説明

冷却パック

【課題】水を含まない二種以上の物質をより一気に混合させることで、吸熱反応を一気に生じさせることができ、且つより簡易な構造の収納袋によって設けることができる冷却パックを提供すること。
【解決手段】冷却剤10を構成する二種以上の物質11、12を混合して生じる吸熱作用によって冷却するように、冷却剤10が、薄膜状のシート状部材51、51によって形成された収納袋50に収納された冷却パックであって、二種以上の物質11、12をそれぞれ区画して収納すると共に、外力を加えた際には剥離して区画がなくなることで二種以上の物質11、12が混合するように、収納袋50を形成するように重ねられたシート状部材51、51の内面同士について帯状に仮付けされた部分である仮付部55を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二種以上の物質を混合することで生じる吸熱作用によって冷却するように、冷却剤が用いられている冷却パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却パックは、プラスチックシートなどの樹脂部材からなる外袋の内部に、冷却剤と、水を内蔵する水袋とを密閉状態に封入し、冷却効果を必要とする際にはその冷却パックを強く叩くことなどによって、外袋を介して水袋を破壊させて、冷却剤と水とが混合される際の吸熱作用によって冷却効果を得られるものである。冷却剤は水と反応して液体状になるとともに、吸熱反応の作用によって冷却パック(液体)の温度が−6℃程度まで下がる。
【0003】
これに対して、水に代替させて結晶水を利用するタイプの冷却剤が既に提案されている(特許文献1参照)。この冷却剤は、無機アンモニウム塩に、結晶水を保有する塩として水酸化ストロンチウム8水和物を混合することを特徴とするものである。また、結晶水を保有する塩が、水酸化ストロンチウム8水和物にメタ珪酸ナトリウム9水和物を併用したものであることを特徴とすることができる。さらに、無機アンモニウム塩が、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウムから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とすることができる。
【0004】
また、冷却剤を透水性のある内袋(冷却剤袋)に入れて外袋に収納した冷却パックが提案されている。この冷却パックは、水袋と、水と吸熱反応する2種以上の冷却剤とが一つの外袋に密封して収納され、水袋を破ることによって水と冷却剤とが吸熱反応して冷却作用が起きるように形成された冷却パックにおいて、前記冷却剤が、冷却剤ごとに隔離した状態で、透水性を備えた冷却剤袋に収容されて、前記外袋に収納されていることを特徴とする(特許文献2参照)。これによれば、外気温によって冷却剤が融解して塊状に固まるといった問題を解消し、取り扱いやすくなるという効果がある。
【0005】
さらに、前述の結晶水を保有する塩を用いるタイプの場合、その塩が内袋に収納され、その内袋を、外袋を介して折ることや捩じることなどの外力を与えて破壊することで、無機アンモニウム塩と混合・反応させるようにすることが考えられる。この場合、結晶水を保有する塩は粉状の固体であり、水のように一気に流れ出ないため、吸熱反応が初期において遅延することがある。また、内袋は、保存時には破壊しにくく、外袋を介して外力が与えられる際には破壊し易いことが必要で、適当なものを選定しにくい。なお、内袋に水が封入されている場合は、外力が伝わり易いため、内袋の仕様を比較的容易に選定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−65564(第1頁)
【特許文献2】特開2005−6687(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
冷却パックに関して解決しようとする問題点は、従来は、結晶水を保有する塩と無機アンモニウム塩等の水を含まない二種以上の物質をより一気に混合させることで、吸熱反応を一気に生じさせることができ、且つより簡易な構造の収納袋によって設けられた冷却パックが提案されていないことにある。
そこで本発明の目的は、水を含まない二種以上の物質をより一気に混合させることで、吸熱反応を一気に生じさせることができ、且つより簡易な構造の収納袋によって設けられた冷却パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る冷却パックの一形態によれば、冷却剤を構成する二種以上の物質を混合して生じる吸熱作用によって冷却するように、前記冷却剤が、薄膜状のシート状部材によって形成された収納袋に収納された冷却パックであって、前記二種以上の物質をそれぞれ区画して収納すると共に、外力を加えた際には剥離して区画がなくなることで前記二種以上の物質が混合するように、前記収納袋を形成するように重ねられた前記シート状部材の内面同士について帯状に仮付けされた部分である仮付部を備える。
【0009】
また、本発明に係る冷却パックの一形態によれば、前記仮付部が、二条の帯状部によって構成され、該二条の帯状部の条間部が保管する際の折り曲げられる部分になっていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る冷却パックの一形態によれば、前記収納袋が、断熱性が高い断熱層を備えていることを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る冷却パックの一形態によれば、冷却対象に接する少なくとも一方の面の一部分が前記断熱層を備えないで冷却がされ易い冷却促進面部になっていることを特徴とすることができる。
また、本発明に係る冷却パックの一形態によれば、前記冷却促進面部が、前記発泡性の断熱層が加熱されて圧縮されることで潰されて設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る冷却パックによれば、水を含まない二種以上の物質をより一気に混合させることで、吸熱反応を一気に生じさせることができ、且つより簡易な構造の収納袋によって設けることができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に関連する冷却パックの形態例を示す断面図である。
【図2】図1の形態例の斜視図である。
【図3】本発明に関連する冷却パックの他の形態例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る冷却パックの形態例を示す平面図(a)及び正面図(b)である。
【図5】図4の形態例の製造工程を示す側面図である。
【図6】図4の形態例の冷却剤を収納する前の形状を示す平面図である。
【図7】本発明に係る冷却パックの他の形態例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る冷却パックの他の形態例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に関連する冷却パックの形態例を添付図面(図1〜3)に基づいて詳細に説明する。
この冷却パックは、二種以上の物質を混合して生じる吸熱作用によって冷却するように、冷却剤10が、シート状部材によって形成された外袋20の内部に収納されたものである。
【0014】
冷却剤10を収納する外袋20が、断熱性が高い断熱層21を備えていると共に、冷却対象に接する少なくとも一方の面の一部分が断熱層21を備えないで冷却がされ易い冷却促進面部22になっている。
これによれば、被冷却部を冷却促進面部22によって適切に冷却できると共に、断熱層21によって外部への無駄な放熱を防止でき、冷却対象に対する効率のよい冷却状態を可能とし、冷却効果の持続時間を延長させることができる。なお、冷却対象としては、人体、生ものなどの腐敗防止が必要な被冷却物がある。
【0015】
また、全体的に断熱層21で覆われている面は、冷却対象を緩やかに冷却できる冷却面として利用できる。冷却促進面部22を有する面は、冷却対象をより急速に冷却できる冷却面として利用できる。つまり、冷却パックの表裏の両面で冷却対象に対する温度勾配の異なる冷却を行うことができる。また、冷却促進面部22を除いて広く断熱層21で覆われているため、結露の発生が少ないという利点もある。
【0016】
この効果は、冷却剤10が、無機アンモニウム塩11と、結晶水を保有する塩として水酸化ストロンチウム8水和物12とによって構成される冷却パックにおいて顕著である。
これは、無機アンモニウム塩に、結晶水を保有する塩として水酸化ストロンチウム8水和物を混合することで生じる冷却効果は、従来の水袋を備えるものと比較して圧倒的に優れており、−20℃程度まで冷却することができ、外袋20に断熱層21がない場合は冷却対象を過度に冷却することになるためである。なお、外袋20の全体が断熱層21を備えた場合は、冷却速度が遅くなり過ぎることになり易い。これに対して本形態例によれば、両面を使い分けることで、冷却対象に係る冷却程度の必要に応じて、効率よく適度な速度で冷却をすることが可能になる。
【0017】
ところで、冷却剤が、無機アンモニウム塩11と、結晶水を保有する塩として水酸化ストロンチウム8水和物12とによって構成される冷却パックでは、水酸化ストロンチウム8水和物12が内袋(内部収納袋13)に水密状態で収納されている。冷却効果を必要とする際に、その水酸化ストロンチウム8水和物12の内部収納袋13を破壊して、無機アンモニウム塩11と混合させる状態とすることで、吸熱反応によって冷却効果を得ることができる。なお、内部収納袋13を破壊するには、折ること、捩じること、強く叩くことなど、強い衝撃を与えればよい。
【0018】
冷却促進面部22の形態は、図1及び図2の形態例のような帯状に限定されるものでなく、例えば、円形(図3参照)やスリット形などの複数の露出部によって構成されていてもよい。
また、冷却パックの一方の面のみでなく、両面に冷却促進面部22を設けてもよい。その場合、その露出面積を適宜選択的に設定するなど、冷却パックの両面で形態を変えて冷却促進面部22を設けてもよい。さらに、用途に応じて、一方の面については全面的に冷却促進面部22としてもよい。
【0019】
また、本形態例では、外袋20が、発泡性の断熱層21を一体的に備える樹脂シートからなるシート状部材によって形成されている。この樹脂シートによれば、発泡性の断熱層21が設けられた面側を外袋20の外面側とし、平滑な面が外袋20の内面側となるようにするとよい。
【0020】
また、本形態例では、冷却促進面部22が、発泡性の断熱層21が加熱されて圧縮されることで潰され、その発泡性の断熱層21を無くした樹脂シートの一部分であることを特徴とすることができる。
これによれば、複数の材料部材を使用することなく、所望の形態の外袋20を容易に製造でき、製造コストを低減できる。
【0021】
つまり、この樹脂シートによる外袋20は、同サイズの二枚の樹脂シートを重ねて熱溶着によって容易に製造できる。また、冷却剤10を入れた後も、熱溶着によって容易に密封できる。25は熱溶着部であり、外袋20の外周部に設けられている。
これによれば、一種の樹脂シートを使って外袋20を形成できる。したがって、冷却剤を密閉して収納するための透水性のない防水層のシートに、別の断熱層のシートを貼り合わせるような構造の袋体に比較して、製造コストを低減できる。
【0022】
また、30は粘着剤層であり、冷却対称又は冷却パックを保持するホルダーに貼り付けることができるように、冷却パックの一面に設けられている。本形態例では、冷却促進面部22が形成された一方の面に設けられている。なお、40は剥離紙であり、粘着剤層30を保護するように設けられている。
これによれば、使い勝手がよくなり、用途を広めることができる。
さらに、粘着剤層をゲル状の材料とすることができる。このゲル状の粘着剤層によれば、以上に説明してきたような断熱層として有効に機能させることができる。このゲル状の粘着剤層についても冷却パックの冷却対象に接する少なくとも一方の面の一部分について設け、断熱層とすることができる。
【0023】
また、この発明は、水袋と、水と吸熱反応する2種以上の冷却剤とが一つの外袋に密封して収納され、水袋を破ることによって水と冷却剤とが吸熱反応して冷却作用が起きるように形成された冷却パックにおいても適用できるのは勿論であり、上記と同等の効果を得ることができる。
【0024】
さらに、この発明は、水袋を使用するタイプで、冷却剤ごとに隔離した状態で、透水性を備えた冷却剤袋(内袋)に収容されて、外袋に収納されている冷却パックにおいても適用できるのは勿論である。この構成の場合は、冷却剤を透水性のある内袋に入れることで水と急激に混合されてないことから冷却速度を遅延させる効果はあり、冷却効果の持続時間をより延長できる。
【0025】
以下に、本発明に係る冷却パックの形態例を添付図面(図4〜8)に基づいて詳細に説明する。
この冷却パックは、冷却剤10を構成する二種以上の物質11、12を混合して生じる吸熱作用によって冷却するように、冷却剤10が、薄膜状のシート状部材51、51によって形成された収納袋50に収納されたものである。
【0026】
55は仮付部であり、二種以上の物質11、12をそれぞれ区画して収納すると共に、外力を加えた際には剥離して区画がなくなることで二種以上の物質11、12が混合するように、収納袋50を形成するように重ねられたシート状部材51、51の内面同士について帯状に仮付けされた部分である。
【0027】
例えば、冷却剤10を構成する二種以上の物質である無機アンモニウム塩11と、結晶水を保有する塩としての水酸化ストロンチウム8水和物12とを、それぞれ収納袋50の区画された収納部50a、50bへ収納後、密閉する。この密閉は、前述したような熱溶着(熱溶着部25)によって行うことができる。
【0028】
使用時には、袋内にある空気に圧力をかけるなど、外力を加えることによって、両面テープ、接着剤、粘着剤又は適度な付着力に設定された熱溶着などの仮付部55における仮付手段を剥がし、両材11、12の混合と撹拌が可能になる。すなわち、同一の袋内で二つ以上に仕切られた部位の袋部(仮付部55)を、空気圧によってその仕切りを剥がし、両材11、12を混ぜることによって、化学反応をさせることができる。
【0029】
この冷却パックの製造方法は、先ず図5に示すように、二枚のシート状部材51、51を図のようにローラ60、60で案内し、例えば両面テープや粘着剤による仮付材56によって仮付けし、仮付部55を設けることができる。
次に、図6に示すように、冷却剤10を構成する二種以上の物質11、12を投入できる投入口を一方の辺に開けた状態に、他の三方(三辺)を熱溶着などによって水密状態になるように封じて、収納袋50を作る。
【0030】
この収納袋50において、例えば、硝酸アンモニウム塩(11)を収納部50aに投入し、水酸化ストロンチウム(12)を収納部50bに投入し、投入口の部分を熱溶着などによって水密状態になるように封じて冷却パックができる。
このように、最終的にシールをする際に、各収納部50a、50bにかかる残留空気の量を調整する。その空気によって、外力がかかり易く、前述したように仮付部55における仮付手段を好適に剥がすことができる。
【0031】
次に、本発明にかかる冷却パックの他の形態例について説明する。
図7に示す形態例では、仮付部55が、二条の帯状部55a、55aによって構成され、その二条の帯状部55a、55aの条間部55bが保管する際の折り曲げられる部分になっている。本形態例によれば、二本の平行に配された筋状の仮付け(二条の帯状部55a、55a)によって構成されている。
これによれば、収納部50a、50bにかかる区画の確実性をより高めることができ、条間部55bが形成されるため、折り曲げ易い形態になっている。保管時に折り曲げることによって、冷却剤10を構成する二種以上の物質11、12が混合されることを防止するように作用する。従って、長期の保存についても好適に対応できる。
【0032】
また、図8に示す形態例では、仮付部55が、全面的に熱溶着をしない二条の帯状部55c、55cによって構成され、その二条の帯状部55c、55cの条間部55bが保管する際の折り曲げられる部分になっている。本形態例によれば、投入される物質11、12が案内される方向に傾斜した状態の短い筋状の溶着部分が多数形成されている。
これによっても、図7の形態例と同等の効果を得ることができる。
【0033】
以上の構成の仮付部55を設けた冷却パックによれば、二種以上の冷却用物質を瞬時に混合できるため、急激な化学反応によって急激に冷却することが可能になる。このため、医療などの現場で、緊急に患部を冷やす際などに有効に利用できる。さらに、全面的又は一部分に断熱層を設けることで、その冷却状態をより長時間維持できるようになるため、効率よく効果的に利用できる。
【0034】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0035】
10 冷却剤
11 無機アンモニウム塩
12 水酸化ストロンチウム8水和物
13 内部収納袋
20 外袋
21 断熱層
22 冷却促進面部
30 粘着剤層
40 剥離紙
50 収納袋
50a 収納部
50b 収納部
51 シート状部材
55 仮付部
55a 帯状部
55b 条間部
55c 帯状部
56 仮付材
60 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤を構成する二種以上の物質を混合して生じる吸熱作用によって冷却するように、前記冷却剤が、薄膜状のシート状部材によって形成された収納袋に収納された冷却パックであって、
前記二種以上の物質をそれぞれ区画して収納すると共に、外力を加えた際には剥離して区画がなくなることで前記二種以上の物質が混合するように、前記収納袋を形成するように重ねられた前記シート状部材の内面同士について帯状に仮付けされた部分である仮付部を備えることを特徴とする冷却パック。
【請求項2】
前記仮付部が、二条の帯状部によって構成され、該二条の帯状部の条間部が保管する際の折り曲げられる部分になっていることを特徴とする請求項1記載の冷却パック。
【請求項3】
前記収納袋が、断熱性が高い断熱層を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の冷却パック。
【請求項4】
冷却対象に接する少なくとも一方の面の一部分が前記断熱層を備えないで冷却がされ易い冷却促進面部になっていることを特徴とする請求項3のいずれかに記載の冷却パック。
【請求項5】
前記冷却促進面部が、前記発泡性の断熱層が加熱されて圧縮されることで潰されて設けられていることを特徴とする請求項4記載の冷却パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−13596(P2013−13596A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148984(P2011−148984)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(302047802)
【Fターム(参考)】