説明

冷却装置、顕微鏡

【課題】カメラ内に配置されたペルチェ冷却器の放熱部をカメラへの振動の伝達を防止しながら冷却する冷却装置、及びこれを備えた顕微鏡を提供する。
【解決手段】カメラ3内に配置されたペルチェ冷却器5の放熱部を収容し、前記放熱部を冷却する冷却液が導かれるチャンバ19と、チャンバ19よりも下方に配置されており、冷却液を貯蔵する第1タンク10と、チャンバ19よりも上方に配置されており、冷却液を貯蔵する第2タンク20と、第1タンク10内の冷却液を第2タンク20へ導く搬送管27を備えたポンプ26と、第2タンク20内の冷却液をチャンバ19へ導く供給管28と、チャンバ19内の冷却液を第1タンク10へ導く排出管29とを有し、冷却液を供給管28中及び排出管29中で重力により下降させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペルチェ冷却器を用いてカメラの固体撮像素子を冷却する構成の顕微鏡が知られている。このような顕微鏡においては、ペルチェ冷却器の放熱部をポンプで循環させた冷却液によって冷却する構成のものも知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−14786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来の顕微鏡においては、冷却液をポンプからペルチェ冷却器の放熱部へ導く配管内で、冷却液が脈流して振動が生じてしまう。そしてこの振動がカメラを介して顕微鏡へ伝達され、その結果、ステージ上の標本が振動してしまうこととなる。この影響は、特に標本を高倍率で観察する際に顕著となる。
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、カメラ内に配置されたペルチェ冷却器の放熱部をカメラへの振動の伝達を防止しながら冷却する冷却装置、及びこれを備えた顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、
カメラ内に配置されたペルチェ冷却器の放熱部を収容し、前記放熱部を冷却する冷却液が導かれるチャンバと、
前記チャンバよりも下方に配置されており、冷却液を貯蔵する第1タンクと、
前記チャンバよりも上方に配置されており、冷却液を貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンク内の冷却液を前記第2タンクへ導く搬送管を備えたポンプと、
前記第2タンク内の冷却液を前記チャンバへ導く供給管と、
前記チャンバ内の冷却液を前記第1タンクへ導く排出管と、を有し、
冷却液を前記供給管中及び前記排出管中で重力により下降させることを特徴とする冷却装置を提供する。
【0006】
また本発明は、
顕微鏡本体と、
前記顕微鏡本体に取り付けられたカメラと、
前記カメラ内の固体撮像素子を冷却するペルチェ冷却器と、
前記ペルチェ冷却器の放熱部を冷却する冷却装置と、を有する顕微鏡であって、
前記冷却装置は、
前記カメラ内に配置されており、前記ペルチェ冷却器の放熱部を収容し、前記放熱部を冷却する冷却液が導かれるチャンバと、
前記チャンバよりも下方に配置されており、冷却液を貯蔵する第1タンクと、
前記チャンバよりも上方に配置されており、冷却液を貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンク内の冷却液を前記第2タンクへ導く搬送管を備えたポンプと、
前記第2タンク内の冷却液を前記チャンバへ導く供給管と、
前記チャンバ内の冷却液を前記第1タンクへ導く排出管と、を有し、
冷却液を前記供給管中及び前記排出管中で重力により下降させることを特徴とする顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カメラ内に配置されたペルチェ冷却器の放熱部をカメラへの振動の伝達を防止しながら冷却する冷却装置、及びこれを備えた顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る冷却装置を備えた顕微鏡の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る冷却装置を備えた顕微鏡を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように顕微鏡1は、倒立型の顕微鏡本体2、顕微鏡本体2に取り付けられたカメラ3、カメラ3に内蔵された固体撮像素子4を冷却するためのペルチェ冷却器5、及びペルチェ冷却器5の放熱部を冷却するための冷却装置6を有している。
顕微鏡本体2は、上方から順に、照明装置7、標本8を載置したステージ9、対物レンズ11、結像レンズ12、及び反射ミラー13を有しており、反射ミラー13の反射光路上にはカメラ3が配置されている。なお、顕微鏡本体2は除振台14に載置されている。
斯かる顕微鏡本体2において、照明装置7から射出された光はステージ9上の標本8を照明する。これにより、標本8からの光は対物レンズ11と結像レンズ12を介して反射ミラー13で反射され、カメラ3内の固体撮像素子4の撮像面に標本像を形成する。この標本像は、固体撮像素子4で撮影されて不図示のモニタに表示され、使用者に観察されることとなる。
【0010】
カメラ3は、固体撮像素子(本実施形態ではCCD)4とこれを制御する回路部15をカメラ筐体3a内に備えており、固体撮像素子4の背面にはペルチェ冷却器5が配置されている。このペルチェ冷却器5によって固体撮像素子4を冷却することで、固体撮像素子4の発熱によって生じる暗電流ノイズを低減することができる。
カメラ筐体3a内において、固体撮像素子4の撮像面側には真空の空間を形成する真空部16が設けられており、当該撮像面はこの真空部16内に露出している。この構成により、固体撮像素子4の撮像面に結露が生じることを防止することができる。
また、カメラ筐体3a内には、ペルチェ冷却器5の放熱部に冷却液(例えば、防腐剤入りの水)を接触させて冷却するための略箱形の冷却チャンバ19が配置されており、ペルチェ冷却器5の放熱部はこの冷却チャンバ19内に収容されている。
【0011】
冷却装置6は、冷却液を貯蔵する箱形の第1タンク10、第1タンク10よりも小さい箱形であって第1タンク10から搬送された冷却液を貯蔵する第2タンク20、第1タンク10及び第2タンク20を支持する支持部材21、及びカメラ筐体3a内に配置された上述の冷却チャンバ19を有している。
【0012】
支持部材21は、厚板状の台座部21aと、台座部21aに固設されており上方へ延在した角柱状の支柱部21bと、支柱部21bの上端に一体的に形成されており水平方向へ延在した角柱状の延在部21cとからなる。第1タンク10は、底面が台座部21aに固定され、さらに側面が支柱部21bに固定されている。第2タンク20は、延在部21cにバネ23を介して吊り下げられている。したがって、第2タンク20は冷却チャンバ19よりも高い位置に配置されており、冷却チャンバ19は第1タンク10よりも高い位置に配置されている。この構成により、後述するように冷却液を後記供給パイプ28、排出パイプ29、及びドレインパイプ30中で重力により下降(自然落下)させることが可能となる。また、第2タンク20が延在部21cにバネ23を介して吊り下げられていることにより、延在部21cから第2タンク20へ振動が伝達することを防止することができる。
【0013】
第1タンク10において、支柱部21bに固定された側面と反対側の側面には、第1タンク10内の冷却液を冷却するためのヒートシンク24及びファン25が備えられている。
第1タンク10内には、第1タンク10内の冷却液を第2タンク20へ搬送するためのポンプ(例えば、ペリスターポンプ、ロータリーポンプ、或いはダイヤフラムポンプ)26が備えられている。ポンプ26には樹脂製の搬送パイプ27が接続されている。搬送パイプ27は、支柱部21bと延在部21cの内部を順に経由して延在部21cの下面より突き出て、さらに第2タンク20内まで導かれている。なお、第2タンク20内へ導かれた搬送パイプ27の長さは、その先端(供給口)が第2タンク20内に貯蔵されている冷却液の液面に接触しないように設定されている。これにより、搬送パイプ27から第2タンク20へ振動が伝達することを防止することができる。
第1タンク10の上面には、冷却チャンバ19からの後述する排出パイプ29と第2タンク20からの後述するドレインパイプ30がともに挿入された開口部10aが形成されている。なお、開口部10aの大きさはパイプ29,30の外径よりも十分に大きく設定されており、第1タンク10とパイプ29,30とは互いに接触することがない。これにより、第1タンク10からパイプ29,30へ振動が伝達することを防止することができる。
【0014】
第2タンク20の上面には、上述の搬送パイプ27が挿入された開口部20aが形成されている。なお、開口部20aの大きさは搬送パイプ27の外径よりも十分に大きく設定されており、第2タンク20と搬送パイプ27とは接触することがない。これにより、搬送パイプ27から第2タンク20へ振動が伝達することを防止することができる。
第2タンク20の底面には、第2タンク20内の冷却液を冷却チャンバ19へ供給するための樹脂製の供給パイプ28と、第2タンク20内の余分な冷却液を第1タンク10へ排出するための樹脂製のドレインパイプ30が設けられている。なお、ドレインパイプ30は、第2タンク20の底面を貫通して所定の長さだけ第2タンク20内へ突き出ている。また、ドレインパイプ30の内径は、搬送パイプ27、供給パイプ28、及び排出パイプ29のいずれの内径よりも大きく設定されている。この構成により、第2タンク20内の余分な冷却液をドレインパイプ30から排出し、第2タンク20内に貯蔵される冷却液の量を略一定に維持することができる。即ち、第2タンク20内の冷却液の液面と搬送パイプ27の供給口とが接触することがないように、当該液面の位置を略一定に維持することができる。
なお、第2タンク20内には、搬送パイプ27の真下近傍からドレインパイプ30の上端面よりも低い位置へ向かって傾斜するように配置された受け板31が備えられている。
【0015】
冷却チャンバ19の上部には、上述した第2タンク20からの供給パイプ28が接続されており、下部には冷却チャンバ19内の冷却液を第1タンク10へ排出するための樹脂製の排出パイプ29が設けられている。
斯かる冷却チャンバ19の排出パイプ29及び上述した第2タンク20のドレインパイプ30は第1タンク10内まで導かれている。なお、第1タンク10内へ導かれたこれらのパイプ29,30の長さは、それぞれの先端が第1タンク10内の冷却液の液面に接触しないように設定されている。これにより、第1タンク10から排出パイプ29及びドレインパイプ30へ振動が伝達することを防止することができる。
【0016】
以上に述べた構成の冷却装置6において、第1タンク10で貯蔵されている冷却液はヒートシンク24及びファン25によって冷却されて略一定の温度に維持される。斯かる第1タンク10内の冷却液は、ポンプ26によって汲み上げられ、搬送パイプ27を介して第2タンク20まで搬送されて該第2タンク20内に貯蔵される。ここで、搬送パイプ27は第2タンク20と非接触であって、搬送パイプ27の供給口は第2タンク20内の冷却液の液面と非接触であるため、搬送パイプ27内で冷却液が脈流しても、この脈流による振動が第2タンク20及び第2タンク20に貯蔵されている冷却液に伝達されることを防止することができる。特に本実施形態では、搬送パイプ27の供給口から供給された冷却液は、受け板31によって受け流されながら第2タンク20内に静かに貯蔵されるため、当該脈流の振動の伝達をより効果的に防止することができる。
このようにして第2タンク20内に貯蔵された冷却液は、供給パイプ28内を重力により下降してカメラ筐体3a内の冷却チャンバ19へ供給される。冷却チャンバ19へ供給された冷却液は、冷却チャンバ19内のペルチェ冷却器5の放熱部を冷却し、さらに排出パイプ29内を重力により下降して第1タンク10へ排出される。なお、第2タンク20内の余分な冷却液は、ドレインパイプ30内を重力により下降して第1タンク10へ直接排出される。以上のように供給パイプ28、排出パイプ29、及びドレインパイプ30内で冷却液を重力により下降させる構成としたことで、各パイプ28,29,30内で冷却液が脈流することを防止することができる。したがって、冷却液の脈流による振動がカメラ3に伝達されることを効果的に防止することができる。
【0017】
ここで、上述のように、第2タンク20はバネ23を介して延在部21cに吊り下げられており、搬送パイプ27は第2タンク20にも第2タンク20内の冷却液の液面にも非接触であり、排出パイプ29及びドレインパイプ30は第1タンク10にも第1タンク10内の冷却液の液面にも非接触である。このため、第1タンク10においてポンプ26やファン25の駆動によって振動が生じても、この振動が各パイプ28,29,30を介してカメラ3へ伝達されることを効果的に防止することができる。
以上のようにして冷却液を第1タンク10、第2タンク20、及び冷却チャンバ19の間で循環させることにより、冷却液の脈流による振動やポンプ26及びファン25の駆動による振動がカメラ3に伝達することを防止しながら、冷却チャンバ19内のペルチェ冷却器5の放熱部を冷却することができる。即ち、これらの振動がカメラ3を介して顕微鏡本体2へ伝達されることを防止し、ステージ9上の標本8が振動してしまうことを効果的に防止することができる。したがって、本実施形態の顕微鏡1によって標本8を高倍率で観察する際にも、良好な標本像を観察することが可能となる。
【0018】
以上、本実施形態によれば、カメラ3内に配置されたペルチェ冷却器5の放熱部をカメラ3への振動の伝達を防止しながら冷却する冷却装置6、及びこれを備えた顕微鏡1を安価で簡便な構成で実現することができる。
なお、本実施形態では、上述のように第2タンク20内の余分な冷却液をドレインパイプ30から排出することで、第2タンク20内に貯蔵される冷却液の量を略一定に維持している。しかしながらこの構成に限られず、第2タンク20内の冷却液の液面の位置を検出する水位センサをドレインパイプ30のかわりに用いて、この水位センサの検出結果に応じてポンプ26の汲み上げ量を制御することで、第2タンク20内の冷却液の量を略一定に維持する構成としてもよい。
また、本実施形態では、第1タンク10内の冷却液は、上述のように第1タンク10の側面に備えられたヒートシンク24及びファン25によって冷却される。しかしながらこの構成に限られず、ヒートシンク24及びファン25のかわりにペルチェ冷却器等を設け、これによって冷却液を冷却する構成としてもよい。
また、本実施形態に係る冷却装置6は、除振台14と別体に設けられた除振台に載置することがより好ましい。
また、本実施形態に係る冷却装置6は、顕微鏡本体2のような倒立型の顕微鏡に限られず、正立型の顕微鏡等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 顕微鏡
3 カメラ
4 固体撮像素子
5 ペルチェ冷却器
6 冷却装置
10 第1タンク
19 冷却チャンバ
20 第2タンク
21 支持部材
26 ポンプ
27 搬送パイプ
28 供給パイプ
29 排出パイプ
30 ドレインパイプ
31 受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ内に配置されたペルチェ冷却器の放熱部を収容し、前記放熱部を冷却する冷却液が導かれるチャンバと、
前記チャンバよりも下方に配置されており、冷却液を貯蔵する第1タンクと、
前記チャンバよりも上方に配置されており、冷却液を貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンク内の冷却液を前記第2タンクへ導く搬送管を備えたポンプと、
前記第2タンク内の冷却液を前記チャンバへ導く供給管と、
前記チャンバ内の冷却液を前記第1タンクへ導く排出管と、を有し、
冷却液を前記供給管中及び前記排出管中で重力により下降させることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記搬送管は前記第2タンク内の冷却液の液面に対して非接触であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第2タンク内に前記搬送管から供給された冷却液を受け流す受け部材を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記搬送管は前記第2タンクに対して非接触であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記排出管は前記第1タンク及び前記第1タンク内の冷却液の液面に対して非接触であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第2タンク内の冷却液を前記第1タンクへ導く副排出管を有し、
前記副排出管は前記第2タンクの底面を貫通して前記第2タンク内部まで突出しており、
冷却液を前記副排出管中で重力により下降させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記副排出管は前記第1タンク及び前記第1タンク内の冷却液の液面に対して非接触であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第2タンクを前記チャンバよりも上方に支持する支持部材を有し、
前記第2タンクは前記支持部材に吊り下げられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記第1タンク内の冷却液を冷却するための冷却部を有することを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項10】
顕微鏡本体と、
前記顕微鏡本体に取り付けられたカメラと、
前記カメラ内の固体撮像素子を冷却するペルチェ冷却器と、
前記ペルチェ冷却器の放熱部を冷却する冷却装置と、を有する顕微鏡であって、
前記冷却装置は、
前記カメラ内に配置されており、前記ペルチェ冷却器の放熱部を収容し、前記放熱部を冷却する冷却液が導かれるチャンバと、
前記チャンバよりも下方に配置されており、冷却液を貯蔵する第1タンクと、
前記チャンバよりも上方に配置されており、冷却液を貯蔵する第2タンクと、
前記第1タンク内の冷却液を前記第2タンクへ導く搬送管を備えたポンプと、
前記第2タンク内の冷却液を前記チャンバへ導く供給管と、
前記チャンバ内の冷却液を前記第1タンクへ導く排出管と、を有し、
冷却液を前記供給管中及び前記排出管中で重力により下降させることを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【公開番号】特開2012−163612(P2012−163612A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21781(P2011−21781)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】