説明

凍結乾燥されたアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤

【課題】血友病の治療剤として使われる再組合わせ人血液凝固第8因子凍結乾燥製剤を提供する。
【解決手段】凍結乾燥時、力価の不安定な蛋白質である再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる安定剤として、人血液由来アルブミンの代わりに、6〜100mMアルギニン(L−Arginine)、3.5〜50mMイソロイシン(L−Isoleucine)、10〜100mMグルタミン酸(L−Glutamicacid)の混合物を使用して凍結乾燥して製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血友病Aの治療剤として使われる凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子組成物に関し、より詳細には凍結乾燥時に不安定な蛋白質である再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる安定剤として人血液由来アルブミンを使用する代わり、ウイルス感染などの恐れのないアミノ酸を使用して再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させるアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子凍結乾燥組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血友病とは、先天的血液凝固障害で止血されない遺伝的疾病であって、人間血しょうに正常に存在する蛋白質のうち一つである生物学的活性凝固因子の欠乏により発生することが知られている。
血友病は劣性の伴性遺伝病であるため、女性の場合に血友病遺伝子をもっていても発病せず、男性のみ発病するが、その乏しい凝固因子の種類によって血友病A、血友病B、血友病ABおよび血友病Cに区別される。
【0003】
血友病Aは、人体内の血液凝固第8因子(抗血友性因子)の欠乏により約2万人当り1人または2人が発病する。血友病Bは、人体内の血液凝固第9因子(クリスマス因子)欠乏により約10万人当り1人が発病する。血友病ABは、再組合わせ人体内の血液凝固第8因子および第9因子の欠乏により発病する。そして血友病Cは、人体内の血液凝固第11因子の欠乏により発病する。
【0004】
血友病Aの治療剤は、約30年間人間の血しょうから血液凝固第8因子を分離して精製、濃縮して製造されており、このような治療剤の助けで多くの血友病患者が正常的な生活をしている。
しかし、従来血友病の治療剤として使われる人血液由来血液凝固第8因子は人間の血しょうから抽出されるため、肝炎またはHIV、TTウィルス等の各種血液媒介ウイルスの感染に露されるという問題がある。このような問題を克服するために、現在は、例えば、非特許文献1に報告されたように、再組合わせDNA技術を使用した再組合わせ動物細胞培養生成物から再組合わせ人血液凝固第8因子を分離および精製して製造する方法が一般的に利用されている。
【0005】
再組合わせ人血液凝固第8因子生成物の構造および生化学的反応は非特許文献2に記述されている。
人血しょうから分離される人血液凝固第8因子濃縮物は、数個の断片化された安全な活性の第8因子形態を含む(非特許文献3参照)。最も小さな活性形態は分子質量が170kDaであり、金属イオン架橋により90kDaおよび80kDaを共に保有した2個の鎖で構成される(特許文献1参照)。Kabi Pharmacia社は人血液由来血液凝固第8因子濃縮物中の分子量170kDaサイズに相応するB−domain部分が除去された再組合わせ人血液凝固第8因子生成物を開発した。切断された再組合わせ人血液凝固第8因子はr−VIIISQと称され、無血清培地で動物細胞培養方法によって、再組合わせハムスターの卵巣(CHO)細胞株により生産される。r−VIIISQ構造および生化学的反応は特許文献2に記述されている。
【0006】
再組合わせ人血液凝固第8因子のような蛋白質の場合、保存、保存および取扱いのために凍結乾燥された形態に製造されて販売され、患者への投与時に、適当な溶媒で再溶解して患者に注射する方式で投与される。しかし、このような凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子のような蛋白質の場合、精製、滅菌、凍結乾燥、包装および再溶解して投与される間に蛋白質の活性(力価)が大きく低下してしまう。そこで、従来から、乾燥性状がよくないという問題点に対して、再組合わせ人血液凝固第8因子の凍結乾燥時に、安定剤として人血液由来アルブミンを添加して、再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させていた。人血液由来アルブミンは精製、滅菌および凍結乾燥時に一般的な安定剤として作用する(非特許文献4参照)。
【0007】
また、人血液由来アルブミンは、凍結乾燥用剤のうち良好なケーキ形成剤である。再組合わせ人血液凝固第8因子の安定化のためのアルブミンの使用は公知の通りであり、現在販売されているあらゆる高度に精製された再組合わせ人血液凝固第8因子の一部製品に使われている。
しかし、人血液由来アルブミンは人間の血しょうから分離されるので、前述したように肝炎、HIV、TTウィルスなどの血液由来ウイルスの感染危険に露されるため、再組合わせDNA技術により製造される血友病の治療剤としては望ましくない。また、最終完成品の理化学的検査時、少量の主薬効成分と比較して相対的に超過量が存在するアルブミンによる干渉現象などを引き起こすために精密な品質管理に難点がある。
【0008】
したがって、乾燥または凍結乾燥される間に、溶液中であるいは凍結乾燥し、かつ再溶解した後の溶液として、安定した再組合わせ人血液凝固第8因子のアルブミン非含有剤形が要求されている。
再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化するためにいろいろな解決方案が提示された。
特許文献3は、安定化剤としてスクロースを15〜60mM使用して再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる方法を開示している。
【0009】
特許文献4は、0.01〜1mg/mlの非イオン性界面活性剤(ポリソルベート20または80)を安定剤として使用して再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる方法を開示している。
特許文献5は、低濃度のイオン、すなわち、0.5〜15mMのNaCl、CaCl2および0.01〜10mMの塩酸リジンを利用して再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる方法を開示している(マルトース、スクロース、マンニトールのような糖が添加される)。
【0010】
特許文献6は、高濃度のイオン、すなわち、0.35〜1.2MのNaCl、1.5〜40mMのCaCl2を利用して再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる方法を開示している(マルトース、スクロース、マンニトールのような糖が添加される)。
特許文献7は、安定剤としてトレハロースを使用することを開示している。
特許文献8には、グリシン、マンニトールおよび緩衝剤を含む人間成長ホルモンの安定化された剤形が記述されており、望ましい様態ではポリソルベート80のような非イオン性界面活性剤が添加される。非イオン性界面活性剤は還元された凝集および変性のために添加される。剤形は凍結乾燥中に及び再溶解後に、増加した安定性を示す。
【0011】
特許文献9には、溶解剤/安定剤として非イオン性重合体清浄剤を含む不活性担体培地中に溶解された特定蛋白質、例えば、インターロイキン−2を含む溶液が記述されている。望ましい清浄剤としては、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール化合物、ポリエチレングリコールモノステアレート化合物およびポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルがある。
【0012】
特許文献10には、蛋白質、例えば、インシュリンおよび表面活性物質を含む水溶液が記述されている。
特許文献11には、ガンマグロブリン溶液およびその製造方法が記述されている。溶液はポリエチレングリコール(PEG)を含有する。非イオン性界面活性剤がさらに溶液に添加されてもよい。
【0013】
特許文献12には、再組合わせ人血液凝固第8因子を含有する溶液の安定性を改善させるためにアミノ酸、単糖類、オリゴ糖類または糖アルコールまたは炭化水素カルボン酸を添加することが開示されており、特許文献13には、熱処理される間に安定性を増加させるために再組合わせ人血液凝固第8因子の水溶液に糖アルコールまたは二糖類を添加することが記述されている。
【0014】
特許文献14には、二糖類、望ましくはスクロースおよび1種以上のアミノ酸を含む第8因子または第9因子の安定した注射用溶液が開示されている。
【特許文献1】EP 197 901
【特許文献2】WO 91/09122
【特許文献3】US 5,763,401(EP 818 204,Bayer)
【特許文献4】US 5,733,873(EP 627 924,Pharmacia&Upjohn)
【特許文献5】US 4,877,608(EP 315 968,Rhone−Poulenc Rorer)
【特許文献6】US 5,605,884(EP 314 095,Rhone−Poulenc Rorer)
【特許文献7】WO 96/22107(Quadrant Holings Cambrige Limited)
【特許文献8】WO 89/09614(Genentech)
【特許文献9】EP 268110(Cetus)
【特許文献10】US 4,783,441(Hoechst)
【特許文献11】US 4,165,370(Coval)
【特許文献12】EP 77870(Japan Green Cross)
【特許文献13】EP 117064
【特許文献14】WO 91/10439(Octopharma)
【非特許文献1】J.Gitschier et al.,Nature 312,330−37,1984およびEP 160 457
【非特許文献2】Kaufman Tibtech,Vol 9,1991 and Hematology,63,155−65,1991
【非特許文献3】Andersson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol 83,2979−83,May 1986]
【非特許文献4】Wang et al.,J.of Parenteral Sci.and Tech.Vol 42,Number 2S,Supplement.1988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従来の再組合わせ人血液凝固第8因子の安定剤として使用されてきた人血液由来アルブミンから発生しうるウイルス感染の問題点を解決すると同時に、前記アルブミン含有製品と比較して薬効面で差のない新しいアルブミン非含有凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、再組合わせ人血液凝固第8因子を凍結乾燥する時に安定剤として、人血液由来アルブミンに代えられる安定剤を探すために実験を重ねた結果、特定アミノ酸を一定割合で添加して凍結乾燥すれば、凍結乾燥後にもその力価、性状および濁度面で優れていることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤は、血友病の治療剤として用いられる再組合わせ人血液凝固第8因子の安定化剤としてアルギニン、イソロイシンおよびグルタミン酸を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤は、従来のウイルス感染の恐れがあるアルブミンを使用せずに特定アミノ酸だけを使用することによってウイルス感染を引き起こせず、かつ人体内で副作用を起こす確率が少ない一方、安定性の高く、従来のアルブミン含有再組合わせ人血液凝固第8因子製剤と比較して、性状および再溶解後の力価、再溶解後の濁度面でほぼ類似した効果を奏する。また、非イオン性界面活性剤含有再組合わせ人血液凝固第8因子製剤よりその力価および性状面で優秀な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使われる再組合わせ人血液凝固第8因子原液とは、再組合わせDNA技術を利用して製造された動物細胞を培養して得られた再組合わせ人血液凝固第8因子含有培養液を、親和クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを利用して精製して得られた溶液を称する。
そして、再組合わせ人血液凝固第8因子の最終原液とは、再組合わせ人血液凝固第8因子原液に基本バッファおよび安定剤を添加希釈したものであって、凍結乾燥される前の溶液を称する。
【0019】
本発明のアルブミンを含有していない再組合わせ人血液凝固第8因子製剤は、安定剤としてアルギニン(L−Arginine)、イソロイシン(L−Isoleucine)およびグルタミン酸(L−Glutamic Acid)を含むことを特徴とする。
凍結乾燥される前の前記アルギニンの濃度は6〜100mMであることが望ましく、6〜42mMであることがさらに望ましい。
【0020】
凍結乾燥される前の前記イソロイシンの濃度は3.5〜50mMであることが望ましく、7〜35mMであることがさらに望ましい。
凍結乾燥される前の前記グルタミン酸の濃度は10〜100mMであることが望ましくて、10〜70mMであることがさらに望ましい。
また、本発明の再組合わせ人血液凝固第8因子の最終原液の基本バッファは、適当量のヒスチジン、NaClおよびCaCl2の混合物で構成できる。
【0021】
前記ヒスチジン、NaClおよびCaCl2が人体蛋白質のバッファとしてよく使われることは公知である。
以下に、実施例を通じて本発明を詳細に説明する。本実施例は望ましい一実施の形態を示すものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0022】
従来の人血液由来アルブミンに代えて再組合わせ人血液凝固第8因子を安定化させる物質を探すために、安定剤としてレシチン(ホスファチジルコリン)、スクロース、グリシン、PVP(ポリビニルピロリドン)およびアミノ酸(アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸)を使用してそれぞれ再組合わせ人血液凝固第8因子の凍結乾燥用最終原液組成物を製造した。
【0023】
また、凍結乾燥してその効能を確認するために、それぞれの製造された凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子組成物に対して力価、ケーキ性状および濁度を測定した。
使われた材料および測定器は次の通りである。
-L-アルギニン-HCl(M.W.210.7, Sigma)
-L-イソロイシン(M.W.131.2, Sigma)
-L-グルタミン酸(M.W.169.1, Sigma)
-L-ヒスチジン一水和物 (M.W.209.63, Fluka)
-スクロース(M.W.342.3, Sigma)
-ツイーン80 (Sigma)
-PEG 3350 (M.W.3350, Carbowax)
-ヒト血清アルブミンs(20%, KGC)
-グリシン(M.W.75.07, Sigma)
-PVP(K30) (M.W. 40000, Fluka)
-ホスファチジルコリン(レシチン、Doosan)
-FVIII 色素産生性アッセイキット (Coamatic kit, Chromogenix)
-96ウェルインキュベータ(Sanofi-BMS)
-ELISAリーダー(Magellan)
-コアグロメータ(Coagulometer、登録商標)
-FVIII 欠乏プラズマ (DADE BEHRING)
-アクチン(DADE BEHRING)
-CaCl2(DADE BEHRING)
-CAバッファ(バルビタールナトリウム、DADE BEHRING)
-凍結乾燥器VIRTIR-GENESIS 25XL
-濁度計(Turbidity Meter 2400、HACH)
再組合わせ人血液凝固第8因子の精製
再組合わせDNA技術を利用して製造された動物細胞を培養して得られた再組合わせ人血液凝固第8因子含有培養液を、親和クロマトグラフィー、1次および2次イオン交換クロマトグラフィーを利用して精製した。これを再組合わせ人血液凝固第8因子原液という。
【0024】
各組成別安定剤が含まれている再組合わせ人血液凝固第8因子製剤の製造
下記表1によって各組成別に基本バッファおよび安定剤を調製し、精製された再組合わせ人血液凝固第8因子原液に前記基本バッファおよび安定剤を混合希釈して再組合わせ人血液凝固第8因子の最終原液を製造し(第8因子濃度:50〜125IU/ml)、10ml用バイアルにそれぞれ4mlずつ分注して最終200〜500IU/Vialにし、凍結乾燥を行った。
【0025】
凍結乾燥
精製された再組合わせ人血液凝固第8因子原液に基本バッファおよび安定剤を混合した最終原液用組成物を調製して混合した後、バイアルに分注して凍結乾燥器(VIRTIS−GENESIS25XL)に投入した後、図1に示されたように、−45℃に急速冷却させて6時間維持後、真空状態に転換してまた6時間維持させ、0.2℃/minの速度で−20℃まで2時間徐々に昇温させた後(1次加温)、−20℃で80時間平衡を維持させた。
【0026】
その後、0.1℃/minの速度で7時間徐々に昇温させて25℃に温度を高めた後(2次加温)、25℃で3時間再び平衡を維持させ、0.1℃/minの速度で33℃まで再び昇温させた後、33℃で20時間温度平衡を維持させて凍結乾燥した。
凍結乾燥が終わった後、各2〜8℃の冷室に各製品を保管し、必要時に力価、ケーキ性状および濁度を同時に測定した。
【0027】
【表1】

効果確認
前記の方法によって製造された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤に対してその性状、再溶解後の濁度および再溶解後の力価を測定して下記表2に表した。
性状は肉眼で比較し、濁度はTurbidity Meter 2400(HACH)を利用して比較試験し、力価はChromogenic AssayおよびClotting Assay(APTT)で比較試験し、安定剤として人血液由来アルブミンを使用した場合を基準として相対値を評価した。換言すれば、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験1)の性状、濁度および力価をそれぞれ100%で評価した。凍結乾燥前の力価は107IU/mlであった。
【0028】
【表2】

表2に表されたように、安定剤として人血液由来アルブミンを添加して凍結乾燥させた再組合わせ人血液凝固第8因子製剤の性状、濁度および力価を100%と基準する時、実験2の非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の場合、濁度は優秀であるが、性状および力価は比較的よくないことが確認できた。
【0029】
一方、本発明の安定剤としてL−アルギニン、L−イソロイシンおよびL−グルタミン酸のアミノ酸を使用した場合、性状、濁度および力価いずれも優秀であることが確認できた(実験13、14)。
安定剤としてレシチンを使用した場合には力価面では優秀な結果を示したが、再溶解後の濁度がよくないということが確認できた。
【0030】
また、安定剤としてスクロース、グリシンの場合、力価面では比較的優秀な結果を示すが、性状はよくないということが確認できた。
安定剤としてPVPの場合、性状面では比較的優秀であるが、力価面ではよくないということが確認できた。
図2は、本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験16)を、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験1)および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験2)と比較した写真である。
【0031】
図3は、本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験1)および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤(実験2)とその力価の成績を比較したグラフである。
分析すればアルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の平均力価を100%と基準する時、実験2の非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物は平均力価80±5%であり、本発明の組成であるアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物は90±5%で成績が優秀であることが分かる。
【0032】
図4は、凍結乾燥後のケーキ性状の成績を比較したグラフである。分析すれば、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の平均性状の成績を100%と基準する時、非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物は平均性状の成績は80%であり、本発明の組成であるアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物は100%であって、成績が優秀であることが分かる。
【0033】
図5は、濁度を比較したグラフである。分析すれば、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の平均濁度成績を100%と基準する時、非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の平均濁度成績は100%であり、本発明の組成であるアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の平均濁度成績は100%であって、成績に差がないことが分かる。
【実施例2】
【0034】
実施例1に示されたように、アルブミンに代えられる安定剤として最適の条件を示したアミノ酸(アルギニン、イソロイシンおよびグルタミン酸)再組合わせ人血液凝固第8因子組成物の凍結乾燥後の性状の最適条件を実験して下記表3に表した。
【0035】
【表3】

表3に表されたように、アルギニン12〜36mM、イソロイシン4〜18mM、グルタミン酸19〜57mMで基準(アルブミン含有)対比ケーキ性状の最適条件を示した。
【実施例3】
【0036】
表3の結果を参照して各アミノ酸3種のうち各2種を、性状をなす最小濃度(アルギニン12mM、イソロイシン3.5mM、グルタミン酸19mM)に固定させた後、アルギニン、イソロイシンおよびグルタミン酸それぞれの濃度による力価の変化を調べるために1種のアミノ酸の濃度を変化させて実施例1のように凍結乾燥して再組合わせ人血液凝固第8因子組成物を製造し、Chromogenic AssayおよびClotting Assayを実施してその力価をアルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子組成物に対する%で分析した。
【0037】
下記表4では凍結乾燥後にケーキ形成を完全になす最小限の濃度であるイソロイシン3.5mMおよびグルタミン酸19mMに固定させた後、アルギニンの濃度だけを6〜100mM内で変化させてその力価を評価した結果を表した。凍結乾燥前の力価は107IU/mlであった。
【0038】
【表4】

表4に表されたように、アルギニン濃度6〜100mM全般にかけて比較的優秀な力価を示した。特に12〜48mMでアルブミン含有の再組合わせ人凝固因子第8因子対比80%以上の優秀な力価を示すことが分かり、アルギニン濃度が増加するにつれて力価も上昇して36mMで最適の力価(90%)を示すことが分かった。
【0039】
下記表5では最適の力価を示したアルギニン36mMを固定させ、イソロイシンは3.5mMに固定させた後、グルタミン酸の濃度だけを10〜100mM内で変化させてその力価を評価した結果を表した。凍結乾燥前の力価は107IU/mlであった。
【0040】
【表5】

表5に表されたように、グルタミン酸濃度10〜100mM全般にかけて比較的優秀な力価を示した。特に29〜76mMで比較的優秀な力価(80%以上)を示すことが分かり、グルタミン酸の濃度によって力価が増加しつつ57mMで最適の力価を示しことが分かった。
【0041】
下記表6では最適の力価を示したアルギニン36mMおよびグルタミン酸57mMに固定させた後、イソロイシンの濃度だけを0〜50mM内で変化させてその力価を評価した結果を表した。凍結乾燥前の力価は107IU/mlであった。
【0042】
【表6】

表6に表されたようにイソロイシン濃度0〜50mM全般にかけて比較的優秀な力価を示した。特に0〜18mMで比較的優秀な力価を示すことが分かり、イソロイシン濃度7mMで最適の力価を示すことが分かった。
アルブミン非含有凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤のうち最適条件を示したアミノ酸安定剤に対する力価維持の最適条件を実験した結果、アルギニン36mM、イソロイシン7mM、グルタミン酸57mMで基準(アルブミン含有)対比力価維持の最適条件を示した。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、アルブミンを含有せずとも安定性の高い凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤の凍結乾燥過程を示した図面である。
【図2】本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤をアルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤と比較した写真である。
【図3】本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤とその力価を比較したグラフである。
【図4】本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤とそのケーキ性状を比較したグラフである。
【図5】本発明のアルブミン非含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤を、アルブミン含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤および非イオン性界面活性剤含有の再組合わせ人血液凝固第8因子製剤とその濁度を比較したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病の治療剤として用いられる再組合わせ人血液凝固第8因子の安定化剤としてアルギニン、イソロイシンおよびグルタミン酸を含む凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項2】
凍結乾燥前の前記アルギニンの濃度は6〜100mMであることを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項3】
凍結乾燥前の前記アルギニンの濃度は6〜42mMであることを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項4】
凍結乾燥前の前記イソロイシンの濃度は3.5〜50mMであることを特徴とする請求項1または2に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項5】
凍結乾燥前の前記イソロイシンの濃度は7〜35mMであることを特徴とする請求項1または2に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項6】
凍結乾燥前の前記グルタミン酸の濃度は10〜100mMであることを特徴とする請求項1または2に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項7】
凍結乾燥前の前記グルタミン酸の濃度は10〜70mMであることを特徴とする請求項1または2に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。
【請求項8】
凍結乾燥前の前記アルギニンの濃度は6〜42mM、前記イソロイシンの濃度は7〜35mM、前記グルタミン酸の濃度は10〜70mMであることを特徴とする請求項1に記載の凍結乾燥された再組合わせ人血液凝固第8因子製剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8650(P2006−8650A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236562(P2004−236562)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(591270899)株式会社緑十字 (1)
【Fターム(参考)】