説明

再送信方法および再送信装置

【課題】可変レートが適用されたTS(Transport Stream)の再送信においてネットワークに対する負荷を軽減する。
【解決手段】可変の転送レートが適用されたTSパケットを入力し、データ放送の一連のTSパケットであるデータ放送TSを前記入力したTSパケットから抽出し、前記抽出したデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築し、前記抽出したデータ放送TSから転送レートの変動を表すレート情報を周期的に検出し、検出ごとに、当該レート情報が表す変動を平坦化した設定レートを求め、前記再構築したデータからTSパケットを形成して前記設定レートに基づく出力レートにより送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル放送のTS(Transport Stream)を再送信する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル放送波の送出に用いる転送レートは、固定的に設定されるCBR(Constant Bit Rate)と、可変のVBR(Variable Bit Rate)とに大別される。後者のVBRを利用することにより、配信データの多様な表現が可能になると共に、伝送帯域の有効利用を図ることができる。
【0003】
地上波ディジタル放送のサービスの一つに、いわゆるIP再送信サービスがある。これは、放送局等から受信した放送波を復調して得られるTSを、IPネットワーク上でマルチキャスト通信により配信し直すというサービスである。IPネットワークで使用できる帯域には制限があることから、再送信にあたっては、IPネットワークに対する負荷を抑えることが望まれる。
【0004】
IP再送信におけるネットワークの負荷を考慮した技術が、例えば、後述の特許文献1に記載されている。同文献に記載の再送信装置は、受信したTSから不要なNULLパケットを除去すると共に、そのTSの通信パラメータに対応した規定のビットレートをISDB−T準拠のレート表から求め、当該ビットレートでTSの再送信を行うというものである。ここでは、不要なNULLパケットの除去により、IPネットワークに対する負荷の軽減が図られている。
【特許文献1】特開2007−214946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、TSの転送レートに、可変レート(VBR)が適用される場合、TSによっては、使用帯域が回線の上限に達することもある。上記特許文献1の技術にあっては、元の転送レートが固定(CBR)であり、再送信にも同じレートがそのまま適用される。よって、同文献の技術に可変レートを適用した場合、上記のような比較的高い転送レートもそのまま再送信に適用されることから、IPネットワークに対する負荷を軽減に難いという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、可変レートが適用されたTSの再送信において、ネットワークに対する負荷を軽減するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る再送信方法は、可変の転送レートが適用されたTSパケットを入力し、データ放送の一連のTSパケットであるデータ放送TSを前記入力したTSパケットから抽出し、前記抽出したデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築し、前記抽出したデータ放送TSから転送レートの変動を表すレート情報を逐次検出し、前記レート情報の検出ごとに、当該レート情報が表す変動を平坦化して成る設定レートを求め、前記再構築したデータからTSパケットを形成し、且つ、当該形成したTSパケットを前記設定レートに基づく出力レートにより送信するという方法である。
【0008】
本発明に係る再送信装置は、可変の転送レートが適用されたTSパケットを入力する手段と、データ放送の一連のTSパケットであるデータ放送TSを前記入力したTSパケットから抽出する手段と、前記抽出したデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築する手段と、前記抽出したデータ放送TSから転送レートの変動を表すレート情報を逐次検出し、前記レート情報の検出ごとに、当該レート情報が表す変動を平坦化して成る設定レートを求める手段と、前記再構築したデータからTSパケットを形成し、且つ、当該形成したTSパケットを前記設定レートに基づく出力レートにより送信する手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可変レートが適用されたTSの再送信において、ネットワークに対する負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、本発明の実施形態の構成を示す。再送信装置100は、ディジタル放送波の受信機であるTS−IRD(TS Integrated Receiver / Decoder)200から入力された可変レート(VBR)のTSパケットを、IPマルチキャスト通信によりIPネットワーク300へ再送信する装置である。図示の構成では、再送信装置100およびTS−IRD200が別個の装置であるが、両者を一体化したものを再送信装置(100)としてもよい。
【0011】
TS−IRD200は、放送局等から受信したディジタル放送波を復調して一連のTSパケットに変換し、それを再送信装置100へ順次入力する。
【0012】
再送信装置100は、図1に示すように、分配器10、SI(Service Information)解析回路11、TSフィルタリング回路12、カルーセル構築回路13、イベントメッセージ処理回路14、レート検出回路15、TSパケット化回路16を備える。
【0013】
分配器10は、TS−IRD200からのTSパケットをSI解析回路11およびTSフィルタリング回路12へ分配する。
【0014】
SI解析回路11は、TSパケットのPSI(Program Specific Information)監視機能およびストリーム監視機能を有し、データ放送で使用されているPID(Packet Identifier)がTSパケットに含まれているか否かを検知する。その結果、データ放送のPIDが検出された場合は、その情報をTSフィルタリング回路12へ通知する。
【0015】
TSフィルタリング回路12は、データ放送に関し通知されたPID情報を用いて、データ放送のTSパケットであるデータ放送TSを、分配器10が入力したTSパケットから抽出する。そして、抽出したデータ放送TSをカルーセル構築回路13,イベントメッセージ処理回路14,レート検出回路15のそれぞれに供給する。
【0016】
カルーセル構築回路13は、データ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築し、それをTSパケット化回路16へ供給する。
【0017】
イベントメッセージ処理回路14は、データ放送TSにおけるイベントメッセージの有無を検知する。イベントメッセージがある場合は、それをデータ放送TSから抽出し、PCR(Program Clock Reference)同期を行ったうえでTSパケット化回路16へ供給する。
【0018】
レート検出回路15は、データ放送TSの転送レートの変動を表すレート情報を、PCRのようなタイムスタンプ情報などを用いて逐次検出する。そして、レート情報の検出ごとに、後述の設定レートを求め、それをTSパケット化回路16へ順次供給する。
【0019】
TSパケット化回路16は、カルーセル構築回路13およびイベントメッセージ処理回路14により供給されたデータからTSパケットを形成し、それを、レート検出回路15からの設定レートに基づく出力レートでIPネットワーク300へ送信する。
【0020】
図2に示すフローチャートに沿って、再送信装置100の動作を説明する。分配器10は、TS−IRD200からのTSパケットをSI解析回路11およびTSフィルタリング回路12へ入力する(ステップS1)。SI解析回路11は、各TSパケットのPIDを確認し、データ放送に対応するPIDの情報をTSフィルタリング回路12へ供給する(ステップS2)。
【0021】
TSフィルタリング回路12は、SI解析回路11からのPID情報を用いたフィルタリングにより、TSパケットからデータ放送TSを抽出し、それをカルーセル構築回路13,イベントメッセージ処理回路14,レート検出回路15のそれぞれに供給する(ステップS3)。
【0022】
カルーセル構築回路13は、TSフィルタリング回路12からのデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築し、それをTSパケット化回路16へ供給する(ステップS4)。イベントメッセージ処理回路14は、データ放送TSにおけるイベントメッセージの有無を確認し(ステップS5)、イベントメッセージがある場合は、それをデータ放送TSから抽出する(ステップS6)。そして、抽出したメッセージを、PCR同期を経てTSパケット化回路16へ供給する。
【0023】
一方、レート検出回路15は、データ放送TSの転送レートの変動を表す前述のレート情報を周期的に検出する(ステップS7)。これにより、可変レート(VBR)の状況をほぼリアルタイムに検知することができる。また、レート検出回路15は、レート情報の検出ごとに、そのレート情報が表す変動を平坦化することで、TSパケット化回路16へ供給すべき設定レートを求める(ステップS8)。
【0024】
ここで、レート情報および設定レートについて具体的に説明する。図3に、TSパケットのレート情報を波形により模式的に示す。図示の[1]は、TSフィルタリング回路12に入力されたTSパケットのトータルの転送レートを表す。[1]の段階のTSパケットには、データ放送TSの他に、映像のようなデータ放送以外のTSパケットも含まれている。その後、TSフィルタリング回路12により、上記のTSパケットのうちのデータ放送TSがレート検出回路15へ供給される。
【0025】
図3の[2]は、レート検出回路15によりデータ放送TSから検出されたレート情報を表す。図示の例では、レート情報が周期P(期間:p1, p2, …)で検出されている。本実施形態のレート検出回路15は、各期間において、漸増後に漸減する変動を検知し、それを平坦化することで設定レートを求める。
【0026】
具体的には、例えば、[2]の期間p1の場合、時刻t1〜t2ではレートが漸減するが、その後の時刻t2〜t3では、漸増後に漸減するという隆起状の変動がみられる。このような場合、漸減のみの時刻t1〜t2の変動はそのままとし、続く時刻t2〜t3の変動を、期間p1の最小値により平坦化、すなわち、ここでは時刻t2での値により平坦化する。その結果、期間p1の設定レートとしては、同図[3]に示すように、時刻t1〜t2で漸減した後、時刻t2での値が時刻t3まで固定されたものが得られる。
【0027】
レート検出回路15は、上記のようにして求めた設定レートをTSパケット化回路16へ順次供給する。TSパケット化回路16は、供給された設定レートに基づく出力レートで、カルーセル構築回路13やイベントメッセージ処理回路14からのデータをTSパケット化してIPネットワーク300へ送出する(図2:ステップS9)。このとき、イベントメッセージ処理回路14からのデータについては、優先的に送出するようにする。
【0028】
本実施形態によれば、データ放送TSの転送レートにおいて漸増後に漸減するという隆起状の変動が平坦化されることから、隆起のピークにあたる比較的高いレートを低く抑えることができる。これにより、再送信の際のIPネットワーク300に対する負荷を軽減することができる。また、再送信の出力レートは、常に固定値が適用されるCBRではなく、元の可変レート(VBR)を反映した疑似的な固定レートであるから、VBRのサービス品質が損なわれることを防ぐこともできる。
【0029】
なお、設定レートを求める際の平坦化処理は、上記の形態に限らず、例えば、期間の最小値あるいは平均値を設定レートとしてもよい。この場合、一連の設定レートの波形は、図3の[3]のように曲線を含むものではなく、元のVBRに応じて期間ごとに値が切り替わるという矩形波になる。
【0030】
また、再送信の出力レートとしては、レート検出回路15からの設定レートをそのまま適用してもよいが、予め設定した範囲内で適用するようにしてもよい。例えば、TSパケット化回路16に出力レートの上限値を設定しておき、レート検出回路15からの設定レートに上限を超えるものが含まれる場合は、そのレートを上限のレートに置き換える。これにより、IPネットワーク300に対する負荷が一層軽減される。
【0031】
本発明は、上記実施形態のようなIP再送信に限らず、IPネットワーク(300)以外のネットワークへ、ディジタル放送波を再送信するという用途にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の動作手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態におけるレート情報に関する説明図である。
【符号の説明】
【0033】
100 再送信装置
200 TS−IRD
300 IPネットワーク
10 分配器
11 SI解析回路
12 TSフィルタリング回路
13 カルーセル構築回路
14 イベントメッセージ処理回路
15 レート検出回路
16 TSパケット化回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変の転送レートが適用されたTS(Transport Stream)パケットを入力し、
データ放送の一連のTSパケットであるデータ放送TSを前記入力したTSパケットから抽出し、
前記抽出したデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築し、
前記抽出したデータ放送TSから転送レートの変動を表すレート情報を逐次検出し、
前記レート情報の検出ごとに、当該レート情報が表す変動を平坦化して成る設定レートを求め、
前記再構築したデータからTSパケットを形成し、且つ、当該形成したTSパケットを前記設定レートに基づく出力レートにより送信することを特徴とする再送信方法。
【請求項2】
前記設定レートを求めるとき、対象のレート情報において転送レートが漸増後に漸減する変動を当該レート情報の最小値で平坦化することを特徴とする請求項1記載の再送信方法。
【請求項3】
前記設定レートを求めるとき、対象のレート情報の最小値または平均値を当該設定レートとすることを特徴とする請求項1記載の再送信方法。
【請求項4】
さらに、前記抽出したデータ放送TSにおけるイベントメッセージの有無を検知し、当該イベントメッセージがある場合は、それを含むTSパケットを形成して優先的に送信することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の再送信方法。
【請求項5】
可変の転送レートが適用されたTS(Transport Stream)パケットを入力する手段と、
データ放送の一連のTSパケットであるデータ放送TSを前記入力したTSパケットから抽出する手段と、
前記抽出したデータ放送TSをカルーセル形式のデータに再構築する手段と、
前記抽出したデータ放送TSから転送レートの変動を表すレート情報を逐次検出し、前記レート情報の検出ごとに、当該レート情報が表す変動を平坦化して成る設定レートを求める手段と、
前記再構築したデータからTSパケットを形成し、且つ、当該形成したTSパケットを前記設定レートに基づく出力レートにより送信する手段とを備えることを特徴とする再送信装置。
【請求項6】
前記設定レートを求める手段は、対象のレート情報において転送レートが漸増後に漸減する変動を当該レート情報の最小値で平坦化することを特徴とする請求項5記載の再送信装置。
【請求項7】
前記設定レートを求める手段は、対象のレート情報の最小値または平均値を当該設定レートとすることを特徴とする請求項5記載の再送信装置。
【請求項8】
さらに、前記抽出したデータ放送TSにおけるイベントメッセージの有無を検知し、当該イベントメッセージがある場合は、それを前記データ放送TSから抽出する手段を備え、
前記TSパケットを送信する手段は、前記抽出したイベントメッセージを含むTSパケットを形成して優先的に送信することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の再送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−118836(P2010−118836A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289801(P2008−289801)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】