説明

冶金用コークスの篩い分け方法、冶金用コークスの篩設備

【課題】設備費用の増大を抑制しつつ、付着粉の除去効率を向上させる。
【解決手段】冶金用コークスAを篩2にかけ、小中塊コークスBと粉コークスCとに篩い分ける際に、送風器3によって篩2に空気を吹きかける。送風器3は、傾斜下流側から上段の篩2に対して空気を吹きかけるように配置されており、送風器3の風圧は、小中塊コークスBの転がりを許容し、且つ粉コークスCを吹飛ばせる程度とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄プロセスにおいて、原料となる冶金用コークスから粉を事前除去する冶金用コークスの篩い分け方法、及び冶金用コークスの篩設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉による精錬プロセスにおいては、充填層内に還元ガスを流通させて鉄鉱石等を還元する必要があるため、効率的な操業を行う為には還元ガスが流通可能な空隙を確保する必要があり、鉄鉱石、コークス、焼結鉱等の原料に含まれる粉は事前に除去しておくことが望ましい。
このため、各製鉄所においては、これらの製鉄用原料から粉を除去する篩い設備を有している。篩い設備では、通常、目開き8mm程度の篩いが使用されているが、粉の除去効率を高めるために、目開き10mm程度の篩いが使用されることもある。しかしながら、これでは原料としてそのまま使用できる8〜10mmの範囲の原料をも篩い落とすことがあり、歩留まりを低下させる要因の一つとなっている。また、鉱石中にコークスを混合して装入する場合には、8〜10mmの範囲の原料を篩い落とすことで、コークスと鉱石との粒径差が拡大することになり、空隙率の低下を招く場合がある。さらに、目開き10mmの篩いを使用しても、依然として1mm以下の粉の一部が10mm以上の原料に付着しているものもあり、粉除去効率には改善の余地があった。
【0003】
原料の粉除去効率を向上させるものとしては、篩い分けの前に湿潤状態の冶金用コークスに水分吸着剤を添加することを提案したものがある(特許文献1参照)。これは、水分吸着剤によってコークスの水分含有率を低下させると、粉体と塊を結合する水架橋の数が低減されて、コークス粉を効率よく分離できるようになるからである。
他には、微粒粉群が付着した鉄鉱石をスクリーン式ジェット洗浄機で水洗処理し、微粒粉群を除去するものもある(特許文献2参照)。なお、微粒粉群を含んだ洗浄水は、スクリーン式脱水機により脱水することで、粒度が比較的大きな微粒粉を回収する。さらに、洗浄水を液体サイクロンに供給することで粒度が比較的小さな細微粒粉を分離し、それから再びスクリーン式脱水機により脱水することで細微粒粉を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−132971号公報
【特許文献2】特許第3255775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、高炉装入原料の粉除去対策の一つは、目開きの大きな篩いを使用することであるが、歩留まりの低下を招いたり、依然として付着粉が残ってしまったりし、付着粉除去効率が望んでいるほど高くはなかった。特に、高炉原料であるコークスは、表面が多孔であって粉が付着しやすく、付着粉除去効率が低かった。
また、水分吸着剤を添加する方法では、湿潤状態の原料については付着粉の分離性能に期待できるが、乾燥状態の原料においてもハンドリング過程で必ず粉が発生するため、この乾燥状態の原料に対しては、粉除去効率の向上は期待できない。また、一つの製鉄所で一日に数万トン規模の多量のコークスが使用されているので、ランニングコストが高額になってしまい、且つ均一に処理を行うことの困難性が懸念される。
【0006】
さらに、スクリーン式ジェット洗浄機を用いる方法では、スクリーン式ジェット洗浄機やスクリーン式脱水機、液体サイクロン等の設備が必要になるので、設備費用が増大してしまう。また、特に鉄鉱石やコークスの微粒粉を含んだ水処理設備については、磨耗に対するメンテナンスコストも高額になってしまう。さらに、洗浄後の原料に付着した水分によって、高炉への持込み水分が増加するので、高炉の炉頂温度が低下してしまい、操業を不安定化させてしまう可能性もある。
本発明の課題は、設備費用の増大を抑制しつつ、付着粉の除去効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る冶金用コークスの篩い分け方法は、冶金用コークスを篩にかけ、当該冶金用コークスを粒度に応じて篩い分ける際に、前記篩に空気を吹きかけることを特徴とする。
また、前記篩を水平面に対して傾斜させ、傾斜下流側から前記篩に対して空気を吹きかけることを特徴とする。
【0008】
また、前記篩の目を通過する冶金用コークスを粉コークスとし、前記篩の目を通過せずに当該篩上を傾斜方向に沿って転がる冶金用コークスを小中塊コークスとし、前記篩に吹きかける空気を、前記小中塊コークスの傾斜方向に沿った転がりを許容し、且つ前記粉コークスを飛散させる風圧に設定することを特徴とする。
また、本発明に係る冶金用コークスの篩設備は、冶金用コークスを搬送するベルトコンベアと、該ベルトコンベアの終端側の下方に配設され、且つ水平面に対して傾斜した状態で設けられた篩と、該篩に対して空気を吹きかける送風器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る冶金用コークスの篩い分け方法は、篩に空気を吹きかける構成なので、設備費用の増大を抑制しつつ、付着粉の除去効率を向上させることができる。
また、水平面に対して傾斜させた篩に対して、傾斜下流側から空気を吹きかける構成なので、下流側へと転がる冶金用コークスに対して空気を吹きかけ、より効果的に付着粉を除去することができる。これは、逆に傾斜上流側から空気を吹きかけると、付着粉の除去よりも、むしろ冶金用コークスが下流側へ転がることを助勢してしまい、付着粉を十分に除去する前に冶金用コークスが篩を通過してしまうからである。すなわち、傾斜下流側から空気を吹きかけることで、篩に対する冶金用コークスの通過速度を抑制でき、より効果的に付着粉を除去することができる。
【0010】
また、篩に吹きかける空気を、小中塊コークスの傾斜方向に沿った転がりを許容し、且つ粉コークスを飛散させる風圧に設定することで、より効果的に付着粉を除去することができる。
また、篩に対して空気を吹きかける送風器を備える構成なので、設備費用の増大を抑制しつつ、付着粉の除去効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】篩設備の概略構成図である。
【図2】篩の構成図である。
【図3】送風器の構成図である。
【図4】篩い効率と高炉の操業状況を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《構成》
図1は、篩設備の概略構成図である。
図2は、篩の構成図である。
本実施形態は、冶金用コークスAを、小中塊コークス(例えば20〜30mm)Bと粉コークス(例えば4mm以下)Cとに篩い分けるものである。
【0013】
篩設備は、冶金用コークスAを搬送するベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の終端側の下方に配設され、且つ水平面に対して傾斜した状態(例えば40度)で配設された篩2と、この篩2に対して空気を吹きかける送風器3と、を備える。
篩2は、上段の篩2aと下段の篩2bとを傾斜方向に沿って並べて構成され、夫々、傾斜方向と直交する方向、つまり幅方向に、例えば10mm間隔でバーを列設した格子状に形成されている。
したがって、ベルトコンベア1の終端側から落下した冶金用コークスAは、篩2を伝って傾斜下流側に転がる小中塊コークスBと、篩2を抜けて落下する粉コークスCと、に篩い分けられる。なお、篩2の傾斜下流側には、小中塊コークスBを回収し搬送する設備が設けられ、篩2の直下には、粉コークスCを回収し搬送する設備が設けられる。
【0014】
送風器3は、傾斜下流側から上段の篩2aに対して空気を吹きかけるように配置されており、例えば篩2に対して15°〜45°程度(水平面に対しては−5°〜+25°程度)の角度から空気を吹きかけている。送風器3は、篩3の幅全体に空気を吹きかけられるように、幅方向に沿って複数配設される(例えば二つ)。
図3は、送風器の構成図である。
送風器3は、供給される空気を数十倍の風量にして出力するエアエジェクターで構成される。送風器3の風圧は、小中塊コークスBの転がりを許容し、且つ粉コークスCを吹飛ばせる程度とし、これは水平面に対する篩2の傾斜角にもよるが、例えば5〜6kg/cm程度である。
【0015】
《作用》
送風器3により、篩2に対して空気を吹きかけることで、小中塊コークスBに付着した粉コークスCを払い落とす(又は吹き飛ばす)ことができる。また、篩2に付着した粉コークスCを払い落とすこともできるので、篩2に目詰まりが生じることを防げる。このように、送風器3を設置し、篩2に対して空気を吹きかけるだけの構成なので、設備費用の増大を抑制しつつ、付着粉の除去効率を向上させることができる。
【0016】
また、水平面に対して傾斜させた篩2に対して、傾斜下流側から空気を吹きかける構成なので、下流側へと転がる小中塊コークスBに対して空気を吹きかけ、より効果的に粉コークスCを除去することができる。これは、逆に傾斜上流側から空気を吹きかけると、粉コークスCを払い落とすよりも、むしろ小中塊コークスBが下流側へ転がることを助勢してしまい、粉コークスCを十分に払い落とす前に小中塊コークスBが篩2を通過してしまうからである。すなわち、傾斜下流側から空気を吹きかけることで、篩2に対する冶金用コークスの通過速度を抑制でき、より効果的に粉コークスCを払い落とすことができる。
【0017】
《実施例》
送風器3を設置する前と、設置した後とを比較した。
ここでは、治金用コークスAから粉コークスCを抜き出せた率(=C/A)を篩効率として算出している。送風器3を設置する前は、篩効率が14%であったが、送風器3を設置した後は、篩効率が15.6%まで増加した。すなわち、冶金用コークスAを例えば1000tとすると、篩い分けた粉コークスCが140tから156tまで増加することになる。
このように、篩効率を向上させ、高炉に装入される粉コークスCを十分に除去できるので、通気性を確保し、操業安定性を向上させることができる。
【0018】
また、篩効率を維持するためには、定期点検によって篩2の目詰まり状況を目視で確認し、目詰まりが発生している場合には、清掃作業を実施する必要があったが、篩2の目詰まり頻度が低減することで、点検作業及び清掃作業の負担を軽減することができた。
なお、本実施形態では、上段の篩2aに対して空気を吹きかける構成にしているが、これに限定されるものではなく、下段の篩2bに対しても空気を吹きかける二段構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0019】
A 冶金用コークス
B 小中塊コークス
C 粉コークス
1 ベルトコンベア
2 篩
3 送風器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金用コークスを篩にかけ、当該冶金用コークスを粒度に応じて篩い分ける際に、前記篩に空気を吹きかけることを特徴とする冶金用コークスの篩い分け方法。
【請求項2】
前記篩を水平面に対して傾斜させ、傾斜下流側から前記篩に対して空気を吹きかけることを特徴とする請求項1に記載の冶金用コークスの篩い分け方法。
【請求項3】
前記篩の目を通過する冶金用コークスを粉コークスとし、
前記篩の目を通過せずに当該篩上を傾斜方向に沿って転がる冶金用コークスを小中塊コークスとし、
前記篩に吹きかける空気を、前記小中塊コークスの傾斜方向に沿った転がりを許容し、且つ前記粉コークスを飛散させる風圧に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の冶金用コークスの篩い分け方法。
【請求項4】
冶金用コークスを搬送するベルトコンベアと、該ベルトコンベアの終端側の下方に配設され、且つ水平面に対して傾斜した状態で設けられた篩と、該篩に対して空気を吹きかける送風器と、を備えることを特徴とする冶金用コークスの篩設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132062(P2012−132062A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284637(P2010−284637)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】