説明

冷却装置、携帯端末、冷却装置の制御方法及び制御プログラム

【課題】 熱の発生源に振動を加えることなく効果的に冷却を促進させること。
【解決手段】 電子部品2000の熱を吸収する熱吸収部1001と、振動を発生させ、発生させた振動を熱吸収部1001に伝達する振動発生部1002と、を備えた冷却装置を提供する。熱吸収部1001は、振動発生部1002で発生した振動を電子部品2000に伝達することなく、電子部品2000から吸収した熱を周辺雰囲気に放射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により装置の温度を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
振動により装置の温度を抑制する技術が特許文献1に開示されている。具体的には、CPUの温度が規定値以上に上昇した時に振動モータを動作させてCPUに振動を加え熱分子を拡散させ温度を下げようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−072420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、熱の発生源であるCPUに直接振動を加えて熱分散を実現しようとしている。これでは、CPU自体が劣化したり、基板との接続部分に問題が生じたりする可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る冷却装置は、
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、
前記熱吸収部は、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を周辺雰囲気に放射することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る携帯端末は、
上記冷却装置を含み、前記電子部品として、CPU又はバッテリーを含むことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御方法であって、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱の発生源に振動を加えることなく効果的に冷却を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態としての冷却装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態としての携帯端末を分解した状態を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての携帯端末の機能構成を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての携帯端末における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態としての冷却装置1000について説明する。冷却装置1000は、電子部品2000の熱を吸収する熱吸収部1001、及び、振動を発生させ、発生させた振動を熱吸収部1001に伝達する振動発生部1002を備える。
【0014】
熱吸収部1001は、振動発生部1002で発生した振動を電子部品2000に伝達することなく、電子部品2000から吸収した熱を周辺雰囲気に放射する。
【0015】
これにより、熱の発生源である電子部品2000から熱を吸収し、振動によってその熱を緩和(拡散)することができる。単に一つの部品(例えばCPU)のみに限らず、他の周辺回路(例えばFPGAやDSPやメモリ)を含む複数の部品から熱を吸収するように熱吸収部を配置すれば、装置全体の温度上昇を緩和することが可能となる。
【0016】
更に、熱吸収部1001と電子部品2000との間に振動吸収部材を配置することも好適である。そうすれば、電子部品2000に対して振動が悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0017】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態として携帯端末について説明する。携帯端末の発熱対策としては、低消費電力デバイスやヒートシンク・FANなどの発熱対策部品を実装して行っているが、顧客からの携帯端末の低価格化・高機能化(高密度化)の要求に伴いこれらの実装が困難となり発熱対策が思うように実行できない。そこで、本実施形態では、低周波を用いて熱源を冷却しようとするものである。
【0018】
温度(発熱)とは分子の運動エネルギーのことであり、温度が高いということは、分子が頻繁に運動している状態と言える。低周波にはこの運度エネルギーを抑制する作用があることが知られており、低周波を用いることで端末内部品の発熱を抑制するができる。
【0019】
図2を用いて、携帯端末1のバッテリー3が熱源の場合を一例として説明する。図2は、携帯端末1を裏返し、バッテリー蓋4、バッテリー3、携帯端末裏面筐体2の順で解体した状態を示す図である。携帯端末1は、低周波振動体として、小型モータ5、ギア6、ギア兼ローラ7、ベルト8、ローラ9、軸10を備えている。小型モータ5は、携帯内部にはバイブレーション用でもよい。さらに、熱吸収部材11を備える。小型モータ5で縦方向への回転エネルギーをギア6からギア兼ローラ7へ受け渡す。ギア兼ローラ7にて横方向への回転エネルギーを縦方向へ変換する。ベルト8にて回転エネルギーをローラ9へと受け渡す。ローラ9が受け取った回転エネルギーは軸10により低周波振動へと変換される。バッテリー3と面で接する熱吸収部材11はバッテリー3からの熱を吸収する。代わりに熱吸収部材11の温度は上昇して物質内の分子運動が活性化する。しかし、軸10からの低振動運動により熱吸収部材11内の分子運動に抑制がかかり温度は低下する。熱吸収部材11の温度が低下するので、再度バッテリー3からの熱を吸収して温度を下げ続けることが可能となる。
【0020】
次に、図3を用いて携帯端末1の機能構成について説明する。本実施形態に係る携帯端末1は、システム制御部200の他に、バッテリー3、温度センサ202、振動制御部203、低周波振動体204、熱吸収部材11を備えている。
【0021】
携帯端末のバッテリー3は、システム制御部(映像部、音声部、I/O制御部など)に電力を供給する。電力を供給する際、発生した熱は熱吸収部材11に吸収される。温度測定手段としての温度センサ202は、熱吸収部材11の温度を測定する。振動制御部203は、図2の小型モータ5、ギア6、ギア兼ローラ7、ベルト8、ローラ9に対応し低周波振動体204の振動を制御する。低周波振動体204は図2の軸10に対応し、低周波振動を発生させ、その低周波振動を熱吸収部材11に伝達する。熱吸収部材11は、バッテリー3からの熱を吸収し、低周波振動体204から伝達された低周波によって放熱する。
【0022】
温度センサ202は、バッテリー3からの熱を吸収した熱吸収部材11の温度を測定する。測定した温度が動作温度範囲の上限値(所定の閾値)に達しているか否かを判定し、上限値に達した場合にはシステム制御部200へ温度異常を通知する。
【0023】
温度異常通知を受けたシステム制御部200は、制御開始シーケンスに移行する。システム制御部200内の映像部や音声部で異常状態を利用者に通知したり、I/O制御部で利用者の入力情報を反映などを行う。その後、振動制御部203に制御指示(振動開始)を行う。制御指示を受けた振動制御部203は、低周波振動体204に対し運動エネルギーを供給する。運動エネルギーを供給された低周波振動体204は、低周波振動を発生させ、その低周波振動を熱吸収部材11に伝達する。
【0024】
低周波運動を受けた熱吸収部材11は、バッテリーから201受けた熱による分子の運動エネルギーが抑制され温度が低下する。携帯端末内部に追加する監視制御のプロセス(詳細)について以下に説明する。
【0025】
低周波振動体204の振動は熱の発生源ではなく熱吸収部材11に加えられる。熱吸収部材11の役割は、熱の発生源から熱を吸収し、振動を加えられることでその熱を緩和(拡散)することにある。複数の熱発生源に熱吸収部材11を接触させて、回路全体的に熱を緩和(冷却ではなくデバイスの絶対定格温度を超えないように抑える)することもできる。
【0026】
図4のフローチャートを用いて監視制御の動作説明を行う。監視の対象となる部品(本書では図2のバッテリー3に該当)で温度センサ202にて現在の温度確認を行う(S401)。閾値は対象部品の携帯端末メーカの推奨値(動作温度範囲の上限値)とし、現在値が閾値未満の場合は、監視制御を終了とする。
【0027】
ただし、温度確認は携帯端末が動作し続ける限り行う。再開のタイミングは利用者や監視ソフトが一任して決めてよい。
【0028】
現在値が閾値以上の場合は、温度センサ202がシステム制御部200にその旨を伝える。これに対しシステム制御部200が、低周波振動を開始する命令を振動制御部203に与える(S402)。低周波振動を開始する際に、スピーカやディスプレイなどの報知手段を用いて開始をアナウンスするディスプレイ表示またはスピーカ音声出力を行っても良い。また、その際に利用者による開始中止を制御することも可能とする。
【0029】
振動制御部203は、小型モータ5を動作させ、低振動動作を1分間実施する(S403)。実施中、利用者による動作中断を制御することも可能とする。低振動動作の実施から1分後、再度温度確認を行う(S404)。現在値が閾値未満の場合は、システム制御部200が低周波振動を停止させる命令を振動制御部203に与える(S405)。この時、終了をアナウンスするディスプレイ表示またはスピーカ音声出力を行っても良い。また現在値が閾値以上の場合は、再度ステップS403に戻り、測定した温度が閾値未満となるまで繰り返す。振動停止を確認した後、監視制御を終了とする。
【0030】
以上のような実施形態によれば、発熱対策のために高価なデバイスや実装面積の広い冷却部品を利用することなく、携帯端末の既存回路部に低周波振動部を追加することで低価格および狭い実装面積で冷却を実現することができる。特に、高密度実装化された携帯端末において効果的に部品を冷却することができる。既存の資産(ハードウェア)をほぼ変更せずに活用することができ、小型の部品(ギア、ローラ)などの組み合わせで実現することが可能である。カスタム向けではなく汎用部品で実現できるところから低価格で可能である。
【0031】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステム又は装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0032】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、単体の装置に適用しても良い。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現するソフトウェアが、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、或いはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範疇に含まれる。
【0033】
(実施形態の他の表現)
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0034】
(付記1)
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、
前記熱吸収部は、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を周辺雰囲気に放射することを特徴とする冷却装置。
(付記2)
前記熱吸収部と前記電子部品との間に挿入される振動吸収部材を更に含むことを特徴とする付記1に記載の冷却装置。
(付記3)
前記振動発生部において振動を発生させる際にその旨を報知する報知手段を更に備えたことを特徴とする付記1又は2に記載の冷却装置。
(付記4)
前記熱吸収部の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段で測定した温度が閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記温度測定手段で測定した温度が閾値を超えたと前記判定手段が判定した場合に、前記振動発生部を駆動する制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする付記1、2又は3に記載の冷却装置。
(付記5)
付記1乃至4の何れかに記載の冷却装置を含み、前記電子部品として、CPU又はバッテリーを含むことを特徴とする携帯端末。
(付記6)
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御方法であって、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする冷却装置の制御方法。
(付記7)
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を実行させることを特徴とする冷却装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0035】
1 携帯端末
2 携帯端末裏面筐体
3 バッテリー
4 バッテリー蓋
5 小型モータ
6 ギア
7 ギア兼ローラ
8 ベルト
9 ローラ
10 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、
前記熱吸収部は、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を周辺雰囲気に放射することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記熱吸収部と前記電子部品との間に挿入される振動吸収部材を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記振動発生部において振動を発生させる際にその旨を報知する報知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記熱吸収部の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段で測定した温度が閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記温度測定手段で測定した温度が閾値を超えたと前記判定手段が判定した場合に、前記振動発生部を駆動する制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の冷却装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の冷却装置を含み、前記電子部品として、CPU又はバッテリーを含むことを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御方法であって、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を含むことを特徴とする冷却装置の制御方法。
【請求項7】
電子部品の熱を吸収する熱吸収部と、
振動を発生させ、発生させた振動を前記熱吸収部に伝達する振動発生部と、
を備え、前記振動発生部から伝達された振動を前記電子部品に伝達せず、前記電子部品から吸収した熱を前記熱吸収部が周辺雰囲気に放射する冷却装置の制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記熱吸収部の温度を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定した温度が所定の閾値を超えたか否か判定するステップと、
前記測定ステップで測定した温度が前記閾値を超えたと判定した場合に、前記振動発生部を駆動して振動を発生させるステップと、
を実行させることを特徴とする冷却装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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