説明

冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法

【課題】冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を確実に診断可能な冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムを提供する。
【解決手段】冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部17を内蔵または外付けの形式で備え、制御部10において、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内においてあらかじめ定めた計測時間毎に電力計測部17により計測された消費電力量に基づいて、前記計測時間帯内におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサ16の延べ運転時間が前記計測時間帯の延べ時間に占める比率を各日毎の診断用比率として算出し、算出した前記診断用比率をあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する。前記基準値に用いる比率として、例えば、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する前記診断用比率の平均値すなわち新品時診断用比率を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷蔵庫は、冷蔵室および冷凍室内の庫内温度を周囲温度よりも低く維持するために、それら冷蔵室および冷凍室内の熱を吸収して外部に放出させるという冷凍サイクルを用いて構成されている。該冷凍サイクルは、低圧ガスの冷媒を圧縮して高温高圧ガスにするコンプレッサ(圧縮機)と、コンプレッサからの高温高圧ガス状の冷媒を凝縮して液化させる凝縮器と、凝縮器からの高圧の液冷媒を減圧する膨脹バルブと、膨脹バルブからの液冷媒を気化させて冷気を発生する蒸発器と、により構成され、冷媒を圧縮→凝縮(液化)→減圧→蒸発(気化)→圧縮と連続的に状態変化させ、液体と気体との相変化時における熱エネルギーを利用して冷凍を行うものである。
【0003】
また、冷蔵庫は、冷蔵室や冷凍庫内の庫内温度をサーモスタットにより検知してコンプレッサを発停する制御を自動的に行う一定速コンプレッサ型冷蔵庫が一般的であり、冷蔵室および冷凍室内の庫内温度が所望の設定温度に達していないことをサーモスタットにより検知すると、コンプレッサを駆動して前述のような冷凍サイクルを起動させ、而して、蒸発器により生成された冷気が、冷却ファンによって冷凍室および冷蔵室を循環しながら冷凍室および冷蔵室を冷却することにより、庫内温度を所望の設定温度にまで冷却し、貯蔵している食料品等の新鮮さを維持するようにしている。
【0004】
しかし、冷凍サイクルに何らかの異常が発生して、冷蔵室や冷凍室の庫内温度の設定が正しく行われなくなると、冷蔵室や冷凍室内に貯蔵されている食料品等の新鮮度が低下して、最悪の場合は、食料品が腐敗してしまうということも起こり得る。
【0005】
かかる問題を解決するために、特許文献1の特開2002−90020号公報「冷蔵庫の自己診断システムおよび自己診断方法」においては、冷蔵庫内に庫内温度を感知して外部に出力する温度感知部(温度センサ)とコンプレッサの運転状況を把握して記録する記録部とを備え、温度感知部によって庫内温度の上昇を感知した場合に、記録部に記録したコンプレッサの運転状況と突き合わせることによって、冷蔵庫の故障を診断するという自己診断方法を提案している。
【0006】
つまり、該特許文献1においては、図4に示すような自己診断システム100Aを運転制御機構として冷蔵庫に組み込むことを提案している。図4は、前記特許文献1における従来の冷蔵庫の自己診断システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
【0007】
図4に示す自己診断システム100Aは、マイクロコンピュータからなる制御部10、各種データを記録する記録部11、入力部12、表示部13、電源部14、温度感知部15、コンプレッサ16を少なくとも備えて構成されている。なお、前記特許文献1においては、これらの回路部の他に、冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を故障関連情報としてインターネットを介してサービスセンタに送信する機能も例示しているが、本発明とは直接関連しない機能であるので、ここでは、サービスセンタへの送信機能は省略して示している。
【0008】
制御部10は、自己診断システム100Aとして、冷蔵庫の故障を診断するための制御を行うとともに、冷蔵庫全体の動作を制御する。記録部11は、冷蔵庫の故障状態と関連する情報として、庫内温度やコンプレッサ16の運転状況等のデータをあらかじめ記録している。
【0009】
入力部12は、冷蔵庫の操作ボタンやダイヤルやタッチパネル等の操作により入力されたユーザの要求に応じて各種の要求信号を制御部10に対して出力する。
【0010】
表示部13は、制御部10からの制御により、冷蔵室および冷凍室の現在状態(温度)や冷蔵庫の故障状況やサービスマンの連絡先等を液晶画面やタッチパネル付き画面や表示ランプ等に表示する。電源部14は、交流電源を冷蔵庫の各部位に供給する。
【0011】
温度感知部15は、温度センサを利用して冷凍室および冷蔵室内の庫内温度を感知して感知信号を制御部10に対して出力する。コンプレッサ16は、制御部10からの制御により、あるいは、サーモスタットによる庫内温度の検知結果により、モータが起動されて、庫内温度を設定温度にまで冷却するために、低圧ガスの冷媒を圧縮して得られた高温高圧のガス状の冷媒を冷凍サイクルとして循環させる。
【0012】
以上のような構成の冷蔵庫に故障が発生したとき、入力部12からのユーザの要求に応じて、制御部10が自己診断機能の実施状態に設定されていると、制御部10は、温度感知部15によって感知された冷蔵室や冷凍室の庫内温度、および、コンプレッサ16の駆動状態に基づいて、記録部11の故障関連情報を検索して、冷蔵庫の故障発生の有無を判断する。冷蔵庫に故障が発生していないと判断した場合には、そのまま、冷蔵庫の運転を継続するが、故障が発生していると判断した場合には、表示部13に故障発生の旨を表示するとともに、インターネットを介して、サービスセンタにその旨を通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−90020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般に、冷蔵庫は、長期間に亘る使用により、冷蔵庫が正常に動作しなくなる故障の発生に先立って、冷蔵庫の冷却性能が徐々に劣化していく。すなわち、ドアパッキンの劣化による冷気漏れ、冷蔵庫本体の劣化による冷却性能の低下等の問題が発生する。冷蔵庫の冷却性能が劣化すると、冷蔵庫の冷凍サイクルを駆動するコンプレッサの運転時間が長くなっていく。したがって、冷蔵庫の消費電力量も大きくなっていく。
【0015】
さらに、前記特許文献1に記載されているような自己診断機能および故障発生時の警報発出機能が冷蔵庫に備えられていない場合、冷蔵庫を使用するユーザは、冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する問題には気付き難く、冷却性能の劣化がかなり進んで、冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室内に貯蔵した食料品等の冷却に予想外の時間がかかったり、あるいは、冷蔵庫の電気代が異常に増加したり、あるいは、冷蔵庫が突然動作しなくなったりするなどの契機によって、初めて、ユーザは冷蔵庫の冷却性能の劣化や故障に気付くことになる。
【0016】
また、前記特許文献1に記載のような冷蔵庫の自己診断システムを有している冷蔵庫であっても、冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室内の庫内温度に基づいて故障の有無を判断するような仕組みを採用しているので、冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室内の庫内温度が異常発生の通知を要する状態になっていることが温度感知部において感知された時点では、既に、冷蔵庫の冷却性能の大幅な劣化や故障が発生した状態になっていて、冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室内に貯蔵している食料品等が傷み始めて手遅れ状態になっている場合が多い。
【0017】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、長期間に亘る使用によって徐々に進行していく冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を確実に診断することができる仕組みを有する冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前述の課題を解決するためになされたものであり、以下のごとき各技術手段から構成されている。
【0019】
第1の技術手段は、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムであって、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部を内蔵または外付けの形式で備え、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内においてあらかじめ定めた計測時間毎に前記電力計測部により計測された消費電力量に基づいて、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサの延べ運転時間が前記計測時間帯の延べ時間に占める比率を各日毎の診断用比率として算出し、算出した前記診断用比率をあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することを特徴とする。
【0020】
第2の技術手段は、前記第1の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記基準値に用いる比率として、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する新品時診断用比率を用い、該新品時診断用比率は、新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間としてあらかじめ定めた一定期間において、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に前記電力計測部により計測された冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された各日毎の前記診断用比率の前記予備計測期間における平均値であることを特徴とする。
【0021】
第3の技術手段は、前記第2の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記予備計測期間における各計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量の平均値にあらかじめ定めた余裕倍率を乗じた消費電力量を、コンプレッサが運転状態にあるか停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値とし、かつ、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に前記電力計測部により計測された冷蔵庫の消費電力量が、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合、コンプレッサは運転状態にあると判定し、かつ、運転状態にあると判定した前記計測時間の時間間隔をコンプレッサの動作時間として割り当てて、割り当てた前記計測時間毎のコンプレッサの動作時間を前記計測時間帯に亘って積算することにより、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ動作時間を推定することを特徴とする。
【0022】
第4の技術手段は、前記第2または第3の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記予備計測期間経過後の運用期間における前記診断用比率を前記新品時診断用比率と比較し、前記診断用比率が、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能に関してユーザに注意を喚起すべき状態であることを示す「注意状態」を表示部に表示し、また、複数日に亘って連続して、前記新品時診断用比率の前記第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨をユーザに警告すべき状態であることを示す「警戒状態」を表示部に表示し、さらに、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上となった場合、冷却性能が確実に劣化している状態であることを示す「劣化状態」を表示部に表示することを特徴とする。
【0023】
第5の技術手段は、前記第1ないし第4の技術手段のいずれかに記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記計測時間帯として、冷蔵庫の消費電力量の計測環境に擾乱を与えることがない時間帯を任意に選択して設定することを特徴とする。
【0024】
第6の技術手段は、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法であって、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内においてあらかじめ定めた計測時間毎に計測された消費電力量に基づいて、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサの延べ運転時間が前記計測時間帯の延べ時間に占める比率を各日毎の診断用比率として算出し、算出した前記診断用比率をあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することを特徴とする。
【0025】
第7の技術手段は、前記第6の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記基準値に用いる比率として、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する新品時診断用比率を用い、該新品時診断用比率は、新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間としてあらかじめ定めた一定期間において、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された各日毎の前記診断用比率の前記予備計測期間における平均値であることを特徴とする。
【0026】
第8の技術手段は、前記第7の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記予備計測期間における各計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量の平均値にあらかじめ定めた余裕倍率を乗じた消費電力量を、コンプレッサが運転状態にあるか停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値とし、かつ、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量が、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合、コンプレッサは運転状態にあると判定し、かつ、運転状態にあると判定した前記計測時間の時間間隔をコンプレッサの動作時間として割り当てて、割り当てた前記計測時間毎のコンプレッサの動作時間を前記計測時間帯に亘って積算することにより、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ動作時間を推定することを特徴とする。
【0027】
第9の技術手段は、前記第7または第8の技術手段に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記予備計測期間経過後の運用期間における前記診断用比率を前記新品時診断用比率と比較し、前記診断用比率が、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能に関してユーザに注意を喚起すべき状態であることを示す「注意状態」を表示部に表示し、また、複数日に亘って連続して、前記新品時診断用比率の前記第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨をユーザに警告すべき状態であることを示す「警戒状態」を表示部に表示し、さらに、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上となった場合、冷却性能が確実に劣化している状態であることを示す「劣化状態」を表示部に表示することを特徴とする。
【0028】
第10の技術手段は、前記第1ないし第9の技術手段のいずれかに記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記計測時間帯として、冷蔵庫の消費電力量の計測環境に擾乱を与えることがない時間帯を任意に選択して設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法によれば、冷蔵庫の消費電力量の計測結果に基づいてコンプレッサの動作時間の冷蔵庫の動作時間に対する比率を把握して、あらかじめ定めた基準値と比較することによって、徐々に進行していく冷蔵庫の冷却能力の劣化程度を判定する仕組みを採用しているので、以下のごとき効果を奏することができる。
【0030】
すなわち、本発明においては、冷蔵庫が正常に動作していると想定される購入設置後の新品時の期間例えば1年間を、正常動作時の冷蔵庫の消費電力量を計測するための予備計測期間としてあらかじめ設定し、該予備計測期間における消費電力量を予備計測データとして収集して、収集した該予備計測データに基づいて、正常動作時におけるコンプレッサの運転時間の冷蔵庫の動作時間に対する比率を新品時診断用比率として算出しておき、予備計測期間経過後の運用期間において計測した冷蔵庫の消費電力量から、コンプレッサの動作時間冷蔵庫の動作時間に対する比率を算出して、正常動作時の基準値である新品時診断用比率と比較することによって、運用期間において使用年数の経過につれて、徐々に進行する冷蔵庫の冷却性能の劣化状態について診断することができ、該運用期間における冷却性能の劣化程度を、購入設置直後の新品時における正常状態から、注意状態→警戒状態→劣化状態へと順を追って確実に診断することができる。
【0031】
また、冷蔵庫本体に、診断用として、庫内温度を外部に出力する温度感知手段やコンプレッサ運転状態の直接的な把握手段等を備えることが不要であり、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部を内蔵または外付けで備えるだけで、該電力計測部により計測した消費電力量を用いて、直ちに、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムのブロック構成の一例を示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムの図2の動作に引き続く動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】従来の冷蔵庫の自己診断システムのブロック構成を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法の好適な実施形態について、その一例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、冷蔵庫の消費電力量の推移を把握することによって、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を確実に診断することができる仕組みを有する冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法に関するものであり、冷蔵庫の消費電力量の計測結果に基づいて、冷蔵庫のコンプレッサの運転時間を推定し、しかる後、推定した冷蔵庫のコンプレッサの運転時間が冷蔵庫の動作時間に占める比率を、冷却性能の劣化程度の診断を行うための診断用比率として算出して、算出した診断用比率を基準となる正常動作時(冷却性能の劣化がない時期)の比率と比較することによって、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断を行うことを可能とすることに、主要な特徴がある。
【0035】
つまり、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法は、次のような仕組みを備えている。
【0036】
まず、冷蔵庫の購入設置後、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時の期間例えば1年間を、正常動作時の冷蔵庫の消費電力量を計測するための予備計測期間としてあらかじめ定める。さらに、計測環境に擾乱がなく消費電力量を正確に計測することが可能となる時間帯例えば深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)を計測時間帯としてあらかじめ設定する。
【0037】
次に、あらかじめ定めた前記予備計測期間例えば1年間に亘って、あらかじめ設定した前記計測時間帯のあらかじめ定めた計測時間毎例えば10分毎における冷蔵庫の消費電力量を予備計測データとして計測することによって、冷蔵庫のコンプレッサの運転状態と停止状態とを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値を算出する。
【0038】
さらに、予備計測データとして計測した前記計測時間毎例えば10分毎の消費電力量を前記コンプレッサ運転状態識別用閾値と比較することにより、前記計測時間毎例えば10分毎のコンプレッサの運転状態と停止状態とを識別し、それぞれの前記計測時間例えば10分の時間間隔をコンプレッサの運転時間、停止時間として推定する。予備計測期間におけるすべての予備計測データについて積算したコンプレッサの延べ運転時間が冷蔵庫の合計動作時間(すなわち前記計測時間帯の延べ時間)に占める比率を、新品時診断用比率DRとして求めて保存しておく。新品時診断用比率DRは、新品の冷蔵庫として冷却性能の劣化がない正常動作時におけるコンプレッサの動作時間の比率であり、前記予備計測期間経過後の運用期間において、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する際の基準値となる比率である。
【0039】
しかる後、前記予備計測期間経過後の運用期間の1日毎に前記計測時間帯例えば深夜時間帯において、前記予備計測期間の場合と同様に、あらかじめ定めた前記計測時間毎例えば10分毎に冷蔵庫の消費電力量を計測して、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値と比較することにより、前記計測時間毎例えば10分毎のコンプレッサの運転状態と停止状態とを識別し、それぞれの前記計測時間例えば10分の時間間隔をコンプレッサの運転時間、停止時間として推定する。1日の前記計測時間帯例えば深夜時間帯のすべての計測データについて積算したコンプレッサの延べ運転時間が前記計測時間帯における冷蔵庫の動作時間(すなわち前記計測時間帯の延べ時間)に占める比率を、運用期間の或る1日における診断用比率DRとして算出する。
【0040】
次いで、算出した診断用比率DRと、基準値となる比率として保存しておいた、冷却性能の劣化がない正常動作時における新品時診断用比率DRと比較することによって、運用期間における冷却性能の劣化程度を診断する。
【0041】
例えば、算出した診断用比率DRが、予備計測期間における新品時診断用比率DRの第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上の比率になった場合には、ユーザに注意を促すべき「注意状態」になったものと判定し、連続した複数日以上例えば2日以上に亘って前記第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上の比率になった場合には、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高くなっていることをユーザに警告すべき「警戒状態」になったものと判定し、さらに、第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上の比率になった場合には、正常な動作状態にあることを示す新品時診断用比率DRからは大幅に離れた劣化状態に陥っているものとして、冷蔵庫の冷却性能が異常に低下した「劣化状態」になったものと判定する。
【0042】
かくのごとく、計測した消費電力量からコンプレッサの動作時間を把握し、把握したコンプレッサの動作時間に基づいて、使用年数の経過につれて、徐々に進行する冷蔵庫の冷却性能の劣化状態について診断し、冷却性能が極端に低下した故障状態に陥ってしまう事態に先立って、購入設置直後の新品時における正常状態から、注意状態→警戒状態→劣化状態へと順を追って、冷却性能の劣化程度を診断した結果をユーザに通知することができる。
【0043】
(本発明の実施形態)
次に、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法に実施形態について、その一例を説明する。ここで、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムおよび冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法が対象とする冷蔵庫は、冷蔵室や冷凍室の庫内温度を検知するサーモスタットによって、冷媒を圧縮して冷凍サイクルを起動するコンプレッサの発停を自動的に行うという一般的な一定速コンプレッサ型冷蔵庫であり、かかる冷蔵庫に対して、前述したように、冷蔵庫の消費電力量を計測することによって、冷蔵庫のコンプレッサの運転状態を把握して、コンプレッサの運転時間が冷蔵庫本体の動作時間に占める比率(診断用比率DR:Diagnostic Ratio)を算出し、算出した診断用比率DRに基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化状態の診断を行う仕組みを実現している。
【0044】
これにより、冷蔵庫側に、サーモスタットによるコンプレッサ発停情報そのものを直接外部出力する手段や、冷蔵室や冷凍室内の庫内温度の検知結果を外部出力する手段を備える必要はなく、冷蔵庫の消費電力量を計測して診断用のデータとして外部出力する電力計測部を備えているだけで、容易に、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を確実に診断することを可能にしている。
【0045】
具体的には、本実施形態における冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムは、図1に示すようなブロック構成から構成されている。図1は、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムのブロック構成の一例を示すブロック構成図であり、図4に示した従来の冷蔵庫の自己診断システム100Aにおける温度感知部15の代わりに、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部17が備えられている。
【0046】
制御部10は、マイクロプロセッサからなり、制御プログラムの動作により、冷却性能劣化診断システム100として、冷蔵庫の冷却性能の劣化を診断するための制御を行うとともに、冷蔵庫全体の動作を制御する。
【0047】
記録部11は、あらかじめ定めた予備計測期間中におけるあらかじめ設定した計測時間帯例えば深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)においてあらかじめ定めた計測時間(例えば10分)毎に計測した冷蔵庫の消費電力量を予備計測データとして蓄積したり、コンプレッサ16の運転状態と停止状態とを識別するために算出したコンプレッサ運転状態識別用閾値を保存したりする。
【0048】
さらに、記録部11は、予備計測期間における新品時の冷蔵庫として冷却性能が正常に動作している状態における診断用比率(コンプレッサ16の運転時間が冷蔵庫の動作時間に占める比率)を基準となる比率として算出した結果である新品時診断用比率DR0を保存したり、運用期間の前記計測時間帯例えば深夜時間帯における計測時間毎に計測した冷蔵庫の消費電力量を蓄積したり、運用期間における冷却性能の劣化程度を評価するために算出した診断用比率DR1を保存したり、診断用の各種データ(例えば、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を評価するために新品時診断用比率DR0に掛け合わせる第1の倍率閾値例えば1.2倍や第2の倍率閾値例えば1.4倍等のデータ)をあらかじめ記録したりする。
【0049】
入力部12は、図4の場合と同様、冷蔵庫の操作ボタンやダイヤルやタッチパネル等の操作により入力されたユーザの要求に応じて各種の要求信号を制御部10に対して出力する。
【0050】
表示部13は、制御部10からの制御により、冷蔵室および冷凍室の現在状態(温度)や冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を液晶画面やタッチパネル付き画面や表示ランプ等に表示する。電源部14は、図4の場合と同様、交流電源を冷蔵庫の各部位に供給する。
【0051】
コンプレッサ16は、制御部10からの制御により、あるいは、サーモスタットによって冷蔵室や冷凍室の庫内温度を測定した結果に基づいて、発停が自動的に制御され、モータの駆動が制御されて、庫内温度を設定温度にまで冷却するために、低圧ガスの冷媒を圧縮して得られた高温高圧のガス状の冷媒を冷凍サイクルとして循環させたり、停止させたりして、冷蔵室や冷凍室の庫内温度を、所望の設定温度に維持するように動作する。
【0052】
また、本実施形態における冷却性能劣化診断システム100において新たに備えられている電力計測部17は、制御部10からの制御により、冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ定めた計測時間毎(例えば10分毎)に計測して、計測した消費電力量を制御部10に対して出力する。ここで、電力計測部17は、冷蔵庫内にあらかじめ組み込まれて内蔵されている形式であっても良いし、あるいは、冷蔵庫に外付けする形式のものであっても良く、計測した冷蔵庫の消費電力量を制御部10に対して出力することが可能であれば、如何なる形式のものであっても構わない。
【0053】
以上のような構成からなる冷却性能劣化診断システム100においては、次のような仕組みにより、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断を行う。
【0054】
図1の冷却性能劣化診断システム100を備えた一定速コンプレッサ型の冷蔵庫は、一般に、冷蔵室や冷凍室の庫内温度が上昇して所望の設定温度を超えると、サーモスタットの検知結果によりコンプレッサ16が自動的に起動されて、冷蔵室や冷凍室の庫内を冷却し、冷蔵室や冷凍室の庫内温度が低下して所望の設定温度まで低下すると、サーモスタットによりコンプレッサ16の動作を自動的に停止させるという、間欠運転を行っている。
【0055】
ここで、もし、冷蔵庫の冷却性能の劣化が顕著になると、冷蔵室や冷凍室の庫内温度が所望の設定温度を超えて、サーモスタットの検知結果によりコンプレッサ16が自動的に起動されたとしても、冷蔵室や冷凍室の庫内温度がなかなか低下しないため、コンプレッサ16の運転時間が相対的に長くなり、冷蔵庫の消費電力量が増加する。したがって、冷蔵庫の消費電力量を監視することにすれば、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することが可能である。
【0056】
すなわち、図1の冷却性能劣化診断システム100においては、まず、冷蔵庫のドアの開閉等が生じることがなく、消費電力量の計測環境に擾乱を与えない時間帯としてあらかじめ設定した計測時間帯例えば深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)において、電力計測部17にてあらかじめ定めた計測時間(例えば10分)毎に冷蔵庫の消費電力量を計測して、その推移を記録部11に記録する。
【0057】
次いで、制御部10にて、記録部11に記録した消費電力量に基づいて、計測時間(例えば10分)毎のコンプレッサ16の運転状態を識別することによって、コンプレッサ16の運転時間を推定し、推定したコンプレッサ16の延べ運転時間が冷蔵庫本体の動作時間(すなわち計測時間帯の延べ時間)に対して占める比率を、冷却性能劣化を診断するための診断用比率DRとして算出して、記録部11に保存する。
【0058】
さらに、制御部10にて、算出した診断用比率DRを、冷却性能の劣化がない正常運転時に算出しておいた診断用比率(例えば、正常に動作していると想定される新品時の冷蔵庫の購入・設置からあらかじめ定めた一定期間を、正常動作時の消費電力量を基準データとして予備的に計測する予備計測期間として定め、該予備計測期間において計測した消費電力量に基づいて算出しておいた新品時の診断用比率)と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能劣化の進行度合いを診断する。すなわち、算出した診断用比率DRが正常運転時に算出しておいた診断用比率に比して大きければ大きいほど、コンプレッサ16の運転時間が長くなっていることを示しており、コンプレッサ16の運転時間が長ければ長いほど、冷蔵庫の冷却性能はより劣化が進んだ状態にあるものと診断する。
【0059】
かくのごとく、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部17を内蔵または外付けの形式で備えることによって、たとえ、コンプレッサ16の駆動制御を行うサーモスタットの発停情報(つまり庫内温度の検知結果やコンプレッサの運転状態)を制御部10に対して外部出力する手段を備えていない冷蔵庫であっても、冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を、容易に、かつ、確実に診断することができる。
【0060】
なお、冷蔵庫の消費電力量を計測する時間帯としてあらかじめ設定した計測時間帯については、以下の説明においては、前述に例示したような深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)を用いる場合について説明するが、本発明は、かかる場合に限るものではなく、冷却性能の劣化程度の診断用として、冷蔵庫のドアの開閉等が発生することもなく、消費電力量の計測を行う環境に擾乱を及ぼすことがない時間帯であれば、如何なる時間帯を選択して設定しても良いし、さらに、場合によっては、冷蔵庫を使用するユーザが、冷蔵庫へアクセスすることがない時間帯を任意に選択して設定するようにしても良い。
【0061】
(第1の実施形態)
まず、図1の冷却性能劣化診断システム100において、冷蔵庫の消費電力量の計測結果から推定されるコンプレッサ16の運転時間を用いて、冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を診断する仕組みについて、第1の実施形態として説明する。
【0062】
冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間が当該冷蔵庫本体の合計動作時間に占める比率を、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断を行うための比率すなわち「診断用比率DR(Diagnostic Ratio)」として定義する。すなわち、次の式(1)に示す診断用比率DRを用いて冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断を行う。
【0063】
診断用比率DR=T/T
:1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間
:1日の深夜時間帯における冷蔵庫の合計動作時間(すなわち、1日の
深夜時間帯の延べ時間)
ここで、1日の深夜時間帯とは、当該1日の冷却性能劣化の診断用として消費電力量を計測するための計測時間帯であり、1日の深夜時間帯において診断用比率DRの算出を行う理由は、前述したように、冷蔵庫のドアの開閉等による計測環境に対する擾乱要因を排除するためであり、ユーザが冷蔵庫にアクセスすることがないと想定される時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)を計測時間帯として用いるようにするためである。
【0064】
なお、コンプレッサ16の延べ運転時間については、例えば、以下の手順によって取得する。
【0065】
(1)消費電力量の予備計測
まず、冷蔵庫を購入して設置した後のあらかじめ定めた期間例えば1年間を、正常に動作しているものと想定される新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間として設定し、該予備計測期間に亘って、計測時間帯としてあらかじめ設定された深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)において、あらかじめ定めた計測時間(例えば10分)毎に、電力計測部17にて冷蔵庫の消費電力量を予備計測データとして計測する。
【0066】
(2)消費電力量の平均値の算出
次に、予備計測期間が経過した後、該予備計測期間に亘って計測された前記予備計測データの消費電力量の中から、計測された消費電力量における異常値を取り除くために、大き目の値にあらかじめ設定した消費電力量用の仮閾値(例50W)を超える予備計測データの消費電力量を除去して、該仮閾値以下の冷蔵庫の消費電力量をすべて選び出して、選び出した冷蔵庫の消費電力量についてその平均値(例えば3W)を求める。この冷蔵庫の消費電力量の平均値(例えば3W)は、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時の冷蔵庫の消費電力量の平均値である。
【0067】
(3)コンプレッサ運転状態識別用閾値の決定
次に、(2)の「消費電力量の平均値の算出」において求めた冷蔵庫の消費電力量の平均値(例えば3W)に対して、+20%ないし+30%程度の余裕を含む消費電力量(例えば3Wに対する+20%余裕値の3.6Wないし3Wに対する+30%余裕値の3.9W)を、コンプレッサ16が動作することによって消費電力量が平均値よりも増加する電力量の閾値として設定し、平均値に対して該余裕を含む消費電力量を、当該冷蔵庫のコンプレッサ16が運転状態にあるかまたは停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値として決定する。つまり、かくのごとき手順によって、コンプレッサ運転状態識別用閾値として決定した冷蔵庫の消費電力量(例えば3.6Wないし3.9W)を、コンプレッサ16の運転状態の有無を判定するための閾値として記録部11にあらかじめ登録する。
【0068】
つまり、各計測時間毎(例えば10分毎)に計測した冷蔵庫の消費電力量が、記録部11に登録したコンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合には、該当する計測時間の時間間隔の間はコンプレッサ16が運転状態にあるものと推定し、計測した消費電力量が、記録部11に登録したコンプレッサ運転状態識別用閾値未満の消費電力量であった場合には、該当する計測時間の時間間隔の間はコンプレッサ16は停止状態にあるものと推定する。
【0069】
(4)運用期間におけるコンプレッサ16の運転状況の調査
しかる後、予備計測期間例えば1年間を経過した以降の運用期間に達すると、計測時間帯としてあらかじめ設定された深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)において、あらかじめ定めた計測時間(例えば10分)毎に、冷蔵庫の消費電力量をコンプレッサ16の運転状況を把握するための計測データとして計測する。
【0070】
そして、計測時間毎に計測した冷蔵庫の消費電力量に関する計測データそれぞれを、(3)の「コンプレッサ運転状態識別用閾値の決定」において決定して、記録部11に登録しておいたコンプレッサ運転状態識別用閾値と比較した比較結果に基づいて、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転状態と停止状態とに振り分け、それぞれの計測時間(例えば10分)間隔を、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間と停止時間として割り当てる。
【0071】
(5)運用期間における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間の算出
さらに、各計測時間毎に割り当てられた冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間を、1日の計測時間帯である例えば深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に亘って積算することによって、1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出する。
【0072】
(6)運用期間における診断用比率DRの算出
(5)の「運用期間における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間の算出」により、1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出すると、前述の式(1)を用いて、診断用比率DRを算出することによって、冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間が冷蔵庫本体の合計動作時間(すなわち深夜時間帯の延べ時間)に占める比率を求める。ここで、一般に、診断用比率DRは、冷蔵庫の使用年数に応じて、徐々に大きくなっていくものであり、診断用比率DRが大きくなればなるほど、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間の割合が多くなり、冷蔵庫の冷却性能の劣化がより進行した状態にあるものと診断することができる。
【0073】
而して、徐々に大きくなっていく診断用比率DRを、基準値となる比率と比較することにより、冷却性能の劣化程度を判定して、ユーザに注意を促すべき「注意状態」と判定したり、ユーザに警告を与えるべき「警戒状態」と判定したり、冷蔵庫に貯蔵した食料品等の新鮮さを維持することができないほど冷却性能が低下してしまっていることをユーザに通報すべき「劣化状態」と判定したりすることができ、さらには、基準値となる比率を大幅に超えた場合には、当該冷蔵庫の冷却性能は限界値以上に劣化し、修理または交換を要するものと判定することができる。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、図1の冷却性能劣化診断システム100において、冷蔵庫の消費電力量の計測結果から推定されるコンプレッサ16の運転時間を用いて、冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を診断する他の仕組みについて、第2の実施形態として説明する。
【0075】
第2の実施形態においては、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断するために、第1の実施形態において説明した診断用比率DRの比較対象とする基準値となる比率として、冷却性能が劣化することなく正常に動作していると想定される新品時の冷蔵庫における診断用比率すなわち新品時診断用比率DRを用いる場合について示している。
【0076】
つまり、第2の実施形態においては、運用期間における診断用比率DRを、冷蔵庫が正常に動作していると想定される新品時における新品時診断用比率DRと比較することによって、運用期間における冷蔵庫の冷却性能の劣化が進行している程度を判定する。
【0077】
ここで、運用期間における冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を判定する手順としては、例えば、以下のような手順によって判定する。
【0078】
(1)予備計測期間内における冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間と停止時間との算出
第1の実施形態の「(1)消費電力量の予備計測」において計測時間(例えば10分)毎に計測された予備計測期間内における冷蔵庫の消費電力量それぞれについて、第1の実施形態の「(3)コンプレッサ運転状態識別用閾値の決定」において決定したコンプレッサ運転状態識別用閾値(すなわち、予備計測期間における冷蔵庫の消費電力量の平均値にさらに+20%ないし+30%程度の余裕を含む消費電力量(例えば平均値3Wに対する+20%余裕値の3.6Wないし平均値3Wに対する+30%余裕値の3.9W))に基づいて、第1の実施形態の「(4)運用期間における冷蔵庫の運転状況の調査」と同様の手法によって、予備計測期間内における冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間と停止時間とを求める。
【0079】
(2)新品時における新品時診断用比率DRの算出
さらに、第1の実施形態の「(5)運用期間における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間の算出」と同様の手法によって、予備計測期間内における各計測時間毎に求めた冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間を、予備計測期間内における1日の計測時間帯の深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に亘って積算することによって、1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出する。
【0080】
しかる後、算出した予備計測期間内における1日の深夜時間帯のコンプレッサ16の延べ運転時間と予備計測期間内における当該1日の深夜時間帯の冷蔵庫の動作時間(深夜時間帯の延べ時間)とを、第1の実施形態に示した式(1)に適用することによって、予備計測期間内における1日の診断用比率を算出する。
【0081】
かかる予備計測期間内における1日の診断用比率の算出処理を、予備計測期間内におけるすべての日について繰り返した後、すべての日について算出した診断用比率の平均値を求め、得られた予備計測期間内における診断用比率の平均値を、正常に動作している新品時における新品時診断用比率DRとして記録部11に登録する。
【0082】
(3)運用期間における診断用比率DRの算出
しかる後、冷蔵庫の購入設置後のあらかじめ定めた期間例えば1年間を経過した以降の運用期間において、第1の実施形態の「(4)運用期間におけるコンプレッサ16の運転状況の調査」および「(5)運用期間における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間の算出」と同様の手法によって、運用期間における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間を1日毎に算出し、算出した運用期間における1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間と運用期間内における1日の深夜時間帯の冷蔵庫の合計動作時間(深夜時間帯の延べ時間)とを、第1の実施形態に示した式(1)に適用することによって、運用期間における診断用比率DRを算出する。
【0083】
(4)運用期間における冷蔵庫の冷却性能の劣化の判定
運用期間の或る日において算出した診断用比率DRを先の「(2)新品時における新品時診断用比率DRの算出」において算出した新品時診断用比率DRと比較することによって、例えば以下のような冷蔵庫の冷却性能の劣化状態に関する判定を行う。
【0084】
(a)[運用期間における診断用比率DR]<1.2×[新品時診断用比率DR]の場合
運用中の冷蔵庫は正常な冷却性能の下で運転されている状態にあるものと判定する。
【0085】
(b)1.4×[新品時診断用比率DR]>[運用期間における診断用比率DR]≧1.2×[新品時診断用比率DR]の場合
運用中の冷蔵庫は、冷却性能の劣化が進行しつつある可能性があるとの評価結果ではあるものの、一方では、正常な冷却性能の状態にあるにも関わらず、本日は、たまたま、熱いものを冷まさずに冷蔵庫内に収納したために生じた事態であるかも知れないので、冷却性能の劣化が進行しつつある状態とは断定しないで、当日は、一旦、「注意状態」と表示部13に表示して、ユーザの注意を喚起するのみに留める。
【0086】
しかし、複数日に亘って連続して例えば翌日も連続して、1.4×[新品時診断用比率DR]>[運用期間における診断用比率DR]≧1.2×[新品時診断用比率DR]の関係となった場合には、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高いものとして「警戒状態」を表示部13に表示して、貯蔵した食料品等の新鮮さが失われる恐れがある旨をユーザに警告する。
【0087】
ここで、「注意状態」や「警戒状態」になった翌日以降において、[運用期間における診断用比率DR]<1.2×[新品時診断用比率DR]の状態に復帰した場合には、「注意状態」や「警戒状態」は解除される。
【0088】
(c)[運用期間における診断用比率DR]≧1.4×[新品時診断用比率DR]の場合
運用中の冷蔵庫は、冷蔵室や冷凍室内の庫内温度をあらかじめ設定した所定の温度に維持することができず、冷蔵庫のコンプレッサ16を、正常状態にあった新品時のコンプレッサ16の運転時間を大幅に超えて長い時間に亘って運転せざるを得ない状態になっており、貯蔵した食料品等の新鮮さを維持することができないほど、冷蔵庫の冷却性能の劣化が発生している異常状態に陥ったものと判定して、「劣化状態」を表示部13に表示してユーザに通報する。
【0089】
(冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断処理の詳細実施例)
次に、第2の実施形態として前述した冷蔵庫の冷却性能の劣化状況を診断する図1の冷却性能劣化診断システム100の動作例について、図2、図3に示すフローチャートを用いて、さらに詳細に説明する。
【0090】
図2は、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム100の動作の一例を示すフローチャートであり、図3は、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム100の図2の動作に引き続く動作の一例を示すフローチャートであり、本発明に係る冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法の一例を示している。
【0091】
なお、図2、図3のフローチャートにおいては、冷却性能の劣化がない正常な動作状態にあるものと想定される新品時の冷蔵庫に関する新品時診断用比率DRを、前述したように、冷却性能の劣化診断用の基準値となる比率として用いるために、予測計測期間としてあらかじめ設定した購入設置後の1年間に亘って、毎日の深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に、冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ定めた時間間隔として10分毎に計測した結果に基づいて算出する例を示している。
【0092】
また、図2、図3のフローチャートにおいては、購入設置から1年経過後の運用期間における診断用比率DRが、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値である例えば1.2倍以上に達した日が発生した場合には、「注意状態」である旨をユーザに通報し、翌日も連続して、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値である例えば1.2倍以上に達した場合には、「警戒状態」である旨をユーザに通報し、さらに、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値である例えば1.4倍以上に達した場合には、「冷却性能の劣化状態」が発生している異常状態に陥っている旨をユーザに通報する場合について示している。
【0093】
まず、図2において、冷蔵庫を購入して設置すると、予備計測期間として、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度の診断を行うための基準値を求める診断準備として、正常な動作を行っていると想定される新品時の冷蔵庫について、その消費電力量を計測した結果に基づいて、基準値となる比率すなわち新品時における新品時診断用比率DRを算出する処理を起動する(ステップS1)。
【0094】
次に、1年間に及ぶ該予備計測期間における各日の計測時間帯としてあらかじめ設定した時間帯例えば深夜時間帯(すなわち午前1時から6時までの時間帯)になったか否かをチェックする(ステップS2)。深夜時間帯になった場合には(ステップS2のYes)、計測時間としてあらかじめ定めた時間間隔例えば10分が経過する都度、冷蔵庫の消費電力量を電力計測部17にて計測する動作を合計30回(=(6回/1時間)×5時間)に亘って繰り返し(ステップS3)、しかる後、深夜時間帯(すなわち午前1時から6時までの時間帯)から抜け出すと(ステップS2のNo)、冷蔵庫の購入設置後1年間経過したか否か、すなわち、予備計測期間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。
【0095】
予備計測期間が経過していなかった場合は(ステップS4のNo)、ステップS2,S3に復帰して、計測時間帯としてあらかじめ設定した時間帯例えば深夜時間帯(すなわち午前1時から6時までの時間帯)における冷蔵庫の消費電力量の計測動作を繰り返す。
【0096】
一方、予備計測期間が経過した場合は(ステップS4のNo)、購入設置後の1年間に及ぶ毎日の深夜時間帯の冷蔵庫の消費電力量の予備計測を終了させて(ステップS5)、冷蔵庫のコンプレッサ16が運転状態にあるかまたは停止状態にあるかを判別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値を算出するために、次のステップS6に移行する。
【0097】
ステップS6においては、まず、予備計測期間に亘って計測された予備計測データの消費電力量の中から、予備計測データの消費電力量の異常値を除外するために、大き目の値にあらかじめ設定した消費電力量用の仮閾値(例えば50W)を超えるデータを除外して、該仮閾値を下回る予備計測データの消費電力量をすべて選び出す。しかる後、選び出した予備計測データの消費電力量、すなわち、予備計測期間内の計測時間帯における冷蔵庫の消費電力量についてその平均値(例えば3W)を求める(ステップS6)。
【0098】
次に、ステップS6において求めた冷蔵庫の消費電力量の平均値(例えば3W)に対して、あらかじめ定めた余裕倍率例えば1.3を乗じた消費電力量(例えば3Wに対する+30%余裕値の3.9W)を、コンプレッサ16が動作することによって消費電力量が平均値よりも増加する電力量の閾値として設定し、平均値に対して該余裕値を含む消費電力量を、当該冷蔵庫のコンプレッサ16が運転状態にあるかまたは停止状態にあるかを判別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値として決定する(ステップS7)。
【0099】
つまり、計測した冷蔵庫の消費電力量が、該コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合には、コンプレッサ16が運転状態にあるものと判定し、計測した消費電力量が、該コンプレッサ運転状態識別用閾値未満の消費電力量であった場合には、コンプレッサ16は停止状態にあるものと判定する(ステップS8)。
【0100】
次のステップS9において、冷却性能の劣化程度を診断するための基準値となる新品時診断用比率DRを算出するために、まず、予備計測期間において計測した予備計測データの中から第1日目の予備計測データつまり深夜時間帯における消費電力量を読み出す(ステップS9)。
【0101】
次いで、読み出した第1日目の10分毎の予備計測データつまり深夜時間帯における各消費電力量を、ステップS7において算出したコンプレッサ運転状態識別用閾値と比較し、予備計測データつまり深夜時間帯における各消費電力量が、コンプレッサ運転状態識別用閾値以上であった場合の計測時間間隔(例えば10分)を、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間として割り当て、コンプレッサ運転状態識別用閾値未満であった場合の計測時間間隔(例えば10分)を、冷蔵庫のコンプレッサ16の停止時間として割り当てる。
【0102】
つまり、計測時間毎に計測した冷蔵庫の消費電力量に関する予備測定データそれぞれを、ステップS7において算出したコンプレッサ運転状態識別用閾値と比較した比較結果に基づいて、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転状態と停止状態とに振り分け、それぞれの計測時間(例えば10分)の時間間隔を、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間と停止時間として割り当てる。
【0103】
しかる後、予備計測期間の1日(最初は第1日目)における各計測時間毎に求めた冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間を、1日の計測時間帯の深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に亘って積算することによって、1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出する(ステップS10)。
【0104】
ステップS10において予備計測期間の1日(最初は第1日目)の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出すると、次に、前述した式(1)を用いて、当該1日の深夜時間帯における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間が冷蔵庫本体の合計動作時間(深夜時間帯の延べ時間)に対して占める比率である当該1日(最初は第1日目)の診断用比率DRiを求める(ステップS11)。
【0105】
次いで、予備計測期間の次の日の予備計測データすなわち次の日の深夜時間帯における消費電力量を読み出す(ステップS12)。ここで、冷蔵庫購入設置後の予備計測期間例えば1年に相当する期間分例えば365日分の各日の診断用比率DRiを算出する処理が終了しているか否かを確認する(ステップS13)。
【0106】
冷蔵庫購入設置後の予備計測期間例えば1年に相当する期間分例えば365日分の各日の診断用比率DRiの算出処理が終了していない場合は(ステップS13のNo)、ステップS10に復帰して、予備計測期間の次の日の診断用比率DRiを算出する動作を繰り返す。
【0107】
これに対して、冷蔵庫購入設置後の予備計測期間例えば1年に相当する期間分例えば365日分の各日の診断用比率DRiの算出処理が終了した場合には(ステップS13のYes)、ステップS14に移行して、予備計測期間例えば1年分に相当する365日分の診断用比率DRiの平均値を求める。求めた診断用比率DRiの平均値は、正常に動作していると想定される新品時の冷蔵庫の場合の新品時診断用比率DRであり、この新品時診断用比率DRを、予備計測期間経過後の運用期間における冷却性能の劣化程度を診断するための基準値として決定して、記録部11に登録する(ステップS14)。
【0108】
以上で、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断するための予備計測処理が終了し、冷蔵庫の購入設置後の予備計測期間例えば1年間を経過した以降の運用期間における冷蔵庫の冷却性能に関する本診断を開始する(ステップS15)。
【0109】
運用期間においては、まず、予備計測期間の場合と同様、各日の計測時間帯としてあらかじめ設定した時間帯例えば深夜時間帯(すなわち午前1時から6時までの時間帯)になったか否かをチェックする(ステップS16)。深夜時間帯になった場合には(ステップS16のYes)、あらかじめ定めた計測時間例えば10分が経過する都度、冷蔵庫の消費電力量を電力計測部17にて計測する動作を合計30回(=(6回/1時間)×5時間)に亘って繰り返す(ステップS17)。
【0110】
しかる後、深夜時間帯(すなわち午前1時から6時までの時間帯)から抜け出すと(ステップS17のNo)、計測時間毎例えば10分毎の計測データつまり深夜時間帯における各消費電力量を、ステップS7において算出したコンプレッサ運転状態識別用閾値と比較し、該比較結果に基づいて、計測データつまり深夜時間帯における各消費電力量が、コンプレッサ運転状態識別用閾値以上であった場合の計測時間間隔(例えば10分)を、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間として割り当て、コンプレッサ運転状態識別用閾値未満であった場合の計測時間間隔(例えば10分)を、冷蔵庫のコンプレッサ16の停止時間として割り当てる。
【0111】
つまり、計測時間毎に計測した冷蔵庫の消費電力量に関する測定データそれぞれを、ステップS7において算出したコンプレッサ運転状態識別用閾値と比較した比較結果に基づいて、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転状態と停止状態とに振り分け、それぞれの計測時間(例えば10分)の時間間隔を、冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間と停止時間として割り当てる。
【0112】
しかる後、運用期間における1日の各計測時間毎に求めた冷蔵庫のコンプレッサ16の運転時間を、1日の計測時間帯の深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に亘って積算することによって、1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出する(ステップS18)。
【0113】
ステップS18において運用期間の1日の深夜時間帯におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を算出すると、図2から図3のフローチャートに移行して、前述した式(1)を用いて、運用期間の1日の深夜時間帯における冷蔵庫のコンプレッサ16の延べ運転時間が冷蔵庫本体の合計動作時間(深夜時間帯の延べ時間)に対して占める比率である当該1日の診断用比率DRを求める(ステップS19)。
【0114】
次いで、ステップS19にて算出した運用期間における診断用比率DRが、ステップS14にて算出した新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上になっているか否か、すなわち、
[運用期間における診断用比率DR]≧1.2×[新品時診断用比率DR
の関係になっているか否かを確認する(ステップS20)。
【0115】
運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上になっていなかった場合は(ステップS20のNo)、ステップS27に移行するが、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上になっている場合は(ステップS20のYes)、ステップS21に移行する。
【0116】
ステップS27においては、冷蔵庫のステータスが、前日までの診断結果として運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上に既になっていたために、「注意状態」または「警戒状態」に設定されていたか否かを確認する(ステップS27)。冷蔵庫のステータスが「注意状態」または「警戒状態」に設定されていなかった場合は(ステップS27のNo)、当日の冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する診断動作を終了して、翌日の深夜時間帯の消費電力量の計測動作に移行するために、ステップS16に復帰する(ステップS29)。
【0117】
また、冷蔵庫のステータスが「注意状態」または「警戒状態」に設定されていた場合は(ステップS27のYes)、当日の判定結果においては、冷蔵庫のステータスとして「注意状態」または「警戒状態」が解除された正常な状態に復帰したものと判断して、設定されている「注意状態」または「警戒状態」を解除した後(ステップS28)、当日の冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する診断動作を終了して、翌日の深夜時間帯の消費電力量の計測動作に移行するために、ステップS16に復帰する(ステップS29)。
【0118】
一方、ステップS21に移行すると、まず、既に複数の日数に亘って例えば2日に亘って連続して、[運用期間における診断用比率DR]≧1.2×[新品時診断用比率DR]の関係になっていて、冷蔵庫のステータスとして、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨を示す「警戒状態」に既に設定されている状態にあるか否かを確認する(ステップS21)。冷蔵庫のステータスが「警戒状態」に既に設定されていた場合は(ステップS21のYes)、ステップS30に移行するが、冷蔵庫のステータスが「警戒状態」に設定されていなかった場合(ステップS21のNo)、ステップS22に移行する。
【0119】
ステップS30においては、冷蔵庫のステータスが既に「警戒状態」にあって、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高いので、冷却性能が劣化していることが確実か否かを調べるために、まず、ステップS19にて算出した運用期間における診断用比率DRが、ステップS14にて算出した新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上になっているか否か、すなわち、
[運用期間における診断用比率DR]≧1.4×[新品時診断用比率DR
の関係になっているか否かを確認する(ステップS30)。
【0120】
運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上になっていなかった場合は(ステップS30のNo)、当日の冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する診断動作を終了して、翌日の深夜時間帯の消費電力量の計測動作に移行するために、ステップS16に復帰する(ステップS32)。
【0121】
一方、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上になっている場合は(ステップS30のYes)、冷蔵庫に貯蔵している食料品等の新鮮さを維持することができないほど、冷蔵庫の冷却性能が劣化していることが確実であるものと判断して、冷蔵庫のステータスを「劣化状態」に設定するとともに、その旨を表示部13に表示してユーザに通報する。
【0122】
また、ステップS22に移行すると、前日も、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上の関係になっていたため、冷蔵庫のステータスとして、ユーザの注意を喚起するための「注意状態」に既に設定されている状態にあるか否かを確認する(ステップS22)。
【0123】
前日は、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値未満例えば1.2倍未満の関係にあって、冷蔵庫のステータスが「注意状態」に設定されていなかった場合は(ステップS22のNo)、本日は、たまたま、熱いものを冷まさずに冷蔵庫内に収納したためかも知れないので、冷却性能の劣化が進みつつある状態とは断定しないで、冷蔵庫のステータスを、ユーザの注意を喚起するのみに留める「注意状態」に設定するとともに、その旨を表示部13に表示する(ステップS23)。しかる後、当日の冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する診断動作を終了して、翌日の深夜時間帯の消費電力量の計測動作に移行するために、ステップS16に復帰する(ステップS24)。
【0124】
一方、前日も、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上の関係にあって、冷蔵庫のステータスが「注意状態」に既に設定されていた場合(ステップS22のYes)、2日連続して、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上の関係になったため、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高いものとして、冷蔵庫のステータスを「警戒状態」に変更するとともに、その旨を表示部13に表示して、貯蔵している食料品等の新鮮さが失われる恐れがある旨をユーザに警告する(ステップS25)。しかる後、当日の冷蔵庫の冷却性能の劣化に関する診断動作を終了して、翌日の深夜時間帯の消費電力量の計測動作に移行するために、ステップS16に復帰する(ステップS26)。
【0125】
以上のように、本実施形態においては、ユーザが利用しない深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)における冷蔵庫の消費電力量を、外付けまたは内蔵の電力計測部17によって計測時間毎に(例えば10分毎に)計測することによって、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を、容易に、かつ、確実に検知することができる。
【0126】
(第1、第2の実施形態の作用効果)
最後に、第1、第2の実施形態に示した冷却性能劣化診断システム100における作用効果について、さらに説明する。
【0127】
冷却性能劣化診断システム100は、冷蔵庫の冷凍サイクルを駆動するコンプレッサ16の運転時間が冷蔵庫の合計動作時間に占める比率が大きければ大きいほど、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度が大きくなるという点に着目して、冷蔵庫の消費電力量の計測結果に基づいてコンプレッサ16の運転時間を推定することによって、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することを可能にしている。
【0128】
つまり、冷却性能劣化診断システム100においては、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部17を内蔵または外付けの形式で備え、制御部10において、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内(例えば深夜時間内)においてあらかじめ定めた計測時間毎(例えば10分毎)に電力計測部17により計測された消費電力量に基づいて、計測時間帯内におけるコンプレッサ16の延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサ16の延べ運転時間が計測時間帯における冷蔵庫の合計動作時間(すなわち計測時間帯の延べ時間)に占める比率を各日毎の診断用比率DR(Diagnostic Ratio)として算出し、算出した診断用比率DRをあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する。
【0129】
而して、電力計測部17を備えて、冷蔵庫の消費電力量を定期的に計測して、制御部10に出力することを可能とすることによって、コンプレッサ16の発停情報を直接把握しなくても、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を容易に診断することができる。
【0130】
ここで、前記基準値に設定する比率として、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する新品時診断用比率DRを用い、該新品時診断用比率DRは、冷却性能の劣化がない新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間としてあらかじめ定めた一定期間例えば購入設置後の1年間において、計測時間帯内(例えば深夜時間内)の計測時間毎(例えば10分毎)に電力計測部17により計測された冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された各日毎の診断用比率DRの前記予備計測期間における平均値である。
【0131】
また、前述の計測時間帯内におけるコンプレッサ16の延べ動作時間を推定するためには、まず、新品時の冷蔵庫として冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される前記予備計測期間における各計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量の平均値に対してあらかじめ定めた余裕倍率(例えば1.3倍)を乗じた消費電力量を、コンプレッサ16の運転によって増加する消費電力量の下限閾値と定めて、前記平均値に対して該余裕倍率を乗じた消費電力量を、コンプレッサ16が運転状態にあるか停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値として決定する。
【0132】
そして、計測時間帯内の計測時間毎に電力計測部16により計測された冷蔵庫の消費電力量が、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合、コンプレッサ16は運転状態にあると判定し、かつ、運転状態にあると判定した計測時間の時間間隔をコンプレッサ16の動作時間として割り当てて、割り当てた計測時間毎のコンプレッサ16の動作時間を計測時間帯の延べ時間(例えば深夜時間帯の延べ時間)に亘って積算することにより、計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ動作時間を容易に推定することができる。
【0133】
また、前述の診断用比率DRをあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する一例として、前述のように、基準値に設定する比率として新品時診断用比率DRを用い、前記予備計測期間経過後の運用期間における診断用比率DRを新品時診断用比率DRと比較した結果、診断用比率DRが、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上となった場合、冷却性能に関してユーザに注意を喚起すべき状態であることを示す「注意状態」を表示部13に表示する。
【0134】
また、診断用比率DRが、複数日に亘って連続して例えば2日連続して、新品時診断用比率DRの第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上となった場合、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨をユーザに警告すべき状態であることを示す「警戒状態」を表示部13に表示する。
【0135】
さらに、診断用比率DRが、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上となった場合、冷却性能が確実に劣化している状態であることを示す「劣化状態」を表示部13に表示する。
【0136】
かくのごとく、定期的に計測した冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された運用期間における診断用比率DRを新品時診断用比率DRと比較した結果によって、冷蔵庫の購入設置直後の新品時における正常状態から、注意状態→警戒状態→劣化状態へと順を追って、冷却性能の劣化程度を示す診断結果をユーザに容易に通知することができる。
【0137】
なお、計測時間帯は、例示した深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)に限るものではなく、冷蔵庫の消費電力量の計測環境に擾乱を与えることがない時間帯を任意に選択して設定することができる。
【0138】
以上のような冷却性能劣化診断システム100の動作を、時系列的な手順としてさらに説明すると、次のごとくである。
【0139】
まず、冷蔵庫の購入設置時点から正常運転が確実に保証される新品時の期間例えば1年間を、冷却性能の劣化程度を判定するための基準値を取得するために、正常な運転状態にある時期における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測する予備計測期間としてあらかじめ設定し、かつ、計測環境に擾乱が生じない時間帯として例えば冷蔵庫のドアが開閉されないと想定される深夜時間帯(例えば午前1時から午前6時までの時間帯)を、冷蔵庫の消費電力量を計測するための計測時間帯としてあらかじめ設定して、前記予備計測期間に亘って、前記計測時間帯のあらかじめ定めた計測時間(例えば10分)毎に冷蔵庫の消費電力量を電力計測部17にて計測して、予備計測データとして順次蓄積する。
【0140】
次いで、蓄積した前記予備計測データに基づいて、冷蔵庫のコンプレッサ16が動作状態にあるか停止状態にあるかを識別するための消費電力量の閾値としてコンプレッサ運転状態識別用閾値を算出する。さらに、各前記予備計測データを前記コンプレッサ運転状態識別用閾値と比較することによって、前記予備計測期間の前記計測時間帯例えば深夜時間帯におけるコンプレッサ16の運転時間を推測し、推測したコンプレッサ16の運転時間が前記計測時間帯例えば深夜時間帯における冷蔵庫の合計動作時間(すなわち前記計測時間帯例えば深夜時間帯の延べ時間)に占める割合を算出して、正常運転している新品時の冷蔵庫に関する新品時診断用比率DRとして保存し、前記予備計測期間経過後の運用期間における冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する際の基準値として利用する。
【0141】
しかる後、予備計測期間経過後の冷蔵庫の運用期間において、前記計測時間帯例えば深夜時間帯の前記計測時間(例えば10分)毎の冷蔵庫の消費電力量を電力計測部17にて計測し、計測した冷蔵庫の消費電力量を前記コンプレッサ運転状態識別用閾値と比較することによって、前記計測時間帯例えば深夜時間帯におけるコンプレッサ16の運転時間を推測し、推測したコンプレッサ16の運転時間が前記計測時間帯例えば深夜時間帯における冷蔵庫の合計動作時間(すなわち前記計測時間帯例えば深夜時間帯の延べ時間)に占める割合を運用期間における冷却性能の劣化診断用に用いる診断用比率DRとして算出する。
【0142】
運用期間における診断用比率DRを、冷却性能の劣化程度の診断用の基準値として算出して保存している新品時の冷蔵庫に関する新品時診断用比率DRと比較して、診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上となった場合は、ユーザに貯蔵品に関する注意を促す「注意状態」の旨を表示部13に表示してユーザに通知し、複数日に亘って連続して例えば2日連続して、運用期間における診断用比率DRが、新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上例えば1.2倍以上となった場合は、冷蔵庫の冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高いことを警告する「警戒状態」の旨を表示部13に表示してユーザに通知する。
【0143】
さらに、運用期間における診断用比率DRが新品時診断用比率DRのあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上例えば1.4倍以上となった場合は、正常運転していた新品時の冷蔵庫に関する新品時診断用比率DRから大きく外れて、コンプレッサ16の運転時間が異常に長くなっている状態にあるものとして、冷却性能の劣化の発生を示す「劣化状態」の旨を表示部13に表示してユーザに通報する。
【0144】
かくのごとく、冷蔵庫の消費電力量の計測を行うことによって算出される、運用期間における診断用比率DRと新品時診断用比率DRとの比較結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断して、ユーザに通知することにより、冷蔵庫が正常に動作しなくなる故障に陥る前に、事前に、冷蔵庫に貯蔵している食料品等を新鮮な状態に維持することができなくなる可能性が発生していることをユーザは容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0145】
10…制御部、11…記録部、12…入力部、13…表示部、14…電源部、15…温度感知部、16…コンプレッサ、17…電力計測部、100…冷却性能劣化診断システム、100A…自己診断システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムであって、冷蔵庫の消費電力量を計測する電力計測部を内蔵または外付けの形式で備え、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内においてあらかじめ定めた計測時間毎に前記電力計測部により計測された消費電力量に基づいて、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサの延べ運転時間が前記計測時間帯の延べ時間に占める比率を各日毎の診断用比率として算出し、算出した前記診断用比率をあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記基準値に用いる比率として、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する新品時診断用比率を用い、該新品時診断用比率は、新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間としてあらかじめ定めた一定期間において、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に前記電力計測部により計測された冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された各日毎の前記診断用比率の前記予備計測期間における平均値であることを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記予備計測期間における各計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量の平均値にあらかじめ定めた余裕倍率を乗じた消費電力量を、コンプレッサが運転状態にあるか停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値とし、かつ、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に前記電力計測部により計測された冷蔵庫の消費電力量が、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合、コンプレッサは運転状態にあると判定し、かつ、運転状態にあると判定した前記計測時間の時間間隔をコンプレッサの動作時間として割り当てて、割り当てた前記計測時間毎のコンプレッサの動作時間を前記計測時間帯に亘って積算することにより、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ動作時間を推定することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記予備計測期間経過後の運用期間における前記診断用比率を前記新品時診断用比率と比較し、前記診断用比率が、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能に関してユーザに注意を喚起すべき状態であることを示す「注意状態」を表示部に表示し、また、複数日に亘って連続して、前記新品時診断用比率の前記第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨をユーザに警告すべき状態であることを示す「警戒状態」を表示部に表示し、さらに、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上となった場合、冷却性能が確実に劣化している状態であることを示す「劣化状態」を表示部に表示することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断システムにおいて、前記計測時間帯として、冷蔵庫の消費電力量の計測環境に擾乱を与えることがない時間帯を任意に選択して設定することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断システム。
【請求項6】
冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断する冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法であって、各日のあらかじめ設定された計測時間帯内においてあらかじめ定めた計測時間毎に計測された消費電力量に基づいて、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ運転時間を推定し、推定したコンプレッサの延べ運転時間が前記計測時間帯の延べ時間に占める比率を各日毎の診断用比率として算出し、算出した前記診断用比率をあらかじめ基準値として設定された比率と比較した結果に基づいて、冷蔵庫の冷却性能の劣化程度を診断することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法。
【請求項7】
請求項6に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記基準値に用いる比率として、冷却性能の劣化がなく正常に動作していると想定される新品時における冷蔵庫に関する新品時診断用比率を用い、該新品時診断用比率は、新品時における冷蔵庫の消費電力量をあらかじめ計測するための予備計測期間としてあらかじめ定めた一定期間において、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量に基づいて算出された各日毎の前記診断用比率の前記予備計測期間における平均値であることを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法。
【請求項8】
請求項7に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記予備計測期間における各計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量の平均値にあらかじめ定めた余裕倍率を乗じた消費電力量を、コンプレッサが運転状態にあるか停止状態にあるかを識別するためのコンプレッサ運転状態識別用閾値とし、かつ、前記計測時間帯内の前記計測時間毎に計測された冷蔵庫の消費電力量が、前記コンプレッサ運転状態識別用閾値以上の消費電力量であった場合、コンプレッサは運転状態にあると判定し、かつ、運転状態にあると判定した前記計測時間の時間間隔をコンプレッサの動作時間として割り当てて、割り当てた前記計測時間毎のコンプレッサの動作時間を前記計測時間帯に亘って積算することにより、前記計測時間帯内におけるコンプレッサの延べ動作時間を推定することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記予備計測期間経過後の運用期間における前記診断用比率を前記新品時診断用比率と比較し、前記診断用比率が、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能に関してユーザに注意を喚起すべき状態であることを示す「注意状態」を表示部に表示し、また、複数日に亘って連続して、前記新品時診断用比率の前記第1の倍率閾値以上となった場合、冷却性能の劣化が進みつつある可能性が高い旨をユーザに警告すべき状態であることを示す「警戒状態」を表示部に表示し、さらに、前記新品時診断用比率のあらかじめ定めた第2の倍率閾値以上となった場合、冷却性能が確実に劣化している状態であることを示す「劣化状態」を表示部に表示することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法において、前記計測時間帯として、冷蔵庫の消費電力量の計測環境に擾乱を与えることがない時間帯を任意に選択して設定することを特徴とする冷蔵庫の冷却性能劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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