説明

冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物

【課題】HFC冷媒と共に用いた場合に、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性をバランスよく十分に満足し、圧縮機の潤滑不良を防止することが可能な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍機油は、アルキルジフェニルエーテルを含有し、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に用いられることを特徴とする。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物は、アルキルジフェニルエーテルと、ハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のオゾン層破壊の問題から、従来冷凍機器の冷媒として使用されてきたCFC(クロロフルオロカーボン)およびHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)が規制の対象となり、これらに代わってHFC(ハイドロフルオロカーボン)が冷媒として使用されつつある。
【0003】
CFCやHCFCを冷媒とする場合は、冷凍機油として鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油が好適に使用されてきたが、冷媒が替わると共存下で使用される冷凍機油は、冷媒との潤滑性、相溶性、冷媒との熱・化学的安定性、溶解粘度など予想し得ない挙動を示すため、冷媒ごとに冷凍機油の開発が必要となる。そこで、HFC冷媒用冷凍機油として、例えば、ポリアルキレングリコール(特許文献1を参照)、エステル(特許文献2を参照)、炭酸エステル(特許文献3を参照)、ポリビニルエーテル(特許文献4を参照)などが開発されている。
【特許文献1】特開平02−242888号公報
【特許文献2】特開平03−200895号公報
【特許文献3】特開平03−217495号公報
【特許文献4】特開平06−128578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
HFC冷媒用冷凍機油としてポリアルキレングリコール、エステル、炭酸エステル、ポリビニルエーテル等が使用されている理由の一つとして、冷凍機油の冷媒相溶性が挙げられる。すなわち、冷媒循環システムにおいては、冷凍機油が圧縮機から冷媒と共に吐出されるので、冷凍機油には循環する冷媒と共に流路を通って再び圧縮機内に戻る特性(以下、「油戻り性」という)が求められる。そのため、鉱油やアルキルベンゼンなどの炭化水素油に比べて冷媒相溶性の高い上記の冷凍機油が好ましいと考えられている。
【0005】
しかし、冷媒相溶性を示す冷凍機油を使用すると、油戻り性は改善されるが、その一方で、HFC冷媒により冷凍機油が希釈されてその粘度が低下し、圧縮機摺動部の潤滑不良が起こる場合がある。
【0006】
また、密閉型圧縮機を備える冷媒循環システムにおいては、冷凍機油は絶縁油としての役割をも担うため、吸湿性が高く、また電気絶縁性の低いポリアルキレングリコールをこのような冷媒循環システムに使用することは適当とはいえない。さらに、エステル系基油は電気絶縁性は良好なものの、混入水分により加水分解が起こりやすいなど、熱・化学的安定性の面で必ずしも十分とはいえない。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、HFC冷媒と共に用いた場合に、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性をバランスよく十分に満足し、圧縮機の潤滑不良を防止することが可能な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用流体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、アルキルジフェニルエーテルを含有し、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油を提供する。
【0009】
また、本発明は、アルキルジフェニルエーテルと、ハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物を提供する。
【0010】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、ハイドロフルオロカーボン冷媒が、HFC−134a、R407C、R404AまたはR410Aである場合に特に優れた効果を発揮するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、HFC冷媒と共に用いた場合に、潤滑性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性をバランスよく十分に満足し、圧縮機の潤滑不良を防止することが可能な冷凍機油、並びにその冷凍機油を用いた冷凍機用流体組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の冷凍機油はアルキルジフェニルエーテルを含有する。また、本発明の冷凍機用作動流体組成物はアルキルジフェニルエーテルとハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有する。なお、本発明の冷凍機用作動流体組成物には、本発明の冷凍機油とハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有する態様が包含される。
【0014】
本発明に用いられるアルキルジフェニルエーテルとしては、下記一般式(1)で表わされるアルキルジフェニルエーテルが好ましく用いられる。
【化1】

【0015】
上記一般式(1)中、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、mは1〜3の整数を示し、nは0〜3の整数を示す。m個のR及びn個のRのうちの1つ以上はアルキル基である。アルキル基の結合箇所はベンゼン環のいずれでもよい。
【0016】
本発明に用いられるアルキルジフェニルエーテルの製造法は任意であるが、例えば、ジフェニルエーテルをフリーデルクラフツ反応等を利用してアルキル化して合成したモノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、トリアルキルジフェニルエーテル、テトラアルキルジフェニル等が挙げられ、アルキル基としては直鎖及び/又は分岐のいずれのものでもよく、炭素数1〜18のものである。
【0017】
上記のような原料より得られた生成物を精製して副生物や未反応物を除去しても良いが、少量の副生成物や未反応物は、本発明の潤滑油の優れた性能を損なわない限り、存在していても支障はない。
【0018】
本発明にかかるアルキルジフェニルエーテルのアルキル基の数およびその炭素数は特に限定されないが、アルキルジフェニルエーテルの40℃における動粘度が3〜500mm/sであることが好ましく、4〜400mm/sであることがより好ましく、5〜300mm/sであることがさらに好ましい。また、当該アルキルジフェニルエーテルの100℃における動粘度は1〜50mm/sであることが好ましく、1.5〜40mm/sであることがより好ましく、2〜30mm/sであることがさらに好ましい。
【0019】
アルキルジフェニルエーテルの動粘度が上記の範囲内であると、潤滑性、シール性、冷媒相溶性等がよりバランスよく満たされる傾向にある。
【0020】
本発明のHFC冷媒用冷凍機油において、上記アルキルジフェニルエーテル化合物は主として基油として用いられる。
【0021】
なお、本発明においては、基油として、当該アルキルジフェニルエーテルのみを単独で用いてもよく、当該アルキルジフェニルエーテルと、エステル(ポリオールエステル、芳香族多価カルボン酸エステル、脂環式ジカルボン酸エステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ケトン、シリコーン、ポリシロキサン、パーフルオロエーテル等の酸素を含有する合成油とを併用してもよい。
【0022】
本発明の冷凍機油において、当該アルキルジフェニルエーテルと酸素を含有する合成油とを併用する場合、それぞれの配合量は特に制限されないが、当該アルキルジフェニルエーテル100質量部に対して、酸素を含有する合成油が100質量部以下であることが好ましく、80質量部であることがより好ましい。当該アルキルジフェニルエーテル以外の酸素を含有する合成油の配合量が前記上限値を超えると、潤滑性、シール性、冷媒相溶性、熱・化学的安定性、電気絶縁性等がバランスよく満たされない傾向にある。
【0023】
本発明において、アルキルジフェニルエーテル、並びに必要に応じて配合される当該アルキルジフェニルエーテル以外の酸素を含有する合成油は主として基油として用いられる。
【0024】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、添加剤が配合されていない態様であっても好適に用いることができるが、必要に応じて後述する各種添加剤を配合することもできる。
【0025】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その耐摩耗性、耐荷重性をさらに向上するために、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、塩素化リン酸エステル及び亜リン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のリン化合物を含有することができる。これらのリン化合物は、リン酸又は亜リン酸とアルカノール、ポリエーテル型アルコールとのエステルあるいはその誘導体である。
【0026】
具体的には、リン酸エステルとしては、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリウンデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリトリデシルホスフェート、トリテトラデシルホスフェート、トリペンタデシルホスフェート、トリヘキサデシルホスフェート、トリヘプタデシルホスフェート、トリオクタデシルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0027】
酸性リン酸エステルとしては、モノブチルアシッドホスフェート、モノペンチルアシッドホスフェート、モノヘキシルアシッドホスフェート、モノヘプチルアシッドホスフェート、モノオクチルアシッドホスフェート、モノノニルアシッドホスフェート、モノデシルアシッドホスフェート、モノウンデシルアシッドホスフェート、モノドデシルアシッドホスフェート、モノトリデシルアシッドホスフェート、モノテトラデシルアシッドホスフェート、モノペンタデシルアシッドホスフェート、モノヘキサデシルアシッドホスフェート、モノヘプタデシルアシッドホスフェート、モノオクタデシルアシッドホスフェート、モノオレイルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジペンチルアシッドホスフェート、ジヘキシルアシッドホスフェート、ジヘプチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジノニルアシッドホスフェート、ジデシルアシッドホスフェート、ジウンデシルアシッドホスフェート、ジドデシルアシッドホスフェート、ジトリデシルアシッドホスフェート、ジテトラデシルアシッドホスフェート、ジペンタデシルアシッドホスフェート、ジヘキサデシルアシッドホスフェート、ジヘプタデシルアシッドホスフェート、ジオクタデシルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0028】
酸性リン酸エステルのアミン塩としては、上記の酸性リン酸エステルのメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等のアミンとの塩等が挙げられる。
【0029】
塩素化リン酸エステルとしては、トリス・ジクロロプロピルホスフェート、トリス・クロロエチルホスフェート、トリス・クロロフェニルホスフェート、ポリオキシアルキレン・ビス[ジ(クロロアルキル)]ホスフェート等が挙げられる。
【0030】
亜リン酸エステルとしては、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジノニルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジウンデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジオレイルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリヘプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリウンデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等が挙げられる。
【0031】
これらリン化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物がリン化合物を含有する場合、その含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.02〜3.0質量%である。
【0033】
また、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、その安定性をさらに改良するために、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、アリルオキシラン化合物、アルキルオキシラン化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ化脂肪酸モノエステルおよびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種のエポキシ化合物を含有することができる。
【0034】
フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエーテルまたはアルキルフェニルグリシジルエーテルが例示できる。ここでいうアルキルフェニルグリシジルエーテルとは、炭素数1〜13のアルキル基を1〜3個有するものが挙げられ、中でも炭素数4〜10のアルキル基を1個有するもの、例えばn−ブチルフェニルグリシジルエーテル、i−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ペンチルフェニルグリシジルエーテル、ヘキシルフェニルグリシジルエーテル、ヘプチルフェニルグリシジルエーテル、オクチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、デシルフェニルグリシジルエーテルなどが好ましいものとして例示できる。
【0035】
アルキルグリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、具体的には、デシルグリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、トリデシルグリシジルエーテル、テトラデシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0036】
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、具体的には、フェニルグリシジルエステル、アルキルグリシジルエステル、アルケニルグリシジルエステルなどが挙げられ、好ましいものとしては、グリシジル−2,2−ジメチルオクタノエート、グリシジルベンゾエート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが例示できる。
【0037】
アリルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシスチレン、アルキル−1,2−エポキシスチレンなどが例示できる。
【0038】
アルキルオキシラン化合物としては、具体的には、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシトリデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,1,2−エポキシオクタデカン、2−エポキシノナデカン、1,2−エポキシイコサンなどが例示できる。
【0039】
脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロペンタン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ−2,3−エポキシノルボルナン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプト−3−イル)−スピロ(1,3−ジオキサン−5,3’−[7]オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、4−(1’−メチルエポキシエチル)−1,2−エポキシ−2−メチルシクロヘキサン、4−エポキシエチル−1,2−エポキシシクロヘキサンなどが例示できる。
【0040】
エポキシ化脂肪酸モノエステルとしては、具体的には、エポキシ化された炭素数12〜20の脂肪酸と炭素数1〜8のアルコールまたはフェノール、アルキルフェノールとのエステルなどが例示できる。特にエポキシステアリン酸のブチル、ヘキシル、ベンジル、シクロヘキシル、メトキシエチル、オクチル、フェニルおよびブチルフェニルエステルが好ましく用いられる。
【0041】
エポキシ化植物油としては、具体的には、大豆油、アマニ油、綿実油等の植物油のエポキシ化合物などが例示できる。
【0042】
これらのエポキシ化合物の中でも好ましいものは、フェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物およびエポキシ化脂肪酸モノエステルである。中でもフェニルグリシジルエーテル型エポキシ化合物およびグリシジルエステル型エポキシ化合物がより好ましく、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステルもしくはこれらの混合物が特に好ましい。
【0043】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物が上記エポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準で、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜2.0質量%であることがより好ましい。なお、上記エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
また、上記リン化合物及びエポキシ化合物を2種以上併用してもよいことは勿論である。
【0045】
さらにまた、本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物においては、その性能をさらに高めるため、必要に応じて従来から公知の冷凍機油添加剤、例えばジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ビスフェノールA等のフェノール系の酸化防止剤、フェニル−α−ナフチルアミン、N,N−ジ(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミン等のアミン系の酸化防止剤、ジチオリン酸亜鉛等の摩耗防止剤、塩素化パラフィン、硫黄化合物等の極圧剤、脂肪酸等の油性剤、シリコーン系等の消泡剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、清浄分散剤等の添加剤を単独で、又は数種類組み合わせて配合することも可能である。
【0046】
これらの添加剤の合計配合量は特に制限されないが、冷凍機油全量基準(基油と全配合添加剤の合計量基準)で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0047】
本発明の冷凍機油の動粘度は特に限定されないが、40℃における動粘度が3〜100mm/sであることが好ましく、4〜80mm/sであることがより好ましく、5〜70mm/sであることがさらに好ましい。
【0048】
本発明の冷凍機油はHFC冷媒と共に用いられるものであり、また、本発明の冷凍機用作動流体組成物はHFC冷媒を含有するものであるが、本発明において使用される冷媒は、HFC冷媒単独であってもよく、あるいはHFC冷媒と他の冷媒との混合冷媒であってもよい。他の冷媒としては、バーフルオロエーテル類等の含フッ素エーテル系冷媒、炭化水素、二酸化炭素、ジメチルエーテル、アンモニアなど挙げられる。
【0049】
HFC冷媒としては、炭素数1〜3、好ましくは1〜2の特定のハイドロフルオロカーボン類が挙げられる。具体的には例えば、ジフルオロメタン(HFC−32)、トリフルオロメタン(HFC−23)、ペンタフルオロエタン(HFC−125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、などのHFC、またはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらの冷媒は用途や要求性能に応じて適宜選択されるが、例えばHFC−32単独;HFC−23単独;HFC−134a単独;HFC−125単独;HFC−134a/HFC−32=60〜80質量%/40〜20質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/60〜30質量%の混合物;HFC−125/HFC−143a=40〜60質量%/60〜40質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=60質量%/30質量%/10質量%の混合物;HFC−134a/HFC−32/HFC−125=40〜70質量%/15〜35質量%/5〜40質量%の混合物;HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=35〜55質量%/1〜15質量%/40〜60質量%の混合物などが好ましい例として挙げられる。さらに具体的には、HFC−134a/HFC−32=70/30質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=60/40質量%の混合物;HFC−32/HFC−125=50/50質量%の混合物(R410A);HFC−32/HFC−125=45/55質量%の混合物(R410B);HFC−125/HFC−143a=50/50質量%の混合物(R507C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=30/10/60質量%の混合物;HFC−32/HFC−125/HFC−134a=23/25/52質量%の混合物(R407C);HFC−32/HFC−125/HFC−134a=25/15/60質量%の混合物(R407E);HFC−125/HFC−134a/HFC−143a=44/4/52質量%の混合物(R404A)などが挙げられる。
【0050】
含フッ素エーテル系冷媒としては、具体的には、HFE−134p、HFE−245mc、HFE−236mf、HFE−236me、HFE−338mcf、HFE−365mc−f、HFE−245mf、HFE−347mmy、HFE−347mcc、HFE−125、HFE−143m、HFE−134m、HFE−227meなどが挙げられる。
【0051】
また、炭化水素冷媒としては、25℃、1気圧で気体のものが好ましく用いられる。具体的には炭素数1〜5、好ましくは1〜4のアルカン、シクロアルカン、アルケンまたはこれらの混合物である。具体的には例えば、メタン、エチレン、エタン、プロピレン、プロパン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、シクロブタン、メチルシクロプロパンまたはこれらの2種以上の混合物などがあげられる。これらの中でも、プロパン、ブタン、イソブタンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0052】
HFC冷媒と二酸化炭素、含フッ素エーテル系冷媒、ジメチルエーテル、アンモニア、との混合比は特に制限されないが、HFC冷媒と併用する冷媒の合計量は、HFC100質量部に対して、好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部である。好適な態様としては、HFC冷媒と二酸化炭素および/または炭化水素とを、HFC100質量部に対して二酸化炭素と炭化水素合計量として好ましくは1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部を配合した混合冷媒が挙げられる。
【0053】
本発明の冷凍機油は、通常、冷凍空調機器においては上述したようなHFCを含有する冷媒と混合された冷凍機用流体組成物の形で存在している。この組成物における冷凍機油と冷媒との配合割合は特に制限されないが、冷媒100質量部に対して冷凍機油が好ましくは1〜500質量部、より好ましくは2〜400質量部である。
【0054】
本発明の冷凍機油及び冷凍機用作動流体組成物は、潤滑性、冷媒相溶性、低温流動性、安定性等の要求性能全てをバランスよく十分に満足させるものであり、往復動式あるいは回転式の開放型または密閉型圧縮機を有する冷凍機器あるいはヒートポンプ等に好適に使用することができる。
【0055】
前記冷凍機器として、より具体的には、自動車用エアコン、除湿器、冷蔵庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置、住宅用エアコン、給湯用ヒートポンプ等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
[実施例1〜18、比較例1〜10]
実施例1〜18及び比較例1〜10においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて表1〜4に示す組成を有する冷凍機油組成物を調製した。
(基油)
基油1:アルキルジフェニルエーテル1(40℃における動粘度:15mm/s、流動点:−40℃未満)
基油2:アルキルジフェニルエーテル2(40℃における動粘度:32mm/s、流動点:−40℃未満)
基油3:基油1(70質量部)と基油6(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:21mm/s、流動点:−40℃未満)
基油4:基油1(70質量部)と基油7(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:22mm/s、流動点:−40℃未満)
基油5:基油1(70質量部)と基油8(30質量部)との混合物(40℃における動粘度:22mm/s、流動点:−40℃未満)
基油6:ポリオキシアルキレングリコールジアルキルエーテル(40℃における動粘度50mm/s、流動点:−40℃未満)
基油7:2−エチルヘキサン酸及び3,5,5−トリメチルヘキサン酸の混合脂肪酸とペンタエリスリトールとのテトラエステル(40℃における動粘度68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油8:ポリビニルエーテル(40℃における動粘度68mm/s、流動点:−40℃未満)
基油9:分岐型アルキルベンゼン(40℃における動粘度32mm/s、流動点:−40℃未満)。
(添加剤)
添加剤A1:トリクレジルホスフェート
添加剤A2:グリシジル−2,2’−ジメチルオクタノエート
添加剤A3:1,2−エポキシシクロヘキサン。
【0058】
次に、実施例1〜18及び比較例1〜10の各冷凍機油組成物について以下の評価を行った。
【0059】
〔冷媒相溶性試験〕
JIS K 2111に準拠し、HFC−134aを19g、試料油を1gガラス管に封入し、0℃で冷媒を試料油が相互に溶解しているか分離しているかを観察した。
【0060】
〔潤滑性試験〕
ローリングピストン型コンプレッサを用い、実施例および比較例の各冷凍機油70gおよび冷媒(HFC−134a)50gをこのコンプレッサに充填し、吐出圧16kgf/cmG、吸入圧0kgf/cmG、回転数3000rpm、試験温度160℃の条件で1000時間運転を行い、試験後のコンプレッサのベーンの摺動面の表面粗さRaを測定した。
【0061】
〔熱安定性試験〕
オートクレーブに試料油90g、HFC−134a:10gを封入し、鉄、銅およびアルミニウムを触媒として安定性テストを行い、200℃で2週間保持した後の試料油の酸価を測定した。なお、各試料油の初期酸価は全て0.01mgKOH/g以下である。
【0062】
〔電気絶縁性試験〕
JIS C2101に準拠し、試料温度25℃で、試料油に250V/mmの直流電流を印加し、1分後の電流値から体積抵抗率を求めた。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルジフェニルエーテルを含有し、ハイドロフルオロカーボン冷媒と共に用いられることを特徴とする冷凍機油。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロカーボン冷媒が、HFC−134a、R407C、R404AまたはR410Aであることを特徴とする、請求項1に記載の冷凍機油
【請求項3】
アルキルジフェニルエーテルと、ハイドロフルオロカーボン冷媒とを含有することを特徴とする冷凍機用作動流体組成物。
【請求項4】
前記ハイドロフルオロカーボン冷媒が、HFC−134a、R407C、R404AまたはR410Aであることを特徴とする請求項3に記載の冷凍機用作動流体組成物。


【公開番号】特開2008−239818(P2008−239818A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82716(P2007−82716)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】