110】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0111】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【0112】
この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号を再生する(ステップS201)。
【0113】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6にて、各再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6の出力の振幅レベルが調整された後、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6にてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS202)。
【0114】
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6より出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6ごとの再生信号に含まれる同期パターンが検出される(ステップS203)。
【0115】
次に、識別情報検出部232により、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンを検出し、識別情報を得る(ステップS204)。
【0116】
次に、再生信号ゲイン制御処理部233にて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のレベルを制御する(ステップS205)。
【0117】
次に、チャネル推定演算部234にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンの再生信号を用いて、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する(ステップS206)。
【0118】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベル調整された各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS207)。
【0119】
次に、信号分離演算部236にて、チャネル推定演算部234によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列を用いて、再生位置制御処理部235によって再生位置が揃えられた各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS208)。
【0120】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS209)、復元部260にて各トラックのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS210)。
【0121】
図6は、上記の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のトラックフォーマットの概念図である。
【0122】
ここで、M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたM本のトラック#1,#2,・・・,#6が1つのユニット51である。磁気記録メディア2には、このようなユニット51が、磁気記録メディア2のテープ幅方向に複数(s個)並べて記録されている。個々のユニット51の両側には、データが記録されていない領域であるガードバンド52が配置されている。ガードバンド52の目的は、再生中のユニットの隣のユニットからデータが再生されないようにすることにある。
【0123】
各トラック#1,#2,・・・,#6にはそれぞれ、データ22を再生する制御のために必要な情報であるプリアンブル21と、その再生対象であるデータ22が配置されている。ガードバンド52にはデータは記録されていないが、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むプリアンブルがトラックの進行する方向における所定の位置に記録されている。
【0124】
図7は図6のトラックフォーマットの詳細を示す図であり、図6の全体のトラックフォーマットから一つのユニット51とこのユニット51の両側に配置された2つのガードバンド52の部分をとりだして示したものである。
【0125】
同図に示すように、各トラック#1,#2,・・・,#6それぞれのプリアンブル21は第1のプリアンブル23と第2のプリアンブル24からなる。第1のプリアンブル23は、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、及び識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6からなる。第2のプリアンブル24は分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6で構成されている。各々のトラック#1,#2,・・・,#6には、先頭側より、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6の順に配置される。そして第2のプリアンブル24の後には再生対象であるデータ22が配置されている。
【0126】
一方、ガードバンド52には、第1のプリアンブル23の要素であるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,42−7、識別パターン43−0,43−7が記録され、再生の対象となるデータは記録されていない。
【0127】
トラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23のパターンはそれぞれ、同一ユニット内の他のトラックのプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならないように、互いにずらせて配置されている。すなわち、トラック#1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−1,同期パターン42−1,識別パターン43−1)はt1区間に、トラック#2の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−2,同期パターン42−2,識別パターン43−2)はt2区間に、トラック#3の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−3,同期パターン42−3,識別パターン43−3)はt3区間に、トラック#4の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−4,同期パターン42−4,識別パターン43−4)はt4区間に、トラック#5の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−5,同期パターン42−5,識別パターン43−5)はt5区間に、トラック#6の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−6,同期パターン42−6,識別パターン43−6)はt6区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。
【0128】
一方、各ガードバンド52に記録された第1のプリアンブル23のパターンであるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,42−7、識別パターン43−0,43−7もそれぞれ、トラック#1,#2,・・・,#6に記録されたプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならない位置、例えば、トラック#6のプリアンブル21のパターンの後のt7区間に配置されている。
【0129】
このように第1のプリアンブル23のパターンを配置したことによって、各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、隣り合うトラック間や、トラックとガードバンド52との間でのパターン同士による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、第1のプリアンブル23のパターンを用いた処理を良好に行うことができる。
【0130】
また、各トラック#1,#2,・・・,#6の第2のプリアンブル24である分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6も、他のトラックの分離パターンに対して、トラックの進行する方向での位置が互いに重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン44−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン44−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン44−3はT3区間に、トラック#4の分離パターン44−4はT4区間に、トラック#5の分離パターン44−5はT5区間に、トラック#6の分離パターン44−6はT6区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する6種類となる。隣り合うトラックの分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6どうしの間には、マージンのための所定の時間分の隙間40が設けられている。
【0131】
なお、分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0132】
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、再生時に、再生装置200内のゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6による再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6のゲイン制御のための学習信号として使用されるとともに、再生信号ゲイン制御処理部233による制御に用いられる。また、そのゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、必要に応じて、再生位置制御処理部235による制御のために使用される。さらにこのほか、必要に応じて、再生装置200内の同期信号検出部231によるビット同期検出の学習信号として使用される。
【0133】
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生装置200内の同期信号検出部231による同期パターンの検出に使用され、再生信号からの識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7、分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6、及びデータ22の先頭位置を知るための情報として使用される。さらには、その同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。
【0134】
各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7は、再生装置200内の識別情報検出部232によって検出されて、トラック及びガードバンドの識別情報を得るために使用されるとともに、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算のために使用される。さらには、その識別情報は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。
【0135】
各トラック#1,#2,・・・,#6に第2のプリアンブル24として配置されている分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6は、チャネル推定演算部234でのチャネル行列を求めるためのチャネル推定演算のために使用される。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0136】
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
【0137】
次に、図7に示したトラックフォーマットの変形例を示す。
【0138】
図8は、トラックフォーマットの変形列を示す図である。このトラックフォーマットは、6本のトラック#1,#2,・・・,#6に配置された第1のプリアンブル23のパターンをトラックの進行する方向において3つの区間t1,t2,t3に分けて配置し、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生される複数のトラックの第1のプリアンブル23のパターンが、トラックの進行する方向において互いにずれた位置に配置されたものとなるように、各トラック#1,#2,・・・,#6の第1のプリアンブル23のパターンの位置を決めたものである。
【0139】
すなわち、トラック#1及びトラック#4のプリアンブル21のパターンはt1区間に、トラック#2及びトラック#5の第1のプリアンブル23のパターンはt2区間に、トラック#3及びトラック#6の第1のプリアンブル23のパターンはt3区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。
【0140】
なお、第2のプリアンブル24の分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の配置は図7と同様である。また、ガードバンド52における第1のプリアンブル23のパターンの配置も図7と同様であり、ユニット51を構成するトラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならない、例えば、トラック#3,#6の第1のプリアンブル23のパターンの後のt4区間に配置されている。
【0141】
このようなトラックフォーマットによれば、図7に示したトラックフォーマットに比べ、第1のプリアンブル23のパターンによる磁気記録メディア2のトラックの進行する方向の消費量を低減することができ、記録効率の向上を図れる。
【0142】
ところで、図7及び図8のトラックフォーマットにおいて、ガードバンド52の第1のプリアンブルは、トラック#1,#2,・・・,#6の記録符号列に対して、トラックの進行する方向において異なる位置に配置されているが、これは本発明において必須の要件ではない。例えば、ガードバンド52の第1のプリアンブルに与えられている識別パターンをもとにガードバンド52の第1のプリアンブルの再生信号を判別できるようにすることで、いずれかのトラック#1,#2,・・・,#6の記録符号列に対して、トラックの進行する方向において同じ位置に配置してもよい。
【0143】
また、図8に示したように、トラックの進行する方向において同じ位置に複数のトラックの第1のプリアンブルを配置する場合には、これらの第1のプリアンブルが1つの再生ヘッドによって同時に再生されないようなフォーマットとする必要がある。図8のトラックフォーマットでは、上記の理由により、トラックの進行する方向において同じ位置に第1のプリアンブルを配置するトラックどうしの間隔は2トラックとしている。仮に間隔を1トラックとした場合には、1つの再生ヘッドによって、それらのトラックの第1のプリアンブルが同時に再生されてしまうため、間隔は2トラック以上とする必要がある。
【0144】
次に、図6に戻って、各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7の詳細を説明する。
【0145】
図6に示すように、識別情報は、例えば、ユニットを識別する例えば"1"から"s"までの番号と、ユニット内のトラックを識別する例えば"0"から"6"までの番号との組み合わせによって表現されている。例えば、"1_2"は、1番目のユニットの2番目のトラックであることを示す。なお、識別情報の表現上、ガードバンド52は同時に記録が行われたユニットに属するトラックとして扱われ、このガードバンド52のトラックを識別する番号には"0"が与えられている。したがって、例えば、"2_0"なら、2番目のユニットのトラックと同時に記録が行われたガードバンドであることを示す。また、磁気記録メディア2のテープ幅方向における一方からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われるので、最後のガードバンド#s+1は、s+1番目の実際には存在しないユニットに属するトラックとなるので、識別情報として(s+1)_0が与えられる。
【0146】
なお、ユニット数を最大8192とし、ユニット内のトラック数を最大8とした場合、識別情報を表現するビット数としては、ユニットを識別する番号に対して少なくとも13ビット、トラックを識別する番号に対して少なくとも3ビットをそれぞれ割り当てればよく、合計16ビットとなる。
【0147】
また、上記のように、ユニットに識別番号を与えるのではなく、ユニットを、例えばシステムフレームの単位としたり、エラー訂正フォーマットの単位としたりして、識別をするようにしてもよい。
【0148】
次に、図3の再生装置200における主要なブロックで行われる処理の詳細を説明する。
【0149】
(識別情報検出部232について)
【0150】
識別情報検出部232では、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、再生ヘッドごとの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定し、その識別パターンを検出して識別情報を出力する。
【0151】
一つの再生ヘッドがガードバンド52とトラックとを跨ぐ場合、同期信号検出部231によって、その再生ヘッドにより得られた再生信号からガードバンド52に対応する同期パターンとトラックに対応する同期パターンがそれぞれ異なる区間に検出され、ガードバンド52に対応する同期信号とトラックに対応する同期信号が得られる。識別情報検出部232は、それぞれの同期信号を用いて、ガードバンド52及びトラックの識別情報の先頭位置を特定して、それぞれの識別情報を検出する。
【0152】
(再生信号ゲイン制御処理部233について)
【0153】
図9は図8に示したトラックフォーマットの構成をモデル化した図である。同図において、23−0,23−1,・・・,23−7は、例えば、ゲイン制御パターン、同期パターン、及び識別パターンなどからなる第1のプリアンブル、44−1,44−2,・・・,44−6は第2のプリアンブルつまり分離パターンである。
【0154】
図10は、図9の記録データの再生信号を示した図であり、トラックオフセットが無い場合、つまり各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の中心が対応するトラックの中心と一致しているときの、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を示した図である。
【0155】
このとき、再生ヘッドR−1によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号1aと、トラック#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号1bと、ガードバンド#1の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号1dが得られる。
【0156】
再生ヘッドR−2によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号2bと、トラック#1の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号2aと、トラック#3の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号2cが得られる。
【0157】
再生ヘッドR−3によって、トラック#3の第1のプリアンブルの再生信号3cと、トラック#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号3bと、トラック#4の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号3aが得られる。
【0158】
再生ヘッドR−4によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号4aと、トラック#5の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号4bと、トラック#3の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号4cが得られる。
【0159】
再生ヘッドR−5によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号5bと、トラック#4の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号5aと、トラック#6の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号5cが得られる。
【0160】
再生ヘッドR−6によって、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号6cと、トラック#5の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号6bと、ガードバンド#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号6dが得られる。
【0161】
再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの信号をそれぞれ加算する。
【0162】
すなわち、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−1によってガードバンド#1、トラック#1、トラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号1d,1a,1bを加算する。
【0163】
同様に、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、トラック#3より再生されたゲイン制御パターンの信号2a,2b,2cを加算する。
【0164】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−3によってトラック#2、トラック#3、トラック#4より再生されたゲイン制御パターンの信号3b,3c,3aを加算する。
【0165】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−4によってトラック#3、トラック#4、トラック#5より再生されたゲイン制御パターンの信号4c,4a,4bを加算する。
【0166】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−5によってトラック#4、トラック#5、トラック#6より再生されたゲイン制御パターンの信号5a,5b,5cを加算する。
【0167】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−6によってトラック#5、トラック#6、ガードバンド#2より再生されたゲイン制御パターンの信号6b,6c,6dを加算する。
【0168】
ゲイン制御パターンの信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。
【0169】
このようにして得られた各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの演算結果は、再生信号ゲイン制御処理部233にて、それぞれの再生信号に対して個別に基準出力として使用される。たとえば、再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を、制御結果として出力する。
【0170】
各トラック間での信号記録特性にばらつきが無く、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の出力特性にもばらつきが無い場合、1a、2b、3c、4a、5b、6cの各再生信号の値は互いに同じであり、出力の小さい1d、2a、2c、3a、3b、4b、4c、5a、5c、6b、6dの各再生信号の値も互いに同じであるから、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの再生信号の加算結果は、いずれも同じ値となる。
【0171】
次に、トラックオフセットが発生した場合の再生信号の例を示す。図11は図10に対して、再生ヘッドアレイ210が図において上方にトラック幅のほぼ半分ずれ、一つの再生ヘッドが最大で2つのトラックに跨る場合の各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を示した図である。
【0172】
この場合、再生ヘッドR−1によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号1aとガードバンド#1の第1のプリアンブルの再生信号1dとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0173】
再生ヘッドR−2によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号2aとトラック#2の第1のプリアンブルの再生信号2bとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0174】
再生ヘッドR−3によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号3bとトラック#3の第1のプリアンブルの再生信号3cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0175】
再生ヘッドR−4によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号4aとトラック#3の第1のプリアンブルの再生信号4cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0176】
再生ヘッドR−5によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号5aと、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号5bとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0177】
再生ヘッドR−6によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号6bと、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号6cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0178】
再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−1によってトラック#1とガードバンド#1よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号1a,1dを加算する。
【0179】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−2によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号2a,2bを加算する。
【0180】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号3b,3cを加算する。
【0181】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−4によってトラック#4とトラック#3よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号4a,4cを加算する。
【0182】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−5によってトラック#4とトラック#5よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号5a,5bを加算する。
【0183】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−6によってトラック#5とトラック#6よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号6b,6cを加算する。
【0184】
本実施形態では、ガードバンドにゲイン制御パターンを含むプリアンブルを設けたことによって、上記のようなトラックオフセットが発生した場合においても、各再生ヘッドのゲイン制御パターンの再生信号の加算値は、各再生ヘッドの出力特性のばらつきに対応した値を得ることができる。
【0185】
ここで、ガードバンド#1に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが設けられていない場合を想定した場合、図11に示したように、再生ヘッドの位置が図において上方にずれて一つの再生ヘッドが最大で2つのトラックに跨る状態になったとき、再生ヘッドR−1のゲイン制御パターンの加算結果は正しい値の半分相当となり、少なくとも、再生ヘッドR−1の再生信号に対して、良好にゲイン制御を行うことが困難になる。本実施形態によれば、このような問題を解消することができる。
【0186】
なお、ゲイン制御パターンの信号の加算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
【0187】
また、基準出力を算出する他の方法として、再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の演算結果の中で最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対しての基準出力として用いて、ゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0188】
なお、基準出力は、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部236においても用いることができる。
【0189】
(チャネル推定演算部234について)
【0190】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6の先頭位置を特定して、これらの分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6の再生信号をもとにチャネル推定演算を行って、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離するために必要となるチャネル行列を生成する。この際、チャネル推定演算部234は、識別情報検出部232によって検出された各トラックの識別情報をもとに、各トラックそれぞれの分離パターンの先頭がどの位置にあるかを知ることができるので、再生信号から分離パターンの再生信号を精度良く判別することができ、チャネル推定演算を精度良く行うことができる。
【0191】
(再生位置制御処理部235について)
【0192】
再生位置制御処理部235は、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベル制御が行われた各再生ヘッドの再生信号を入力し、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。これにより、各再生ヘッドより取り込まれた各再生信号のトラックの進行する方向における再生位置が一致していなくても、各再生信号の再生位置を揃えて信号分離演算部236に入力することができ、安定したデータ再生を行うことができる。
【0193】
(信号分離演算部236について)
【0194】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234より出力されたチャネル行列をもとに所定の信号分離演算を行うことによって、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生され、再生位置制御処理部235により再生位置が揃えられた1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する。
【0195】
信号分離演算部236による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
【0196】
以上説明したように、この実施形態によれば、ガードバンドにゲイン制御パターンを含むプリアンブルを設けたことによって、再生時に、1つの再生ヘッドによってガードバンドとトラックとから同時に再生された各ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、この再生ヘッドごとの再生信号に対してゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するようにしたことで、トラックオフセットが発生した場合でも、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0197】
なお、上記の実施形態では、識別パターンは、ゲイン制御パターン、同期パターンに対して別個のパターンとして第1のプリアンブルに付加することとしたが、同期パターンに複数の種類のパターンを用意しておき、この同期パターンの個々の種類に識別情報を対応付けておくことで、同期パターンの検出と識別情報の取得とを同時に行うことができるようにしてもよい。また、第1のプリアンブルにおけるパターンの位置によって識別情報が得られるようにしてもよい。
【0198】
また、第1のプリアンブル23内に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターンの後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
【0199】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル24に配置されている分離パターンには同一のパターンを採用してもかまわない。
【0200】
さらに、記録時に、識別パターンなどの明示的な手法にてトラックの識別を可能とするのではなく、再生装置において、各々の同期パターンや分離パターンなどの固有パターンの、トラック上の位置によって、ユニット内のトラック及びガードバンドを識別するようにしてもよい。
【0201】
また、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,・・・,#6との再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、上記の実施形態では、図7、図8に示したような分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
【0202】
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
【0203】
さらに、上記の実施形態では、6行6列のチャネル行列を算出する場合を説明したが、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
【0204】
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
【0205】
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
【0206】
上記の実施形態では、磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する磁気記録再生方式について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えて再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。また、トラックごとに記録位置を揃えて信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えることなく再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。
【0207】
(第2の実施形態)
【0208】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生方式を説明する。
【0209】
この実施形態の磁気記録再生方式は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する方式である。
【0210】
図12は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置300の構成を示す図である。
【0211】
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとする。
【0212】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部190で構成される。
【0213】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で構成される。
【0214】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6と、トラックごとのプリアンブルが付加された記録データの符号列が記憶される記憶部132とで構成される。
【0215】
ガードバンド記録部190は、消去信号を発生する消去信号発生部161と、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むガードバンド用のプリアンブルを付加するプリアンブル付加部131−0と、ガードバンド用のプリアンブルが付加された消去信号を記憶する記憶部162とで構成される。
【0216】
マルチトラック記録部140は、記憶部132及び記憶部162から読み出す記録符号列を選択する切替部149と、切替部149によって選択された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプとで構成される。
【0217】
図13は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
【0218】
この記録装置300では、まず、トラック用の記録符号列の生成か、ガードバンド用の記録符号列の生成かによって処理を分岐させる(ステップS301)。これから行う処理がトラック用の記録符号列の生成である場合、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、1ユニット分のトラック数のデータに分配する(ステップS302)。
【0219】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS303)。
【0220】
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6にて、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、データ再生の制御に必要なプリアンブルのパターンが付加されて、トラック用の記録符号列が得られる(ステップS304)。このようにして生成されたトラック用の記録符号列は記憶部132に記憶される(ステップS305)。
【0221】
また、これから行う処理がガードバンド用の記録符号列の生成である場合、ガードバンド記録部190の消去信号発生部161より所定の単位分の消去信号が発生され(ステップS306)、プリアンブル付加部131−0によって、その消去信号に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンを含むガードバンド用のプリアンブルが付加されて(ステップS307)、記憶部162にガードバンド用の記録符号列として記憶される(ステップS308)。
【0222】
この後、切替部149によって、記憶部132に記憶されたトラックごとのトラック用の記録符号列及び記憶部162に記憶されたガードバンド用の記録符号列から、所定の順番で一つの記録符号列が読み出される(ステップS309)。次に、読み出されたトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後(ステップS310)、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS311)。
【0223】
この後、1ユニット分のトラックとガードバンドの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS312)、終了していなければ(ステップS312のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS313)。次に、ステップS309に戻って記憶部132または記憶部162からトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列が読み出されて、同様に磁気記録メディア2に記録する処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0224】
例えば、図7に示すトラックフォーマットを用いた場合には、はじめにガードバンド#1の記録を行い、次に、トラック#1の位置に移動してトラック#1の記録を行い、この後、同様にトラック#2,・・・,#6の位置に移動してそのトラックの記録を行う。ガードバンド#2の記録は次のユニットの記録サイクルにて記録されることになる。
【0225】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0226】
図14は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【0227】
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0228】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0229】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0230】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、及び信号分離演算部236、及び記憶部237を有している。
【0231】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225より出力された再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0232】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して検出し、識別情報を出力する。
【0233】
再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237からのスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
【0234】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231により検出された同期信号を用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定して、この分離パターンを用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算を行う。
【0235】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0236】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0237】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0238】
記憶部237は、同期信号検出器231の後方に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0239】
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−6と、等化器241−1,241−2,・・・,241−6の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−6と、PLL242−1,242−2,・・・,242−6で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−6と、検出部243−1,243−2,・・・,243−6の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6と、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0240】
図14に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0241】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部237には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号が記憶される。
【0242】
図15は、この再生装置400のユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【0243】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS402)。
【0244】
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225より出力された再生信号に含まれる同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、識別情報検出部232にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターンを用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別情報を得る(ステップS404)。識別情報検出部232を通過した再生信号は記憶部237に記憶される(ステップS405)。
【0245】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶されたかどうかを判断し(ステップS406)、1ユニット分の再生信号が記憶部237にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ407)、ステップS401からステップS405までの動作を繰り返す。
【0246】
1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237に記憶された1ユニット分のプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する(ステップS408)。
【0247】
次に、チャネル推定演算部234にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する(ステップS409)。
【0248】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS410)。
【0249】
次に、信号分離演算部236にて、チャネル推定演算部234によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列を用いて、再生信号ゲイン制御処理部233より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS411)。
【0250】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS412)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS413)。
【0251】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、同期信号検出部231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0252】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0253】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0254】
その具体例を以下に示す。
【0255】
図16は、例えば記録ヘッドアレイ150のように一体となった、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列53の間にはガードバンド52が配置される。
【0256】
トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0257】
図17は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン磁気記録では、回転するドラム上に複数のヘッドがそれぞれ独立に搭載されており、例えば複数の記録ヘッドと再生ヘッドが、回転するドラム上に交互に配置されている。
【0258】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列53となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0259】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データ再生のための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0260】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0261】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のトラックフォーマットの概念図である。
【図7】図6のトラックフォーマットの詳細を示す図である。
【図8】図7のトラックフォーマットの変形例を示す図である。
【図9】図8に示したトラックフォーマットの構成をモデル化した図である。
【図10】トラックオフセットが無い場合の、図9の記録データの再生信号を示した図である。
【図11】トラックオフセットが発生した場合の、図9の記録データの再生信号を示した図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図13】図12の記録装置によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図15】図14の再生装置のユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図16】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるトラックフォーマットの概念図である。
【図17】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である
【図18】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図19】図18の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図21】図20の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0263】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
23 第1のプリアンブル
24 第2のプリアンブル
41−0,41−1,・・・,41−7 ゲイン制御パターン
42−0,42−1,・・・,42−7 同期パターン
43−0,43−1,・・・,43−7 識別パターン
44−1,44−2,・・・,44−6 分離パターン
51 ユニット
52 ガードバンド
100 記録装置
110 マルチトラック化部
111 データ分配器
120 マルチトラック記録符号化部
121−1,121−2,・・・,121−6 記録符号化部
130 マルチトラックプリアンブル付加部
131−1,131−2,・・・,131−6 プリアンブル付加部
140 マルチトラック記録部
141−1,141−2,・・・,141−6 出力タイミング設定部
144−1,144−2,・・・,144−6 記録補償部
147−1,147−2,・・・,147−6 記録アンプ
150 記録ヘッドアレイ
160 ガードバンド記録部
161 消去信号発生部
131−0 プリアンブル付加部
141−0 出力タイミング設定部
144−0 記録補償部
147−0 記録アンプ
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,・・・,221−6 再生アンプ
224−1,224−2,・・・,224−6 ゲイン調整部
225−1,225−2,・・・,225−6 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 同期信号検出部
232 識別情報検出部
233 再生信号ゲイン制御処理部
234 チャネル推定演算部
235 再生位置制御処理部
236 信号分離演算部
240 マルチトラック復調部
260 復元部
261 データ結合器
W−0 ガードバンド記録用の記録ヘッド
W−1,W−2,・・・,W−6 記録ヘッド
R−1,R−2,・・・,R−6 再生ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に設けられた複数のトラックからデータを再生する再生装置、再生方法、記録再生装置、トラックフォーマット、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ヘッドにおいては、磁気記録メディアの大容量化を図るために、更なる高密度記録が求められ、トラックのトラック幅を狭くすること(以下、「狭幅化」という。)に適した磁気ヘッドが採用されるようになってきている。一般的には、トラックの狭幅化にはトラック・サーボの精度向上が鍵となる。
【0003】
磁気テープ記録再生装置においては、狭幅化に伴い、サーボが困難になる対策案として、所謂ノントラッキング・システムが提唱され、実用化に至っている(たとえば特許文献1−5など)。このノントラッキング方式は、ヘリカル・スキャンにてダブルアジマス記録を行ったトラックに対し、識別のために、ブロックに分けてデータを記録することによって、目的のトラックを1回のトレースで再生できなくても、データを再構成できるものである。このノントラッキング方式によって、従来のトラック・サーボで必要とされる1トラック以内のトラッキング制御に対して、4倍以上のマージンが許容されるようになる。
【0004】
また、ノントラッキング技術は、ヘリカル・スキャンに留まらずリニア記録で使用されるための可能性が検討されている(たとえば特許文献6,7など)。
【0005】
ところで、磁気記録メディアの基板に、たとえばポリエステルフィルムのような伸縮性をもった非磁性支持体を使用した場合、ダブルアジマス記録を行ったとしても、許容できる変形量はトラック・サーボを併用して、例えばトラック幅の2倍程度までであり、これ以上の変形が発生する場合は、十分なSN比をもって信号を再生することができなかった。また、ダブルアジマスを持たない記録の場合では、トラックをまたがない所謂ガードバンドの幅を、トラック・サーボを併用した状態でも、エラーレート等の信頼性を劣化させないために、テープの変形量以下に押さえ込む必要があった
【0006】
このような問題は、これまで実現されていた信号再生方式においては、少なくとも1つの再生ヘッドが同時に複数のトラックから信号を読み込むことによって信号品質が著しく劣化することに起因する。それを回避するために、ガードバンドやダブルアジマス記録を行い、また再生ヘッドからは1つのトラックからの信号のみを拾うように工夫されてきた。
【0007】
しかし、さらに高トラック密度化を行う場合においては、先ずガードバンドの設置はその妨げとなる。また、再生時において隣接するトラックからの干渉を少なくすることができるダブルアジマス記録は、狭幅化した場合その効果は減少してしまう。
【0008】
このことは、ノントラッキング方式であっても同じであり、再生ヘッドは複数のトラックに跨って信号を再生するように見えるが、時間分割した場合、再生している信号は常に1つのトラックに対してだけであり、同一時間に複数のトラックを再生するということは行っていなかった。
【0009】
また、ノントラッキング方式で高トラック密度化に対応しようとした際に、対象トラックの隣接するトラックからの信号を拾うことによってノイズが混入するようになるため、トラックの狭幅化対応が限界になってきている。
【0010】
磁気ヘッド装置の背景技術としてこのほか、記録密度を向上させるために、1つのブロックに複数のヘッドを配置し、同一アジマスのブロックで形成する方式として、一度に複数のデータ・フレームを記録する技術がある(たとえば特許文献8及び特許文献9など)。
【0011】
これらの公知技術は、再生ヘッド幅をトラックの幅の半分程度にしなければならなくなるため、再生信号の出力を大きくとることができないという制約が生じ、たとえばSN比の確保の点で不利であり、更なる高密度記録化には必ずしも向いていなかった。
【0012】
MIMO(Multi-Input/Multi-Output)技術は、無線通信に用いられるものとして広く知られている(たとえば特許文献10など)。
【0013】
また、MIMOに関する技術を磁気記録に使用する技術も知られている(たとえば非特許文献1など)。しかし、たとえば記録したトラックよりも広幅の再生ヘッドを使用する場合など、実用化に際して発生する課題が解決されていなかった。
【0014】
本発明においては、MIMOを使用した磁気記録方法としては前項で紹介した論文をもって実現しえなかった、磁気記録再生方法へのMIMO技術の実用化を実現するにあたり、公知技術からは予見しえなかった技術内容を明らかにするものである。
【特許文献1】特許1842057号公報
【特許文献2】特許1842058号公報
【特許文献3】特許1842059号公報
【特許文献4】特開平04−370580号公報
【特許文献5】特開平05−020788号公報
【特許文献6】特開平10−283620号公報
【特許文献7】特開2003−132504号公報
【特許文献8】特開2003−338012号公報
【特許文献9】特開2004−071014号公報
【特許文献10】特許3664993号公報
【非特許文献1】論文IEEE Trans.Mag.Vol.30.No.6 Nov.1994 5100ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように従来の磁気記録再生方式では、記録密度を高めるに磁気記録メディアでのトラック幅を狭くする方法が採用されてきた。しかし、このまま高記録密度を追い求めてトラック幅を狭くしていくと、再生時にトラックを追いきれなくなるという問題が生じる。そこで、トラックに対する再生ヘッドの位置が多少とも外れていても、そのトラックから信号を読み取ることができるノントラッキング方式が提案されている。しかしながら、ノントラッキング方式で適切に再生信号を得るためには、再生ヘッドの設定に厳しい制約が伴う。この面からトラック幅の狭小化による高記録密度化には限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、磁気記録メディアに記録ヘッドにより、データ検出のための信号処理の一単位である複数のトラックを記録し、磁気記録メディアの複数のトラックに跨って信号を再生することが可能な再生ヘッドにより、複数のトラックに対する信号を、複数のトラックに対して異なる位置関係で複数再生し、これら再生信号を一単位にまとめ、信号処理を行うことで、トラックごとの再生信号を生成するという方式を提案した。これによると、再生ヘッドの幅を決める制約が軽減し、トラック幅の狭小化、高記録密度化が可能である。
【0017】
図18は、上記の磁気記録再生方式を採用した記録装置800の構成を示す図である。
【0018】
同図に示すように、この記録装置800は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150で構成される。
【0019】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1を記録ヘッドアレイ150に設けられた記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0020】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,121−3で構成される。
【0021】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、トラックごとに特定のプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3で構成される。
【0022】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,144−3と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,147−3とで構成される。
【0023】
図19は、この記録装置800によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、まず、入力された記録データ1がマルチトラック化部110にて、記録ヘッドW−1,W−2,W−3の数(M=3)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配される(ステップS801)。
【0024】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS802)。
【0025】
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,131−3にて、ユニット単位のデータを再生する制御のために必要なパターンがプリアンブルとして付加され、記録符号列が得られる(ステップS803)。
【0026】
ここで、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置とは、連続して記録符号列が記録再生されることを考慮して決められた位置である。また、プリアンブルとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などに用いられる同期パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。ここで、1ユニット分の複数のトラックとは、データを再生するための信号処理の一単位を構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの開始位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,121−3で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0027】
それぞれのトラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,141−3にて所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,144−3にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。
【0028】
この後、トラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,147−3において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,W−3に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,W−3によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS804)。
【0029】
そして、以上の磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作は、トラックの進行する方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返される。
【0030】
次に、上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置について説明する。
【0031】
図20は上記の磁気記録再生方式を採用した再生装置900の構成を示す図である。
【0032】
同図に示すように、この再生装置900は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離部230、マルチトラック復調部240、及び復元部260を備える。
【0033】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=3)個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,R−3は、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0034】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,221−3と、N個の再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,224−3と、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3とを備える。
【0035】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0036】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0037】
信号分離部230は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力から同期パターンの検出を行う同期信号検出器231と、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算及び信号分離演算を行うことによって、複数の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によってそれぞれ再生された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する信号分離処理部236とを備える。
【0038】
マルチトラック復調部240は、信号分離処理部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,241−3と、等化器241−1,241−2,241−3の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,242−3と、PLL242−1,242−2,242−3で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出器などM個の検出器243−1,243−2,243−3と、検出器243−1,243−2,243−3の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期パターンを検出するM個の同期信号検出器244−1,244−2,244−3と、同期信号検出器244−1,244−2,244−3により検出された同期パターンをもとにデータの開始位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,245−3とを備える。
【0039】
復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,245−3より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0040】
図21は、この再生装置900のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。この再生装置900では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号が再生される(ステップS901)。
【0041】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3にて、各再生アンプ221−1,221−2,221−3の出力の振幅レベルが調整された後、ゲイン調整部224−1,224−2,224−3の出力はA/Dコンバータ225−1,225−2,225−3にてディジタル値に変換されて同期信号検出器231に出力される(ステップS902)。
【0042】
同期信号検出器231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,225−3の出力ごとに、プリアンブル内の分離パターンの開始位置などを知るための同期パターンの検出を行う(ステップS903)。
【0043】
次に、信号分離処理部236は、同期信号検出器231によって検出された同期信号をもとに分離パターンの開始位置を特定して、その分離パターンを用いてチャネル推定演算によって各再生ヘッドR−1,R−2,R−3と1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求めた後(ステップS904)、このチャネル行列を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,R−3によって再生された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する(ステップS905)。
【0044】
この後は、トラックごとの再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS906)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS907)。
【0045】
ところで、上記の磁気記録再生方式を採用する場合における、より安定した再生信号を得るための技術的課題として、例えば、再生時においてトラックオフセットなどの変動が発生した場合の再生信号の品質の低下があった。
【0046】
上記の磁気記録再生方式においては、ユニットを構成する複数のトラックにおける端のトラックは、隣のユニットとの再生時の干渉を防止するように設けられた、何も情報を持たないガードバンドと呼ばれるエリアと接しているため、この端のトラックを再生する際には、ガードバンド部分とともに当該端のトラックの情報が再生ヘッドによって再生される。
【0047】
再生ヘッドごとの再生出力のばらつきを低減するために、再生信号ごとにゲイン制御を行う場合において、例えば、再生ヘッドごとのゲイン制御パターンの再生信号に対して、ゲイン制御パターンごとの再生信号のピーク値の平均加算などの演算処理によって基準出力を求め、この基準出力を各再生ヘッドの再生信号に掛け合わせる。この時、ガードバンド部分を含めて端のトラックの再生を行う再生ヘッドの再生信号は、必ずしも正しい基準出力が得られず、所望のゲイン制御処理を行うことが困難であり、再生信号の品質が低下するという問題があった。また、ガードバンド部分を含めて端のトラックの再生を行う再生ヘッドの再生信号に対する所望のゲイン制御処理が困難であるという上記の問題は、トラックオフセットが発生した場合において、より顕著になる。
【0048】
本発明は、かかる事情を鑑み、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を安定して行うことができ、データ再生を良好に行うことのできる再生装置、再生方法、記録再生装置、トラックフォーマット、及び記録媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の課題を解決するために、本発明の再生装置は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部とを具備する。
【0050】
この発明によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、再生信号ゲイン制御処理部にて、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0051】
また、本発明の再生装置は、前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0052】
また、本発明の再生装置において、前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることとしてもよい。
【0053】
また、本発明の再生装置は、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部とをさらに具備するものであってもよい。
【0054】
また、本発明の再生装置は、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、スキャンごとの再生ヘッドの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0055】
本発明の別の観点に基づく再生方法は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側には前記データを有さないガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを設けておき、前記再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するステップを具備する。
【0056】
この発明の再生方法によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0057】
本発明の再生方法は、前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0058】
また、本発明の再生方法において、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることとしてもよい。
【0059】
また、本発明の再生方法において、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するステップと、前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離するステップとをさらに具備することとしてもよい。
【0060】
また、本発明の再生方法において、前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することとしてもよい。これにより、スキャンごとの再生ヘッドの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。
【0061】
本発明の別の観点に基づく記録再生装置は、複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、前記記録装置は、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にガードバンドとしてのトラックを記録するガードバンド記録部を具備し、前記再生装置は、前記再生ヘッドごとの前記プリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備する。
【0062】
この発明の記録再生装置によれば、再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0063】
本発明の別の観点に基づくトラックフォーマットは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが配置されたものである。
【0064】
この発明のトラックフォーマットによれば、ガードバンドとしてのトラックに、ユニットを構成するトラックと同様に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが配置されているので、再生装置の1つの再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0065】
また、本発明のトラックフォーマットにおいて、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むこととしてもよい。
【0066】
本発明の別の観点に基づく記録媒体は、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なプリアンブルが記録されたものである。
【0067】
この発明の記録媒体によれば、ガードバンドとしてのトラックに、ユニットを構成するトラックと同様に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが配置されているので、再生装置の1つの再生ヘッドにより、ガードバンドとしてのトラックのゲイン制御パターンとユニットを構成するトラックのゲイン制御パターンとを同時に再生し、各トラックのゲイン制御パターンの再生信号をもとに、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御することによって、再生時にトラックオフセットが発生した場合であっても、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0068】
また、本発明の記録媒体において、前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0069】
本発明によれば、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を安定して行うことができ、データ再生を良好に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0071】
(第1の実施形態)
【0072】
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。この実施形態の記録装置は、テープ状の磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録する装置であり、再生装置は、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する装置である。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとする。この実施形態では、M=6、N=6とする。
【0073】
図1は本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
【0074】
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部160で構成される。
【0075】
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1をM個分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
【0076】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で構成される。
【0077】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6で構成される。
【0078】
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−6と、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,・・・,144−6と、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6を駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−6とで構成される。
【0079】
記録ヘッドアレイ150は、磁気記録メディア2にデータを含むトラックを記録するために用いられるM個の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6と、データを含まないトラックをガードバンドとして記録するために用いられる1個の記録ヘッドW−0とを有している。
【0080】
ガードバンド記録部160は、ガードバンド記録用の記録ヘッドW−0を使って、データ再生の制御に必要なプリアンブルが付加されたガードバンドを磁気記録メディア2に記録する手段である。
【0081】
このガードバンド記録部160は、消去信号発生部161、プリアンブル付加部131−0、出力タイミング設定部141−0、記録補償部144−0、及び記録アンプ147−0を有している。
【0082】
消去信号発生部161は、ガードバンドに記録する消去信号を発生する手段である。消去信号には、例えば、最短記録波長以下の記録波長の繰り返し信号や、直流信号など、データの符号列に用いられない符号列が用いられる。
【0083】
プリアンブル付加部131−0は、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むガードバンド用のプリアンブルを付加する。
【0084】
出力タイミング設定部141−0は、プリアンブルが付加された消去信号の記録符号列に所望のタイミングを与える。記録補償部144−0は、出力タイミング設定部141−0の出力に対する記録補償処理を行う。記録アンプ147−0は、記録補償処理後のガードバンド用の記録符号列をもとに記録ヘッドW−0を駆動する。
【0085】
図2は、この記録装置100によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、データを含むM(M=6)本のトラックを記録する動作と1本のガードバンドを記録する動作とが切り替えて実行される。まず、これから行う記録の対象がガードバンドかトラックかを判断する(ステップS101)。
【0086】
これから行う記録の対象がトラックである場合には、次のように動作を行うように制御する。まず、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、トラック記録用の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6の数(M=6)のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配する(ステップS102)。
【0087】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS103)。
【0088】
次に、符号化されたそれぞれの記録データに、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6によって、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向にずれた位置関係で、データ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS104)。
【0089】
ここで、データを再生する制御のために必要なプリアンブルのパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、トラックを識別するための識別パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの先頭位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
【0090】
トラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−6にてそれぞれ所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,・・・,144−6にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施されたトラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−6において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6に送られ、記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS105)。
【0091】
一方、ステップS101で、これから行う記録の対象がガードバンドである場合には次のように動作を行うように制御する。まず、ガードバンド記録部160の消去信号発生部161から所定の単位分の消去信号が出力される(ステップS106)。次に、プリアンブル付加部131−0にて、消去信号の符号列にガードバンド用のプリアンブルが付加される(ステップS107)。
【0092】
プリアンブル付加部131−0より出力された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の出力タイミング設定部141−0にて所望のタイミングが与えられた後、ガードバンド記録部160内の記録補償部144−0にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の記録アンプ147−0において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−0に送られ、記録ヘッドW−0によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS108)。
【0093】
記録装置100は、以上のように、ユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録した後、記録ヘッドアレイ150を磁気記録メディア2のテープ幅方向に一定量移動して、同様に、次のユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録し、これを一定回数(s回)繰り返す。最終的には、例えば、図6に示すように、個々のユニット51の両側にガードバンド52が配置されてユニット51間にガードバンド52が介在するように、ガードバンド52の記録がユニット51の記録より一回多く実行される。すなわち、図6の例では、磁気記録メディア2の幅方向における一端からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われる。ここで、ガードバンド#s+1は、記録ヘッドアレイ150をトラック幅方向へ最後に移動した位置で、ガードバンド記録部160によってガードバンド52の記録のみを行うことによって作成されたものである。
【0094】
次に、本発明の一実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0095】
図3は本発明の一実施形態である磁気記録再生方式における再生装置200の構成を示す図である。
【0096】
同図に示すように、再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0097】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN(N=6)個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6を有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6は、磁気記録メディア2上で隣接する2以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
【0098】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6と、N個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6と、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6とを備える。
【0099】
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6の直前に、必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
【0100】
また、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6は、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6の前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
【0101】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、及び信号分離演算部236を有している。
【0102】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6より出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6ごとの再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0103】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターン情報を検出し、識別情報を出力する。
【0104】
再生信号ゲイン制御処理部233は、識別情報検出部232を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のレベルを制御する。
【0105】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231により検出された同期信号を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンの再生信号を用いて、所定のチャネル推定演算によって、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を求める。
【0106】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0107】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233より入力された各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0108】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0109】
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−6と、等化器241−1,241−2,・・・,241−6の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−6と、PLL242−1,242−2,・・・,242−6で生成されたビット同期信号を用いて各トラックR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−6と、検出部243−1,243−2,・・・,243−6の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6と、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0110】
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0111】
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【0112】
この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって、磁気記録メディア2の1ユニット分の複数のトラックから信号を再生する(ステップS201)。
【0113】
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6にて、各再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6の出力の振幅レベルが調整された後、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6にてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS202)。
【0114】
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−6より出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6ごとの再生信号に含まれる同期パターンが検出される(ステップS203)。
【0115】
次に、識別情報検出部232により、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンを検出し、識別情報を得る(ステップS204)。
【0116】
次に、再生信号ゲイン制御処理部233にて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号のレベルを制御する(ステップS205)。
【0117】
次に、チャネル推定演算部234にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンの再生信号を用いて、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する(ステップS206)。
【0118】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベル調整された各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS207)。
【0119】
次に、信号分離演算部236にて、チャネル推定演算部234によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列を用いて、再生位置制御処理部235によって再生位置が揃えられた各再生ヘッドR−1,R−2,R−3,R−4の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS208)。
【0120】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS209)、復元部260にて各トラックのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS210)。
【0121】
図6は、上記の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のトラックフォーマットの概念図である。
【0122】
ここで、M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたM本のトラック#1,#2,・・・,#6が1つのユニット51である。磁気記録メディア2には、このようなユニット51が、磁気記録メディア2のテープ幅方向に複数(s個)並べて記録されている。個々のユニット51の両側には、データが記録されていない領域であるガードバンド52が配置されている。ガードバンド52の目的は、再生中のユニットの隣のユニットからデータが再生されないようにすることにある。
【0123】
各トラック#1,#2,・・・,#6にはそれぞれ、データ22を再生する制御のために必要な情報であるプリアンブル21と、その再生対象であるデータ22が配置されている。ガードバンド52にはデータは記録されていないが、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むプリアンブルがトラックの進行する方向における所定の位置に記録されている。
【0124】
図7は図6のトラックフォーマットの詳細を示す図であり、図6の全体のトラックフォーマットから一つのユニット51とこのユニット51の両側に配置された2つのガードバンド52の部分をとりだして示したものである。
【0125】
同図に示すように、各トラック#1,#2,・・・,#6それぞれのプリアンブル21は第1のプリアンブル23と第2のプリアンブル24からなる。第1のプリアンブル23は、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、及び識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6からなる。第2のプリアンブル24は分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6で構成されている。各々のトラック#1,#2,・・・,#6には、先頭側より、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6の順に配置される。そして第2のプリアンブル24の後には再生対象であるデータ22が配置されている。
【0126】
一方、ガードバンド52には、第1のプリアンブル23の要素であるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,42−7、識別パターン43−0,43−7が記録され、再生の対象となるデータは記録されていない。
【0127】
トラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23のパターンはそれぞれ、同一ユニット内の他のトラックのプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならないように、互いにずらせて配置されている。すなわち、トラック#1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−1,同期パターン42−1,識別パターン43−1)はt1区間に、トラック#2の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−2,同期パターン42−2,識別パターン43−2)はt2区間に、トラック#3の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−3,同期パターン42−3,識別パターン43−3)はt3区間に、トラック#4の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−4,同期パターン42−4,識別パターン43−4)はt4区間に、トラック#5の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−5,同期パターン42−5,識別パターン43−5)はt5区間に、トラック#6の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−6,同期パターン42−6,識別パターン43−6)はt6区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。
【0128】
一方、各ガードバンド52に記録された第1のプリアンブル23のパターンであるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,42−7、識別パターン43−0,43−7もそれぞれ、トラック#1,#2,・・・,#6に記録されたプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならない位置、例えば、トラック#6のプリアンブル21のパターンの後のt7区間に配置されている。
【0129】
このように第1のプリアンブル23のパターンを配置したことによって、各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、隣り合うトラック間や、トラックとガードバンド52との間でのパターン同士による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、第1のプリアンブル23のパターンを用いた処理を良好に行うことができる。
【0130】
また、各トラック#1,#2,・・・,#6の第2のプリアンブル24である分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6も、他のトラックの分離パターンに対して、トラックの進行する方向での位置が互いに重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン44−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン44−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン44−3はT3区間に、トラック#4の分離パターン44−4はT4区間に、トラック#5の分離パターン44−5はT5区間に、トラック#6の分離パターン44−6はT6区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する6種類となる。隣り合うトラックの分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6どうしの間には、マージンのための所定の時間分の隙間40が設けられている。
【0131】
なお、分離パターン44−1,44−2,・・・,42−6は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
【0132】
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、再生時に、再生装置200内のゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−6による再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−6のゲイン制御のための学習信号として使用されるとともに、再生信号ゲイン制御処理部233による制御に用いられる。また、そのゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、必要に応じて、再生位置制御処理部235による制御のために使用される。さらにこのほか、必要に応じて、再生装置200内の同期信号検出部231によるビット同期検出の学習信号として使用される。
【0133】
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生装置200内の同期信号検出部231による同期パターンの検出に使用され、再生信号からの識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7、分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6、及びデータ22の先頭位置を知るための情報として使用される。さらには、その同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。
【0134】
各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7は、再生装置200内の識別情報検出部232によって検出されて、トラック及びガードバンドの識別情報を得るために使用されるとともに、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算のために使用される。さらには、その識別情報は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。
【0135】
各トラック#1,#2,・・・,#6に第2のプリアンブル24として配置されている分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6は、チャネル推定演算部234でのチャネル行列を求めるためのチャネル推定演算のために使用される。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,#3に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
【0136】
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の幅は、記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6のヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
【0137】
次に、図7に示したトラックフォーマットの変形例を示す。
【0138】
図8は、トラックフォーマットの変形列を示す図である。このトラックフォーマットは、6本のトラック#1,#2,・・・,#6に配置された第1のプリアンブル23のパターンをトラックの進行する方向において3つの区間t1,t2,t3に分けて配置し、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生される複数のトラックの第1のプリアンブル23のパターンが、トラックの進行する方向において互いにずれた位置に配置されたものとなるように、各トラック#1,#2,・・・,#6の第1のプリアンブル23のパターンの位置を決めたものである。
【0139】
すなわち、トラック#1及びトラック#4のプリアンブル21のパターンはt1区間に、トラック#2及びトラック#5の第1のプリアンブル23のパターンはt2区間に、トラック#3及びトラック#6の第1のプリアンブル23のパターンはt3区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。
【0140】
なお、第2のプリアンブル24の分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の配置は図7と同様である。また、ガードバンド52における第1のプリアンブル23のパターンの配置も図7と同様であり、ユニット51を構成するトラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならない、例えば、トラック#3,#6の第1のプリアンブル23のパターンの後のt4区間に配置されている。
【0141】
このようなトラックフォーマットによれば、図7に示したトラックフォーマットに比べ、第1のプリアンブル23のパターンによる磁気記録メディア2のトラックの進行する方向の消費量を低減することができ、記録効率の向上を図れる。
【0142】
ところで、図7及び図8のトラックフォーマットにおいて、ガードバンド52の第1のプリアンブルは、トラック#1,#2,・・・,#6の記録符号列に対して、トラックの進行する方向において異なる位置に配置されているが、これは本発明において必須の要件ではない。例えば、ガードバンド52の第1のプリアンブルに与えられている識別パターンをもとにガードバンド52の第1のプリアンブルの再生信号を判別できるようにすることで、いずれかのトラック#1,#2,・・・,#6の記録符号列に対して、トラックの進行する方向において同じ位置に配置してもよい。
【0143】
また、図8に示したように、トラックの進行する方向において同じ位置に複数のトラックの第1のプリアンブルを配置する場合には、これらの第1のプリアンブルが1つの再生ヘッドによって同時に再生されないようなフォーマットとする必要がある。図8のトラックフォーマットでは、上記の理由により、トラックの進行する方向において同じ位置に第1のプリアンブルを配置するトラックどうしの間隔は2トラックとしている。仮に間隔を1トラックとした場合には、1つの再生ヘッドによって、それらのトラックの第1のプリアンブルが同時に再生されてしまうため、間隔は2トラック以上とする必要がある。
【0144】
次に、図6に戻って、各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7の詳細を説明する。
【0145】
図6に示すように、識別情報は、例えば、ユニットを識別する例えば"1"から"s"までの番号と、ユニット内のトラックを識別する例えば"0"から"6"までの番号との組み合わせによって表現されている。例えば、"1_2"は、1番目のユニットの2番目のトラックであることを示す。なお、識別情報の表現上、ガードバンド52は同時に記録が行われたユニットに属するトラックとして扱われ、このガードバンド52のトラックを識別する番号には"0"が与えられている。したがって、例えば、"2_0"なら、2番目のユニットのトラックと同時に記録が行われたガードバンドであることを示す。また、磁気記録メディア2のテープ幅方向における一方からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われるので、最後のガードバンド#s+1は、s+1番目の実際には存在しないユニットに属するトラックとなるので、識別情報として(s+1)_0が与えられる。
【0146】
なお、ユニット数を最大8192とし、ユニット内のトラック数を最大8とした場合、識別情報を表現するビット数としては、ユニットを識別する番号に対して少なくとも13ビット、トラックを識別する番号に対して少なくとも3ビットをそれぞれ割り当てればよく、合計16ビットとなる。
【0147】
また、上記のように、ユニットに識別番号を与えるのではなく、ユニットを、例えばシステムフレームの単位としたり、エラー訂正フォーマットの単位としたりして、識別をするようにしてもよい。
【0148】
次に、図3の再生装置200における主要なブロックで行われる処理の詳細を説明する。
【0149】
(識別情報検出部232について)
【0150】
識別情報検出部232では、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、再生ヘッドごとの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定し、その識別パターンを検出して識別情報を出力する。
【0151】
一つの再生ヘッドがガードバンド52とトラックとを跨ぐ場合、同期信号検出部231によって、その再生ヘッドにより得られた再生信号からガードバンド52に対応する同期パターンとトラックに対応する同期パターンがそれぞれ異なる区間に検出され、ガードバンド52に対応する同期信号とトラックに対応する同期信号が得られる。識別情報検出部232は、それぞれの同期信号を用いて、ガードバンド52及びトラックの識別情報の先頭位置を特定して、それぞれの識別情報を検出する。
【0152】
(再生信号ゲイン制御処理部233について)
【0153】
図9は図8に示したトラックフォーマットの構成をモデル化した図である。同図において、23−0,23−1,・・・,23−7は、例えば、ゲイン制御パターン、同期パターン、及び識別パターンなどからなる第1のプリアンブル、44−1,44−2,・・・,44−6は第2のプリアンブルつまり分離パターンである。
【0154】
図10は、図9の記録データの再生信号を示した図であり、トラックオフセットが無い場合、つまり各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の中心が対応するトラックの中心と一致しているときの、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を示した図である。
【0155】
このとき、再生ヘッドR−1によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号1aと、トラック#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号1bと、ガードバンド#1の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号1dが得られる。
【0156】
再生ヘッドR−2によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号2bと、トラック#1の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号2aと、トラック#3の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号2cが得られる。
【0157】
再生ヘッドR−3によって、トラック#3の第1のプリアンブルの再生信号3cと、トラック#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号3bと、トラック#4の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号3aが得られる。
【0158】
再生ヘッドR−4によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号4aと、トラック#5の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号4bと、トラック#3の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号4cが得られる。
【0159】
再生ヘッドR−5によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号5bと、トラック#4の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号5aと、トラック#6の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号5cが得られる。
【0160】
再生ヘッドR−6によって、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号6cと、トラック#5の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号6bと、ガードバンド#2の第1のプリアンブルの出力の小さい再生信号6dが得られる。
【0161】
再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの信号をそれぞれ加算する。
【0162】
すなわち、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−1によってガードバンド#1、トラック#1、トラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号1d,1a,1bを加算する。
【0163】
同様に、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−2によってトラック#1、トラック#2、トラック#3より再生されたゲイン制御パターンの信号2a,2b,2cを加算する。
【0164】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−3によってトラック#2、トラック#3、トラック#4より再生されたゲイン制御パターンの信号3b,3c,3aを加算する。
【0165】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−4によってトラック#3、トラック#4、トラック#5より再生されたゲイン制御パターンの信号4c,4a,4bを加算する。
【0166】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−5によってトラック#4、トラック#5、トラック#6より再生されたゲイン制御パターンの信号5a,5b,5cを加算する。
【0167】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−6によってトラック#5、トラック#6、ガードバンド#2より再生されたゲイン制御パターンの信号6b,6c,6dを加算する。
【0168】
ゲイン制御パターンの信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。
【0169】
このようにして得られた各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの演算結果は、再生信号ゲイン制御処理部233にて、それぞれの再生信号に対して個別に基準出力として使用される。たとえば、再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を、制御結果として出力する。
【0170】
各トラック間での信号記録特性にばらつきが無く、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の出力特性にもばらつきが無い場合、1a、2b、3c、4a、5b、6cの各再生信号の値は互いに同じであり、出力の小さい1d、2a、2c、3a、3b、4b、4c、5a、5c、6b、6dの各再生信号の値も互いに同じであるから、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6のゲイン制御パターンの再生信号の加算結果は、いずれも同じ値となる。
【0171】
次に、トラックオフセットが発生した場合の再生信号の例を示す。図11は図10に対して、再生ヘッドアレイ210が図において上方にトラック幅のほぼ半分ずれ、一つの再生ヘッドが最大で2つのトラックに跨る場合の各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号を示した図である。
【0172】
この場合、再生ヘッドR−1によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号1aとガードバンド#1の第1のプリアンブルの再生信号1dとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0173】
再生ヘッドR−2によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号2aとトラック#2の第1のプリアンブルの再生信号2bとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0174】
再生ヘッドR−3によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号3bとトラック#3の第1のプリアンブルの再生信号3cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0175】
再生ヘッドR−4によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号4aとトラック#3の第1のプリアンブルの再生信号4cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0176】
再生ヘッドR−5によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号5aと、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号5bとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0177】
再生ヘッドR−6によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号6bと、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号6cとが、ほぼ同等な出力で得られる。
【0178】
再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−1によってトラック#1とガードバンド#1よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号1a,1dを加算する。
【0179】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−2によってトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号2a,2bを加算する。
【0180】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−3によってトラック#2とトラック#3よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号3b,3cを加算する。
【0181】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−4によってトラック#4とトラック#3よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号4a,4cを加算する。
【0182】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−5によってトラック#4とトラック#5よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号5a,5bを加算する。
【0183】
また、再生信号ゲイン制御処理部233は、再生ヘッドR−6によってトラック#5とトラック#6よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターンの信号6b,6cを加算する。
【0184】
本実施形態では、ガードバンドにゲイン制御パターンを含むプリアンブルを設けたことによって、上記のようなトラックオフセットが発生した場合においても、各再生ヘッドのゲイン制御パターンの再生信号の加算値は、各再生ヘッドの出力特性のばらつきに対応した値を得ることができる。
【0185】
ここで、ガードバンド#1に、ゲイン制御パターンを含むプリアンブルが設けられていない場合を想定した場合、図11に示したように、再生ヘッドの位置が図において上方にずれて一つの再生ヘッドが最大で2つのトラックに跨る状態になったとき、再生ヘッドR−1のゲイン制御パターンの加算結果は正しい値の半分相当となり、少なくとも、再生ヘッドR−1の再生信号に対して、良好にゲイン制御を行うことが困難になる。本実施形態によれば、このような問題を解消することができる。
【0186】
なお、ゲイン制御パターンの信号の加算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
【0187】
また、基準出力を算出する他の方法として、再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の演算結果の中で最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号に対しての基準出力として用いて、ゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0188】
なお、基準出力は、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部236においても用いることができる。
【0189】
(チャネル推定演算部234について)
【0190】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6の先頭位置を特定して、これらの分離パターン41−1,41−2,・・・,41−6の再生信号をもとにチャネル推定演算を行って、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離するために必要となるチャネル行列を生成する。この際、チャネル推定演算部234は、識別情報検出部232によって検出された各トラックの識別情報をもとに、各トラックそれぞれの分離パターンの先頭がどの位置にあるかを知ることができるので、再生信号から分離パターンの再生信号を精度良く判別することができ、チャネル推定演算を精度良く行うことができる。
【0191】
(再生位置制御処理部235について)
【0192】
再生位置制御処理部235は、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベル制御が行われた各再生ヘッドの再生信号を入力し、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。これにより、各再生ヘッドより取り込まれた各再生信号のトラックの進行する方向における再生位置が一致していなくても、各再生信号の再生位置を揃えて信号分離演算部236に入力することができ、安定したデータ再生を行うことができる。
【0193】
(信号分離演算部236について)
【0194】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234より出力されたチャネル行列をもとに所定の信号分離演算を行うことによって、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6によって再生され、再生位置制御処理部235により再生位置が揃えられた1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する。
【0195】
信号分離演算部236による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
【0196】
以上説明したように、この実施形態によれば、ガードバンドにゲイン制御パターンを含むプリアンブルを設けたことによって、再生時に、1つの再生ヘッドによってガードバンドとトラックとから同時に再生された各ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、この再生ヘッドごとの再生信号に対してゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するようにしたことで、トラックオフセットが発生した場合でも、再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン制御を良好に行うことができる。この結果、分離演算処理によって得られる再生信号の品質を向上させることができる。
【0197】
なお、上記の実施形態では、識別パターンは、ゲイン制御パターン、同期パターンに対して別個のパターンとして第1のプリアンブルに付加することとしたが、同期パターンに複数の種類のパターンを用意しておき、この同期パターンの個々の種類に識別情報を対応付けておくことで、同期パターンの検出と識別情報の取得とを同時に行うことができるようにしてもよい。また、第1のプリアンブルにおけるパターンの位置によって識別情報が得られるようにしてもよい。
【0198】
また、第1のプリアンブル23内に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターンの後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
【0199】
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル24に配置されている分離パターンには同一のパターンを採用してもかまわない。
【0200】
さらに、記録時に、識別パターンなどの明示的な手法にてトラックの識別を可能とするのではなく、再生装置において、各々の同期パターンや分離パターンなどの固有パターンの、トラック上の位置によって、ユニット内のトラック及びガードバンドを識別するようにしてもよい。
【0201】
また、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−6と1ユニット分の複数のトラック#1,#2,・・・,#6との再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、上記の実施形態では、図7、図8に示したような分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
【0202】
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
【0203】
さらに、上記の実施形態では、6行6列のチャネル行列を算出する場合を説明したが、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
【0204】
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
【0205】
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
【0206】
上記の実施形態では、磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する磁気記録再生方式について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えて再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。また、トラックごとに記録位置を揃えて信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えることなく再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。
【0207】
(第2の実施形態)
【0208】
次に、本発明の第2の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生方式を説明する。
【0209】
この実施形態の磁気記録再生方式は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する方式である。
【0210】
図12は、この第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置300の構成を示す図である。
【0211】
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとする。
【0212】
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部190で構成される。
【0213】
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6で構成される。
【0214】
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6と、トラックごとのプリアンブルが付加された記録データの符号列が記憶される記憶部132とで構成される。
【0215】
ガードバンド記録部190は、消去信号を発生する消去信号発生部161と、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンなどを含むガードバンド用のプリアンブルを付加するプリアンブル付加部131−0と、ガードバンド用のプリアンブルが付加された消去信号を記憶する記憶部162とで構成される。
【0216】
マルチトラック記録部140は、記憶部132及び記憶部162から読み出す記録符号列を選択する切替部149と、切替部149によって選択された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプとで構成される。
【0217】
図13は、この記録装置300のユニット記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
【0218】
この記録装置300では、まず、トラック用の記録符号列の生成か、ガードバンド用の記録符号列の生成かによって処理を分岐させる(ステップS301)。これから行う処理がトラック用の記録符号列の生成である場合、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、1ユニット分のトラック数のデータに分配する(ステップS302)。
【0219】
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−6にて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS303)。
【0220】
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−6にて、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、データ再生の制御に必要なプリアンブルのパターンが付加されて、トラック用の記録符号列が得られる(ステップS304)。このようにして生成されたトラック用の記録符号列は記憶部132に記憶される(ステップS305)。
【0221】
また、これから行う処理がガードバンド用の記録符号列の生成である場合、ガードバンド記録部190の消去信号発生部161より所定の単位分の消去信号が発生され(ステップS306)、プリアンブル付加部131−0によって、その消去信号に、ゲイン制御パターン、同期パターン及び識別パターンを含むガードバンド用のプリアンブルが付加されて(ステップS307)、記憶部162にガードバンド用の記録符号列として記憶される(ステップS308)。
【0222】
この後、切替部149によって、記憶部132に記憶されたトラックごとのトラック用の記録符号列及び記憶部162に記憶されたガードバンド用の記録符号列から、所定の順番で一つの記録符号列が読み出される(ステップS309)。次に、読み出されたトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後(ステップS310)、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS311)。
【0223】
この後、1ユニット分のトラックとガードバンドの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS312)、終了していなければ(ステップS312のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS313)。次に、ステップS309に戻って記憶部132または記憶部162からトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列が読み出されて、同様に磁気記録メディア2に記録する処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
【0224】
例えば、図7に示すトラックフォーマットを用いた場合には、はじめにガードバンド#1の記録を行い、次に、トラック#1の位置に移動してトラック#1の記録を行い、この後、同様にトラック#2,・・・,#6の位置に移動してそのトラックの記録を行う。ガードバンド#2の記録は次のユニットの記録サイクルにて記録されることになる。
【0225】
次に、本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
【0226】
図14は本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
【0227】
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260を備える。
【0228】
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
【0229】
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
【0230】
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、及び信号分離演算部236、及び記憶部237を有している。
【0231】
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225より出力された再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
【0232】
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して検出し、識別情報を出力する。
【0233】
再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237からのスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
【0234】
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231により検出された同期信号を用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定して、この分離パターンを用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算を行う。
【0235】
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
【0236】
信号分離演算部236は、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233より入力された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
【0237】
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
【0238】
記憶部237は、同期信号検出器231の後方に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
【0239】
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−6と、等化器241−1,241−2,・・・,241−6の出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−6と、PLL242−1,242−2,・・・,242−6で生成されたビット同期信号を用いてトラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−6と、検出部243−1,243−2,・・・,243−6の出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6と、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−6により検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6とを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
【0240】
図14に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−6より出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
【0241】
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部237には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号が記憶される。
【0242】
図15は、この再生装置400のユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【0243】
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で複数のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS402)。
【0244】
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225より出力された再生信号に含まれる同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、識別情報検出部232にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターンを用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別情報を得る(ステップS404)。識別情報検出部232を通過した再生信号は記憶部237に記憶される(ステップS405)。
【0245】
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶されたかどうかを判断し(ステップS406)、1ユニット分の再生信号が記憶部237にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップ407)、ステップS401からステップS405までの動作を繰り返す。
【0246】
1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237に記憶された1ユニット分のプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する(ステップS408)。
【0247】
次に、チャネル推定演算部234にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いて、スキャンごとの再生ヘッドR−1と複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算する(ステップS409)。
【0248】
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターン及び識別情報検出部232によって得られた識別情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS410)。
【0249】
次に、信号分離演算部236にて、チャネル推定演算部234によって得られたチャネル行列の逆行列を演算し、この逆行列を用いて、再生信号ゲイン制御処理部233より出力された1ユニット分の再生信号から、トラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS411)。
【0250】
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS412)、復元部260にてトラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS413)。
【0251】
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、同期信号検出部231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
【0252】
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
【0253】
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
【0254】
その具体例を以下に示す。
【0255】
図16は、例えば記録ヘッドアレイ150のように一体となった、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列53の間にはガードバンド52が配置される。
【0256】
トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0257】
図17は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン磁気記録では、回転するドラム上に複数のヘッドがそれぞれ独立に搭載されており、例えば複数の記録ヘッドと再生ヘッドが、回転するドラム上に交互に配置されている。
【0258】
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6が用いられている。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6とは、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列53となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
【0259】
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データ再生のための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
【0260】
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
【0261】
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0262】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図2】図1の記録装置によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図4】図3の再生装置の中のマルチトラック復調部の構成を示す図である。
【図5】図3の再生装置によるユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア上のトラックフォーマットの概念図である。
【図7】図6のトラックフォーマットの詳細を示す図である。
【図8】図7のトラックフォーマットの変形例を示す図である。
【図9】図8に示したトラックフォーマットの構成をモデル化した図である。
【図10】トラックオフセットが無い場合の、図9の記録データの再生信号を示した図である。
【図11】トラックオフセットが発生した場合の、図9の記録データの再生信号を示した図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置の構成を示す図である。
【図13】図12の記録装置によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第2の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置の構成を示す図である。
【図15】図14の再生装置のユニット再生の動作を示すフローチャートである。
【図16】複数の記録ヘッドを用いてノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディアに記録されるトラックフォーマットの概念図である。
【図17】複数の記録ヘッドを用いてダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるトラックフォーマットの概念図である
【図18】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した記録装置の構成を示す図である。
【図19】図18の記録装置によるユニット記録の動作を示すフローチャートである。
【図20】本発明者らが過去に提案した磁気記録再生方式を採用した再生装置の構成を示す図である。
【図21】図20の再生装置のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0263】
1 記録データ
2 磁気記録メディア
3 再生データ
21 プリアンブル
22 データ
23 第1のプリアンブル
24 第2のプリアンブル
41−0,41−1,・・・,41−7 ゲイン制御パターン
42−0,42−1,・・・,42−7 同期パターン
43−0,43−1,・・・,43−7 識別パターン
44−1,44−2,・・・,44−6 分離パターン
51 ユニット
52 ガードバンド
100 記録装置
110 マルチトラック化部
111 データ分配器
120 マルチトラック記録符号化部
121−1,121−2,・・・,121−6 記録符号化部
130 マルチトラックプリアンブル付加部
131−1,131−2,・・・,131−6 プリアンブル付加部
140 マルチトラック記録部
141−1,141−2,・・・,141−6 出力タイミング設定部
144−1,144−2,・・・,144−6 記録補償部
147−1,147−2,・・・,147−6 記録アンプ
150 記録ヘッドアレイ
160 ガードバンド記録部
161 消去信号発生部
131−0 プリアンブル付加部
141−0 出力タイミング設定部
144−0 記録補償部
147−0 記録アンプ
200 再生装置
210 再生ヘッドアレイ
220 チャネル再生部
221−1,221−2,・・・,221−6 再生アンプ
224−1,224−2,・・・,224−6 ゲイン調整部
225−1,225−2,・・・,225−6 A/Dコンバータ
230 信号分離処理部
231 同期信号検出部
232 識別情報検出部
233 再生信号ゲイン制御処理部
234 チャネル推定演算部
235 再生位置制御処理部
236 信号分離演算部
240 マルチトラック復調部
260 復元部
261 データ結合器
W−0 ガードバンド記録用の記録ヘッド
W−1,W−2,・・・,W−6 記録ヘッド
R−1,R−2,・・・,R−6 再生ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、
前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部と
を具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることを特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部と
をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生装置。
【請求項6】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側には前記データを有さないガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを設けておき、前記再生ヘッドごとの前記ブリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するステップを具備することを特徴とする再生方法。
【請求項7】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生方法。
【請求項8】
請求項7に記載の再生方法であって、
前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることを特徴とする再生方法。
【請求項9】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するステップと、
前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離するステップと
をさらに具備することを特徴とする再生方法。
【請求項10】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生方法。
【請求項11】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、
前記記録装置は、
前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にガードバンドとしてのトラックを記録するガードバンド記録部を具備し、
前記再生装置は、
前記再生ヘッドごとの前記ブリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備することを特徴とする記録再生装置。
【請求項12】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが配置されていることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項13】
請求項12に記載のトラックフォーマットであって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むことを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項14】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項15】
請求項14に記載の記録媒体であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むことを特徴とする記録媒体。
【請求項1】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する装置であって、
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドと、
前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部と
を具備することを特徴とする再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記再生信号ゲイン制御処理部は、前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることを特徴とする再生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するチャネル推定演算部と、
前記チャネル推定演算部によって求められた前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離する信号分離演算部と
をさらに具備することを特徴とする再生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の再生装置であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生装置。
【請求項6】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側には前記データを有さないガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録された記録媒体から前記データを再生する方法であって、
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを設けておき、前記再生ヘッドごとの前記ブリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御するステップを具備することを特徴とする再生方法。
【請求項7】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で信号を再生可能なように前記再生ヘッドを複数備え、前記複数の再生ヘッドのうち、少なくとも1つの再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生方法。
【請求項8】
請求項7に記載の再生方法であって、
前記再生ヘッドごとの前記ゲイン制御パターンの再生信号に対して、加算を含む所定の演算によって、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得ることを特徴とする再生方法。
【請求項9】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンを有し、
前記ユニットごとの前記分離パターンの再生信号をもとに、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するステップと、
前記チャネル行列をもとに、前記再生ヘッドによって再生され、前記再生信号ゲイン制御処理部にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号から、前記トラックごとの再生信号を分離するステップと
をさらに具備することを特徴とする再生方法。
【請求項10】
請求項6に記載の再生方法であって、
前記ユニット内の各トラックに対してそれぞれ異なる位置関係で前記ユニットをスキャン再生可能なように前記再生ヘッドがトラック幅方向に移動可能に設けられ、少なくとも、一回のスキャン時に前記再生ヘッドは、前記ユニットを構成する前記複数のトラックのうち一部のトラックの前記ゲイン制御パターンと前記ガードバンドとしてのトラックの前記ゲイン制御パターンとを同時に再生することを特徴とする再生方法。
【請求項11】
複数のトラックに跨って信号を再生可能な再生ヘッドを有する再生装置と、この再生装置によってデータ再生が可能となるように、記録媒体に、記録ヘッドにより、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを記録する記録装置とを有する記録再生装置であって、
前記記録装置は、
前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にガードバンドとしてのトラックを記録するガードバンド記録部を具備し、
前記再生装置は、
前記再生ヘッドごとの前記ブリアンブルの再生信号をもとに、前記再生ヘッドごとの再生信号に対するゲイン情報を得て、当該再生信号のレベルを制御する再生信号ゲイン制御処理部を具備することを特徴とする記録再生装置。
【請求項12】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが配置されていることを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項13】
請求項12に記載のトラックフォーマットであって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むことを特徴とするトラックフォーマット。
【請求項14】
データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックを有し、前記ユニットの前記トラックの幅方向の両側にはガードバンドとしてのトラックが配置され、前記各トラックにはそれぞれ、ゲイン制御のためのゲイン制御パターンを含む、データ再生に必要なブリアンブルが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【請求項15】
請求項14に記載の記録媒体であって、
前記ユニットを構成する前記各トラックのプリアンブルは、前記再生ヘッドと前記複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要な分離パターンをさらに含むことを特徴とする記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−37665(P2009−37665A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198943(P2007−198943)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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