説明

冷陰極蛍光ランプ

【課題】 蛍光体被膜の材料である蛍光体粒子に対して金属化合物微粒子をその表面の一部にコートし、蛍光ランプとしての初期の全光束を改善した。
【解決手段】 ガラス管1の内部に水銀及び希ガスを1種類以上封入し、ガラス管の両端内部に封着線3を介し、一対の放電電極4を設置し、ガラス管の内壁に、その表面に金属化合物12がコートされた蛍光体粒子11による蛍光体被膜2を形成した冷陰極蛍光ランプにあって、金属化合物12は、蛍光体粒子11の表面積に対してコート面積を10〜40%にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライト用光源として用いられている冷陰極蛍光ランプは、図5、図6に示す構成である。図5は従来の冷陰極蛍光ランプの長手方向の断面図であり、図6は輪切り状態の断面図である。ガラス管1の内部に水銀及び希ガスを1種類以上封入し、その両端内部には封着線3を介し、一対の放電電極4を設置してある。また、ガラス管1の内壁には蛍光体被膜2を約10〜40μmの厚さで形成してある。この蛍光体被膜2の材料である蛍光体には主に赤・緑・青色から成る三波長蛍光体が使用されている。
【0003】
蛍光体は冷陰極ランプの寿命中に水銀の吸着などにより、全光束の低下などのランプ寿命特性が悪化していく。この改善のために現在までは、蛍光体粒子のほぼ全面に金属化合物をコートさせる方法で改善してきた。
【0004】
ところが、蛍光体粒子に金属化合物を被覆させると、蛍光ランプとしてその初期の全光束が低下するという問題点があった。また、従来は蛍光体粒子表面に被覆する金属化合物の量は蛍光体との重量比により決めていたが、この方法では、使用する金属化合物の比重により蛍光体粒子表面にコートされる面積が変化してしまう問題点もあった。
【特許文献1】特開2004−182907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、蛍光体の全光束は蛍光体粒子表面の面積で決定されるので、蛍光体に対する金属化合物の重量比ではなく被覆される面積を調整し、蛍光ランプとしての初期の全光束を改善した冷陰極蛍光ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガラス管の内部に水銀及び希ガスが1種類以上封入され、前記ガラス管の両端内部に封着線を介し、一対の放電電極が設置され、前記ガラス管の内壁には、その表面に金属化合物がコートされた蛍光体粒子による蛍光体被膜が形成された冷陰極蛍光ランプであって、前記金属化合物は、蛍光体粒子の表面積に対してコート面積が10〜40%であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の冷陰極蛍光ランプにあっては、前記金属化合物としてその粒子径が0.1μm〜0.2μmのものを採用することができる。
【0008】
また本発明の冷陰極蛍光ランプにあっては、前記金属化合物の粒子の一部が凝集し偏在した状態で前記蛍光体粒子の表面にコートすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、蛍光体粒子表面の一部への金属化合物のコートにより蛍光体への水銀吸着を防ぎ、初期の全光束を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。本実施の形態の冷陰極蛍光ランプは、従来と同様に、図5、図6に示した構造である。そして、蛍光体被膜2の材料となる蛍光体の粒子表面の一部に、若しくは蛍光体被膜2の表面の一部に金属化合物微粒子、特にLa(ランタン)もしくはY(イットリア)、Al(アルミニウム)をコートすることにより、蛍光体への水銀吸着を防ぎ、蛍光ランプの初期の全光束量を大きくし、かつ、ランプの寿命特性を改善している。
【0011】
図1、図2は蛍光体粒子11の表面にLa微粒子12をコートする説明図であり、図1は上面図、図2は側面図である。本実施の形態の冷陰極蛍光ランプでは、赤色蛍光体(Y:Eu)、緑色蛍光体(LaPO:Ce,Tb)、青色蛍光体(BaMgAl1017:Eu)にそれぞれ蛍光体重量に対し70%を超えない範囲でLa微粒子12をコートする。ガラス管1の内部への蛍光体の塗布は、ポリエチレンオキサイドなどの増粘剤を水に溶解した無機バインダーに蛍光体を分散させた蛍光体スラリーや、ニトロセルロースなどの増粘剤を酢酸ブチルに溶解させた有機バインダーに蛍光体を分散させた蛍光体スラリーを用いる。そして塗布した後に乾燥させることで蛍光体被膜2を形成する。被膜の膜厚は従来同様に、10〜40μmwである。
【0012】
本実施の形態の冷陰極蛍光ランプによれば、蛍光体被膜2に使用されている蛍光体の粒子11の表面の一部へ金属化合物微粒子12をコートしたことにより蛍光体への水銀吸着を防ぎ、蛍光ランプとしてその初期の全光束量を向上させることができ、また冷陰極蛍光ランプのランプ寿命特性を改善することができる。
【実施例】
【0013】
有機バインダーを用いて蛍光体被膜を塗布形成し、ランプ特性を測定した。特性比較のために、蛍光体に対する金属化合物La微粒子のコートは、蛍光体粒子の表面に対して、0%〜100%の間で、10%刻みで行った。冷陰極蛍光ランプの形状は図5、図6に示した従来型と同様であり、有機バインダーを用い蛍光体被膜2を塗布し形成した。蛍光ランプの仕様は、次の通りである。ガラス管内径:φ2.0mm、ランプ長:350mm、そして管電流は6mArmsとした。
【0014】
実験では、冷陰極蛍光ランプのLaコート面積別の0Hr初期での相対全光束、2000Hr寿命後の初期全光束に対する全光束維持率を測定した。図3にLaコート面積別の0Hr初期での相対全光束の測定結果を示し、図4に2000Hr寿命後の初期全光束と比較した全光束維持率の測定結果を示す。図3、図4に示すように蛍光体粒子に対する金属化合物のコート面積が増えていくに従い初期の相対全光束は低下していったが、2000Hr後の全光束維持率は改善された。そしてコート面積が10〜40%範囲では、初期の相対全光束の低下を3%以下に抑え、2000Hr後の全光束維持率も90%以上あった。このことから、本発明によりランプの寿命特性を改善することができることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1つの実施の形態の蛍光体粒子の表面にLa微粒子をコートした状態の上面図。
【図2】本発明の1つの実施の形態の蛍光体粒子の表面にLa微粒子をコートした状態の側面図。
【図3】本発明の実施例の初期0Hr時の相対全光束を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例の2000Hr寿命後の全光束維持率を示すグラフ。
【図5】一般的な冷陰極蛍光ランプの長手方向断面図。
【図6】一般的な冷陰極蛍光ランプの輪切り断面図。
【符号の説明】
【0016】
1 ガラス管
2 蛍光体被膜
4 電極
11 蛍光体粒子
12 La微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管の内部に水銀及び希ガスが1種類以上封入され、前記ガラス管の両端内部に封着線を介し、一対の放電電極が設置され、前記ガラス管の内壁には、その表面に金属化合物がコートされた蛍光体粒子による蛍光体被膜が形成された冷陰極蛍光ランプであって、
前記金属化合物は、蛍光体粒子の表面積に対してコート面積が10〜40%であることを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
【請求項2】
前記金属化合物の粒子径が0.1μm〜0.2μmであることを特徴とする請求項1に記載の冷陰極蛍光ランプ。
【請求項3】
前記金属化合物の粒子の一部が凝集し偏在した状態で前記蛍光体粒子の表面にコートされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷陰極蛍光ランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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