説明

冷却制御システム

【課題】外部電源からの充電時におけるパワーコントロールユニットの過熱を抑制する。
【解決手段】冷却制御システムは、冷却手段と、冷却手段制御部と、を備える。冷却手段は、正逆回転可能な冷却媒体送出ポンプ10と、冷却媒体送出ポンプ10からパワーコントロールユニット30を経由してモータ32に冷却媒体を流通させる冷媒循環流路12と、モータ32を迂回する冷媒迂回流路14と、分岐部22の近傍に配置された、冷却媒体の流通方向に応じて冷却媒体の流通経路を変更するバネ付き弁と、を含む。バッテリ28の充電時には、モータ32の駆動時とは逆方向に冷却媒体を循環させるように冷却媒体送出ポンプ10を駆動させて、冷媒迂回経路14を経由してパワーコントロールユニット30に冷却媒体を流通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両に搭載される、モータ(モータージェネレータ(MG))、インバータ、DC/DCコンバータ等の発熱体の過熱を抑制し、適正な動作温度に保つために、冷却水および/または冷却油などの冷却媒体を循環させて熱交換する冷却システムが知られている(例えば、特許文献1〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−105645号公報
【特許文献2】特開2008−106613号公報
【特許文献3】特開2008−240615号公報
【特許文献4】特開2009−209708号公報
【特許文献5】特開2009−189149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
家庭用電源などの外部電源に電気的に接続して充電することが可能な電気自動車やプラグインハイブリッド車両などの車両において、外部電源からの充電時におけるパワーコントロールユニットの過熱を比較的簡易な構成で抑制することが可能な冷却制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、冷却媒体を循環させて発熱体を冷却する冷却手段と、前記冷却手段を制御する冷却手段制御部と、を備え、充放電可能なバッテリと、入力される電力に応じて駆動するモータと、前記バッテリと前記モータとの間の電力を制御するパワーコントロールユニットと、外部電源に電気的に接続させて前記バッテリを充電するための接続部と、が設けられた車両に搭載される冷却制御システムであって、前記冷却手段が、正逆回転可能な冷却媒体送出ポンプと、前記冷却媒体送出ポンプから前記パワーコントロールユニットを経由して前記モータに前記冷却媒体を流通させる冷媒循環流路と、前記パワーコントロールユニットと前記モータとの間で前記冷媒循環流路から分岐して前記モータを迂回する冷媒迂回流路と、前記冷媒迂回流路の少なくとも一端部分に配置された、前記冷却媒体の流通方向に応じて前記冷却媒体の流通経路を変更するバネ付き弁と、を含み、前記冷却手段制御部は、前記モータの駆動時には前記冷却媒体送出ポンプから前記パワーコントロールユニットを経由して前記モータに前記冷却媒体を流通させるように前記冷却媒体送出ポンプを駆動し、前記外部電源による前記バッテリの充電時には、前記モータの駆動時とは逆方向に前記冷却媒体を循環させるように前記冷却媒体送出ポンプを駆動させて、前記冷媒迂回経路を経由して前記パワーコントロールユニットに前記冷却媒体を流通させる、冷却制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
外部電源からの充電時におけるパワーコントロールユニットの過熱を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態における冷却制御システムが搭載された車両の構成の概略を例示した図である。
【図2】図1に示す分岐部22近傍の内部構成について説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態における冷却制御システムによる冷却制御の一例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態における冷却制御システムが搭載された車両の構成の概略を例示した図である。図1に示す車両100は、充放電可能なバッテリ28と、入力される電力に応じて駆動するモータ32と、バッテリ28とモータ32との間の電力を制御するパワーコントロールユニット30と、外部電源(図示せず)に電気的に接続させてバッテリ28を充電するための接続部34と、制御部36と、を備える。パワーコントロールユニット30は一般に、バッテリ28の電圧を変換して昇降圧させるコンバータ(図示せず)と、コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータ(図示せず)を含む。インバータを介してモータ32に電力が供給され、インバータが出力する交流電圧に基づいてモータ32が回転し、車両100を駆動させる。
【0010】
図1に示す車両100にはまた、冷却媒体を循環させて発熱体を冷却する冷却手段と、制御部36内に含まれる、冷却手段を制御する冷却手段制御部(図示せず)と、を備える。本実施例における発熱体としては、パワーコントロールユニット30とモータ32とが含まれる。
【0011】
冷却手段は、冷却媒体を送り出す冷却媒体送出ポンプ10と、冷却媒体送出ポンプ10から送り出された冷却媒体を発熱体であるパワーコントロールユニット30およびモータ32の内部またはその近傍に形成された冷媒流路(図示せず)に流入させた後、冷却媒体送出ポンプ10まで循環させる冷媒循環流路12と、冷媒循環流路12から分岐して迂回する冷媒迂回流路14と、を備える。冷却媒体は、冷媒循環流路12を循環する間に、発熱体内部での熱交換により高温となった冷却媒体を冷却させるためのラジエータ16と、冷却媒体の交換や圧力調整などに供されるリザーブタンク18を通過する。
【0012】
図1において、冷媒迂回流路14は、パワーコントロールユニット30とモータ32との間に設けられた分岐部20と、モータ32とラジエータ16との間に設けられた分岐部22とを連結し、モータ32を迂回するように形成されている。
【0013】
冷却媒体送出ポンプ10は、例えば、ハイブリッド車両における冷却水を送出するためのHVウォーターポンプなどを適用することができ、冷却手段制御部の制御により正逆回転可能に構成されている。図1に示すように、通常運転時には、冷却媒体送出ポンプ10から右回りに送り出された冷却媒体は、パワーコントロールユニット30から矢印24に示すようにモータ32を流通し循環するように構成されている。一方、外部電源によるバッテリ28の充電時には、冷却媒体送出ポンプ10から左回りに送り出された冷却媒体は、ラジエータ16で冷却され、矢印26に示すようにモータ32を回避して循環するように構成されている。
【0014】
図2は、図1に示す分岐部22近傍の内部構成について説明するための図である。図2に示すバネ付き弁40は、冷却媒体の流通に応じてバネ38が伸縮することにより開閉するように構成されている。通常時には、図2(a)に示すように、冷媒循環流路12を矢印24方向に流通する冷却媒体の圧力によりバネ38が伸びる。このとき、バネ38に接続されたバネ付き弁40が、冷媒迂回流路14の端部を閉塞するため、冷却媒体は矢印24方向に循環する。一方、充電時には、図2(b)に示すように、バネ38が戻ることによりバネ付き弁40が冷媒循環流路12を閉塞する。これにより、冷却媒体は冷媒迂回流路14を矢印26方向に循環する。一方、図1に示す分岐部20の近傍には、分岐部22の近傍に配置されたバネ付き弁40のような構成は不要であるが、冷却媒体の流通の切替をより円滑に実行するために冷却媒体の流通する方向に応じて開閉する弁を配置しても良い。また、図2に示すバネ付き弁40に代えて、冷却手段制御部(図示せず)による冷却媒体送出ポンプ10の切り替えに応じて移動する電動式の弁を配置しても良い。
【0015】
本発明の実施の形態における冷却制御システムによる冷却制御の一例について、図1〜3を用いて説明する。
【0016】
S100では、車両100は通常時、つまり走行状態にある。このとき、パワーコントロールユニット30およびモータ32は発熱している。ラジエータ16に配置されたラジエータファン(図示せず)は回転し、内部を流通する冷却媒体を効果的に冷却している。
【0017】
S102では、車両100の走行を停止し、走行不能なレディオフ(Ready-OFF)状態に移行させる。この状態では一般に、パワーコントロールユニット30およびモータ32からの発熱は抑えられているものの、依然として高温状態である。このとき、ラジエータファン(図示せず)も一般に機能を停止している。
【0018】
S104では、外部電源による充電状態であるか否かを判断する。判断の手法に制限は無く、例えば、接続部34が外部電源に接続されたことにより自動的に充電状態を判断しても良く、また、充電状態であることを手動により入力する構成であっても良い。
【0019】
S104において、外部電源による充電状態であると判断されると(S104において「Y」)、冷却手段制御部(図示せず)は冷却媒体送出ポンプ10の駆動を切り替え、通常時とは逆方向に冷却媒体を送り出す(S106)。ラジエータ16を通過した冷却媒体が、モータ32を経由せずに直接パワーコントロールユニット30に送られることにより、ラジエータファン(図示せず)の停止に伴いラジエータ16の熱交換機能が低下した状態においても、パワーコントロールユニット30をより効果的に冷却することができる。このため、外部電源からの充電が、パワーコントロールユニット30の過熱に伴い自動的に中断または停止することを抑制することができ、充電時間の延長も抑制することができる。
【0020】
S106において、冷却媒体の循環を続けると、冷却媒体の液温(HV水温)が徐々に下降する(S108)。そして、S104において、外部電源による充電状態でないと判断されると(S104において「N」)、冷却媒体送出ポンプ10による冷却媒体の循環を停止する。
【0021】
このように、本実施の形態によれば、比較的簡易な構成で外部電源からの充電時におけるパワーコントロールユニットの過熱を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、電気自動車やプラグインハイブリッド車両など、外部電源により充電可能な種々の車両に搭載される冷却制御システムとして利用することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 冷却媒体送出ポンプ、12 冷媒循環流路、14 冷媒迂回流路、16 ラジエータ、18 リザーブタンク、20,22 分岐部、28 バッテリ、30 パワーコントロールユニット、32 モータ、34 接続部、36 制御部、38 バネ、40 バネ付き弁、100 車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体を循環させて発熱体を冷却する冷却手段と、
前記冷却手段を制御する冷却手段制御部と、
を備え、
充放電可能なバッテリと、
入力される電力に応じて駆動するモータと、
前記バッテリと前記モータとの間の電力を制御するパワーコントロールユニットと、
外部電源に電気的に接続させて前記バッテリを充電するための接続部と、
が設けられた車両に搭載される冷却制御システムであって、
前記発熱体が、少なくとも前記パワーコントロールユニットと前記モータとを含み、
前記冷却手段が、正逆回転可能な冷却媒体送出ポンプと、前記冷却媒体送出ポンプから前記パワーコントロールユニットを経由して前記モータに前記冷却媒体を流通させる冷媒循環流路と、前記パワーコントロールユニットと前記モータとの間で前記冷媒循環流路から分岐して前記モータを迂回する冷媒迂回流路と、前記冷媒迂回流路の少なくとも一端部分に配置された、前記冷却媒体の流通方向に応じて前記冷却媒体の流通経路を変更するバネ付き弁と、を含み、
前記冷却手段制御部は、
前記モータの駆動時には前記冷却媒体送出ポンプから前記パワーコントロールユニットを経由して前記モータに前記冷却媒体を流通させるように前記冷却媒体送出ポンプを駆動し、
前記外部電源による前記バッテリの充電時には、前記モータの駆動時とは逆方向に前記冷却媒体を循環させるように前記冷却媒体送出ポンプを駆動させて、前記冷媒迂回経路を経由して前記パワーコントロールユニットに前記冷却媒体を流通させることを特徴とする冷却制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228999(P2012−228999A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99785(P2011−99785)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】