説明

処理、包埋及びミクロトームでの処置の間、組織標本を管理・保持するためのカセット及びそれらのための手法

組織標本を保持するためのカセット10は、前記底壁より上方に延伸している前記組織標本を受容するための内部空間を形成するために、底壁28及び複数の側壁26を含んでいる。蓋24は、前記内部空間内に受容されるように形成され、カセット10はミクロストームで切断可能とされている。センサ要素12は本体16又は蓋24と関連し、自動化された検出システムがカセット10の少なくとも1つの特性を決定するように構成されている。フランジ14は、側壁26のうち少なくとも2つの上部に沿って延伸しており、複数の開口部12,20を含んでいる。他の特徴は、より効果的で効率的にカセット10を製造し利用することに含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2003年10月17日に出願された米国特許出願公開第60/512,147号明細書に基づく優先権を主張しており、一般的には、現在係属中であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている国際特許出願PCT/US02/30779号明細書及び国際特許出願PCT/US02/30775号明細書に関する。
【0002】
本願発明は、一般的には、病理検査用の組織標本を管理(handling)・包埋するための支持体(support)に関する。より詳細には、1つ以上の組織標本を受容・包埋して、その後に前記1つ以上の組織標本をミクロトームで切り出す(microtomed)ことができるカセットに関する。
【背景技術】
【0003】
様々な組織の病気及び状態を正確に診断するために、医療従事者(medical personnel)は、患者の身体から1つ以上の組織標本を取り出さなくてはならない。前記身体から組織を採取するこのプロセスは、生検(biopsy)として知られている。1つ以上の組織標本が取り出され、病理検査室に送られると、前記組織は、組織学技師(histotechnician)、及び最終的には病理学者によって実施される一連の手順を通じて診断される。本願発明は、一般的には、1つ以上の組織細胞を前記病理学者により顕微鏡で分析され得るスライドとする準備をするために、組織学技師によって通常実施される手順に関する。
【0004】
単数形の“標本”という用語が本願明細書を通じて用いられているが、当該用語が複数の“標本”を同様に含んでいることを理解すべきである。組織標本は患者の身体から取り出されると、一般的には、組織固定液(tissue fixative solution)を含んでいる標本容器内に載置されて、その後、前記容器は病理検査室に移送される。前記組織は、病理検査室で“グロスイン”(grossing-in)として知られるプロセスを経る。該プロセスの間に、組織学技師が前記容器から前記組織標本を取り出し、一般的には前記組織を組織処理に適した大きさに切り出し、個々の標本を適切な大きさの小さいカセットの中に載置し、各カセットに追跡番号(tracking number)を割り当てる。次いで、前記追跡番号は前記検査室で利用されている追跡システムに記録される。最小の組織標本のために、単なる廃棄物(scraping)にすぎないかも知れないが、前記カセットはその側面及び底壁に精密なメッシュ状の開口部を有している。極めて小さな組織標本を含んでなる他の態様では、前記標本は、ティーバッグに類するバッグ内に載置され、最小の組織標本の脱落を防止する。より大きな組織標本は、いくらか大きいが、前記カセット内の前記組織標本よりも小さなスロット開口部を有しているカセット内に載置される。
【0005】
次いで、前記カセットはステンレス鋼製の有孔バスケットの内部に載置され、組織処理装置にかける。これは、しばしば夜通しかかることがある。前記装置は、真空、熱、及び化学物質の組み合わせを利用して、組織液を除去する。前記液が前記組織標本から除去されると、前記処理装置は、前記組織内の組織液をパラフィンに置き換えるために、溶融パラフィンの湯に浸す。次いで、組織学技師が前記装置から前記バスケットを取り出して、個々の組織用のカセットを取り出す。前記組織学技師が、個々に溶融パラフィンの貯蔵器(reservoir)及び分配器(dispenser)を有している包埋ステーションで各カセットから組織を取り出す。前記組織学技師は、前記組織用のカセットと略同一の大きさであり、溶融パラフィンで部分的に満たされたステンレス鋼製のベースモールド内部で組織形状に基づいて慎重に組織標本の向きを決定しなければならない。前記組織標本は、一般的には鉗子を利用して、手作業で前記モールドの底壁に抗して保持されていなければならない。そうでない場合には、後にミクロトームで前記組織を適切に切り出す能力を備えていなければならない。溶融パラフィンが、部分的に前記パラフィンを凝固させるために、冷蔵プレート(熱電式冷却器(TEC)としても良い)上で急速に冷却されることにより、前記モールドの底壁に抗して適切な向きに前記組織標本を保持する。次いで、前記カセットが前記ベースモールドの上部に載置されて、パラフィンが前記カセットの開口された上部を通じて前記ベースモールド内に注入される。前記カセットは、組織を保持する構成部材からミクロトーム内で前記凝固されたパラフィンを切削し、又は切り出す場合に後に利用するための固定装置へと、前記手順のこの時点でその機能を変更する。前記ベースモールドは、すべての溶融パラフィンが凝固され、組織学技師が包埋されたパラフィンのブロックからステンレス鋼製のベースモールドを取り出すまで冷却される。従って、前記組織標本は、ミクロトームのチャック内のホルダーとして利用され、対向する側面上にある可塑的な組織用のカセットと共にパラフィンの長方形状のブロックに包埋される。前記組織処理装置の場合と同様に、包埋プロセスはバッチ形式で成し遂げられる。この間に、平均的な組織学技師は、1時間当たり約40〜60個のカセットを包埋することが可能である。
【0006】
次いで、包埋された組織標本を含んでなる固形化されたパラフィンのブロックは、顕微鏡のスライド上に載置されるために、極薄切断片(section)に切り出す準備が整っている。組織学技師は、包埋された可塑的なカセットを有するブロックの側面を受け入れるような大きさに作られているミクロトーム上のチャック内に包埋された組織ブロックを設置する。次いで、前記組織学技師は、前記可塑的なカセットの表面の反対側に包埋された前記組織標本を有している前記パラフィンのブロックを切り出し始める。前記パラフィン内に包埋された個々のリボン状の組織のスライスが得られる。前記ミクロストームが正常に動作した場合には、個々のスライスがくっついた状態となる。その後、これらの非常に薄いリボン状のスライスは水浴中に浮かべられ、ガラスのスライドは前記スライスの下に載置される。次いで、前記薄く切り出された組織標本がその中に包埋された状態である前記スライスは、前記スライドの上面に付着する。
【0007】
組織学技師は、前記組織標本から十分な数のスライドが得られた場合には、前記スライドは自動染色装置内に載置される。前記染色装置は、一連の浸潤段階を通じて、前記スライドの異なる組織及び細胞を異なる色彩に染色する。このことにより、病理学者は異なる構造を認識して組織内の異常をより容易に発見することが可能となる。前記染色手順が完了した後、スライドはカバーガラスで覆われて、病理学者は顕微鏡下に配置して分析の準備を整える。上述の手順の概要に基づいて、従来の組織標本の管理及び処理が、組織学技師により実施される幾つかの手作業段階を含んでおり、非常に労働集約的なプロセスであることを理解されるべきであろう。例えば、手根管症候群のような反復的な圧迫による障害が蔓延している。このことは、特に組織標本を包埋するプロセスに当てはまる。これらの多数の手作業及び組織の反復的な管理が人為的ミスの可能性を増やし、さらには、病理学者が分析するためのスライドに最終的に付着された組織標本が、正確な診断に最適な状態及び向きであることを確実にするために、高度な訓練を受け熟練した組織学技師を必要とする。
【0008】
特許文献1(’032特許)は、グロスイン、包埋、及びミクロトームすなわち切り出しの手順の間に、組織標本を保持する新方式を含む本願発明の属する技術分野に対する様々な改善点を開示している。さらに詳細には、特許文献1は、カセットであり、ミクロトームで切り出すことが可能であり、組織を閉じ込め支持する装置に関する。カセットが使用される場合には、前記組織標本は前記カセット内に固定され、組織液をパラフィンに交換するためのプロセスに依存する。次いで、前記組織標本及び前記カセットは、顕微鏡のスライド上に設置されているので、同時に切り出される。前記組織標本は、組織処理装置で処理される時からミクロトームで切り出される時まで、前記カセットから決して取り出されないので、管理時間を有意な程度に節約することができる。さらに、例えば、人為的ミス又は管理中に組織を落とすことによる前記組織の損失は、個別の組織の管理段階をなくすことにより大幅に低減される。本特許は、新しい組織用のカセットと組み合わせて、前記手順間の管理段階をさらに低減し、自動化されたプロセスも概略的に論じている。
【特許文献1】米国特許第5,817,032号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明の属する技術分野において様々な進歩が成し遂げられているにもかかわらず、組織標本の手順の管理、製造能力及び包埋された組織標本における質の向上、及び診断を受けやすいスライス又はリボン状に包埋された組織を結果物とすることを容易にする方法に関して、さらなる改善の要求が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、一般的には、組織標本を保持するためのカセットを提供するものである。該カセットは、本体を含んでおり、さらには蓋をも含むことができる。前記本体は、底壁(bottom wall)及び少なくとも1つの側壁を備え、該側壁は、前記組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している1つ以上の側面を備えてなる。一態様においては、複数のクエリーポイント(例えば、センサ要素)が前記本体及び/又は蓋と関連し、自動化されたセンサシステム(sensing system)が前記カセットの少なくとも一つの特性を決定するように構成されている。該特性とは、大きさ、形状、又は幾つかの他の構造的若しくは機能的な特性を指すものである。前記カセットは、前記本体と結合し、開位置と閉位置との間を移動可能とされているように構成された蓋を含んでなることが好ましい。フランジは少なくとも2つの前記側壁の上部に沿って延伸しており、前記センサ要素は前記フランジ上に設けられている。前記センサ要素は、開口部又は他の検出可能な要素と、コンピュータ読み取り可能な特性又は要素とをさらに備えている。前記検出は、接触式又は非接触式で行うことが可能である。本願発明の態様は、処理及び/又は包埋手順の間において前記カセットを保持するフレーム部材についても又は代替的に適用され得る。前記カセット本体の底壁が、丸められたコーナー部を有する複数の側面へ移行することが好ましい。前記底壁は、前記カセットを製造するために用いられている型の中の前記カセット本体のゲート又は充填位置(fill location)近傍から複数の側面に向かった方向で放射状に細長く及び/又は幅広い形状とされている複数の開口部をさらに含んでなることが好ましい。これらの特徴の各々が、射出成形プロセスの間に前記カセットを形成するための材料の流れを案内することの手助けとなり得る。前記底壁の前記開口部は、前記底壁の略中心に設けられ、ティアドロップ状及び/又はオーバル状の形状とされていることが好ましい。
【0011】
少なくとも2つの側面が互いに対向する位置に位置決めされ、前記対向する側面間の距離は、前記対向する側面の長手方向に沿って変化する。このことにより、結果的に長手方向に沿って前記側面をある角度に曲げて、起伏させて、又は丸みを付けることが可能となり、より簡便にミクロトームで切り出すことの助けとなる。例として、前記側面は、その一端部から対向する端部まで、又はその対向する端部の間の位置からそれぞれの対向する端部まである角度に曲げることが可能である。
【0012】
もう一つの態様においては、前記カセットの内部空間にあるストッパ部材は、前記底壁の上面からの最小距離で蓋を止めるように構成されている。前記ストッパ部材は、前記カセット本体の一部又は前記蓋の一部とすることができる。
【0013】
もう一つの実施例においては、標定用カセットは、前記底壁から上方に延伸している複数のポストを含んでなる。前記ポストは、前記標本として取り出された切断片(section)が診断目的に最も適切であることを確認するために、その間で前記組織標本の向きを決定するように構成されている。前記内部空間に受容可能な前記蓋は、前記ポストを取り外し可能なように受容するための開口部を含んでいる。前記ポストは、前記側面のうち任意の一面に垂直又は平行となる一直線上で互いに揃わないように配置されている。このことが、ミクロトームでのより効果的な切断及び前記ミクロトームの刃先をあまりなまらせないことを確実にする手助けとなる。
【0014】
図面と併せて以下の好ましい実施例の詳細な説明を精査すると、本願発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、直ちにこれらの及び他の目的、利点及び特徴を理解することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[カセットの構成/形状の検出]
図1及び2を参照すると、カセット10は、自動包埋装置内で利用されている。例えば、該装置は、上述の組み込まれた国際公開第04/029584号パンフレットで開示されている。より詳細には、前記装置は、ロボットシステム(robotic system)が少なくとも2タイプのカセット10のうちいずれが投入バスケット(input basket)から取り出されるか決定する光電式識別機能を利用することができる。例えば、異なるタイプのカセット10が異なる大きさであり、又は他の異なる特性及び/又は機能を有していることが可能である。カセット本体16の外周部でフランジ14内に設けられている開口部12である複数のクエリーポイント(query point)は、光学式読み取り機がカセット10上の各クエリーポイントでバイナリ信号(binary signal)を付与するように用いられることを可能とする。このときに、すべてのカセット10が同一の包埋フレーム(embedding frame)を利用することは利点であるから、すべてのカセット10がその上側位置及び下側位置において略同一の(similar)位置合わせ精度で前記フレームの内部に係合するように設計されている。カセットの追加的な機能が開発され、又は顧客の識別が必要となる場合には、例えば、類似するセンサ機能がカセット10を受容する前記フレームに組み込まれる。前記機能は、多くの異なるタイプのカセットに組み込まれて、自動化機械と組み合わされて利用されている。
【0016】
同時係属中の出願である国際公開第04/029584号パンフレットでは、センサは、前記投入バスケットから取り出された後に、各カセット10を検査する(query)。ロボットアームは、シングルセンサヘッドの下方へ前記フレーム内にあるカセット10を移動する。前記センサは、カセット10が前記投入バスケットから落下していないか、又は不適切に把持されていないか確認するために、前記カセットの存在を検出する。より詳細には、前記センサは、カセット10の包埋処理へ移行するために、マシン制御部と連係してバイナリ信号(信号対無信号)を検出している。当該機能は、前記センサ及び制御装置がカセットの大きさ、タイプ及び/又は他のパラメータに基づいたカセット10の処理方法の決定に移行するように拡張され得る。他のパラメータには、ベースモールドのタイプ及び特定タイプのカセットを処理及び/又は包埋するために必要とされる任意の特別な加熱パラメータ又は冷却パラメータが含まれ得る。前記センサは、例えば、前記制御部が信号を検査するようにプログラムされている複数位置のうちの各入力位置で各カセット組立体/フレーム組立体を検査するために利用されている。上述の通り、フランジ14のコーナー部にある4つの開口部12が、前記入力位置のために現在利用されている。カセットフランジ14の中央部14a,14bは、前記マシンが識別可能で且つ実施可能なカセットの構成数を増やすために利用されている。後述のように、開口部12をコーナー部に設けることにより、3通りのカセットの構成が発見される。また、カセット10は対称性を有し、前記プロセスを通じてカセット10を運搬するフレーム(図示しない)内部に異なる2通りの向き(orientation)で操作者によって取り付けられるので、開口部12をコーナー部に設けることは冗長的なルーチンを含んでいる。前記自動機械が高確度で前記カセットの構成を正確に検出・検査しているに違いない。冗長的な検出領域を利用することは、確実性の向上を容易に実現するための一つの方法である。
【0017】
好ましい実施例における前記センサは、検出する光線(赤外線又は他のカラースペクトラム)が同調センサに向けられているエミッタセンサ/デテクターセンサである。前記クエリーポイントが開放されている(例えば、カセットのフランジ14内にある開口部12が検出される)場合には、前記エミッタはレジスタへの信号を十分に受信する。前記クエリーポイントが不透明又は拡散されている(例えば、開口部12が検出されない)場合には、前記同調センサは信号を記録するのに十分な光線を受信することはできない。カセット組立体は、パラフィンを含んでいる溶液を利用することを備えている組織処理装置内で予め処理されるので、センサ開口部12のうちの1つを阻害するパラフィンの凹凸レンズ(meniscus)が創出される可能性がある。センサ開口部12は、前記可能性を最小化するのに十分に大きく形成され得る。
【0018】
さらには、カセット10が2つの長手方向に沿った側面(long side)及び2つの短手方向に沿った側面(short side)を有する長方形形状であり、上述の通り、カセット10の長手軸に沿って2つの異なる向きでフレーム内に取り付けられ得る。前記検出部の構成は、このことを考慮して構成されている。すなわち、前記構成により、前記マシンが前記フレーム内のカセット10の向きに関係なく前記3つのカセットタイプを識別可能となる。各長手方向に沿った側面は、前記カセットタイプを適切に検出するのに十分な情報を提供し、前記他の長手方向に沿った側面は、冗長情報を伝送する。3通り以上の構成が要求される場合には、そのときに検出用開口部(sensing hole)(図示しない)が、前記端部の中心線のいずれか一方の側面に追加的に設けられ得る。
【0019】
実際の検出計画に従って、3つの実現可能なカセットは以下の通りである。
【0020】
[大きな組織用のカセット]
すべてのコーナーが不透明である(開口部12は存在しない)。
信号:両方のセンサがオフになっている。
【0021】
[生検用カセット(小さなカセット)10]
反対側のコーナーは不透明である(開口部12は存在しない)。他のコーナーは開口されている(開口部12は存在する)。対角線に関して対称となっている。
信号:1つのセンサのオンになっているが、もう一つのセンサがオフになっている(命令に反応しない)。
【0022】
[標定用カセット](orientation cassette)
すべてのコーナーが開口されている(開口部12)。
信号:両方のセンサがオンになっている。
【0023】
多くの異なるタイプのセンサシステム(接触型センサ又は非接触型センサのいずれか一方を含んでいる)は、上述の本願発明の技術的思想を実施するために用いられることを理解されるべきである。例えば、多くの異なるタイプの光学センサシステム、磁気センサシステム、バーコード型システム又はRFID型システムは、自動化された包埋システム及び/又は処理システムの制御により読み出された前記カセット及び/若しくはフレーム又は他の形態の情報を適切に識別するために利用され得る。一つの追加的な例として、フレーム部材90は、適切に包埋された情報が前記制御システム(例えば、自動化された処理装置及び/又は包埋装置)に中継されるために、その中に包埋されたRFID要素81を含んでいることが図8に示されている。伝達された情報もまた、広範囲に及ぶものであり、例えば、様々な診断情報、患者の履歴、組織標本の情報又は組織学的プロセス若しくは病理学的プロセスに対して有効な情報を含んでいる。
【0024】
[フレーム部材内へのカセットの固定]
図1及び8によると、複数の凹所(depression)80,82及び84,86は、カセット本体16の長手方向に沿った側面に沿ってフランジ14の上面に形成されている。フレーム部材90(図8に示す)は、カセット10を運搬するために利用され、凹所80,82及び84,86は、それぞれ突起又はタブ102,104及び106,108を受容する。凹所110,112及び114,116をカセット本体16の短手方向に沿った側面に沿ってフランジ14の上面に追加的に形成することができる。前記凹所は、それぞれフレーム部材90の内部に形成された突起又はタブ120,122及び124,126を受容する。前記位置合わせされた(registered)タブ及び凹所は、処理・包埋操作の間フレーム部材90内にカセット10をしっかりと維持する。
【0025】
[包埋プロセス中の空気排除]
組織包埋プロセスは、従来のカセットを用いて手動で実施された場合には、パラフィン(又は、包埋材料)のブロック内における気泡の閉じ込めをなくし、又は減少させる段階又は手法を必要とする。前記気泡が前記パラフィンのブロックを壊れやすくし、その後ミクロトームによる切り出しが主パラフィン体(main paraffin body)を“粉々にし”(break out)又は分断するので、前記気泡は良い影響を及ぼさない。このことが、“リボン”状の断片内の矛盾する(inconsistent)端部又は開口部を取り除き、ミクロトームプロセスにおいて前記断片から連続的に流れるに違いない。このことにより、失敗したリボンおよび質の低い診断用スライドを得ることができる。気泡の存在を減らす一つの方法は、前記気泡を除去するために前記カセット組立体をタップすること、そうでなければ素速く動かすことである。しかしながら、自動化された高速な包埋処理によって、前記マシンがそのような段階を実施するように構成されている。従って、空気が蓄積する場所においては、実施可能な最大の開口部は、前記空気がパラフィン充填段階の間に排除され得ることを提供される。さらに、図1及び2を参照すると、カセット10のフランジ14内且つ前記フレームのライティング面(writing surface)の下の開口部12,20は、空気が排除され得ることを提供される。従って、センサ開口部12には2つの目的があることを理解されるべきである。これらの開口部12,20は、空気が排除され、バリ又は突起がない程度に十分大きい。前記フランジ下のリブのような障害物が、泡の発生を抑制する。強化されたフランジ22が、空気の閉じ込めをなくすためにフランジ14の上面に設けられている。フレーム部材90はまた、その内面上に空気逃がし凹所又は通路83を含んでいる。
【0026】
[射出成形カセットへの材料の流れ]
再度、図1及び2を参照すると、カセット10の特定の機能は、その製造時に利用される効果的な射出成形技術の準備をしている。第一に、カセット本体16及び蓋24のモールドに充填するためのゲートは、カセット側壁26の端部へ直接導く流入孔(flow runner)を有している。底壁28においては、カセット本体16は、前記組織がそれを処理するために用いられる流路から阻害される領域を有することを防ぐことが最も望ましい。底壁28(bottom wall)の中心線28aがいくつかの防止可能なゲート部を有しているが、大部分の領域は流入開口部30で覆われている。成形するためには、蓋24のために用いられるように中実のフローリブ(flow rib)24aを有していることが一般的には好ましい。本願発明の態様においては、中心開口部(図1Bに示す)を形成するためのモールドピンが、前記カセットの材料の流れを側壁26に向かって外側に向けるために、ティアドロップ状の形状と共に構成されている。開口部30bを形成するための他のモールドピンは、側壁26に向かって放射状に且つ細長い形状とされている。これらの形状は、カセットの材料を前記ゲート又は充填位置(例えば、中心領域28a)から離れるように向かわせる手助けとなる。側壁26を形成する底壁28からリブ40までの移行領域29(図3に示す)は、成形のための流入制限を低減するためにラウンド形状とされている(radiused)。
【0027】
[非直線状の側壁]
図1及び2は、側壁26が前記ミクロトームの切断面をも決定する前記フレーム側面(frame side)に対して非直線状とされていることも示している。このことは、前記側面26が、図に示すように、その略中間点26aから略急角度に曲がっている、又は対向する側壁26の距離はそれらの長手方向における側壁26の角度又は曲がり具合により変化することを意味している。例えば、カセットの側面26は、その長手方向に沿って大きな曲がり部(radius)を有し、又は前記フレーム側面について波状となっている。この特徴は、ミクロトームの切断効率を向上させるために、前記フレーム側面に対して平行な側壁を有することを防止することを目的とする。多くの構成がこの目的を遂行可能であることを理解すべきである。
【0028】
[最小の蓋係合高さ]
図1A,3及び4によると、蓋24は、自身の組織標本に対して適切な高さでカセット本体16と係合された状態を維持するために、側壁のバンプ又は突起50a,50b又は50cと係合している。これにより、処理の間、カセット10内に前記組織標本を包含し固定している。1立方ミリメートル程度の大きさである生検用標本のように極めて小さな組織標本についても、包含し固定することができる。蓋24は、処理中ずっと(all the way)下がることはなく、傷つきやすい生検用標本を壊すことはない。ストッパ52は、蓋24が処理中ずっと前記標本の上に下がらないようにカセット本体16に取り付けられている。そのようなストッパを蓋24の上に代替的に設けることも可能である。各ストッパ52の高さは約0.75mmであるが、該高さは約0.25〜1mmの範囲であれば良い。また、極薄カセットの底壁28(約0.38mmであることが好ましい)により、前記標本は、閉じ込められるが、切り出された生検用且つその後の診断用スライドで明らかにする不利益な損傷の人為的結果(detrimental crush artifact)の原因となるような不当な圧縮力を有しない。
【0029】
[生検材料標定用カセット]
図6及び7によると、標定用カセット60は、“縁端上で”(on edge)切り出されたに違いない特別な組織(図示しない)の向きを決定するために利用されている。第一実施例の参照符号と対応するが、図6及び7で最初に登場した記号を有している参照符号は、構造体の対応する要素を指すものである。皮膚、ガルブラダー(gal bladder)、ブラダー(bladder)等のような組織は、病理学者が生検材料の完全な断面を見ることができるように向きを決定される必要がある。これらの標本は極めて小さい。従って、該標本は、生検用カセット10のような小さな開口部を有するカセット内に保持されている必要がある。生検材料標定用カセット60により、病理学者は肉眼検査(gross-in)のときに適切な切り出し方向に前記組織を載置することができる。この所定の向きは、前記組織を処理・包埋する手順を通じて維持されることにより、前記組織を取り除きパラフィンモールドを切り出すために再度向きを決定する必要もなく、切断面に対して適切な向きを維持している。前記組織はカセット60の底壁64に成形された直立ポスト62の間に載置されている。これらのポスト62は、カセット60内で利用される前記組織の平均的な厚さ及び長さを考慮した構成で配置されている。ポスト62は、切り出す刃の経路に対して平行又は直角のいずれかに対して互いに直接的に一直線とされないようにさらに配置されている。前記ポストは、側面リブ66よりも可塑材料を多く含んでいるので、ミクロトームの刃部が繰り返し使用した後に望ましくない速さで鈍る原因となる。従って、ポスト62は、同一の刃の経路で連続して切り出されるポスト62の数を最小化するように位置決めされる。標定用カセット60の蓋70は、直立ポスト62用の対応する逃げ溝(clearance hole)72を有している。本願明細書に開示されたカセットの構成を閉じ込めているその他の組織、又は組み込まれた応用製品のように、前記組織は、ポスト62間の場所に保持され、蓋70はポスト62の上に沈んで前記組織を動かないように固定する。前記蓋の逃げ溝70とポスト62との間には、任意の組織がカセット60から出ないようにする小さな隙間がある。
【0030】
本願発明が、その様々な実施例の記述により説明され、前記実施例は相当詳細に記述されているが、そのような詳細説明に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。本願明細書に開示された詳細例及び原理と別にして、及び/又は付け加えて、本願明細書に開示された構成要素が、上述の取り込まれたPCT出願に記述された詳細例又は原理と共に改良され得る。追加的な利点及び改良は、本願発明の属する技術分野における当業者にとって容易なほどに明らかである。従って、幅広い態様の本願発明は、特定の詳細例、代表的な装置、手法及び記述し表わした図面例には限定されない。従って、本願明細書に記載されていない発明(departure)が、技術的範囲又は出願人の一般的発明概念を逸脱しない範囲でそのような詳細例から創作され得る。本願発明の様々な特徴は、そのような組み合わせが発明の詳細な説明に示され記述された実施例として明確に開示されているか否かに関わらず、本願明細書において明らかにしたように単独又は様々な組み合わせで利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願発明において構成された生検用カセットの斜視上面概略図を示す。
【図1A】図1の円で囲まれた1A部分の拡大図を示す。
【図1B】図1に表わす前記カセットの底壁の上面拡大図を示す。
【図2】図1に表わす生検用カセットの斜視底壁図を示す。
【図3】図1の断面3−3における断面図を示す。
【図4】図1の断面4−4における断面図を示す。
【図5】図1の断面5−5における断面図を示す。
【図6】本願発明において構築された組織標定用カセットの斜視上面概略図を示す。
【図7】図6に表わす組織標定用カセットの上面図を示す。
【図8】本願発明において構築されカセットを運搬するように適合されたフレーム部材の斜視図を示す。
【符号の説明】
【0032】
10 カセット
12 開口部
14 フランジ
16 本体
20 開口部
24 蓋
26 側壁
28 底壁
60 カセット
62 ポスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記側壁は、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体と、
該本体と関連して、自動化されたセンサシステムが前記カセットの少なくとも1つの特性を決定するように構成されている複数のクエリーポイントと、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持するためのカセット。
【請求項2】
前記本体と結合するように構成され、開位置と閉位置との間を移動可能とされており、前記底壁よりも剛性の高い蓋をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項3】
前記側壁の上部に沿って延伸し、前記クエリーポイントを含んでなるフランジをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項4】
前記センサ要素が開口部をさらに備えていることを特徴とする請求項3に記載のカセット。
【請求項5】
前記センサ要素が開口部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載のカセット。
【請求項6】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、該側壁が組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体と、
該本体と関連し、自動センサシステムが前記カセットの少なくとも1つの特性を決定するように構成されているセンサ要素と、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持するためのカセット。
【請求項7】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記側壁が、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体と、
前記側壁の上部に沿って延伸し、複数の開口部を含んでなるフランジと、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持するためのカセット。
【請求項8】
組織標本を受容するための内部空間を形成するために、底壁及び該底壁から上方に延伸している少なくとも1つの側壁を含んでなる本体を備え、前記底壁がラウンド形状とされているコーナー部を有している前記側壁へ移行することを特徴とする、組織標本を保持するためのカセット。
【請求項9】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記側壁が、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体を備え、
前記底壁が、前記側壁に向かって拡径状とされた複数の開口部を備え、射出成形プロセスの間に前記カセットを形成するための材料の流れを案内していることを特徴とする、組織標本を保持するためのカセット。
【請求項10】
前記開口部がティアドロップ状の形状を有していることを特徴とする請求項9に記載のカセット。
【請求項11】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記側壁は、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸しており、前記底壁及び複数の前記側壁がミクロトームで切り出し可能な材料で構成されている本体を備え、少なくとも2つの前記側壁が互いに対向する関係で位置決めされており、前記対向する側壁間の距離がその長手方向に沿って変化することを特徴とする、前記組織標本を保持するためのカセット。
【請求項12】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記底壁が上面を有し、前記側壁が、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体と、
前記内部空間内に受容可能な蓋と、
前記底壁の上面から最小距離で前記蓋を止めるように構成された前記内部空間内にあるストッパ部材と、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持するための前記カセット。
【請求項13】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記底壁が上面を有し、前記側壁が、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している本体と、
前記底壁から上方に延伸し、ポスト間で前記組織標本の向きを決定するように構成されている複数の前記ポストと、
前記内部空間内に受容可能であり、取り出し可能なように前記ポストを受容するための開口部を有している蓋と、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持し、向きを決定するための前記カセット。
【請求項14】
前記本体が長手方向に所定の長さを有し、前記ポストが互いに前記長手方向の長さに対して垂直又は平行に一直線とされないようにさらに配置されていることを特徴とする請求項13に記載のカセット。
【請求項15】
組織標本及びカセットと関連するクエリーポイントを保持する内部空間を形成するために、底壁及び該底壁から上方に延伸している少なくとも1つの側壁を含み、包埋手順中に前記組織標本を備えてなるカセットの管理方法であって、
前記クエリーポイントの前記カセットをセンサ近傍の内部へ運搬する段階と、
前記センサを利用する前記クエリーポイントから情報を抽出する段階と、
を備えていることを特徴とする前記管理方法。
【請求項16】
クエリーポイントを含み、組織標本を備えてなるカセットを保持するためのフレーム部材の管理方法であって、
前記クエリーポイントの前記カセットをセンサ近傍の内部へ運搬する段階と、
前記センサを利用する前記クエリーポイントから情報を抽出する段階と、
を備えていることを特徴とする前記管理方法。
【請求項17】
底壁及び少なくとも1つの側壁を含む本体であって、前記側壁が、組織標本を受容するための内部空間を形成するために、前記底壁に対して上方に延伸している少なくとも1つの側壁を含んでなる本体と、
該本体と結合されるように構成されている蓋と、
前記本体及び前記蓋のうち少なくとも1つと関連し、自動化されたセンサシステムが前記カセットの少なくとも1つの特性を決定するように構成されている複数のクエリーポイントと、
を備えていることを特徴とする組織標本を保持するための前記カセット。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−508569(P2007−508569A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535585(P2006−535585)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033604
【国際公開番号】WO2005/037182
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(505077404)バイオパス・オートメーション・エル・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】