説明

冷媒組成物

冷媒を含むエアコンディショナーにおいて用いるための、改善された冷媒組成物または改善された冷媒組成物用のキットであって、該冷媒は、GWP約10未満およびODP約ゼロを有するヒドロフルオロカーボン(これは冷媒組成物の少なくとも約50質量%の濃度で存在する);潤滑剤(該潤滑剤は極性含酸素潤滑剤である);および酸捕捉剤(シロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの任意の混合物を含む);を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本件出願は、米国仮特許出願第61/042,392号(「冷媒組成物」、Serranoらにより2008年4月4日に出願)(その内容の全部を参照により本明細書に組入れる)の出願日の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、冷却および保冷(refrigeration)を与える装置において使用するための改善された組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
環境問題ならびに保冷および空調産業において使用する冷媒組成物への新たな規制に対応して、新たな冷媒組成物が開発されている。冷媒の環境への優しさは、しばしば、「地球温暖化係数」(GWP)として知られる基準、または「オゾン層破壊係数」(ODP)として知られる基準の一方または両者によって特徴付けられる。
【0004】
GWP値は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって確立される数であり、物質に起因する地球温暖化の量を指す。ODP値は、米国環境保護庁によって規定される数であり、クロロフルオロカーボン−11(CFC0911、化学的にはトリクロロフルオロメタンとして知られる)と比較しての物質によるオゾン層破壊の量を指す(42 U.S.C.7671,”(10) Ozone−Depletion Potential”(参照により組入れる)にて与えられる通り)。
【0005】
これまでになされた進展の例として、より環境に優しい冷媒の探求が、1980年代初頭に進められた。これは、冷媒,例えばR−12(ジクロロジフルオロメタン)(これは、GWP約1600およびODP1を有する)が原因の1つである大気中のオゾンの破壊についての理論に対するものであった。1990年代、より低いオゾン層破壊係数を有する冷媒,例えばR−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン、テトラフルオロエタンともいう)が紹介された。R−134aは、ODPがゼロであるが、なおGWP約1200を有する。
【0006】
多くの場合で、新たな冷媒材料は、環境への影響が低いこと以外に、以下の特徴の1つ以上をも有するべきである:多くの存在する冷媒システムにおいて機能する能力、比較的低い可燃性、比較的低い毒性、アルミニウム、銅および鉄との温度175℃未満での反応(例えば腐食)が最小限であるかまたはないこと、または良好な熱安定性(ANSI ASHRAE 97を用いて試験される)。
【0007】
Leckら(第WO2007/126760号)は、シランを含む安定剤をヨードトリフルオロメタン冷媒を含有する組成物中で使用することを教示する。Mouliら(第2008/027595号)は、アルキルシランを、フルオロオレフィンを含有する冷媒組成物中の安定剤として使用することを教示する。ホスフェート、ホスファイト、エポキシド、およびフェノール性の添加剤もまた、特定の冷媒組成物において採用されてきた。これらは例えばKaneko (米国特許出願第11/575256号、第20070290164号として公開) およびSinghら(米国特許出願第11/250219号、第20060116310号として公開)に記載されている。これらの前記した出願の全ては明白に参照により本明細書に組入れる。
【0008】
低いオゾン層破壊係数および低いGWPを有する特定の組成物(例えばLeckら、米国特許出願第11/653,125号、公開番号第2007/0187639号、段落10(参照により本明細書に組入れる)を参照のこと)が、冷媒組成物中で使用するために提案されてきた。
【0009】
ポリマー材料,例えばフルオロアルキルポリシロキサン(例えば、Kawaguchiら、米国特許第6,475,405号、第9欄、第13行を参照のこと)が、冷媒組成物中の耐負荷添加剤として提案または使用されてきた。
【0010】
ポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーは界面活性剤として、フルオロカーボン泡の発泡剤とともに、Singhら(第2006/069362号)(フルオロカーボン/界面活性剤組成物を使用してのポリマーの発泡を教示する)によって使用されてきた。
【0011】
改善された特性,例えば比較的低い環境影響、比較的良好な相溶性、金属に対する比較的低い腐食性、比較的低いコスト、比較的低い酸価、これらの任意の組合せ等を有する改善された冷媒組成物を開発するための継続的な努力がある。冷媒組成物の1つ以上の特性の改善は、典型的には、1つ以上の異なる特性に負に作用する。
【0012】
従って、経済的および効率的に、1つ、2つ、3つまたはこれを超える改善された特性を与えることができる、冷媒組成物中で使用するための堅牢な酸捕捉剤に対する要求が存在する。特に、低い地球温暖化係数、低いオゾン層破壊係数、または両者を有する溶媒組成物における改善された酸捕捉剤に対する要求が存在し続ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要約
本発明の種々の側面を通じ、本発明は、1つの広範な側面において、エアコンディショナーにおいて使用するための改善された冷媒(refrigerant)組成物を提供することによって上記の要求の幾つかまたは全てに対処し、該冷媒組成物は:フルオロカーボン(フッ化炭素)を含み該フルオロカーボンが冷媒組成物の少なくとも約50質量%の濃度で存在する、冷媒;冷媒システムにおける1つ以上の機構部分の摩耗を低減する潤滑剤;およびシロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの任意の混合物を含む酸捕捉剤;を含む。
【0014】
本発明の側面はまた、冷媒組成物のためのキットを対象とし、該キットは、ヒドロフルオロカーボンを含みGWP約10未満およびODP約ゼロを有する冷媒成分;ならびに冷媒組成物における1つ以上の機構部分の摩耗を低減するためのを含む潤滑剤成分;を含む。該キットは、酸捕捉剤を更に含み、該酸捕捉剤は、シロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの任意の混合物を含む。冷媒成分が酸捕捉剤を含むか;潤滑剤成分が酸捕捉剤を含むか;該キットが酸捕捉剤を含む酸捕捉剤成分を更に含むか;またはこれらの任意の組合せである。
【0015】
上記組成物を採用できる多くの用途の中でも、特に輸送手段用、建築物用、および流体冷却用の冷却用途である。
【0016】
全体的な得られる冷媒組成物は、有利に、比較的低い腐食性を有することにより、該組成物と接触する冷媒システムの金属(例えばアルミニウム、銅、または鉄)部分が受ける腐食が比較的低い。冷媒組成物の比較的低い腐食性は、冷媒組成物が以下の特性の1つまたは任意の組合せを有利に示すようなものであることができる:エージング後の総酸価3.3mgKOH/g未満(ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に、ASTM D664−01で測定したとき)を有すること;総ハロゲン化物濃度(例えばフッ素イオン濃度)約240ppm未満(ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に、イオンクロマトグラフィによって測定したとき)を有すること;総有機酸濃度約600ppm未満(ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に、イオンクロマトグラフィによって測定したとき)を有すること。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、冷却および/または保冷(refrigeration)のための改善された組成物、方法およびシステムを含む。組成物および方法は、冷却を生成するための固定式または移動式のシステムにおいて使用できる。例えば、該組成物および方法は、商業用、工業用または居住用建築物のエアコンディショニングシステムにおいて使用できる。該組成物および方法はまた、冷蔵庫または冷凍庫(固定式および移動式)において、商業用、工業用または居住用のいずれにも使用できる。本発明は、これらの好ましい用途を、自動車(例えば、車両エアコンディショニングシステム)または他の携帯用冷却システムにおいて見出す。
【0018】
本発明は、少なくとも1種の冷媒および少なくとも1種の潤滑剤を含む冷媒組成物を、保冷装置を通じて循環させることを含む。保冷装置は、コンプレッサ、コンデンサおよびエバポレータを含むことができ、膨張装置,例えばキャピラリチューブ、オリフィスまたは熱膨張バルブ(コンデンサとエバポレータとの間の)等を含む液体冷媒ラインを有する。運転において、コンプレッサは冷媒蒸気を圧縮し、これを次いでコンデンサ内で凝縮させて液体状態にし、そして液体ラインおよび膨張装置を通過してエバポレータに入る。冷媒はエバポレータ内で蒸発し、これによりその蒸発時の潜熱を周囲環境から吸収し、これが冷却を与える。
【0019】
本発明は、安定剤,例えば酸捕捉剤(これはシロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの組合せを含む)を含む冷媒組成物の予期しない性能を前提とする。酸捕捉剤は、比較的良好な安定性、比較的低いオゾン層破壊係数、比較的低い地球温暖化係数、またはこれらの任意の組合せを有する改善された冷媒組成物において有利に採用できる。
【0020】
ここで好適な冷媒は、サイクルにおいて熱伝導流体として機能する化合物または化合物の混合物であり、該流体は、液体から気体への相変化を受け、そして戻る。本発明の好ましい冷媒はフルオロカーボンであり、これは炭素原子、フッ素原子および任意に水素原子を含む。本発明の一側面において、フルオロカーボンは、炭素、フッ素および任意に水素の原子のみを含有してもよく、そして好ましくは約3〜約12個の炭素原子、より好ましくは約3〜約7個の炭素原子を含有する。好ましいフルオロカーボンとしては、フルオロアルカン、フルオロオレフィン、またはこれらの混合物が挙げられる。好ましい一側面において、フルオロカーボンは、本質的にヨウ素原子不含有であるか、または更には完全にヨウ素原子不含有であることが望ましい場合がある。
【0021】
Leckら(米国特許出願公開第2007/0187639号、段落10、参照により本明細書に組入れる)は、不飽和フルオロカーボン冷媒(これは、本発明においてフルオロオレフィンとして使用できる)の例を更に列挙する。
【0022】
Leckらの段落10に記載されるように、代表的な不飽和フルオロカーボン冷媒または蓄熱流体としては、1,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,1,2,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−1−ブテン、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン、1,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブテン、1,1,1,2,3,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン、1,3,3,3−テトラフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−プロペン、1,1,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,3,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブテン、2,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、1,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、1,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,3,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3,3,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン、3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン、1,1,1,2,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,1,4,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,3−ペンタフルオロ−2−ブテン、2,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,4,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,1,2,3,3−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,2,3,4−ペンタフルオロ−2−ブテン、1,2,3,3,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−メチル−1−プロペン、2−(ジフルオロメチル)−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、1,1,3,3−テトラフルオロ−2−メチル−1−プロペン、1,3,3,3−テトラフルオロ−2−メチル−1−プロペン、2−(ジフルオロメチル)−3,3−ジフルオロ−1−プロペン、1,1,1,2−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,1,3−テトラフルオロ−2−ブテン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−2−ペンテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−1−ペンテン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−ブテン、1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,1,1,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−1−ペンテン、1,1,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−1−ペンテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5−ノナフルオロ−1−ペンテン、1,1,2,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,1,1,12,3,4,4,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロ−2−ペンテン、1,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,2,4,4,4−ヘキサフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−2−ブテン、1,1,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、2,3,3,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−1−ペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンテン、3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,3,4,4,4−ペンタフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,4,4,4−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−ペンテン、3,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン、2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン、1,1,3,3,5,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン、1,1,1,2,4,4,4−ヘプタフルオロ−3−メチル−2−ブテン、2,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−2−ブテン、2,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−2−ブテン、3−(トリフルオロメチル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテン、3,4,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−2−ペンテン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−ブテン、3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1−ペンテン、4,4,4−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−1−ヘキセン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,6−ドデカフルオロ−3−ヘキセン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)−2−ブテン、1,1,1,4,4,5,5,5−オクタフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−ペンテン、1,1,1,3,4,5,5,5−オクタフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、1,1,1,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、1,1,1,4,4,5,5,6,6,6−デカフルオロ−2−ヘキセン、1,1,1,2,2,5,5,6,6,6−デカフルオロ−3−ヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン、4,4,4−トリフルオロ−3,3−ビス(トリフルオロメチル)−1−ブテン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−3−メチル−2−(トリフルオロメチル)−2−ブテン、2,3,3,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1−ペンテン、1,1,1,2,4,4,5,5,5−ノナフルオロ−3−メチル−2−ペンテン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、3,4,4,5,5,6,6,6−オクタフルオロ−2−ヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロ−2−ヘキセン、1,1,1,4,4−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−ペンテン、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−2−メチル−1−ペンテン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−テトラデカフルオロ−2−ヘプテン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7−テトラデカフルオロ−2−ヘプテン、1,1,1,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロ−2−ヘプテン、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロ−2−ヘプテン、1,1,1,2,2,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロ−3−ヘプテン、1,1,1,2,2,3,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロ−3−ヘプテン、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−2−ヘキセン、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1−ヘキセン、1,1,1,2,2,3,4−ヘプタフルオロ−3−ヘキセン、4,5,5,5−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1−ペンテン、1,1,1,2,5,5,5−ヘプタフルオロ−4−メチル−2−ペンテン、1,1,1,3−テトラフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、1,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロシクロブテン、3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロシクロヘキセン、1,1,1,2,3,4,5,5,5−ノナフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−2−ペンテン、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル;またはこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0023】
Minorら(米国特許出願公開第2007/0289317号、参照により本明細書に組入れる)は、飽和および不飽和のフルオロカーボン冷媒(本発明においてフルオロアルカンとして使用できる)の例を更に列挙する。Minorらの段落81に記載されるように、代表的なヒドロフルオロカーボンは、式Cx2x+2-yyまたはCx2x-yy(式中、xは、3〜8であることができ、そしてyは1〜17であることができる)で表すことができる。ヒドロフルオロカーボンは、直鎖、分岐鎖または環状;飽和または不飽和の、約3〜8個の炭素原子を有する化合物であることができる。限定しないが、使用できる例示のフルオロアルカンとしては、Minorらの段落47〜78に記載されるように:1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン;1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン;1,1,3−トリフルオロプロパン;1,1,3−トリフルオロプロパン;1,3−ジフルオロプロパン;2−(ジフルオロメチル)−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン;1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン;1,1,1,2,2,4−ヘキサフルオロブタン;1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン;1,1−ジフルオロブタン;1,3−ジフルオロ−2−メチルプロパン;1,2−ジフルオロ−2−メチルプロパン;1,2−ジフルオロブタン;1,3−ジフルオロブタン;1,4−ジフルオロブタン;2,3−ジフルオロブタン;1,1,1,2,3,3,4,4−オクタフルオロ−(トリフルオロメチル)ブタン;1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5−ウンデカフルオロペンタン;1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン;1,1,1,2,2,3,3,5,5,5−デカフルオロペンタン;1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)ブタン;1,1,1−トリフルオロペンタン;1,1,1−トリフルオロ−3−メチルブタン;1,1−ジフルオロペンタン;1,2−ジフルオロペンタン;2,2−ジフルオロペンタン;1,1,1−トリフルオロヘキサン;1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン;1,1,1,2,2,5,5,5−オクタフルオロ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン;1,1,2,2−テトラフルオロシクロブタン;3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン;およびこれらの組合せが挙げられる。
【0024】
冷媒は、好ましくは低いGWP、約150未満、好ましくは約100未満、より好ましくは約10未満、および最も好ましくは約6未満を有する。冷媒は、好ましくは、最小発火エネルギー(MIE)少なくとも200mJ(ASTM E−582で測定したとき)を有する。フルオロオレフィンの21℃でのより低い可燃性限界は、少なくとも約5体積%(ASTM E−681で測定したとき)であることができる。
【0025】
冷媒は、上記の個々の冷媒の1種または組合せを含むことができる。
【0026】
冷媒組成物は、冷媒システムの機構部分の摩耗を低減できる任意の潤滑剤を含む。潤滑剤は、好ましくは、冷媒中での十分な溶解性を有して該潤滑剤がエバポレータからコンプレッサに確実に戻れるようにする。更に、潤滑剤は、好ましくは、比較的低粘度を低温にて有し、これにより該潤滑剤が低温のエバポレータを通過できるようにする。1つの好ましい態様において、冷媒および潤滑剤は広範囲の温度に亘って混和性である。
【0027】
好ましい潤滑剤は、1種以上の極性含酸素化合物であることができる。好ましい極性含酸素化合物としては、ポリアルキレンオキサイド(ポリアルキレングリコール(PAG)としても知られる)、およびポリオールエステル(POE)が挙げられる。
【0028】
本発明で使用するポリアルキレングリコールとしては、1つより多いアルキレンオキサイドを含有し、末端の1つ以上が活性水素原子を含有しない部分(基)で開かれている化合物が挙げられる。潤滑を容易にする任意のアルキレンオキサイドを使用できるが、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが好ましく、そしてプロピレンオキサイドがより好ましい。末端封鎖部分としては、潤滑または保冷に干渉しない任意の部分が挙げられる。好ましい末端封鎖部分としては、低級アルキル基が挙げられ、C1-4低級アルキル基がより好ましい。好ましいPAG潤滑剤としては、1種または任意の組合せのアルキルエーテル封止化合物、エステル封止化合物またはモノオール(少なくとも1水酸基を有するもの)が挙げられる。好ましいアルキレングリコールは、1末端封止または2末端封止である。好ましいアルキルエーテル封止化合物としては、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、およびブチルエーテル封止化合物が挙げられる。ジオールおよびトリオールもまた好適である。
【0029】
例示的なポリアルキレングリコール(例えば第1のポリアルキレングリコール)としては、ポリアルキレングリコールモノオール、ポリアルキレングリコールジオール、およびポリアルキレントリオール,例えばメタノール開始ポリアルキレングリコールおよびブタノール開始ポリアルキレングリコールが挙げられる。ポリアルキレングリコールは、ホモポリマー(例えばポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール)またはコポリマーであることができる。好ましいホモポリマーは、1価および多価のアルコールで開始されたプロピレンオキサイドから調製される、プロピレンオキサイド(PO)のポリマーであり、好ましいアルコール開始剤としては、メタノール、ブタノールおよびグリセリンが挙げられる。ポリアルキレングリコールコポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであることができる。2種以上のポリアルキレングリコールのブレンド物もまた使用できる。例えば、潤滑剤としては、ポリアルキレングリコールホモポリマー(例えばメタノールまたはブタノール開始ポリプロピレングリコール)およびポリアルキレングリコールコポリマー(例えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのランダムコポリマー,モノオールまたはジオールであることができる)のブレンド物を挙げることができる。別の例として、潤滑剤は、2種以上のポリアルキレングリコールのブレンド物,例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのブレンド物、または2種の異なるポリプロピレングリコールのブレンド物であることができる。
【0030】
本発明の一側面において、潤滑剤は、プロピレンオキサイドホモポリマーもしくはポリエチレンオキサイドホモポリマーであって式I:
Z−[−(CH2−CH(R1)−O−)n−R2p (式I)
(式中、pは1〜約8の範囲の整数であり、nの平均値は約15〜約100の範囲であり、R1はHまたはCH3であり、R2はHまたは1〜6炭素原子のアルキル基であり、そしてZはp活性水素を有する化合物の残基である。)
に従うものを含むか、または本質的にそれからなる。本発明のこの側面において、第1のポリアルキレングリコールはまた、(式Iに従ったプロピレンオキサイドホモポリマーに加え)、モノオール開始ポリエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのモノオール開始ランダムコポリマー、または組合せを含む。
【0031】
POE潤滑剤は、脂肪酸と多価アルコール,例えばジオール、トリオールおよびポリオール、ならびに/または多価ポリエーテルとのエステルである。脂肪酸としては、2〜20個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖の脂肪酸、ならびにまた、4〜36個の炭素原子を有する多塩基(例えば二塩基)脂肪酸が挙げられる。ポリオールエステル潤滑剤は、1種以上の脂肪酸、多価アルコールまたは多価ポリエーテルでのエステル化に由来することができる。
【0032】
潤滑剤は、粘度約10〜約460cStを40℃にて、好ましくは約22〜約220cStを40℃にて、そして最も好ましくは約40〜約150cStを40℃にて有するように選択できる。
【0033】
他の可能な潤滑剤としては、アルキルベンゼンおよびポリビニルエーテルが挙げられる。例えば、潤滑剤は、ポリアルキレンオキサイド、ポリオールエステル、アルキルベンゼン、またはこれらの任意の組合せであることができる。
【0034】
本発明の別の側面において、潤滑剤の冷媒中での溶解性は温度依存性である。コンプレッサ内の温度は、通常、エバポレータ内の温度よりも顕著に高いからである。好ましくは、コンプレッサ内では、潤滑剤および冷媒は互いに分離でき、そして可溶性でなく;潤滑剤は液体であり、かつ圧縮される冷媒は圧縮気体である。一方、エバポレータ内では、好ましくは、潤滑剤および冷媒は相互に可溶性である。1つの特に好ましい状態は、コンプレッサ内の潤滑剤にもたらされる粘度の低下が最低限である(冷媒による希釈が最低限であることに起因して)ものである。これは転じて、より良好な潤滑性およびコンプレッサからの潤滑剤放出の低減をもたらす。同時に、低温溶解性は、コンプレッサから放出される任意の潤滑剤を確実に戻す助けとなる。よって、一態様において、低温溶解性および高温不溶性を示す潤滑剤は望ましい。好ましい態様において、潤滑剤は、冷媒中で、温度約−40℃〜約100℃の間、およびより好ましくは約−40℃〜約40℃の間で可溶性である。別の態様において、コンプレッサ内の潤滑剤を維持しようとすることは優先ではなく、よって、高温不溶性は好ましくない。この態様において、潤滑剤は温度約80℃超、より好ましくは温度約90℃超、および最も好ましくは温度約100℃超で可溶性である。
【0035】
潤滑剤は、動粘度(40℃で、ASTM D445−06に従って測定される)約5cSt超、好ましくは約10cSt超、および最も好ましくは20cSt超を有することができる。潤滑剤は、動粘度(40℃で、ASTM D445−06に従って測定される)約600cSt未満、より好ましくは約320cSt未満、および最も好ましくは約210cSt未満を有することができる。潤滑剤は、好ましくは、分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)または飛行時間型質量分析(TOF−MS)で測定される)約1000〜4000、より好ましくは約1500〜約3500を有することができる。これらの範囲内の分子量を有する潤滑剤は、Falex摩耗試験で、これらの範囲外の分子量の潤滑剤と比べて、より好ましいという結果を与える。
【0036】
冷媒および潤滑剤の組成物中の比率は、コンプレッサを潤滑するのに十分な潤滑剤が存在するように決定する。典型的には、潤滑剤は、組成物をシステム中に充填する時点で、総冷媒組成物の約1質量パーセント(wt%)超、好ましくは2wt%超、およびより好ましくは5wt%超を構成する。潤滑剤は、組成物をシステム中に充填する時点で、総冷媒組成物の約50wt%未満、好ましくは30wt%未満、およびより好ましくは約20wt%未満であることができる。潤滑剤のwt%は、典型的には、冷媒と潤滑剤との相互の溶解性、よって保冷装置で可能な操作温度に作用する。典型的には、冷媒は、組成物をシステム中に充填する時点で、総冷媒組成物の約50質量パーセント(wt%)超、好ましくは70wt%超、およびより好ましくは80wt%超を構成する。冷媒は、組成物をシステム中に充填する時点で、総冷媒組成物の約99wt%未満、好ましくは98wt%未満、およびより好ましくは約95wt%未満であることができる。
【0037】
上記したように、冷媒組成物は、酸捕捉剤として機能できる安定剤を更に含む。好適な安定剤としては、シロキサン、活性化された芳香族化合物、または組合せが挙げられる。
【0038】
シロキサンは、シロキシ官能基を有する任意の分子であることができる。シロキサンとしては、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、またはアリールおよびアルキルの置換基の混合物を含有するシロキサンを挙げることができる。例えば、シロキサンは、アルキルシロキサン,例えばジアルキルシロキサンまたはポリアルキルジシロキサンであることができる。
【0039】
本発明の一側面において、シロキサンは、約1〜約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン,例えばヘキサメチルジシロキサンである。シロキサンはまた、ポリジアルキルシロキサン(ここでアルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはこれらの任意の組合せである)等のポリマーであることができる。好適なポリジアルキルシロキサンは、分子量約100〜約10,000を有する。高度に好ましいシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、およびこれらの組合せが挙げられる。シロキサンは、本質的にポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの組合せからなることができる。
【0040】
一態様において、好ましいシロキサンとしてはまた、シロキサン封止ポリアルキレングリコール,例えば第2のポリアルキレングリコールおよびシロキサンの付加物が挙げられる。
【0041】
シロキシル含有安定剤は、第2のポリアルキレングリコールと、シロキサンまたはシリルクロリドとの反応生成物である付加物(該付加物は、少なくとも1つのシロキシ基を含むようなものである)であることができる。第2のポリアルキレングリコールは、任意の当該分野で公知のポリアルキレングリコールであることができ、潤滑剤において使用できる第1のポリアルキレングリコールについて記載したものが挙げられる。シロキシル含有付加物の1つの例は、第2のポリアルキレングリコールとシリルクロリドとの反応生成物である。シリルクロリドは、式II:
【0042】
【化1】

【0043】
(式中、R3、R4、R5は、アルキル基、芳香族基、アリル基、または水素である(好ましくは、R3、R4、R5は、アルキル基、芳香族基、またはアリル基である))
で与えられる構造を有するものとして特徴付けられる。シリルクロリドは、式II(式中、R3、R4、R5は、アルキル基、または水素であり、各々は、約0〜約4個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子)を含有する)の構造を有することができる。例示的なシリルクロリドとしては、トリアルキルシリルクロリド(例えば、トリメチルシリルクロリド)が挙げられる。
【0044】
酸捕捉剤は、好ましくは、フルオロアルキルポリシロキサン(例えば、Kawaguchiら(米国特許第6,475,405号、2002年11月5日発行、第8欄第63行〜第9欄第18行)によって記載される耐負荷添加剤(anti- load additive))ではない。このように、好適な酸捕捉剤はフッ素原子不含有、Si−O−Si基不含有、または両者であることができる。
【0045】
シロキシル含有安定剤はまた、式III:
【0046】
【化2】

【0047】
(式中、pは約1〜約8の範囲の整数であり、nの平均値は約15〜約100の範囲であり、R9はHまたはCH3であり、R6、R7、R8は各々、約1〜約100個の炭素原子を含有するアルキル基、約1〜約100個の炭素原子を含有するアリール基、またはこれらの任意の組合せであることができ、そしてZはp活性水素を有する化合物の残基である。)
で与えられる構造を有する付加物であることができる。
【0048】
活性化された芳香族化合物は、フリーデル−クラフツ付加反応に対して活性化された任意の芳香族分子、またはその混合物であることができる。フリーデル−クラフツ付加反応に対して活性化された芳香族分子は、鉱酸と付加反応できる任意の芳香族分子と定義する。特には、適用環境(ACシステム)中、またはASHRAE Standard97−199熱安定性試験の間、のいずれかで鉱酸と付加反応できる芳香族分子である。このような分子または化合物は、典型的には、芳香環の水素原子を以下の基の1つで置換することによって活性化される:−NH2,−NHR,−NR2,−OH,−O−,−NHCOCH3,−NHCOR,−OCH3,−OR,−CH3,−C25,−R,または−C65(式中、Rは、炭化水素(好ましくは、約1〜約100個の炭素原子を含有する炭化水素)である)。フリーデル−クラフツ付加反応に対して活性化された1つの高度に好ましい芳香族分子は、ジフェニルオキサイドである。
【0049】
酸捕捉剤(例えば、活性化された芳香族化合物、シロキサン、または両者)は、比較的低い総酸価をもたらす任意の濃度、比較的低い総ハロゲン化物濃度、比較的低い総有機酸濃度、またはこれらの任意の組合せで存在できる。好ましくは、酸捕捉剤は、濃度約0.0050wt%超、より好ましくは約0.05wt%超、および更により好ましくは約0.1wt%超(例えば、約0.5wt%超)(冷媒組成物の総質量基準)で存在する。酸捕捉剤は、好ましくは、濃度約3wt%未満、より好ましくは約2.5wt%未満、および最も好ましくは約2wt%超(例えば、約1.8wt%未満)(冷媒組成物の総質量基準)で存在する。
【0050】
冷媒組成物中に含まれることができ、そして好ましくは冷媒組成物から除外される酸捕捉剤の追加の例としては、Kaneko(米国特許出願第11/575256号、第20070290164号として公開、段落42、参照により明白に本明細書に組入れる)によって記載されるもの,例えば:フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、α−オレフィンオキサイド、またはエポキシ化合物,例えばエポキシ化大豆油、およびSinghら(米国特許出願第11/250219号、第20060116310号として公開、段落34〜42、参照により明白に本明細書に組入れる)によって記載されるもの、のうち1種以上が挙げられる。
【0051】
冷媒組成物の動粘度(40℃にてASTM D445−06に従って測定される)は、約3cSt超、好ましくは約5cSt超、および最も好ましくは10cSt超であることができる。冷媒組成物は、動粘度(40℃にてASTM D445−06に従って測定される)約400cSt未満、より好ましくは約220cSt未満、および最も好ましくは約160cSt未満を有することができる。
【0052】
全体の得られる冷媒組成物は、比較的低い総酸価、好ましくは約3.3mgKOH/g未満(より好ましくは約2mgKOH/g未満)を、ANSI ASHRAE 97で14日間175℃での、アルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージング後に示すことができる。これはASTM D664−01によって測定される。よって、測定される、酸捕捉剤を含む冷媒組成物のエージング後の総酸価は、酸捕捉剤不含有であることを除いて同じ組成を有する冷媒組成物のエージング後の総酸価の、好ましくは未満、より好ましくは少なくとも20%未満、更により好ましくは少なくとも40%未満、および最も好ましくは少なくとも60%未満である。
【0053】
全体の得られる冷媒組成物は、比較的低い総ハロゲン化物濃度(または、より詳細には、比較的低いフッ素イオン濃度)、約240ppm未満、好ましくは約40ppm未満、より好ましくは約10ppm未満、および最も好ましくは約5ppm未満を、ANSI ASHRAE 97で14日間175℃での、アルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージング後に示すことができる。これはイオンクロマトグラフィによって測定される。冷媒組成物は、比較的低い総有機酸濃度、約600ppm未満、好ましくは約200ppm未満、およびより好ましくは約100ppm未満を、ANSI ASHRAE 97で14日間175℃での、アルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージング後に示すことができる。これはイオンクロマトグラフィによって測定される。
【0054】
本発明の、全体の得られる冷媒組成物はまた、添加剤または添加剤パッケージ(以下:極圧添加剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、高温安定剤、潤滑添加剤、粘度指数向上剤、金属不活性化剤、腐食防止剤、洗剤、分散剤または泡止剤の1種または任意の組合せを有するもの)を含むことができる。極圧添加剤は、冷媒組成物の潤滑性および耐力特性を改善する。好ましい添加剤としては、米国特許第5,152,926号;第4,755,316号(参照により本明細書に組入れる)に記載されるものが挙げられる。特に、好ましい極圧添加剤としては、(A)トリルトリアゾールまたはその置換誘導体、(B)アミン(例えばJeffamine M−600)および(C)第3成分であって(i)エトキシル化ホスフェートエステル(例えばAntara LP−700型)、または(ii)ホスフェートアルコール(例えばZELEC 3337型)、または(iii)ジンクジアルキルジチオホスフェート(例えば、Lubrizol 5139,5604,5178,もしくは5186型)、または(iv)メルカプトベンゾチアゾール、または(v)2,5−ジメルカプト−1,3,4−トリアジアゾール誘導体(例えば、Curvan 826)またはこれらの混合物であるもの、の混合物が挙げられる。使用できる添加剤の追加の例は、米国特許第5,976,399号(Schnur,5:12−6:51、参照により本明細書に組入れる)で与えられる。
【0055】
冷媒組成物は、キットとして供給できる。例えば、冷媒組成物は、冷媒成分(これは冷媒の殆どまたは全部を含有できる)および潤滑剤成分(これは潤滑剤の殆どまたは全てを含有できる)を、冷媒成分、潤滑剤成分または両者に添加する各添加剤とともに含むキットとして供給できる。1つの例において、添加剤の全てを、冷媒成分または潤滑剤成分のいずれかに添加する。例えば、添加剤の本質的に全部は、潤滑剤成分中にあることができ、そして、冷媒成分は、本質的に冷媒からなることができる。
【0056】
本発明の別の側面は、保冷装置を充填する方法であって、冷媒組成物(本発明で記載するように、冷媒、潤滑剤、およびシロキサンを含む)を調製するステップを含み、ならびに、該装置に冷媒を充填することによってこれを冷却用に使用できるようにするステップを更に含む方法である。
【0057】
酸価は、ASTM D664−01に従い、mg KOH/g単位で測定する。総ハロゲン化物濃度、フッ素イオン濃度、および総有機酸濃度は、イオンクロマトグラフィによって測定する。冷媒システムの化学的安定性は、American Society of Heating Refrigerating and Air− Conditioning Engineers(ASHRAE) Standard 97−199(RA 2003)に従って測定する。潤滑剤の粘度は、40℃にてASTM D−7042に従って試験する。
【0058】
本明細書で列挙する任意の数値は、任意の下側値と任意の上側値との間に少なくとも2単位の分離が存在することを条件に、1単位の増分で下側値から上側値までの全ての値を包含する。例えば、可変の、成分の量またはプロセスの値,例えば温度、圧力、時間等が、1〜90、好ましくは20〜80、より好ましくは30〜70であると記載する場合、15〜85、22〜68、43〜51、30〜32等の値が、この特定において明白に列挙されることを意図する。1未満の値については、1単位は0.0001、0.001、0.01または0.1と適宜考える。これらは、列挙される下限値と上限値との間の数値の具体的な意図および全ての可能な組合せが何であるかは、本件において同様の様式で明白に記載されていると考えるべきであることの例にすぎない。理解できるように、本明細書で「質量部」と表現される量の教示は、質量パーセント単位で表現される同じ範囲も意図する。よって、「得られるポリマーブレンド組成物の「X」質量部」の単位での範囲の、発明の詳細な説明における表現もまた、得られるポリマーブレンド組成物の質量パーセントでの同じ列挙量「X」の範囲の教示を意図する。
【0059】
特記がない限り、全ての範囲は、両方の端点および該端点の間の全ての数を含む。範囲に関係する「約」または「ほぼ」の使用は、範囲の両端に当てはまる。よって。「約20〜30」は、「約20〜約30」を、特定した端点を少なくとも含んで網羅することを意図する。
【0060】
全ての論説および文献(特許出願および公開公報等)の開示は、参照により本明細書に組入れるものとする。組合せを説明するための用語「本質的に・・からなる」は、特定した要素、含有成分、部材またはステップ、および他の要素、含有成分、部材またはステップであって組合せの基本的および新規な特性に物質的に作用しないものを包含するものとする。要素、含有成分、部材またはステップの組合せを説明するために用いる用語「含む」または「包含する」は、本明細書において、本質的に該要素、含有成分、部材またはステップからなる態様も意図する。
【0061】
複数の要素、含有成分、部材またはステップは、単独の一体化された要素、含有成分、部材またはステップによって与えることができる。代替として、単独の一体化された要素、含有成分、部材またはステップは、別個の複数の要素、含有成分、部材またはステップに分割できる。要素、含有成分、部材またはステップを説明するための”a”または”one”の開示は、追加の要素、含有成分、部材またはステップの排除を意図しない。特定の族に属する元素または金属に対する本明細書の全ての参照は、CRC Press, Inc.,1989が刊行しおよび著作権を有する元素周期表を意味する。1つまたは複数の族の任意の参照は、族の番号付けについてIUPAC系を用いてこの元素周期表に表される1つまたは複数の族であるものとする。
【0062】
本明細書で用いる用語「ポリマー」および「重合」は、一般的であり、そして、より具体的な場合の「ホモ−およびコポリマー」ならびに「単独−および共重合」の一方または両者をそれぞれ包含できる。
【0063】
上記説明は例示であって限定的ではないと意図されることが理解される。与えられる例以外にも多くの態様及び多くの用途が、上記説明を読んだ当業者に明らかとなろう。従って、本発明の範囲は、上記説明の参照で決定すべきでなく、添付の特許請求の範囲、更にはこのような特許請求の範囲が権利を与える均等の範囲全ての参照で決定すべきである。全ての論説および文献(例えば特許出願および公開公報)の開示は、参照により本明細書に組入れるものとする。特許請求の範囲における主題の任意の側面であって本明細書で開示されるものの省略は、このような主題の放棄を意図するものではなく、発明者がこのような主題を開示される発明の主題の一部として考慮しなかったと考えるべきでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンディショナーにおいて使用するための改善された冷媒組成物であって:
i)フルオロカーボンを含み該フルオロカーボンが冷媒組成物の少なくとも約50質量%の濃度で存在する、冷媒;
ii)冷媒システムにおける1つ以上の機構部分の摩耗を低減する潤滑剤;および
iii)シロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの任意の混合物、を含む酸捕捉剤;
を含む、改善された冷媒組成物。
【請求項2】
酸捕捉剤が、フリーデル−クラフツ付加反応に対して活性化された芳香族分子を含む、請求項1に記載の改善された冷媒組成物。
【請求項3】
酸捕捉剤が、少なくとも1つのシロキシ官能基を含有する分子を含む、請求項1または2に記載の改善された冷媒組成物。
【請求項4】
酸捕捉剤がシロキサンを含み、かつフルオロカーボンがヒドロフルオロカーボンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項5】
シロキサンが、1〜約12個の炭素原子を含有するアルキルシロキサンであり、該シロキサンが、冷媒組成物の総質量基準で約0.0050質量%〜約10質量%の濃度で存在し、そして酸捕捉剤がフルオロアルキルポリシロキサンではない、請求項1〜4のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項6】
シロキサンが、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、またはこれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項7】
シロキサンがヘキサメチルジシロキサンを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項8】
i)冷媒組成物が、ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に1つの液相を有し;
ii)冷媒組成物が、ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に総酸価約3.3mgKOH/g未満を有し;または、
iii)i)およびii)の両者であり;そして、
フルオロカーボンがヒドロフルオロカーボンを含み、かつ潤滑剤およびヒドロフルオロカーボンが約0℃〜約40℃で混和可能である、請求項1〜7のいずれかに記載の改善された冷媒組成物。
【請求項9】
フルオロカーボンが、分子当たり3〜12個の炭素原子および少なくとも約3個のフッ素原子を含有するヒドロフルオロカーボンを含み、そして該ヒドロフルオロカーボンが、地球温暖化係数(GWP)約10未満を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項10】
フルオロカーボンが、冷媒組成物の総質量基準で少なくとも70質量%の濃度で存在する、請求項1〜9のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項11】
潤滑剤が第1のポリアルキレングリコールを含み、該第1のポリアルキレングリコールが、第1のポリアルキレングリコールモノオール、ポリアルキレンジオールまたはこれらの任意の組合せを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項12】
第1のポリアルキレングリコールが、プロピレンオキサイドホモポリマーまたはポリエチレンオキサイドホモポリマーであって式I:
Z−[−(CH2−CH(R1)−O−)n−R2p (式I)
(式中、pは1〜約8の範囲の整数であり、nは約15〜約100の平均値を有し、R1はHまたはCH3であり、R2はHまたは1〜6炭素原子のアルキル基であり、そしてZはp活性水素を有する化合物の残基である。)
で表されるものを含む、請求項11に記載の冷媒組成物。
【請求項13】
第1のポリアルキレングリコールが、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムコポリマーを含む、請求項11または12に記載の冷媒組成物。
【請求項14】
シロキサンがアルキルシロキサン、アリールシロキサン、またはアリールおよびアルキルの置換基の混合物を含有するシロキサンを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の冷媒組成物。
【請求項15】
フルオロカーボンが、GWP約10未満およびODP約ゼロを有するヒドロフルオロカーボンを含み、潤滑剤が、第1のポリアルキレングリコールを含み、そして酸捕捉剤が、第2のポリアルキレングリコールと、シロキサンまたはトリアルキルシリルクロリドのいずれかとの反応生成物である付加物を含むことにより該付加物が少なくとも1つのシロキシ基を含むものであり、該冷媒組成物は、
i)ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に1つの液相を有するか;または
ii)ANSI ASHRAE 97による14日間175℃でのアルミニウム、銅および鉄の金属ストリップでのエージングの後に総酸価約3.3mgKOH/g未満を有するか;
のいずれかまたは両者を示し、該第1のポリアルキレングリコールおよび該ヒドロフルオロカーボンが、約−40℃〜約60℃で混和可能である、請求項1に記載の冷媒組成物。
【請求項16】
付加物が、第2のポリアルキレングリコールとシリルクロリドとの反応生成物を含む、請求項15に記載の冷媒組成物。
【請求項17】
シリルクロリドが、式II:
【化1】

(式中、R3、R4、R5はアルキル、芳香族、アリル、または水素であり、かつ各々が約0〜約4個の炭素原子を含有する。)
の構造を有する、請求項16に記載の冷媒組成物。
【請求項18】
シリルクロリドがトリメチルシリルクロリドを含む、請求項17に記載の冷媒組成物。
【請求項19】
酸捕捉剤が、式III:
【化2】

(式中、pは、約1〜約8の範囲の整数であり、
nの平均値は約15〜約100の範囲であり、
9はHまたはCH3であり、R6、R7、R8は各々が約1〜約100個の炭素原子を含有するアルキル基、約1〜約100個の炭素原子を含有するアリール基、またはこれらの任意の組合せであり、そして
Zは、p活性水素を有する化合物の残基である。)
で与えられる構造を有するシロキサンを含む、請求項1に記載の冷媒組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の冷媒組成物のためのキットであって:
i)ヒドロフルオロカーボンを含みGWP約10未満およびODP約ゼロを有する冷媒成分;ならびに
ii)冷媒システムにおける1つ以上の機構部分の摩耗を低減するための潤滑剤を含む潤滑剤成分;
を含み、該キットが、酸捕捉剤を更に含み、該酸捕捉剤が、シロキサン、活性化された芳香族化合物、またはこれらの任意の混合物を含み;
該冷媒成分が酸捕捉剤を含むか、該潤滑剤成分が酸捕捉剤を含むか、該キットが、酸捕捉剤を含む酸捕捉剤成分を含むか、またはこれらの任意の組合せである、キット。

【公表番号】特表2011−516671(P2011−516671A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503201(P2011−503201)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/039423
【国際公開番号】WO2009/146122
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ リミティド ライアビリティ カンパニー (1,383)
【Fターム(参考)】