説明

冷却システム及び冷却方法

【課題】少ない動力で効率的に清水温度を制御することができ、省エネルギー化及びコストダウンを図ることができる冷却システム及び冷却方法を提供する。
【解決手段】一次冷却水Wsを供給する一次冷却水ポンプ3と、一次冷却水ポンプ3を駆動させる駆動用モータ4と、二次冷却水Wcの温度を計測する供給側温度センサ5と、駆動用モータ4の駆動周波数を制御する制御ユニット6と、を有し、制御ユニット6は、供給側温度センサ5の計測温度Tmと駆動用モータ4の駆動周波数とを対応付けた制御テーブル及び二次冷却水Wcの制御目標値である設定温度を記憶する記憶部61と、供給側温度センサ5の計測温度Tmから駆動周波数を算出する制御部62と、を備え、制御部62は、計測温度Tmに基づいて、テーブル制御とフィードバック制御と、を切り換え可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、船舶等の輸送機器に搭載された各種機器を冷却する冷却システム及び冷却方法に関し、特に、省エネルギー化及びコストダウンに優れた冷却システム及び冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶等の輸送機器に搭載されたエンジン、発電機、エアコンプレッサ等といった各種機器を冷却するに際して、海から海水を取り込んで熱交換させ、熱を持った海水を海に返す冷却システムが採用されていた。しかし、このような冷却システムでは、冷却管が破損した場合に油が冷却用海水に混入して船外に流失する虞がある。また、海岸近傍に設置された工業用水の不十分なプラントに配置された機器類の冷却においても、冷却水として海水を使用する場合には、同様の問題が起こり得る。
【0003】
そのため、近年においては、閉回路を循環する清水で各種機器の冷却を行い、閉回路内の清水を、船外から取り込んだ海水で熱交換する冷却システムが実用化されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このような冷却システムにおいては、冷却管が破損した場合でも、油が閉回路内に留まって船外へ流失しないという利点がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、冷却海水移送ポンプと、冷却海水移送ポンプ駆動モータと、駆動モータの回転数を制御するインバータ装置と、冷却清水循環配管と、清水バイパス配管と、清水バイパス配管を流れる清水の流量を調整する清水温度調整弁と、清水温度検出器と、調整弁制御装置と、を備え、インバータ装置は、清水温度調整弁の弁開度値と予め設定された弁開度目標値とに基づき操作回転数を演算し、操作回転数にて冷却海水移送ポンプ駆動モータの回転数を制御する冷却システムが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、船舶内に配置された冷却器に一次側冷却水として海水を供給する複数個の海水ポンプを、冷却器と各冷却機器との間に配置されて二次側冷却水として清水を供給する清水供給配管内の清水温度に基づき、選択駆動させることを特徴とする船舶における冷却運転方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−274469号公報
【特許文献2】特開平9−79036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された冷却システムでは、冷却清水を循環する閉回路(冷却清水循環配管)中に清水温度調整弁が装備されており、装置が高価になるという問題があった。また、冷却海水移送ポンプ駆動モータは、清水温度調整弁の弁開度値と予め設定された弁開度目標値とに基づいて演算される回転数に制御されていることから、常にモータを定格運転させる場合よりも船内電力の省エネルギー化を図ることが可能である。しかしながら、温度調整弁は、応答性は良好であるものの、温度を一定の温度に安定的に維持することが苦手であり、弁の開閉を頻繁に繰り返しながら温度調整する構成となっている。したがって、特許文献1に記載された冷却システムでは、冷却清水の温度制御の質が低くなってしまう、弁の開閉に応答して冷却海水移送ポンプ駆動モータの制御装置(インバータ装置)が反応することから制御が複雑かつ煩雑になってしまう、という問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された冷却システムでは、目標の清水温度になるように吐出容量が異なる複数台の海水ポンプを選択駆動させるため、複数台の海水ポンプが必要となり、装置が高価になってしまう、重量が増加してしまう、配置場所が必要になってしまう、という問題があった。特に、空間や積載重量に制限のある船舶等の輸送機器においては、その分だけ、積荷の積載可能空間及び重量が減ってしまう可能性もあった。
【0009】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、少ない動力で効率的に清水温度を制御することができ、省エネルギー化及びコストダウンを図ることができる冷却システム及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、外部から供給される一次冷却水と閉回路を循環する二次冷却水とを熱交換し、前記二次冷却水により被冷却機器を冷却する冷却システムにおいて、前記一次冷却水を供給する一次冷却水ポンプと、該一次冷却水ポンプを駆動させる駆動用モータと、前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度を計測する供給側温度センサと、前記駆動用モータの駆動周波数を制御することによって前記一次冷却水ポンプにより供給される前記一次冷却水の流量を制御する制御ユニットと、を有し、前記制御ユニットは、前記供給側温度センサの計測温度と前記駆動用モータの駆動周波数とを対応付けた制御テーブル及び前記二次冷却水の制御目標値である設定温度を記憶する記憶部と、前記供給側温度センサの計測温度から前記駆動周波数を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度に基づいて、前記制御テーブルを用いたテーブル制御と、前記設定温度との偏差に基づいたフィードバック制御と、を切り換え可能に構成されている、ことを特徴とする冷却システムが提供される。
【0011】
前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度が、前記設定温度以下の値である第一閾値より低い場合にテーブル制御を選択し、前記第一閾値より高い場合にフィードバック制御を選択するようにしてもよい。
【0012】
前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度が、前記設定温度以上の値である第二閾値より高い場合に前記駆動用モータを定格回転させるようにしてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記冷却システムの始動時又は再始動時に前記駆動用モータを一定時間に渡って定格回転させるようにしてもよい。
【0014】
前記フィードバック制御は、例えば、比例制御、比例積分制御又は比例積分微分制御である。
【0015】
前記被冷却機器から排出された前記二次冷却水の温度を計測する排出側温度センサと、該排出側温度センサよりも下流の前記閉回路に配置された流路切換弁と、該流路切換弁に接続されるとともに前記被冷却機器から排出された前記二次冷却水を前記一次冷却水と熱交換させずに前記閉回路内をショートカットするバイパス流路と、を有し、前記制御部は、前記排出側温度センサの計測温度が前記設定温度よりも低い場合に、前記バイパス流路に前記二次冷却水を送流するように前記流路切換弁を制御するようにしてもよい。
【0016】
前記制御テーブルは、前記一次冷却水の温度ごとに作成されていてもよい。また、前記制御ユニットは、前記制御部の出力に基づいて前記駆動用モータの前記駆動周波数を変更するインバータを有していてもよい。また、前記冷却システムは船舶に搭載され、前記一次冷却水は前記船舶に形成された取水口から取水されるように構成されていてもよい。
【0017】
また、本発明によれば、外部から供給される一次冷却水と閉回路を循環する二次冷却水とを熱交換し、前記一次冷却水の流量を制御することによって前記二次冷却水を設定温度に調整し、前記二次冷却水により被冷却機器を冷却する冷却方法において、前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度に基づいて、前記二次冷却水の温度に対応した前記一次冷却水の流量を供給するテーブル制御と、前記設定温度との偏差により前記一次冷却水の流量を調整するフィードバック制御と、を切り換えながら前記被冷却機器を冷却する、ことを特徴とする冷却方法が提供される。
【0018】
前記一次冷却水を供給する一次冷却水ポンプと、該一次冷却水ポンプを駆動させる駆動用モータと、を有する冷却システムに適用され、前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度が、前記設定温度以上の場合に前記駆動用モータを定格回転させるようにしてもよい。さらに、前記冷却システムの始動時又は再始動時に前記駆動用モータを一定時間に渡って定格回転させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明に係る冷却システム及び冷却方法によれば、温度調整弁を使用せずに二次冷却水の温度を制御するようにしたことにより、冷却システムの費用を削減することができるとともに、複雑かつ煩雑な制御を行う必要がない。また、本発明は、二次冷却水の温度に基づいてテーブル制御とフィードバック制御とを切り換えながら駆動用モータの駆動周波数を制御するようにしたことにより、駆動用モータを常に定格運転させる必要がなく、省エネルギー化を図ることができる。また、かかる制御を採用することにより、二次冷却水の温度をきめ細かく制御することができ、二次冷却水の温度制御の質を向上させることもできる。したがって、少ない動力で効率的に二次冷却水(清水)の温度を制御することができ、省エネルギー化及びコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る冷却システムの全体構成図である。
【図2】図1に示した冷却システムの制御方法の全体を説明するためのタイムチャートである。
【図3】図1に示した冷却システムの制御方法を説明するための図であり、(a)は再始動時のタイムチャート、(b)は制御テーブルの一例、を示している。
【図4】本発明の第二実施形態に係る冷却システムの全体構成図である。
【図5】本発明の第三実施形態に係る冷却システムを説明するための図であり、(a)は全体構成図であり、(b)は制御テーブルの一例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の冷却システムに係る第一実施形態について、図1乃至図3を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る冷却システムの全体構成図である。図2は、図1に示した冷却システムの制御方法の全体を説明するためのタイムチャートである。図3は、図1に示した冷却システムの制御方法を説明するための図であり、(a)は再始動時のタイムチャート、(b)は制御テーブルの一例、を示している。
【0022】
本発明の第一実施形態に係る冷却システム1は、図1に示したように、外部から供給される一次冷却水Wsと閉回路Rを循環する二次冷却水Wcとを熱交換し、二次冷却水Wcにより被冷却機器2を冷却する冷却システムであって、一次冷却水Wsを供給する一次冷却水ポンプ3と、一次冷却水ポンプ3を駆動させる駆動用モータ4と、被冷却機器2に供給される二次冷却水Wcの温度を計測する供給側温度センサ5と、駆動用モータ4の駆動周波数Frを制御することによって一次冷却水ポンプ3により供給される一次冷却水Wsの流量を制御する制御ユニット6と、を有し、制御ユニット6は、供給側温度センサ5の計測温度Tmと駆動用モータ4の駆動周波数Frとを対応付けた制御テーブル61a及び二次冷却水Wcの制御目標値である設定温度Tsを記憶する記憶部61と、供給側温度センサ5の計測温度Tmから駆動周波数Frを算出する制御部62と、を備え、制御部62は、供給側温度センサ5の計測温度Tmに基づいて、制御テーブル61aを用いたテーブル制御と、設定温度Tsとの偏差に基づいたフィードバック制御と、を切り換え可能に構成されている。
【0023】
前記冷却システム1は、一次冷却水ポンプ3により一次冷却水Wsを汲み上げ、汲み取った一次冷却水Wsを熱交換器7(例えば、プレート式熱交換器)に供給し、熱交換を終えた一次冷却水Wsを系外に排出する一次冷却水流路Fを有する。また、閉回路Rには、二次冷却水Wcを循環させる二次冷却水ポンプ8が配置されている。かかる冷却システム1は、例えば、船舶に搭載され、一次冷却水Wsは、船舶に形成された取水口から取水される海水であり(船舶によっては湖水又は河水であってもよい)、二次冷却水Wcは、閉回路R内に閉じ込められた清水である(冷却効果の高い又は所定の添加剤を加えた冷却液であってもよい)。なお、冷却システム1は、船舶に搭載されたものに限定されず、海岸、湖岸、河岸等の近傍に設置されたプラントに配置されたものであってもよい。
【0024】
前記被冷却機器2は、冷却システム1が配備される船舶やプラント等に使用されているエンジン(主機)、発電機、エアコンプレッサ等の発熱し冷却を要する各種機器である。本発明では、これらの各種機器群を総称して被冷却機器2と表示している。実際には、閉回路Rは、各種機器に二次冷却水Wcを供給できるように分岐している。
【0025】
前記一次冷却水ポンプ3は、熱交換器7に一次冷却水Wsを供給する機器である。図1では、海から海水を汲み上げて一次冷却水Wsとして使用し、海に排出する場合を想定している。なお、一次冷却水ポンプ3は、冷却水タンク等に一次冷却水Wsが貯水されている場合には、冷却水タンク等から熱交換器7に一次冷却水Wsを供給する機器であってもよいし、一次冷却水Wsとして冷却効果の高い又は所定の添加剤を加えた冷却液を循環させて使用する場合には、一次冷却水Wsを循環させる機器であってもよい。かかる一次冷却水ポンプ3により、熱交換器7に供給される一次冷却水Wsの流量を調整することができる。
【0026】
前記駆動用モータ4は、一次冷却水ポンプ3の駆動源であり、一次冷却水ポンプ3の流量を制御する機器である。駆動用モータ4は、制御ユニット6により駆動周波数Fr(すなわち、回転数)が制御され、かかる回転数によって一次冷却水ポンプ3の流量が調整される。
【0027】
前記供給側温度センサ5は、二次冷却水Wcが熱交換器7から被冷却機器2に供給される閉回路Rの途中に配置された温度センサである。被冷却機器2に供給される二次冷却水Wcの温度を計測することにより、二次冷却水Wcが被冷却機器2の冷却に必要な所望の温度(設定温度Ts)に維持されているかを容易に確認することができる。供給側温度センサ5は、計測した温度を制御ユニット6に出力する。
【0028】
前記制御ユニット6は、駆動用モータ4の駆動周波数Frを制御することによって一次冷却水ポンプ3の吐出量(一次冷却水Wsの流量)を制御する機器である。制御ユニット6は、図1に示したように、記憶部61及び制御部62に加え、制御部62の出力に基づいて駆動用モータ4の駆動周波数Frを変更するインバータ63を有していてもよい。インバータ63は、直流電力から交流電力を電気的に生成(逆変換)する電源回路であり、制御部62等と組み合わされてインバータ装置を構成し、必要な時に必要な分だけの流量を供給できるように駆動用モータ4の駆動を調節することにより、省エネルギー効果を向上させることができる。
【0029】
前記制御部62は、供給側温度センサ5の計測温度Tmに基づいて適切な制御方法を選択し、駆動用モータ4の駆動周波数Frを算出する部分である。図1に示したように、制御部62は、図3(b)に示したような制御テーブル61aを用いたテーブル制御と、計測温度Tmと設定温度Tsとの偏差に基づいたPI制御と、ある条件で駆動用モータ4を定格回転させる定格運転と、に切り替え可能に構成されている。
【0030】
テーブル制御は、図3(b)に示したように、計測温度Tmに対して一義的に駆動周波数Frを決定する制御テーブル61aを使用して、駆動用モータ4の駆動周波数Frを制御する。なお、図3(b)に示した制御テーブル61aは、単なる一例であり、かかる形式及び数値に限定されるものではない。
【0031】
PI制御(比例積分制御)は、フィードバック制御の単なる一例である。一般に、比例制御(P制御)は、偏差(設定温度Tsと計測温度Tmとの差分)に比例させて操作量を変更する制御である。また、積分制御(I制御)は、偏差の積分値に比例して操作量を変更する制御であり、比例制御(P制御)における定常偏差を解消することができる。さらに、微分制御(D制御)は、偏差の変化率に比例して操作量を変更する制御であり、積分制御(I制御)よりも応答速度を早くすることができる。したがって、冷却システム1の規模や用途に応じて、フィードバック制御として、比例制御(P制御)、比例積分制御(PI制御)又は比例積分微分制御(PID制御)を任意に選択して使用することができる。
【0032】
定格運転は、駆動用モータ4の能力を100%発揮できる状態で回転(定格回転)させるように駆動用モータ4を制御する。従来の一般的な船舶の冷却システム1では、この定格運転のみによって駆動用モータ4を作動させていた。本発明は、基本的に、テーブル制御とフィードバック制御とを組み合わせることによって、効率よく、二次冷却水Wcの温度が設定温度を維持するように制御するものである。ただし、冷却システム1の始動時又は再始動時や二次冷却水Wcの温度が設定温度を超えた高温になった時等の場合には、駆動用モータ4を定格回転させた方が好ましい。
【0033】
前記記憶部61は、制御部62の処理に必要なデータ類を記憶しておく部分である。記憶部61には、例えば、供給側温度センサ5の計測温度Tmと駆動用モータ4の駆動周波数Frとを対応付けた制御テーブル61a、二次冷却水Wcの制御目標値である設定温度Ts、フィードバック制御で使用されるプログラム等が記憶される。記憶部61には、計測温度Tmや駆動周波数Frの履歴を記憶させるようにしてもよい。かかる履歴を記憶させることにより、故障の発見、故障の原因究明、制御テーブル61aやプログラムの改良等に役立てることができる。
【0034】
上述した本発明に冷却システム1によれば、外部から供給される一次冷却水Wsと閉回路Rを循環する二次冷却水Wcとを熱交換し、一次冷却水Wsの流量を制御することによって二次冷却水Wcを設定温度Tsに調整し、二次冷却水Wcにより被冷却機器2を冷却する冷却方法において、被冷却機器2に供給される二次冷却水Wcの温度に基づいて、二次冷却水Wcの温度に対応した一次冷却水Wsの流量を供給するテーブル制御と、設定温度Tsとの偏差により一次冷却水Wsの流量を調整するフィードバック制御と、を切り換えながら被冷却機器2を冷却するようにすることができる。
【0035】
ここで、図2のタイムチャートを参照しつつ、図1に示した冷却システム1の作用及び冷却方法について詳細に説明する。図2の上図は、駆動周波数Fr[Hz]を示すタイムチャートであり、図2の下図は、二次冷却水Wcの計測温度Tm[℃]を示すタイムチャートである。
【0036】
計測温度Tmのタイムチャートに示したように、制御部62は、設定温度Tsの他に、設定温度Ts以下の値である第一閾値T1と、設定温度Ts以上の値である第二閾値T2と、を有している。そして、制御部62は、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第一閾値T1を超えたか否か、第二閾値T2を超えたか否か、を判断することにより、テーブル制御、PI制御及び定格運転を切り換えて、効率よく駆動用モータ4を作動させる。具体的には、以下のとおりである。
【0037】
冷却システム1は、時間t1に始動されたものとする。例えば、冷却システム1が船舶に搭載されたものである場合には、港に停泊していた船舶が出港する場合に相当する。この冷却システム1の始動時間t1は、エンジン(主機)の始動と同時であってもよいし、エンジン(主機)を始動させる前後の時間であってもよい。冷却システム1が停止していた場合、二次冷却水Wcの温度は低い温度になっていることが多い。したがって、速やかに二次冷却水Wcの温度を設定温度Tsに上昇させる必要がある。
【0038】
時間t1から時間t2までの区間Aでは、制御部62は、駆動用モータ4を一定時間(時間t2−時間t1)に渡って定格回転させる。かかる処理により、閉回路R内の二次冷却水Wcの温度を均一にして、熱溜りを除去することができ、制御の質を向上させることができる。この駆動用モータ4の定格運転は、例えば、10〜15分程度継続される。この定格運転の継続時間は、試験的又は経験的に所定の一定時間に固定してもよいし、供給側温度センサ5の計測温度Tmが均一な温度となるまで(一定時間同じ数値を示すまで)のように設定してもよい。
【0039】
時間t2に到達すると、制御部62は定格運転からテーブル制御に切り換える。均一になった二次冷却水Wcの温度を速やかに設定温度Tsに接近させるためである。そして、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第一閾値T1に達すると(時間t3)、制御部62はテーブル制御からPI制御に切り換える。設定温度Tsに接近した二次冷却水Wcの温度が、設定温度Tsを超えないように、かつ、設定温度Tsに漸近するように、きめ細かい制御が必要になるためである。第一閾値T1は、例えば、設定温度Tsよりも0.5〜1℃程度低い範囲内に設定される。具体的には、設定温度Tsが38℃の場合には、第一閾値T1は37〜37.5℃の範囲内に、好ましくは37℃に設定される。
【0040】
今、時間t4よりも手前のある時間において、エンジン(主機)の負荷が急激に低下した場合を想定する。この場合、被冷却機器2の発熱量が急激に低下するため、二次冷却水Wcの計測温度Tmは急激に低下する。そして、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第一閾値T1に達すると(時間t4)、制御部62はPI制御からテーブル制御に切り換える。第一閾値T1よりも低下した二次冷却水Wcの計測温度Tmは、再びテーブル制御によって、速やかに設定温度Tsに接近される。
【0041】
そして、二次冷却水Wcの計測温度Tmが再び第一閾値T1に達すると(時間t5)、制御部62はテーブル制御からPI制御に切り換える。
【0042】
今、時間t6よりも手前のある時間において、エンジン(主機)の負荷が急激に増加した場合を想定する。この場合、被冷却機器2の発熱量が急激に増加するため、二次冷却水Wcの計測温度Tmは急激に上昇する。そして、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第二閾値T2に達すると(時間t6)、制御部62はPI制御から定格運転に切り換える。二次冷却水Wcの温度が高くなり過ぎると、被冷却機器2の冷却が不十分となりオーバーヒートしてしまう場合がある。そこで、直ちに二次冷却水Wcの温度を低下させるために、駆動用モータ4を定格回転させている。第二閾値T2は、例えば、設定温度Tsよりも0.5〜2℃程度高い範囲内に設定される。具体的には、設定温度Tsが38℃の場合には、第二閾値T2は38.5〜40.0℃の範囲内、好ましくは39℃に設定される。なお、第二閾値T2は、設定温度Tsと同じ値に設定されてもよいが、この場合、定格運転とPI制御とを頻繁に繰り返すおそれがあるため、上述した範囲内に設定することが好ましい。
【0043】
そして、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第一閾値T1に達すると(時間t7)、制御部62は定格運転からPI制御に切り換える。このとき、計測温度Tmが第一閾値T1よりも低くなった場合には、定格運転からPI制御に切り換える前に、一旦、テーブル制御を挟むようにしてもよい。瞬間的に第一閾値T1を超えた場合にテーブル制御とPI制御とを切り換える場合には、制御が煩雑になる場合もあるため、第一閾値T1を超えた状態(低い方から高い方に超える場合と高い方から低い方に超える場合とがある)が一定時間経過した場合にテーブル制御とPI制御とを切り換えるようにしてもよい。
【0044】
その後、エンジン(主機)の急激な負荷変動がなければ、図2に示したように、PI制御によって二次冷却水Wcの温度が設定温度Tsに近接した値に維持される。
【0045】
かかる制御によって、区間A(時間t1〜時間t2)及び区間F(時間t6〜時間t7)では定格運転、区間B(時間t2〜時間t3)及び区間D(時間t4〜時間t5)ではテーブル制御、区間C(時間t3〜時間t4)、区間E(時間t5〜時間t6)及び区間G(時間t7以降)ではPI制御により、駆動用モータ4の駆動周波数Frが制御されている。駆動周波数Frのタイムチャートによれば、定格回転(駆動周波数:60Hz)している時間はほんの僅かであり、ほとんどの時間において、約半分程度の駆動周波数で駆動用モータ4を運転することができ、省エネルギー化を効果的に図ることができる。
【0046】
上述したように、図1に示した冷却システム1では、制御部62は、供給側温度センサ5の計測温度Tmが、設定温度Ts以下の値である第一閾値T1より低い場合にテーブル制御を選択し、第一閾値T1より高い場合にフィードバック制御(例えば、PI制御)を選択するように構成されている。また、制御部62は、供給側温度センサ5の計測温度Tmが、設定温度Ts以上の値である第二閾値T2より高い場合に駆動用モータ4を定格回転させるように構成されている。かかる構成により、テーブル制御、フィードバック制御及び定格運転を効果的に切り換えることができ、二次冷却水Wcの温度をきめ細かく制御することができ、二次冷却水Wcの温度制御の質を向上させることが、少ない動力で効率的に二次冷却水Wcの温度を制御することができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0047】
また、上述した冷却方法では、一次冷却水Wsを供給する一次冷却水ポンプ3と、一次冷却水ポンプ3を駆動させる駆動用モータ4と、を有する冷却システム1に適用される場合には、被冷却機器2に供給される二次冷却水Wcの温度が、設定温度Ts(図2の説明では第二閾値T2)以上の場合に駆動用モータ4を定格回転させるようにしている。かかる冷却方法により、設定温度Tsを超えた二次冷却水Wcの温度を急激に低下させることができ、被冷却機器2のオーバーヒートを抑制することができる。
【0048】
さらに、上述した冷却方法では、冷却システム1の始動時に駆動用モータ4を一定時間に渡って定格回転させるようにしたことにより、閉回路R内の二次冷却水Wcの温度を均一にして、熱溜りを除去することができ、制御の質を向上させることができる。
【0049】
次に、冷却システム1を搭載した船舶等が停電(ブラックアウト)した場合、すなわち、冷却システム1が何らかの原因により作動しなくなった場合の作用について、図3(a)を参照しつつ説明する。
【0050】
今、図3(a)に示した計測温度Tmのタイムチャートのように、時間t8よりも手前のある時間において、冷却システム1がブラックアウトした場合を想定する。この場合、冷却システム1は作動していないため、二次冷却水Wcは冷却されず、被冷却機器2の残存発熱量により、二次冷却水Wcは設定温度Tsよりも高くなっている場合が考えられる。そこで、冷却システム1の通電が復帰したら(予備電源による通電の場合も含む)、直ちに駆動用モータ4を定格運転する。
【0051】
具体的には、制御部62は、冷却システム1の再始動時に駆動用モータ4を一定時間に渡って定格回転させる。一定期間は、例えば、区間H(時間t8〜時間t9)の間であり、冷却システム1の始動時と同様に、10〜15分程度に設定される。勿論、定格運転の継続時間は、供給側温度センサ5の計測温度Tmが均一な温度となるまで(一定時間同じ数値を示すまで)のように設定してもよい。かかる処理により、閉回路R内の二次冷却水Wcの温度を均一にして、熱溜りを除去することができ、制御の質を向上させることができる。
【0052】
そして、時間t9に到達した際に、図3(a)に示したように、供給側温度センサ5の計測温度Tmが第一閾値T1より低い場合に、制御部62は定格運転からテーブル制御に切り換える。このとき、供給側温度センサ5の計測温度Tmが第一閾値T1より高い場合には、定格運転からPI制御に切り換えるようにしてもよい。
【0053】
その後、二次冷却水Wcの計測温度Tmが第一閾値T1に達すると(時間t10)、制御部62はテーブル制御からPI制御に切り換える。かかる制御によって、区間H(時間t8〜時間t9)では定格運転、区間I(時間t9〜時間t10)ではテーブル制御、区間J(時間t10以降)ではPI制御により、駆動用モータ4の駆動周波数Frが制御されている。
【0054】
このように、図1に示した冷却システム1によれば、システムがブラックアウトした場合であっても、直ちに二次冷却水Wcの温度を冷却して設定温度Ts以下にすることができ、その後、テーブル制御及びPI制御(フィードバック制御)を組み合わせて駆動用モータ4を制御することにより、円滑に通常の制御に復帰させることができる。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態に係る冷却システム101について説明する。ここで、図4は、本発明の第二実施形態に係る冷却システムの全体構成図である。なお、第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
図4に示した第二実施形態に係る冷却システム101は、被冷却機器2から排出された二次冷却水Wcの温度を計測する排出側温度センサ9と、排出側温度センサ9よりも下流の閉回路Rに配置された流路切換弁10と、流路切換弁10に接続されるとともに被冷却機器2から排出された二次冷却水Wcを一次冷却水Wsと熱交換させずに閉回路R内をショートカットするバイパス流路11と、を有し、制御部62は、排出側温度センサ9の計測温度Tnが設定温度Tsよりも低い場合に、バイパス流路11に二次冷却水Wcを送流するように流路切換弁10を制御するようにしたものである。
【0057】
例えば、冷却システム101を船舶に搭載した場合において、長時間停泊した場合、冬季に運航する場合、寒冷地域を運航する場合等のように、二次冷却水Wcの排出側温度センサ9の計測温度Tnが設定温度Tsよりも低い場合には、二次冷却水Wcを一次冷却水Wsで冷却(熱交換)する必要がないことから、流路切換弁10及びバイパス流路11により、熱交換器7をバイパスさせることによって、駆動用モータ4を駆動させずに二次冷却水Wcを循環させることができ、より少ない動力で被冷却機器2を冷却したり、二次冷却水Wcの温度を均一にしたり、することができ、さらに省エネルギー化を図ることができる。
【0058】
次に、本発明の第三実施形態に係る冷却システム201について説明する。ここで、図5は、本発明の第三実施形態に係る冷却システムを説明するための図であり、(a)は全体構成図であり、(b)は制御テーブルの一例、を示している。なお、第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
図5(a)に示した第二実施形態に係る冷却システム201は、一次冷却水流路Fに一次冷却水温度センサ12を配置して、一次冷却水Wsの温度を計測し、制御ユニット6の記憶部61に記憶された制御テーブル61aを、図5(b)に示したように、一次冷却水Wsの温度ごとに作成したものである。
【0060】
図5(b)に示した制御テーブル61aでは、一次冷却水計測温度Tfが20〜32℃の範囲(一部省略)となるように作成されているが、単なる一例であり、かかる数値に限定されるものではない。
【0061】
また、図5(a)において、一次冷却水流路Fに一次冷却水温度センサ12を配置した場合について説明したが、冷却システム201以外の利用目的のために、既に一次冷却水Wsの計測温度Tfが入手されている場合には、新たに一次冷却水温度センサ12を配置する必要はなく、他の制御ユニットからデータを取得するようにすればよい。
【0062】
このように、一次冷却水Wsの温度に応じて使用する制御テーブル61aを変更することにより、より精密なテーブル制御を行うことができる。
【0063】
上述した第一実施形態〜第三実施形態に係る冷却システムでは、テーブル制御及びフィードバック制御を組み合わせるとともにインバータ63を使用して駆動用モータ4を制御するようにしたことにより、常時、駆動用モータ4を定格回転させていた従来の船舶と比較して、格段の省エネルギー化を図ることができる。
【0064】
例えば、回転数890rpm、駆動周波数60Hzの駆動用モータをある一定時間だけ定格運転した場合には、2838kWhのエネルギーを消費するが、本発明の冷却システムを使用し、設定温度Tsを36℃に設定して同じ時間だけ運転した場合には、326kWhのエネルギー消費で済ますことができ、約88.5%の省エネルギー化を図ることができる。また、かかる電力削減により、燃料に使用量も削減することができる。
【0065】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1,101,201 冷却システム
2 被冷却機器
3 一次冷却水ポンプ
4 駆動用モータ
5 供給側温度センサ
6 制御ユニット
9 排出側温度センサ
10 流路切換弁
11 バイパス流路
61 記憶部
61a 制御テーブル
62 制御部
63 インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される一次冷却水と閉回路を循環する二次冷却水とを熱交換し、前記二次冷却水により被冷却機器を冷却する冷却システムにおいて、
前記一次冷却水を供給する一次冷却水ポンプと、
該一次冷却水ポンプを駆動させる駆動用モータと、
前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度を計測する供給側温度センサと、
前記駆動用モータの駆動周波数を制御することによって前記一次冷却水ポンプにより供給される前記一次冷却水の流量を制御する制御ユニットと、を有し、
前記制御ユニットは、前記供給側温度センサの計測温度と前記駆動用モータの駆動周波数とを対応付けた制御テーブル及び前記二次冷却水の制御目標値である設定温度を記憶する記憶部と、前記供給側温度センサの計測温度から前記駆動周波数を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度に基づいて、前記制御テーブルを用いたテーブル制御と、前記設定温度との偏差に基づいたフィードバック制御と、を切り換え可能に構成されている、
ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度が、前記設定温度以下の値である第一閾値より低い場合にテーブル制御を選択し、前記第一閾値より高い場合にフィードバック制御を選択する、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記供給側温度センサの計測温度が、前記設定温度以上の値である第二閾値より高い場合に前記駆動用モータを定格回転させる、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記冷却システムの始動時又は再始動時に前記駆動用モータを一定時間に渡って定格回転させる、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記フィードバック制御は、比例制御、比例積分制御又は比例積分微分制御である、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記被冷却機器から排出された前記二次冷却水の温度を計測する排出側温度センサと、該排出側温度センサよりも下流の前記閉回路に配置された流路切換弁と、該流路切換弁に接続されるとともに前記被冷却機器から排出された前記二次冷却水を前記一次冷却水と熱交換させずに前記閉回路内をショートカットするバイパス流路と、を有し、前記制御部は、前記排出側温度センサの計測温度が前記設定温度よりも低い場合に、前記バイパス流路に前記二次冷却水を送流するように前記流路切換弁を制御する、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記制御テーブルは、前記一次冷却水の温度ごとに作成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、前記制御部の出力に基づいて前記駆動用モータの前記駆動周波数を変更するインバータを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記冷却システムは船舶に搭載され、前記一次冷却水は前記船舶に形成された取水口から取水される、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項10】
外部から供給される一次冷却水と閉回路を循環する二次冷却水とを熱交換し、前記一次冷却水の流量を制御することによって前記二次冷却水を設定温度に調整し、前記二次冷却水により被冷却機器を冷却する冷却方法において、
前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度に基づいて、前記二次冷却水の温度に対応した前記一次冷却水の流量を供給するテーブル制御と、前記設定温度との偏差により前記一次冷却水の流量を調整するフィードバック制御と、を切り換えながら前記被冷却機器を冷却する、ことを特徴とする冷却方法。
【請求項11】
前記一次冷却水を供給する一次冷却水ポンプと、該一次冷却水ポンプを駆動させる駆動用モータと、を有する冷却システムに適用され、前記被冷却機器に供給される前記二次冷却水の温度が、前記設定温度以上の場合に前記駆動用モータを定格回転させるようにした、ことを特徴とする請求項10に記載した冷却方法。
【請求項12】
前記冷却システムの始動時又は再始動時に前記駆動用モータを一定時間に渡って定格回転させるようにした、ことを特徴とする請求項11に記載の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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