説明

冷凍サイクル装置

【課題】蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることが可能な冷凍サイクル装置を提供する。
【解決手段】蒸発器27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、蒸発器27で蒸発した冷媒を吸入冷媒絞り弁50で一旦減圧し、吸入冷媒絞り弁50で減圧した冷媒を圧縮機21で等エントロピ的に圧縮して、凝縮器22へ流入する冷媒のエンタルピを増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、放熱器、減圧手段、蒸発器を備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば電気自動車等のエンジンの廃熱を利用できない空調装置に用いられる冷凍サイクル装置がある。このような冷凍サイクル装置は、冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒の熱を外部流体へ放熱する凝縮器、凝縮器から流出した冷媒を減圧膨張させる膨張弁、および、膨張弁で減圧した冷媒を蒸発させ外部流体から吸熱する蒸発器を備えている。そして、蒸発器および凝縮器を空調ダクト内に設け、蒸発器を空調風冷却除湿用の熱交換器とするとともに、凝縮器を空調風加熱用の熱交換器として、車室内を除湿暖房するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−16072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の冷凍サイクル装置では、例えば空気から吸熱するための蒸発器のフロストを防止するために、蒸発器内の冷媒圧力に下限の制約が加えられる場合がある。蒸発器の冷媒圧力低下に制約があると、蒸発器の吸熱能力が制約され(蒸発器の負荷が低く吸熱能力が発揮できず)、放熱器である凝縮器の空気加熱能力(外部流体加熱能力)が不足してしまうことがあるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることが可能な冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(21)と、
圧縮機(21)から吐出された冷媒の熱を放熱して外部流体を加熱する放熱器(22)と、
放熱器(22)から流出した冷媒を減圧膨張させる第1減圧手段(23)と、
第1減圧手段(23)で減圧した冷媒を蒸発させ外部流体から吸熱する蒸発器(27)と、
蒸発器(27)で蒸発して圧縮機(21)が吸入する冷媒を減圧する減圧量を変更可能な第2減圧手段(50)と、を備え、
放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量の一方を調節し、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように吐出容量および減圧量の他方を調節することを特徴としている。
【0007】
これによると、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)を、制約のある吸熱目標値(TEO)に一致させたときに、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が、外部流体を充分に加熱できる加熱目標値(TAO)に一致するように、圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量を調節することができる。すなわち、蒸発器(27)の吸熱能力の制約によって決まる冷媒循環流量であっても、蒸発器(27)で蒸発した冷媒を第2減圧手段(50)で一旦減圧し、第2減圧手段(50)で減圧した冷媒を圧縮機(21)で等エントロピ的に圧縮することにより、蒸発器で蒸発した冷媒を減圧することなく圧縮機で圧縮する場合よりも放熱器(22)へ流入する冷媒のエンタルピを増大させることができる。これにより、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)を、外部流体を充分に加熱できる加熱目標値(TAO)にすることができる。このようにして、蒸発器(27)の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器(22)において充分な外部流体加熱能力を得ることが可能となる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、
放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)に基づいて、圧縮機(21)の吐出容量の制御を行う制御手段(10)を備え、
第2減圧手段(51)は、圧縮機(21)の吸入冷媒圧力が低下しても蒸発器(27)内の冷媒圧力が所定圧未満になることを抑止する定圧弁(51)であり、
制御手段(10)は、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量を制御し、
第2減圧手段(51)によって、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように減圧量を調節することを特徴としている。
【0009】
これによると、制御手段(10)で、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量を制御し、定圧弁である第2減圧手段(51)によって、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように減圧量を調節することができる。したがって、制御手段(10)は、第2減圧手段(51)の減圧量制御を行う必要がないので、制御ロジックを簡素化することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、
放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)、および、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)に基づいて、圧縮機(21)の吐出容量の制御および第2減圧手段(50)の減圧量の制御を行う制御手段(10)を備え、
制御手段(10)は、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量の一方を制御し、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量の他方を制御することを特徴としている。
【0011】
これによると、制御手段(10)で、放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量の一方を制御し、蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように圧縮機(21)の吐出容量および第2減圧手段(50)の減圧量の他方を制御することができる。したがって、圧縮機(21)の吐出容量の調節精度および第2減圧手段(50)の減圧量の調節精度を確保し易い。
【0012】
また、請求項4に記載の発明では、
第2減圧手段(52、53)は、絞りが固定された固定絞り弁(52)と、固定絞り弁(52)に並列に設けられて開状態と閉状態とを切り替える開閉弁(53)とからなり、
制御手段(10)は、開閉弁(52)の開閉状態を切り替えることにより、第2減圧手段(52、53)の減圧量を制御することを特徴としている。
【0013】
これによると、減圧量可変式の第2減圧手段(52、53)を固定絞り弁(52)と開閉弁(53)とで簡単に構成し、第2減圧手段(52、53)による減圧レベルを2段階で可変することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、
放熱器(22)および蒸発器(27)は、室内へ吹き出す空気を流通するダクト(2)内に、蒸発器(27)の方が空気流れ上流側となるように配設され、
蒸発器(27)が空気から吸熱して除湿し、放熱器(22)が空気を加熱することを特徴としている。
【0015】
これによると、ダクト(2)から室内へ空気を吹き出す空調装置によって、室内を容易に除湿暖房することができ、除湿暖房時の暖房能力を向上することが容易である。
【0016】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態における冷凍サイクル装置(冷凍サイクル3)を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】空調制御装置10による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【図3】空調装置の運転モード判定を説明するグラフである。
【図4】第1の実施形態における冷房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態における暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図6】第1の実施形態における除湿暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図7】第1の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図8】凝縮器22における加熱能力判定を説明するグラフである。
【図9】凝縮器22における加熱能力向上効果を説明するモリエル線図である。
【図10】第2の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図11】蒸発器27における除湿能力判定を説明するグラフである。
【図12】第3の実施形態における冷凍サイクル装置(冷凍サイクル3A)を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】第3の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図14】第4の実施形態における冷凍サイクル装置(冷凍サイクル3B)を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図15】第4の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図16】他の実施形態における冷凍サイクル装置(冷凍サイクル3C)を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図17】他の実施形態における冷房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図18】他の実施形態における暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図19】他の実施形態における除湿暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図20】他の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図21】他の実施形態における凝縮器22の加熱能力向上効果を説明するモリエル線図である。
【図22】他の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図23】他の実施形態における冷凍サイクル装置(冷凍サイクル3D)を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【図24】他の実施形態における冷房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図25】他の実施形態における暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図26】他の実施形態における除湿暖房運転時の空調装置を示す模式図である。
【図27】他の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【図28】他の実施形態における凝縮器22の加熱能力向上効果を説明するモリエル線図である。
【図29】他の実施形態における図2のステップ220の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における冷凍サイクル装置を用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【0020】
図1に例示する本実施形態の車両用空調装置は、自動車等の車両の車室内を空調する空調ユニット(エアコンユニット)1における各空調機器(アクチュエータ)を、空調制御装置(エアコン制御装置、制御手段に相当:以下ECUと言う場合がある)10によって制御するように構成された自動車用オートエアコンである。空調ユニット1は、内部に自動車の車室内に空調風を導く空気通路を形成する送風ダクト2(ダクトに相当)と、この送風ダクト2内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機と、送風ダクト2内を流れる空気を冷却するエバポレータ27(蒸発器に相当、以下蒸発器と言う場合がある)、およびこのエバポレータ27を通過した空気を再加熱する凝縮器22(放熱器に相当)を有する冷凍サイクル3(冷凍サイクル装置に相当)とを備えている。
【0021】
送風ダクト2は、自動車の車室内の前方側に配設されている。その送風ダクト2の空気の流れ方向の上流側には、車室内空気(以下内気と言う場合がある)を取り入れる内気吸込口11、および車室外空気(以下外気と言う場合がある)を取り入れる外気吸込口12が形成されている。そして、内気吸込口11および外気吸込口12の空気通路側には、内外気切替ドア4が回転自在に支持されている。この内外気切替ドア4は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吸込口モードを、外気導入(FRS)モードまたは内気循環(REC)モード等に切り替える。
【0022】
また、送風ダクト2の空気の流れ方向の下流側には、図示しない複数の吹出口が形成されている。複数の吹出口は、少なくとも、自動車の窓ガラスの内面に向かって主に温風を吹き出すためのデフロスタ(DEF)吹出口、乗員の上半身(頭胸部)に向かって主に冷風を吹き出すためのフェイス(FACE)吹出口、および乗員の下半身(足元部)に向かって主に温風を吹き出すためのフット(FOOT)吹出口等を有している。複数の吹出口は、図示しない複数のモード切替ドアによって選択的に開閉される。複数のモード切替ドアは、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動されて、吹出口モード(MODE)を、フェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モード、デフロスタ(DEF)モードに切り替える。
【0023】
遠心式送風機5は、送風ダクト2の空気の流れ方向の上流側に一体的に形成されたスクロールケーシングに回転自在に収容された遠心式ファン、およびこの遠心式ファンを回転駆動するブロワモータ等を有し、図示しないブロワ駆動回路を介して印加されるブロワモータ端子電圧(ブロワ制御電圧、ブロワレベル)に基づいてブロワモータの回転速度が変更されることで、車室内へ向かう空調風の送風量が制御される。
【0024】
冷凍サイクル3は、コンプレッサ21(圧縮機に相当、以下圧縮機と言う場合がある)、凝縮器22、第1減圧部、室外熱交換器24、第2減圧部、エバポレータ27、アキュムレータ28およびこれらを環状に接続する冷媒配管等とで構成されている。コンプレッサ21は、内蔵する駆動モータ(図示せず)によって回転駆動されて、エバポレータ27より吸入した冷媒ガスを圧縮して吐出する電動式の冷媒圧縮機である。このコンプレッサ21は、通電(ON)されると稼働し、通電が停止(OFF)されると停止する。そして、コンプレッサ21は、ECU10が算出する目標回転速度となるようにインバータにより回転速度を制御される。
【0025】
凝縮器22は、送風ダクト2内においてエバポレータ27よりも空気の流れ方向の下流側に配置されて、コンプレッサ21より流入する冷媒ガスとの熱交換によって通過する空気を加熱する加熱用熱交換器である。この凝縮器22の空気入口部には、凝縮器22を通過する空気量と凝縮器22を迂回する空気量とを調節して車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整するエアミックス(A/M)ドア6が回転自在に支持されている。このA/Mドア6は、サーボモータ等のアクチュエータにより駆動される。
【0026】
第1減圧部は、凝縮器22で凝縮された冷媒が流入する暖房用可変絞り弁23(第1減圧手段に相当)によって構成されている。この暖房用可変絞り弁23は、凝縮器22から流出する冷媒を弁開度に応じて減圧する減圧装置で、ECU10によって弁開度が電気的に制御される暖房用電動式膨張弁(EVH)が使用されている。また、暖房用可変絞り弁23は、ECU10の制御によって弁開度を全開とする全開モードが設定可能となっている。
【0027】
凝縮器22の冷媒出口と暖房用可変絞り弁23の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管には、この冷媒配管内の冷媒圧力(凝縮器22内の冷媒圧力、高圧側冷媒圧力)を検出する圧力検出手段である冷媒圧力センサ42が配設されている。冷媒圧力センサ42は、検出した圧力情報をECU10に出力するようになっている。
【0028】
室外熱交換器24は、送風ダクト2の外部、例えば自動車が走行する際に生じる走行風を受け易い場所(具体的にはエンジンルームの前方部等)に設置されて、内部を流れる冷媒と図示しない電動式ファンにより送風される室外空気(外気)とを熱交換する。なお、室外熱交換器24は、暖房モードまたは除湿モード時には、外気より吸熱する吸熱器として運転され、また、冷房モードまたは除湿モード時には、外気へ放熱する放熱器として運転される。
【0029】
第2減圧部は、室外熱交換器24から冷媒が流入する冷房用可変絞り弁26、および室外熱交換器24から流出する冷媒を冷房用可変絞り弁26およびエバポレータ27を迂回させてアキュムレータ28へ送るためのバイパス配管33等によって構成されている。その冷房用可変絞り弁26は、室外熱交換器24から流出する冷媒を弁開度に応じて減圧する第2減圧装置で、ECU10によって弁開度が電気的に制御される冷房用電動式膨張弁(EVC)が使用されている。冷房用可変絞り弁26は、ECU10の制御によって弁開度を全閉とする全閉モードが設定可能となっている。
【0030】
また、バイパス配管33には、通電(ON)されると開弁し、通電が停止(OFF)されると閉弁する電磁式開閉弁(VH:以下暖房用電磁弁と言う場合がある)34を設置している。
【0031】
エバポレータ27は、冷房用可変絞り弁26で減圧された冷媒を、遠心式ファン5によって送風される被吸熱外部流体としての空気との熱交換によって蒸発気化させ、アキュムレータ28を介してコンプレッサ21に冷媒ガスを供給する空気−冷媒熱交換器(吸熱器)である。エバポレータ27には(具体的には、エバポレータ27の冷媒管に熱的に接続するアウターフィンには)、エバポレータ27の外表面の温度を検出する温度検出手段であるエバポレータ外表面温度センサ(エバポレータフィン温度センサ、以下エバ温度センサという場合がある)45が配設されている。エバ温度センサ45は、検出した温度情報をECU10に出力するようになっている。
【0032】
また、アキュムレータ28は、エバポレータ27より流入した冷媒を一時的に貯留するための貯留室を有する気液分離器である。
【0033】
本実施形態の冷凍サイクル3には、エバポレータ27で蒸発しアキュムレータ28を介してコンプレッサ21に吸入される冷媒を減圧する吸入冷媒絞り弁50(第2減圧手段に相当)が配設されている。この吸入冷媒絞り弁50は、エバポレータ27から流出する冷媒を弁開度に応じて減圧する減圧装置で、ECU10によって弁開度が電気的に制御される電動式膨張弁が使用されている。また、吸入冷媒絞り弁50は、ECU10の制御によって弁開度を全開とする全開モードが設定可能となっている。吸入冷媒絞り弁50は、具体的には、エバポレータ27の冷媒出口とアキュムレータ28の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管のうち、バイパス配管33の下流側接続点よりも上流側の部位に設けられている。
【0034】
ここで、冷凍サイクル3の循環回路切替手段は、冷凍サイクル3の運転モード、つまり冷凍サイクル3中の冷媒の循環経路を、冷房モード用循環回路(冷房サイクル)、暖房モード用循環回路(暖房サイクル)、除湿モード(除湿暖房モード)用循環回路(除湿サイクル)のいずれかのサイクルに切り替えるもので、本実施形態では、全開モードを設定可能な暖房用可変絞り弁23、冷房用可変絞り弁26、および、暖房用電磁弁34が上記の循環回路切替手段に相当する。
【0035】
具体的には、暖房用可変絞り弁23が全開モードとなり、暖房用電磁弁34が閉弁し、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度とする(減圧膨張モードとなる)ことで、図4に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3の運転モードが冷房サイクル(冷房モード用循環回路)となる。なお、冷房運転モード時には、吸入冷媒絞り弁50は、全開モードとなっている。また、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を閉じ、凝縮器22における冷媒の凝縮が抑止される。
【0036】
暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が開弁し、冷房用可変絞り弁26が全閉モードとなることで、図5に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3の運転モードが暖房サイクル(暖房モード用循環回路)となる。なお、暖房運転モード時には、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開き、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い外部流体である空気の加熱が行われる。
【0037】
暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が閉弁することで、図6に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3の運転モードが除湿暖房サイクル(除湿暖房モード用循環回路)となる。なお、除湿暖房運転モード時においては、凝縮器22における空気加熱能力が小さくてよい場合には、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、吸入冷媒絞り弁50が全開モードとなる。
【0038】
これに対して、凝縮器22における空気加熱能力を大きくする場合には、冷房用可変絞り弁26が全開モードとなり、吸入冷媒絞り弁50が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となる(減圧膨張モードとなる)。また、いずれの場合も、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開いている。これにより、エバポレータ27で冷却されて含有する水蒸気が凝縮除去されることで除湿された空気が、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い再加熱される。除湿暖房運転モードにおける吸入冷媒絞り弁50の制御については後で詳述する。
【0039】
ECU10は、制御処理や演算処理を行うCPU、各種プログラムやデータを保存するメモリ(ROM、RAM)、I/Oポートおよびタイマ等の機能を含んで構成され、それ自体は周知の構造を持つマイクロコンピュータを内蔵している。
【0040】
そして、ECU10は、イグニッションスイッチがオン(車両の走行を可能な状態とするスタートスイッチがオン)されると、ECU電源の供給が成されて、図示しないエアコン操作パネル等からの操作信号、冷媒圧力センサ42やエバ温度センサ45を含む各種センサからのセンサ信号、およびメモリ内に格納された制御プログラムに基づいて、空調ユニット1の各アクチュエータ(各ドアのサーボモータ、送風機5のブロワモータ、各可変絞り弁23、26、50、電磁弁34、コンプレッサ21のインバータ等)を電気的に制御するようになっている。
【0041】
次に、上記構成に基づき、本実施形態の冷凍サイクル3を用いた車両用空調装置の作動について説明する。
【0042】
ここで、図2はECU10による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【0043】
まず、スタートスイッチがONされてECU10に直流電源が供給されると、図2のルーチンが起動され、ステップ110にて各イニシャライズおよび初期設定を行う。次に、ステップ120にてエアコン操作パネルの温度設定スイッチ等の各スイッチからスイッチ信号を読み込む。次に、ステップ130にて内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、冷媒圧力センサ42、エバ温度センサ45等からのセンサ信号を読み込む。
【0044】
次に、ステップ140にて、予めROMに記憶された下記の数式1に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する。
(数1)
TAO=KSET×TSET−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
なお、TSETは温度設定スイッチにて設定した設定温度、TRは内気温センサにて検出した内気温度、TAMは外気温センサにて検出した外気温度、TSは日射センサにて検出した日射量である。また、KSET、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0045】
ステップ140において目標吹出温度TAOを算出したら、ステップ150にて、予めROMに記憶された特性図(マップ)から、目標吹出温度TAOに対応する吸込口モードおよび吹出口モードを決定する。なお、エアコン操作パネル上において吸込口モードおよび吹出口モードが手動操作により設定されている場合には、その設定モードに決定する。
【0046】
次に、ステップ160にて、予めROMに記憶された特性図(マップ)から、目標吹出温度TAOに対応するブロワ風量(実質的には送風機5のブロワモータに印加する電圧)を決定する。エアコン操作パネル上においてブロワ風量が手動操作により固定されている場合には、その固定風量に決定する。
【0047】
ステップ160においてブロワ風量を決定したら、次に、ステップ170にて、予めROMに記憶された下記の数式2に基づいてエアミックスドア6の目標ドア開度SWを算出する。
(数2)
SW={(TAO−TE)/(TAV−TE)}×100(%)
なお、TEはエバ温度センサ45にて検出したエバポレータ温度(以下エバ温度、エバ表面温度と言う場合がある)で、TAVは冷媒圧力センサ42で検出した冷媒圧力に基づいて得た(算出した)凝縮器温度である。
【0048】
そして、SW≦0(%)として算出されたとき、エアミックスドア6は、エバポレータ27からの冷風の全てを凝縮器22から迂回させる位置(MAXCOOL位置)に制御される。また、SW≧100(%)として算出されたとき、エアミックスドア6は、エバポレータ27からの冷風の全てを凝縮器22へ通す位置(MAXHOT位置)に制御される。さらに、0(%)<SW<100(%)として算出されたとき、エアミックスドア6は、エバポレータ27からの冷風の一部を凝縮器22に通し、冷風の残部を凝縮器22から迂回させる中間位置に制御される。
【0049】
次に、ステップ180へ進み、コンプレッサ21を駆動制御するための目標エバポレータ温度(以下目標エバ温度、目標エバ表面温度と言う場合がある)TEOを算出する。ステップ180では、予めROMに記憶された特性図(マップ)から、車室内の空調を行う際の、温度調節制御、快適湿度制御、防曇制御という各制御を実行する際に必要となるエバポレータ27の外表面温度である目標エバ温度TEOを算出する。
【0050】
ステップ180において目標エバ温度TEOを算出したら、ステップ190にて、目標吹出温度TAOに応じて冷凍サイクル3の運転モードを判定する。ステップ190では、例えば図3に示すように、ステップ140で算出した目標吹出温度TAOを、第1所定温度αおよび第1所定温度αよりも高い第2所定温度βと比較し、目標吹出温度TAOが、α以下であるか、β以上であるか、αとβとの間であるかを判定する。
【0051】
ステップ190において目標吹出温度TAOが第1所定温度α以下であると判断した場合には、ステップ200へ進み、冷凍サイクル3を冷房運転する設定を行う。前述したように、暖房用可変絞り弁23を全開とし、暖房用電磁弁34を閉弁し、冷房用可変絞り弁26を冷媒流量制御開度とし、吸入冷媒絞り弁50を全開とする冷房サイクルの設定が行われる。
【0052】
また、ステップ190において目標吹出温度TAOが第2所定温度β以上であると判断した場合には、ステップ210へ進み、冷凍サイクル3を暖房運転する設定を行う。前述したように、暖房用可変絞り弁23を冷媒流量制御開度とし、暖房用電磁弁34を開弁し(全開とし)、冷房用可変絞り弁26を全閉とする暖房サイクルの設定が行われる。
【0053】
また、ステップ190において目標吹出温度TAOが第1所定温度よりも高くかつ第2所定温度βよりも低いと判断した場合には、ステップ220へ進み、冷凍サイクル3を除湿暖房運転する設定を行う。ここで、図7は、図2中のステップ220における制御の流れを示すフローチャートである。
【0054】
ステップ220を実行する際には、図7に示すように、まず、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221)。
【0055】
ステップ221を実行したら、次に、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222)。吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1とは、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)、吸入冷媒絞り弁50が通過する冷媒流量を絞る開度制御される設定であり、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが0とは、吸入冷媒絞り弁50が通過する冷媒流量を絞らない全開固定される設定である。
【0056】
ステップ222において吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223)。
【0057】
ステップ223を実行した結果、冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開状態として室外熱交換器24の吸熱能力を最大化した状態であっても凝縮器22における加熱能力が不足するか否か判断する(ステップ224)。ステップ224では、ステップ223を実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで昇温できず、図8に示すように、加熱能力が不足しているかどうかを判断する。
【0058】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が不足しない、あるいは、冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が不足しないと判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0059】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを1とし(ステップ225)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0060】
ステップ222において吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1であると判断した場合には、凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)吸入冷媒絞り弁50の開度調整を行う(ステップ226)。
【0061】
ステップ226を実行した結果、吸入冷媒絞り弁50を開いて全開状態に到達し、吸入冷媒絞り弁50を全開状態とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が過剰である否か判断する(ステップ227)。ステップ227では、ステップ226を実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで降温できず、図8に示すように、加熱能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0062】
ステップ227で、吸入冷媒絞り弁50を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が過剰とならない、あるいは、吸入冷媒絞り弁50を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が過剰とならないと判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0063】
ステップ227で、吸入冷媒絞り弁50を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が過剰であると判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを0とし(ステップ228)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0064】
図2に示すステップ200の冷凍サイクル3を冷房運転する設定、ステップ210の冷凍サイクル3を暖房運転する設定、図7の制御フローを用いて説明した図2に示すステップ220の冷凍サイクル3を除湿暖房運転する設定のいずれかを実行したら、エバ温度センサ45の検出温度TEが設定された目標エバ後温度TEOとなるようにコンプレッサ21の制御状態を決定する(ステップ230)。すなわち、ステップ230では、図7のステップ221で行ったコンプレッサ21の回転制御(冷媒吐出容量の制御)の状態を設定することになる。
【0065】
次に、上記各ステップ150、160、170、220、210、220、230にて算出または決定した各制御状態が得られるように、制御信号を出力する(ステップ240)。そして、ステップ120へリターンする。
【0066】
上述の構成および作動によれば、ステップ190の判定によってステップ200の冷房運転が設定されたときには、前述したように、図4に示す実線の経路を冷媒が循環し、送風ダクト2内を流通する空気が蒸発器27で冷却され、車室内へ吹き出す。蒸発器27で吸熱された熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量は、室外熱交換器24によって外気へ放熱される。
【0067】
ステップ190の判定によってステップ210の暖房運転が設定されたときには、前述したように、図5に示す実線の経路を冷媒が循環し、送風ダクト2内を流通する空気が凝縮器22で加熱され、車室内へ吹き出す。凝縮器22で空気に放熱される熱量は、室外熱交換器24による外気からの吸熱量とコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量により賄われる。
【0068】
ステップ190の判定によってステップ220の除湿暖房運転が設定されたときには、前述したように、図6に示す実線の経路を冷媒が循環し、送風ダクト2内を流通する空気が蒸発器27で冷却されて除湿され、凝縮器22で再加熱されて車室内へ吹き出す。蒸発器27における送風ダクト2内を流通する空気からの吸熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量(圧縮動力による増加熱量)は、凝縮器22によって送風ダクト2内を流通する空気へ放熱される。蒸発器27での吸熱量およびコンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量と、凝縮器22での放熱量との差分は、室外熱交換器24における吸熱量もしくは放熱量により補われる。
【0069】
本実施形態の冷凍サイクル3は、エバポレータ27で蒸発してコンプレッサ21が吸入する冷媒を減圧する減圧量可変式の吸入冷媒絞り弁50を備えている。そして、蒸発器27での吸熱量、室外熱交換器24における吸熱量、および、コンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量の総和が、凝縮器22での放熱量に不足する場合には、吸入冷媒絞り弁50で冷媒を減圧し、この減圧した冷媒をコンプレッサ21で断熱圧縮する仕事量を増大させることで、コンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量を増大させ、上記した凝縮器22での放熱量に不足する分の熱量を確保することができる。
【0070】
図7を用いて説明したように、ECU10は、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するように吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御する。
【0071】
これにより、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEO(例えば1℃)に一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御することができる。
【0072】
換言すれば、エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図9の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができる。
【0073】
具体的には、エバポレータ27で蒸発した冷媒を吸入冷媒絞り弁50で一旦減圧し、吸入冷媒絞り弁50で減圧した冷媒をコンプレッサ21で等エントロピ的に圧縮して、凝縮器22へ流入する冷媒のエンタルピを増加させることができる。
【0074】
図9の圧力−エンタルピ線図に破線で示したサイクルは、吸入冷媒絞り弁50を備えず、エバポレータ27で蒸発した冷媒を減圧することなくコンプレッサ21で圧縮する比較例である。
【0075】
本実施形態の冷凍サイクル3によれば、室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしても凝縮器22における加熱能力が不足する場合であっても、吸入冷媒絞り弁50で冷媒を減圧し、吸入冷媒絞り弁50で減圧した冷媒をコンプレッサ21で圧縮吐出する仕事量を増大させることで、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値を、送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる加熱目標値である目標吹出温度TAOにすることができる。このようにして、エバポレータ27の吸熱能力に制約があったとしても、凝縮器22において充分な外部流体加熱能力を得ることができる。
【0076】
上述した本実施形態の作用効果を換言すると、凝縮器22において大きな加熱能力を必要とする場合には、除湿暖房サイクルにおける熱量の関係は、凝縮器22の加熱量(加熱能力)=蒸発器27の吸熱量(除湿能力、吸熱能力)+コンプレッサ21の圧縮動力+室外熱交換器24の吸熱量、で表される。
【0077】
ここで、蒸発器27のフロスト防止を考慮すると、蒸発器27の蒸発圧力には下限がある。また蒸発器27の冷媒流れ上流にある室外熱交換器24の蒸発圧力にも同様の下限がある。そのため、特に低外気温時または蒸発器27の負荷が低い場合においては、蒸発器27および室外熱交換器24の吸熱量が十分得られない。またコンプレッサ21の圧縮動力は蒸発器27の除湿能力を制御することで一義的に決定される。以上の要因により、吸入冷媒絞り弁50を用いなければ、凝縮器22における加熱能力が所要値に達しない条件では、加熱能力を向上させることができない。
【0078】
これに対して、本実施形態の冷凍サイクル3は、エバポレータ27で蒸発してコンプレッサ21が吸入する冷媒を減圧する減圧量可変式の吸入冷媒絞り弁50を備えている。吸入冷媒絞り弁50の配設は、蒸発器27の除湿能力を維持しながら、コンプレッサ21の圧縮動力を増加させて凝縮器22の加熱能力を向上させることを目的としている。
【0079】
本実施形態では、コンプレッサ21の回転速度により蒸発器27の必要な除湿能力を制御しても、凝縮器22が所要の加熱能力に達しない場合には、吸入冷媒絞り弁50の開度を絞ると、蒸発器27の蒸発圧力は上昇して、コンプレッサ21の吸入圧力は低下する。このとき除湿能力を維持させるために、コンプレッサ21の回転速度を増加して蒸発圧力すなわち冷媒流量を一定に制御している。このようにして、蒸発器27の吸熱能力(除湿能力)に制約があったとしても、凝縮器22において充分な外部流体加熱能力を得ることができる。
【0080】
また、エバポレータ温度TEを目標エバ温度TEOに一致させるコンプレッサ21の吐出容量の調節、および、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOに一致させる吸入冷媒絞り弁50の減圧量の調節を、いずれも制御手段であるECU10で行っている。したがって、コンプレッサ21の吐出容量の調節精度および吸入冷媒絞り弁50の減圧量の調節精度を確保することが容易である。
【0081】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図10および図11に基づいて説明する。
【0082】
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、ECU10が、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御する点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0083】
図10に示すように、本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、まず、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221a)。
【0084】
ステップ221aを実行したら、次に、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222)。吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1とは、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)、吸入冷媒絞り弁50が通過する冷媒流量を絞る開度制御される設定であり、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが0とは、吸入冷媒絞り弁50が通過する冷媒流量を絞らない全開固定される設定である。
【0085】
ステップ222において吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223a)。
【0086】
ステップ223aを実行した結果、冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても蒸発器27における除湿能力(吸熱能力)が過剰であるか否か判断する(ステップ224a)。ステップ224aでは、ステップ223aを実行してエバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで昇温できず、図11に示すように、除湿能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0087】
ステップ224aで、冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても蒸発器27における除湿能力が過剰とならない、あるいは、冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば蒸発器27における除湿能力が過剰とならないと判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0088】
ステップ224aで、冷房用可変絞り弁26を全開状態としても蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させても蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを1とし(ステップ225)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0089】
ステップ222において吸入冷媒絞り弁50の制御フラグが1であると判断した場合には、エバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)吸入冷媒絞り弁50の開度調整を行う(ステップ226a)。
【0090】
ステップ226aを実行した結果、吸入冷媒絞り弁50を開いて全開状態に到達し、吸入冷媒絞り弁50を全開状態とした状態であっても蒸発器27における除湿能力が不足するか否か判断する(ステップ227a)。ステップ227aでは、ステップ226aを実行してエバ温度TEを目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで降温できず、図11に示すように、除湿能力が不足であるかどうかを判断する。
【0091】
ステップ227aで、吸入冷媒絞り弁50を全開状態としなくても蒸発器27における除湿能力が不足しない、あるいは、吸入冷媒絞り弁50を全開状態とすれば蒸発器27における除湿能力が不足しないと判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0092】
ステップ227aで、吸入冷媒絞り弁50を全開状態としても蒸発器27における除湿能力が不足すると判断した場合には、吸入冷媒絞り弁50の制御フラグを0とし(ステップ228)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0093】
本実施形態の構成および作動によれば、ECU10は、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御する。
【0094】
これによっても、第1の実施形態と同様に、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEO(例えば1℃)に一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御することができる。
【0095】
エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図9の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図12および図13に基づいて説明する。
【0097】
本第3の実施形態は、前述の第2の実施形態と比較して、吸入冷媒絞り弁を定圧弁とした点が異なる。なお、第1、第2の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0098】
図12に示すように、本実施形態の冷凍サイクル3Aには、エバポレータ27で蒸発しアキュムレータ28を介してコンプレッサ21に吸入される冷媒を減圧する吸入冷媒絞り弁51(第2減圧手段に相当)が配設されている。この吸入冷媒絞り弁51は、コンプレッサ21の吸入冷媒圧力が低下してもエバポレータ27内の冷媒圧力が所定圧(例えば0.3MPa)未満になることを抑止する自律式の定圧弁(所謂、蒸発圧力調整弁)である。
【0099】
吸入冷媒絞り弁51は、具体的には、エバポレータ27の冷媒出口とアキュムレータ28の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管のうち、バイパス配管33の下流側接続点よりも上流側の部位に設けられている。
【0100】
そして、図13に示すように、本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、まず、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221a)。
【0101】
ステップ221aを実行したら、次に、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223a)。
【0102】
本実施形態では、上記したステップ223aを実行してもエバ温度TEが目標エバ温度TEOに一致するように暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行うことができない場合には、定圧弁である吸入冷媒絞り弁51の機能により、エバポレータ27内の冷媒蒸発圧力が所定圧に調節され、エバポレータ27の除湿能力を自律的に所定能力とする。
【0103】
本実施形態の構成および作動によれば、ECU10は、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、定圧弁である吸入冷媒絞り弁51によって、蒸発器27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEが吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように減圧量が自律的に調節される。
【0104】
したがって、エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図9の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができ、第1、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
また、ECU10は、吸入冷媒絞り弁51の減圧量制御を行う必要がないので、制御ロジックを簡素化することができる。
【0106】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図14および図15に基づいて説明する。
【0107】
本第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、減圧量可変式の第2減圧手段を固定絞り弁と電磁開閉弁とで構成した点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0108】
図14に示すように、本実施形態の冷凍サイクル3Bは、エバポレータ27で蒸発しアキュムレータ28を介してコンプレッサ21に吸入される冷媒を減圧する吸入冷媒絞り弁52と、吸入冷媒絞り弁52をバイパスする冷媒配管に設けられた電磁開閉弁53とを備えている。換言すれば、エバポレータ27の冷媒出口とアキュムレータ28の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管のうち、バイパス配管33の下流側接続点よりも上流側の部位に、吸入冷媒絞り弁52および電磁開閉弁53が並列に設けられている。
【0109】
吸入冷媒絞り弁52は固定絞り弁であり、電磁開閉弁53は、ECU10によって全開状態と全閉状態とが選択的に切り替え制御される開閉弁である。吸入冷媒絞り弁52および電磁開閉弁53が、本実施形態における第2減圧手段に相当する。
【0110】
吸入冷媒絞り弁52および電磁開閉弁53、具体的には、エバポレータ27の冷媒出口とアキュムレータ28の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管のうち、バイパス配管33の下流側接続点よりも上流側の部位に設けられている。
【0111】
そして、図15に示すように、本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、まず、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221)。
【0112】
ステップ221を実行したら、次に、電磁開閉弁53の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222b)。電磁開閉弁53の制御フラグが1とは、電磁開閉弁53の開度状態を全閉制御する設定であり、電位開閉弁53の制御フラグが0とは、電磁開閉弁53の開度状態を全開制御する設定である。
【0113】
ステップ222bにおいて電磁開閉弁53の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223)。
【0114】
ステップ223を実行した結果、冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が不足するか否か判断する(ステップ224)。ステップ224では、ステップ223を実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで昇温できず、図8に示すように、加熱能力が不足しているかどうかを判断する。
【0115】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が不足しない、あるいは、冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が不足しないと判断した場合には、電磁開閉弁53の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0116】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合には、電磁開閉弁53の制御フラグを1とし(ステップ225b)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0117】
ステップ222bにおいて電磁開閉弁53の制御フラグが1であると判断した場合には、電磁開閉弁53を全閉状態とする(ステップ226b)。そして、電磁開閉弁53を全閉として状態で、凝縮器22における加熱能力が過剰である否か判断する(ステップ227b)。ステップ227bでは、電磁開閉弁53を閉じ固定絞りの吸入冷媒絞り弁52で冷媒を減圧しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで降温できず、図8に示すように、加熱能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0118】
ステップ227bで、電磁開閉弁53を全閉状態としても凝縮器22における加熱能力が過剰とならないと判断した場合には、電磁開閉弁53の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0119】
ステップ227bで、電磁開閉弁53を全閉状態とすると凝縮器22における加熱能力が過剰であると判断した場合には、電磁開閉弁53の制御フラグを0とし(ステップ228b)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0120】
本実施形態の構成および作動によれば、第2減圧手段を、絞りが固定された吸入冷媒絞り弁52と、吸入冷媒絞り弁52に並列に設けられて開状態と閉状態とを切り替える電磁開閉弁53とで構成している。そして、ECU10は、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するように電磁開閉弁53を開閉し冷媒減圧量を2段階に制御する。
【0121】
これによっても、第1の実施形態と同様に、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEOに一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量、および、吸入冷媒絞り弁52と電磁開閉弁53とからなる第2減圧手段の減圧量を制御することができる。
【0122】
したがって、エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図9の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
また、減圧量可変式の第2減圧手段を固定絞り弁である吸入冷媒絞り弁52と電磁開閉弁53とで簡単に構成し、減圧量可変制御を簡素化することができる。
【0124】
なお、上記した例では、ECU10は、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するように電磁開閉弁53を開閉し冷媒減圧量を制御していた。
【0125】
これに対し、ECU10が、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように電磁開閉弁53を開閉し冷媒減圧量を制御するものであってもよい。
【0126】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0127】
また、発明が解決しようとする課題の欄に記載した、蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることは、以下に図を用いて述べる複数の実施形態においても可能である。
【0128】
まず、図16〜21を用いて、1つの実施形態を説明する。図16は、冷凍サイクル装置3Cを用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【0129】
図16に例示する本実施形態の車両用空調装置は、自動車等の車両の車室内を空調する空調ユニット(エアコンユニット)101を具備しており、空調ユニット101は、内部に自動車の車室内に空調風を導く空気通路を形成する送風ダクト2(ダクトに相当)と、この送風ダクト2内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機と、送風ダクト2内を流れる空気を冷却するエバポレータ27(蒸発器に相当、以下蒸発器と言う場合がある)、およびこのエバポレータ27を通過した空気を再加熱する凝縮器22(放熱器に相当)を有する冷凍サイクル3C(冷凍サイクル装置に相当)とを備えている。
【0130】
図16に示すように、本実施形態の冷凍サイクル3Cには、コンプレッサ21から吐出され凝縮器27へ流入する冷媒を減圧する吐出冷媒絞り弁54が配設されている。この吐出冷媒絞り弁54は、コンプレッサ21から吐出される冷媒を弁開度に応じて減圧する減圧装置で、ECU10によって弁開度が電気的に制御される電動式膨張弁が使用されている。また、吐出冷媒絞り弁54は、ECU10の制御によって弁開度を全開とする全開モードが設定可能となっている。吐出冷媒絞り弁54は、具体的には、コンプレッサ21の冷媒出口と凝縮器22の冷媒入口とを繋ぐ冷媒配管に設けられている。
【0131】
そして、空調ユニット101において各空調機器(アクチュエータ等)を制御する制御手段であるECU10は、前述した第1の実施形態と同様に、図2に示した制御フローにしたがって制御処理を行う。
【0132】
本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、図20に示すように、まず、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221)。
【0133】
ステップ221を実行したら、次に、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222c)。吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1とは、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た(算出した)凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)、吐出冷媒絞り弁54が通過する冷媒流量を絞る開度制御される設定であり、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが0とは、吐出冷媒絞り弁54が通過する冷媒流量を絞らない全開固定される設定である。
【0134】
ステップ222cにおいて吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223)。
【0135】
ステップ223を実行した結果、冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が不足するか否か判断する(ステップ224)。ステップ224では、ステップ223を実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで昇温できず、図8に示すように、加熱能力が不足しているかどうかを判断する。
【0136】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が不足しない、あるいは、冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が不足しないと判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0137】
ステップ224で、冷房用可変絞り弁26を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを1とし(ステップ225c)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0138】
ステップ222cにおいて吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1であると判断した場合には、凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)吐出冷媒絞り弁54の開度調整を行う(ステップ226c)。
【0139】
ステップ226cを実行した結果、吐出冷媒絞り弁54を開いて全開状態に到達し、吐出冷媒絞り弁54を全開状態とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が過剰である否か判断する(ステップ227c)。ステップ227cでは、ステップ226cを実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで降温できず、図8に示すように、加熱能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0140】
ステップ227cで、吐出冷媒絞り弁54を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が過剰とならない、あるいは、吐出冷媒絞り弁54を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が過剰とならないと判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0141】
ステップ227cで、吐出冷媒絞り弁54を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が過剰であると判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを0とし(ステップ228c)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0142】
上述の構成および作動によれば、図2のステップ190の判定によってステップ200の冷房運転が設定されたときには、暖房用可変絞り弁23が全開モードとなり、暖房用電磁弁34が閉弁し、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度とする(減圧膨張モードとなる)ことで、図17に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Cの運転モードが冷房運転モードとなる。なお、冷房運転モード時には、吐出冷媒絞り弁54は、全開モードとなっている。また、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を閉じ、凝縮器22における冷媒の凝縮が抑止される。
【0143】
これにより、送風ダクト2内を流通する空気が蒸発器27で冷却され、車室内へ吹き出す。蒸発器27で吸熱された熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量は、室外熱交換器24によって外気へ放熱される。
【0144】
ステップ190の判定によってステップ210の暖房運転が設定されたときには、暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が開弁し、冷房用可変絞り弁26が全閉モードとなることで、図18に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Cの運転モードが暖房運転モードとなる。なお、暖房運転モード時には、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開き、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い外部流体である空気の加熱が行われる。
【0145】
これにより、送風ダクト2内を流通する空気が凝縮器22で加熱され、車室内へ吹き出す。凝縮器22で空気に放熱される熱量は、室外熱交換器24による外気からの吸熱量とコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量により賄われる。
【0146】
ステップ190の判定によってステップ220の除湿暖房運転が設定されたときには、
暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が閉弁することで、図19に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Cの運転モードが除湿暖房運転モードとなる。なお、除湿暖房運転モード時においては、凝縮器22における空気加熱能力が小さくてよい場合には、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、吐出冷媒絞り弁54が全開モードとなる。
【0147】
これに対して、凝縮器22における空気加熱能力を大きくする場合には、冷房用可変絞り弁26が全開モードとなり、吐出冷媒絞り弁54が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となる(減圧膨張モードとなる)。また、いずれの場合も、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開いている。これにより、エバポレータ27で冷却されて含有する水蒸気が凝縮除去されることで除湿された空気が、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い再加熱され、車室内へ吹き出す。
【0148】
蒸発器27における送風ダクト2内を流通する空気からの吸熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量(圧縮動力による増加熱量)は、凝縮器22によって送風ダクト2内を流通する空気へ放熱される。蒸発器27での吸熱量およびコンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量と、凝縮器22での放熱量との差分は、室外熱交換器24における吸熱量もしくは放熱量により補われる。
【0149】
本実施形態の冷凍サイクル3Cは、コンプレッサ21から吐出され凝縮器22へ流入する冷媒を減圧する減圧量可変式の吐出冷媒絞り弁54を備えている。そして、蒸発器27における吸熱量、室外熱交換器24における吸熱量、および、コンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量の総和が、凝縮器22での放熱量に不足する場合には、コンプレッサ21で断熱圧縮する仕事量を増大させることで、コンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量を増大させ、コンプレッサ21から吐出された冷媒を吐出冷媒絞り弁54で減圧して凝縮器22に流入させる。これにより、凝縮器22での放熱量に不足する分の熱量を確保することができる。
【0150】
図20を用いて説明したように、ECU10は、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するように吐出冷媒絞り弁54の減圧量を制御する。
【0151】
これにより、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEO(例えば1℃)に一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および吐出冷媒絞り弁54の減圧量を制御することができる。
【0152】
換言すれば、エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図21の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができる。
【0153】
具体的には、コンプレッサ21の仕事量を増大させて吐出圧を上昇させ、上昇した吐出圧を吐出冷媒絞り弁54で等エンタルピ的に減圧させて、凝縮器22へ流入する冷媒のエンタルピを増加させることができる。
【0154】
図21の圧力−エンタルピ線図に破線で示したサイクルは、吐出冷媒絞り弁54を備えず、コンプレッサ21による仕事量を増大させることができない比較例である。
【0155】
本実施形態の冷凍サイクル3Cによれば、室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしても凝縮器22における加熱能力が不足する場合であっても、コンプレッサ21で冷媒を圧縮吐出する仕事量を増大させて吐出圧を上昇させ、上昇した冷媒圧力を吐出冷媒絞り弁54で減圧させることで、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値を、送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる加熱目標値である目標吹出温度TAOにすることができる。このようにして、エバポレータ27の吸熱能力に制約があったとしても、凝縮器22において充分な外部流体加熱能力を得ることができる。
【0156】
また、エバポレータ温度TEを目標エバ温度TEOに一致させるコンプレッサ21の吐出容量の調節、および、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOに一致させる吐出冷媒絞り弁54の減圧量の調節を、いずれも制御手段であるECU10で行っている。したがって、コンプレッサ21の吐出容量の調節精度および吐出冷媒絞り弁54の減圧量の調節精度を確保することが容易である。
【0157】
次に、上記の実施形態に対して、ECU10が、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように吐出冷媒絞り弁54の減圧量を制御する実施形態について、図22に基づいて説明する。
【0158】
図22に示すように、本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、まず、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221a)。
【0159】
ステップ221aを実行したら、次に、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222c)。吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1とは、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)、吐出冷媒絞り弁54が通過する冷媒流量を絞る開度制御される設定であり、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが0とは、吐出冷媒絞り弁54が通過する冷媒流量を絞らない全開固定される設定である。
【0160】
ステップ222cにおいて吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223a)。
【0161】
ステップ223aを実行した結果、冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても蒸発器27における除湿能力(吸熱能力)が過剰であるか否か判断する(ステップ224a)。ステップ224aでは、ステップ223aを実行してエバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで昇温できず、図11に示すように、除湿能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0162】
ステップ224aで、冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても蒸発器27における除湿能力が過剰とならない、あるいは、冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば蒸発器27における除湿能力が過剰とならないと判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0163】
ステップ224aで、冷房用可変絞り弁26を全開状態としても蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させても蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを1とし(ステップ225c)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0164】
ステップ222cにおいて吐出冷媒絞り弁54の制御フラグが1であると判断した場合には、エバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)吐出冷媒絞り弁54の開度調整を行う(ステップ226d)。
【0165】
ステップ226dを実行した結果、吐出冷媒絞り弁54を開いて全開状態に到達し、吐出冷媒絞り弁54を全開状態とした状態であっても蒸発器27における除湿能力が不足するか否か判断する(ステップ227d)。ステップ227dでは、ステップ226dを実行してエバ温度TEを目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで降温できず、図11に示すように、除湿能力が不足であるかどうかを判断する。
【0166】
ステップ227dで、吐出冷媒絞り弁54を全開状態としなくても蒸発器27における除湿能力が不足しない、あるいは、吐出冷媒絞り弁54を全開状態とすれば蒸発器27における除湿能力が不足しないと判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0167】
ステップ227dで、吐出冷媒絞り弁54を全開状態としても蒸発器27における除湿能力が不足すると判断した場合には、吐出冷媒絞り弁54の制御フラグを0とし(ステップ228c)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0168】
本実施形態の構成および作動によれば、ECU10は、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように吐出冷媒絞り弁54の減圧量を制御する。
【0169】
これによっても、前記した実施形態と同様に、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEOに一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および吸入冷媒絞り弁50の減圧量を制御することができる。
【0170】
エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であり、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、図21の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成することができ、前記した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0171】
ここで説明した2つの実施形態の冷凍サイクル3Cは、下記のような特徴を有する冷凍サイクル装置であると言える。
【0172】
冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(コンプレッサ21が相当)と、
圧縮機から吐出された冷媒の熱を放熱して外部流体を加熱する放熱器(凝縮器22が相当)と、
放熱器から流出した冷媒を減圧膨張させる第1減圧手段(暖房用可変絞り弁23が相当)と、
第1減圧手段で減圧した冷媒を蒸発させ外部流体から吸熱する蒸発器(エバポレータ27が相当)と、
圧縮機が吐出し放熱器に流入する冷媒を減圧する減圧量可変式の第2減圧手段(吐出冷媒絞り弁50が相当)と、を備え、
放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAVが相当)が加熱目標値(TAOが相当)に一致するように圧縮機の吐出容量および第2減圧手段の減圧量の一方が調節され、蒸発器の吸熱能力もしくそのは関連物理量の値(TEが相当)が吸熱目標値(TEOが相当)に一致するように圧縮機の吐出容量および第2減圧手段の減圧量の他方が調節されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0173】
このような特徴を有していれば、蒸発器の吸熱能力もしくはその関連物理量の値を、制約のある吸熱目標値に一致させたときに、放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値が、外部流体を充分に加熱できる加熱目標値に一致するように、圧縮機の吐出容量および第2減圧手段の減圧量を調節することができる。すなわち、蒸発器の吸熱能力の制約によって決まる冷媒循環流量であっても、圧縮機で冷媒を圧縮吐出する仕事量を増大させて吐出圧を上昇させ、上昇した冷媒圧力を第2減圧手段で等エンタルピ的に減圧させて放熱器に流入させることで、圧縮機での仕事量の増大による吐出圧の上昇および上昇した吐出圧の減圧を行わない場合よりも、放熱器へ流入する冷媒のエンタルピを増大させることができる。これにより、放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値を、外部流体を充分に加熱できる加熱目標値にすることができる。このようにして、蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることが可能となる。
【0174】
また、発明が解決しようとする課題の欄に記載した、蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることは、以下に図を用いて述べる複数の実施形態においても可能である。
【0175】
まず、図23〜28を用いて、1つの実施形態を説明する。図23は、冷凍サイクル装置3Dを用いた車両用空調装置の概略構成を示す模式図である。
【0176】
図23に例示する本実施形態の車両用空調装置は、自動車等の車両の車室内を空調する空調ユニット(エアコンユニット)201を具備しており、空調ユニット201は、内部に自動車の車室内に空調風を導く空気通路を形成する送風ダクト2(ダクトに相当)と、この送風ダクト2内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機と、送風ダクト2内を流れる空気を冷却するエバポレータ27(蒸発器に相当、以下蒸発器と言う場合がある)、およびこのエバポレータ27を通過した空気を再加熱する凝縮器22(放熱器に相当)を有する冷凍サイクル3D(冷凍サイクル装置に相当)とを備えている。
【0177】
図23に示すように、本実施形態の冷凍サイクル3Dには、前出の吸入冷媒絞り弁や吐出冷媒絞り弁は設けられていない。
【0178】
空調ユニット201において各空調機器(アクチュエータ等)を制御する制御手段であるECU10は、前述した第1の実施形態と同様に、図2に示した制御フローにしたがって制御処理を行う。
【0179】
本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、図27に示すように、まず、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221)。
【0180】
ステップ221を実行したら、次に、暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222e)。暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1とは、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た(算出した)凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)、冷凍サイクル3Dのサイクル効率に係わらず冷媒流量を増大させる開度に制御される設定であり、暖房用可変絞り弁23の制御フラグが0とは、冷凍サイクル3Dのサイクル効率を最適化するように開度制御される設定である。
【0181】
ステップ222eにおいて暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223)。
【0182】
ステップ223を実行した結果、暖房用可変絞り弁23を絞るとともに冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が不足するか否か判断する(ステップ224e)。ステップ224eでは、ステップ223を実行して室外熱交換器24の吸熱能力を最大化して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで昇温できず、図8に示すように、加熱能力が不足しているかどうかを判断する。
【0183】
ステップ224eで、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても凝縮器22における加熱能力が不足しない、あるいは、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば凝縮器22における加熱能力が不足しないと判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0184】
ステップ224eで、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態としても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させて室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても凝縮器22における加熱能力が不足すると判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを1とし(ステップ225e)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0185】
ステップ222eにおいて暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1であると判断した場合には、凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23の開度調整を行う(ステップ226e)。なお、このときには、冷房用可変絞り弁26は全開状態としている。
【0186】
ステップ226eを実行した結果、暖房用可変絞り弁23の開度が最小の状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開とした状態下で暖房用可変絞り弁23を最小開度とした状態であっても凝縮器22における加熱能力が過剰である否か判断する(ステップ227e)。ステップ227eでは、ステップ226eを実行して凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOと一致するように制御しても、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOにまで降温できず、図8に示すように、加熱能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0187】
ステップ227eで、暖房用可変絞り弁23を最小開度としなくても凝縮器22における加熱能力が過剰とならない、あるいは、暖房用可変絞り弁23を最小開度とすれば凝縮器22における加熱能力が過剰とならないと判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0188】
ステップ227eで、暖房用可変絞り弁23を最小開度状態としても凝縮器22における加熱能力が過剰であると判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを0とし(ステップ228e)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0189】
上述の構成および作動によれば、図2のステップ190の判定によってステップ200の冷房運転が設定されたときには、暖房用可変絞り弁23が全開モードとなり、暖房用電磁弁34が閉弁し、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度とする(減圧膨張モードとなる)ことで、図24に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Dの運転モードが冷房運転モードとなる。なお、冷房運転モード時には、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を閉じ、凝縮器22における冷媒の凝縮が抑止される。
【0190】
これにより、送風ダクト2内を流通する空気が蒸発器27で冷却され、車室内へ吹き出す。蒸発器27で吸熱された熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量は、室外熱交換器24によって外気へ放熱される。
【0191】
ステップ190の判定によってステップ210の暖房運転が設定されたときには、暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が開弁し、冷房用可変絞り弁26が全閉モードとなることで、図25に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Dの運転モードが暖房運転モードとなる。なお、暖房運転モード時には、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開き、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い外部流体である空気の加熱が行われる。
【0192】
これにより、送風ダクト2内を流通する空気が凝縮器22で加熱され、車室内へ吹き出す。凝縮器22で空気に放熱される熱量は、室外熱交換器24による外気からの吸熱量とコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量により賄われる。
【0193】
ステップ190の判定によってステップ220の除湿暖房運転が設定されたときには、
暖房用可変絞り弁23が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となり(減圧膨張モードとなり)、暖房用電磁弁34が閉弁することで、図26に実線で示すように冷媒が循環し、冷凍サイクル3Dの運転モードが除湿暖房運転モードとなる。なお、除湿暖房運転モード時においては、凝縮器22における空気加熱能力が小さくてよい場合には、冷房用可変絞り弁26が冷媒を減圧膨張する流量制御開度となる(減圧膨張モードとなる)。
【0194】
これに対して、凝縮器22における空気加熱能力を大きくする必要がある場合には、冷房用可変絞り弁26が全開モードとなる。また、いずれの場合も、エアミックスドア6が凝縮器22の空気入口部を開いている。これにより、エバポレータ27で冷却されて含有する水蒸気が凝縮除去されることで除湿された空気が、凝縮器22における冷媒の凝縮に伴い再加熱され、車室内へ吹き出す。
【0195】
蒸発器27における送風ダクト2内を流通する空気からの吸熱量およびコンプレッサ21の冷媒断熱圧縮によるエンタルピ増加分の熱量(圧縮動力による増加熱量)は、凝縮器22によって送風ダクト2内を流通する空気へ放熱される。蒸発器27での吸熱量およびコンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量と、凝縮器22での放熱量との差分は、室外熱交換器24における吸熱量もしくは放熱量により補われる。
【0196】
本実施形態の冷凍サイクル3Dでは、蒸発器27における吸熱量、室外熱交換器24における吸熱量、および、コンプレッサ21によるエンタルピ増加分の熱量の総和が、凝縮器22での放熱量に不足する場合には、冷房用可変絞り弁26の開度を最大に保持したまま、サイクル効率に係わらず暖房用可変絞り弁23の開度を上昇させる。これだけの制御では室外熱交換器24および蒸発器27における冷媒蒸発圧力が上昇してしまうが、本実施形態では蒸発器27における吸熱能力(除湿能力)を維持するようにコンプレッサ21の回転数(吐出容量)が制御される。すなわち、コンプレッサ21の回転数の増加により室外熱交換器24および蒸発器27における冷媒蒸発圧力の上昇が抑止され、冷媒蒸発圧力を一定に調整することができる。
【0197】
これにより、コンプレッサ21の吸入圧力(冷媒蒸発圧力)を一定に保ったままコンプレッサ21の回転速度(回転数)を増加するので、冷凍サイクル3Dの冷媒循環流量を増加させることができる。したがって、図28に示すように、暖房用可変絞り弁23の開度を上昇することで凝縮器22の出口におけるエンタルピが増大し、凝縮器22におけるエンタルピ変化は減少してしまうものの、凝縮器22における加熱能力は、エンタルピ変化と冷媒流量との積であるので、コンプレッサ21の仕事量の増加で冷媒流量を増加させることで、凝縮器22での放熱量に不足する分の熱量を確保することができる。
【0198】
図27を用いて説明したように、ECU10は、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するように暖房用可変絞り弁23の減圧量を制御する。
【0199】
これにより、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEO(例えば1℃)に一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および暖房用絞り弁23の減圧量を制御することができる。
【0200】
換言すれば、エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であるときに、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、サイクル運転効率に係わらず図28の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成し、コンプレッサ21の仕事量の増大により冷媒循環流量を増大させることができる。
【0201】
本実施形態の冷凍サイクル3Dによれば、室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしても凝縮器22における加熱能力が不足する場合であっても、暖房用可変絞り弁23の開度を上昇するとともにコンプレッサ21で冷媒を圧縮吐出する仕事量を増大させて冷媒循環流量を増大させることで、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値を、送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる加熱目標値である目標吹出温度TAOにすることができる。このようにして、エバポレータ27の吸熱能力に制約があったとしても、凝縮器22において充分な外部流体加熱能力を得ることができる。
【0202】
また、エバポレータ温度TEを目標エバ温度TEOに一致させるコンプレッサ21の吐出容量の調節、および、凝縮器温度TAVを目標吹出温度TAOに一致させる暖房用可変絞り弁23の減圧量の調節を、いずれも制御手段であるECU10で行っている。したがって、コンプレッサ21の吐出容量の調節精度および暖房用可変絞り弁23の減圧量の調節精度を確保することが容易である。
【0203】
次に、上記の実施形態に対して、ECU10が、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように暖房用可変絞り弁23の減圧量を制御する実施形態について、図29に基づいて説明する。
【0204】
図29に示すように、本実施形態では、図2に示すステップ220を実行する際には、まず、冷媒圧力センサ42が検出する冷媒圧力に基づいて得た凝縮器温度TAVが目標吹出温度TAOと一致するように(極力近似するように)コンプレッサ21の回転制御(すなわち、冷媒吐出容量の制御)を行う(ステップ221a)。
【0205】
ステップ221aを実行したら、次に、暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1であるか否か判断する(ステップ222e)。暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1とは、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)、冷凍サイクル3Dのサイクル効率に係わらず冷媒流量を増大させる開度に制御される設定であり、暖房用可変絞り弁23の制御フラグが0とは、冷凍サイクル3Dのサイクル効率を最適化するように開度制御される設定である。
【0206】
ステップ222eにおいて暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1でない、すなわち、制御フラグが0であると判断した場合には、エバ温度センサ45が検出するエバ温度TEがステップ180で算出した目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23および冷房用可変絞り弁26の開度調整を行う(ステップ223a)。
【0207】
ステップ223aを実行した結果、暖房用可変絞り弁23を絞るとともに冷房用可変絞り弁26を開いて全開状態に到達し、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態とした状態であっても蒸発器27における除湿能力(吸熱能力)が過剰であるか否か判断する(ステップ224f)。ステップ224fでは、ステップ223aを実行してエバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで昇温できず、図11に示すように、除湿能力が過剰であるかどうかを判断する。
【0208】
ステップ224fで、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態としなくても蒸発器27における除湿能力が過剰とならない、あるいは、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態とすれば蒸発器27における除湿能力が過剰とならないと判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを0としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0209】
ステップ224fで、暖房用可変絞り弁23を最小開度とするとともに冷房用可変絞り弁26を全開状態としても蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合、すなわち、室外熱交換器24を蒸発器27と冷媒圧力が同等の蒸発器(吸熱器)として機能させて室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたときに蒸発器27における除湿能力が過剰であると判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを1とし(ステップ225e)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0210】
ステップ222eにおいて暖房用可変絞り弁23の制御フラグが1であると判断した場合には、エバ温度TEが目標エバ温度TEOと一致するように(極力近似するように)暖房用可変絞り弁23の開度調整を行う(ステップ226f)。なお、このときには、冷房用可変絞り弁26は全開状態としている。
【0211】
ステップ226fを実行した結果、暖房用可変絞り弁23の開度が最小の状態に到達し、冷房用可変絞り弁26を全開とした状態下で暖房用可変絞り弁23を最小開度とした状態であっても蒸発器27における除湿能力が不足するか否か判断する(ステップ227f)。ステップ227fでは、ステップ226fを実行してエバ温度TEを目標エバ温度TEOと一致するように制御しても、エバ温度TEを目標エバ温度TEOにまで降温できず、図11に示すように、除湿能力が不足であるかどうかを判断する。
【0212】
ステップ227fで、暖房用可変絞り弁23を最小開度としなくても蒸発器27における除湿能力が不足しない、あるいは、暖房用可変絞り弁23を最小開度とすれば蒸発器27における除湿能力が不足しないと判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを1としたまま、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0213】
ステップ227fで、暖房用可変絞り弁23を最小開度状態としても蒸発器27における除湿能力が不足すると判断した場合には、暖房用可変絞り弁23の制御フラグを0とし(ステップ228e)、リターンする(図2に示すステップ230へ進む)。
【0214】
本実施形態の構成および作動によれば、ECU10は、凝縮器22の加熱能力の関連物理量である凝縮器温度TAVの値が加熱目標値である目標吹出温度TAOに一致するようにコンプレッサ21の吐出容量を制御し、エバポレータ27の吸熱能力の関連物理量であるエバ温度TEの値が吸熱目標値である目標エバ温度TEOに一致するように暖房用可変絞り弁23の減圧量を制御する。
【0215】
これによっても、前記した実施形態と同様に、エバ温度TEを、例えばエバポレータ27のフロスト防止のための制約を有する目標エバ温度TEO(例えば1℃)に一致させたとしても、凝縮器22の温度TAVが送風ダクト2内を流通する空気を充分に加熱できる目標吹出温度TAOに一致するように、コンプレッサ21の冷媒吐出容量および暖房用絞り弁23の減圧量を制御することができる。
【0216】
エバポレータ27の吸熱能力の制約によって決まるサイクル冷媒循環流量であるときに、冷房用可変絞り弁26を全開として室外熱交換器24の吸熱能力を最大にしたとしても、凝縮器22における加熱能力が不足する場合には、サイクル運転効率に係わらず図28の圧力−エンタルピ線図に実線で示すようなサイクル状態を形成し、コンプレッサ21の仕事量の増大により冷媒循環流量を増大させることができ、前記した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0217】
また、コンプレッサ21が吸入する冷媒を減圧する吸入冷媒絞り弁やコンプレッサ21が吐出する冷媒を減圧する吐出冷媒絞り弁を設ける必要がないので、構成を簡素化することができる。
【0218】
ここで説明した2つの実施形態の冷凍サイクル3Dは、下記のような特徴を有する冷凍サイクル装置であると言える。
【0219】
冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(コンプレッサ21が相当)と、
圧縮機から吐出された冷媒の熱を放熱して外部流体を加熱する放熱器(凝縮器22が相当)と、
放熱器から流出した冷媒を減圧膨張させる減圧手段(暖房用可変絞り弁23が相当)と、
減圧手段で減圧した冷媒を蒸発させ外部流体から吸熱する蒸発器(エバポレータ27が相当)と、を備え、
放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAVが相当)が加熱目標値(TAOが相当)に一致するように圧縮機の吐出容量および減圧手段の減圧量の一方が調節され、蒸発器の吸熱能力もしくそのは関連物理量の値(TEが相当)が吸熱目標値(TEOが相当)に一致するように圧縮機の吐出容量および減圧手段の減圧量の他方が調節されることを特徴とする冷凍サイクル装置である。
【0220】
このような特徴を有していれば、蒸発器の吸熱能力もしくはその関連物理量の値を、制約のある吸熱目標値に一致させたときに、放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値が、外部流体を充分に加熱できる加熱目標値に一致するように、圧縮機の吐出容量および減圧手段の減圧量を調節することができる。冷凍サイクルの運転効率と蒸発器の吸熱能力の制約によって決まる冷媒循環流量では放熱器の加熱能力が不足する場合には、減圧手段の減圧量を減少させるとともに圧縮機で冷媒を圧縮吐出する仕事量を増大させて冷媒循環流量を増大させることで、放熱器の加熱能力もしくはその関連物理量の値を外部流体を充分に加熱できる加熱目標値にすることができる。このようにして、蒸発器の吸熱能力に制約があったとしても、放熱器において充分な外部流体加熱能力を得ることが可能となる。
【0221】
上記各実施形態(前述の第1〜第4の実施形態および他の実施形態における上記4つの形態)では、放熱器の加熱能力の関連物理量として放熱器温度である凝縮器温度TAVを、加熱目標値として目標吹出温度TAOを用いていたが、これに限定されるものではない。放熱器の加熱能力の他の関連物理量とそれに対応する加熱目標値を用いてもよいし、放熱器の加熱能力(例えばエンタルピ変化量と冷媒流量の積)とそれに対応する加熱目標値を用いてもよい。
【0222】
また、蒸発器の吸熱能力の関連物理量として蒸発器温度であるエバ温度TEを、吸熱目標値として目標エバ温度TEOを用いていたが、これに限定されるものではない。蒸発器の吸熱能力の他の関連物理量とそれに対応する吸熱目標値を用いてもよいし、蒸発器の吸熱能力(例えばエンタルピ変化量と冷媒流量の積)とそれに対応する吸熱目標値を用いてもよい。
【0223】
また、上記各実施形態では、放熱器を凝縮器22としていたが、これに限定されるものではない。例えば、圧縮機から吐出される冷媒が臨界圧以上となる所謂超臨界冷凍サイクル装置の本発明を適用し、放熱器はガスクーラであってもかまわない。
【0224】
また、上記各実施形態では、冷凍サイクル3、3A、3B、3C、3Dは、凝縮器22、蒸発器27以外に室外熱交換器24を備えるものであったが、室外熱交換器を有しない冷凍サイクル装置であっても、本発明は適用して有効である。
【0225】
また、上記各実施形態では、蒸発器27を凝縮器22の空気流れ上流側に配設していた。すなわち、凝縮器22および蒸発器27の外部流体は同一の流体(空気)であったが、これに限定されるものではない。外部流体は他の流体であってもよいし、凝縮器22の外部流体と蒸発器27の外部流体とが異なるものであってもよい。
【0226】
また、上記各実施形態では、冷凍サイクル3、3A、3B、3C、3Dを、車両用空調装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではない。車両用以外の空調装置の冷凍サイクル装置であってもよいし、空調装置以外に用いられる冷凍サイクル装置であってもかまわない。
【符号の説明】
【0227】
2 送風ダクト(ダクト)
3、3A、3B、3C、3D 冷凍サイクル(冷凍サイクル装置)
10 空調制御装置(制御手段)
21 コンプレッサ(圧縮機)
22 凝縮器(放熱器)
23 暖房用可変絞り弁(第1減圧手段)
27 エバポレータ(蒸発器)
50 吸入冷媒絞り弁(第2減圧手段)
51 吸入冷媒絞り弁(定圧弁、第2減圧手段)
52 吸入冷媒絞り弁(固定絞り弁、第2減圧手段の一部)
53 電磁開閉弁(開閉弁、第2減圧手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(21)と、
前記圧縮機(21)から吐出された前記冷媒の熱を放熱して外部流体を加熱する放熱器(22)と、
前記放熱器(22)から流出した前記冷媒を減圧膨張させる第1減圧手段(23)と、
前記第1減圧手段(23)で減圧した前記冷媒を蒸発させ外部流体から吸熱する蒸発器(27)と、
前記蒸発器(27)で蒸発して前記圧縮機(21)が吸入する前記冷媒を減圧する減圧量を変更可能な第2減圧手段(50)と、を備え、
前記放熱器(22)の加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が加熱目標値(TAO)に一致するように前記圧縮機(21)の吐出容量および前記第2減圧手段(50)の減圧量の一方を調節し、前記蒸発器(27)の吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が吸熱目標値(TEO)に一致するように前記吐出容量および前記減圧量の他方を調節することを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)に基づいて、前記圧縮機(21)の吐出容量の制御を行う制御手段(10)を備え、
前記第2減圧手段(51)は、前記圧縮機(21)の吸入冷媒圧力が低下しても前記蒸発器(27)内の冷媒圧力が所定圧未満になることを抑止する定圧弁(51)であり、
前記制御手段(10)は、前記加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が前記加熱目標値(TAO)に一致するように前記吐出容量を制御し、
前記第2減圧手段(51)によって、前記吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が前記吸熱目標値(TEO)に一致するように前記減圧量を調節することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)、および、前記吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)に基づいて、前記圧縮機(21)の吐出容量の制御および前記第2減圧手段(50)の減圧量の制御を行う制御手段(10)を備え、
前記制御手段(10)は、前記加熱能力もしくはその関連物理量の値(TAV)が前記加熱目標値(TAO)に一致するように前記吐出容量および前記減圧量の一方を制御し、前記吸熱能力もしくはその関連物理量の値(TE)が前記吸熱目標値(TEO)に一致するように前記吐出容量および前記減圧量の他方を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記第2減圧手段(52、53)は、絞りが固定された固定絞り弁(52)と、前記固定絞り弁(52)に並列に設けられて開状態と閉状態とを切り替える開閉弁(53)とからなり、
前記制御手段(10)は、前記開閉弁(52)の開閉状態を切り替えることにより、前記減圧量を制御することを特徴とする請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記放熱器(22)および前記蒸発器(27)は、室内へ吹き出す空気を流通するダクト(2)内に、前記蒸発器(27)の方が空気流れ上流側となるように配設され、
前記蒸発器(27)が前記空気から吸熱して除湿し、前記放熱器(22)が前記空気を加熱することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2013−2710(P2013−2710A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133584(P2011−133584)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】