説明

冷却装置

【課題】簡単な構成で消費電力を悪化させずに熱交換器への霜付きを防止できる、充電器の冷却装置を提供する。
【解決手段】電源からの電力供給を受け蓄電池72を充電するための充電器71を冷却する冷却装置は、冷媒を循環させるための圧縮機12と、冷媒と外気との間で熱交換する熱交換器14および熱交換器15と、冷媒を減圧する膨張弁16と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する熱交換器18と、熱交換器15と膨張弁16との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて充電器71を冷却する冷却部70と、圧縮機12と熱交換器14との間を冷媒が流通する冷媒通路22と、冷却部70と膨張弁16との間を冷媒が流通する冷媒通路26と、冷媒通路22と冷媒通路26とを連通する連通路52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関し、特に、蓄電池を充電するための充電器を蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題対策の一つとして、モータの駆動力により走行するハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車などが注目されている。このような車両において、モータ、ジェネレータ、インバータ、コンバータおよびバッテリなどの電気機器は、電力の授受によって発熱する。そのため、これらの電気機器を冷却する必要がある。そこで、車両用空調装置として使用される蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して、発熱体を冷却する技術が提案されている。
【0003】
たとえば特開2005−90862号公報(特許文献1)には、空調用の冷凍サイクルの減圧器、蒸発器および圧縮機をバイパスするバイパス通路に、発熱体を冷却するための発熱体冷却手段を設けた、冷却システムが開示されている。
【0004】
ところで、蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用して暖房運転を行なう際に、室外熱交換器への着霜により熱交換能力が低下するという問題がある。この問題に対し、特開平6−24235号公報(特許文献2)では、蒸気圧縮式冷凍サイクルによる空調に蓄熱システムによる空調を組合せ、暖房運転時には室外熱交換器で発生した温風を蒸気圧縮式冷凍サイクルの室外熱交換器へ供給して、室外熱交換器への着霜を防止する技術が提案されている。
【0005】
一方、車両に搭載される充電器を冷却するための種々の技術が、従来提案されている。たとえば特開2010−81704号公報(特許文献3)には、充電器とラジエータとを接続し冷却水が循環する循環路が形成され、冷却ファンの駆動によりラジエータに空気が送られラジエータを流れる冷却水が効果的に放熱され、ポンプの駆動によりラジエータで放熱された冷却水が充電器を流れ、充電器と冷却水の間で熱交換が行なわれるので、充電器が冷却される技術が開示されている。
【0006】
特開平4−275492号公報(特許文献4)には、電源からの電力を整流して電池を充電する充電器を電気自動車に設け、充電器を経由するように冷却液循環経路を配管し、冷却液ポンプにより冷却液循環経路内の冷却液を循環させる冷却装置が開示されている。
【0007】
特開2009−143509号公報(特許文献5)には、充電時に発熱するバッテリは、冷却風との間で熱交換を生じるように配置され、充電に伴って発生した熱量が冷却風に放散されることによって冷却される技術が開示されている。また、バッテリからの廃熱により温められた温風が、ヒートポンプ機構中の蒸発工程のための熱交換器を通過することにより、温風に含まれる熱量が、熱サイクル中の蒸発工程での熱源として回収される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−90862号公報
【特許文献2】特開平6−24235号公報
【特許文献3】特開2010−81704号公報
【特許文献4】特開平4−275492号公報
【特許文献5】特開2009−143509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
寒冷時や寒冷地における蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用した空調装置の課題として、暖房運転時の室外熱交換器への霜付きが挙げられる。室外熱交換器に霜が付くと、冷媒と大気との熱交換を阻害するので、霜を除去するために強制的に冷房運転を行なうデフロスト運転が行なわれる。このデフロスト運転中、暖房運転が行なわれていないにも関わらず圧縮機を作動させる必要があり、圧縮機の消費動力が増大する問題がある。特許文献2では、室外熱交換器への霜付きを防止することでデフロスト運転を回避する技術が開示されているが、この場合、室外熱交換器へ温風を供給するためのシステムが必要となり、装置構成が複雑になるとともに、ポンプの作動が必要となり消費動力が増大する問題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、蓄電池を充電するための充電器を蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用して冷却する冷却装置において、簡単な構成で消費電力を悪化させることなく熱交換器への霜付きを抑制できる、冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る冷却装置は、電源からの電力供給を受け蓄電池を充電するための充電器を冷却する冷却装置であって、冷媒を循環させるための圧縮機と、冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器および第二熱交換器と、冷媒を減圧する減圧器と、冷媒と空調用空気との間で熱交換する第三熱交換器と、第二熱交換器と減圧器との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて充電器を冷却する冷却部と、圧縮機と第一熱交換器との間を冷媒が流通する第一通路と、冷却部と減圧器との間を冷媒が流通する第二通路と、第一通路と第二通路とを連通する連通路と、を備える。
【0012】
上記冷却装置において好ましくは、第一通路と連通路との連通状態を切り換える切換弁を備える。
【0013】
上記冷却装置において好ましくは、第一熱交換器と第二熱交換器との間を流通する冷媒の経路上に設けられ、冷媒を用いて発熱源を冷却する他の冷却部を備える。好ましくは、冷却装置は、第一熱交換器と第二熱交換器との間に並列に接続された第三通路および第四通路を備え、他の冷却部は、第四通路に設けられる。好ましくは、冷却装置は、第四通路の冷媒の流れを遮断する冷媒遮断弁を備える。
【0014】
上記冷却装置において好ましくは、圧縮機から第一熱交換器へ向かう冷媒の流れと、圧縮機から第三熱交換器へ向かう冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷却装置によると、簡単な構成で、消費電力を悪化させることなく、熱交換器への霜付きを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】冷却装置の構成を示す模式図である。
【図2】蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図3】四方弁を切り換えた状態の冷却装置を示す模式図である。
【図4】蒸気圧縮式冷凍サイクルの暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図5】蒸気圧縮式冷凍サイクルの停止中の、充電器を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
図1は、本実施の形態の冷却装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、冷却装置1は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を備える。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、たとえば、車両の車内の冷暖房を行なうために、車両に搭載される。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた冷房は、たとえば、冷房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動的に車両の室内の温度を設定温度になるように調整する自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも高い場合に行なわれる。蒸気圧縮式冷凍サイクル10を用いた暖房は、たとえば、暖房を行なうためのスイッチがオンされた場合、または、自動制御モードが選択されており、かつ、車室内の温度が設定温度よりも低い場合に行なわれる。
【0019】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12と、第一熱交換器としての熱交換器14と、第二熱交換器としての熱交換器15と、減圧器の一例としての膨張弁16と、第三熱交換器としての熱交換器18と、を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、四方弁13を含む。四方弁13は、圧縮機12から熱交換器14へ向かう冷媒の流れと、圧縮機12から熱交換器18へ向かう冷媒の流れと、を切り換え可能に配置されている。
【0020】
圧縮機12は、車両に搭載されたモータまたはエンジンを動力源として作動し、冷媒ガスを断熱的に圧縮して過熱状態冷媒ガスとする。圧縮機12は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の作動時に流通する気相冷媒を吸入圧縮して、高温高圧の気相冷媒を吐出する。圧縮機12は、冷媒を吐出することで、蒸気圧縮式冷凍サイクル10に冷媒を循環させる。
【0021】
熱交換器14,15,18は、冷媒を流通するチューブと、チューブ内を流通する冷媒と熱交換器14,15,18の周囲の空気との間で熱交換するためのフィンと、を含む。熱交換器14,15,18は、車両の走行によって発生する自然の通風によって供給された空気流れ、またはファンによって供給された空気流れと、冷媒と、の間で熱交換を行なう。熱交換器14,15,18は、それぞれ直列に接続されており、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を流通する冷媒の全量が熱交換器14,15,18を通過する。
【0022】
膨張弁16は、高圧の液相冷媒を小さな孔から噴射させることにより膨張させて、低温・低圧の霧状冷媒に変化させる。膨張弁16は、凝縮された冷媒液を減圧して、気液混合状態の湿り蒸気とする。なお、冷媒液を減圧するための減圧器は、絞り膨張する膨張弁16に限られず、毛細管であってもよい。
【0023】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10はまた、冷媒通路21〜29を含む。蒸気圧縮式冷凍サイクル10は、圧縮機12、熱交換器14,15、膨張弁16および熱交換器18が、冷媒通路21〜29によって連結されて構成される。
【0024】
冷媒通路21は、圧縮機12と四方弁13とを連通する。冷媒は、冷媒通路21を経由して、圧縮機12から四方弁13へ向かって流通する。冷媒通路22は、四方弁13と熱交換器14とを連通する。冷媒は、冷媒通路22を経由して、四方弁13と熱交換器14との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路23は、熱交換器14と熱交換器15とを連通する。冷媒は、冷媒通路23を経由して、熱交換器14,15の一方から他方へ向かって流通する。
【0025】
冷媒通路23は、冷媒通路23の一部を形成する通路形成部23aを含む。冷媒通路24は、通路形成部23aと並列に設けられた冷媒の経路である。冷媒通路24上に、後述する冷却部30が設けられている。冷媒通路24を流通する冷媒は、冷却部30に供給され、後述するように発熱源を冷却する。
【0026】
冷媒通路25は、熱交換器15と冷却部70とを連通する。冷媒は、冷媒通路25を経由して、熱交換器15と冷却部70との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路26は、冷却部70と膨張弁16とを連通する。冷媒は、冷媒通路26を経由して、冷却部70と膨張弁16との一方から他方へ向かって流通する。
【0027】
冷媒通路27は、膨張弁16と熱交換器18とを連通する。冷媒は、冷媒通路27を経由して、膨張弁16と熱交換器18との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路28は、熱交換器18と四方弁13とを連通する。冷媒は、冷媒通路28を経由して、熱交換器18と四方弁13との一方から他方へ向かって流通する。冷媒通路29は、四方弁13と圧縮機12とを連通する。冷媒は、冷媒通路29を経由して、四方弁13から圧縮機12へ向かって流通する。
【0028】
なお、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒としては、たとえば二酸化炭素、プロパンやイソブタンなどの炭化水素、アンモニアまたは水などを用いることができる。
【0029】
熱交換器15と膨張弁16との間を流通する冷媒の経路上には、冷却部70が設けられている。冷却部70は、充電器71と、冷媒が流通する配管である冷却通路74とを含む。冷却通路74の一方の端部は、冷媒通路25に接続される。冷却通路74の他方の端部は、冷媒通路26に接続される。
【0030】
充電器71は、配線73を介して、充放電可能な蓄電池72と電気的に接続されている。充電器71は、電力変換用のスイッチング素子を含み、外部電源から供給される電力を所定の充電電圧(直流)に変換する。充電器71によって電圧変換された電力は蓄電池72へ供給され、蓄電池72が充電される。
【0031】
冷却部70へ流通し、冷却通路74を経由して流れる冷媒は、充電器71から熱を奪って、充電器71を冷却させる。冷却部70は、冷却通路74によって充電器71と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部70は、たとえば、充電器71の筐体に冷却通路74の外周面が直接接触するように形成された冷却通路74を有する。冷却通路74は、充電器71の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路74を流通する冷媒と、充電器71との間で、熱交換が可能となる。
【0032】
充電器71は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器15と膨張弁16との間の冷媒の経路の一部を形成する冷却通路74の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路74の外部に充電器71が配置されるので、冷却通路74の内部を流通する冷媒の流れに充電器71が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、充電器71を冷却することができる。
【0033】
代替的には、冷却部70は、充電器71と冷却通路74との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。この場合充電器71は、冷却通路74の外周面にヒートパイプを介して接続され、充電器71から冷却通路74へヒートパイプを経由して熱伝達することにより、冷却される。充電器71をヒートパイプの加熱部とし冷却通路74をヒートパイプの冷却部とすることで、冷却通路74と充電器71との間の熱伝達効率が高められるので、充電器71の冷却効率を向上できる。たとえばウィック式のヒートパイプを使用することができる。
【0034】
ヒートパイプによって充電器71から冷却通路74へ確実に熱伝達することができるので、充電器71と冷却通路74との間に距離があってもよく、充電器71に冷却通路74を接触させるために冷却通路74を複雑に配置する必要がない。その結果、充電器71の配置の自由度を向上することができる。
【0035】
熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路は、並列に接続された第三通路としての通路形成部23aと第四通路としての冷媒通路24とを含む。冷媒通路24上には、充電器71を冷却する冷却部70とは異なる他の冷却部としての、冷却部30が設けられている。冷却部30が設けられるので、冷媒通路24は、冷却部30よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路24aと、冷却部30よりも熱交換器15に近接する側の冷媒通路24bと、に二分割されている。冷却部30は、車両に搭載される電気機器であるHV(Hybrid Vehicle)機器31と、冷媒が流通する配管である冷却通路32とを含む。HV機器31は、発熱源の一例である。冷却通路32の一方の端部は、冷媒通路24aに接続される。冷却通路32の他方の端部は、冷媒通路24bに接続される。
【0036】
HV機器31は、電力の授受によって発熱する電気機器を含む。電気機器は、たとえば、直流電力を交流電力に変換するためのインバータ、回転電機であるモータジェネレータ、蓄電装置であるバッテリ、バッテリの電圧を昇圧させるためのコンバータ、バッテリの電圧を降圧するためのDC/DCコンバータなどの、少なくともいずれか一つを含む。バッテリは、リチウムイオン電池あるいはニッケル水素電池等の二次電池である。バッテリに代えてキャパシタが用いられてもよい。
【0037】
冷却装置1は、熱交換器14と熱交換器15との間を冷媒が流通する経路として、冷却部30を経由しない経路である通路形成部23aを含む。冷却装置1はまた、通路形成部23aと並列に配置された他の冷媒の経路である、冷媒通路24を含む。冷却部30は、冷媒通路24に設けられている。熱交換器14と熱交換器15との間の冷媒の経路が分岐して、冷媒の一部が冷却部30へ流通する。
【0038】
冷媒通路24を流通する冷媒は、冷却通路32を経由して流れる。冷媒は、冷却通路32内を流通するとき、HV機器31から熱を奪って、HV機器31を冷却させる。冷却部30は、冷却通路32によってHV機器31と冷媒との間で熱交換が可能な構造を有するように設けられる。本実施の形態においては、冷却部30は、たとえば、HV機器31の筐体に冷却通路32の外周面が直接接触するように形成された冷却通路32を有する。冷却通路32は、HV機器31の筐体と隣接する部分を有する。当該部分において、冷却通路32を流通する冷媒と、HV機器31との間で、熱交換が可能となる。
【0039】
HV機器31は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の熱交換器14から膨張弁16に至る冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31を冷却することができる。または代替的には、充電器71を冷却するための冷却部70と同様に、冷却部30は、HV機器31と冷却通路32との間に介在して配置された任意の公知のヒートパイプを備えてもよい。
【0040】
熱交換器14と熱交換器15との間に、冷却部30を経由する冷媒の経路である冷媒通路24と、冷却部30を経由しない経路である通路形成部23aと、が並列に設けられる。そのため、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の一部のみが、冷却部30へ流れる。冷却部30においてHV機器31を冷却するために必要な量の冷媒を冷媒通路24へ流通させ、HV機器31は適切に冷却される。したがって、HV機器31が過冷却されることを防止できる。全ての冷媒が冷却部30に流れないので、冷媒通路24および冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失を低減することができ、それに伴い、冷媒を循環させるための圧縮機12の運転に必要な消費電力を低減することができる。
【0041】
冷却装置1はさらに、流量調整弁51を備える。流量調整弁51は、通路形成部23aに配置されている。流量調整弁51は、その弁開度を変動させ、通路形成部23aを流れる冷媒の圧力損失を増減させることにより、通路形成部23aを流れる冷媒の流量と、冷媒通路24および冷却通路32を流れる冷媒の流量と、を任意に調節する。
【0042】
たとえば、流量調整弁51を全閉にして弁開度を0%にすると、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒の全量が冷媒通路24および冷却通路32へ流入する。流量調整弁51の弁開度を大きくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、通路形成部23aを経由して流れる流量が大きくなり、冷媒通路24および冷却通路32を経由して流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなる。流量調整弁51の弁開度を小さくすれば、熱交換器14と熱交換器15との間を流れる冷媒のうち、通路形成部23aを経由して流れる流量が小さくなり、冷媒通路24および冷却通路32を経由して冷却部30へ流れHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなる。
【0043】
流量調整弁51の弁開度を大きくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が小さくなり、HV機器31の冷却能力が低下する。流量調整弁51の弁開度を小さくするとHV機器31を冷却する冷媒の流量が大きくなり、HV機器31の冷却能力が向上する。流量調整弁51を使用して、冷却部30に流れる冷媒の量を最適に調節できるので、HV機器31の過冷却を確実に防止することができ、加えて、冷媒通路24および冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失および冷媒を循環させるための圧縮機12の消費電力を、確実に低減することができる。
【0044】
熱交換器18は、空気が流通するダクト40の内部に配置されている。熱交換器18は、冷媒とダクト40内を流通する空調用空気との間で熱交換して、空調用空気の温度を調節する。ダクト40は、ダクト40に空調用空気が流入する入口であるダクト入口41と、ダクト40から空調用空気が流出する出口であるダクト出口42と、を有する。ダクト40の内部の、ダクト入口41の近傍には、ファン43が配置されている。
【0045】
ファン43が駆動することにより、ダクト40内に空気が流通する。ファン43が稼働すると、ダクト入口41を経由してダクト40の内部へ空調用空気が流入する。ダクト40へ流入する空気は、外気であってもよく、車両の室内の空気であってもよい。図1,3中の矢印45は、熱交換器18を経由して流通し、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷媒と熱交換する空調用空気の流れを示す。冷房運転時には、熱交換器18において空調用空気が冷却され、冷媒は空調用空気からの熱伝達を受けて加熱される。暖房運転時には、熱交換器18において空調用空気が加熱され、冷媒は空調用空気へ熱伝達することにより冷却される。矢印46は、熱交換器18で温度調節され、ダクト出口42を経由してダクト40から流出する、空調用空気の流れを示す。
【0046】
冷房運転時には、図1に示すA点、B点、C点、D点、E点、F点およびG点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器14,15と膨張弁16と熱交換器18とが冷媒通路21〜29によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0047】
図2は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図2中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図2中には、圧縮機12から熱交換器14を経由して冷媒通路24aへ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路24bから熱交換器15を経由して冷媒通路25へ流入し、充電器71を冷却し、膨張弁16、熱交換器18を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,C,D,E,FおよびG点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0048】
図2に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器14へと流れる。
【0049】
熱交換器14へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器14において外気と熱交換して冷却される。冷媒は、等圧のまま顕熱を放出して過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮して飽和液になる(C点)。熱交換器14は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器14において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器14における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。
【0050】
熱交換器14から流出した飽和液状態の冷媒は、冷媒通路24aを経由して熱交換器14と冷却部30との間を流通し、冷却部30へ流れる。冷媒通路24aは、熱交換器14から冷却部30に冷媒を流通させるための通路である。冷却部30において、熱交換器14を通過して凝縮された液冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。冷媒は、HV機器31から潜熱を受け取って一部気化することにより、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気となる(D点)。
【0051】
その後冷媒は、冷媒通路24bを経由して冷却部30と熱交換器15との間を流通し、熱交換器15に流入する。冷媒通路24bは、冷却部30から熱交換器15に冷媒を流通させるための通路である。冷媒の湿り蒸気は、熱交換器15において外気と熱交換することで再度凝縮され、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却された過冷却液になる(E点)。
【0052】
熱交換器15で過冷却された高圧の冷媒は、冷媒通路25を経由して冷却部70へ流れ、充電器71を冷却する。充電器71との熱交換により、冷媒の過冷却度が小さくなる。つまり、過冷却液の状態の冷媒の温度が上昇し、液冷媒の飽和温度に近づく(F点)。その後冷媒は、冷媒通路26を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(G点)。
【0053】
膨張弁16から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路25を経由して熱交換器18へ流入する。熱交換器18のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、熱交換器18のチューブ内を流通する際に、フィンを経由して車両の室内の空気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって、等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。冷媒は、熱交換器18において周囲から吸熱し加熱される。気化した冷媒は、冷媒通路28、四方弁13および冷媒通路29を経由して、圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器18から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0054】
なお、上述した蒸気圧縮式冷凍サイクルの説明では、理論冷凍サイクルについて説明しているが、実際の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12における損失、冷媒の圧力損失および熱損失を考慮する必要があるのは勿論である。
【0055】
冷房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する霧状冷媒が気化することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気の熱を吸収する。熱交換器18は、膨張弁16によって減圧された冷媒を用いて、冷媒の湿り蒸気が蒸発して冷媒ガスとなる際の気化熱を、車両の室内へ流通する空調用空気から吸収して、車両の室内の冷房を行なう。熱が熱交換器18に吸収されることによって温度が低下した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の冷房が行なわれる。
【0056】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において気化熱を空調用空気から吸収して、車室内の冷房を行なう。加えて、熱交換器14から出た高圧の液冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。さらに、熱交換器15から出た高圧の液冷媒が冷却部70へ流通し、充電器71と熱交換することで充電器71を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31および充電器71を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。
【0057】
図3は、四方弁13を切り換えた状態の冷却装置1を示す模式図である。図1と図3とを比較して、四方弁13が90°回転することにより、圧縮機12出口から四方弁13へ流入した冷媒が四方弁13を出る経路が切り換えられている。図1に示す冷房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器14へ向かって流れる。一方、図3に示す暖房運転時には、圧縮機12において圧縮された冷媒は、圧縮機12から熱交換器18へ向かって流れる。
【0058】
暖房運転時には、図3に示すA点、B点、G点、F点、E点、D点およびC点を順に通過するように蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を冷媒が流れ、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とに冷媒が循環する。冷媒は、圧縮機12と熱交換器18と膨張弁16と熱交換器15,14とが冷媒通路21〜29によって順次接続された冷媒循環流路を通って、蒸気圧縮式冷凍サイクル10内を循環する。
【0059】
図4は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の暖房運転時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。図4中の横軸は、冷媒の比エンタルピー(単位:kJ/kg)を示し、縦軸は、冷媒の絶対圧力(単位:MPa)を示す。図中の曲線は、冷媒の飽和蒸気線および飽和液線である。図4中には、圧縮機12から熱交換器18、膨張弁16を経由して冷媒通路26へ流入し、充電器71を冷却し、冷媒通路25から熱交換器15を経由して冷媒通路24へ流入し、HV機器31を冷却し、冷媒通路23から熱交換器14を経由して圧縮機12へ戻る、蒸気圧縮式冷凍サイクル10中の各点(すなわちA、B,G,F,E,DおよびC点)における冷媒の熱力学状態が示される。
【0060】
図4に示すように、圧縮機12に吸入された過熱蒸気状態の冷媒(A点)は、圧縮機12において等比エントロピー線に沿って断熱圧縮される。圧縮するに従って冷媒の圧力と温度とが上昇し、高温高圧の過熱度の大きい過熱蒸気になって(B点)、冷媒は熱交換器18へと流れる。
【0061】
熱交換器18へ入った高圧の冷媒蒸気は、熱交換器18において冷却され、等圧のまま過熱蒸気から乾き飽和蒸気になり、凝縮潜熱を放出し徐々に液化して気液混合状態の湿り蒸気になり、冷媒の全部が凝縮すると飽和液になり、さらに顕熱を放出して過冷却液になる(G点)。熱交換器18は、圧縮機12において圧縮された過熱状態冷媒ガスを、外部媒体へ等圧的に放熱させて冷媒液とする。圧縮機12から吐出された気相冷媒は、熱交換器18において周囲に放熱し冷却されることによって、凝縮(液化)する。熱交換器18における熱交換によって、冷媒の温度は低下し冷媒は液化する。冷媒は、熱交換器18において周囲へ放熱し冷却される。
【0062】
熱交換器18で液化した高圧の液相冷媒は、冷媒通路27を経由して膨張弁16に流入する。膨張弁16において、過冷却液状態の冷媒は絞り膨張され、冷媒の比エンタルピーは変化せず温度と圧力とが低下して、低温低圧の気液混合状態の湿り蒸気となる(F点)。膨張弁16において温度が下げられた冷媒は、冷媒通路26を経由して冷却部70の冷却通路74へ流れ、充電器71を冷却する。充電器71との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。充電器71から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(E点)。
【0063】
冷却部70から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路25を経由して熱交換器15へ流入する。熱交換器15のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。熱交換器15における外気との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。熱交換器15において潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(D点)。
【0064】
熱交換器15から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路24bを経由して冷却部30の冷却通路32へ流れ、HV機器31を冷却する。冷却部30において、飽和液と飽和蒸気とが混合した湿り蒸気状態の冷媒に熱を放出することで、HV機器31が冷却される。
HV機器31との熱交換により、冷媒が加熱され、冷媒の乾き度が増大する。HV機器31から潜熱を受け取って一部の冷媒が気化することにより、湿り蒸気状態の冷媒中に含まれる飽和蒸気の割合が増加する(C点)。
【0065】
冷却部30から出た湿り蒸気状態の冷媒は、冷媒通路23を経由して熱交換器14へ流入する。熱交換器14のチューブ内には、湿り蒸気状態の冷媒が流入する。冷媒は、チューブ内を流通する際に、フィンを経由して外気の熱を蒸発潜熱として吸収することによって等圧のまま蒸発する。全ての冷媒が乾き飽和蒸気になると、さらに顕熱によって冷媒蒸気は温度上昇して、過熱蒸気となる(A点)。気化した冷媒は、冷媒通路22、四方弁13および冷媒通路29を経由して、圧縮機12に吸入される。圧縮機12は、熱交換器14から流通する冷媒を圧縮する。冷媒はこのようなサイクルに従って、圧縮、凝縮、絞り膨張、蒸発の状態変化を連続的に繰り返す。
【0066】
暖房運転時に、熱交換器18は、その内部を流通する冷媒蒸気が凝縮することによって、熱交換器18に接触するように導入された周囲の空気へ熱を加える。熱交換器18は、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒を用いて、冷媒ガスが凝縮して冷媒の湿り蒸気となる際の凝縮熱を、車両の室内へ流通する空調用空気へ放出して、車両の室内の暖房を行なう。熱交換器18から熱を受け取ることによって温度が上昇した空調用空気が車両の室内に流入することによって、車両の室内の暖房が行なわれる。
【0067】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10の運転中に、冷媒は、熱交換器18において凝縮熱を車両の室内の空気へ放出して、車室内の暖房を行なう。加えて、膨張弁16を経由した低温低圧の液冷媒が冷却部70へ流通し、充電器71と熱交換することで充電器71を冷却する。さらに、熱交換器15から出た冷媒が冷却部30へ流通し、HV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31および充電器71を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。
【0068】
以上のように、本実施の形態の冷却装置1は、冷房運転時と暖房運転時とで蒸気圧縮式冷凍サイクル10内の冷媒の流れる方向を切り換える四方弁13を備える。冷房運転中に、熱交換器18において、膨張弁16で絞り膨張された低温低圧の冷媒が空調用空気から熱を吸収して、車室内の冷房を行なう。暖房運転中に、熱交換器18において、圧縮機12で断熱圧縮された高温高圧の冷媒が空調用空気に熱を放出して、車室内の暖房を行なう。冷却装置1は、一台の熱交換器18を使用して、冷房運転時と暖房運転時との両方の場合に、車両の室内へ流通する空調用空気の温度を適切に調節できる。したがって、空調用空気と熱交換する熱交換器を二台配置する必要がないので、冷却装置1のコストを低減することができ、加えて、冷却装置1を小型化することができる。
【0069】
また冷媒は、冷却部70へ流通し充電器71と熱交換することで充電器71を冷却し、冷却部30へ流通しHV機器31と熱交換することでHV機器31を冷却する。冷却装置1は、車両に搭載された発熱源であるHV機器31および充電器71を、車両の室内の空調用の蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、冷却する。熱交換器18において空調用空気と熱交換することで車両の室内の冷暖房を行なうために設けられた蒸気圧縮式冷凍サイクル10を利用して、HV機器31および充電器71の冷却が行なわれる。
【0070】
HV機器31および充電器71の冷却のために、専用の水循環ポンプまたは冷却ファンなどの機器を設ける必要はない。そのため、HV機器31および充電器71の冷却のために必要な構成を低減でき、冷却装置1の構成を単純にできるので、冷却装置1の製造コストを低減することができる。加えて、HV機器31および充電器71の冷却のためにポンプや冷却ファンなどの動力源を運転する必要がなく、動力源を運転するための消費動力を必要としない。したがって、HV機器31および充電器71の冷却のための消費動力を低減することができる。
【0071】
HV機器31は、熱交換器14と熱交換器15との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する冷却通路32の外周面に直接接続されて、冷却される。充電器71は、熱交換器15と膨張弁16との間を流通する冷媒の経路の一部を形成する冷却通路74の外周面に直接接続されて、冷却される。冷却通路32の外部にHV機器31および充電器71が配置されるので、冷却通路32の内部を流通する冷媒の流れにHV機器31および充電器71が干渉することはない。そのため、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の圧力損失は増大しないので、圧縮機12の動力を増大させることなく、HV機器31および充電器71を冷却することができる。
【0072】
冷房運転時に、膨張弁16を通過した後の低温低圧の冷媒をHV機器31および充電器71の冷却に使用すると、熱交換器18における空調用空気の冷却能力が減少して、車室用の冷房能力が低下する。これに対し、本実施の形態の冷却装置1では、膨張弁16を通過する前の高圧の冷媒をHV機器31および充電器71の冷却に使用する。HV機器31を冷却した後、冷媒は、熱交換器15において十分な過冷却状態にまで冷却され、充電器71を冷却した後も過冷却液の状態に維持される。そのため、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、HV機器31および充電器71を冷却することができる。
【0073】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10において、圧縮機12から吐出された高圧の冷媒は、熱交換器14と熱交換器15との両方によって凝縮される。熱交換器15において十分に冷媒を冷却することにより、膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。そのため、熱交換器18において冷媒が蒸発するときに外部から受け取る熱量を十分に大きくすることができる。
【0074】
冷媒は、熱交換器15において過冷却液になるまで冷却され、充電器71から顕熱を受けて飽和温度をわずかに下回る温度にまで加熱される。その後膨張弁16を通過することで、冷媒は低温低圧の湿り蒸気になる。膨張弁16の出口において、冷媒は、車両の室内の冷房のために本来必要とされる温度および圧力を有する。
【0075】
熱交換器15の仕様(すなわち、熱交換器15のサイズまたは熱交換性能)は、熱交換器15を通過した後の液相冷媒の温度が車室内の冷房のために必要とされる温度よりも低下するように、定められる。熱交換器15の仕様は、充電器71を冷却しない場合の蒸気圧縮式冷凍サイクルの熱交換器よりも、冷媒が充電器71から受け取ると想定される熱量分だけ大きい放熱量を有するように、定められる。
【0076】
このように、冷媒を十分に冷却できる熱交換器15の放熱能力を定めることにより、車室内の空気を冷却する冷房の能力に影響を与えることなく、充電器71を冷却することができる。したがって、充電器71の冷却能力と、車室用の冷房能力との両方を、確実に確保することができる。
【0077】
本実施の形態の蒸気圧縮式冷凍サイクル10では、圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置し、HV機器31の冷却系である冷却部30が熱交換器14と熱交換器15との間に設けられる。冷房運転時に、熱交換器14では、図2に示すように、冷媒を飽和液の状態にまで冷却すればよい。HV機器31から蒸発潜熱を受け取り一部気化した湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15で再度冷却される。湿り蒸気状態の冷媒を凝縮させ完全に飽和液にするまで、冷媒は一定の温度で状態変化する。熱交換器15はさらに、充電器71の冷却および車両の室内の冷房のために必要な程度の過冷却度にまで、冷媒を冷却する。
【0078】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10が圧縮機12と膨張弁16との間に一段の熱交換器14のみを備える構成の場合、冷房運転時には、冷房とHV機器31および充電器71の冷却とに相当する分の熱交換を、熱交換器14で行なう必要がある。そのため、熱交換器14において冷媒を飽和液の状態からさらに冷却し、冷媒が所定の過冷却度を有するまで冷却する必要があった。過冷却液の状態の冷媒を冷却すると、冷媒の温度が大気温度に近づき、冷媒の冷却効率が低下するので、熱交換器14の容量を増大させる必要がある。その結果、熱交換器14のサイズが増大し、車載用の冷却装置1として不利になるという問題がある。一方、車両へ搭載するために熱交換器14を小型化すると、熱交換器14の放熱能力も小さくなり、その結果、膨張弁16の出口における冷媒の温度を十分に低くできず、車室用の冷房能力が不足する虞がある。
【0079】
圧縮機12と膨張弁16との間に二段の熱交換器14,15を配置することにより、冷媒の過冷却度を大きくする必要がなく、熱交換器14,15の容量を低減することができる。したがって、熱交換器14,15のサイズを低減することができ、小型化され車載用に有利な冷却装置1を得ることができる。
【0080】
熱交換器14から冷却部30へ流れる冷媒は、HV機器31を冷却するときに、HV機器31から熱を受け取り加熱される。冷却部30において加熱された冷媒が気化すると、冷媒とHV機器31との熱交換量が減少してHV機器31を効率よく冷却できなくなり、また冷媒が配管内を流れる際の圧力損失が増大する。そのため、HV機器31を冷却した後の冷媒を気化させない程度に、熱交換器14において十分に冷媒を冷却するのが望ましい。
【0081】
具体的には、熱交換器14の出口における冷媒の状態を飽和液に近づけ、典型的には熱交換器14の出口において冷媒が飽和液線上にある状態にする。このように冷媒を十分に冷却できる能力を熱交換器14が有する結果、熱交換器14の冷媒から熱を放出させる放熱能力は、熱交換器15の放熱能力よりも高くなる。放熱能力が相対的に大きい熱交換器14において冷媒を十分に冷却することにより、HV機器31から熱を受け取った冷媒を湿り蒸気の状態に留めることができ、冷媒とHV機器31との熱交換量の減少を回避できるので、HV機器31を十分に効率よく冷却することができる。HV機器31を冷却した後の湿り蒸気の状態の冷媒は、熱交換器15において効率よく再度冷却され、過冷却液の状態にまで冷却される。したがって、車室用の冷房能力とHV機器31の冷却能力との両方を確保した、冷却装置1を提供することができる。
【0082】
暖房運転時に冷媒は、冷却部70において充電器71から吸熱することにより加熱され、熱交換器15において外気から吸熱することにより加熱され、冷却部30においてHV機器31から吸熱することにより加熱され、熱交換器14において外気から吸熱することによりさらに加熱される。冷却部70、熱交換器15、冷却部30および熱交換器14の全てにおいて冷媒を加熱することにより、熱交換器14の出口において冷媒を十分な過熱蒸気の状態にまで加熱できるので、車両の室内の優れた暖房性能を維持しつつ、HV機器31および充電器71を適切に冷却できる。冷却部30,70で冷媒が加熱され、HV機器31および充電器71の廃熱を室内の暖房に有効利用できるので、成績係数が向上し、暖房運転時の圧縮機12での冷媒の断熱圧縮のための消費動力を低減することができる。
【0083】
図4に示すように、暖房運転時には、膨張弁16で絞り膨張された低温の冷媒が熱交換器14,15を流通する。そのため、外気温が低い場合に、熱交換器14,15に霜が付くことがある。冷房運転を行ない高温の冷媒を熱交換器14,15に流通させると熱交換器14,15に付着した霜を除去できるが、この場合、暖気を得られないにもかかわらず圧縮機12を作動させる必要があり、消費電力が増大する。
【0084】
そこで、本実施の形態の冷却装置1は、圧縮機12と熱交換器14との間を冷媒が流通する第一通路としての冷媒通路22と、冷却部70と膨張弁16との間を冷媒が流通する第二通路としての冷媒通路26と、冷媒通路22,26を連通する連通路52と、を備える。冷媒は、連通路52を経由して、冷媒通路22から直接冷媒通路26へ流通でき、または冷媒通路26から直接冷媒通路22へ流通できる。
【0085】
連通路52と冷媒通路22との分岐点には、冷媒の流れを切り換える切換弁としての三方弁53が配置されている。三方弁53が配置されることにより、冷媒通路22は、三方弁53よりも熱交換器14に近接する側の冷媒通路22aと、三方弁53よりも四方弁13に近接する側の冷媒通路22bと、に二分割されている。三方弁53は、冷媒通路22と連通路52との連通状態を切り換える。三方弁53は、冷媒通路22aと冷媒通路22bとを連通するようにその開閉状態を設定され、または、冷媒通路22aと連通路52とを連通するようにその開閉状態を設定される。
【0086】
図5は、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止中の、充電器71を冷却する冷媒の流れを示す模式図である。図3に示す暖房運転を行なっているときに熱交換器14,15の霜取り運転が必要になると、三方弁53を操作して、連通路52から冷媒通路22aへ冷媒が流通するように、三方弁53の開閉状態を切り換える。さらに膨張弁16を全閉にする。このとき蒸気圧縮式冷凍サイクル10の全体に冷媒を循環させる必要はなく、圧縮機12は停止する。冷媒を連通路52から冷媒通路22aへ流通させるように三方弁53を操作し、連通路52を経由して冷媒を流通させることにより、図5に示すように、冷却部70から冷媒通路26、連通路52、冷媒通路22aを順に経由して熱交換器14へ至り、さらに冷媒通路23を経由して熱交換器15へ流通し、冷媒通路25を経由して冷却部70へ戻る、閉じられた環状の経路が形成される。
【0087】
このように形成された閉ループ状の冷媒の経路を経由して、圧縮機12を動作することなく、熱交換器14,15と冷却部70との間に冷媒を循環させることができる。冷媒は、冷却部70において充電器71を冷却するとき、充電器71から蒸発潜熱を受けて蒸発する。冷却部70で気化された冷媒蒸気は、冷媒通路26、連通路52、冷媒通路22aを順に経由して、熱交換器14,15へ順に流れる。熱交換器14,15において、車両の走行風またはラジエータファンからの通風により、冷媒蒸気は冷却されて凝縮する。熱交換器14,15で液化した冷媒液は、冷媒通路25を経由して、冷却部70へ戻る。
【0088】
このように、冷却部70と熱交換器14,15とを経由する環状の経路によって、冷却部70を加熱部とし熱交換器14,15を冷却部とする、ヒートパイプが形成される。したがって、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているとき、すなわち車両用の冷暖房が停止しているときに、圧縮機12を起動する必要なく、充電器71を確実に冷却することができる。充電器71の冷却のために圧縮機12を常時運転する必要がないことにより、圧縮機12の消費動力を低減して車両の燃費を向上することができ、加えて、圧縮機12を長寿命化できるので圧縮機12の信頼性を向上することができる。
【0089】
図5には、地面60が図示されている。地面60に対して垂直な鉛直方向において、冷却部70は、熱交換器14,15よりも下方に配置されている。熱交換器14,15と冷却部70との間に冷媒を循環させる環状の経路において、冷却部70が下方に配置され、熱交換器14,15が上方に配置される。熱交換器14,15は、冷却部70よりも高い位置に配置される。
【0090】
この場合、冷却部70で加熱され気化した冷媒蒸気は、環状の経路内を上昇して熱交換器14,15へ到達し、熱交換器14,15において冷却され、凝縮されて液冷媒となり、重力の作用により環状の経路内を下降して冷却部70へ戻る。つまり、冷却部70と、熱交換器14,15と、これらを連結する冷媒の経路とによって、サーモサイフォン式のヒートパイプが形成される。ヒートパイプを形成することで冷却部70から熱交換器14,15への熱伝達効率を向上することができるので、蒸気圧縮式冷凍サイクル10が停止しているときにも、動力を加えることなく、充電器71をより効率よく冷却することができる。
【0091】
また、充電器71の廃熱を利用して熱交換器14,15に冷媒蒸気を流通させることにより、熱交換器14,15を加熱して、熱交換器14,15から霜を除去することができる。従来のデフロスト運転(すなわち、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の冷房運転)を行なわずに熱交換器14,15から霜を除去することができ、デフロスト運転時に空調用空気が冷却され室内の温度が低下することを回避できる。
【0092】
蒸気圧縮式冷凍サイクル10に連通路52および三方弁53を追加したのみの簡単な構成で、熱交換器14,15の霜取り運転が可能とされている。冷媒は、ヒートパイプの原理に従って蒸発と凝縮とを繰り返すことにより冷却部70と熱交換器14,15との間を循環し、冷媒の流通のために動力を必要としない。したがって、冷媒を流通させるための圧縮機の運転は必要ないので、圧縮機の運転に係る消費電力の悪化を将来することなく、熱交換器14,15から霜を効果的に除去することができる。
【0093】
図5には、冷媒通路22と連通路52との分岐点に配置された三方弁53の開閉状態を変化させて連通路52へ冷媒を導入する例が示されている。連通路52へ冷媒を導入し閉ループ状の冷媒の経路を形成できる構成は、この例に限られない。たとえば、冷媒通路26と連通路52との分岐点に三方弁を配置してもよい。但しこの場合、冷媒通路22から圧縮機12へ向かう冷媒の流れを遮断するための弁が別に必要になる。図5に示す構成では、蒸気圧縮式冷凍サイクル10を構成する膨張弁16を閉状態にすることで、冷媒通路26から熱交換器18へ向かう冷媒の流れを遮断できる。つまり、冷媒通路26に弁を追加する必要なく、確実に閉ループ状の冷媒の経路を形成できるので望ましい。
【0094】
三方弁53に換えて、連通路52と冷媒通路22bとに二つの開閉弁を配置し、当該二つの開閉弁のうち一方を開状態とし他方を閉状態とすることで、冷媒通路22と連通路52との連通状態を切り換えてもよい。この場合使用される開閉弁は冷媒通路の開閉ができる単純な構造であればよいので安価であり、より低コストな冷却装置1を提供することができる。一方、二つの開閉弁を配置するよりも三方弁53の配置に要する空間はより小さくてよいと考えられ、三方弁53を使用することにより、より小型化され車両搭載性に優れた冷却装置1を提供することができる。
【0095】
さらに、冷却部30に冷媒を流通させるための冷媒通路24(24a)には、冷媒遮断弁としての開閉弁34が配置されている。図1,3に示す冷房運転および暖房運転時には、冷却部30に冷媒を流通させHV機器31を冷却する必要があるため、開閉弁34は開状態とされている。一方、車両の停止中に充電器71を使用した蓄電池72の充電を行なう場合に、車両内が無人であれば、冷暖房運転は不要である。この場合、HV機器31を冷却させる必要はないので、図5に示すように、開閉弁34を閉状態とし、冷媒通路24への冷媒の流れを遮断することができる。
【0096】
このようにすれば、冷却部30へ冷媒を流通させるための冷媒通路24に冷媒が流れることを防止できる。熱交換器14から熱交換器15へ向かって、冷媒の全量が冷媒通路23を経由して流通することになる。したがって、冷媒通路24および冷却通路32の冷媒の流通に係る圧力損失を確実に低減でき、蒸気圧縮式冷凍サイクル10の停止時の充電器71の冷却効率を一層向上させることができる。
【0097】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の冷却装置は、プラグインハイブリッド車、電気自動車などの、充放電可能な蓄電池を外部電源からの電力供給を受けて充電するための充電器を備える車両における、車内の冷房を行なうための蒸気圧縮式冷凍サイクルを使用した充電器の冷却に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0099】
1 冷却装置、10 蒸気圧縮式冷凍サイクル、12 圧縮機、13 四方弁、14,15,18 熱交換器、16 膨張弁、21,22,22a,22b,23,24,24a,24b,25,26,27,28,29 冷媒通路、23a 通路形成部、30,70 冷却部、31 HV機器、32,74 冷却通路、34 開閉弁、40 ダクト、41 ダクト入口、42 ダクト出口、43 ファン、51 流量調整弁、52 連通路、53 三方弁、60 地面、71 充電器、72 蓄電池、73 配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力供給を受け蓄電池を充電するための充電器を冷却する冷却装置であって、
冷媒を循環させるための圧縮機と、
前記冷媒と外気との間で熱交換する第一熱交換器および第二熱交換器と、
前記冷媒を減圧する減圧器と、
前記冷媒と空調用空気との間で熱交換する第三熱交換器と、
前記第二熱交換器と前記減圧器との間を流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記冷媒を用いて前記充電器を冷却する冷却部と、
前記圧縮機と前記第一熱交換器との間を前記冷媒が流通する第一通路と、
前記冷却部と前記減圧器との間を前記冷媒が流通する第二通路と、
前記第一通路と前記第二通路とを連通する連通路と、を備える、冷却装置。
【請求項2】
前記第一通路と前記連通路との連通状態を切り換える切換弁を備える、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間を流通する前記冷媒の経路上に設けられ、前記冷媒を用いて発熱源を冷却する他の冷却部を備える、請求項1または請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間に並列に接続された第三通路および第四通路を備え、
前記他の冷却部は、前記第四通路に設けられる、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第四通路の前記冷媒の流れを遮断する冷媒遮断弁を備える、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記圧縮機から前記第一熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、前記圧縮機から前記第三熱交換器へ向かう前記冷媒の流れと、を切り換える四方弁と、を備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224138(P2012−224138A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91750(P2011−91750)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】