説明

冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物

【課題】フルオロプロペン冷媒やジフルオロメタン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性と熱・化学的安定性との双方を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機油は、脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ該分岐鎖の1個がα位炭素に結合した分岐鎖である脂肪酸の割合が、前記構成脂肪酸の全量を基準として10モル%以上であるエステルを含有する。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、上記エステルと、冷媒と、を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との相溶性、潤滑性、冷媒との溶解粘度、熱・化学的安定性など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。これらの冷凍機油の中でも、エステルは冷蔵庫やエアコン用などとして広く使用されている。
【0004】
HFC冷媒のうち、カーエアコン用・冷蔵庫用・ルームエアコン用冷媒として標準的に用いられているHFC−134a、R407C、R410Aはオゾン破壊係数(ODP)がゼロであるものの地球温暖化係数(GWP)が高いため、規制の対象となりつつある。そこで、これらHFCに替わる冷媒の開発が急務となっている。
【0005】
このような背景の下、上記HFCに代わる冷媒として、ODPおよびGWPの双方が非常に小さく、不燃性であり、かつ、冷媒性能の尺度である熱力学的特性が上記HFCとほぼ同等であるフルオロプロペン類の冷媒の使用が提案されている。さらに、フルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒の使用も提案されている(特許文献5を参照)。また、ジフルオロメタン冷媒(HFC−32)はHFC冷媒の中でも地球温暖化係数が比較的低く冷凍効率が高く、注目されつつある。
【0006】
一方、フルオロプロペン冷媒あるいはフルオロプロペンと飽和ハイドロフルオロカーボン、炭素数3〜5の飽和炭化水素、ジメチルエーテル、二酸化炭素、ビス(トリフルオロメチル)サルファイドあるいは3フッ化ヨウ化メタンとの混合冷媒と共に使用可能な冷凍機油としては、鉱油、アルキルベンゼン類、ポリアルファオレフィン類、ポリアルキレングリコール類、モノエステル類、ジエステル類、ポリオールエステル類、フタル酸エステル類、アルキルエーテル類、ケトン類、炭酸エステル類、ポリビニルエーテル類などを用いた冷凍機油が提案されている(特許文献5、特許文献6、7を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【特許文献5】国際公開WO2006/094303号パンフレット
【特許文献6】特表2006−512426号公報
【特許文献7】国際公開WO2005/103190号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献5、6、7に記載されているように、フルオロプロペン冷媒を用いる冷凍システムにおいては、CFCやHCFCに使用されている鉱油やアルキルベンゼン等の炭化水素類、HFCに使用されているポリアルキレングリコール、ポリオールエステル、ポリビニルエーテルなどの冷凍機油のいずれも適用可能であると考えられている。しかし、本発明者らの検討によれば、CFCやHCFCなどの冷媒に使用されている従来の冷凍機油を当該システムにそのまま転用しただけでは、冷媒相溶性および熱・化学的安定性を高水準で達成することができない。特に、フルオロプロペン冷媒は安定性に問題があり、またジフルオロメタン冷媒は冷凍機油との相溶性が低く、両者に共通して使用可能な冷凍機油は現在のところ知られていない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、フルオロプロペン冷媒やジフルオロメタン冷媒等を用いる冷凍システムにおいて、冷媒相溶性と熱・化学的安定性との双方を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の脂肪酸組成を有する特定の多価アルコールとのエステルを用いることによって、フルオロプロペン冷媒やジフルオロメタン冷媒等の共存下で十分な熱・化学的安定性を有し、かつ冷媒との十分な相溶性を有する冷凍機油を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に示す冷凍機用作動流体組成物および下記(5)に示す冷凍機油を提供する。
(1)脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ該分岐鎖の1個がα位炭素に結合した分岐鎖である脂肪酸の割合が、上記構成脂肪酸の全量を基準として10モル%以上であるエステルと、冷媒と、を含有する冷凍機用作動流体組成物。
(2)上記冷媒が不飽和フッ化炭化水素を含むものである、(1)に記載の冷凍機用作動流体組成物。
(3)上記冷媒がジフルオロメタンを含むものである、(1)または(2)に記載の冷凍機用作動流体組成物。
(4)上記冷媒が不飽和フッ化炭化水素とジフルオロメタンの混合物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の冷凍機用作動流体組成物。
(5)脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ該分岐鎖の1個がα位炭素に結合した分岐鎖である脂肪酸の割合が、上記構成脂肪酸の全量を基準として10モル%以上であるエステルを含有する冷凍機油。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フルオロプロペン冷媒やジフルオロメタン冷媒を用いる冷凍システムにおいて、低温性能に優れ、冷媒相溶性と熱・化学的安定性との双方を高水準で達成することが可能な冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係る冷凍機油は、脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ分岐鎖の1個がα位炭素(カルボキシル基に隣接する炭素原子)に結合した分岐鎖(以下、「α位分岐鎖」ともいう。)である脂肪酸の割合が、上記エステルの構成脂肪酸の全量を基準として、10モル%以上であるエステル(以下、「本実施形態に係るエステル」という。)を含有する。また、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、本実施形態に係るエステルと、不飽和フッ化炭化水素を含む冷媒と、を含有する。なお、当該冷凍機用冷媒作動流体組成物には、本実施形態に係るエステルを含む冷凍機油と、不飽和フッ化炭化水素を含む冷媒と、を含有する態様が包含される。さらに、本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物は、冷凍機油と冷媒とを各々別個に冷媒循環サイクルに導入し、該サイクル内で冷凍機油と冷媒との混合物(すなわち冷凍機用作動流体組成物)とした態様を包含する。ここで、「冷凍機油」とは、冷凍機用作動流体組成物から冷媒を除いたもの(通常、潤滑油基油又は潤滑油基油と添加剤との混合物である)を意味する(以下の説明において同じ)。
【0015】
本実施形態に係るエステルの構成脂肪酸は、α位分岐鎖を1個有し、かつ分岐鎖の合計が2個以上である脂肪酸の含有量が10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上のものである。これらの要件を満たさない場合には、冷媒相溶性、冷媒安定性、潤滑性のいずれかの性能が劣り好ましくない。
【0016】
2個以上の分岐鎖を有しかつ分岐鎖の1個がα位分岐鎖である脂肪酸としては、炭素数が6〜9のものが好ましく用いられ、具体的には例えば、2、3−ジメチルブタン酸、2,3,3−トリメチルブタン酸、2−エチル−3−メチルブタン酸、2、3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチル−2−エチルブタン酸、3−メチル−2−イソプロピルブタン酸、2,3,3−トリメチルペンタン酸、2,3,4−トリメチルペンタン酸、2,4,4−トリメチルペンタン酸、2−メチル−3−エチルペンタン酸、2−エチル−3−メチルペンタン酸、2−エチル−4−メチルペンタン酸、2,3−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、2,5−ジメチルヘキサン酸、3,3−ジメチル−2−イソプロピルブタン酸、2,3,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,3,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,3−ジメチル−3−エチルペンタン酸、2,4−ジメチル−3−エチルペンタン酸、3,3−ジメチル−2−エチルペンタン酸、3,4−ジメチル−2−エチルペンタン酸、4,4−ジメチル−2−エチルペンタン酸、2,3−ジエチルペンタン酸、2−メチル−3−プロピルペンタン酸、3−メチル−2−プロピルペンタン酸、4−メチル−2−プロピルペンタン酸、2−メチル−3−イソプロピルペンタン酸、3−メチル−2−イソプロピルペンタン酸、4−メチル−2−イソプロピルペンタン酸、2、3、3−トリメチルヘキサン酸、2,3,4−トリメチルヘキサン酸、2,3,5−トリメチルヘキサン酸、2,4,4−トリメチルヘキサン酸、2,4,5−トリメチルヘキサン酸、2,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチル−3−エチルヘキサン酸、2−メチル−4−エチルヘキサン酸、2−エチル−3−メチルヘキサン酸、2−エチル−4−メチルヘキサン酸、2−エチル−5−メチルヘキサン酸、2,3−ジメチルヘプタン酸、2,4−ジメチルヘプタン酸、2,5−ジメチルヘプタン酸、2,6−ジメチルヘプタン酸などが挙げられる。
【0017】
さらに、構成脂肪酸に含まれ得る、2個以上の分岐鎖を有しかつ分岐鎖の1個がα位分岐鎖である脂肪酸以外の脂肪酸としては、炭素数6〜9の脂肪酸が好ましく、炭素数6〜9の直鎖脂肪酸、分岐鎖を1個のみ有する炭素数6〜9の脂肪酸(α位分岐鎖を有するものおよび有さないものの双方を含む)、2個以上の分岐鎖を有しかつα位分岐鎖を有さない炭素数6〜9の脂肪酸、ならびに、2個以上の分岐鎖を有しかつ分岐鎖の2個以上がα位分岐鎖である炭素数6〜9の脂肪酸から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。このような脂肪酸としては、具体的には例えば、ペンタン酸、2,2−ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2,2−ジメチルブタン酸、2,3−ジメチルブタン酸、2−エチルブタン酸、ヘプタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2,4−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、3,4−ジメチルペンタン酸、4,4−ジメチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、1,1,2−トリメチルブタン酸、1,2,2−トリメチルブタン酸、1−エチル−1メチルブタン酸、1−エチル−2−メチルブタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、3,5−ジメチルヘキサン酸、2,4−ジメチルヘキサン酸、3,4−ジメチルヘキサン酸、4,5−ジメチルヘキサン酸、2,2−ジメチルヘキサン酸、2−メチルヘプタン酸、3−メチルヘプタン酸、4−メチルヘプタン酸、5−メチルヘプタン酸、6−メチルヘプタン酸、2−プロピルペンタン酸、ノナン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸、2−メチルオクタン酸、2−エチルヘプタン酸、3−メチルオクタン酸、2−エチル−2,3,3−トリメチル酪酸、2,2,4,4−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,3−テトラメチルペンタン酸、2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸、2,2−ジイソプロピルプロピオン酸などが挙げられる。
【0018】
2個以上の分岐鎖を有しかつ分岐鎖の1個がα位分岐鎖である脂肪酸以外の脂肪酸とその他の脂肪酸とを組み合わせて用いる場合、その他の脂肪酸の割合が90モル%以下であることが必要であり、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。この範囲を外れると不飽和フッ化炭化水素冷媒存在下での安定性が低くなるかまたはジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる。
【0019】
さらに、本実施形態に係るエステルを構成する脂肪酸における炭素数5〜9の脂肪酸の割合は、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましい。これら脂肪酸の割合が前記の範囲内であると、冷媒存在下での安定性と冷媒との相溶性との双方がより高水準で両立される傾向にある。
【0020】
構成脂肪酸に含まれ得る炭素数5〜9の脂肪酸以外の脂肪酸としては、例えば、炭素数10〜24の直鎖脂肪酸、炭素数10〜24の分岐脂肪酸が挙げられる。より具体的には、直鎖状または分岐状のデカン酸、直鎖状または分岐状のウンデカン酸、直鎖状または分岐状のドデカン酸、直鎖状または分岐状のトリデカン酸、直鎖状または分岐状のテトラデカン酸、直鎖状または分岐状のペンタデカン酸、直鎖状または分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状または分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状または分岐状のオクタデカン酸、直鎖状または分岐状のノナデカン酸、直鎖状または分岐状のイコサン酸、直鎖状または分岐状のヘンイコ酸、直鎖状または分岐状のドコサン酸、直鎖状または分岐状のトリコサン酸、直鎖状または分岐状のテトラコサン酸等が挙げられる。
【0021】
また、本実施形態に係るエステルを構成する多価アルコールとしては、水酸基を2〜6個有する多価アルコールが好ましく用いられる。
【0022】
2価アルコール(ジオール)としては、具体的には例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチルー1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。また、3価以上のアルコールとしては、具体的には例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜3量体)、1,3,5−ペンタントリオール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトールなどの多価アルコール、キシロース、アラピノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルポース、セロビオースなどの糖類、ならびにこれらの部分エーテル化物などが挙げられる。これらの中でも、より加水分解安定性に優れることから、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジ−(トリメチロールプロパン)、トリ−(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)、トリ−(ペンタエリスリトール)などのヒンダードアルコールのエステルがより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタンおよびペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)のエステルがさらにより好ましく、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ−(ペンタエリスリトール)がさらに好ましく、冷媒との相溶性および加水分解安定性に特に優れることから、ペンタエリスリトールまたはペンタエリスリトールとジ−(ペンタエリスリトール)との混合エステルが最も好ましい。
【0023】
本実施形態に係るエステルの製造方法は任意であり、例えば、まずカルボン酸を合成した後、多価アルコールとのエステル化反応によりエステルを製造することができる。
【0024】
カルボン酸の合成方法は任意であるが、例えば、オキソ反応やアルドール縮合で製造することができる。さらに具体的には、オキソ反応としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、あるいはこれらの2〜3量体などのオレフィンと水素および一酸化炭素とを反応させてアルデヒドを製造する。また、アルドール縮合としては、1種または2種以上のアルデヒドをアルカリ触媒の存在下40〜100℃で反応させ、その後、パラジウム担持活性炭などの触媒の存在下、水素圧2〜10MPa、反応温度60〜150℃で1〜5時間水素化反応を行ってアルデヒド合成し、その後空気酸化等で目的物を得ることができる。
【0025】
エステルの合成方法も任意であり、例えば、アルコールとカルボン酸を窒素気流下200〜300℃で反応させ、脱水しながら10〜40時間反応を行うことにより目的のエステルが得られる。
【0026】
なお、本実施形態に係るエステルがポリオールエステルである場合(すなわち構成アルコールが多価アルコールである場合)、当該ポリオールエステルは、多価アルコールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っている部分エステルであっても良く、全ての水酸基がエステル化された完全エステルであっても良く、また部分エステルと完全エステルの混合物であっても良いが、水酸基価が好ましくは10mgKOH/g以下、さらには5mgKOH/g以下、最も好ましくは3mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0027】
本実施形態に係るエステルとしては、単一の構造のエステルの1種からなるものを含有してもよく、また、構造の異なる2種以上のエステルの混合物を含有してもよい。
【0028】
また、本実施形態に係るエステルは、1種の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と1種の多価アルコールとのエステル、1種の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステル、2種以上の脂肪酸と2種以上の多価アルコールとのエステルのいずれであってもよい。これらの中でも、混合脂肪酸を用いたエステル、特にエステル分子中に2種以上の脂肪酸を含んで構成されるエステルは、低温特性や冷媒との相溶性に優れる。
【0029】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物において、本実施形態に係るエステルの含有量は特に制限されないが、低温性能、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、冷凍機油全量基準で、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらにより好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
【0030】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物の構成成分のうち、冷凍機油は、本発明に係るエステルのみからなるものであってもよいが、当該エステル以外の基油および各種添加剤をさらに含有してもよい。なお、以下の説明において、本発明に係るエステル以外の基油および添加剤の含有量については、冷凍機油全量を基準として示すが、冷凍機用流体組成物におけるこれらの成分の含有量は、冷凍機油全量を基準とした場合に後述する好ましい範囲内となるように選定することが望ましい。
【0031】
本実施形態に係るエステルと併用可能な基油としては、鉱油、オレフィン重合体アルキルジフェニルアルカン、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン等の炭化水素系油、ならびに本発明にかかるポリオールエステル以外のエステル系基油(モノエステル、構成脂肪酸として直鎖脂肪酸のみを含むポリオールエステル、アルキル芳香族エステル、脂環式カルポン酸エステル等)、ポリグリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、ポリフェニルエーテル、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテルなどの酸素を含有する合成油を併用して用いても良い。酸素を含有する合成油としては、上記の中でも本実施形態に係るエステル以外のエステル、ポリグリコール、ポリビニルエーテルが好ましく用いられる。
【0032】
上記の他の含酸素合成油の中でも特に好ましいのは、本発明に係るエステル以外のポリオールエステルである。本発明に係るエステル以外のポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられ、特に好ましいものは、ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステルおよびジペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステルである。
【0033】
ネオペンチルグリコールエステルとしては、炭素数5〜9の脂肪酸エステルであることが好ましい。このようなネオペンチルグリコールエステルとしては、具体的には例えば、ネオペンチルグリコールジ3,5,5−トリメチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルヘキサネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルペンタネート、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルペンタン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3−メチルヘキサン酸・5−メチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと2−メチルヘキサン酸・2−エチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールと3,5−ジメチルヘキサン酸・4,5−ジメチルヘキサン酸・3,4−ジメチルヘキサン酸のエステル、ネオペンチルグリコールジペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−エチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルペンタネート、ネオペンチルグリコールジ2−メチルブタネート、ネオペンチルグリコールジ3−メチルブタネート等が挙げられる。
【0034】
ジペンタエリスリトールエステルとしては、ジペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸のエステル、ジペンタエリスリトールと炭素数5〜7の脂肪酸および炭素数8〜9の脂肪酸のエステルが好ましい。このようなジペンタエリスリトールエステルとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールと下記の脂肪酸とのエステルが挙げられる。
ペンタン酸;2−メチルブタン酸;3−メチルブタン酸;ヘキサン酸;2−メチルペンタン酸;2−エチルブタン酸;2−エチルペンタン酸;2−メチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸;ペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;ヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;3−メチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルブタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−エチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる2種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる3種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる4種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる5種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる6種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸、2−メチルブタン酸、3−メチルブタン酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルブタン酸、2−エチルペンタン酸および2−メチルヘキサン酸からなる群より選ばれる7種と2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸;ペンタン酸と2−メチルブタン酸と3−メチルブタン酸とヘキサン酸と2−メチルペンタン酸と2−エチルブタン酸と2−エチルペンタン酸と2−メチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸と2−エチルヘキサン酸。
【0035】
本実施形態において、他の含酸素合成油を配合する場合の配合量は、冷凍機油としての優れた潤滑性と相溶性とを損なわない限りにおいて特に制限はないが、本実施形態に係るエステル以外のエステルを配合する場合、冷凍機油全量基準で、90質量%以下であることが必要であり、85質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらにより好ましく、60質量%以下であることがさらにより一層好ましく、50質量%以下であることが最も好ましく;エステル以外の含酸素合成油を配合する場合、冷凍機油全量基準で50質量%以下であることが必要であり、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。本実施形態に係るエステル以外のエステルや他の含酸素合成油の配合量が前記上限値を超えると、本発明の特徴が得られない。
【0036】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物において、本実施形態に係るエステルの含有量は特に制限されないが、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性等の各種性能により優れる点から、冷凍機油全量基準で、50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、80質量%以上含有することがさらにより好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
【0037】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、必要に応じてさらに各種添加剤を配合した形で使用することもできる。
【0038】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物の耐摩耗性、耐荷重性をさらに改良するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステルおよび亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。これらのリン化合物は、リン酸または亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0039】
具体的には例えば、リン酸エステルとしては、トリプチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0040】
酸性リン酸エステルとしては、モノプチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェートなどが挙げられる。
【0041】
チオリン酸エステルとしては、トリプチルホスフォロチオネート、トリペンチルホスフォロチオネート、トリヘキシルホスフォロチオネート、トリヘプチルホスフォロチオネート、トリオクチルホスフォロチオネート、トリノニルホスフォロチオネート、トリデシルホスフォロチオネート、トリウンデシルホスフォロチオネート、トリドデシルホスフォロチオネート、トリトリデシルホスフォロチオネート、トリテトラデシルホスフォロチオネート、トリペンタデシルホスフォロチオネート、トリヘキサデシルホスフォロチオネート、トリヘプタデシルホスフォロチオネート、トリオクタデシルホスフォロチオネート、トリオレイルホスフォロチオネート、トリフェニルホスフォロチオネート、トリクレジルホスフォロチオネート、トリキシレニルホスフォロチオネート、クレジルジフェニルホスフォロチオネート、キシレニルジフェニルホスフォロチオネートなどが挙げられる。
【0042】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、酸性リン酸エステルと、炭素数1〜24、好ましくは5〜18の1〜3級の直鎖または分岐アルキル基のアミンとのアミン塩が挙げられる。
【0043】
酸性リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンとしては、直鎖または分岐のメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、テトラコシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジウンデシルアミン、ジドデシルアミン、ジトリデシルアミン、ジテトラデシルアミン、ジペンタデシルアミン、ジヘキサデシルアミン、ジヘプタデシルアミン、ジオクタデシルアミン、ジオレイルアミン、ジテトラコシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリウンデシルアミン、トリドデシルアミン、トリトリデシルアミン、トリテトラデシルアミン、トリペンタデシルアミン、トリヘキサデシルアミン、トリヘプタデシルアミン、トリオクタデシルアミン、トリオレイルアミントリテトラコシルアミン、などのアミンとの塩が挙げられる。アミンは単独の化合物であっても、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0044】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシァルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェートなどが挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリプチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイトなどが挙げられる。また、これらの混合物も使用できる。
【0045】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記リン化合物を含有する場合、リン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.02〜3.0質量%であることがより好ましい。なお、上記リン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、テルペン化合物を添加することができる。本発明でいう「テルペン化合物」とは、イソプレンの重合した化合物およびこれらの誘導体を意味し、イソプレンの2〜8量体が好ましく用いられる。テルペン化合物としては、具体的には、グラニオール、ネロール、リナロール、シトラール(グラニアールを含む)、シトロネロール、メントール、リモネン、テルピネロール、カルポン、ヨノン、ツヨン、樟脳(カンファー)、ボルネオールなどのモノテルペン、ファルネセン、ファルネソール、ネロリドルー、幼若ホルモン、フムレン、カリオフイレン、エレメン、カジノール、カジネン、ツチンなどのセスキテルペン、グラニルグラニオール、フィトール、アビエチン酸、ピマラジェン、ダフネトキシン、タキソール、アビエチン酸、ピマール酸などのジテルペン、グラニルファルネセンなどのセスタテルペン、スクアレン、リモニン、カメリアゲニン、ホパン、ラノステロールなどのトリテルペン、カロテノイドなどのテトラテルペンなどが挙げられる。
【0047】
これらのテルペン化合物の中でも、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペンが好ましく、セスキテルペンがより好ましく、αファルネセン(3,7,11−トリメチルドデカ−1,3,6,10−テトラエン)および/またはβファルネセン(7,11−ジメチル−3−メチリデンドデカ−1,6,10−トリエン)が特に好ましい。本発明において、テルペン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
本発明に係る冷凍機油におけるテルペン化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。テルペン化合物の含有量が0.001質量%未満であると熱・化学的安定性の向上効果が不十分となる傾向にあり、また、10質量%を超えると潤滑性が不十分となる傾向にある。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物におけるテルペン化合物の含有量については、冷凍機油全量を基準とした場合に上記の好ましい範囲内となるように選定することが望ましい
【0049】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その熱・化学的安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0050】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−プチルフェニルグリシジルエーテル、i−プチルフェニルグリシジルエーテル、SeC−プチルフェニルグリシジルエーテル、tert−プチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0051】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロルプローパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0052】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジルー2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾェート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0053】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキルー1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0054】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0055】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルポキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルポルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプトー3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサンー5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチルー1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0056】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のプチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびプチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0057】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0058】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、プチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0059】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来公知の冷凍機油用添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛などの摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの添加剤の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0061】
本実施形態に係る冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度は、好ましくは3〜1000mm/s、より好ましくは4〜500mm/s、最も好ましくは5〜400mm/sとすることができる。また、100℃における動粘度は好ましくは1〜100mm/s、より好ましくは2〜50mm/sとすることができる。動粘度が前記下限値未満の場合には潤滑性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限値を超えるとジフルオロメタン冷媒との相溶性が不十分となる傾向にある。
【0062】
また、本実施形態に係る冷凍機油の体積抵抗率は特に限定されないが、好ましくは1.0×1012Ω・cm以上、より好ましくは1.0×1013Ω・cm以上、最も好ましくは1.0×1014Ω・cm以上とすることができる。特に、密閉型の冷凍機用に用いる場合には高い電気絶縁性が必要となる傾向にある。なお、本発明において、体積抵抗率とは、JIS C2101「電気絶縁油試験方法」に準拠して測定した25℃での値を意味する。
【0063】
また、本実施形態に係る冷凍機油の水分含有量は特に限定されないが、冷凍機油全量基準で好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下とすることができる。特に密閉型の冷凍機用に用いる場合には、冷凍機油の熱・化学的安定性や電気絶縁性への影響の観点から、水分含有量が少ないことが求められる。
【0064】
また、本実施形態に係る冷凍機油の酸価は特に限定されないが、冷凍機または配管に用いられている金属への腐食を防止するため、および本実施形態に係るフルオロプロペン冷媒用冷凍機油に含有されるエステル油の分解を防止するため、好ましくは0.1mgKOH/g以下、より好ましくは0.05mgKOH/g以下とすることができる。なお、本発明において、酸価とは、JISK2501「石油製品および潤滑油一中和価試験方法」に準拠して測定した酸価を意味する。
【0065】
また、本実施形態に係る冷凍機油の灰分は特に限定されないが、本実施形態に係るフルオロプロペン冷媒用冷凍機油の熱・化学的安定性を高めスラッジ等の発生を抑制するため、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下とすることができる。なお、本発明において、灰分とは、JISK2272「原油および石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法」に準拠して測定した灰分の値を意味する。
【0066】
本実施形態に係る冷凍機油は、各種冷媒とともに用いた場合に十分に高い安定性と十分に高い相溶性とを示すものであり、冷凍機油として幅広く使用することができる。本発明の冷凍機油が使用される冷凍機としては、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン、冷蔵庫、自動車用エアコン、除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等が挙げられるが、中でも、密閉型圧縮機を有する冷凍機において特に好ましく用いられる。また、本発明の冷凍機油は、往復動式、回転式、遠心式等の何れの形式の圧縮機にも使用可能である。
【0067】
すなわち、本発明に係るエステルを含む冷凍機油を冷凍機用流体組成物として使用する場合は、上記本発明のエステルを含む冷凍機油と冷媒とを含有することを特徴とするものである。ここで、本発明に係るエステルを含む冷凍機油と冷媒との配合比は特に制限されないが、冷凍機油の配合量は、通常、冷媒100重量部に対して1〜1000重量部であり、好ましくは2〜800重量部である。
【0068】
なお、本発明にかかる冷凍機用流体組成物においては、HFC冷媒、不飽和フッ化炭化水素(HFO)冷媒、3フッ化ヨウ化メタン冷媒、パーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル等の非フッ素含有エーテル系冷媒、アンモニア、二酸化炭素や炭化水素等の自然系冷媒を含有してもよい。
【0069】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2のハイドロフルオロカーボンが挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、および1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0070】
また、HFC冷媒のうち、飽和ハイドロフルオロカーボンとしては、ジフルオロメタン(HFC−32)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)、フルオロエタン(HFC−161)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)のいずれかの1種または2種以上の混合物であることが好ましく、冷媒物性の観点から、さらにHFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−152a、またはHFC−32とHFC−134aの混合物であることが好ましい。これらの中でも、HFC−32が低い地球温暖化係数や効率の点で特に好ましい。
【0071】
炭化水素冷媒としては、炭素数3〜5の炭化水素が好ましく、具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパン、2−メチルブタン、ノルマルペンタンまたはこれらの2種以上の混合物があげられる。これらの中でも、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられ、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、2−メチルブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0072】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には例えば、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mcf、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられ、これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択される。
【0073】
本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合、並びに本実施形態に係る冷凍機用作動流体組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0074】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコン、冷蔵庫、あるいは開放型または密閉型のカーエアコンに好ましく用いられる。また、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、除湿機、給湯器、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置等に好ましく用いられる。さらに、本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用作動流体組成物は、遠心式の圧縮機を有するものにも好ましく用いられる。
【0075】
本実施形態に係る冷凍機油および冷凍機用流体組成物は、前述の通り様々な不飽和フッ化炭化水素冷媒用冷凍機に好適に用いることが可能であるが、その冷凍機が備える冷媒循環サイクルの代表的な構成としては、圧縮機、凝縮器、膨張機構及び蒸発器、並びに必要に応じて乾燥器を具備するものが例示される。
【0076】
圧縮機としては、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器内に滞留する高圧容器方式の圧縮機、冷凍機油を貯留する密閉容器内に回転子と固定子からなるモーターと、前記回転子に嵌着された回転軸と、この回転軸を介して、前記モーターに連結された圧縮機部とを収納し、前記圧縮機部より吐出された高圧冷媒ガスが密閉容器外へ直接排出される低圧容器方式の圧縮機、等が例示される。
【0077】
モーター部の電機絶縁システム材料である絶縁フィルムとしては、ガラス転移点50℃以上の結晶性プラスチックフィルム、具体的には例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドイミド、ポリイミド群から選ばれる少なくとも一種の絶縁フィルム、あるいはガラス転移温度の低いフィルム上にガラス転移温度の高い樹脂層を被覆した複合フィルムが、引っ張り強度特性、電気絶縁特性の劣化現象が生じにくく、好ましく用いられる。また、モーター部に使用されるマグネットワイヤとしては、ガラス転移温度120℃以上のエナメル被覆、例えば、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド及びポリアミドイミド等の単一層、あるいはガラス転移温度の低い層を下層に、高い層を上層に複合被覆したエナメル被覆を有するものが好ましく用いられる。複合被覆したエナメル線としては、ポリエステルイミドを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/EI)、ポリエステルを下層に、ポリアミドイミドを上層に被覆したもの(AI/PE)等が挙げられる。
【0078】
乾燥器に充填する乾燥剤としては、細孔径3.3オングストローム以下、25℃の炭酸ガス分圧250mmHgにおける炭酸ガス吸収容量が、1.0%以下であるケイ酸、アルミン酸アルカリ金属複合塩よりなる合成ゼオライトが好ましく用いられる。具体的には例えば、ユニオン昭和(株)製の商品名XH−9,XH−10,XH−11,XH−600等が挙げられる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例および比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0080】
[実施例1]
<2−エチル−4−メチルペンタン酸の合成>
先ず、2−エチル−4−メチル−2−ペンテナールを合成するため、n−ブチルアルデヒド100ml(80g、1.11モル)、イソブチルアルデヒド100ml(79g、1.1モル)を攪拌器、冷却管のついた500ml4つ口フラスコに入、80℃で攪拌しながら200mlの2.5モル%水酸化ナトリウム水溶液を15分かけて滴下した。滴下開始から3時間後に室温まで冷却し、水層を分離後、有機層を3回水洗した。洗浄水がアルカリ性でないことを確認後、蒸留を行い2−エチル−4−メチルペンテナールを50g(0.40モル)得た。
次いで、この2−エチル−4−メチルペンテナール50g(0.4モル)を内容積150mlのオートクレーブに入れ、触媒として5重量%パラジウム担持活性炭0.5gを入れて、水素圧5MPa、反応温度100℃で2時間水素化反応を行った。触媒をろ過して得られた粗2−エチル−4−メチルペンタナール50gを、冷却管とガス導入管のついた3つ口フラスコに入れ、80ml/分の流通量で空気を吹き込み40℃で20時間酸化反応を行った。蒸留で精製し、40gの2−エチル−4−メチルペンタン酸40g(0.28モル)を得た。
<エステルの合成>
ペンタエリスリトール2gおよび2−エチル−4−メチルペンタン酸10.7gをディーンスターク油水分離管のついた100ml3つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下250℃で加熱した。水蒸気の発生が激しくなり、水による突沸が生じたら窒素を12.5 ml/minで流通し脱水しながら24時間反応を行った。未反応のカルボン酸を窒素気流下減圧除去しペンタエリスリトールと2−エチル−4−メチルペンタン酸とのテトラエステルを9.3g得た。
【0081】
[実施例2]
<2−プロピル−4−メチルペンタン酸の合成>
n−ブチルアルデヒドに代えてバレルアルデヒドを用いた以外は実施例1と同様にして、2−プロピル−4−メチルペンタン酸を合成した。その結果、2−プロピル−4−メチルペンタン酸を39g(0.25モル)得た。
<エステルの合成>
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて2−プロピル−4−メチルペンタン酸を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと2−プロピル−4−メチルペンタン酸とのテトラエステルを得た。
【0082】
[実施例3]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチル−4−メチルペンタン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのカルボン酸混合物(2−エチル−4−メチルペンタン酸50モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸50モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと上記カルボン酸混合物とのテトラエステルを得た。
【0083】
[実施例4]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチル−4−メチルペンタン酸と2−プロピル−4−メチルペンタン酸とのカルボン酸混合物(2−エチル−4−メチルペンタン酸50モル%、2−プロピル−4−メチルペンタン酸50モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと上記カルボン酸混合物とのテトラエステルを得た。
【0084】
[実施例5]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチル−4−メチルペンタン酸と2−エチルヘキサン酸とのカルボン酸混合物(2−エチル−4−メチルペンタン酸50モル%、2−エチルヘキサン酸50モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと上記カルボン酸混合物とのテトラエステルを得た。
【0085】
[実施例6]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチルヘキサン酸と2−プロピル−4−メチルペンタン酸とのカルボン酸混合物(2−エチルヘキサン酸50モル%、2−プロピル−4−メチルペンタン酸50モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと上記カルボン酸混合物とのテトラエステルを得た。
【0086】
[比較例1]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチルヘキサン酸を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸とのテトラエステルを得た。
【0087】
[比較例2]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのカルボン酸混合物(2−エチルヘキサン酸50モル%、3,5,5−トリメチルヘキサン酸50モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと上記カルボン酸混合物とのテトラエステルを得た。
【0088】
[比較例3]
2−エチル−4−メチルペンタン酸に代えて、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を用いた以外は実施例1と同様にして、ペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのテトラエステルを得た。
【0089】
実施例1で得られた2−プロピル−4−メチルペンタン酸、実施例2で得られた2−エチル−4−メチルペンタン酸、並びに実施例1〜6で得られた各エステルの分子構造は、以下の測定条件によりH−NMR分析を行うことにより同定した。H−NMR分析の結果を表1に示す。また、実施例1〜6の各エステルの40℃及び100℃における動粘度並びに粘度指数を表2、3に示す。
測定条件:
装置名:VARIAN INOVA 600 MHZ NMR
溶剤:CDCl
温度:室温
【0090】
【表1】

【0091】
表1中の式(1)〜(8)は以下の通りである。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】

【0092】
次に、実施例1〜6及び比較例1〜3のエステルについて、以下に示す冷凍機油としての評価試験を行った。
【0093】
<冷媒との相溶性試験>
JIS−K−2211「冷凍機油」の「冷媒との相溶性試験方法」に準拠して、表に示す冷媒16gと冷凍機油4gとの混合物を30℃から−40℃まで徐々に冷却し、混合物が相分離または白濁した温度を測定した。得られた結果を表2、3に示す。なお、表2、3中の「HFO−1234yf+R32」は、HFO−1234yfとR32との混合冷媒(HFO−1234yf/R32=50/50質量%)を意味する。また、表2、3中、「<−40」とは、本試験の測定温度域において相分離および白濁が認められなかったことを表す。また、表3中、「分離」とは、30℃で既に相分離または白濁していたことを表す。
【0094】
<安定性試験>
200mlのオートクレーブに水分を1000ppmに調整した冷凍機油30g,HFO−1234yfを30g、空気90mlを封入し、175℃で336時間加熱した後の冷凍機油の酸価を測定した。得られた結果を表2、3に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
【表3】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ該分岐鎖の1個がα位炭素に結合した分岐鎖である脂肪酸の割合が、前記構成脂肪酸の全量を基準として10モル%以上であるエステルと、
冷媒と、
を含有する冷凍機用作動流体組成物。
【請求項2】
前記冷媒が不飽和フッ化炭化水素を含むものである、請求項1に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項3】
前記冷媒がジフルオロメタンを含むものである、請求項1または2に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項4】
前記冷媒が不飽和フッ化炭化水素とジフルオロメタンの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍機用作動流体組成物。
【請求項5】
脂肪酸とアルコールとのエステルであって、該エステルの構成脂肪酸に占める、2個以上の分岐鎖を有しかつ該分岐鎖の1個がα位炭素に結合した分岐鎖である脂肪酸の割合が、前記構成脂肪酸の全量を基準として10モル%以上であるエステル
を含有する冷凍機油。

【公開番号】特開2011−208068(P2011−208068A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78855(P2010−78855)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】