説明

冷凍保存可能なゲル状卵加工食品

【課題】冷凍保存可能なゲル状卵加工食品の提供。
【解決手段】セルロースを0.1〜5質量%、加工澱粉を1〜15質量%含むゲル状卵加工食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍保存可能で、解凍後も滑らかな食感のゲル状卵加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品は、長期保存が可能であり、電子レンジで温めるだけで食べられるという利点があり、さまざまな形態の冷凍食品が流通している。家庭用だけでなく、大量の食品を素早く提供する必要のある外食産業においても、短時間で調理可能な冷凍食品は非常に有用なものである。ゲル状卵加工食品、例えば、プリンや茶碗蒸し、玉子豆腐などは、家庭や外食産業などでも親しまれた食品であり、冷凍食品にすることによる作製時間短縮は、外食産業はもとより、家庭などでもニーズがある。そのような背景のなか、特許文献1では冷凍食品の製法が、特許文献2では冷凍プリンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−203928号公報
【特許文献2】特開2002−34484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷凍食品の利便性は誰もが認めるものではあるが、ゲル状卵加工食品の場合、凍結したのち解凍すると、離水の発生や、組織がスポンジ状になってしまい滑らかな食感が失われてしまうという欠点があり、冷凍食品として提供することは非常に困難であった。例えば、特許文献1には卵加工食品として冷凍茶碗蒸しが開示されているが、該文献では、茶碗蒸しを蒸す前の液状の状態で冷凍したものであり、蒸した後のゲル状になったものを冷凍できるものではなかった。そのため、特許文献1に記載の冷凍茶碗蒸しの場合、解凍後にゲル状にするための加熱が長時間必要であり、冷凍食品にとって大切な簡便性が損なわれたものであった。特許文献2では、トレハロースを用いた冷凍プリンが開示されており、トレハロースは冷凍耐性を有することが開示されている。しかしながら、トレハロース自体が甘みを呈するため、味への影響が大きく、特に茶碗蒸しのように通常、甘味料の使用量が少ない料理には、味への影響を避けるためトレハロースの添加量が限られるため、冷凍耐性の効果が見られない場合があること、さらに十分なトレハロースの添加量であっても、冷凍耐性が十分でない場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、どちらもほぼ無味・無臭のセルロースと加工澱粉を併用することにより驚くべきことに冷凍・解凍後も滑らかさを維持でき、口どけ感に優れ、糊状感(ベトツキ)も少ない食感にできることを見出し、本発明を成すに至った。すなわち本発明は下記の通りである。
(1)セルロースを0.1〜5質量%、加工澱粉を1〜15質量%含むゲル状卵加工食品。
(2)加工澱粉が架橋澱粉である(1)に記載のゲル状卵加工食品。
(3)架橋澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉である(2)に記載のゲル状卵加工食品。
(4)セルロースが結晶性セルロース複合体である(1)〜(3)のいずれか1つに記載のゲル状卵加工食品。
(5)(1)〜(4)のいずれか1つに記載のゲル状卵加工食品を冷凍した冷凍食品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により冷凍保存可能で解凍後も離水がなく、滑らかさを維持でき、口どけ感に優れ、糊状感(ベトツキ)も少ない食感のゲル状卵加工食品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明でいうゲル状卵加工食品とは、卵を使用した食品であって、加熱によりゲル状にした食品のことを言う。例えば、プリンや茶碗蒸し、玉子豆腐などが挙げられる。ゲル状とは実質的にゲルを形成している状態のことである。ゲルとは高分子学会編の「新版高分子辞典」では「あらゆる溶媒に不溶の三次元網目構造をもつ高分子及びその膨潤体」と定義されるものであり、液体と固体の中間の物質形態のことを言う。
ここでいう卵とは、例えば全卵、液卵、卵黄、凍結全卵、凍結液卵、凍結卵黄、加糖全卵、加糖卵黄、乾燥全卵、乾燥卵黄、乾燥粉末卵白などを使用することができる。
【0008】
本発明でいうセルロースとは草木類や微生物などから得られる粒径が0.1〜200μmのセルロースのことであり、最も一般的なものとしては木材パルプを機械的若しくは化学的に処理して得られる粉末セルロースや結晶性セルロースなどが挙げられる。粉末セルロースとしては、例えば、KC−フロック W−50,KC−フロック W−100(G)、KCフロック W−200(G)、KCフロック W−250、KCフロック W−300G,KCフロック W−400G(いずれも製品名、日本製紙ケミカル株式会社)などが挙げられる。結晶性セルロースとしては、例えば、セオラス FD−101、セオラス FD−301、セオラス ST−02、セオラス ST−100、セオラス FD−F20,セオラス UF−F711、セオラス UF−F702(いずれも製品名、旭化成ケミカルズ株式会社)、エンデュランスMCC VE−050(いずれも製品名、FMCバイオポリマー社製)などが挙げられる。特に、本発明ではセルロースのなかでも極めて純度が高く、好食感である結晶性セルロースを用いることが好ましい。
【0009】
本発明でいう結晶性セルロースとは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られる平均重合度30〜400、結晶性部分が10%を超えるものをいう。
【0010】
また、本発明におけるセルロースとしては、結晶性セルロース複合体を用いることが好ましい。結晶性セルロース複合体は、例えば、結晶性セルロースと親水性高分子を混合し、湿式磨砕して、乾燥・粉砕することにより得られるものである。ここでいう親水性高分子としては例えば、カルボキシメチルセルロース及びその塩、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、カラヤガム、カラギーナン、アラビアガム、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンドシードガム、アルギン酸及びその塩や、アルギン酸プロピレングリコールエステルのようなエステル体などが挙げられる。また、結晶性セルロース複合体には、結晶性セルロースと親水性高分子以外にも、水溶性物質を含んでいても構わない。水溶性物質としては、ショ糖(砂糖、グラニュー糖)、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖、水あめ、粉末水あめ、トレハロース、キシロース、アラビノースなどの糖類、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、還元水飴などの糖アルコール類、フラクトオリゴ糖、セロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マンノオリゴ糖、デキストリンなどのオリゴ糖・少糖類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩類などが挙げられる。一般的に市販されている結晶性セルロース複合体としては、例えばセオラス RC−N81、セオラス RC−N30、セオラス DX−2、セオラス RC−591(いずれも製品名、旭化成ケミカルズ株式会社製)、アビセル RC−591、アビセル RC−581、アビセル BV1518、ノバゲル GP3282(いずれも製品名、FMCバイオポリマー社製)などが挙げられる。
【0011】
本発明でいう加工澱粉とは、天然澱粉に物理的、酵素的又は化学的処理を行ったもののことを言う。天然澱粉には、とうもろこし澱粉(コーンスターチ)、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、米澱粉など様々なものがあり、加工澱粉もこれら様々な澱粉を加工したものが一般に知られている。
【0012】
加工澱粉は大きく分類すると、官能基を付与する誘導体、分解物、そして、熱など物理的処理を加えたものに分けられる。加工澱粉としては例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、カルボキシメチル澱粉ナトリウム、リン酸架橋澱粉、焙焼デキストリン、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、漂白澱粉などが挙げられる。本発明に用いる加工澱粉は、特に化学的処理による架橋澱粉が機械耐性、冷凍耐性に優れ、冷凍解凍後の食感変化が小さいため好ましい。架橋澱粉のなかでも食品に使用されているアセチル化アジピン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉が本発明の加工澱粉としてより好適に利用でき、アセチル化アジピン酸架橋澱粉が本用途においては、自然な食感であるため最も好適である。
本発明でいう加工澱粉は、部分的、もしくは全体がα化したものでも構わないが、加熱前の粘度が上がりにくく、原材料の混合性が優れるという点ではβ澱粉が好ましい。原料となる天然澱粉も、最終食品の求める食感に応じて適宜選択すれば良く、特に制限はないが、一般的に入手可能な、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、米澱粉、甘藷澱粉が好ましい。
【0013】
本発明のゲル状卵加工食品は、セルロース及び加工澱粉をそれぞれ一種類以上を含むことを特徴とする。セルロース及び加工澱粉は複数種類を併用しても構わない。それぞれの含有量は、ゲル状卵加工食品に対して、セルロースが0.1〜5質量%、加工澱粉が1〜15質量%であることが必要である。セルロースを0.1質量%以上とすることにより、食感が悪化することもなく、ムラができる場合もない。また、セルロースを5質量%以下とすることにより、加熱前の卵液の粘度が高くなりすぎる傾向もない。好ましくは、セルロースの含有量は、ゲル状卵加工食品に対して0.3〜3質量%である。また、加工澱粉を1質量%以上とすることにより、冷凍・解凍後の食感が悪化することもなく、15質量%以下であれば、冷凍前の状態で食感が悪化してしまう傾向もない。好ましくは、加工澱粉の含有量は、ゲル状卵加工食品に対して3〜10質量%である。
【0014】
プリン、玉子豆腐、茶碗蒸しのようなゲル状卵加工食品は、卵を含む液を加熱し、卵の蛋白質を固めることによりゲル状の滑らかな食感となる。本発明のゲル状卵加工食品は、加熱前のゲル状になる前の段階で、加工澱粉及びセルロースを添加し、加熱してゲル状卵加工食品とすることにより得られる。得られたゲル状卵加工食品は、冷凍保存しても、解凍後の食感が良好であることが本発明の大きな特徴である。本発明のゲル状卵加工食品を製造する際、加工澱粉やセルロースを含む原材料の添加する順番や、混合方法に特に制限はない。例えば、全ての原材料を同時に加えて混合してもよいし、あらかじめ粉末原料だけ粉混合して、液体原料に混合してもよいし、液体原料の全て又は一部に加工澱粉及び/又はセルロースをあらかじめ分散しておいても良い。ただし加熱直前の液中では加工澱粉及びセルロースが均一に分散していることが重要である。特に加工澱粉は、一般的には加熱攪拌して溶解・分散させることにより、液中に均一に存在させることができるものであるが、本発明のように、加熱によりゲル化するような食品の場合、ゲル化が始まる温度以上(本発明では、卵以外に含まれる物質により多少、上下するが通常は60℃以上)に加熱すると一部に固まりを生じたり、風味が悪化してしまうので該方法は好ましくない。また、加工澱粉の液中への分散が不十分であると、冷解凍後に滑らかさを維持できない箇所ができたり、場所によって食感が変わってしまう(ムラができる)可能性がある。しかし、本発明ではセルロースを併用することにより、加熱をしなくても液中に加工澱粉を均一に分布させることができる上に、加工澱粉が持つ独特の糊状感を抑制することができる。
【0015】
本発明のゲル状卵加工食品には、必要に応じて、調味料、香料、増粘剤、ゲル化剤、乳製品などの1種類又は2種類以上を含んでいても構わない。調味料としては、例えば、塩、はちみつ、ブドウ糖、果糖、異性化糖、麦芽糖、ショ糖(砂糖、グラニュー糖)、ステビア、トレハロース、オリゴ糖(例えばフラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、乳果オリゴ糖など)、糖アルコール(例えばソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノースなど)、アセルファムK、ネオテーム、スクラロース、水飴、還元水飴、コショウなどの香辛料、エキス調味料(例えば、かつおエキス、昆布エキス、チキンコンソメ、ビーフコンソメ、ポークコンソメなど)、グルタミン酸ナトリウムなどが挙げられる。特に、還元水飴は甘味も少なく、食感をより滑らかにすることができるので、セルロース及び加工澱粉と共に用いることが好ましい。還元水飴の添加量は、ゲル状卵加工食品に対して1〜20質量%が好ましい。香料としてはバニラエッセンス、ミント、トマト香料、オレンジ香料、レモン香料、ミルク香料などが挙げられる。増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースの金属塩、グアーガム、ローカストビーンガム、ガディガム、アラビアガム、タラガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸及びその金属塩、アルギン酸プロピレングリールエステル、ジェランガム、タマリンドシードガムなどが挙げられる。ゲル化剤としては、寒天、ゼラチン、グルコマンナン(こんにゃくマンナン)、カードランなどが挙げられる。乳製品としては、例えば牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳、練乳、脱脂乳、クリーム類、発酵乳、バター類等を使用することができる。
本発明のゲル状卵加工食品の冷凍方法は、食品業界で一般的に行われる冷凍方法で構わない。一般的には−20℃から−60℃の冷風式や、冷媒式の急速冷凍庫などを用いて冷凍する。その他CAS冷凍や、静電式急速冷凍機で冷凍することも可能である。
【実施例】
【0016】
実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。以下に官能評価の測定方法を記載する。官能評価の評価基準は50代男性1名、30代男性2名、20代女性1名の計4名で、下の評価基準をもとに行った。 4名で評価が異なった場合は、最も人数の多かった評価を総合評価とした。冷凍茶碗蒸しの場合、温かい状態と冷めた状態で、評価が異なる場合は、冷めた状態の評価を総合評価に採用した。今回の評価では2名ずつに分かれることや、全員の評価が分かれるということはなく、4名の評価が一致することがほとんどであったので、4名の評価が一致しなかった場合のみ、総合評価の詳細について記載した。
(滑らかさ)
◎(優良):非常に滑らかで冷凍前と殆んど同じである。
○(良) :滑らかであるが冷凍前より少し劣る。
△(可) :部分的(半分未満)にスポンジ状になってザラツキを感じる。
×(不可):半分以上がスポンジ状になっていて滑らかさがない。
(口どけ感)
◎(優良):口の中でサラッとトロけるように、ほぐれる。
○(良) :口の中でほぐれるが、若干、ほぐれるまでに力がいる。
×(不可):口の中でほぐれず塊があるように感じる。
(ベトツキのなさ)
◎(優良):ベトツキ(糊状感)を全く感じない。
○(良) :ごくわずかにベトツクが気になるレベルではない。
△(可) :明らかにベトツキがあるが、ネチャ付くほどではない。
×(不可):明らかにベトツキがあり、口の中でネチャ付く。
(離水)
◎(優良):離水なし。
○(良) :表面にごく僅かに離水。
△(可) :表面と内部に少し離水が見られる。
×(不可):明らかに離水し、固形分と液体部分が分離している。
【0017】
(実施例1、2、比較例1、2、3)
それぞれの処方は表1に示した通りである。代表として実施例1の製法を詳しく述べる。
加工澱粉(商品名 日食MT−50、日本食品化工(株)製、タピオカ澱粉原料のアセチル化アジピン酸架橋澱粉、全量に対して5質量%)25g、セルロースとしてセオラス DX−2(商品名 旭化成ケミカルズ(株)製、セルロースを36質量%含むセルロース製剤。処方中でセルロースとして全量に対して0.18質量%。)2.5g、キサンタンガム(商品名 ビストップD−3000、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)0.25gを測り取りビニール袋で粉混ぜした。1Lのステンレス容器にかつおエキス調味料(商品名 ぴかいち、富士食品工業(株)製)を30g、還元水飴(商品名 SE−30、物産フードサイエンス(株)製)50g、水277.25gを入れ、プロペラ攪拌にて600rpmで回し、そこに、粉混ぜした粉末原料を少しずつ加え、全量を添加後、室温で1時間攪拌を続けて原料液1を得た。攪拌を一旦停止し、原料液1に溶き卵115gを加え、プロペラ攪拌420rpmで20分攪拌して原料液2を得た。原料液2を一個当たり70gずつプラスチックの容器に入れ、スチームコントローラーで90℃、20分間蒸した。冷蔵庫で10℃以下まで冷やし、その後に−20℃に急速冷凍することにより、冷凍茶碗蒸しを作製した。
比較例1ではセオラス DX−2の代わりに加工澱粉を増量して加えたこと以外は同様の操作により作製した。その他、表1の組成に従って同様に、実施例2、比較例1〜3も作製した。
【表1】

【0018】
前述の方法で作製した冷凍茶碗蒸しをレンジ蒸し器にいれ、レンジ蒸し器の底に200mlの水を入れさらに容器の上のヘッドスペースに約1mmの水を張ってから、電子レンジで600Wにて7分解凍・加熱し、官能評価を実施した。その結果を表2に示す。
いずれも茶碗蒸し内部まで熱くなっていた。冷凍前の蒸し直後の食感は実施例、比較例ともに滑らかな食感であった。冷凍品を再び蒸して解凍した後でも、実施例1及び2は、滑らかで口どけ感のある良好な食感があり、冷めてもベトツキ(糊状感)はほとんど感じず、冷凍前の茶碗蒸しにとても近い食感であった。冷めても大きな食感の違いは見られなかった。
【0019】
一方、比較例1では、解凍・加熱直後は滑らかではあったが口どけは実施例1、2に比べ悪く、ベトツキ(糊状感)を感じた。特に容器の底に近いほどベトツキ(糊状感)が強かった。さらに冷めた後ではベトツキ(糊状感)がより強くなり、滑らかさも低下していた。比較例2では、表面に離水が見られており、喫食するとスポンジ状になっており、ザラツキを感じる滑らかさのない食感であった。ベトツキ(糊状感)はあまりなかった。冷めてもあまり食感の変化はなかった。比較例3は、比較例2よりもさらに離水量が多く口どけも悪かった。一方では、ベトツキ(糊状感)はなかったが、組織がスポンジ化をしており、ザラツキを感じた。比較例3の口どけ感は30代男性の1名が○の評価ではあったが、他3名が×の評価であったため、総合評価は×とした。
【表2】

【0020】
(実施例3、比較例4、5、6)
表3の処方に従って、蒸しプリンを作成した。ここでは、実施例3の製法について詳しく述べる。
グラニュー糖60g、加工澱粉35g(商品名 日食MT−50、日本食品化工(株)製、タピオカ澱粉原料のアセチル化アジピン酸架橋澱粉、5質量%)、セルロースとしてセオラス DX−2(商品名 旭化成ケミカルズ(株)製、セルロースとして0.18質量%)3.5gをビニール袋で粉混ぜした。ステンレス容器に全卵136g、卵黄19gを入れ、そこに前記粉混ぜした混合粉末を加え、プロペラ400rpm×20分攪拌した。別の鍋で牛乳300gを沸騰直前まで温めたものを、少しずつ加え、全て入れ終わったらプロペラ500rpm×20分攪拌した。攪拌を200rpmに落とし、生クリーム146.5gを加え、5分間攪拌した。得られた液をストレーナーでこして、プラスチック製のプリン容器に各70gずつ充填した。容器を蒸し器で強火で2分、弱火で20分間蒸した。蒸し終わったら、粗熱を取り、冷蔵庫で10℃以下まで冷却し、その後−60℃で一晩冷凍した。その後、−20℃の冷凍庫に移して冷凍プリンを得た。その他、表3の組成に従って同様に、比較例4〜6も作製した。
冷凍前の蒸した直後ではいずれも滑らかな食感であったが、実施例3、比較例4は若干、固めであった。ただし、実施例3は口どけが良いため固さはそれほど気にならないレベルであったが、比較例4は、口どけが悪く、若干、ベトツキを感じた。
【表3】

【0021】
前述の方法で作製した冷凍プリンを冷蔵庫に移し、一日冷蔵庫のなかで解凍した後、官能評価を行った。その結果を表4に示す。
実施例3は冷凍前に近い滑らかな食感であった。一方、比較例4〜6は冷凍前に比べて滑らかさが損なわれており、特に比較例4、5は明らかにザラツキを感じた。比較例5は離水が激しく、上層と水が溜まった下層で食感が大きく変わってしまっていた。比較例6は、滑らかさでは、比較例4、5よりは良好であったが、実施例3に比べれば滑らかさは明らかになかった。比較例6の滑らかさは50代男性1名のみ○の評価ではあったが、他3名が△の評価であったため、総合評価は△とした。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、冷凍保存可能で、解凍後も滑らかな食感のゲル状卵加工食品が得られるので食品製造業に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを0.1〜5質量%、加工澱粉を1〜15質量%含むゲル状卵加工食品。
【請求項2】
加工澱粉が架橋澱粉である請求項1に記載のゲル状卵加工食品。
【請求項3】
架橋澱粉がアセチル化アジピン酸架橋澱粉である請求項2に記載のゲル状卵加工食品。
【請求項4】
セルロースが結晶性セルロース複合体である請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル状卵加工食品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル状卵加工食品を冷凍した冷凍食品。