説明

冷蔵倉庫におけるエレベータ設備

【課題】冷蔵倉庫に設置されるエレベータ設備において、エレベータシャフト内の結露発生を防止する。
【解決手段】冷蔵倉庫に設置されて、外部に面する荷捌き場2と冷蔵庫4の設置階との間で荷物を搬送するべく、昇降路を構成しているエレベータシャフト5の下部が荷捌き場に面して配置されているとともに、エレベータシャフトの頂部が冷蔵庫の設置階において該冷蔵庫の内部または冷蔵庫に隣接する位置に配置されているエレベータ設備10であって、エレベータシャフト5の頂部に、冷蔵庫4内の冷気をエレベータシャフト内に供給するための送気装置11を設置する。具体的には、エレベータシャフトの頂部と冷蔵庫とを区画している区画壁に開口部を設けて、該開口部に防火ダンパーを介して送気装置11としての換気扇、特に有圧換気扇を設置すると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵倉庫に設置されるエレベータ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
流通センター等においては建物全体ないし大半を各種の荷物を低温状態で収納・保管するための冷蔵庫とする大規模な冷蔵倉庫が設置されるが、そのような冷蔵倉庫としては図4〜図5に模式的に示すような形態のものが最も基本的かつ一般的である。
これは、地表階(1階)にトラックヤード1と荷捌き場2を設け、トラックにより搬入した荷物を荷捌き場2で荷捌きして垂直搬送設備としてのエレベータ3により2階(3層以上の多層階とされる場合もある)に設置した冷蔵庫4に直接搬送して入庫するようにしたものである。勿論、出庫の際には冷蔵庫4内の荷物をエレベータ3により荷捌き場2に直接搬送し、トラックに積み込んで搬出するものである。
【0003】
この種の冷蔵倉庫においては、大規模な冷蔵庫4内の各部、特に上部と下部とで大きな温度差が生じないように管理することが必要であり、そのため、たとえば特許文献1に示されるように、冷蔵庫4内に送風装置を設置して庫内冷気を強制循環させることにより温度差を解消させるように制御することが提案されている。
また、このような冷蔵倉庫に保管していた荷物を搬出する際には、冷蔵温度と外部温度との温度差に起因して荷物に結露が生じてしまうことがあるため、たとえば特許文献2にはそのような結露を防止するために出庫するべき荷物を調温ステーションにおいて所定温度に調温してから出庫するという冷蔵自動倉庫についての開示がある。
【特許文献1】特開平10−103841号公報
【特許文献2】特開2001−72210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の冷蔵倉庫においては、エレベータ3の昇降路を構成しているエレベータシャフト5の内部において結露が生じる場合がある。
すなわち、この種の冷蔵倉庫では荷捌き場2が外部に面して設けられており、その荷捌き場2に面してエレベータ3の乗降口が設けられていることから、図5に示しているように乗降口の扉6が開かれた際に、あるいは扉6を閉じた状態であってもその隙間から、外気が多少なりともエレベータシャフト5内に流入してしまうことが不可避である。
そして、エレベータシャフト5は冷蔵庫4の内部あるいは冷蔵庫4に隣接して配置されていることから、エレベータシャフト5の内面には断熱材を取り付けてはいるものの、必然的にエレベータシャフト5の内部温度は外気に比べてかなり低温となっているし、エレベータシャフト5の内表面温度や内部設置機器の表面温度は充分に低温となっていて、外気の露点温度以下になることも通常である。
そのため、夏期に高温多湿の外気がエレベータシャフト5内に多量に流入したような場合には、流入した外気がエレベータシャフト5内を上昇して頂部に長時間滞留してしまい、そこで結露してときには水滴となって流れ落ちる事態となることもある。
【0005】
上述したようにこの種の大規模な冷蔵倉庫においては、特許文献1〜2に示されるように冷蔵庫4内の温度管理や、出庫する荷物に対する結露防止についてはそれなりの対策が講じられているが、上記のようなエレベータシャフト5の内外の温度差に起因する結露の発生はいわば盲点であって有効な対策が講じられておらず、それを防止するための有効な手法も提案されていない。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明はこの種の冷蔵倉庫におけるエレベータシャフト内の結露を防止し得る有効適切な手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は冷蔵倉庫に設置されるエレベータ設備、特に、外部に面する荷捌き場と冷蔵庫の設置階との間で荷物を搬送するべく、昇降路を構成しているエレベータシャフトの下部が前記荷捌き場に面して配置されているとともに、該エレベータシャフトの頂部が冷蔵庫の設置階において該冷蔵庫の内部または冷蔵庫に隣接する位置に配置されているエレベータ設備を対象とするものであって、前記エレベータシャフトの頂部に、冷蔵庫内の冷気をエレベータシャフト内に供給するための送気装置を設置してなることを特徴としている。
本発明においては、エレベータシャフトの頂部と冷蔵庫とを区画している区画壁に開口部を設けて、該開口部に防火ダンパーを介して送気装置としての換気扇を設置することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエレベータ設備は、冷蔵庫内の冷気を送気装置によってエレベータシャフトの頂部に供給することのみで、エレベータシャフトの内圧は外部より高まって正圧に維持され、また送気装置により供給された冷気はエレベータシャフト内を下降して流れるので荷捌き場からエレベータシャフト内への外気の流入を有効に防止でき、また多少の外気が流入しても頂部に長時間滞留してしまうことはなく、それにより結露の発生を有効に防止することができる。
また、送気装置としては市販の有圧換気扇等の安価な汎用製品をそのまま使用可能であるから、それを設置するに要する設備費や運転費、保守費も些少であり、結露防止対策として大きな負担になることもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエレベータ設備の一実施形態を図1〜図3を参照して説明する。
本実施形態のエレベータ設備10は図4〜図5に示したような最も基本的かつ一般的な形態の冷蔵倉庫への適用例であって、図4〜図5に示した従来のエレベータ3を基本とするものであるが、昇降路を構成しているエレベータシャフト5の頂部に、冷蔵庫4内の冷気をエレベータシャフト5内に供給するための送気装置11を設置したことを主眼とする。
すなわち、その詳細を図3に示すように、冷蔵庫4とエレベータシャフト5とを区画している区画壁12には送気装置11を取り付けるための開口部13が設けられ、その開口部13の内側に防火ダンパー14を介して送気装置11が設置されている。なお、図3における符号15は区画壁11の内面に取り付けられている断熱材である。
本実施形態における送気装置11は有圧換気扇であって、その仕様はエレベータシャフト5の内容積や内外の温度条件、想定される流入外気量等を考慮して設定されるものであるが、たとえば羽根径40cm、風量1m3/min程度、最大静圧200Pa程度のものが適当であり、低騒音型であることが好ましい。
【0010】
送気装置11の運転は常時連続的に行うことでも良く、特に結露が発生し易い夏期においては連続運転することが現実的であるが、気象状況やこのエレベータ設備10の稼働状況、外気の流入状況等に応じて送気装置11を適宜運転し停止するように制御しても良く、必要であれば自動運転するためのセンサ類と制御手段を備えて自動的に最適運転をするように構成しても良い。勿論、外気が流入しても結露発生の懸念がない冬季間や、エレベータ設備10の運転を長時間停止していて外気の流入の懸念がない場合等には、送気装置11の運転を停止しても良い。
いずれにしても、上記のように有圧換気扇1台程度の送気量では、冷蔵庫4内が過度の負圧になったり、それに起因して冷蔵庫4内に外気の流入や冷蔵能力の低下といった問題が生じることは殆どないと考えられるが、冷蔵庫4の規模や送気量の設定によりそれらが問題とされる場合には、必要に応じて冷蔵庫4への冷気の供給や冷蔵能力の増強等の対策を講じれば良い。
【0011】
以上のように、本実施形態のエレベータ設備10によれば、エレベータシャフト5の頂部に送気装置11を設置してその送気装置11により冷蔵庫4内の冷気をエレベータシャフト5内に供給するようにしたので、エレベータシャフト5の内圧は外部より自ずと高まって正圧に維持されるとともに、送気装置11により供給された冷気は図2に示すようにエレベータシャフト5内を下降して流れて荷捌き場2に面して設けられている乗降口ないしその扉6の隙間から荷捌き場2に流出するので、荷捌き場2からエレベータシャフト5内への外気の流入を有効に防止することができる。
また、多少の外気がエレベータシャフト5内に流入したとしても、エレベータシャフト5内を下降する冷気の気流により押し戻されて頂部にまで上昇することはないし、冷気の供給によりエレベータシャフト5内の温度は自ずと低温に維持されるので、いずれにしても高温多湿の外気が頂部に長時間滞留してしまうことはなく、従来においてはそれに起因していた結露の発生を有効に防止することができる。
【0012】
このように、本実施形態のエレベータ設備10では、エレベータシャフト5の頂部に対して冷蔵庫4からその冷気を供給することのみで、エレベータシャフト5内での結露の発生を有効に防止することができるという格別顕著な効果を奏するものである。勿論、そのための送気装置11としては市販の有圧換気扇等の安価な汎用製品をそのまま使用可能であって、それを設置するに要する設備費や運転費、保守費も些少であり、結露防止対策として大きな負担になることはない。
【0013】
なお、上記実施形態のように送気装置11としては有圧換気扇が好適に採用可能であるし、通常は1台の有圧換気扇をエレベータシャフト5の頂部に設置することで充分であるが、本発明はそれに限るものではなく、冷気の所要供給量が大きいような場合等において必要であれば複数台の有圧換気扇を分散配置して同時運転するようにしても良い。
逆に所要供給量が少なくて良く、特に静圧が必要でなければ(有圧ではない)普通換気扇も使用可能であるし、あるいは冷蔵庫内に送風機や軸流ファンを設置してダクトを介してエレベータシャフト5内に供給することでも良い。
いずれにしても、エレベータシャフト5は防火区画(竪穴区画)を構成する必要があるから、送気装置11を設置するために区画壁12に形成する全ての開口部13には上記実施形態と同様に防火ダンパー14を設置する必要があることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態であるエレベータ設備を備えた冷蔵倉庫の平面図であり、(a)は1F平面図、(b)は2F平面図である。
【図2】同、エレベータシャフトを示す断面図である。
【図3】同、エレベータシャフト頂部への送気装置の設置例を示す図である。
【図4】冷蔵倉庫の一例を示す平面図であり、(a)は1F平面図、(b)は2F平面図である。
【図5】同、エレベータシャフトを示す断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 トラックヤード
2 荷捌き場
4 冷蔵庫
5 エレベータシャフト
6 扉
10 エレベータ設備
11 送気装置(有圧換気扇)
12 区画壁
13 開口部
14 防火ダンパー
15 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵倉庫に設置されて、外部に面する荷捌き場と冷蔵庫の設置階との間で荷物を搬送するべく、昇降路を構成しているエレベータシャフトの下部が前記荷捌き場に面して配置されているとともに、該エレベータシャフトの頂部が冷蔵庫の設置階において該冷蔵庫の内部または冷蔵庫に隣接する位置に配置されているエレベータ設備であって、
前記エレベータシャフトの頂部に、冷蔵庫内の冷気をエレベータシャフト内に供給するための送気装置を設置してなることを特徴とする冷蔵倉庫におけるエレベータ設備。
【請求項2】
請求項1記載の冷蔵倉庫におけるエレベータ設備であって、
エレベータシャフトの頂部と冷蔵庫とを区画している区画壁に開口部を設けて、該開口部に防火ダンパーを介して送気装置としての換気扇を設置してなることを特徴とする冷蔵倉庫におけるエレベータ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102131(P2009−102131A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276117(P2007−276117)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(507351779)株式会社シミズ・ビルライフケア九州 (1)
【Fターム(参考)】