説明

再生装置

【課題】 デジタル回路によって情報信号に同期したタイミングで正確に再生データを検出する。
【解決手段】 記録媒体から情報信号を再生する再生手段と、前記再生手段により再生された情報信号を前記情報信号の周波数よりも高い所定の周波数のクロックに応じてサンプリングして第1のデジタル信号に変換する変換手段と、前記変換手段から出力された第1のデジタル信号中のサンプル数を増加させ、第2のデジタル信号を生成するオーバーサンプル手段と、前記再生手段により再生された情報信号の周波数と前記情報信号の位相変動量とに基づいて、前記第2のデジタル信号から隣接した二つのサンプルを選択し、前記選択したサンプルのデジタル信号を用いて再生データを生成する再生データ検出手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再生装置に関し、特に、記録媒体に記録された情報信号に同期した再生データを検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DVDなどの光ディスクに対してデータを記録再生する装置が知られている。
【0003】
また、ビデオカメラ用として、直径8cmの小径ディスクが開発され、この様な8cmディスクに対して映像、音声を記録するビデオカメラも登場している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、近年、DVDからのデータの読み出し速度は、規格で定められた速度の2倍速や4倍速が一般的となり、更に、8倍速、16倍速のものも登場している。
【特許文献1】特開2003−101926
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスクビデオカメラなどのディスク装置では、ディスクに記録した信号を再生する際、再生信号に同期したクロックを生成し、このクロックを用いて再生データをデジタル信号に変換し、元のデータを復元する。
【0006】
再生信号をデジタル信号に変換する際、AD変換器が必要になる。AD変換を行う場合、不要な帯域を低減するためのプレフィルタが必要になる。
【0007】
しかしながら、前述の様に、DVDからのデータ読み出し速度が変わると再生データの周波数も変化するため、それに応じてプレフィルタの帯域も変える必要がある。
【0008】
そのため、異なるデータ再生速度で再生された信号をデジタル信号に変換し、元のデータを検出するためには、各再生倍速に対応したアナログのプレフィルタを複数用意する必要があるという問題があった。
【0009】
本発明はこの様な問題を解決し、回路規模やコストを抑えながら、デジタル回路によって情報信号に同期したタイミングで正確に再生データを検出することが可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、記録媒体から情報信号を再生する再生手段と、前記再生手段により再生された情報信号を前記情報信号の周波数よりも高い所定の周波数のクロックに応じてサンプリングして第1のデジタル信号に変換する変換手段と、前記変換手段から出力された第1のデジタル信号中のサンプル数を増加させ、第2のデジタル信号を生成するオーバーサンプル手段と、前記再生手段により再生された情報信号の周波数と前記情報信号の位相変動量とに基づいて、前記第2のデジタル信号から隣接した二つのサンプルを選択し、前記選択したサンプルのデジタル信号を用いて再生データを生成する再生データ検出手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デジタル回路によって情報信号に同期したタイミングで正確に再生データを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態における再生装置の構成を示す図である。
【0013】
図1において、ディスクDは光ディスクであり、本実施形態ではDVDである。ピンドルモータ107は、ディスクDを所定速度で回転させる。本実施形態では、ディスクDを規格で決められた速度の4倍の速度で回転させてデータを読み取る4倍速再生モード、及び、2倍速で回転させてデータを再生する2倍速再生モードを持つものとする。これらのモードは、ユーザが切り替えることもできるが、装置が自動的に切り替える構成でもよい。
【0014】
103はレーザドライバであり、スプリッタ102、レンズ101を介してディスクDに対してレーザビームをディスクDに照射する。ディスクDからの反射光がスプリッタ102により受光センサ104に送られる。受光センサ104は、反射光を受け、電気信号に変換してデータ検出部105に送る。データ検出部105は受光センサからの出力信号から、デジタルデータを検出して再生処理部106に送る。本実施形態では、動画データや音声データが圧縮符号化されてディスクDに記録されている。再生処理部106はデータ検出部105により検出されたデジタルデータから画像データや音声データなどの情報データを復元して出力する。108はシステム制御部であり、不図示の操作スイッチからのユーザの指示に応じて装置の各部を制御する。また、システム制御部108は、ディスクDの再生倍速に応じてスピンドルモータ107の回転速度を制御すると共に、データ検出部105に対し、再生倍速に応じた再生データの中心周波数情報を出力する。
【0015】
次に、データ検出部105について説明する。
【0016】
図2はデータ検出部105の構成を示す図である。
【0017】
図において、受光センサ104からの信号がプレフィルタ201に入力され、不要な周波数帯域の成分、ここでは高周波数成分が除去される。このプレフィルタ201は、次段のAD変換器202でAD変換する際に高域の折り返しが出ないように、AD変換器202におけるサンプリング周波数の半分以上の周波数帯域を除去しておくためのアンチエイリアスフィルタである。
【0018】
AD変換器202は、プレフィルタ201によりフィルタ処理された再生信号を基準クロックに従ってサンプリングし、1サンプルnビット(nは2以上の整数)デジタル信号に変換してデジタルフィルタ203に出力する。本実施形態において、4倍速再生時でのプレフィルタ201に入力される再生信号の周波数は101.6MHzであり、2倍速再生時においては4倍速再生時の半分である50.8MHzである。また、AD変換器202には、基準クロック発生部209により生成された108MHzの基準クロックが供給されており、AD変換器202はこの108MHzのクロックに従ってプレフィルタ201からの信号をサンプリングする。
【0019】
なお、本実施形態では、AD変換器202に供給するクロックの周波数を、4倍速再生時における再生信号の周波数である101.6MHzよりも若干高い周波数で、且つ、13.5の整数倍である108MHzとした。
【0020】
デジタルフィルタ203は、AD変換器202からのデジタルデータに対し、以下を目的としてフィルタ処理を行う。
(1)不要な高域を落とす。
(2)デジタルデータのサンプル数を増加させ、次段の補間部204で必要な4倍オーバーサンプルデータを生成する。
【0021】
まず、(1)について、図7を用いて模式的に説明する。
【0022】
図7の701は、プレフィルタ201の周波数特性を示す図である。702に示した様に、プレフィルタ201は、AD変換器202のサンプリング周波数である108MHzの半分の54MHz以上の帯域を低減している。
【0023】
また、図7の702は、後述の様に、AD変換後、デジタルフィルタ203、及び補間部204による処理を通じた周波数特性を示している。補間部204から出力されるデータの周波数特性は、51MHz以上の帯域が低減されている。なお、再生データの周波数は前記の通り101.6MHzであるため、AD変換後、デジタルフィルタ203、及び補間部204による処理を通じた周波数特性は、厳密には50.8MHz以上を低減する特性であればよい。
【0024】
次に、(2)の点について説明する。
【0025】
本実施形態では、次段の補間部203において、基準クロックに従いAD変換されたデータから、再生信号に同期したクロックのタイミングに応じた位置の再生データを生成する。そのため、AD変換器202から出力されたデジタルデータのサンプル数を増加させる。具体的には、AD変換器202からのデジタルデータにおける二つのサンプル間に三つのサンプルを挿入した4倍オーバーサンプルのデジタルデータを生成する。
【0026】
図4を用いてこの様子を説明する。
【0027】
図4(a)は、AD変換器202からの二つのサンプル間に三つのサンプルを挿入した様子を示している。図中の白丸はAD変換器202からの出力データで、黒丸が挿入したサンプルである。ただし、図4(a)では、挿入したサンプルの値は0である。そして、AD変換器202からの出力サンプル(白丸)を用いて演算(補間)し、この様に挿入されたサンプル(黒丸)の値を求める。
【0028】
図4(b)はこの様に補間演算した結果を示す図である。
【0029】
図4(b)に示すA,C,Dの三つのサンプル値が、複数のAのサンプル値を用いて求められる。
【0030】
図3はこの様な処理を行うデジタルフィルタ203の構成を示す図である。
【0031】
図3に示した様に、デジタルフィルタ203は、10タップのFIRフィルタを並列に四つ並べた構成となっている。ただし、本実施形態では、後述の様に、2倍速再生時には20タップのFIRフィルタを四つ並べた構成とするため、実際には、この20タップのFIRフィルタの一部の係数を0に設定することで、10タップのFIRフィルタを実現している。また、各FIRフィルタをnタップの構成とし、タップ数、及びタップ係数は再生信号の周波数に応じて適宜設定することが可能である。
【0032】
そして、AD202から出力されたデジタルデータの各サンプルが、四つのFIRフィルタ301〜304に対し、それぞれ出力される。
【0033】
各FIRフィルタのタップ係数は、それぞれ、図4(b)におけるサンプルA,B,C,Dの位置に対応して設定されている。そして、各FIRフィルタは入力されたサンプル(ここでは連続した10個のサンプル)値を用いて演算を行い、それぞれ、図4(b)におけるサンプルA,B,C,Dの値を算出する。その結果、FIRフィルタ301〜304からは、図4(b)における一つの白丸と三つの黒丸からなるサンプルA〜Dが同時に出力される。
【0034】
これにより、AD変換器202を実際に108MHz×4=432MHzで動作させること無く、基準クロックの4倍の周波数でサンプリングしてAD変換した結果と等しいオーバーサンプルデータを得ることができる。
【0035】
図8の801は、補間部203におけるフィルタ特性を示す図である。
【0036】
デジタルフィルタ203により生成されたデジタルデータは、4系列(チャンネル)のデータとして補間部204に出力される。
【0037】
補間部204には再生データの他に、システム制御部108からの再生クロックの中心周波数情報と、ループフィルタ208からの周波数変動の情報が与えられている。そして、これらの周波数情報を用いて、再生データに同期したクロックのタイミングを算出し、算出したクロックタイミングにおける再生データを生成する。
【0038】
図5は補間部204の構成を示す図である。
【0039】
図5において、デジタルフィルタ203から並列に出力された四つのサンプルA〜Dは、セレクタ501と502に供給される。ただし、サンプルAだけは遅延部504により1クロック期間遅延されてセレクタ502に供給される。
【0040】
変換部508は、システム制御部108からの再生倍速に応じた再生クロックの中心周波数情報から、ループフィルタ208からの周波数変動の情報を減算し、更に周波数の逆数に変換する。これにより、次のクロックタイミングまでの間隔Δtを算出し、加算部506に出力する。
【0041】
変換部508に出力される周波数情報は、後述の様に、再生信号に位相同期したクロックの周波数変動を示す情報である。この周波数情報をクロックタイミングの情報に変換することにより、再生データの位相変動に同期したクロックタイミングを得ることができる。
【0042】
加算部506のもう一方の入力には、レジスタ507からの位置情報が入力される。レジスタ507は、108MHzの基準クロック位置からの前回の再生データの位置情報が格納されており、加算部506はこれらを加算して区間判別部505に出力する。
【0043】
具体的には、加算部505は、レジスタ507の値と変換部508からの値を加算した和から、基準クロック期間に対応した所定値を減算した結果を出力する。
【0044】
区間判別部505は、再生データのクロックタイミングがサンプルA〜Dを両端とする4系列データのどの区間に入っているかを判別する。そして、サンプルA〜Dのうち、判定した当該区間の両端のサンプルを選択して線形補間部503に出力するよう、2ビットの制御信号をセレクタ501、502に出力する。また、判定結果に従い、更新されたクロックタイミングの基準クロックからの時間情報を算出してレジスタ507に出力する。
【0045】
更に、区間判別部505は、判定した区間と、基準クロックからの時間情報とに従い、セレクタ501、502からのサンプル値を用いて補間演算を行う際に用いる比率を線形補間部503に出力する。
【0046】
更に、区間判別部505は、基準クロック間に再生データのクロックタイミングが存在するか否かに応じて、クロックイネーブルの信号を出力する。
【0047】
次に、図5の補間部204の動作の様子を、図6を用いて説明する。
【0048】
図6において、図4と同様、白丸がAD変換部202から出力されたサンプリングデータ、黒丸がデジタルフィルタ203により生成された4倍オーバーサンプリングデータである。また、601、602の三角が、再生データとして検出すべきサンプルであるとする。また、ts1〜ts5は108MHzの基準クロックのタイミングであり、t1、t2はそれぞれ、4倍速再生時において再生データに位相同期したクロックによる再生データの位置(タイミング)を示している。
【0049】
今、検出データ602を生成しようとしているものとする。
【0050】
この場合、レジスタ507には、基準クロックのタイミングtsからの前回のデータ検出点t1の時間差A1を示す値が保持されている。そして、変換部508によりループフィルタ208からの周波数情報の逆数を演算することで、再生データのクロック期間Δtを求め、t1にΔtを加えることで、再生データに同期した次のクロックタイミングt2を求める。その結果、レジスタ207の値は、基準クロックタイミングtsとt2との差であるA2の値に更新される。
【0051】
また、区間判別部505は、このA2の値に基づいて、再生データの位置が、基準クロックの期間606におけるどの区間に存在するかを判別する。
【0052】
具体的には、基準クロックの区間606を、その間に含まれた隣接する二つのサンプルで四つの区間I〜IVに区切る。そして、再生データの位置t2が、この四つの区間の何れに含まれるかを判別する。
【0053】
図6では、区間IVに含まれていることがわかる。
【0054】
そこで、区間IVの隣接したサンプル604、605をセレクタ501、502により選択する。そして、これらのサンプル値を、再生データの位置に応じた比率で合成することにより線形補間し、再生データの検出タイミングにおけるデータ604の値を算出する。
【0055】
同様に、再生データに同期したクロックの次のタイミングはt3となり、検出データ603の値が算出される。この時、基準クロックts3とts4の間には再生データのクロック点が無いので、クロックがディスエーブルされる。608はクロックイネーブル/ディスエーブルを示す2値信号であり、この2値信号608が図2のビタビ検出部205、復調部206、位相検出部207、ループフィルタ208に出力される。これら各回路は、クロックイネーブル期間だけ動作する。
【0056】
4倍速再生時においては、再生データのクロック周波数が101.6MHzであり、一方、AD変換時の基準クロック周波数は108MHzである。そのため、108MHzのクロックタイミングのうち、数クロックに1回、再生データのクロックタイミングが存在しない期間がある。図6では、607がその期間に相当する。
【0057】
図2に戻って説明を続ける。
【0058】
補間部204により検出されたデータはビタビ復号部305と位相検出部207に出力される。また、再生データの検出タイミングで無い場合にクロックをディスエーブルする信号を生成し、ビタビ復号部205、復調部206、位相検出部207、及びループフィルタ208に出力する。
【0059】
ビタビ復号部205は、補間部204から出力された再生データから1サンプル1ビットの2値デジタルデータを検出し、復調部206に出力する。復調部206は再生データに対して所定の復調処理を施して、図1の再生処理部106に出力する。
【0060】
また、位相検出部207は、補間部204から出力された、再生データに同期したクロック点での再生信号レベルに基づいて、再生した情報信号の位相変動量を検出し、ループフィルタ208に出力する。ループフィルタ208は、位相検出部207の出力をラグリード積分処理することにより周波数情報に変換し、補間部204に出力する。このように、補間部204、位相検出部207、ループフィルタ208により、再生データに同期したクロックを生成するためのPLLが構成されている。
【0061】
ここまでは、ディスクDを4倍速で回転させて信号を再生する場合について説明してきた。次に、ディスクDからのデータ読み取り速度を2倍速とした場合について考える。
【0062】
データ読み取り速度が2倍速になると、再生信号の周波数も4倍速再生のときの半分になる。
【0063】
即ち、4倍速再生時においては、再生信号の周波数は101.6MHzであったため、2倍速再生時においては、50.8MHzとなる。
【0064】
そのため、AD変換器が50.8MHzで再生信号をサンプリングした場合、プレフィルタは50.8MHzの半分である25.4MHz以上の帯域を抑圧しなければならないことになる。
【0065】
しかし、本実施形態では、2倍速再生時においても、AD変換器202に対しては、4倍速再生時と同様、108MHzの基準クロックを供給する。そのため、プレフィルタ201の通過帯域は、4倍速再生時と同様、54MHzでよい。
【0066】
一方、2倍速再生時には、4倍速再生時に対してデジタルフィルタ203と補間部204の処理を変更する。
【0067】
本実施形態では、2倍速再生時においても、デジタルフィルタは108MHzの基準クロックに従って動作する。そのため、4倍速再生時に比べ、フィルタの特性を狭帯域にする必要がある。そこで、デジタルフィルタ203を、四つの20タップのFIRフィルタで構成する。
【0068】
各FIRフィルタのタップ係数は、それぞれ、図4(b)におけるサンプルA,B,C,Dの位置に対応して設定されている。そして、各FIRフィルタは入力されたサンプル(ここでは連続した20個のサンプル)値を用いて演算を行い、それぞれ、図4(b)におけるサンプルA,B,C,Dの値を算出する。その結果、FIRフィルタ301〜304からは、4倍速再生時と同様に、図4(b)における一つの白丸と三つの黒丸からなるサンプルA〜Dが同時に出力される。
【0069】
なお、本実施形態では、4倍速再生時と2倍速再生時とで、デジタルフィルタ203を兼用する。即ち、2倍速再生用の20タップのFIRフィルタのタップ係数を適宜変更することで、4倍速再生用の10タップのFIRフィルタを実現することができる。
【0070】
図7の703は、2倍速再生時における、AD変換器202、デジタルフィルタ203、及び補間部204を通じた周波数特性を示す図である。
【0071】
また、補間部204については、システム制御部108から供給される中心周波数情報が4倍速再生時と異なる。しかし、基準クロック期間を四つの区間に分割し、再生データのクロックタイミングが、この四つの区間の何れに含まれるかを判別する構成は同様である。
【0072】
図9は、2倍速再生時における補間部204の処理を説明するための図である。
【0073】
図9において、図4、図6と同様、白丸がAD変換部202から出力されたサンプリングデータ、黒丸がデジタルフィルタ203により生成された4倍オーバーサンプリングデータである。また、901、902の三角が、再生データとして検出すべきサンプルであるとする。また、ts1〜ts5は108MHzの基準クロックのタイミングであり、t1、t2はそれぞれ、再生データに位相同期したクロックによる再生データの検出位置を示している。2倍速再生時においては、再生データの周波数は50.8MHzであるとする。
【0074】
今、検出データ902を生成しようとしているものとする。
【0075】
この場合、レジスタ507には、基準クロックのタイミングtsからの前回のデータ検出点t1の時間差A1を示す値が保持されている。そして、変換部508により再生クロック周波数の逆数を演算することで、再生データのクロック期間Δtを求める。t1にΔtを加えることで、再生データに同期した次のクロックタイミングt2を求める。その結果、レジスタ207の値は、基準クロックタイミングtsとt2との差であるA2の値に更新される。
【0076】
また、この時、基準クロックts2とts3の間には再生データのクロック点が無いので、クロックがディスエーブルされる。907はクロックイネーブル/ディスエーブルを示す2値信号であり、この2値信号907が図2のビタビ検出部205、復調部206、位相検出部207、ループフィルタ208に出力される。これら各回路は、クロックイネーブル期間だけ動作する。
【0077】
また、区間判別部505は、このA2の値に基づいて、再生データのクロックタイミングが、基準クロックの期間905におけるどの区間に存在するかを判別する。
【0078】
具体的には、基準クロックの区間905を、その間に含まれた隣接する二つのサンプルで四つの区間I〜IVに区切る。そして、再生データのクロックタイミングt2が、この四つの区間の何れに含まれるかを判別する。
【0079】
図9では、区間Iに含まれていることがわかる。
【0080】
従って、区間Iの両隣接サンプル903、904をセレクタ501、502により選択し、これらのサンプル値を線形補間演算することにより、再生データの検出タイミングにおけるデータ902の値を算出する。
【0081】
同様に、再生データに同期したクロックの次のタイミングはt3となる。
【0082】
この時、基準クロックts4とts5の間には再生データのクロック点が無いので、クロックがディスエーブルされる。
【0083】
2倍速再生時においては、再生データのクロック周波数が50.8MHzであり、一方、AD変換時の基準クロック周波数は108MHzである。そのため、108MHzのクロックタイミングのうち、ほぼ2クロックに1回、再生データのクロックタイミングが存在しない期間がある。図9では、906、908がディスエーブル期間に相当する。
【0084】
この様に、本実施形態においては、再生データの周波数よりも高い所定周波数の基準クロックに従って再生データをAD変換している。
【0085】
そして、AD変換後のデータのサンプル数を増加させ、このオーバーサンプリングデータのうち、再生データに同期したクロック点に隣接する二つのサンプルを補間演算することで、再生データのサンプル値を算出している。
【0086】
そのため、2倍速再生時と4倍速再生時の何れにおいても、AD変換器のプレフィルタを共通に使用することが可能となる。
【0087】
また、再生信号の周波数が基準クロック周波数よりも低ければ、どのような周波数であってもAD変換器のサンプリング周波数が固定であるので、AD変換器のプレフィルタを共通に使用することが可能となる。
【0088】
例えば、ディスクDからの再生速度を4倍速として、その再生信号周波数101.6MHzに基づいてAD変換器の動作周波数を設定した上で、AD変換器をデジタル信号処理用のLSIに内蔵することが考えられる。
【0089】
その場合、AD変換器の動作周波数を、2倍速再生時に50.8MHzに下げても消費電力はそれほど下がらない。これは、高速の処理に対応するために、AD変換器内部の各所が高電流タイプのトランジスタを使ってしまっていることによるので、ある程度避けることができない。
【0090】
この様に、AD変換器の動作周波数を下げることによるメリットがあまり無い。そこで、本実施形態では、AD変換器のクロックを変えずに、同じ基準周波数でAD変換器を動作させることで、アナログ回路であるプレフィルタをシンプルにし、帯域制限はデジタル回路側で行うことした。
【0091】
これにより、全体としてローコスト化、省電力化、省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態における再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】データ検出部の構成を示す図である。
【図3】デジタルフィルタの構成を示す図である。
【図4】デジタルフィルタによる4倍オーバーサンプルデータの生成の様子を示す図である。
【図5】補間部の構成を示す図である。
【図6】補間部による区間判別処理を示す図である。
【図7】プレフィルタの周波数特性を示す図である。
【図8】オーバーサンプリングデータの周波数特性を示す図である。
【図9】補間部による区間判別処理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体から情報信号を再生する再生手段と、
前記再生手段により再生された情報信号を前記情報信号の周波数よりも高い所定の周波数のクロックに応じてサンプリングして第1のデジタル信号に変換する変換手段と、
前記変換手段から出力された第1のデジタル信号のサンプル数を増加させ、第2のデジタル信号を生成するオーバーサンプル手段と、
前記再生手段により再生された情報信号の周波数と前記情報信号の位相変動量とに基づいて、前記第2のデジタル信号から隣接した二つのサンプルを選択し、前記選択したサンプルのデジタル信号を用いて再生データを生成するデータ検出手段とを備える再生装置。
【請求項2】
前記データ検出手段は、前記再生手段により再生された情報信号の周波数と前記情報信号の位相変動量とに基づき、前記第2のデジタル信号における前記再生データの位置を判別し、前記判別した位置に基づいて前記二つのサンプルを選択することを特徴とする請求項1記載の再生装置。
【請求項3】
前記データ検出手段は、前記選択した二つのサンプルのデジタル信号を前記判別した位置に応じた比率で合成することにより前記再生データを生成することを特徴とする請求項1または2記載の再生装置。
【請求項4】
前記データ検出手段から出力された再生データに応じて前記再生された情報信号の位相変動量を検出する位相検出手段を備えたことを特徴とする請求項2または3記載の再生装置。
【請求項5】
第1の速度で前記情報信号を再生する第1のモードと、前記1の速度よりも速い第2の速度で前記情報信号を再生する第2のモードを有し、前記変換手段は、前記第1のモードと第2のモードの何れにおいても前記所定の周波数のクロックに応じて再生された情報信号をサンプリングすることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の再生装置。
【請求項6】
前記オーバーサンプリング手段は前記第1のデジタル信号をフィルタ処理してサンプル数を増加させるnタップのフィルタを有し、前記第1のモードと第2のモードとで、前記フィルタの周波数特性を変更することを特徴とする請求項5記載の再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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