説明

冷蔵庫および冷凍庫

【課題】本発明の課題は、水の供給源を食品からのみではなく外気に含まれる水分も有効に活用し、食品の乾燥防止と抗酸化成分の効果的な放出ができる冷蔵庫および冷凍庫を提供することにある。
【解決手段】本発明の冷蔵庫は、複数の貯蔵室2、3、4、5と、複数の貯蔵室2、3、4、5を冷却する冷凍サイクルとを備え、冷凍サイクルからの冷気を複数の貯蔵室2、3、4、5へ導く冷気通路30t、31、32、32o、36〜38、41が形成される冷蔵庫1であって、複数の貯蔵室2、3、4、5の少なくとも一部の貯蔵室24に、冷気を蓄えるための蓄冷材52を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の乾燥防止と酸化防止とが可能な貯蔵室を備えた冷蔵庫および冷凍庫に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、冷蔵庫に保存中に空気中の酸素と反応することで酸化が進行する。特に、魚類に多く含まれるDHAやEPA等の不飽和脂肪酸、肉類に含まれる一部のアミノ酸や野菜に含まれるビタミンC等は空気中の酸素と触れることで、失われていく。そこで、真空パックや抗酸化剤等の活用などにより、食品廻りの酸素濃度を低下させることで栄養成分の酸化を防ぐ技術が日常に多く取り入られている。
【0003】
その一例として、従来、例えば、以下の特許文献1によっても知られるように、冷蔵庫内の密閉容器内の空気を、真空ポンプを用いて吸引することにより、密閉容器内部の酸素量を減らし、栄養成分の酸化による劣化を抑制する。そして、密閉容器内の水分を吸湿し、吸湿した水分にビタミンCが溶解し、ビタミンC水として密閉容器内に放出して栄養成分の酸化による劣化を抑制する冷蔵庫がある。
すなわち、特許文献1に記載の冷蔵庫は、低酸素濃度とビタミンCの抗酸化力で、食品の鮮度保持機能を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4607200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、密閉状態により密閉容器内の水分が密閉容器外へ逃げることはないが、換言すれば、密閉容器内が飽和水蒸気圧に達していなければ、外気からの水分の流入が無いため、密閉容器内が飽和水蒸気圧になるまで、密閉容器内に保存された食品から水分が蒸発し続ける。さらに、扉開操作により、飽和量に達した水蒸気は大気中に放出されてしまうため、扉開閉の繰り返しにより食品の乾燥は進行する一方となる問題がある。
【0006】
また、特許文献1の技術においては、密閉容器内の水分を吸湿し、吸湿した水分にビタミンCが溶解し、ビタミンC水として密閉容器内に放出して栄養成分の酸化による劣化を抑制するものである。
そのため、まず密閉容器内が飽和水蒸気圧になった後、ビタミンCカセット内の吸湿材が吸湿し、ビタミンC水が放出されるため、吸湿する水分が少ないとビタミンC水が放出するまでに時間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は上記実状に鑑み、水の供給源を食品からのみではなく外気に含まれる水分も有効に活用し、食品の乾燥防止と抗酸化成分の効果的な放出ができる冷蔵庫および冷凍庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、第1の本発明に関わる冷蔵庫は、複数の貯蔵室と、当該複数の貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、前記冷凍サイクルからの冷気を前記複数の貯蔵室へ導く冷気通路が形成される冷蔵庫であって、前記複数の貯蔵室の少なくとも一部の貯蔵室に、冷気を蓄えるための蓄冷材を備えている。
【0009】
第2の本発明に関わる冷凍庫は、第1の本発明に関わる冷蔵庫を冷凍庫に適用したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水の供給源を食品からのみではなく外気に含まれる水分も有効に活用し、食品の乾燥防止と抗酸化成分の効果的な放出ができる冷蔵庫および冷凍庫を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施形態の冷蔵庫を向かって左から見た中央縦断面図である。
【図2】図1に示した冷蔵庫の冷蔵室の最下段空間部分を図1の右奥側上方から見た上部切り欠き斜視図である。
【図3】図1に示す冷蔵室の背面パネルの正面図である。
【図4】図2に示す抗酸化成分放出カセットの斜視図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【図7】実施形態の低圧室の天井壁に抗酸化成分放出カセットを配設した例を示す低圧室を斜め上前方から見た斜視図である。
【図8】低圧室の食品トレイの底面にアルミニウム製トレイを設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
【図9】蓄冷材を低圧室の内部中央に設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
【図10】蓄冷材を低圧室の端部に設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
【図11】蓄冷材の分解状態を示す斜視図である。
【図12】(a)は蓄冷材を設置するための蓄冷材スタンドを示す斜視図であり、(b)は蓄冷材スタンドに蓄冷材を設置した状態を示す斜視図である。
【図13】蓄冷材の配置位置を決めるための蓄冷材位置決め・底上げ用突起の位置関係を示す上面図である。
【図14】図13のC−C線断面図である。
【図15】アルミニウム製トレイの有無による食品の水分保持率を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る実施形態の冷蔵庫を向かって左から見た中央縦断面図である。
実施形態の冷蔵庫1は、複数の貯蔵室(2、3、4、5)が画設された冷蔵庫本体1Hと、その前面(図1では右側)に設けられ複数の貯蔵室(2、3、4、5)をそれぞれ開閉する複数の扉6〜9とを備えて構成されている。
【0013】
冷蔵庫本体1Hは、外郭を成す鋼板製の外箱11と、複数の貯蔵室が画成される樹脂製の内箱12と、それらの間に充填され庫外と庫内を断熱するウレタン発泡断熱材13及び真空断熱材(図示せず)とを有し構成されている。
冷蔵庫本体1Hは、上から、冷蔵室2、冷凍室3、4、そして、野菜室5の順に複数の貯蔵室が形成されている。換言すれば、最上段には冷蔵室2が、そして、最下段に野菜室5が、それぞれ区画して配置されている。冷蔵室2と野菜室5との間には、これらの両室から断熱して仕切られた冷凍室3、4が配設されている。
【0014】
冷蔵室2及び野菜室5は、例えば3℃前後の冷蔵温度帯の貯蔵室であり、冷凍室3、4は、0℃以下の冷凍温度帯(例えば、約−20℃〜−18℃の温度帯)の貯蔵室である。これらの貯蔵室2〜5は仕切り壁33、34、35により区画されている。
冷蔵室2と冷凍室3とを画成する仕切り壁33および冷凍室4と野菜室5とを画成する仕切り壁35は、それぞれ冷蔵温度帯の室と冷凍温度帯の室とを仕切るため、断熱して仕切る隔壁で構成される。すなわち、仕切り壁33、35はそれぞれ発泡断熱材や真空断熱材が内装されている。
【0015】
冷蔵庫本体1Hの前面には、前記したように、複数の貯蔵室2、3、4、5の各前面開口部を開閉するための扉6、7、8、9が、それぞれ開閉自在に設けられている。
詳細には、冷蔵室扉6は冷蔵室2の前面開口部を開閉する扉、冷凍室扉7は冷凍室3の前面開口部を開閉する扉、冷凍室扉8は冷凍室4の前面開口部を開閉する扉、そして、野菜室扉9は野菜室5の前面開口部を開閉する扉である。
【0016】
冷蔵室扉6は、両側端部でそれぞれ枢設される観音開き式の両開きの扉で構成されている。冷凍室扉7、冷凍室扉8、野菜室扉9は、それぞれ引き出し式の扉によって構成され、引き出し扉と共に、貯蔵室(3、4、5)内の容器7y、8y、9yがそれぞれ引き出される構造としている。
【0017】
冷蔵庫本体1Hには、貯蔵室(2、3、4、5)を冷却するための冷媒が循環する冷凍サイクルが設置されている。この冷凍サイクルは、圧縮機14、凝縮器(図示せず)、キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器15、そして、再び、圧縮機14が、順に接続されて冷媒の循環路を構成している。圧縮機14と凝縮器は、冷蔵庫本体1Hの背面下部に設けられた機械室1H1内に設置されている。
【0018】
蒸発器15は、庫内を循環する空気を冷媒の蒸発時の潜熱で冷却するものであり、冷凍室3、4の後方に設けられた冷却器室1H2内に設置されている。この冷却器室1H2における蒸発器15の上方には、蒸発器15で冷却された冷気を庫内に送るための送風ファン16が設置されている。
【0019】
蒸発器15によって冷却された冷気は、送風ファン16によって、冷気通路30tなどを介して、冷蔵室2、冷凍室3、4及び野菜室5などの各貯蔵室へ送られる。具体的には、送風ファン16によって送られる冷気は、開閉可能なダンパ36、37、38を介して、その一部が冷蔵室2及び野菜室5の冷蔵温度帯の貯蔵室へと送られ、また、残りの一部が冷凍室3、4の冷凍温度帯の貯蔵室へと送られる。
【0020】
送風ファン16によって冷蔵室2、冷凍室3、4及び野菜室5の各貯蔵室へと送られる冷気は、各貯蔵室内を冷却した後、冷気戻り通路を通って、冷却器室1H2へと戻される(還される)。
このように、冷蔵庫1は、冷気の循環構造を有しており、各貯蔵室2〜5を適切な温度(設定温度)に維持する。
【0021】
冷蔵室2内には、透明なアクリル樹脂等の樹脂板で構成される複数段の棚17〜20が取り付け、取り外し可能に設置されている。最下段の棚20は、内箱12の内面である背面及び両側面に接するように設置され、その下方空間である、所謂、冷蔵室2の最下段空間21をその上方空間から区画している。
【0022】
また、冷蔵室扉6の内側には複数段の扉ポケット25〜27が設置され、これらの扉ポケット25〜27は、冷蔵室扉6が閉塞された状態で、冷蔵室2内に突出するように設けられている。冷蔵室2の背面には、送風ファン16から供給された冷気が通過する通路の冷気通路30tが形成される背面パネル30が配設されている。
【0023】
<低圧室24>
図2は図1に示した実施形態の冷蔵庫の冷蔵室の最下段空間部分を図1の右奥側上方から見た上部切り欠き斜視図である。
冷蔵室2の最下段空間21には、左から右へ順に、冷凍室3の製氷皿に製氷水を供給するための製氷水タンク22、デザートなどの食品を収納するための収納ケース23、室内を減圧して食品の鮮度保持及び長期保存するための低圧室24が、それぞれ設けられている。
【0024】
低圧室24は、冷蔵室2の横幅より狭い横幅を有しており、冷蔵室2の側面に隣接して配置されている。なお、低圧室24は、図2から明らかなように、その周囲を壁(低圧室本体40)や扉(低圧室ドア50)で囲繞して気密に形成されている。これによって、低圧室24は、その内部の気圧を低圧室24の外部空間や庫外の外部空間の大気圧よりも低下させることができる。
【0025】
図2の左側に示す製氷水タンク22及び収納ケース23は、冷蔵室扉6(図1参照)の後方に配置されている。そのため、左側の冷蔵室扉6を開くのみで、製氷水タンク22及び収納ケース23を引き出すことができる。
また、図2の右側に示す低圧室24は、冷蔵室扉6の後方に配置されている。そのため、右側の冷蔵室扉6を開くのみで、取手部50tを把持して低圧室ドア50を開けることにより低圧室24の食品トレイ60を引き出すことができる。
なお、製氷水タンク22及び収納ケース23、低圧室24は、図1に示す冷蔵室扉6の最下段の扉ポケット27の後方に位置している。
【0026】
<背面パネル30>
次に、図1に示す背面パネル30の詳細について説明する。
背面パネル30は、冷蔵庫1の冷蔵室2の奥壁を形成している。
図3は、冷蔵室の背面パネルの正面図(図1の冷蔵庫1を右側から見た図)である。
背面パネル30には、冷蔵室2に冷気を供給する冷蔵室(2)冷却用の第1の冷気吐出口31と、冷蔵室2の最下段空間21(図1参照)に冷気を供給する低圧室(24)冷却用の第2の冷気吐出口32と、冷蔵室2や低圧室24の冷却後の冷気が流入する冷気戻り口32oとが穿設されている。冷気戻り口32oは、低圧室24の背面後方において、冷蔵室2の右側面に近い側に配設されている。
【0027】
低圧室24の冷却用の第2の冷気吐出口32は、低圧室24の上面と棚20の下面との隙間に向けて設けられている。第2の冷気吐出口32から吐き出された冷気は、低圧室24の上面と棚20の下面との隙間を流れ、低圧室24を上面から冷却する。つまり、第2の冷気吐出口32から吐き出された冷気は低圧室24内を間接冷却する。
【0028】
また、第2の冷気吐出口32よりも上流側の冷気流路には、低圧室24に対しての冷気の流れを制御するためのダンパ装置41(図1参照)が設けられている。ダンパ装置41の開閉動作は、図示しない制御装置によって制御されており、これにより、低圧室24への冷気供給量が制御される。
さらに、図1に示すように、低圧室24内の温度を上昇させるため、例えば、ヒータ43が設けられている。ヒータ43は、低圧室24内空間の下方投影面に設けられており、本例では、低圧室24内の底面とほぼ同程度の面積をもつヒータとしている。
【0029】
本冷蔵庫1では、低圧室24を冷蔵室2の右側面に近接して配置して低圧室24の右側の隙間(スペース)をなくすとともに、低圧室24の上面の左端部には不図示の棚(仕切り壁)を設けて低圧室24の左側の隙間(スペース)をなくしている。そのため、第2の冷気吐出口32から吐き出された冷気は、低圧室24の左右外側方に分流することなく、低圧室24の(外)上面を流れる。
これによって、低圧室24の(外)上面を冷却する第2の冷気吐出口32からの冷気量を増大することにより、低圧室24の内部空間を速く冷却することができる。
【0030】
低圧室24の(外)上面を冷却した冷気は、低圧室24の上方から低圧室24の後面を通って冷気戻り口32oに吸い込まれ、冷気戻り通路を通って冷却器室1H2へと戻される。冷気戻り口32oは低圧室24の背面後方で冷蔵室2の右側面に近い側に位置して設けられているので、冷気は低圧室24の(外)背面及び(外)右側面に接触して冷却する。
【0031】
こうして、低圧室24は、第2の冷気吐出口32からの冷気がその外部を通ることにより間接的に冷却される。よって、低圧室24を減圧することで低圧室24の内部での冷気の対流を抑制し、かつ、低圧室24の密閉容器内で間接冷却を行うことで圧縮機14のオン・オフによる影響や、冷蔵庫1の扉(6、7、8、9)の開閉や霜取り等の温度上昇に対しても、低圧室24の内部温度への悪影響を抑え、もって、恒温で高湿な状態を保つことが可能となる。
なお、背面パネル30の第1の冷気吐出口31からの冷蔵室2の全体を冷却した冷気も、また、冷気戻り口32oへ吸込まれる。
【0032】
また、図2の製氷水タンク22の後方には、製氷水ポンプ28が設置されている。収納ケース23の後方、かつ、低圧室24の後部側方の空間には、低圧室24を減圧するための減圧装置の一例である負圧ポンプ29が配置されている。負圧ポンプ29は、低圧室24の側面に設けられたポンプ接続部に導管を介して接続されており、低圧室24内の空気を吸引する構成とされている。
【0033】
低圧室24は、図2に示すように、食品の出し入れ用開口部40kを有する箱状の低圧室本体40と、食品出し入れ用開口部40kを開閉する低圧室ドア50と、食品がその内部に収納されるとともに低圧室ドア50を通して食品が低圧室24内に出し入れされる食品トレイ60とを備えて構成されている。
すなわち、低圧室本体40では、その低圧室ドア50の食品出し入れ用開口部40kを閉塞することにより、低圧室本体40と低圧室ドア50とで囲繞された空間が、密閉空間の減圧される低圧空間として形成される。なお、食品トレイ60は、低圧室ドア50の背面側に取着されており、低圧室ドア50の移動に伴って前後方向に移動可能である。
【0034】
低圧室24の使用(動作)に関して説明すると、低圧室24は、食品トレイ60に食品を載置して低圧室ドア50を閉じることにより、その内部が密閉状態となる。同時に、低圧室ドア50のドアスイッチがオンされて負圧ポンプ29が駆動され低圧室ドア50の内部の空気が排出され、低圧室24が大気圧より低い圧力状態に減圧される。これにより、低圧室24内の酸素濃度が低下して食品中の栄養成分の劣化(酸化)を抑制(防止)することができる。
【0035】
そして、ユーザが取手部50tを把持して低圧室ドア50を手前に引くことにより、まず、低圧室ドア50の一部に設けられた不図示の圧力解除バルブが動作して低圧室24の減圧状態が解除される。これによって、低圧室24の内部が大気圧の状態となり気圧差が解消され、低圧室ドア50を容易に開くことができる。そのため、ユーザが簡単に低圧室ドア50を開けて、食品の出し入れが可能となる。
【0036】
図4は図2に示す抗酸化成分放出カセットの斜視図である。図5は図4のA−A線断面図であり、図6は図4のB−B断面図である。
減圧貯蔵室である低圧室24の内部には、抗酸化剤81(図4、図5、図6参照)を内包した抗酸化成分放出カセット80が設置されている。
抗酸化剤81は、低圧室24に保存される野菜、肉魚などの生鮮食品を空気中の酸素による酸化損失を防止するものである。
抗酸化成分放出カセット80は、図2に示すように、食品トレイ60の背壁部60sに着脱可能に係着されている。
【0037】
抗酸化剤81としては、大気圧状態の基で抗酸化成分が放出されず、かつ、大気圧より低い圧力状態の基で抗酸化成分が放出される抗酸化剤が用いられている。すなわち、抗酸化成分放出カセット80に内包された抗酸化剤81は、低圧室24内を減圧することにより、抗酸化成分放出カセット80内部の圧力と抗酸化成分放出カセット80の外部の圧力との圧力差により、抗酸化成分放出カセット80から抗酸化成分が放出される。
【0038】
これにより、低圧室24内の酸素濃度が低下して食品中の栄養成分の劣化(酸化)を防止することができる。しかも、低圧室24が密閉されて減圧された状態となってから抗酸化剤81から抗酸化成分の放出が開始されると共に、限られた容積の低圧室24の内部で抗酸化成分による食品中の栄養成分と酸素との結合防止をすることができる。
【0039】
その結果、減圧すると飽和蒸気圧が下がる(水分リッチな)ので吸湿剤を沢山必要とせず、抗酸化成分放出カセット80の小型化が可能である。しかも、大気圧近くでも抗酸化成分が放出し抗酸化作用を出せるので耐圧構造の必要性が低減され、低圧室24の筐体の強度低減が可能である。
【0040】
したがって、抗酸化成分放出カセット80の小型化から低圧室24の食品収納スペースの増大を実現できるとともに、低圧室24の筐体の強度低減からコスト低減を図れる。さらに、低圧室24に収納した食品中の栄養成分の酸化劣化を長期間に亘って防止できる。
【0041】
<抗酸化成分放出カセット80>
次に、図4〜図6を参照しながら、抗酸化成分放出カセット80について具体的に説明する。
抗酸化成分放出カセット80は、収納袋86に収納され抗酸化成分を放出する抗酸化剤81と、抗酸化剤81を内包した収納袋86を収容した樹脂容器82と、樹脂容器82の内部の抗酸化剤81の抗酸化成分をその外部空間に導いて放出する紙85とを備えて構成されている。
【0042】
紙85は、和紙や不織布などで形成され、通気性を有している。
抗酸化剤81は、食品中の栄養成分が空気中の酸素により酸化される前に酸化することにより、食品中の栄養成分の酸化を防止するものである。したがって、抗酸化剤81は、非常に酸化されやすい物質からなる。このように、抗酸化剤81は、食品に触れるため、人体に対する安全性に配慮して、ビタミンC、ビタミンE及び酵素処理ルチンなど栄養成分を含む自然食品に含有する酸化防止剤、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)やトコフェノール(ビタミンE)などが用いられる。
【0043】
樹脂容器82は、上面が開口され抗酸化剤81を内包した収納袋86を収容する箱状の樹脂容器本体83と、樹脂容器本体83の上面の開口を覆う略平板状の樹脂容器蓋84とを具える。
樹脂容器本体83は、上面が開口された平らな箱状の形状を呈しており、抗酸化剤81を内包した収納袋86を収容する箱部83hと、その周囲に形成され樹脂容器蓋84に対向するフランジ部83fとを有している。
【0044】
樹脂容器蓋84は、中央部に外方に突出して形成され紙85が嵌入される突出凹部84bと、突出凹部84bの短手方向に延設される平板状の平板部84pとを有している。
紙85は、樹脂容器蓋84の突出凹部84bに嵌入され、抗酸化剤81を内包した収納袋86を箱部83hに収容した樹脂容器本体83のフランジ部83fに挟持される。そして、樹脂容器本体83のフランジ部83fと樹脂容器蓋84の平板部84pとが熱溶着等で固定される。
【0045】
これにより、樹脂容器本体83の周縁部のフランジ部83fと樹脂容器蓋84の周縁部の平板部84pとを重畳して、当該両周縁部を紙85が介在された部分を除いて全周に亘って接合している。
【0046】
紙85は、樹脂容器蓋84の突出凹部84b内に全長に亘って配置され、両端部の端縁部分85tが突出凹部84bの端縁から樹脂容器82の外部に臨んでいる。
これによって、樹脂容器82内に配置された抗酸化剤81から放出される抗酸化成分は、挟持された紙85の突出凹部84bから露出する端縁部分85t、85t(図6参照)のみを通して樹脂容器82の外部空間である低圧室24の内部空間に放出される。
【0047】
したがって、低圧室24内への抗酸化成分の放出率は、紙85の挟持部の端縁部分85tの断面積(換言すれば、紙85の厚みまたは幅)、および紙85の挟持部における長さを調整することにより容易に調整することができる。
【0048】
図7は、実施形態の低圧室の天井壁に抗酸化成分放出カセットを配設した例を示す低圧室を斜め上前方から見た斜視図である。
図7に示すように、抗酸化剤81を有する抗酸化成分放出カセット80は、低圧室24の天井壁40tに配置することも可能である。これにより、低圧室24の収納容積を狭くすることなく、また、ユーザに目視されることなく、抗酸化成分放出カセット80を低圧室24の内部に配設することが可能である。
【0049】
<蓄冷材(アルミニウム製トレイ51)>
次に、低圧室24に保存される食品の乾燥防止と抗酸化成分のビタミンCの放出を補助する蓄冷材の詳細について説明する。
抗酸化成分を効果的に放出するためには、低圧室24内が高湿になる必要がある。しかし、従来、高湿にするための水分は低圧室24に保存された食品から蒸発したものに依る。
【0050】
ところで、低圧室24は、図1、図2に示すように、冷蔵庫1のほぼ中央に位置する場所に配置されており、非常に食品の出し入れがし易い位置になっている。また、低圧室24は、低圧で食品が保存されるので食品中の栄養成分が空気中の酸素と反応し酸化劣化しにくいため様々な食品が収納される。換言すれば、低圧室24は、いろいろな食品が出し入れされる場所(貯蔵室)である。
【0051】
したがって、冷蔵室扉6を開ける回数にほぼ等しく図2の低圧室24の低圧室ドア50が開閉される。前記したように、低圧室24は前後に食品を出し入れすることにより食品の収納を行う場所であり、図1から明らかなように、容積も小さいため、低圧室ドア50の開閉により低圧室24内の水分が飽和状態になった空気は、大気中に放出され、低圧室ドア50を閉めるとまた湿度が低下した状態(乾いた状態)となる。
【0052】
このように、低圧室24の低圧室ドア50の開閉のたびに低圧室24内の食品から水分が蒸発することになる。食品の劣化の大きな要因の一つは乾燥であることから、このような弊害をなくすため、本冷蔵庫1では、低圧室24に蓄冷材を配置している。
【0053】
具体的には、図8に示すように、低圧室24の食品トレイ60の底面60tに熱伝導率の高い金属材料製である平板状のアルミニウム製トレイ51を設置した。図8は低圧室の食品トレイの底面にアルミニウム製トレイを設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
【0054】
アルミニウム製トレイ51は、樹脂製に比べて熱伝導率、熱容量が高いため蓄冷効果があり、低圧室24が一定の温度になるように制御された際に制御温度に冷却され、その温度の熱が蓄積される。つまり、アルミニウム製トレイ51は、低圧室24内の冷気を蓄えることができる。
低圧室24の低い温度で冷却されたアルミニウム製トレイ51は低圧室24の低圧室ドア50が開放されることにより大気圧下の常温に晒される。しかし、低圧室24の食品の出し入れの際、低圧室24の内部が常温の大気圧下に晒されてもアルミニウム製トレイ51の表面温度が常温まで素早く上昇することがない。これは、アルミニウム製トレイ51は熱伝導率、熱容量が高いため、蓄積されている冷熱がアルミニウム製トレイ51の内部から表面へと迅速に供給されるからである。
【0055】
一方、低圧室ドア50の開放により、低圧室24内部の飽和水蒸気は大気中に放出される。また、低圧室24の壁を構成するプラスチック構成部品表面は常温の空気により温度上昇する。これは、プラスチック構成部品は熱伝導率、熱容量が金属に比べて低いため、蓄積されている冷熱が表面に供給されにくいからである。
前記したように、アルミニウム製トレイ51は、自身の保冷効果(蓄冷効果)で温度上昇せず、低温のままである。外気の高温の方が露点温度は高く、低圧室24の内部の低温の方が露点温度は低いため、大気中の水分がアルミニウム製トレイ51表面に結露として付着する。
この状態のまま、低圧室24の食品の出し入れが終了すると低圧室ドア50が閉められ、低圧室24の内部空間は密閉空間となる。すると、負圧ポンプ29により低圧室24が減圧される。
【0056】
ここで、低圧室ドア50の閉塞直後、低圧室24内は飽和水蒸気圧まで達していなかったので、低圧室24内が水蒸気量の飽和状態になるまで、水が水蒸気となり蒸発する。このとき、アルミニウム製トレイ51が無い状態であれば、蒸発する水は食品中の水分となり食品の乾燥が進行する。
【0057】
しかしながら、アルミニウム製トレイ51が存在するので、アルミニウム製トレイ51の表面に付着した結露水が、食品中の水分より早く水蒸気となる。そのため、食品から水分が蒸発することが抑制され、食品を高湿で保存することが可能となる。
なお、アルミニウム製トレイ51よりさらに蓄冷効果の高い下記の蓄冷材52を用いてもよい。
【0058】
<蓄冷材52>
図9、図10に蓄冷材52を低圧室24に配置した例を示す。
図9は、蓄冷材を低圧室の内部中央に設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
図9に示すように、蓄冷材52を低圧室24の内部中央に設置してもよい。蓄冷材52は保冷効果が高いため、食品が置かれる下に載置すれば、食品を冷却する補助にもなる。
【0059】
しかし、蓄冷材52の上に食品が置かれてしまったまま、低圧室ドア50を開閉すると、庫外の大気中の水分を蓄冷材52の表面に結露として集めにくくなる。
図10は、蓄冷材を低圧室の端部に設置した場合を示す低圧室の内部を斜め上前方から見た斜視図である。
【0060】
そこで、図10に示すように、蓄冷材52を低圧室24の端部に配置すると、蓄冷材52の上に食品が載ることが少なくなるため、蓄冷材52の表面に大気(外気)中の水分を結露として集めにくくなる問題が軽減される。
図9、図10に示す構成により、低圧室24内の食品の保冷補助をしつつ、低圧室ドア50の開閉により水分を強制的に低圧室24の蓄冷材52に集める効果が得られる。
【0061】
蓄冷材52の構成の一例を、図11を用いて説明する。図11は、蓄冷材の分解状態を示す斜視図である。
蓄冷材52は、蓄冷材成分を袋詰め(充填)した収納体54を2つの蓄冷材カバー53で覆う構造である。
【0062】
蓄冷材成分は塩類と水の混合成分が一般的であり、凍結点以上の温度では液体もしくはゲル状の成分である。したがって、低圧室24内で立てかけたり、仕切りにすることは形状が柔らかいため難しい。そこで、例えば図11に示すように、液体またはゲル状の蓄冷材成分を袋詰め(充填)して収納体54とし、収納体54を硬い容器の蓄冷材カバー53、53に収納する(図11の白抜き矢印参照)ことにより、低圧室24内で立てかけたり、仕切りにすることが可能となる。
なお、直接、樹脂容器に蓄冷材成分を充填してもよいが、この場合、樹脂容器に充填する蓄冷材成分に対するシール性をもたせることにより使用中に内容物が漏出することを回避できる。
【0063】
蓄冷材カバー53は、樹脂、金属のうちの少なくとも何れかで形成されている。金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、スレンレス等が挙げられ、樹脂としては、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)、ABS樹脂(Acrylonitrile-Ethylene-Styrene resin)等が挙げられるが限定されない。
【0064】
図12(a)は、蓄冷材を設置するための蓄冷材スタンドを示す斜視図であり、図12(b)は、蓄冷材スタンドに蓄冷材を設置した状態を示す斜視図である。
また、低圧室24の蓄冷材52が低圧室24の仕切りになるように、蓄冷材52を仕切りのように配置するために、図12(a)に示す蓄冷材スタンド55を設ける。
蓄冷材スタンド55は、中央部に横断面凹状で長手方向に延在する蓄熱材嵌合部55kと、蓄熱材嵌合部55kの下端部から外方にそれぞれ短手方向に延在して蓄冷材スタンド55を立設するための平板状のスタンド部55s1、55s2とが形成されている。
【0065】
そして、図12(b)に示すように、低圧室24において、蓄冷材スタンド55の蓄熱材嵌合部55kに、図11で組み立てた蓄熱材52を嵌入する。
これにより、低圧室24において、食品が蓄熱材52に重畳することがなくなり、蓄熱材52が食品の下敷きにならない。そのため、蓄熱材52による水分を集める効果と食品の保冷効果とを得ることができる。
【0066】
或いは、蓄熱材52を低圧室24の天井に配置してもよい。
図1に示すように、低圧室24の温度制御を行うため、低圧室24の下側にはヒータ43が配置されている。したがって、蓄冷材52がヒータ43により温まってしまう可能性もあるため、低圧室24の天井に蓄冷材52を配置することにより、冷蔵室棚20と低圧室24との間を通過する冷気の熱を効果的に利用して蓄冷材52を冷却できる。そのため、低圧室ドア50を開けた時に、低温の低圧室24内の方が外気より露点温度が低いので、外気と低圧室24内の露点温度との差異により、大気中の水分を効果的に蓄冷材52に集める(結露させる)ことができる。
【0067】
次に、蓄冷材52を低圧室24内に配置するために、食品トレイ60に設けた蓄冷材位置決め用・底上げ用突起部56、57について説明する。
図13は蓄冷材の配置位置を決めるための蓄冷材位置決め用・底上げ用突起の位置関係を示す上面図であり、図14は図13のC−C線断面図である。
蓄冷材位置決め用突起56(56a、56b、56c、56d)は、蓄冷材52の4つの辺が収まるように設けられるとともに、蓄冷材底上げ用突起57(57a、57b、57c、57d)は蓄冷材52の四隅の底面が載るように形成されている。
【0068】
各蓄冷材位置決め用突起56(56a、56b、56c、56d)と各蓄冷材底上げ用突起57(57a、57b、57c、57d)は、それぞれ一体に形成されている。
一体にそれぞれ形成される蓄冷材位置決め用突起56(56a、56b、56c、56d)および蓄冷材底上げ用突起57(57a、57b、57c、57d)は、それぞれこれらのうちの少なくとも何れか(一部または全部)を連結して一体の成形物に構成してもよいし、図13、図14に示すように、互いに独立して構成してもよい。
【0069】
蓄冷材位置決め用突起56を蓄冷材52の4つの辺が収まるように設けることで、蓄冷材位置決め用突起56の内側に蓄冷材52を載置することにより、蓄冷材52の食品トレイ60の上での水平方向の位置ずれを抑制することができる。
【0070】
また、蓄冷材底上げ用突起57は、蓄冷材52の四隅の底面が載るように形成されることにより、蓄冷材52が食品トレイ60から浮いたような状態(食品トレイ60との間にスペースを空けた状態)(図14参照)で設置することができる。これにより、蓄冷材52における食品トレイ60と近接した(対向する)表面もその冷温により大気中の水分を凝縮する(結露する)効果が得られる。
【0071】
本構成に反し、蓄冷材底上げ用突起57を用いずに食品トレイ60の上に蓄冷材52を配置すると、トレイ60と蓄冷材52とが接触してしまい、低圧室ドア50を開けた際、大気(外気)と蓄冷材52との接する面積が上面および周囲の4側面と減少してしまう。
これに対し、本構成の蓄冷材底上げ用突起57を活用することにより、蓄冷材裏面52r(図14参照)を結露に活用でき、大気(外気)と蓄冷材52との接する面積が小さくなる問題を解決でき、効果的に結露させることができる。
【0072】
例えば、蓄冷材52の上に食品が載ってしまっても、蓄冷材52における食品が載った側と反対の蓄冷材裏面52rが食品トレイ60から浮いた状態(食品トレイ60との間にスペース(空隙)を有する状態)になっているため、蓄冷材裏面52rに大気(外気)中の水分を結露させることができ、低圧室24の内部の乾燥防止効果を有効に発揮できる。
【0073】
したがって、蓄冷材位置決め用・底上げ用突起部56、57により、蓄冷材52を低圧室24内に配置するとき、食品トレイ60に対し配置場所を明確にできる。また、低圧室24の食品の出し入れの際に蓄冷材52が意図せず動くことを防止でき、かつ蓄冷材表面の結露面積を効果的に活用することができる。
なお、蓄冷材位置決め用・底上げ用突起56、57はアルミニウム製トレイ51を蓄冷材位置決め用・底上げ用突起56、57に配置した場合も同様の効果が得られる。
【0074】
<アルミニウム製トレイ51による食品の乾燥防止効果>
次に、図15を用いて、蓄冷材のアルミニウム製トレイ51による食品の乾燥防止効果の詳細について説明する。
図15は、下記の条件でアルミニウム製トレイ51の有無による食品の水分保持率を比較したものである。
【0075】
低圧室24の中にアルミニウム製トレイ51を配置した冷蔵庫1と従来のアルミニウム製トレイ51の無い低圧室24を備えた冷蔵庫を用意する。そして、各低圧室24に予め重量を同一に調整したカット野菜を保存し、保存した状態のまま、各低圧室24の扉開閉をそれぞれ10回/日を3日間行い、72時間後のカット野菜の重量減少率で食品乾燥防止効果を比較した結果である。
【0076】
図15の縦軸が野菜の水分保持率を示し、符号70がアルミニウム製トレイ有りの野菜の水分保持率、符号71がアルミニウム製トレイ無しの水分保持率である。
アルミニウム製トレイ有り70とアルミニウム製トレイ無し71を比較すると、明らかにアルミニウム製トレイ有りの方が、水分が残留しており、アルミニウム製トレイ51の存在により、低圧室24の中のカット野菜の乾燥が抑制できたことが判る。
【0077】
上記実施形態の構成を纏めると、複数の貯蔵室(2、3、4、5)と、冷凍サイクルとを有し、冷凍サイクルからの冷気を複数の貯蔵室(2、3、4、5)へ導く冷気通路(30tなど)が形成される冷蔵庫1において、複数の貯蔵室の少なくとも一部に蓄冷材52(アルミニウム製トレイ51)を配置した。
【0078】
蓄冷材52(51)を配置するのは、その内部を外気より低圧にする低圧にする低圧室24でも、他の貯蔵室(2、3、4、5)でもよい。
【0079】
低圧室24に蓄冷材52(51)を配置した場合、扉開操作により低圧室24内の外気温度まで冷やされた蓄冷材52は大気に晒されるが、その蓄冷効果により、直ちに温度上昇しない。このため、大気に含まれる水分を蓄冷材52(51)の表面に結露として集める(凝縮する)ことが可能である。
【0080】
こうして、蓄冷材52に結露したまま扉を閉塞することにより、食品から水分が蒸発する前に蓄冷材52表面の結露水が蒸発し、低圧室24の内部が飽和蒸気圧まで達する。扉開閉が繰り返されても、このような現象が繰り返されるため、結果として、扉開閉の繰り返しによる食品の乾燥の進行を抑制することができる。
【0081】
さらに好ましくは、蓄冷材は、熱伝導率の高い金属材料、例えばアルミニウム製トレイ51であることにある。
これにより、熱伝導率の高い金属材料製トレイは、プレス加工などで薄型(薄い板厚)に成形できるから、低圧室24に広い面積で設置しても低圧室24の収納容積を殆ど減少させなくできる。
【0082】
金属材料製トレイは、低圧室24に広い面積かつ薄い厚さで設置できることから、食品が熱伝導率の高い金属材料製トレイ表面を覆い、熱伝導率の高い金属材料製トレイ表面が大気に触れる面が少なくなっても、金属材料製トレイは元々広い面積を有するので、十分食品の乾燥防止効果が得られる。
これに加えて、熱伝導率の高い金属材料製トレイの吸熱効果により、低圧室24の扉を開けた際に温められた低圧室内の食品の熱を素早く吸収して、食品の冷却速度を向上することができる。これにより、食品の鮮度をより高く保つことができる。
なお、金属材料製トレイは、アルミニウム製トレイ51とすれば、廉価かつ防錆性があり、熱伝導率、熱容量が高く蓄熱効果が高いため、最も望ましい。
【0083】
さらに、用途により好ましくは、図5に示すように、蓄冷材52は、蓄冷剤成分を袋状の収納体54に充填し、収納体54に金属または樹脂またはその両方からなるケースの蓄冷材カバー53に収納するとよい。
【0084】
これにより、蓄冷材52の取り扱い中に誤って蓄冷材52を落下させても蓄冷材の内容物(蓄冷剤成分)がケースの蓄冷材カバー53の破損により飛び出す(漏出する)危険を少なくすることができる。そのため、蓄冷材52を冷蔵庫1の使用中(使用期間)、交換することなく使用することができる。
【0085】
さらに好ましくは、図13、図14に示すように、蓄冷剤52を設置面(食品トレイ60)から浮かせる(設置面との間にスペース(空隙)を空ける)ための支持部(冶具または突起)を設けたことにある。
これにより、蓄冷材52と設置面(食品トレイ60)との接触面積を減少でき、蓄冷材裏面52rも外気(大気)との接触面(結露面)とできる。そのため、蓄冷材52と外気(大気)との接触面積を大きくすることができ、より広い面に結露水を付着させることができ、効果的な食品の乾燥防止が可能である。
【0086】
特に、低圧室24の場合、大気圧より減圧してもリーク(空気の漏洩)により圧力が上がり、その都度、負圧ポンプ29による減圧が繰り返される。そのため、低圧室24の食品の乾燥がより進行する。しかしながら、低圧室24に載置した蓄冷材(蓄冷材52、アルミニウム製トレイ51)に結露した水分が蒸発することで、食品の乾燥が効果的に抑制される。
その結果、食品の乾燥が抑制されるため、食品表面の水分がバリアとなり、食品表面(空気と接触すると酸化される成分)と空気との接触が抑制される。そのため、食品の酸化が抑制される。
【0087】
よって、本冷蔵庫1によれば、蓄冷材を貯蔵室に載置することで、貯蔵室(密閉容器)内が飽和水蒸気圧になるまで貯蔵室内に保存された食品から水分が蒸発し続けることを抑制できる。
また、扉開操作により、飽和した水蒸気は大気中に放出されてしまうが、扉開閉の繰り返しによる食品の乾燥の進行を抑制できる。
また、蓄冷材と外気(大気)との接触面とを拡大することで、貯蔵される食品の温度を冷温に維持でき、鮮度向上を図ることが可能である。
【0088】
<<その他の実施形態>>
なお、前記実施形態においては、冷蔵庫のうち大気圧より低圧にする低圧室を例示して説明したが、低圧室以外の冷蔵温度帯の貯蔵室、野菜室、冷凍温度帯の冷凍室にも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態においては、蓄冷剤を袋に収納して金属または樹脂またはその両方からなるケースに収納した場合を例示したが、蓄冷剤を箱体などの袋以外の収納体に収納してもよく、蓄冷剤を収納する収納体は袋に限定されない。しかしながら、袋は蓄冷剤の形態の変化にフレキシブルに追随する形をとるので、最も望ましい。
【0089】
なお、前記実施形態においては、蓄冷材の金属製トレイの一例として、アルミニウム製トレイを例示して説明したが、ステンレス製トレイ、防錆処理をした金属製トレイなど熱伝導率等が高い蓄冷効果のある金属製トレイであれば、アルミニウム製に限定されない。
また、前記実施形態においては、蓄冷剤の設置面として、低圧室24の底面、上面を例示したが、蓄冷剤の設置面は、右側面、左側面、奧面でもよい。
【0090】
また、前記実施形態においては、様々な構成を説明したが、説明した構成を適宜組み合わせて構成してもよい。
なお、前記実施形態においては、冷凍室と冷蔵室とを備える冷蔵庫1を例示して説明したが、冷蔵室のみを備える冷蔵庫にも本発明は適用可能である。また、冷凍室のみを備える冷凍庫にも本発明は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 冷蔵庫
2 冷蔵室(貯蔵室)
3、4 冷凍室(貯蔵室)
5 野菜室(貯蔵室)
14 圧縮機(冷凍サイクル)
15 蒸発器(冷凍サイクル)
24 低圧室(一部の貯蔵室)
30 背面パネル(冷気通路)
30t 冷気通路
31 第1の冷気吐出口(冷気通路)
32 第2の冷気吐出口(冷気通路)
32o 冷気戻り口(冷気通路)
36、37、38 ダンパ(冷気通路)
41 ダンパ装置41(冷気通路)
51 アルミニウム製トレイ(金属製トレイ)
52 蓄冷材
53 蓄冷材カバー(ケース)
54 収納体
55 蓄冷材スタンド(立設支持部)
56 蓄冷材位置決め用突起(支持部、冶具または突起)
57 蓄冷材底上げ用突起(支持部、冶具または突起)
60 食品トレイ(設置面)
80 抗酸化成分放出カセット(抗酸化成分放出手段)
81 抗酸化剤
82 樹脂容器(抗酸化成分容器)
83 樹脂容器本体(抗酸化成分容器)
84 樹脂容器蓋(抗酸化成分容器)
85 紙
86 収納袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯蔵室と、当該複数の貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、前記冷凍サイクルからの冷気を前記複数の貯蔵室へ導く冷気通路が形成される冷蔵庫であって、
前記複数の貯蔵室の少なくとも一部の貯蔵室に、冷気を蓄えるための蓄冷材を
備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1記載の冷蔵庫において、
前記複数の貯蔵室の少なくとも一部の貯蔵室は、その内部が大気圧より低圧にされる低圧室である
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1記載の冷蔵庫において、
前記蓄冷材は、金属製トレイである
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3記載の冷蔵庫において、
前記金属製トレイは、アルミニウム製トレイである
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1記載の冷蔵庫において、
前記蓄冷材は、蓄冷剤成分を収納体に充填し、前記収納体を金属または樹脂またはその両方からなるケースに収納したものである
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
請求項1記載の冷蔵庫において、
前記蓄冷材の設置場所を前記貯蔵室の底面とした
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項7】
前記1記載の冷蔵庫において、
前記蓄冷材を設置面との間にスペースを空けるための支持部を設けた
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項8】
前記1記載の冷蔵庫において、
前記蓄冷材の延在面を、前記一部の貯蔵室の当該蓄冷材の設置面に対して交差するように立設させる立設支持部を設けた
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項9】
前記1から請求項8の何れか一項記載の冷蔵庫において、
収納袋に収納され抗酸化成分を放出する抗酸化剤と、該抗酸化剤を内包した収納袋を収容した抗酸化成分容器と、当該抗酸化成分容器の内部の抗酸化剤の抗酸化成分をその外部空間に導いて放出する紙とを有する抗酸化成分放出手段を備える
ことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項10】
複数の貯蔵室と、当該複数の貯蔵室を冷却する冷凍サイクルとを備え、前記冷凍サイクルからの冷気を前記複数の貯蔵室へ導く冷気通路が形成される冷凍庫であって、
前記複数の貯蔵室の少なくとも一部の貯蔵室に、冷気を蓄えるための蓄冷材を
備えたことを特徴とする冷凍庫。
【請求項11】
請求項10記載の冷凍庫において、
前記蓄冷材は、金属製トレイである
ことを特徴とする冷凍庫。
【請求項12】
請求項10記載の冷凍庫において、
前記蓄冷材は、蓄冷剤成分を収納体に充填し、前記収納体を金属または樹脂またはその両方からなるケースに収納したものである
ことを特徴とする冷凍庫。
【請求項13】
前記10記載の冷凍庫において、
前記蓄冷材を設置面との間にスペースを空けるための支持部を設けた
ことを特徴とする冷凍庫。
【請求項14】
前記10から請求項13の何れか一項記載の冷凍庫において、
収納袋に収納され抗酸化成分を放出する抗酸化剤と、該抗酸化剤を内包した収納袋を収容した抗酸化成分容器と、当該抗酸化成分容器の内部の抗酸化剤の抗酸化成分をその外部空間に導いて放出する紙とを有する抗酸化成分放出手段を備える
ことを特徴とする冷凍庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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