説明

冷媒冷却機構及び冷却ユニット

【課題】冷媒配管を伝熱部材の溝部に対して確実に配置できるとともに伝熱部材の冷却性能を向上できる構成を提供する。
【解決手段】互いに平行な第1と第2の直管部(16a,16b)と、第1と第2の直管部(16a,16b)の端部同士を連結する曲管部(17)とを有する冷媒配管(15)と、被冷却部品(63)と熱的に接触する伝熱部(70b)と、第1直管部(16a)が嵌合する開口幅の第1溝部(72a)と、第2直管部(16b)の外径よりも大きな開口幅の第2溝部(72b)とを有する伝熱部材(70)と、第1直管部(16a)と第2直管部(16b)とをそれぞれ第1溝部(72a)と第2溝部(72b)側に向かって押圧する押圧機構(65)とを備える冷媒冷却機構を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒配管を流れる冷媒によって被冷却部品を冷却する冷媒冷却機構、及び該冷媒冷却機構を備える冷却ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒配管を流れる冷媒によって被冷却部品を冷却する冷媒冷却機構が知られている。例えば特許文献1には、空気調和機の電装部品を被冷却部品とする冷媒冷却機構が開示されている。
【0003】
具体的に、特許文献1の冷媒冷却機構は、円弧状の底面を有する溝部が形成された伝熱部材と、冷媒配管を伝熱部材側に向かって圧接するための保持部材とを有している。保持部材は、例えば冷媒配管側が開放するような断面コの字状の弾性クリップで構成されている。冷媒配管は、弾性クリップの開放部側から該弾性クリップの内部に挿通される。弾性クリップは、その弾性力により、冷媒配管を伝熱部材側に向かって付勢する。その結果、冷媒配管が伝熱部材に圧接し、冷媒配管と伝熱部材との間の熱抵抗が低減される。
【0004】
また、特許文献1の冷媒配管は、互いに平行な2本の直線状の配管部(直管部)と、該直管部の端部同士を連結するU字状の配管部(曲管部)とで構成されている(同文献の例えば図13を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような2本の直管部と曲管部とで構成される冷媒配管を伝熱部材に取り付けるためには、2本の直管部のそれぞれに対応する2本の溝部を伝熱部材に形成することが考えられる。しかし、2本の直管部の間隔や2本の溝部の間隔、各直管部の外径などの誤差が大きくなると、各直管部を各溝部に対して配置するのが困難となる場合がある。特に、2本の直管部の間隔は、該2本の直管部の端部同士を接続する曲管部が曲げられて形成されるため、比較的誤差が大きくなる。そうなると、各直管部を各溝部に対して配置するのが更に困難となる。
【0007】
これに対して、各直管部を各溝部に配置可能なように、2つの溝部の開口幅を大きめに設定することが考えられる。しかしそうすると、直管部と溝部との隙間が大きくなるため、直管部と溝部との間の接触が阻害され、両者の間の熱抵抗が増大する。その結果、伝熱部材の冷却性能が低下してしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷媒配管を伝熱部材の溝部に対して確実に配置できるとともに伝熱部材の冷却性能を向上できる構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、冷媒冷却機構を対象とし、互いに平行な第1と第2の直管部(16a,16b)と、該第1と第2の直管部(16a,16b)の端部同士を連結する曲管部(17)とを有する冷媒配管(15)と、被冷却部品(63)と熱的に接触する伝熱部(70b)と、上記第1直管部(16a)が嵌合する開口幅の第1溝部(72a)と、上記第2直管部(16b)の外径よりも大きな開口幅の第2溝部(72b)とを有する伝熱部材(70)と、上記第1直管部(16a)と第2直管部(16b)とをそれぞれ第1溝部(72a)と第2溝部(72b)側に向かって押圧する押圧機構(65)とを備えることを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、伝熱部材(70)の第1溝部(72a)に配置される第1直管部(16a)と、伝熱部材(70)の第2溝部(72b)に配置される第2直管部(16b)とが、押圧機構(65)によって伝熱部材(70)側へ押圧される。これにより、各直管部(16a,16b)が伝熱部材(70)に対して密着するため、各直管部(16a,16b)と各溝部(72a,72b)との間の熱抵抗が低減する。第1の発明では、該被冷却部品(63)の熱が、伝熱部材(70)及び冷媒配管(15)を介して、冷媒配管(15)を流れる冷媒に付与される。これにより、被冷却部品(63)が冷却される。
【0011】
しかし、2本の直管部(16a,16b)の間隔や2本の溝部(72a,72b)の間隔、各直管部(16a,16b)の外径などの誤差が大きくなると、各直管部を各溝部に対して配置するのが困難となる場合がある。これに対して、各溝部の開口幅を大きくすることが考えられるが、そうすると、各直管部と各溝部との隙間が大きくなるため、各直管部と各溝部との間の熱抵抗が増大してしまう。
【0012】
これに対して、第1の発明では、第1溝部(72a)の開口幅を、第1直管部(16a)が嵌合する大きさとしている。こうすると、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との隙間が小さくなるため、両者(16a,72a)が密着しやすくなり、両者(16a,72a)の間の熱抵抗が低減する。
【0013】
更に、第1の発明では、第2溝部(72b)の開口幅を、第2直管部(16b)の外径よりも大きくなるように形成している。こうすると、2本の直管部(16a,16b)の間隔の誤差などが大きくなっても、第2直管部(16b)が第2溝部(72b)に対して配置される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記押圧機構(65)は、上記第1直管部(16a)に対する押圧力が、上記第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
第2の発明では、第1直管部(16a)が第1溝部(72a)に対してより確実に密着するため、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が更に低減される。
【0016】
第3の発明は、冷却ユニットを対象とし、請求項1又は2に記載の冷媒冷却機構(55)と、上記冷媒冷却機構(55)の伝熱部(70b)における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に取り付けられる被冷却部品(63)とを備えることを特徴とする。
【0017】
第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との隙間は、第2直管部(16b)と第2溝部(72b)との隙間よりも小さいため、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗の方が、第2直管部(16b)と第2溝部(72b)との間の熱抵抗よりも小さくなる。従って、伝熱部材(70)の伝熱部(70b)において、第1溝部(72a)側の部位の方が、第2溝部(72b)側の部位よりも、冷媒配管(15)を流れる冷媒と熱交換しやすい。第3の発明では、伝熱部(70b)における冷媒と熱交換しやすい部位に、被冷却部品(63)が取り付けられている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、第1の発明によれば、2本の直管部(16a,16b)の間隔などの誤差が大きくなっても、各直管部(16a,16b)を各溝部(72a,72b)に対して確実に配置できる。しかも、第1の発明によれば、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)とが嵌合するため、両者(16a,72a)の間の熱抵抗が低減する。従って、被冷却部品(63)からの熱が第1直管部(16a)を流れる冷媒に伝わりやすくなるため、伝熱部材(70)の冷却性能を向上できる。
【0019】
また、第2の発明によれば、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が更に低減するため、伝熱部材(70)の冷却性能を更に向上できる。
【0020】
また、第3の発明によれば、伝熱部材(70)の伝熱部(70b)における冷媒と熱交換しやすい部位に被冷却部品(63)を取り付けているため、被冷却部品(63)を効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、実施形態に係る空気調和機の概略の配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態に係る室外ユニットの概略の横断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係る冷媒冷却機構の正面図である。
【図4】図4は、図3のB−B線断面図である。
【図5】図5は、板バネ部材の形状を示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図6】図6は、図3のB−B線断面図のうち、冷媒ジャケット及び各直管部のみを示す図である。
【図7】図7は、実施形態の変形例1に係る図5相当図である。
【図8】図8は、実施形態の変形例2に係る図5相当図である。
【図9】図9は、実施形態の変形例3に係る図5相当図である。
【図10】図10は、変形例3に係る図4相当図である。
【図11】図11は、実施形態の変形例4の補助板バネ部材の形状を示す図であって、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図12】図12は、変形例4に係る図4相当図である。
【図13】図13は、実施形態の変形例5に係る図5相当図である。
【図14】図14は、実施形態の変形例6に係る図5相当図である。
【図15】図15は、実施形態の変形例7に係る図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0023】
《発明の実施形態》
本発明に係る実施形態は、冷媒回路(10)を有して冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う空気調和機(1)である。空気調和機(1)は、室内に設置される室内ユニット(20)と、室外に設置される室外ユニット(30)とを有している。室内ユニット(20)と室外ユニット(30)とが、2本の連絡配管(11,12)によって互いに接続されることで、閉回路となる冷媒回路(10)が構成される。冷媒回路(10)には、冷媒が充填される。冷媒回路(10)の冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0024】
〈室内ユニット〉
室内ユニット(20)は、室内熱交換器(21)と室内ファン(22)と室内膨張弁(23)とを有している。室内熱交換器(21)は、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器で構成される。室内熱交換器(21)では、その伝熱管の内部を流れる冷媒と、室内ファン(22)が送風する空気とが熱交換する。室内膨張弁(23)は、例えば電子膨張弁で構成される。
【0025】
〈室外ユニット〉
室外ユニット(30)は、室外熱交換器(31)と室外ファン(32)と室外膨張弁(33)と圧縮機(34)と四方切換弁(35)とを有している。室外熱交換器(31)は、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器で構成される。室外熱交換器(31)では、その伝熱管の内部を流れる冷媒と、室外ファン(32)が送風する空気とが熱交換する。室外膨張弁(33)は、例えば電子膨張弁で構成される。圧縮機(34)は、例えばスクロール圧縮機等の回転式圧縮機で構成される。四方切換弁(35)は、第1から第4までのポートを有し、冷媒回路(10)の冷媒の循環方向を切り換えるように構成される。四方切換弁(35)は、冷房運転時に第1ポートと第2ポートを連通させ且つ第3ポートと第4ポートを連通させる状態(図1の実線で示す状態)となり、暖房運転時に第1ポートと第3ポートを連通させ且つ第2ポートと第4ポートとを連通させる状態(図1の破線で示す状態)となる。
【0026】
図2に示すように、室外ユニット(30)は、箱形のケーシング(40)を有している。ケーシング(40)は、前面パネル(41)、後面パネル(42)、第1側面パネル(43)、及び第2側面パネル(44)を有している。前面パネル(41)は、室外ユニット(30)の前側に形成される。前面パネル(41)には、室外空気が吸い込まれる吸込口(41a)が形成される。前面パネル(41)は、ケーシング(40)の本体に対して着脱自在に構成される。後面パネル(42)は、室外ユニット(30)の後側に形成される。後面パネル(42)には、室外空気が吹き出される吹出口(42a)が形成される。第1側面パネル(43)は、室外ユニット(30)の幅方向(図2の矢印Aで示す方向)の一端側に形成される。第1側面パネル(43)には、吹出口(43a)が形成される。第2側面パネル(44)は、室外ユニット(30)の幅方向の他端側に形成される。
【0027】
ケーシング(40)は、縦仕切板(45)と横仕切板(46)とを有している。ケーシング(40)の内部空間は、縦仕切板(45)によって幅方向に2つの空間に仕切られる。これらの空間のうち第1側面パネル(43)側の空間は、熱交換器室(47)を構成する。これらの空間のうち第2側面パネル(44)側の空間は、横仕切板(46)によって更に前後に2つの空間に仕切られる。これらの空間のうち後側の空間が圧縮機室(48)を構成し、前側の空間が電装品室(49)を構成する。
【0028】
〈電装品室内の構成機器〉
電装品室(49)内の構成部品について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。電装品室(49)内には、電力変換装置(60)、及び該電力変換装置(60)の発熱部品を冷却するための冷媒冷却機構(55)が収容されている。
【0029】
電力変換装置(60)は、圧縮機(34)のモータへ電力を供給するとともに、該モータの回転数を制御する。電力変換装置(60)は、プリント基板(61)と、該プリント基板(61)にリード線(62)を介して取り付けられるパワー素子(63)とを有している。プリント基板(61)は、例えば支持部材(51)を介して横仕切板(46)に固定される。なお、プリント基板(61)をケーシング(40)内の他の部位に固定してもよい。
【0030】
本実施形態のパワー素子(63)は、プリント基板(61)の前側に配置される。パワー素子(63)は、例えばインバータ回路のスイッチング素子を構成する。パワー素子(63)は、圧縮機(34)の運転時に発熱する発熱部品であり、冷媒冷却機構(55)によって冷却される被冷却部品を構成する。パワー素子(63)は、動作可能な温度(例えば90℃)を越えないように冷媒冷却機構(55)によって冷却される。この冷媒冷却機構(55)とパワー素子(63)とで、冷却ユニット(50)が構成される。
【0031】
〈冷媒冷却機構の構成〉
冷媒冷却機構(55)は、図3及び図4に示すように、冷媒が流れる冷却管(15)と、該冷却管(15)が取り付けられる伝熱部材としての冷媒ジャケット(70)と、冷却管(15)を冷媒ジャケット(70)に対して押圧する押圧機構(65)とを備えている。
【0032】
冷却管(15)は、冷媒回路(10)の冷媒配管の一部を構成している。本実施形態の冷却管(15)は、冷媒回路(10)における高圧の液ラインに接続される。つまり、冷却管(15)には、熱交換器(21,31)で凝縮した後の高圧の液冷媒が流通する。
【0033】
冷却管(15)は、例えば銅等により構成され、直線状の配管を略U字状に折曲することにより形成される。冷却管(15)は、互いに間隔をおいて平行となるように配置される第1直管部(16a)及び第2直管部(16b)と、曲管部としてのU字管部(17)とを有している。第1直管部(16a)及び第2直管部(16b)は、ともに直線状に形成されている。U字管部(17)は、半円弧状に形成され、その両端部が各直管部(16a,16b)の端部同士と接続している。
【0034】
冷媒ジャケット(70)は、アルミニウムなどの熱伝導率の高い金属材料で構成される。冷媒ジャケット(70)は、パワー素子(63)の表面(前面側)に接触して配置され、パワー素子(63)と熱的に接触している。冷媒ジャケット(70)の表面は、パワー素子(63)と熱的に接触する伝熱部(70b)を構成している。冷媒ジャケット(70)の伝熱部(70b)において、パワー素子(63)は、第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に取り付けられている。
【0035】
冷媒ジャケット(70)は、前後に扁平な略板状に形成される。冷媒ジャケット(70)は、枠状の固定部材(52)を介してプリント基板(61)に固定される。固定部材(52)は、冷媒ジャケット(70)の外周縁部(70a)が嵌合する枠本体(52a)と、該枠本体(52a)に嵌合した冷媒ジャケット(70)を外側から保持する複数の爪部(52b,52b,52b,52b)とを有している。これにより、冷媒ジャケット(70)は、固定部材(52)に着脱自在に取り付けられる。
【0036】
冷媒ジャケット(70)は、冷却管(15)の直管部(16a,16b)の伸長方向に沿って延びている。冷媒ジャケット(70)のうちプリント基板(61)と反対側の面(71)には、一対の溝部(72a,72b)と、一対の凹部(73,73)と、1つの中間部(74)とが形成される。
【0037】
一対の溝部(72a,72b)は、第1溝部(72a)と第2溝部(72b)とで構成されている。各溝部(72a,72b)は、冷却管(15)の直管部(16a,16b)に沿い、互いに所定の間隔をおいて平行となるように、冷媒ジャケット(70)の長手方向に延びる直線状に形成されている。各溝部(72a,72b)は、互いに同じ深さになるように、且つ冷却管(15)の軸直角断面の形状が円弧状になるように形成されている。第2溝部(72b)の曲率半径は、第1溝部(72a)の曲率半径よりも大きい値となるように設定される。第1溝部(72a)及び第2溝部(72b)の曲率半径の値については、詳しくは後述する。
【0038】
第1溝部(72a)には第1直管部(16a)が、第2溝部(72b)には第2直管部(16b)が、それぞれ配置される。なお、各直管部(16a,16b)と各溝部(72a,72b)との間に、熱伝導グリース(図示省略)が介設される。熱伝導グリースは、冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間の微小な隙間を埋めることで熱抵抗を低減させ、該冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間の伝熱を促進させる伝熱促進材料を構成する。
【0039】
一対の凹部(73,73)は、一対の溝部(72a,72b)の間に配置されている。凹部(73)は、冷媒ジャケット(70)の長手方向の両端に亘って直線状に延びている。凹部(73)の内部には、板バネ部材(80)の折り返し部(86c)が配置される(詳細は後述する)。
【0040】
中間部(74)は、一対の凹部(73,73)の間に形成される。中間部(74)には、ビス穴(75)が形成される。ビス穴(75)は、冷媒ジャケット(70)の長手方向の中間部位で、且つ冷媒ジャケット(70)の幅方向における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に形成されている。
【0041】
押圧機構(65)は、1つの板バネ部材(80)と、1つのビス(91)とを備えている。
【0042】
板バネ部材(80)は、図4及び図5に示すように、板状のバネ鋼板が折り返されることにより形成される。板バネ部材(80)は、冷却管(15)の伸長方向に沿って延びる長板状に形成され、冷媒ジャケット(70)に対向して配置される。板バネ部材(80)は、冷媒ジャケット(70)の2つの溝部(72a,72b)に跨っている。板バネ部材(80)は、一対の外側板部(81,81)と、一対の対向部(82,82)と、一対の内側板部(83,83)と、1つの取付板部(84)とを有し、冷却管(15)を冷媒ジャケット(70)側に付勢する弾性部材を構成する。
【0043】
外側板部(81)は、板バネ部材(80)の幅方向の両側端部にそれぞれ形成される。外側板部(81)は、対向部(82)から冷却管(15)の直管部(16)側に向かって屈曲する平板状に形成される。
【0044】
対向部(82)は、冷却管(15)の各直管部(16a,16b)に対向するように、該直管部(16a,16b)の伸長方向に沿って延びている。つまり、対向部(82)は、冷媒ジャケット(70)の各溝部(72a,72b)に相対する位置に形成される。対向部(82)は、各直管部(16a,16b)の外周面と実質的に線接触するような平板状に形成される。図5に示すように、板バネ部材(80)が冷媒ジャケット(70)に取り付けられていない状態では、各対向部(82,82)は、板バネ部材(80)の幅方向の中央側から外側へ向けて、冷媒ジャケット(70)側へ屈曲している。各対向部(82,82)は、水平方向に対して互いに同じ角度となるように屈曲している。
【0045】
内側板部(83)は、対向部(82)よりも板バネ部材(80)の幅方向の中間部寄りに形成される。内側板部(83)は、対向部(82)から冷却管(15)の直管部(16a,16b)側に向かって屈曲する平板状に形成される。板バネ部材(80)では、外側板部(81)、対向部(82)、及び内側板部(83)が、直管部(16a,16b)を外側から囲んでいる。
【0046】
取付板部(84)は、一対の内側板部(83)に介在するように、板バネ部材(80)の幅方向の中間部に形成される。取付板部(84)は、直管部(16a,16b)の伸長方向に延びる平板状に形成され、冷媒ジャケット(70)の中間部(74)に沿っている。取付板部(84)には、冷媒ジャケット(70)のビス穴(75)に対応するように、貫通穴(85)が形成される。具体的には、貫通穴(85)は、取付板部(84)の長手方向の中間部位で、且つ取付板部(84)の幅方向における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に形成されている。
【0047】
板バネ部材(80)には、6本の折り返し部(86)が形成される。各折り返し部(86)は、板バネ部材(80)の長手方向に直線状に形成される。6本の折り返し部(86)は、一対の外側折り返し部(86a,86a)と、一対の内側折り返し部(86b,86b)と、一対のV字折り返し部(86c,86c)とで構成される。外側折り返し部(86a)は、外側板部(81)と対向部(82)との間に形成され、内側折り返し部(86b)は、対向部(82)と内側板部(83)との間に形成される。V字折り返し部(86c)は、内側板部(83)と取付板部(84)との間に形成される。V字折り返し部(86c)は、冷媒ジャケット(70)の凹部(73)の内部に向かって略V字状に突出している。これらの折り返し部(86)は、板バネ部材(80)の長手方向の剛性を増大させるための補強リブとして機能する。これにより、板バネ部材(80)では、幅方向の剛性よりも長手方向の剛性が大きくなっている。なお、折り返し部(86)を、例えば略U字状の折り返し形状としてもよい。
【0048】
本実施形態において、ビス(91)は、板バネ部材(80)を冷媒ジャケット(70)側に向かって押し付ける押付機構(90)を構成する。取付板部(84)は、ビス(91)の締め付けに伴い冷媒ジャケット(70)側に押し付けられる、被押付部を構成する。
【0049】
−運転動作−
空気調和機(1)の運転動作について図1を参照しながら説明する。空気調和機(1)は、冷房運転と暖房運転とを切り換えて行う。
【0050】
〈冷房運転〉
冷房運転では、圧縮機(34)で圧縮された冷媒が、室外熱交換器(31)で凝縮する。凝縮した冷媒は、例えば全開状態の室外膨張弁(33)を通過し、冷却管(15)を流れる。
【0051】
圧縮機(34)の運転時には、パワー素子(63)が発熱する。このため、パワー素子(63)の熱は、冷媒ジャケット(70)、熱伝導グリース、冷却管(15)を順に伝わり、冷却管(15)内の冷媒へ付与される。その結果、パワー素子(63)が冷却され、パワー素子(63)が動作可能な所定温度に維持される。
【0052】
冷却管(15)を流れた冷媒は、室内膨張弁(23)で減圧された後、室内熱交換器(21)で蒸発する。これにより、室内空気が冷却される。蒸発した冷媒は、圧縮機(34)に吸入されて圧縮される。
【0053】
〈暖房運転〉
暖房運転では、圧縮機(34)で圧縮された冷媒が、室内熱交換器(21)で凝縮する。これにより、室内空気が加熱される。凝縮した冷媒は、例えば全開状態の室内膨張弁(23)を通過し、冷却管(15)を流れる。この冷媒は、上記の冷房運転と同様にして、パワー素子(63)の冷却に利用される。冷却管(15)を流れた冷媒は、室外膨張弁(33)で減圧された後、室外熱交換器(31)で蒸発する。蒸発した冷媒は、圧縮機(34)に吸入されて圧縮される。
【0054】
−冷媒ジャケットの溝部の寸法−
本実施形態では、冷媒ジャケット(70)の各溝部(72a,72b)の設計値(基準寸法)は、各直管部(16a,16b)や各溝部(72a,72b)の寸法に許容差の範囲内で誤差が生じた場合であっても、各直管部(16a,16b)が各溝部(72a,72b)に対して確実に配置され、且つ第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との隙間が極力小さくなるような値に設定される。
【0055】
具体的には、冷媒ジャケット(70)の第1溝部(72a)の曲率半径の設計値R1(図6参照)は、次の式(1)に基づいて設定される。
【0056】
R1={(φ+b)/2}+d…(1)
式(1)において、φは第1直管部(16a)の外径の設計値、bは第1直管部(16a)の外径の許容差(本実施形態では0.05mm程度)、dは第1溝部(72a)の曲率半径の許容差(本実施形態では0.1〜0.2mm程度)である。
【0057】
式(1)では、R1は、第1直管部(16a)の外径が許容差bの範囲内の誤差によって最大となる場合(第1直管部の外径がφ+bとなる場合)、且つ、第1溝部(72a)の曲率半径が許容差dの範囲内の誤差によって最小となる場合(第1溝部の曲率半径がR1−dとなる場合)に、両者(16a,72a)の直径が等しくなるような値に設定されている。このようにR1を設定すると、上記許容差b,dの範囲内において第1直管部(16a)や第1溝部(72a)に誤差が生じても、第1直管部(16a)の直径が第1溝部(72a)の直径より大きくなることはない。従って、第1直管部(16a)は、第1溝部(72a)からはみ出ることなく該第1溝部(72a)に対して確実に配置される。
【0058】
また、第1溝部(72a)の開口幅は、第1溝部(72a)の曲率半径に対応する値である。よって、この開口幅には、第1直管部(16a)の設計値φ、第1直管部(16a)の外径の許容差b、及び第1溝部(72a)の曲率半径の許容差dのみが考慮され、溝部(72a,72b)同士の間隔の許容差や、直管部(16a,16b)同士の間隔の許容差は考慮されていない。従って、第1溝部(72a)の開口幅が第1直管部(16a)に対して大きくなりすぎることはないため、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との隙間は比較的小さくなる。これにより、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)とは嵌合する。
【0059】
また、冷媒ジャケット(70)の第2溝部(72b)の曲率半径の設計値R2は、次の式(2)に基づいて設定される。
【0060】
R2={(φ+b)/2}+d+a+c…(2)
式(2)において、φは第2直管部(16b)の外径の設計値、bは第2直管部(16b)の外径の許容差(本実施形態では0.05mm程度)、dは第2溝部(72b)の曲率半径の許容差(本実施形態では0.1〜0.2mm程度)、aは2本の直管部(16a,16b)の間隔の許容差(本実施形態では1mm程度)、cは2本の溝部(72a,72b)の間隔の許容差(本実施形態では0.1〜0.2mm程度)である。また、図6におけるWcpは、2本の直管部(16a,16b)の間隔の設計値、Wjは、2本の溝部(72a,72b)の間隔の設計値である。
【0061】
式(2)の設計値R2では、許容差b及びdの他に、上記許容差a及びcも考慮されている。こうすると、上記許容差a,b,c及びdの範囲内で誤差が生じても、第2直管部(16b)を第2溝部(72b)に対して確実に配置できる。
【0062】
−冷媒冷却機構について−
冷媒冷却機構(55)では、冷媒ジャケット(70)の各溝部(72a,72b)に各直管部(16a,16b)が配置される。この状態で、冷媒ジャケット(70)に対向して板バネ部材(80)を配置する。冷媒ジャケット(70)のビス穴(75)と板バネ部材(80)の貫通穴(85)との位置を合わせ、ビス(91)をビス穴(75)に締結する。この締結作業は、前面パネル(41)をケーシング(40)の本体から取り外した状態で行われる。なお、ケーシング(40)の外部において、冷媒ジャケット(70)と板バネ部材(80)をビス(91)によって仮締めした後、冷媒ジャケット(70)と板バネ部材(80)との間に冷却管(15)を挟み込んでビス(91)を本締めすると、ビス(91)の締結作業を簡便に行うことができる。
【0063】
ビス(91)を締結すると、板バネ部材(80)の取付板部(84)が、冷媒ジャケット(70)側に押し付けられる。これに伴い、取付板部(84)と連結する一対の対向部(82)が、冷媒ジャケット(70)側に弾性変形する。この際、V字折り返し部(86b)により、板バネ部材(80)のばね性が向上し、対向部(82)を確実に冷媒ジャケット(70)側に変位させることができる。一方で、複数の折り返し部(86)によって板バネ部材(80)の長手方向の剛性が向上するため、直管部(16a,16b)には、伸長方向に亘って比較的均等に押し付け力が作用する。また、ビス(91)は、取付板部(84)における長手方向の中間部に締結されるため、板バネ部材(80)における長手方向の押し付け力も均一化され易い。更に、1つのビス(91)により、2本の冷却管(15)を冷媒ジャケット(70)側に押し付けることができるので、部品点数を削減でき、組立ての工数も削減できる。
【0064】
以上のようにして、2本の冷却管(15)が、冷媒ジャケット(70)の各溝部(72a,72b)側に向かって付勢される。これにより、冷媒ジャケット(70)の各溝部(72a,72b)と板バネ部材(80)の各対向部(82)との間に、各冷却管(15)が狭持される。このように冷却管(15)に板バネ部材(80)を圧接することで、冷却管(15)と冷媒ジャケット(70)との隙間が縮小され、冷却管(15)と冷媒ジャケット(70)の熱抵抗が小さくなる。また、冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間には、熱伝導グリースが介在するため、この熱伝導グリースによって冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間の僅かな隙間を埋めることができる。これにより、冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間の熱抵抗が更に低減される。
【0065】
板バネ部材(80)は、ある程度の柔軟性を有するため、板バネ部材(80)の加工精度が若干低下しても、板バネ部材(80)によって冷却管(15)を十分に押し付けることができる。更に、対向部(82)は平板状に形成されているため、対向部(82)が冷却管(15)の軸周りに若干傾いても、対向部(82)と冷却管(15)との間の線接触が維持される。従って、冷却管(15)を確実に冷媒ジャケット(70)側に押し付けることができる。
【0066】
対向部(82)及び溝部(72a,72b)は、冷却管(15)の直管部(16a,16b)の伸長方向に延びている。このため、対向部(82)と直管部(16a,16b)との接触面積が拡大され、直管部(16a,16b)の押し付け力を十分に確保できる。また、対向部(82)と溝部(72a,72b)との間に冷却管(15)を確実に保持できる。更に、冷却管(15)と溝部(72a,72b)との間の伝熱面積も十分に確保できる。従って、本実施形態では、パワー素子(63)の冷却効果を十分に発揮でき、パワー素子(63)の発熱を抑制できる。
【0067】
本実施形態では、第1溝部(72a)の開口幅は、第1直管部(16a)が嵌合するような大きさに形成されている。こうすると、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間にはほとんど隙間が形成されず、第1直管部(16a)は第1溝部(72a)に対して確実に密着する。従って、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が低減する。
【0068】
また、第2溝部(72b)の開口幅は、2本の直管部(16a,16b)の間隔等が許容差の範囲内の誤差によってばらついても、第2直管部(16b)が第2溝部(72b)からはみ出さずに配置されるような幅に形成されている。従って、第2直管部(16b)は第2溝部(72b)へ確実に配置される。
【0069】
また、ビス(91)は、取付板部(84)の幅方向における第1溝部(72a)寄りの部分に締結される。こうすると、第1直管部(16a)を冷媒ジャケット(70)側へ押圧する対向部(82)の押圧力の方が、第2直管部(16b)を冷媒ジャケット(70)側へ押圧する対向部(82)の押圧力よりも強くなる。従って、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)とがより密着する。
【0070】
また、冷媒冷却機構(55)は、上述のように、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との密着性を向上させることにより、特に第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が低減されるように構成されている。こうすると、冷媒ジャケット(70)の伝熱部(70b)において、第1直管部(16a)寄りの部位の方が第2直管部(16b)寄りの部位よりも、冷却管(15)を流れる冷媒と熱交換しやすくなる。本実施形態では、パワー素子(63)を、伝熱部(70b)における第1直管部(16a)寄りの部位に取り付けているため、パワー素子(63)からの熱が第1直管部(16a)を介して冷媒に伝わりやすい。従って、パワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0071】
−実施形態の効果−
以上のように、実施形態1の冷媒冷却機構(55)では、第1溝部(72a)の開口幅を、第1直管部(16a)が嵌合する大きさに形成し、第2溝部(72b)の開口幅を、直管部(16a,16b)同士の間隔等が許容差の範囲内の誤差によってばらついても第2溝部(72b)が第2溝部(72b)へ配置されるような大きさに形成している。こうすると、各直管部(16a,16b)を各溝部(72a,72b)へ確実に配置できる。しかも、第1直管部(16a)が第1溝部(72a)に嵌合するため、両者(16a,72a)の間の熱抵抗が低減する。従って、発熱したパワー素子(63)の熱が、第1直管部(16a)を流れる冷媒へ付与されやすくなるため、パワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0072】
上述のように各溝部(72a,72b)の開口幅を設定することにより、例えば量産時に、許容差の範囲内の誤差によって直管部(16a,16b)や溝部(72a,72b)の寸法がばらついても、全ての冷媒冷却機構(55)において、各直管部(16a,16b)を各溝部(72a,72b)へ確実に配置できるとともに、十分な冷却性能を得ることができる。
【0073】
しかも、第1直管部(16a)の方が第2直管部(16b)よりも、冷媒ジャケット(70)に対して強く押圧されているため、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間をより密着させることができる。これにより、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が更に低減するため、冷媒冷却機構(55)の冷却性能を向上できる。
【0074】
また、パワー素子(63)を、冷媒ジャケット(70)の伝熱部(70b)における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に取り付けているため、パワー素子(63)をより効率的に冷却できる。
【0075】
《実施形態の変形例1》
実施形態の変形例1に係る空気調和機(1)は、上記実施形態と冷媒冷却機構(55)の板バネ部材(80)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態と異なる点について、図7を参照しながら説明する。
【0076】
図7に示すように、変形例1の板バネ部材(80)には、実施形態1の板バネ部材の場合と異なり、切欠部(80a)が形成されている。この切欠部(80a)は、板バネ部材(80)における取付板部(84)よりも第2直管部(16b)側(図7の右側)の部位の一部が切除されることにより形成される。本実施形態の変形例1では、板バネ部材(80)の長手方向における中央部の約1/3の部分が切除されることにより形成されている。なお、変形例1では、板バネ部材(80)の貫通穴(85)は、板バネ部材(80)の中心部に形成され、冷媒ジャケット(70)のビス穴(75)は、冷媒ジャケット(70)の中心部に形成される。
【0077】
上述のように切欠部(80a)を形成すると、第1直管部(16a)側の対向部(82)が、第2直管部(16b)側の対向部(82)よりも広くなる。従って、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。これにより、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との密着性が増し、両者(16a,72a)の間の熱抵抗が小さくなるため、冷媒ジャケット(70)における第1直管部(16a)寄りの部位に取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0078】
《実施形態の変形例2》
図8に示すように、変形例2の板バネ部材(80)の2つの対向部(82,82)は、水平方向に対する傾きが互いに異なる。具体的には、第1直管部(16a)側(図8の左側)の対向部(82)の方が、第2直管部(16b)側(図8の右側)の対向部(82)よりも、水平方向に対して冷媒ジャケット(70)側(図8(B)の下側)に大きく傾いている。こうすると、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。これにより、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との密着性が増し、両者(16a,72a)の間の熱抵抗が小さくなるため、冷媒ジャケット(70)における第1直管部(16a)寄りの部位に取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0079】
《実施形態の変形例3》
図9に示すように、変形例3の板バネ部材(80)の形状は、上記実施形態と比べて、第1直管部(16a)側の部位の形状が異なる。
【0080】
具体的には、変形例3の板バネ部材(80)は、上記実施形態における第1直管部(16a)側(図9の左側)の外側板部(81)、対向部(82)、内側板部(83)、外側折り返し部(86a)及び内側折り返し部(86b)が省略された構成となっている。その代わりに、変形例3の板バネ部材(80)は、軸直角断面形状が略円弧状の保持部(87)を備えている。この保持部(87)は、第1直管部(16a)側のV字折り返し部(86c)と繋がっている。保持部(87)は、その凹部(87a)が冷媒ジャケット(70)側(図9(B)の下側)となるように形成される。この凹部(87a)の曲率半径は、第1直管部(16a)の外周面の曲率半径と概ね同じである。
【0081】
保持部(87)は、図10に示すように、凹部(87a)が第1直管部(16a)の外周面に密着した状態で、第1直管部(16a)を第1溝部(72a)側へ押圧する。すなわち、板バネ部材(80)は、保持部(87)では、第1直管部(16a)と実質的に面接触した状態で該第1直管部(16a)を押圧する一方、対向部(82)では、第2直管部(16b)と実質的に線接触した状態で該第2直管部(16b)を押圧する。板バネ部材(80)は、第1直管部(16a)との接触面積の方が第2直管部(16b)との接触面積よりも広くなるため、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。従って、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が小さくなり、第1直管部(16a)寄りに取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0082】
《実施形態の変形例4》
変形例4の押圧機構(65)は、図11に示す補助板バネ部材(88)を更に備えている。この補助板バネ部材(88)は、板バネ部材(80)における取付板部(84)よりも第2直管部(16b)側(図11の右側)の部位を省略した構成となっている。具体的には、補助板バネ部材(88)は、各々1つずつ設けられた外側板部(81)、対向部(82)、内側板部(83)、取付板部(84)、外側折り返し部(86a)、内側折り返し部(86b)及びV字折り返し部(86c)で構成される。
【0083】
補助板バネ部材(88)は、図12に示すように、板バネ部材(80)に上側から重ねられた状態で、板バネ部材(80)とともに冷媒ジャケット(70)に対してビス止めされる。この際、補助板バネ部材(88)は、該補助板バネ部材(88)の各構成要素(81,82,83,84,86a,86b,86c)が、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)側の各構成要素(81,82,83,84,86a,86b,86c)に対応するように、板バネ部材(80)に重ねられる。
【0084】
上述の構成により、第1直管部(16a)は、板バネ部材(80)及び補助板バネ部材(88)によって押圧される一方、第2直管部(16b)は、板バネ部材(80)のみによって押圧される。従って、押圧機構(65)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。その結果、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が小さくなり、第1直管部(16a)寄りに取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0085】
《実施形態の変形例5》
図13に示すように、変形例5の板バネ部材(80)は、部位によってその厚みが異なっている。具体的には、変形例5の板バネ部材(80)は、取付板部(84)及び該取付板部(84)よりも第1直管部(16a)側(図13の左側)の部位が、取付板部(84)よりも第2直管部(16b)側(図13の右側)の部位よりも厚くなっている。これにより、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。従って、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が小さくなり、第1直管部(16a)寄りに取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0086】
《実施形態の変形例6》
図14に示すように、変形例6の押圧機構(65)は、スペーサー(89)を更に備えている。このスペーサー(89)は、ゴム等の弾性部材によって構成され、板バネ部材(80)の長手方向の両端部に亘って延びる薄板状に形成されている。スペーサー(89)は、第1直管部(16a)側の対向部(82)における冷媒ジャケット(70)側(図14(B)の下側)に、例えば接着剤等によって貼り付けられている。これにより、板バネ部材(80)における第1直管部(16a)に対する押圧力が、第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなる。従って、第1直管部(16a)と第1溝部(72a)との間の熱抵抗が小さくなり、第1直管部(16a)寄りに取り付けられたパワー素子(63)を効率的に冷却できる。
【0087】
《実施形態の変形例7》
変形例7の冷媒冷却機構(55)は、上記実施形態と比べて、冷媒ジャケット(70)の第2溝部(72b)の軸直角断面形状が異なる。
【0088】
図15に示すように、第2溝部(72b)は、該第2溝部(72b)の底面を構成する平面部(76)と、軸直角断面の形状が円弧状となるように形成される一対のR部(77,77)とを備えている。平面部(76)及びR部(77)は、ともに冷媒ジャケット(70)の長手方向の両端部に亘って延びている。第2溝部(72b)の深さは、第1溝部(72a)の深さと同じである。
【0089】
変形例7における第2溝部(72b)の平面部(76)の幅は、図15にも示すように、2×(a+c)となるように形成される。そして、R部(77)の曲率半径の設計値R2は、次の式(3)に基づいて設定される。
【0090】
R2=R1={(φ+b)/2}+d…(3)
なお、式(1)及び式(2)の場合と同様、φは各直管部(16a,16b)の外径の設計値、bは各直管部(16a,16b)の外径の許容差、dは各溝部(16a,16b)の曲率半径の許容差、aは2本の直管部(16a,16b)の間隔の許容差、cは2本の溝部(72a,72b)の間隔の許容差である。
【0091】
第2溝部(72b)に、上述のような幅の平面部(76)を設け、且つ、R部(77)の曲率半径の設計値を式(3)のように設定すれば、上記実施形態の場合と同様、上記許容差a,b,c及びdの範囲内で各直管部(16a,16b)及び各溝部(72a,72b)の寸法に誤差が生じた場合であっても、第2直管部(16b)を第2溝部(72b)に対して確実に配置できる。
【0092】
−その他の実施形態−
上記実施形態については、以下のような構成にしてもよい。
【0093】
上記実施形態では、パワー素子(63)を、冷媒ジャケット(70)における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に取り付けたが、この限りでなく、例えば第1溝部(72a)と第2溝部(72b)との中間位置に取り付けてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、第1直管部(16a)に対する押圧力が第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きくなるように押圧機構(65)を構成したが、この限りでなく、各直管部(16a,16b)に対する押圧力が均一となるように構成してもよい。具体的には、上記実施形態において、冷媒ジャケット(70)のビス穴(75)を該冷媒ジャケット(70)の中央部に形成し、板バネ部材(80)の貫通穴(85)を該板バネ部材(80)の中央部に形成してもよい。
【0095】
また、押圧機構(65)の構成は、上記実施形態の構成に限らず、各直管部(16a,16b)を各溝部(72a,72b)に対して押圧する構造であれば、どのような構造であってもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、冷媒ジャケット(70)に2つの溝部(72a,72b)を形成し、各溝部(72a,72b)に2つの直管部(16a,16b)のそれぞれを配置している。しかしながら、3つ以上の直管部を有する冷却管に対応して冷媒ジャケットに3つ以上の溝部を形成し、各溝部に各直管部を嵌合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明は、冷媒配管を流れる冷媒によって被冷却部品を冷却する冷媒冷却機構、及び該冷媒冷却機構を備える冷却ユニットについて有用である。
【符号の説明】
【0098】
15 冷却管(冷媒配管)
16a 第1直管部
16b 第2直管部
17 U字管部(曲管部)
50 冷却ユニット
55 冷媒冷却機構
63 パワー素子(被冷却部品)
65 押圧機構
70 冷媒ジャケット(伝熱部材)
70b 伝熱部
72a 第1溝部
72b 第2溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1と第2の直管部(16a,16b)と、該第1と第2の直管部(16a,16b)の端部同士を連結する曲管部(17)とを有する冷媒配管(15)と、
被冷却部品(63)と熱的に接触する伝熱部(70b)と、上記第1直管部(16a)が嵌合する開口幅の第1溝部(72a)と、上記第2直管部(16b)の外径よりも大きな開口幅の第2溝部(72b)とを有する伝熱部材(70)と、
上記第1直管部(16a)と第2直管部(16b)とをそれぞれ第1溝部(72a)と第2溝部(72b)側に向かって押圧する押圧機構(65)と
を備えることを特徴とする冷媒冷却機構。
【請求項2】
請求項1において、
上記押圧機構(65)は、上記第1直管部(16a)に対する押圧力が、上記第2直管部(16b)に対する押圧力よりも大きいことを特徴とする冷媒冷却機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷媒冷却機構(55)と、
上記冷媒冷却機構(55)の伝熱部(70b)における第2溝部(72b)よりも第1溝部(72a)寄りの部位に取り付けられる被冷却部品(63)と
を備えることを特徴とする冷却ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−26375(P2013−26375A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158804(P2011−158804)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】